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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04D
管理番号 1254516
審判番号 不服2010-20916  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-16 
確定日 2012-03-29 
事件の表示 特願2005-333065「外装構造」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月 7日出願公開、特開2007-138526〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成17年11月17日の出願であって,平成22年6月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年9月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同時に手続補正がなされたものである。その後,当審において平成23年8月30日付けで,前記手続補正を却下し,同日付で拒絶理由通知を行ったところ,同年11月1日受付で意見書が提出されるとともに,同日受付で手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成23年11月1日受付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の,請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下,「本願発明」という。)

「屋根下地上に支持部材を介して太陽電池モジュールを取り付ける外装構造において,
前記太陽電池モジュールは,該太陽電池モジュールの棟側端部裏面部を前記支持部材の支持部に支持する際の接触面保護,及び該太陽電池モジュールの棟側端部表面部を前記支持部材の当接部に当接する際の接触面保護を図るために,前記棟側端部裏面部及び前記棟側端部表面部に保護枠体が覆設され,
前記支持部材は,太陽電池モジュールの軒側端部が載置される棟側に突出状の載置部と,前記保護枠体が覆設された太陽電池モジュールの棟側端部が挿入可能な開口部を有する空間部とを有し,
桁行き方向に配設した上段側の前記支持部材の前記支持部を基点として作用して前記保護枠体を介して前記棟側端部裏面部が支持され,上段側の前記支持部材の前記当接部に前記基点への作用に対する反作用として前記保護枠体を介して前記棟側端部表面部が当接されると共に,当該太陽電池モジュールの棟側端部が前記空間部内に位置し,当該太陽電池モジュールの軒側端部が下段側の支持部材の前記載置部上に載置されていることを特徴とする外装構造。」


