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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47K
管理番号 1254201
審判番号 不服2011-7130  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-05 
確定日 2012-03-22 
事件の表示 特願2008- 55261「浴槽自動洗浄システム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月17日出願公開、特開2009-207753〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成20年3月5日の出願であって,平成23年1月13日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年4月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされると共に,同時に手続補正がなされた。
その後,平成23年9月7日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,同年11月4日付けで回答書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成23年4月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「浴槽内に設けた洗浄ノズルに接続する洗浄管を上水道からの水を熱交換加熱して給湯栓で給湯使用される熱源機に接続し、上記熱源機側から供給される湯又は水に洗剤を混合した洗剤液を上記洗浄ノズルから浴槽内に向けて噴射させる洗剤洗浄工程と、上記湯又は水を上記洗浄ノズルから浴槽内に向けて噴射させるすすぎ工程とを含む浴槽洗浄運転を行う浴槽自動洗浄システムにおいて、
上記洗浄管には、洗浄管の流路を開閉するための開閉弁と、洗浄管を流れる湯又は水の流量を設定するための水量制御弁と、洗浄管を流れる湯又は水の流量を計測するための水量センサとが設けられ、
上記給湯栓が開かれ他栓使用されることにより、上記水量センサの計測流量が浴槽洗浄運転に必要な流量として設定される洗浄流量未満となった場合は、上記水量制御弁の開度を大きくして水量センサの計測流量が上記洗浄流量となるときは上記他栓使用と上記浴槽洗浄運転を同時に行うように制御する制御手段が設けられ、
上記制御手段は、上記水量制御弁を最大開度にしても上記水量センサの計測流量が上記洗浄流量未満であるときは上記開閉弁を閉じて上記浴槽洗浄運転を待機させ、この浴槽洗浄運転を待機している間は、上記熱源機において上水道から流入される水の流量を計測するために設けられた熱源水量センサの計測流量を監視して、この熱源水量センサの計測流量が設定流量未満に減少した時点で、上記開閉弁を開いて浴槽洗浄運転を再開させて他栓使用と浴槽洗浄運転を同時に行わせるように制御する構成とし、
上記設定流量は、上記他栓使用されていても浴槽洗浄に必要な最小限の流量の湯又は水が上記洗浄管に供給できるようになる上記給湯栓での湯又は水の使用量である浴槽自動洗浄システム。」(以下「本願発明」という。)

第3 引用刊行物
(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開平11-299671号公報(以下,「刊行物1」という。)には,以下の記載がある。(下線は,当審にて付与。)
(1a)「【請求項1】 浴槽に設けたノズルから、湯水または洗浄液を浴槽内に噴射して浴槽を洗浄する自動洗浄浴槽において、上水側からの湯水を導く入水接続手段と、湯水と洗剤とを混合する洗剤混合手段と、上水側からの湯水を洗剤混合手段の上流で所定流量に制御する流量制御手段と、洗剤供給路を開閉する開閉手段と、浴槽洗浄動作を制御する洗浄コントローラとを設けたことを特徴とする自動洗浄浴槽。
【請求項2】 前記洗剤混合手段と、流量制御手段と、開閉手段と、洗浄コントローラとを一体的に取り付け、洗浄ユニットを構成したことを特徴とする請求項1記載の自動洗浄浴槽。
【請求項3】 省略。
【請求項4】 流量制御手段は、水量調整弁あるいは定流量弁であることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の自動洗浄浴槽。」

(1b)「【0014】図1において、自動風呂装置1は、自動洗浄浴槽2を含むとともに、給湯器付風呂釜20、洗浄ユニット60、縁切りユニット80、およびこれらの各部の全体動作を制御するコントローラ100を備える。給湯器付風呂釜20は、給湯回路30、追焚回路50、および風呂落込回路70を有する。
【0015】給湯回路30は、上水道からの入水を沸かして自動洗浄浴槽2やカラン41などに給湯するためのものであって、熱交換器31を備え、この熱交換器31の前後の入水路32と出湯路33との間がバイパス路34で接続され、このバイパス路34の途中に電磁開閉式のバイパス弁35が設けられている。また、入水路32には、熱交換器31への入水量Qcを検出する水量センサ37と入水温度Tcを検出する温度センサ38とが設けられ、出湯路33には、熱交換器31からの出湯温度を検出する缶体温度センサ36、出湯量を制御する水量サーボ弁39、およびバイパス路34からの水が混合された後の湯温を検出する出湯温度センサ40が設けられている。また、出湯路33は縁切りユニット80、洗浄ユニット60を介して、洗浄ノズル4aに連通する洗浄配管18aとすすぎノズル4bに連通するすすぎ配管18bに接続されている。」

