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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1253198
審判番号 不服2010-22504  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-06 
確定日 2012-03-08 
事件の表示 特願2004-217147「カーナビゲーションシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月 9日出願公開、特開2006- 38558〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年7月26日の特許出願であって、平成22年6月28日付けで拒絶査定がなされ、同年10月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年12月14日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲、及び、図面によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「自車両の現在位置を検出するロケーション機能を備えると共に、地図データベースに基づいて指定された目的地までの推奨する経路を探索し案内するルートガイダンス機能を備えたカーナビゲーションシステムであって、
自車両に搭載され周辺を撮影する車載カメラからの画像データを入力する画像データ取込手段と、
前記画像データから道路に設置された交通標識や道路交通情報表示板を認識し、速度規制、一旦停止、通学路、道路幅の情報を含みその道路又は地点を車両が走行するに際しての規制を加える種類の情報を標識データとして抽出する標識データ認識手段と、
この標識データ認識手段により抽出された標識データを地図データと関連付けて記憶、蓄積する記憶手段とを具備すると共に、
前記ルートガイダンス機能による経路探索の処理を、探索した経路中に前記記憶手段に記憶された標識データが存在する場合に、当該標識データを考慮して規制の少ない経路の選択を行いながら実行することが可能に構成されていることを特徴とするカーナビゲーションシステム。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-205349号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【0038】
(第2の実施の形態)
まず、本発明の第2の実施の形態の経路案内装置の構成について説明する。図7に示すように、本実施の形態の経路案内装置は、移動体の現在位置を検出する現在位置検出手段701と、移動体の目的地を入力する目的地入力手段702と、地図データを記憶する地図データ記憶手段703と、現在位置から目的地までの案内経路を案内する経路案内手段704と、経路案内手段704により案内される案内経路に係る案内経路情報を取得する案内経路情報取得手段705と、装置全体の処理を制御する制御手段706と、案内経路を変更するか否かを判断する案内経路変更判断手段709と、案内経路情報を記憶する案内経路情報記憶手段710と、地図データを更新する地図データ更新手段711と、案内経路および案内経路情報を表示する表示手段707と、案内経路および案内経路情報を音声で通知する音声通知手段708とを備えている。
【0039】
前述の案内経路情報取得手段705は、移動体の外部を撮影するカメラユニット705aと、案内経路情報を認識する案内経路情報認識ユニット705bと、移動体の外部から案内経路情報を受信する案内経路情報受信手段705cとを備えている。案内経路情報認識ユニット705bは、例えば、パターンマッチングによる画像認識により、カメラユニット705aが撮影した映像から案内経路情報を認識するようになっている。また、案内経路情報取得手段705は、案内経路情報認識ユニット705bで認識された案内経路情報および案内経路情報受信手段705cで受信された案内経路情報の何れか新しい案内経路情報を前述の案内経路変更判断手段709および案内経路情報記憶手段710に出力するようになっている。
【0040】
また、現在位置検出手段701は、例えば、GPSの人工衛星が発する電波に含まれる信号に基づいて移動体の現在位置を検出するようになっている。また、前述の目的地入力手段702は、例えば、カーソルキーを備えた操作部により構成され、前述の表示手段707に表示された地図上の目的地に相当する場所をカーソルキーで指示することにより目的地が入力されるようになっている。また、前述の地図データ記憶手段703は、例えば、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等で構成されている。また、前述の経路案内手段704は、地図データ記憶手段703に記憶された地図データに基づいて現在地から目的地までの経路を探索し、探索した経路を案内経路として案内するようになっている。
【0041】
なお、前述の案内経路情報が、案内経路に係る道路交通制御情報を含み、道路交通制御情報が、道路標識、道路標示、車線境界線および交通信号の各情報の少なくとも一つを含んでいる。例えば、進入禁止の道路標識、制限速度を表示した道路標示、道路のセンタライン、信号機の信号等がある。また、前述の案内経路情報が、案内経路の近傍の標識物位置情報を含み、標識物位置情報が、建物、施設、交差点、踏切、および橋梁の各位置情報の少なくとも一つを含んでいる。例えば、ビルや店舗等の看板、駅や公園の入口を示す標示板、交差点名を記載した標示板等がある。また、前述の移動体の代表例としては、自動車および自動二輪車等があり、以下、自動車等という。
【0042】
次に、本実施の形態の経路案内装置の動作について、図7および図8を参照して説明する。図8は、本実施の形態の経路案内装置の各ステップのフローチャートである。図8に示すように、まず、現在位置検出手段701により、現在位置が検出される(ステップS801)。すなわち、現在位置検出手段701により受信されたGPSの信号により、自動車等の現在位置の緯度および経度が検出される。次いで、目的地入力手段702により、目的地が入力される(ステップS802)。更に、制御手段706により、地図データ記憶手段703に記憶された地図データが読み出される(ステップS803)。次いで、経路案内手段704により、地図データに基づいて現在位置から目的地までの経路が探索され(ステップS804)、探索された経路が案内される(ステップS805)。この案内される経路は、表示手段707に表示されるとともに、音声通知手段708により、音声で通知される。
【0043】
引き続き、案内経路情報取得手段705により、案内経路情報が認識または受信されたか否かが判断される(ステップS806)。前述のステップS806において、案内経路情報が認識または受信された場合は、案内経路変更判断手段709により、案内経路を変更するか否かが判断される(ステップS807)。一方、ステップS806において、案内経路情報が認識または受信されていない場合は、ステップS805に戻る。上記の案内経路情報が認識または受信された場合の案内経路変更の説明は後述する。
【0044】
前述のステップS807において、案内経路変更判断手段709により、案内経路を変更すると判断された場合は、経路案内手段704により、現在位置から目的地までの案内経路が探索され(ステップS808)、表示手段707および音声通知手段708により、案内経路を変更した理由が表示または通知される(ステップS809)。
【0045】
次いで、案内経路情報記憶手段710により、案内経路情報が記憶される(ステップS810)。次いで、地図データ更新手段711により、案内経路情報記憶手段710に記憶された案内経路情報に基づいて地図データが更新される(ステップS811)。次いで、制御手段706により、自動車等が目的地に到着したか否かが判断され(ステップS812)、自動車等が目的地に到着したと判断された場合は、経路案内を終了し、自動車等が目的地に到着していないと判断された場合は、ステップS805に戻る。
【0046】
ここで、前述のステップS806からステップS809までにおける案内経路の変更について、図9を参照して説明する。図9は、表示手段707に表示された案内中の案内経路の表示例を示したものである。図9(a)において、表示手段707に表示された地図900には、走行中の自動車等の現在位置を示す記号901と、自動車等が進行している経路902と、経路902上の分岐点903で分岐する経路904および経路905と、地図900に重ねて表示された窓枠906と、窓枠906内に表示された進入禁止の道路標識の画像907とが示されている。
【0047】
経路案内手段704が案内中の案内経路は、図9(a)に黒色で表した経路902から分岐点903を経由して経路904に至る経路であり、地図データ記憶手段703に記憶された地図データに基づいて探索された経路である。しかしながら、案内経路情報取得手段705により取得された案内経路情報により、経路904は分岐点903において進入禁
止であることがわかる。進入禁止にもかかわらず経路案内手段704が経路904を案内経路とした理由としては、例えば、前述の地図データの編集後に経路904が一方通行に変更になった場合がある。図9(b)は、経路案内手段704により、探索された新たな案内経路を示している。図9(b)において、表示手段707に表示された地図908には、走行中の自動車等の現在位置を示す記号901と、自動車等が進行している経路902と、経路902上の分岐点903で分岐する経路904および経路905とが示され、分岐点903において、新たな経路として黒色で表した経路905が案内経路とされている。したがって、案内経路変更判断手段709により、案内経路を変更する必要があると判断され、経路案内手段704により、新たな案内経路が案内されるので、自動車等の運転者は、進入禁止の道路に進入することを回避することができる。
【0048】
また、案内経路を変更した理由を音声通知手段708により通知することにより、自動車等の運転者が案内経路を変更した理由を知ることができる。
【0049】
また、分岐点903における経路904の進入禁止情報を前述の案内経路情報記憶手段710が記憶し、地図データ更新手段711が地図データを更新することにより、次回以降の案内経路の探索において、分岐点903から経路904に進入する経路904が探索されることを防止することができる。
【0050】
なお、前述のステップS801が現在位置検出工程、ステップS802が目的地入力工程、ステップS803が地図データ読出し工程、ステップS805が経路案内工程、ステップS806が案内経路情報取得工程、ステップS809が表示工程をそれぞれ構成している。
【0051】
以上のように、本実施の形態の経路案内装置によれば、案内経路情報取得手段705により取得された案内経路情報に基づいて経路案内手段704が案内経路を変更する構成としたので、地図データに含まれていない最新の道路標識および道路標示等に基づいた経路を自動車等の運転者に案内することができ、自動車等の安全運転を支援することができる。」