第3 引用刊行物記載の発明
刊行物1:特開2001-140425号公報
刊行物2:特開平1-244057号公報

(1)刊行物1
当審の拒絶の理由に引用した,本願の出願日前に頒布された上記刊行物1には,図面とともに次のことが記載されている。

(1a)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,屋根用パネル(特に太陽光発電パネル)を重ね葺きする場合に好適な屋根用パネルの支持金具と該支持金具を用いた屋根施工方法に関する。」
(1b)「【0020】【発明の実施の形態】以下,添付図面に従って本発明に係る屋根用パネルの支持金具と該支持金具を用いた屋根施工方法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0021】図1は,太陽光発電システムが導入された建物10の斜視図であり,図1中符号12は切妻屋根,14は切妻屋根12の棟に沿って配置された棟屋根用パネル,16は屋根用パネルである太陽光発電パネル,18は支持金具,20は太陽光発電パネル16及び支持金具18から構成された屋根用パネルユニット,22は桁行き方向で隣接する太陽光発電パネル16の間の隙間をシールする目地部材である。」
(1c)「【0025】ところで,本実施の形態の支持金具18は,図4,図5に示すようにアルミ等の金属で作られた断面略S字形状の金具本体38を有し,この金具本体38の所定の位置にシール部材(第1シール部材)40,及びシール部材(第2シール部材)42が取り付けられて構成されている。」
(1d)「【0026】金具本体38は,主として棟側挟持部24,及び軒側挟持部26から構成され,これらの棟側挟持部24及び軒側挟持部26は,その長手方向寸法が,太陽光発電パネル16の棟側端部16A及び軒側端部16Bの長手方向寸法と略同一寸法に形成されている。本実施の形態では,棟側挟持部24と軒側挟持部26とを一体成形して金具本体38を製造したので,簡単に金具本体38を製造することができる。なお,棟側挟持部24と軒側挟持部26とを別体に成形し,これらを連結して金具本体38を製造してもよい。」
(1e)「【0027】軒側挟持部26は,軒側端部16Bの表面を支持する軒側表面支持部54と,軒側端部16Bの裏面を支持する軒側裏面支持部56とが軒側連結部58を介して連結された断面逆コ字状に形成されている。この軒側表面支持部54と軒側裏面支持部56との間の隙間に,軒側端部16Bがシール部材60を介して嵌入されることにより,屋根用パネルユニット20が構成されている。即ち,屋根用パネルユニット20は,支持金具18の軒側挟持部26で軒側端部16Bを挟持させることにより構成される。」
(1f)「【0028】シール部材60は,ゴム等の弾性部材で成形されるとともに,軒側挟持部26の長手方向長さと略同一の長さに形成されている。また,シール部材60は,軒側裏面支持部56に密着する部分にフィン62,62…が一体成形されている。このシール部材60は,屋根用パネルユニット20の組立時において,太陽光発電パネル16の軒側端部16Bに予め嵌入されている。この状態でシール部材60を軒側挟持部26に嵌入すると,フィン62,62…が軒側裏面支持部56に密着される。これにより,フィン62の密着力が向上され,棟側の太陽光発電パネル16と支持金具18との連結部の防水性が向上される。」
(1g)「【0029】一方,棟側挟持部24は,棟側端部16Aの表面をシール部材40を介して支持する棟側表面支持部44と,棟側端部16Aの裏面をシール部材42を介して支持する棟側裏面支持部46とが棟側連結部48を介して連結された断面略コ字状に形成される。」
(1h)「【0030】シール部材40は,シール部材60と同様にゴム等の弾性部材で成形されるとともに,棟側挟持部24の長手方向長さと略同一の長さに形成されている。また,シール部材40は,板状に形成された基部64,複数本(本例では3本)のフィン(ひれ部)66,66…,及び緩衝部68から形成され,基部64の前後縁部65,65が棟側表面支持部44に形成されたフック部45に嵌入されて棟側表面支持部44に装着されている。」
(1i)「【0031】フィン66,66…は,太陽光発電パネル16を矢印Aで示す真っ直ぐな方向(棟側表面支持部44の面と略平行な方向)に挿入することを許容するために,その挿入方向に傾斜した方向に形成されている。これにより,棟側端部16Aをフィン66,66…に向けて矢印A方向に挿入していくと,フィン66,66…が棟側端部16Aに押されて挿入方向に弾性変形する。そして,棟側端部16Aが図4上実線で示す規定の位置まで挿入された時に,フィン66,66…の弾性復元力によってフィン66,66…が太陽光発電パネル16の表面に密着される。これにより,太陽光発電パネル16の表面と支持金具18との連結部の防水性が向上される。なお,棟側端部16Aが規定の位置を越えて挿入されると,棟側端部16Aの先端部がシール部材40の緩衝部68に衝突し,その衝撃力が吸収される。よって,太陽光発電パネル16は損傷し難い。」
(1j)「【0032】シール部材42は,シール部材60,40と同様にゴム等の弾性部材で形成されるとともに,棟側挟持部24の長手方向長さと略同一の長さに形成されている。また,シール部材42は,図5の如く板状に形成された基部70,中空に形成された密着部72,及び突起状の補強部74から形成され,基部70が棟側裏面支持部46に形成された挿入用溝47に嵌入されて棟側裏面支持部46に装着されている。
【0033】密着部72は,棟側挟持部24の長手方向に沿って連続して形成される。また,密着部72は,太陽光発電パネル16の板厚のばらつきを吸収するために,太陽光発電パネル16の自重で十分に潰れる弾性力を有している。これにより,太陽光発電パネル16の裏面が密着部72に載置されると,密着部72は潰れる方向に弾性変形され,その弾性復元力によって太陽光発電パネル16の裏面に密着される。」
(1k)「【0038】次に,前記の如く構成された支持金具18によって屋根を施工する手順について説明する。
【0039】まず,太陽光発電パネル16の軒側端部16Bに,支持金具18を軒側挟持部26を介して取り付けることにより太陽光発電パネルユニット20を組み立てて,屋根の面積に対応した枚数の太陽光発電パネルユニット20,20…を用意する。
【0040】次に,太陽光発電パネルユニット20における支持金具18の棟側挟持部24が軒側に向くように,棟屋根用パネル14の長手方向に沿って最上段の複数枚の太陽光発電パネルユニット20,20…を配設する。そして,これらの太陽光発電パネルユニット20,20…の支持金具18,18…を,屋根のスペーサ78を介して木ねじ90(図4参照)で野地板91に固定する。なお,スペーサ78は支持金具18に予め貼り付けておいてもよい。
【0041】次いで,最上段の複数枚の太陽光発電パネルユニット20,20…の各支持金具18の各棟側挟持部24に,2段目の太陽光発電パネルユニット20における太陽光発電パネル16の棟側端部16Aを差し込んで挟持させるとともに,棟側端部16Aをシール部材40,42に密着させ,最上段の太陽光発電パネルユニット20と2段目の太陽光発電パネルユニット20を連結する。
【0042】そして,2段目の太陽光発電パネルユニット20における支持金具18の棟側挟持部24をスペーサ78に載置し,この支持金具18をスペーサ78を介して野地板91に木ねじ90で固定する。上記の手順を,屋根の最下段まで繰り返し実施する。これにより,図1に示した太陽光発電パネル16製の屋根が構築される。」
(1l)図5には,支持金具18は,太陽光発電パネル16の棟側端部16Aが挿入できる開口を有する空間を有していることが記載されている。