(1c)「【0018】縁切りユニット80は、上水側からの湯水を洗浄ユニット60へ導くために、浴槽2の外周壁の洗い場側に取り付けられ、出湯路33から洗浄ユニット60への湯水の供給量を検出する水量センサ81と、電磁弁82、および雑水回路である浴槽2側から上水回路である給湯回路30への雑水の逆流を防止するための逆止弁83を備えている。
【0019】洗浄ユニット60は、浴槽2の外周壁の洗い場側に取り付けられ、縁切りユニット80を介して出湯路33から供給される湯水の流量を制御する水量サーボ弁65と、湯水の流路を洗浄ノズル4aに連通する洗浄配管18aとすすぎノズル4bに連通するすすぎ配管18bとに切り替える洗浄三方弁64と、洗剤タンク91につながる洗剤の供給路を開閉する洗剤二方弁62、出湯路33から洗浄配管18aへ供給される湯水の流れによって負圧を発生させて洗剤を洗浄配管18a内に引き込むためのベンチュリ63、および浴槽洗浄動作を制御する洗浄コントローラ61を有する。・・・」

(1d)「【0024】次に、上記構成の自動風呂装置において、浴槽洗浄を実行する場合の動作を主体に、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0025】いま、たとえば、台所リモコン装置102のいずれかの洗浄用のスイッチ107または108が操作されると(ステップ1)、制御本体部101は風呂自動運転スイッチ105や、浴室リモコン装置103の図示しない追焚スイッチなどが操作されているか否かを判別する(ステップ2)。
【0026】これらのスイッチが操作されている場合には、風呂が使用中であると判断して、洗浄モードをキャンセルするとともに、表示部109に風呂使用中である旨が表示される(ステップ3)。これに対して、風呂自動運転スイッチ105等の他のスイッチが操作されていない場合には、制御本体部101は、水量サーボ弁39を全開にするとともに、蓋センサ93の検出出力に基づいて、浴槽2に図示しない浴槽蓋が載置されているか否かを判別する(ステップ4)。」

(1e)「【0029】・・・、所定時間T0が経過すれば、浴槽2内に残水がないと判断し、予備すすぎモードに移行する(ステップ10)。
【0030】この予備すすぎモードでは、制御本体部101は、給湯器付風呂釜20の給湯回路30のバイパス弁35を閉じ、洗浄コントローラ61は電磁弁82を開き、洗浄ノズル4aに通じる洗浄三方弁64を洗浄配管18a側に切り替え、さらに、洗剤二方弁62を閉じる。給湯回路30における入水路32からの水は、熱交換器31、出湯路33を通り、縁切りユニット80を介して洗浄ユニット60へと流れる。このとき、洗浄コントローラ61は、水量センサ81の検出値に基づいて、カラン41等の他栓の使用を検知した場合には、洗浄動作を待機状態とする。また、この予備すすぎモードでは、水量センサ81で検知される洗浄ユニット60を流れる湯水が、常に一定の水量(たとえば5リッタ/分)となるように水量サーボ弁65の開度を調整する。
【0031】省略。
【0032】こうして、給湯回路30から出た温水は、出湯路33から洗浄三方弁64を介し、ベンチュリ63に至る。この時、洗剤二方弁62は閉じられているので、すすぎ水として温水のみが洗浄配管18aを通り洗浄ノズル4aから噴射される。これにより、浴槽1の周壁2aに付着している湯垢が予備的に洗浄される。・・・
【0033】省略。
【0034】次に、洗浄コントローラ61は、現在設定されているのが、「標準モード」、「節約洗浄モード」、「念入り洗浄モード」のいずれであるかを判別した後(ステップ13)、水量サーボ弁65の開度を調整して、給湯器付風呂釜20側から所定の水量(たとえば5リッタ/分)が流出するようにするとともに、洗剤二方弁62を開く。これにより、給湯器付風呂釜20からの湯水がベンチュリ63を通過する際に生じる負圧によって、洗剤タンク91に溜められている洗剤が湯水と混合された後、洗浄配管18aを通って洗浄ノズル4aから噴射され、浴槽2の周壁2aに付着している湯垢が、洗剤混じりの洗浄液によって洗浄される。
【0035】省略。
【0036】省略。
【0037】次いで、洗浄コントローラ61は、すすぎモードに移行する。このすすぎモードでは、まず洗浄ノズル4aによるすすぎ動作1(ステップ19)が行われる。このすすぎ動作1はステップ10で説明した場合と同様であるからここでは詳しい説明は省略する。そしてこのすすぎ動作1による浴槽洗浄が所定時間T3(たとえば、3分)継続されたあと(ステップ20)、引き続いて洗浄三方弁64をすすぎノズル4bに連通するすすぎ配管18b側に切り替えることにより、すすぎノズル4bからすすぎ水として湯水のみが、浴槽に載置されている図示しない浴槽蓋に対して噴射されるすすぎ動作2(ステップ21)が行われる。このときのすすぎ水の水量は水量サーボ弁65により、例えば、10リッタ/分に調整する。これにより、浴槽蓋に残った洗浄液が完全に洗い流される。
【0038】そして、このすすぎ動作2が所定時間T4(たとえば、3分)継続された後(ステップ22)、洗浄三方弁64を閉じて洗浄動作は終了する。」

