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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E06B
管理番号 1252953
審判番号 不服2010-8906  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-26 
確定日 2012-03-01 
事件の表示 特願2004-529766「二重ドア被覆材のドア構造物」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月 4日国際公開、WO2004/018819、平成17年12月 2日国内公表、特表2005-536669〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は,2003年8月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年8月20日,米国(US))を国際出願日とする出願であって,平成21年12月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成22年4月26日に審判請求がなされ,同時に手続補正がなされたものである。
その後,当審において,平成23年3月10日付けで,平成22年4月26日の手続補正を却下すると共に,同日付で拒絶理由が通知されたところ,平成23年6月6日に意見書及び手続補正書が提出された。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成23年6月6日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
外側平面領域と、内側平面領域と、前記内側平面領域を取り囲みかつ前記外側平面領域及び前記内側平面領域を相互接続すると共にこれらと一体的である不均整輪郭領域とを具備し、前記不均整輪郭領域は、前記外側平面領域の面に対してこの面から表側に延びる凸部分を具備しかつ前記凸部分は温度及び湿度の条件に応じて反ることができる、1枚の木製複合材から一体的に成型されたドア被覆材において、
前記凸部分が第1の厚さをもち、前記外側平面領域が第2の厚さをもち、かつ前記第1の厚さが前記第2の厚さよりも薄いことを特徴とするドア被覆材。」
(以下,「本願発明」という。)


第3 引用刊行物
(1)刊行物
当審の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開2000-240363号公報(以下,「刊行物」という。)には,以下の点が記載されている。(下線は,当審にて付与。)
(1a)「【請求項1】 縦框と横框とよりなる枠体と,該枠体の表面側に配設された表面側表面材及び裏面側に配設された裏面側表面材とからなる扉において,少なくとも上記表面側表面材は,木質繊維よりなるマットをプレス成形により框部と成形飾縁部とを一体成形してなり,かつ上記表面側表面材及び裏面側表面材における裏面には上記成形飾縁部に隣接して溝状凹部を設けてなることを特徴とする扉。
【請求項2】 請求項1において,上記溝状凹部は,上記成形飾縁部の周囲に設けてあることを特徴とする扉。
【請求項3】 請求項1又は2において,上記裏面側表面材は木質繊維よりなるマットをプレス成形により,框部と成形飾縁部とを一体成形してなることを特徴とする扉。
・・・
【請求項7】 請求項1?6のいずれか一項において,上記表面側表面材及び裏面側表面材は,上記框部及び成形飾縁部と共に鏡板部を一体成形してなることを特徴とする扉。」
(1b)「【0025】
【発明の実施の形態】実施形態例1
本発明の実施形態例にかかる扉につき,図1?図4を用いて説明する。本例の扉1は,図1?図4に示すごとく,縦框111と横框112とよりなる枠体11と,該枠体11の表面側に配設された表面側表面材181及び裏面側に配設された裏面側表面材182とからなる。少なくとも上記表面側表面材181及び裏面側表面材182は,木質繊維よりなるマットをプレス成形により框部15と成形飾縁部16とを一体成形してなるものである。
【0026】また,上記表面側表面材181及び裏面側表面材182における裏面には,上記成形飾縁部16に隣接して溝状凹部3を設けてなる。上記の溝状凹部3は,断面が半円状凹部で,成形飾縁部16の外周及び内周に沿って設けてある(図1,図2)。また,本例の扉1はフラッシュパネル構造である。」