そうすると,上記(1a)?(1l)及び図面の記載から,刊行物1には,
「野地板91上に支持金具18を介して太陽光発電パネル16を取り付ける屋根において,
前記支持金具18は,
前記太陽光発電パネル16の軒側端部16Bが挟持される軒側表面支持部54と軒側裏面支持部56とからなる軒側挟持部26と,
前記太陽光発電パネル16の棟側端部16Aが挿入できる開口を有する空間とを有し,
前記支持金具18の棟側裏面支持部46にシール部材42が取り付けられ,前記支持金具18の棟側表面支持部44にフィン66と棟側連結部48に緩衝部68を有するシール部材40が取り付けられ,
桁行き方向に配列した上段側の前記支持金具18の前記棟側裏面支持部46に前記シール部材42を介して前記棟側端部16Aの裏面が支持され,
上段側の前記支持金具18の前記棟側表面支持部44に前記シール部材40を介して前記太陽光発電パネル16の前記棟側端部16Aの表面が支持されると共に,
その棟側端部16Aが前記空間内に位置し,
前記太陽光発電パネル16の前記軒側端部16Bが下段側の支持金具18の軒側表面支持部54と軒側裏面支持部56からなる軒側挟持部26に挟持されている
屋根。」の発明が記載されていると認められる(以下,「刊行物1記載の発明」という。)。