(1f)【図1】には,給湯回路30の出湯路33と,洗浄配管18a及びすすぎ配管18bとが配管(以下,「洗浄管」という。)によって接続され,該洗浄管に電磁弁82と洗浄管を流れる湯水の流量を制御する水量サーボ弁65と洗浄管を流れる湯水の流量を検出する水量センサ81とが設けられていることが記載されている。

上記記載事項(1a)?(1f)及び図面の記載からみて,刊行物1には,次の発明が記載されているものものと認められる。
「浴槽2に設けた洗浄ノズル4aに連通する洗浄配管18aと浴槽2に設けたすすぎノズル4bに連通するすすぎ配管18bとを,洗浄管を介して,入水路32からの水を沸かしてカラン41に給湯する給湯回路30の出湯管33に接続し,上記給湯回路30から供給される湯水に洗剤を混合した洗剤液を上記洗浄ノズル4aから噴射させるよる洗浄モードと,上記湯水をすすぎノズル4bから噴射させるすすぎモードを含む浴槽洗浄運転を行う浴槽自動洗浄浴槽において,
上記洗浄管の流路を開閉するための電磁弁82と,洗浄管を流れる湯水の流量を制御する水量サーボ弁65と,洗浄管を流れる湯水の流量を検出する水量センサ81とを備え,
上記水量センサ81の検出値に基づいて,上記カラン41等の他栓の使用を検知した場合には,上記開閉弁を閉じて浴槽洗浄運転を待機させる浴槽自動洗浄浴槽。」(以下「刊行物1記載の発明」という。)

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開2007-89744号公報(以下,「刊行物2」という。)には,以下の事項が記載されている。(下線は,当審にて付与。)
(2a)「【請求項3】
入水路から流入した水を加熱して出湯路から出湯させる給湯機と、
浴槽に設けられて洗浄水又はすすぎ水を噴射する洗浄ノズル、前記給湯機の出湯路と前記洗浄ノズルを接続する洗浄水供給管、及び前記洗浄水供給管に洗剤を供給する洗剤供給部を備えた浴槽洗浄ユニットと、
からなる浴槽洗浄装置であって、
前記給湯機は、前記入水路に流入する水の流量を計測するための熱源水量センサと、前記入水路に流入する水の流量を調整するための熱源流量調節弁とを備え、
前記浴槽洗浄ユニットは、前記洗浄水供給管に設けられていて前記洗浄水供給管内の流路を開閉するための洗浄ユニット開閉弁と、前記洗浄水供給管に設けられていて前記洗浄水供給管内を流れる水の流量を計測する洗浄ユニット水量センサと、前記洗浄ユニット水量センサを流れる水の流量と予め設定されている設定流量との差が所定流量以上になれば、前記洗浄ユニット開閉弁を一時閉成する他栓判定処理手段とを備えていることを特徴とする浴槽洗浄装置。
【請求項4】
前記他栓判定手段は、前記洗浄ユニット水量センサを流れる水の流量と予め設定されている設定流量との差が所定流量以上になれば、前記洗浄ユニット水量センサを流れる水の流量と予め設定されている設定流量との差が所定流量よりも小さくなるように前記熱源流量調節弁を制御し、前記熱源流量調節弁を調整しても前記洗浄ユニット水量センサを流れる水の流量と予め設定されている設定流量との差が所定流量以上であれば、前記洗浄ユニット開閉弁を一時閉成することを特徴とする、請求項3に記載の浴槽洗浄装置。
【請求項5】
前記他栓判定処理手段は、前記洗浄ユニット開閉弁を一時閉成した後、前記熱源水量センサが当該センサを流れる水を検出しなくなった場合には、前記洗浄ユニット開閉弁を開成することを特徴とする、請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の浴槽洗浄装置。」