・図7には、矢印で示されるようにカメラユニット705aが案内経路情報認識ユニット705bに情報を伝達することが示されており、これにより、カメラユニット705aが自動車等の外部を撮影した映像を案内経路情報認識ユニット705bに入力する手段が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「自動車等の現在位置を検出する現在位置検出手段701を備えると共に、地図データ記憶手段703に記憶された地図データに基づいて現在地から目的地までの経路を探索し、探索した経路を案内経路として案内するようになっている経路案内手段704を備えた経路案内装置であって、
自動車等に搭載されカメラユニット705aが自動車等の外部を撮影した映像を入力する手段と、
前記カメラユニット705aが撮影した映像から道路交通制御情報である道路標識を含む案内経路情報を認識し、進入禁止、及び、制限速度等の道路交通制御情報を認識する案内経路情報認識ユニット705bと、
ステップS810において、案内経路情報記憶手段710に案内経路情報が記憶され、ステップS811において、案内経路情報記憶手段710に記憶された案内経路情報に基づいて更新される地図データ記憶手段703とを具備すると共に、
前記経路案内手段704による案内経路を、分岐点903における経路904の進入禁止情報が記憶された地図データに基づいて経路を探索することにより、次回以降の案内経路の探索において、地図データに含まれていない最新の道路標識および道路標示等に基づいた経路を自動車等の運転者に案内するように構成されている経路案内装置。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