(1c)「【0031】本例においては,上記表面側表面材181,裏面側表面材182の裏面(両者の対向面)において,成形飾縁部16に隣接して溝状凹部3を設けてある。そのため,表面側表面材181,裏面側表面材182が,温度,湿度の変化によって伸縮しようとした場合,上記溝状凹部3の形成部分を支点として,上記成形飾縁部16が板厚みの方向へ変形し易くなる。そのため,表面側表面材181,裏面側表面材182自体の変形が生じ難く,扉1の反りも発生しない。また,従来例に示したごとき角筒扉芯(図13の符号90)を使用する必要がない。そのため,縦框の加工も必要でなく,また扉1の軽量化を図ることができる。
【0032】また,成形飾縁部16の外側(框部側)及びその内側(框部と反対側)の双方に,成形飾縁部16に沿って溝状凹部3が形成されている。そのため,表面側表面材181,裏面側表面材182の上記伸縮をより確実に吸収することができ,扉の反りを一層確実に防止できる。
【0033】また,表面側表面材181と共に裏面側表面材182も木質繊維のマットをプレス成形したものであるため,扉1を一層軽量化できる。なお,木質繊維製のために,両者は共に伸縮し易くなるが,上記溝状凹部3によって,それぞれの伸縮が吸収され,変形,反りが防止できる。」

(1d)「【0035】実施形態例3
本例は,図7?図12に示すごとく,縦框111に沿って断面コ字状の補強材10を,その開口部を成形飾縁部16に向けて配置すると共に,表面側表面材181,裏面側表面材182には成形飾縁部16に沿って溝状凹部3を設け,また3つの枠状の成形飾縁部16によって囲まれた鏡板部17を有する扉1を示すものである。即ち,図7?図10に示すごとく,本例の扉1は,縦框111と横框112とよりなる枠体11と,該枠体11の表面側191及び裏面側192に配設された表面側表面材181,裏面側表面材182とからなる。
【0036】上記表面側表面材181,裏面側表面材182は木質繊維よりなるマットをプレス成形したもので,框部15と鏡板部17と両者の間に形成した凹部段状の成形飾縁部16とを一体成形してなる。上記表面側表面材181及び裏面側表面材182の間には,上記縦框111に沿って,断面コ字状の補強材10を,その開口部100を上記成形飾縁部16に向けて配設してなる。
【0037】また,上記表面側表面材181,裏面側表面材182の裏面には,成形飾縁部16に隣接して,その両側に成形飾縁部16を囲むように,溝状凹部3が設けてある(図7,図8)。」

以上の記載事項(1a)?(1d)から見て,刊行物には,以下の発明が記載されているものと認められる。

「木質繊維よりなるマットをプレス成形してなり,框部15と鏡板部17と両者の間に形成した凹部段状の成形飾縁部16とを一体成形してなる表面材において,
裏面に成形飾縁部16の両側に成形飾縁部16を囲むように,溝状凹部3が設けてあって,温度,湿度の変化によって伸縮しようとした場合,上記溝状凹部3の形成部分を支点として,上記成形飾縁部16が板厚みの方向へ変形し易くなっており,表面材の伸縮を吸収し,扉の反りを防止できる,表面材。」(以下,「刊行物記載の発明」という。)


第4 当審の判断
1.本願発明と刊行物記載の発明との対比
本願発明と刊行物記載の発明とを対比すると,刊行物記載の発明の「框部15」が,本件補正発明の「外側平面領域」に相当し,以下同様に,「鏡板部17」が「内側平面領域」に,「木質繊維よりなるマット」が「木製複合材」に,「表面材」が「ドア被覆材」に,それぞれ相当している。
そして,刊行物記載の発明の「温度,湿度の変化によって伸縮しようとした場合,溝状凹部3の形成部分を支点として,板厚みの方向へ変形する凹部段状の成形飾縁部16」と本願発明の「温度及び湿度の条件に応じて反ることができる凸部分を具備する不均整輪郭領域」は,いずれも,「温度及び湿度の条件に応じて変形することができる不均整輪郭領域」として共通している。

よって,両者は,以下の点で一致している。
「外側平面領域と,内側平面領域と,前記内側平面領域を取り囲みかつ前記外側平面領域及び前記内側平面領域を相互接続すると共にこれらと一体的である不均整輪郭領域とを具備し,前記不均整輪郭領域は温度及び湿度の条件に応じて変形することができ,1枚の木製複合材から一体的に成型されたドア被覆材」