(2b)「【0018】
図1は本発明の実施例1による浴槽洗浄装置を示す概略構成図である。この浴槽洗浄装置は、浴槽11の洗浄を行なう浴槽洗浄ユニット12と、給湯機13(熱源)とから構成されている。給湯機13は、上水道からの入水を沸かしてカラン14に給湯するためのものであって、熱交換器15を通過する水を加熱するためのガスバーナー16を備えている。熱交換器15の入水側には、上水道からの水が流れる入水路17が接続され、熱交換器15の出湯側には、熱交換器15で加熱された湯が流れる出湯路18が接続されている。さらに、入水路17と出湯路18との間は、熱交換器15をバイパスするようにしてバイパス路19が設けられている。
【0019】
入水路17のバイパス路19が分岐している位置よりも上流側には、上水道から流入する水の流量を調整するための熱源流量調節弁20と、上水道から流入する水の流量を計測するための熱源水量センサ21が設けられている。入水路17のバイパス路19が分岐している位置と熱交換器15との間には、熱交換器15に流入する水の流量を計測するための水量センサ22と、熱交換器15に流入する水の温度を計測するための温度センサ23とが設けられている。バイパス路19には、バイパス路19に流れる水の流量を調整するためのバイパス流量調節弁24が設けられている。出湯路18のバイパス路19が合流している位置と熱交換器15との間には、熱交換器15から出湯される湯の温度を計測するための温度センサ25が設けられ、出湯路18のバイパス路19が合流している位置よりも下流側には、バイパス路19を通過した水と熱交換器15から出湯された湯の混合温度を計測するための温度センサ26が設けられている。さらに、出湯路18の末端には、カラン14が設けられている。
【0020】
しかして、この給湯機13においては、熱源流量調節弁20によって上水道からの入水流量が制限されており、カラン14が閉じられているときにはガスバーナー16の種火(図示せず)だけが燃焼している。そして、カラン14が開かれると、ガスバーナー16が燃焼してカラン14から出湯される。すなわち、カラン14が開かれると、入水路17、出湯路18及びバイパス路19に水が流れる。水量センサ22が、熱交換器15に最低作動流量以上の水が流れたことを検知すると、ガスバーナー16が点火され、熱交換器15を通過する際にガスバーナー16で加熱された湯がカラン14から吐出される。
【0021】
また、カラン14から出湯される湯の出湯温度は予めリモコン27によって設定されており、カラン14から出湯される湯は、各温度センサ23、25、26の検知温度を参照しながら、ガスバーナー16の燃焼号数や熱交換器15に流れる水とバイパス路19に流れる水の分配比などを調整することにより設定温度となるように調整される。
【0022】
なお、出湯路18の末端にはシャワーヘッドなどがつながっていてもよい。また、図1には示していないが、給湯機13は風呂釜の機能も備えていてもよい。すなわち、給湯機13で加熱した湯を浴槽11のバスアダプター28から浴槽11内に落とし込む湯張り機能や、浴槽11内の湯を循環させて追い焚きを行なう追い焚き機能、浴槽11内の湯温をほぼ一定温度に保つ保温機能、浴槽11内の水位をほぼ一定高さに保つ保水機能なども備えていてもよい。
【0023】
浴槽洗浄ユニット12は、浴槽11の底面などに取り付けられた洗浄ノズル29を備えており、洗浄ノズル29には、バイパス路19との合流点とカラン14との中間において出湯路18から分岐された洗浄水供給管30が接続されている。よって、浴槽洗浄ユニット12と給湯機13とは、洗浄水供給管30によって洗浄水の給水経路がつながっている。洗浄水供給管30には、給湯機13側から順に逆止弁31、洗浄水供給管30を開閉するための洗浄ユニット開閉弁32が設けられている。
【0024】
浴槽洗浄ユニット12は、洗剤供給部を有している。すなわち、浴槽洗浄ユニット12は、浴槽洗浄用の洗剤34を貯留しておくための洗剤タンク35を備えており、一方、洗浄水供給管30の途中にはベンチュリー管36が設けられている。洗剤タンク35の底面に設けられた洗剤供給口には洗剤供給管37の一端が接続されており、他端はベンチュリー管36の側面でベンチュリー管36の内部に向けて開放されている。洗剤供給管37には、電磁開閉弁又は流量調節弁からなる洗剤供給弁38が設けられている。なお、洗剤タンク35には、上面の蓋39をあければ洗剤34を供給することができる。浴槽11底面の排水口に接続されている排水管40には、排水口を開閉するための排水電磁弁41が設けられている。
【0025】
浴槽洗浄ユニット12及び給湯機13は、それぞれ浴槽洗浄ユニット12を制御するためのコントローラ42と、給湯機13を制御するためのコントローラ43を有している。両コントローラ42、43にはリモコン27が接続されており、リモコン27にはカラン14から出湯される湯の温度を調整する機能のほか、浴槽洗浄運転を開始させるための洗浄運転スイッチ44が設けられている。
【0026】
図2は浴槽洗浄ユニット12のコントローラ42の構成を示すブロック図である。コントローラ42はマイコン(CPU)やメモリによって構成されており、機能的には判定処理部45、タイマ46、他栓判定処理手段47よりなる。コントローラ42は、リモコン27の洗浄運転スイッチ44からオン信号を受け取ると、排水電磁弁41、熱源流量調節弁20、洗浄ユニット開閉弁32、洗剤供給弁38などを制御しながら、後述のようにして浴槽洗浄運転を行なう。特に、他栓判定処理手段47は、判定処理部45を介して熱源流量調節弁20を制御することにより給湯機13から洗浄水供給管30に流れる流量が所定流量Qoとなるように調整した後、熱源水量センサ21によって給湯機13の流量(上水道から流入する水の流量)Qnを監視することにより他栓(カラン14)の使用を監視している。そして、他栓使用を検知した場合には、洗浄動作やすすぎ動作を中断させ、洗浄不良が起きないようにしている。」