(2)刊行物2
また,当審の拒絶の理由に引用した,本願の出願日前に頒布された上記刊行物2には,図面とともに次の記載がある。

(2a)「〔産業上の利用分野〕この発明は,棟側から軒側に向って面板を葺く横葺き屋根に用いる吊子およびこの吊子を用いた横葺き屋根に関するものである。」(1頁右下欄19行?2頁左上欄2行)
(2b)「第1図,第2図において,(1)は鋼板,ステンレス板のような金属板の1枚を曲げ加工して形成した吊子である。この吊子(1)は,基板(1a)の棟側端から直角に上方に立上り部(lb)が屈曲され,立上り部(lb)の上端から直角に軒側に棟側面板支持部(1c)が屈曲され,この面板支持部(lc)の軒側端から直角に下方に垂下部(ld)が屈曲され,垂下部(ld)の下端から直角に棟側に面板係止部(1e)が屈曲され,また基板(1a)の軒側端から直角に上方に起立部(1f)が屈曲され,起立部(1f)の上端からほぼ直角に軒側に軒側面板支持部(1g)が屈曲されている。」(3頁右上欄17行?左下欄9行)
(2c)「(2)はコンクリート屋根,垂木またはこれらの上に敷設した木毛板などの断熱材からなり,また屋根勾配を有する支持部材であり,支持部材(2)上の適所に吊子(1)の基板(1a)が全面的に支持され,基板(1a)の軒側端部が適宜の固定金具(6)によって支持部材(2)に固定されている。」(3頁左下欄16行?右下欄2行)
(2d)「(3)は塗装鋼板,銅板などの金属板からなる長尺の横葺き屋根板すなわち面板であり,面板(3)は下面の大部分に不燃性合板など強度が大きく遮音機能もある下地材(4)が接着剤(5)によって接着され,面板(3)の下地材(4)接着部から突出した軒側端部,棟側端部には,軒側,棟側係止部(3a),(3b)がそれぞれ形成されている。なお,(3c)は面板(3)の軒側端部から起立する起立部である。」(3頁右下欄3?11行)
(2e)「そして,基板(la)が支持部材(2)上に固定されている吊子(1)の面板支持部(1c)上に棟側の下地材(4)を介して棟側面板(3)が支持され,棟側面板(3)は軒側係止部(3a)が吊子(1)の垂下部(1d)および面板係止部(le)に抱持係止される。
また,第1図の鎖線に示すように,軒側面板(3)および軒側の下地材(4)の棟側端部を軒側斜め上方から吊子(1)の垂下部(ld)と起立部(1f)との間隔に通して基板(la)と垂下部(ld)および面係合部(1e)の間に挿入した後,軒側面板(3)および軒側の下地材(4)を水平に近づく第1図の実線に示すように回転させながら軒側に引き戻すことで,軒側面板(3)の棟側端部に起立部(3c)を介して設けた棟側係止部(3b)が,吊子(1)の面板係止部に棟側面板(3)の軒側係止部(3a)を介して支持係合され,この軒側係止部(3a)に引掛け係止されるとともに,吊子(1)の軒側面板支持部(1g)上に軒側面板(3)が軒側の下地材(4)を介して支持される。さらに,棟側の下地材(4)の軒側端部と軒側の下地材(4)の棟側端部とは上下方向に間隙を設けて重ね合され,下地材(4)と前記支持部材(2)との間には空間部(7)が全面にわたって形成される。前述のよにして,棟側から軒側に向い多数の面板(3)が横葺きされる。」(3頁右下欄12行?4頁18行)


第4 当審の判断
1 本願発明と刊行物1記載の発明の対比
本願発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると,
刊行物1記載の発明の「野地板91」は,本願発明の「屋根下地」に相当し,以下同様に,「支持金具18」は「支持部材」に,「太陽光発電パネル16」は「太陽電池モジュール」に,「屋根」は「外装構造」に,「棟側裏面支持部46」は「支持部」に,「棟側表面支持部44」は「当接部」に,「軒側端部16B」は「軒側端部」に,「棟側端部16A」は「棟側端部」に,「開口」は「開口部」に,「空間」は「空間部」にそれぞれ相当し,
刊行物1記載の発明の「軒側表面支持部54と軒側裏面支持部56とからなる軒側挟持部26」と本願発明の「載置部」とは,太陽電池モジュールの軒側端部を支える「支え部」である点で一致するから,両者は,
「屋根下地上に支持部材を介して太陽電池モジュールを取り付ける外装構造において,
前記太陽電池モジュールは,該太陽電池モジュールの棟側端部裏面部を前記支持部材の支持部に支持され,該太陽電池モジュールの棟側端部表面部を前記支持部材の当接部に当接し,
前記支持部材は,太陽電池モジュールの軒側端部を支える棟側の支え部と,前記太陽電池モジュールの棟側端部が挿入可能な開口部を有する空間部とを有し,
桁行き方向に配設した上段側の前記支持部材の前記支持部に前記棟側端部裏面部が支持され,上段側の前記支持部材の前記当接部に前記棟側端部表面部が当接されると共に,当該太陽電池モジュールの棟側端部が前記空間部内に位置し,当該太陽電池モジュールの軒側端部が下段側の支持部材の支え部に支えられている外装構造。」である点で一致し,次の各点で相違する。