(ア)後者の「移動体の現在位置を検出する現在位置検出手段」が移動体の現在位置を検出する現在位置検出機能を備えることは、明らかであるので、
後者の「自動車等の現在位置を検出する現在位置検出手段701」が前者の「自車両の現在位置を検出するロケーション機能」に相当し、以下同様に、
「地図データ記憶手段703に記憶された地図データに基づいて現在地から目的地までの経路を探索し、探索した経路を案内経路として案内するようになっている経路案内手段704」が「地図データベースに基づいて指定された目的地までの推奨する経路を探索し案内するルートガイダンス機能」に、
「経路案内装置」が「カーナビゲーションシステム」に、それぞれ相当する。

(イ)後者の「カメラユニット705aが自動車等の外部を撮影した映像を入力する手段」が前者の「周辺を撮影する車載カメラからの画像データを入力する画像データ取込手段」に相当する。

(ウ)後者の「カメラユニット705aが撮影した映像から道路交通制御情報である道路標識を含む案内経路情報を認識し、進入禁止、及び、制限速度等の道路交通制御情報を認識する案内経路情報認識ユニット705b」と、
前者の「画像データから道路に設置された交通標識や道路交通情報表示板を認識し、速度規制、一旦停止、通学路、道路幅の情報を含みその道路又は地点を車両が走行するに際しての規制を加える種類の情報を標識データとして抽出する標識データ認識手段」とは、
「画像データから道路に設置された交通標識を認識し、速度規制、を含みその道路又は地点を車両が走行するに際しての規制を加える種類の情報を標識データとして抽出する標識データ認識手段」なる概念で共通する。