(2c)「【実施例3】
【0051】
次に、実施例3による浴槽洗浄装置について説明する。実施例3の浴槽洗浄装置は、図5に示した実施例2の浴槽洗浄装置と同じ構成を有しているので、実施例3の浴槽洗浄装置の構成は図示を省略する。同様に、実施例3における浴槽洗浄ユニット12のコントローラ42の構成も、図6に示した実施例2のコントローラ42と同じであるので、図示を省略する。
【0052】
図9、図10及び図11は、実施例3の浴槽洗浄装置における浴槽洗浄運転の動作を表わしたフロー図である。図9、図10及び図11に示すフロー図も、図3及び図4に示した実施例1のフロー図と同じ処理については同一のステップ番号を付している。図9、図10及び図11に示した実施例3のフロー図で実施例1の処理と異なっている点は、図3及び図4のステップS11とS19に相当する部分である。以下、実施例3における浴槽洗浄運転を説明する。
【0053】
ステップS1?S6については、実施例1の場合と同様である。浴槽11内の残り湯が排水された後、タイマ46がカウントを開始して洗浄動作を開始すると(ステップS7)、洗浄ユニット開閉弁32を開く(ステップS8)。ついで、熱源水量センサ21の計測値Qnをフィードバックさせながら熱源流量調節弁20を制御し、上水道から入水路17に流入する水の流量が所定流量Qoとなるように調整する(ステップS9)。つぎに、洗剤供給弁38を開いて(ステップS10)洗浄水供給管30を流れる水に洗剤34を混入させ、洗剤34を含んだ洗浄水を洗浄ノズル29から噴射させる。
【0054】
こうして洗浄動作を開始した後、洗浄ユニット水量センサ33によって洗浄水供給管30に流れる水の流量がほぼQoに保たれているか監視する(ステップS41)。すなわち、洗浄ユニット水量センサ33で計測されている流量Qsが、所定流量Qoに対して、
Qo-δ≦Qs≦Qo+δ …(1)式
を満たしているかを監視している。ここで、δは洗浄ユニット水量センサ33の計測誤差や洗浄水供給管30を流れる水の自然な変動量などを考慮して決められている。
【0055】
洗浄ユニット水量センサ33の計測流量Qsが上記(1)式を満たさなくなった場合には、カラン14が開かれたと判断される。よって、その場合には洗浄ユニット水量センサ33の計測値Qsを熱源流量調節弁20にフィードバックさせることにより、洗浄水供給管30に流れる流量Qsが上記(1)式の範囲内となるように熱源流量調節弁20を制御する(ステップS42)。
【0056】
こうして、洗浄水供給管30に流れる水の流量がほぼQoとなるように再調整された場合(ステップS43でYESの場合)には、カラン14が開かれていても洗浄動作に支障がないので、そのまま洗浄動作を継続する。
【0057】
これに対し、熱源流量調節弁20を調整しても洗浄水供給管30に流れる水の流量がほぼQoにならない場合(ステップS43でNOの場合)には、タイマ46のカウントを一時停止すると共に洗浄ユニット開閉弁32と洗剤供給弁38を一時的に閉じて洗浄動作を中断する(ステップS12、S13)。洗浄動作を中断した場合には、熱源水量センサ21の計測値Qnを監視して(ステップS14)カラン14が閉じられるのを待つ。熱源水量センサ21の計測値Qnがほぼゼロとなってカラン14が閉じられたと判断したら、一時停止していたタイマ46のカウントを再開する(ステップS15)。ついで、洗浄ユニット開閉弁32と洗剤供給弁38を再度開くと共に、熱源水量センサ21の計測流量がQoとなるように熱源流量調節弁20を調整し直し(ステップS8?S10)、洗浄動作を再び継続する。」