<相違点1>
本願発明は「太陽電池モジュールは,該太陽電池モジュールの棟側端部裏面部を前記支持部材の支持部に支持する際の接触面保護,及び該太陽電池モジュールの棟側端部表面部を前記支持部材の当接部に当接する際の接触面保護を図るために,前記棟側端部裏面部及び前記棟側端部表面部に保護枠体が覆設」され,棟側裏面部は支持部を保護枠体を介して支持され,棟側当接部表面部は保護枠体を介して当接されるのに対し,
刊行物1記載の発明は,支持部材(支持金具18)の支持部(棟側裏面支持部46)にシール部材42を装着し,前記支持部材の当接部(棟側表面支持部44)に緩衝部68を有するシール部材40を装着して太陽電池モジュールの棟側端部を支持しており,保護枠体がない点。

<相違点2>
本願発明は,太陽電池モジュールの棟側端部裏面部は,支持部を基点として作用して支持され,太陽電池モジュールの棟側端部表面部は,前記基点への作用に対する反作用として当接部に当接されるのに対して,
刊行物1記載の発明は,太陽電池モジュールの棟側端部裏面部は支持部を基点として作用して支持されているか,又,太陽電池モジュールの棟側端部表面部は基点への作用に対する反作用として当接されているかは,一応不明である点。

<相違点3>
本願発明の「支え部」は,「太陽電池モジュールの軒側端部が載置される棟側に突出状の載置部」であり,「太陽電池モジュールの軒側端部が下段側の支持部材の載置部上に載置されている」のに対し,
刊行物1記載の発明の「支え部」は,太陽電池モジュール(太陽光発電パネル16)の軒側端部(軒側端部16B)を挟持する軒側表面支持部54と軒側裏面支持部56とからなる軒側挟持部26であり,当該太陽電池モジュールの軒側端部が下段側の支持部材の軒側挟持部26に挟持されている点。

2 相違点についての判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
刊行物1記載の発明のシール部材40の緩衝部68は,太陽電池モジュールの棟側端部が衝突した際に衝撃力が吸収され太陽電池モジュールを損傷し難いものとし(刊行物1の上記(1i)(段落【0031】)参照),シール部材40はフィン66により太陽光発電パネル16の棟側端部16Aの表面に密着し(刊行物1の上記(1h)(段落【0030】),上記(1i)(段落【0031】)参照),シール部材42は密着部72により太陽光発電パネル16の棟側端部16A近傍の裏面に密着しているから(刊行物1の【図5】,上記(1j)(段落【0032】,段落【0033】)参照),刊行物1記載の発明のシール部材40及びシール部材42は,太陽光発電パネル16の棟側端部周辺を保護する機能を有しているとみることができる。
そもそも当接部等を保護するためにパネル端部に枠を設けることは当業者に周知な技術事項であり(必要であれば,特開昭61-69181号公報の第1ページ右下欄第14行?第17行及び第10図,特開2003-314009号公報の段落【0035】及び図1等参照。),例えば刊行物1においても,(1f)に記載されているように,軒側端部16Bはシール部材60に予め嵌入されており,この状態でシール部材60を軒側挟持部26に嵌入するから,シール部材60は枠を形成していると認められる。
そして,上記のように棟側端部16Aもシール部材により太陽光発電パネル16を保護しようとするのであるから,棟側端部16Aにおいて保護部材を,刊行物1記載の発明のシール部材40とシール部材42のように複数の部分でからなるものとするか,一体とした枠状として覆うものとするかは設計的事項であって,保護部材を枠として本願補正発明の相違点1に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことであり,このように構成したことによる格別の作用効果も認められない。