そして,以下の点で相違している。
(相違点)
本願発明は,不均整輪郭領域が,外側平面領域の面に対してこの面から表側に延びる凸部分を具備しかつ前記凸部分は温度及び湿度の条件に応じて反ることができるものであって,前記凸部分がもつ第1の厚さが,外側平面領域がもつ第2の厚さよりも薄いものであるのに対し,刊行物記載の発明は,不均整輪郭領域が,その両側に溝状凹部3が設けられた凹部段状の成形飾縁部16であり,前記凹部段状の成形飾縁部16は温度,湿度の変化によって伸縮しようとした場合,上記溝状凹部3の形成部分を支点として,板厚みの方向へ変形するものであって,前記凹部段状部分の厚さと外側平面領域がもつ厚さとの関係は不明である点。

2.相違点についての判断
まず,本願発明の不均整輪郭領域が,外側平面領域の面に対してこの面から表側に延びる凸部分を具備しかつ前記凸部分は温度及び湿度の条件に応じて反ることができるものである点について検討するために本願の【発明の詳細な説明】をみると,以下の記載がある。(下線は,当審にて付与。)
a.「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、汎用的な周囲枠と一対の逆成型木製複合ドア被覆材とを有するドアを提供する。一対の成型ドア被覆材は不均整な形状をもち、これらのドア被覆材の選択された部分の間に充填材を具備する。充填部分が不均整部分に隣接して配置されることにより、温度や湿度の条件に起因する不均整部分の反りを妨げないようにする。」
b.「【0014】
・・・不均整輪郭領域Pは、凸部分34と凹部分36とを具備する。凸部分34及び凹部分36の特別な形状は、消費者の好みにより変更できる。・・・」
c.「【0017】
・・・不均整性輪郭領域があることから、ドア10において周囲枠12より内側に配置される部分が、温度及び湿度の条件に応じて周囲枠12を反らせることなく反ることができる。このようにして、周囲枠12はその本来の平面形状を維持する。」
d.「【0018】
・・・不均整輪郭領域P、P2は、周囲枠12またはプレートを伴う内側平面領域38、58のいずれにも悪影響を及ぼすことなく、温度及び湿度の条件に応じて反ることができる。・・・」

上記の記載より,本願発明の「不均整輪郭領域が,外側平面領域の面に対してこの面から表側に延び,温度及び湿度の条件に応じて反ることができる凸部分を具備する」という構成は,不均整輪郭領域が具備する凸部分と凹部分を温度及び湿度の条件に応じて反ることができるようにすることにより,それ以外の領域に悪影響を及ぼさないという効果を奏するための構成であることが理解できるものの,特に,不均整輪郭領域が具備する凹凸部分として,凸部分と特定したことによる効果については特に記載されておらず,不明である。
これに対し,刊行物記載の発明は,不均整輪郭領域を,その両側に溝状凹部3が設けられた凹部段状の成形飾縁部16とすることにより,温度及び湿度の条件に応じて板厚みの方向へ変形して,表面材の伸縮を吸収し,扉の反りを防止できるという同様の効果を奏するものである。
ここで,刊行物記載の発明の不均整輪郭領域には,「溝状凹部3」が設けてあるが,これは,凹部段状の成形飾縁部16の変形をより妨げることがないようにするために設けられたものであって,凹部段状の成形飾縁部に「溝状凹部」が有ることによって,不均整輪郭領域である凹部段状の成形飾縁部16を温度及び湿度の条件に応じて変形させることにより,それ以外の領域に悪影響を及ぼさないという刊行物記載の発明の本質が変わるものではない。
そうすると,結局,本願発明と刊行物記載の発明とは,不均整輪郭領域である凹部分や凸部分を反ることができるようにすることにより,表面材全体の変形を防止する点で同じである。
そして,一般的なドアにおいて,装飾目的等で,外側平面領域に相当する面に対してこの面から表側に延びる凸部分を設けることは,慣用されている技術であり,刊行物記載の発明の表面材に凸状部を設けることを妨げる要因はないから,刊行物記載の発明の「その両側に溝状凹部3が設けられた凹部段状の成形飾縁部16」に代えて「外側平面領域の面に対してこの面から表側に延びる凸部分を具備する不均整輪郭領域」を採用することは,当業者が容易になし得たことである。