上記記載事項(2a)?(2c)及び図面の記載からみて,刊行物2には,次の発明が記載されているものと認められる。
「浴槽に取り付けられた洗浄ノズル29に接続する洗浄水供給管30を上水道からの水を熱交換加熱してカラン14で使用される給湯機13の出湯路18に接続し,出湯路18から供給される湯水に洗剤を混合した洗剤液を上記洗浄ノズル29から浴槽内に向けて噴射させる洗剤動作と,上記湯水を上記洗浄ノズル29から浴槽内に向けて噴射させるすすぎ動作とを含む浴槽洗浄運転を行う浴槽自動洗浄システムにおいて,
洗浄水供給管30には,洗浄水供給管30の流路を開閉するための洗浄ユニット開閉弁32と洗浄水供給管30を流れる湯水の流量を計測する洗浄ユニット水量センサ33が設けられ,
洗浄ユニット水量センサ33の検出値に基づいてカラン14が開かれたと判断された場合には,上水道から流入する水の流量を調整するための熱源流量調節弁20を制御して洗浄ユニット水量センサ33の流量が浴槽洗浄運転に必要な流量となるようにして,カラン14の使用と浴槽洗浄運転を同時に行うように制御し,
熱源流量調節弁20を制御しても洗浄ユニット水量センサ33の流量が浴槽洗浄運転に必要な流量とならない場合は,洗浄ユニット開閉弁32を閉じて洗浄動作を中断し,洗浄動作を中断した場合には,給湯機13において上水道から流入される水量を計測する熱源水量センサ21の計測値を監視して,この熱源水量センサ21の計測値がほぼゼロになったら,洗浄ユニット開閉弁32を開いて洗浄動作を再び継続する浴槽自動洗浄システム。」(以下,「刊行物2記載の発明」という。)


第4 当審の判断
1.本願発明と刊行物1記載の発明との対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,
刊行物1記載の発明の「自動洗浄浴槽」は,本願発明の「浴槽自動洗浄システム」に相当しており,以下同様に,
「洗浄ノズル4a,すすぎノズル4b」は「洗浄ノズル」に,
「洗浄配管18a,すすぎ配管18b及び洗浄管」は「洗浄管」に,
「給湯回路30」は「熱源機」に,
「カラン41等」は「給湯栓」に,
「洗浄モード」は「洗剤洗浄工程」に,
「すすぎモード」は「すすぎ工程」に,
「電磁弁82」は「開閉弁」に,
「水量サーボ弁65」は「水量制御弁」に,
「水量センサ81」は「水量センサ」に,
それぞれ相当している。

そして,刊行物1記載の発明の「水量センサ81の検出値に基づいて,カラン41等の他栓の使用を検知した場合には,浴槽洗浄運転を待機させる」制御と,
本願発明の「給湯栓が開かれ他栓使用されることにより,水量センサの計測流量が浴槽洗浄運転に必要な流量として設定される洗浄流量未満となった場合は,水量制御弁の開度を大きくして水量センサの計測流量が洗浄流量となるときは他栓使用と浴槽洗浄運転を同時に行うように制御」し,「水量制御弁を最大開度にしても水量センサの計測流量が洗浄流量未満であるときは開閉弁を閉じて浴槽洗浄運転を待機させ,この浴槽洗浄運転を待機している間は,熱源機において上水道から流入される水の流量を計測するために設けられた熱源水量センサの計測流量を監視して,この熱源水量センサの計測流量が設定流量未満に減少した時点で,開閉弁を開いて浴槽洗浄運転を再開させて他栓使用と浴槽洗浄運転を同時に行わせるように制御」し,「設定流量は,他栓使用されていても浴槽洗浄に必要な最小限の流量の湯又は水が洗浄管に供給できるようになる給湯栓での湯又は水の使用量」とするという制御は,
ともに,「水量センサの計測流量に基づいて,他栓の使用を検知した場合には,浴槽洗浄運転に支障が無いように制御する」という点において共通している。