<相違点2について>
刊行物1の記載事項(1i)の「フィン66,66…の弾性復元力によってフィン66,66…が太陽光発電パネル16の表面に密着される。」,(1j)の「太陽光発電パネル16の裏面が密着部72に載置されると,密着部72は潰れる方向に弾性変形され,その弾性復元力によって太陽光発電パネル16の裏面に密着される。」との記載及び刊行物1の図4,5からみて,棟側裏面支持部46はシール部材42を介して太陽光発電パネル16を押し上げ,棟側表面支持部44はシール部材40のフィン66を介して太陽光発電パネル16を押し下げていると認められるから,刊行物1記載の発明は,本願発明の,棟側裏面部は支持部を「基点として作用して」支持され,棟側当接部表面部は「前記基点への作用に対する反作用として」当接されるとの構成に相当する構成を有していると認められる。
そうすると,相違点2は実質的に相違点ではない。

<相違点3について>
刊行物2の横葺き屋根における面板(3)は,刊行物1記載の発明の軒側裏面支持部56に相当する棟側面板支持部(1c)に載置されているものと認められる。そして,刊行物1記載の発明の太陽光発電パネルと刊行物2記載の横葺き屋根は共に屋根を葺く外装構造である点で共通するから,刊行物1記載の発明に,刊行物2記載の技術を適用して軒側端部を載置することは,当業者であれば容易になし得たことである。また,本願発明の「載置部」は,「棟側に突出状」となっているが,機能的には,太陽光発電パネル16の軒側端部を支持するものであればよく,このように構成することに格別困難性はない。そして,このように構成したことによる格別の作用効果も認められない。

平成23年11月1日受付の意見書において,請求人は刊行物2の技術を刊行物1記載の発明への適用することに関し,3,(1)で,「本願発明1は、支持部材の空間部に保護枠体が覆設された棟側端部を斜め上方から挿入し、保護枠体が覆設された棟側端部裏面部が支持されている支持部を基点として回動することにより、保護枠体が覆設された棟側端部表面部を当接部に当接させることにより、相違点2に係る構成、つまり「桁行き方向に配設した上段側の前記支持部材の前記支持部を基点として作用して前記保護枠体を介して前記棟側端部裏面部が支持され、上段側の前記支持部材の前記当接部に前記基点への作用に対する反作用として前記保護枠体を介して前記棟側端部表面部が当接される」構成を備えているものです。・・・刊行物1の太陽光発電パネルは,矢印Aで示す真っ直ぐな方向に挿入することを想定しているものであって,斜め上方から挿入することは想定されていない。つまり,斜め上方から挿入しようとすると,金具本体38(金具本体38の引き出し線矢印の下部)は図示するように,端部が鋭角に形成されているので,太陽光発電パネル16の表面を破損する恐れがあり,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用するに際しては阻害事由が存在し,適用することはできない。」と主張している。
しかしながら,本願発明は斜め上方から挿入することが特定されているものではなく,請求人の主張は当を得ていない。
仮に,「上段側の支持部材の支持部を基点として作用して棟側端部裏面部が支持され,上段側の支持部材の当接部に基点への作用に対する反作用として棟側端部表面部が当接される」との構成が斜め上方から挿入することによって生ずる構成であるとして検討すると,刊行物1の図4,5には確かにパネルと平行の矢印が記載されているが,その説明としては段落【0041】に「太陽光発電パネル16の棟側端部16Aを差し込んで挟持させるとともに,棟側端部16Aをシール部材40,42に密着させ,」とあるだけで,まっすぐに差し込むことも,矢印の方向に差し込むことによる作用効果が記載されているものでもない。そして,刊行物1の図4,5等からみて,当該端部の位置および形状は斜め上方から挿入しようとする際に障害となるものとは認められず,刊行物2記載の発明を適用して,太陽光発光パネルを斜め上方から挿入することに阻害要因はない。
したがって,請求人の主張は採用できない。

3 まとめ
したがって,本願発明は,刊行物1,2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。


第5 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-10 
結審通知日 2012-01-17 
審決日 2012-02-13 
出願番号 特願2005-333065(P2005-333065)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 土屋 真理子
宮崎 恭
発明の名称 外装構造  
代理人 特許業務法人 英知国際特許事務所  

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