次に,凸部分の厚さの限定について検討するために,明細書に記載された発明の詳細な説明をみると,「凸部分がもつ第1の厚さが,外側平面領域がもつ第2の厚さよりも薄」く特定することによる格別の効果については,発明の詳細な説明には記載されていない。
そして,刊行物記載の発明の表面材は木質繊維より成るマットをプレス成形したものであるから,その凹部段状の部分は框部や鏡板部等の平らな部分よりも薄くなるのが普通であるし,また,温度や湿気の条件に応じて変形する部分であって,かつ湾曲に成形する部分であるから湾曲の大小にかかわらず亀裂や割れなどが生じる可能性があることは,当業者であれば当然に予測できることに過ぎず,このように変形する部分でかつ耐久性が必要な場所を強化することも当業者であれば当然に認識する課題であるから,そのような部分をプレス加工する場合,より強固にプレスすることにより耐久性を上げ,結果的に当該湾曲部分の厚さを薄くすることは,当業者が容易になし得たことである。

3.請求人の主張に対して
請求人は,平成23年6月6日の意見書において,以下の主張をしている。
(請求人の主張)
刊行物記載の発明の「溝状凹部3」は、必須要素であり,刊行物記載の発明の「凹部段状の成形飾縁部16」を「凸部分」とすることは,それにより刊行物記載の発明の必須要素である溝状凹部3の意義は失われることになるから,刊行物記載の発明の「その両側に溝状凹部3が設けられた凹部段状の成形飾縁部16」に代えて「外側平面領域の面に対してこの面から表側に延びる凸部分を具備する不均整輪郭領域」を採用することはできない。
仮に,刊行物記載の発明の「凹部段状の成形飾縁部16」に代えて「凸部分を具備する不均整輪郭領域」を採用したら,凸部分の表面に亀裂や割れを生じてしまい,ドア被覆材として許容できないものとなるから,上記採用をしたとしても本願発明のドア被覆材の構成は得られない。

上記主張について検討する。
刊行物記載の発明の「凹部段状の成形飾縁部16」に代えて「凸部分を具備する不均整輪郭領域」を採用したとしても,凸部分を具備する不均整輪郭領域の変形をより妨げることがないようにするために「溝状凹部」を凸部分の両側に設けることは可能であり,刊行物記載の発明の「凹部段状の成形飾縁部16」を「凸部分」とすることにより「溝状凹部」の意義が失われるとする根拠は不明である。
また,刊行物記載の発明の「凹部段状の成形飾縁部16」に代えて「凸部分を具備する不均整輪郭領域」を採用しても,必ず凸部分の表面に亀裂や割れを生じるものではないし,凸部分の表面に亀裂や割れを生じる可能性がある場合に,それを防ぐように加工を適切に行うことは当業者にとって容易になし得ることであるから,刊行物記載の発明の「凹部段状の成形飾縁部16」に代えて「凸部分を具備する不均整輪郭領域」を採用してもドア被覆材として十分許容できるものができ,請求人の本願発明のドア被覆材の構成を得られないとする根拠は不明である。
したがって,請求人の主張は,採用できない。

4.まとめ
よって,本願発明は,刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。


第5 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず,本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-21 
結審通知日 2011-09-27 
審決日 2011-10-12 
出願番号 特願2004-529766(P2004-529766)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 美紗子伊藤 昌哉  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 土屋 真理子
宮崎 恭
発明の名称 二重ドア被覆材のドア構造物  
代理人 小島 高城郎  

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