したがって,両者は,以下の点で一致している。
「浴槽内に設けた洗浄ノズルに接続する洗浄管を上水道からの水を熱交換加熱して給湯栓で給湯使用される熱源機に接続し,上記熱源機側から供給される湯又は水に洗剤を混合した洗剤液を上記洗浄ノズルから浴槽内に向けて噴射させる洗剤洗浄工程と,上記湯又は水を上記洗浄ノズルから浴槽内に向けて噴射させるすすぎ工程とを含む浴槽洗浄運転を行う浴槽自動洗浄システムにおいて,
上記洗浄管には,洗浄管の流路を開閉するための開閉弁と,洗浄管を流れる湯又は水の流量を設定するための水量制御弁と,洗浄管を流れる湯又は水の流量を計測するための水量センサとが設けられ,
水量センサの計測流量に基づいて,他栓の使用を検知した場合に,浴槽洗浄運転に支障が無いように制御する制御手段を備える,
浴槽自動洗浄システム。」

そして,以下の点で相違している。
(相違点)
水量センサの計測流量に基づいて,他栓の使用を検知した場合に,浴槽洗浄運転に支障が無いようにする制御が,
本願発明は,
「給湯栓が開かれ他栓使用されることにより,水量センサの計測流量が浴槽洗浄運転に必要な流量として設定される洗浄流量未満となった場合は,水量制御弁の開度を大きくして水量センサの計測流量が洗浄流量となるときは他栓使用と浴槽洗浄運転を同時に行うようにし,
水量制御弁を最大開度にしても水量センサの計測流量が洗浄流量未満であるときは開閉弁を閉じて浴槽洗浄運転を待機させ,この浴槽洗浄運転を待機している間は,熱源機において上水道から流入される水の流量を計測するために設けられた熱源水量センサの計測流量を監視して,この熱源水量センサの計測流量が設定流量未満に減少した時点で,開閉弁を開いて浴槽洗浄運転を再開させて他栓使用と浴槽洗浄運転を同時に行わせるようにし,
上記設定流量は、他栓使用されていても浴槽洗浄に必要な最小限の流量の湯又は水が洗浄管に供給できるようになる給湯栓での湯又は水の使用量である」制御であるのに対して,
刊行物1記載の発明は,
「水量センサ81の検出値に基づいて,カラン41等の他栓の使用を検知した場合には,浴槽洗浄運転を待機させる」制御であって,水量制御弁の開度を大きくするなどして他栓使用と浴槽洗浄運転を同時に行うものではなく,また,浴槽洗浄運転を待機させた後にどのような制御を行うのかが明らかではない点。

2.相違点についての判断
刊行物2記載の発明の「洗浄ユニット水量センサ33の検出値に基づいてカラン14が開かれたと判断された場合」は上記相違点に係る本願発明の構成の「給湯栓が開かれ他栓使用されることにより,水量センサの計測流量が浴槽洗浄運転に必要な流量として設定される洗浄流量未満となった場合」に実質的に相当している。
また,本願発明の「水量制御弁の開度を大きくして水量センサの計測流量が洗浄流量となるときは他栓使用と上記浴槽洗浄運転を同時に行うように制御」し,「水量制御弁を最大開度にしても水量センサの計測流量が洗浄流量未満であるときは開閉弁を閉じて上記浴槽洗浄運転を待機させ」る構成と,刊行物1記載の発明の「上水道から流入する水の流量を調整するための熱源流量調節弁20を制御して洗浄ユニット水量センサ33の流量が浴槽洗浄運転に必要な流量となるようにしてカラン14の使用と浴槽洗浄運転を同時に行うように制御し,熱源流量調節弁20を制御しても洗浄ユニット水量センサ33の流量が浴槽洗浄運転に必要な流量とならない場合は,洗浄ユニット開閉弁32を閉じて洗浄動作を中断」する構成とは,制御する弁は異なるものの,「弁の開閉制御により水量センサの計測流量が洗浄流量となるときは他栓使用と浴槽洗浄運転を同時に行うように制御し,弁を最大開度にしても水量センサの計測流量が洗浄流量未満であるときは開閉弁を閉じて浴槽洗浄運転を待機させる構成」においては共通している。