(エ)後者の「ステップS810において、案内経路情報記憶手段710に案内経路情報が記憶され、ステップS811において、案内経路情報記憶手段710に記憶された案内経路情報に基づいて更新される地図データ記憶手段703」が前者の「この標識データ認識手段により抽出された標識データを地図データと関連付けて記憶、蓄積する記憶手段」に相当する。

(オ)後者の「道路標識および道路標示等に基づいた経路」とは、標識データを考慮して規制の少ない経路の選択を行うことを意味することが技術常識であるといえる(必要があれば、請求人が出願している特開2000-337899号公報の【0019】に、『このように、探索した経路上に曖昧な交通規制区間が存在する場合は、図5に示すように交通規制区間を回避するか否かをユーザーに選択させる設定画面を提示する。・・・。ここで、除外するとは対象となる交通規制区間の道路コストを他の道路コストに対して相対的に高くする、又は無限大にすることであり、該交通規制区間を通しにくくして再探索が行われる。また、対象となる交通規制区間を経路探索の対象から外して交通規制区間が絶対に経路に含まれないようにしてもよい。この場合、例えばその区間を通らなければ目的地に到着できない時には、探索不可能である旨のメッセージを表示する。また、現在位置が開始/終了が曖昧な交通規制区間上にある場合、その区間を回避するか否かの選択にかかわらず、その区間を回避しない経路を探索するようにしてもよく、また、設定画面を提示せずにその区間を回避するか否の選択を行わせないようにしてもよい。さらに、再探索経路に再探索前に回避するか否かの選択を行った区間が含まれる場合、再度設定画面を提示することはしないで、回避するか否かの選択を行わせないようにしてもよい。』と記載されているので参照されたい。)。したがって、
後者の「経路案内手段704による案内経路を、分岐点903における経路904の進入禁止情報が記憶された地図データに基づいて経路を探索することにより、次回以降の案内経路の探索において、地図データに含まれていない最新の道路標識および道路標示等に基づいた経路を自動車等の運転者に案内するに構成されている」態様と
前者の「ルートガイダンス機能による経路探索の処理を、探索した経路中に記憶手段に記憶された標識データが存在する場合に、標識データを考慮して規制の少ない経路の選択を行いながら実行することが可能に構成されている」態様とは、
「ルートガイダンス機能による経路探索の処理を、標識データを考慮して規制の少ない経路の選択を行いながら実行することが可能に構成されている」との概念で共通する。

したがって、両者は、
「自車両の現在位置を検出するロケーション機能を備えると共に、地図データベースに基づいて指定された目的地までの推奨する経路を探索し案内するルートガイダンス機能を備えたカーナビゲーションシステムであって、
自車両に搭載され周辺を撮影する車載カメラからの画像データを入力する画像データ取込手段と、
前記画像データから道路に設置された交通標識を認識し、速度規制、を含みその道路又は地点を車両が走行するに際しての規制を加える種類の情報を標識データとして抽出する標識データ認識手段と、
この標識データ認識手段により抽出された標識データを地図データと関連付けて記憶、蓄積する記憶手段とを具備すると共に、
前記ルートガイダンス機能による経路探索の処理を、標識データを考慮して規制の少ない経路の選択を行いながら実行することが可能に構成されているカーナビゲーションシステム。」
の点で一致し、以下の各点で相違している。

[相違点1]
車輌が走行するに際しての規制を加える種類の情報に関し、本願発明では、交通標識「や道路交通情報表示板」を認識し、速度規制、「一旦停止、通学路、道路幅の情報」を含むのに対し、引用発明では、道路交通制御情報である道路標識を含む案内経路情報を認識し、進入禁止、及び、制限速度等の道路交通制御情報である点。

[相違点2]
標識データを考慮して規制の少ない経路の選択を行うための検索に関し、本願発明では、「探索した経路中に記憶手段に記憶された標識データが存在する場合」であるのに対し、引用発明では、そのような特定はなされていない点。