そして,刊行物2記載の発明の「洗浄動作を中断した場合には,給湯機13において上水道から流入される水量を計測する熱源水量センサ21の計測値を監視して,この熱源水量センサ21の計測値がほぼゼロになったら,洗浄ユニット開閉弁32を開いて洗浄動作を再び継続する」構成と,本願発明の「この浴槽洗浄運転を待機している間は,熱源機において上水道から流入される水の流量を計測するために設けられた熱源水量センサの計測流量を監視して,この熱源水量センサの計測流量が設定流量未満に減少した時点で,開閉弁を開いて浴槽洗浄運転を再開させて他栓使用と浴槽洗浄運転を同時に行わせるように制御し,設定流量は,他栓使用されていても浴槽洗浄に必要な最小限の流量の湯又は水が洗浄管に供給できるようになる給湯栓での湯又は水の使用量である」という構成とは,浴槽洗浄運転を再開させる基準となる設定流量に違いはあるが,共に「浴槽洗浄運転を待機している間は,熱源機において上水道から流入される水の流量を計測するために設けられた熱源水量センサの計測流量を監視して,この熱源水量センサの計測流量が設定流量未満に減少した時点で,開閉弁を開いて浴槽洗浄運転を再開させ」るという点において,共通している。

つまり,上記相違点に係る本願発明の構成は,浴槽洗浄に必要な湯又は水を洗浄管に供給できるようするために制御する弁の位置,及び,浴槽洗浄運転を再開させる基準となる設定流量に違いはあるものの,その主たる技術思想は,刊行物2記載の発明として開示されており,公知である。

そして,上記刊行物2記載の発明として開示されている上記本願発明と共通する技術思想を,刊行物1記載の発明に採用することは,当業者が容易に想到できることである。

ここで,上記のとおり,浴槽洗浄に必要な湯又は水を洗浄管に供給できるようするために制御する弁の位置,及び,浴槽洗浄運転を再開させる基準となる設定流量に違いがあるので,その点についてさらに検討する。

制御する弁の位置は,本願発明の弁が「洗浄管に設けられた水量制御弁」であるのに対して,刊行物2記載の発明の弁が「上水道から流入する水の流量を調整するための熱源流量調節弁20」である点で相違しているが,両者共に,洗浄管を流れる湯又は水の流量を設定するために制御されている。そして,刊行物1記載の発明は,洗浄管を流れる湯又は水の流量を設定するために「洗浄管に設けられた水量制御弁」を備えるものであるから,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の技術思想を採用するに際して,制御する弁を「洗浄管に設けられた水量制御弁」とすることは,当業者が適宜なし得た設計事項である。
浴槽洗浄運転を再開させる基準となる設定流量は,本願発明の設定流量が「他栓使用されていても浴槽洗浄に必要な最小限の流量の湯又は水が洗浄管に供給できるようになる給湯栓での湯又は水の使用量」であって,それに伴って,浴槽洗浄運転を再開させて他栓使用と浴槽洗浄運転を同時に行わせるように制御されるものであるのに対して,刊行物2記載の発明の設定流量が「ほぼゼロ」であって,それに伴って,浴槽洗浄運転を再開させたときには,他栓使用と浴槽洗浄運転を同時に行わせてはいないものである点で相違しているが,設定流量をどの程度とするかは,使用する給湯機の能力や,洗浄運転が不安定(他栓が使用している流用が少し増加することにより浴槽洗浄運転が頻繁に停止する可能性がある。)となることよりもできるだけ早い再開を優先するか,洗浄運転の安定した再開を優先するか等の条件に基づいて,当業者が適宜決定すべき設計事項であるから,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の技術思想を採用するに際して,浴槽洗浄運転を再開させる基準となる設定流量を「他栓使用されていても浴槽洗浄に必要な最小限の流量の湯又は水が洗浄管に供給できるようになる給湯栓での湯又は水の使用量」とすることは,当業者が適宜なし得た設計事項である。

以上のとおりであるから,上記相違点は,刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の発明から当業者が容易になし得たものである。

そして,本願発明全体の効果は,刊行物1,2記載の発明から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができない。
したがって,本願発明は,刊行物1,2記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1,2記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願は,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-13 
結審通知日 2012-01-17 
審決日 2012-02-03 
出願番号 特願2008-55261(P2008-55261)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 聡  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 宮崎 恭
土屋 真理子
発明の名称 浴槽自動洗浄システム  
代理人 宮崎 栄二  

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