5.判断
[相違点1]について
本願発明において、画像データから道路に設置された交通標識や道路交通情報表示板を認識し、速度規制、一旦停止、通学路、道路幅の情報を含みその道路又は地点を車両が走行するに際しての規制を加える種類の情報を標識データとして抽出することによる技術的な意義は、本願の出願当初の明細書の【0004】には、「実際の道路においては、道路に設置される交通標識などによって、一旦停止、進入禁止(一方通行)、速度規制などの様々な規制が設けられている」と記載され、【0006】には、「その目的は、交通標識や道路交通情報表示板に表示された標識データの収集や整備を容易に行なうことができると共に、その標識データを有効に利用することができるカーナビゲーションシステムを提供するにある。」と記載されていることからみて、実際の道路の様々な規制についての標識データの収集及び利用を図るものであるといえる。
ここで、道路交通情報表示板とは電子式な表示により各種の情報を表示するものであるといえ、交通標識とは、従来から常用されている図柄を印刷したものであるといえることから、両者は別の種類の表示方法によるものであることから、本願発明の「交通標識や道路交通情報表示板」を認識するとの特定は、実質的に「交通標識」又は「道路交通情報表示板」を認識するとの意味であると解することができる。してみると、「道路標識を含む案内経路情報」を認識するものである引用発明は、本願発明の「交通標識」を認識する点で共通するといえることから、交通標識「や道路交通情報表示板」を認識している点は、実質的な相違点であるとは認められない。
一方、実際の道路の様々な規制には、速度規制の他に、一旦停止、通学路、及び、道路幅の情報が含まれることは社会常識といえ、同時に、カーナビを開発する者にとっては技術常識であるといえる。そして、引用例の【0006】には、「地図データに含まれていない新しい道路および最新の交通情報等に対応できないので、例えば、進入禁止の道路に進入する経路を案内することがあるという問題があった。」と記載されているように、実際の道路の様々な規制についての標識データに対応する点が示唆されているといえる。
そうすると、実際の道路の様々な規制に対応するという一般的な課題を解決するために、引用発明において、上記技術常識を踏まえることにより相違点1に係る本願発明の構成とすることも任意であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。

[相違点2]について
本願発明において、ルートガイダンス機能による経路探索の処理を、探索した経路中に記憶手段に記憶された標識データが存在する場合に、標識データを考慮して規制の少ない経路の選択を行いながら実行することによる技術的な意義は、本願の出願当初の明細書には明確には記載されていないが、平成22年10月6日付けの審判請求書の「(d)本願発明の進歩性に関して」に、「本願発明では、運転開始前に、目的地までの推奨する経路を探索するにあたって、記憶手段に蓄積されている標識データ(地図データベースに含まれていない種類のデータである、速度規制、一旦停止、通学路、道路幅の情報を含む情報)をも考慮した経路探索を行うことができ、単純に地図データベースのみのデータを用いた場合に比べて、車両が走行するに際しての規制がより少なく(緩やかに)なる推奨経路を探索して案内することができるのであります。」と記載されていることから、運転開始前に、記憶手段に蓄積されている標識データをも考慮した経路探索を行うことであると解される。
一方、「経路案内手段704による案内経路を、分岐点903における経路904の進入禁止情報が記憶された地図データに基づいて経路を探索することにより、次回以降の案内経路の探索において、地図データに含まれていない最新の道路標識および道路標示等に基づいた経路を自動車等の運転者に案内する」ものである引用発明も、次回以降の案内経路の探索時においては、本願発明と同様に、運転開始前に、記憶手段に蓄積されている標識データ(引用発明の「分岐点903における経路904の進入禁止情報が記憶された地図データ」が相当)をも考慮した経路探索を行うものであるといえる。
してみると、実質的に引用発明も、相違点2に係る同様な構成を有しているといえることから、相違点2は実質的な相違点ではないといえる。

そして、本願発明の全体構成により奏される作用効果も引用発明、及び、上記技術常識から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明、及び、上記技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-05 
結審通知日 2012-01-10 
審決日 2012-01-26 
出願番号 特願2004-217147(P2004-217147)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 勝之  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 大河原 裕
藤井 昇
発明の名称 カーナビゲーションシステム  
代理人 佐藤 強  

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