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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E06B |
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管理番号 | 1254848 |
審判番号 | 不服2010-23692 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-10-21 |
確定日 | 2012-04-05 |
事件の表示 | 特願2005- 3040「複合サッシの障子」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月20日出願公開、特開2006-188927〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成17年1月7日の出願であって,平成22年7月9日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年10月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされると共に,同時に手続補正がなされた。 その後,平成23年10月17日付けで,当審において,平成22年10月21日付けの手続補正について補正の却下の決定をするとともに,拒絶理由を通知したところ,同年12月22日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明は,平成23年12月22日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。 「【請求項1】 建物開口部に設けられる枠体内に納められるものであって、上框と下框及び左右の縦框を方形状に框組みした框体の内部にガラス体を納めてなり、上記上框と下框及び縦框は室外側の金属框と該金属框の室内側露出面を覆う樹脂框とから構成された複合サッシの障子において、 上記上框と下框は内周面側に上記ガラス体を納めるガラス開口溝を有すると共に、外周側面に上記枠体に形成されるレールを跨ぐレール溝を有し、上記下框は前記レール溝内に戸車を備え、 上記上框と下框の金属框は上記ガラス開口溝の室外面と、上記レール溝の室内面及び室外面を構成し、上記上框と下框の樹脂框は上記ガラス開口溝の室内面を構成する断面板状のガラス溝構成部と、上記金属框により構成されるレール溝の室内面を重合状に覆う断面板状のレール溝構成部とを有すると共に、上記ガラス溝構成部の根元部に上記金属框に対する固定部を有し、上記樹脂框のレール溝構成部は上記金属框のレール溝の室内面外周側端部に係合してなり、 上記樹脂框のガラス溝構成部は上記レール溝構成部よりも厚肉状に形成されると共に、上記固定部近傍に中空部または肉厚部を有してなることを特徴とする複合サッシの障子。」(以下,「本願発明」という。) 第3 引用刊行物 (1)刊行物1 当審の拒絶理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開2002-161671号公報(以下,「刊行物1」という。)には,以下の記載がある。(下線は,当審にて付与。) (1a)「【0036】次に、(a)アルミ形材断熱障子5の代わりに、前記各框を、アルミ(非鉄金属)製の室外部材と、樹脂(断熱性部材)製の室内部材とから構成し、複層ガラスを組み込んだ(b)断熱複層障子6を(A)アルミ形材断熱窓枠2に組み込んだサッシ窓(引違い窓)200について、図3の縦断面図および図4の横断面図を参照して説明する。なお、以下の説明において前記サッシ窓100の各構成要素と同一あるいは相当構成要素には同一符号を付し、説明を省略あるいは簡略する。 【0037】窓枠2内に配置される(b)断熱複層障子6は、室外側に配置されて外側のレール16,18でガイドされる外障子6Aと、室内側に配置されて内側のレール17,19でガイドされる内障子6Bとを備えている。 【0038】これらの各障子6A,6Bは、上框61,62と、下框63,64と、左右の竪框(戸先框)65,66と、外召合せ框67および内召合せ框68とをそれぞれ四角枠状に組んで構成されている。そして、各框61?68の内周面には、複層ガラス29がガスケット30を介して嵌合されている。 【0039】各框61?66は、それぞれアルミ製の室外部材61A?66Aと、断熱性部材であるポリ塩化ビニル樹脂等の合成樹脂製の室内部材61B?66Bとで構成されている。 【0040】また、外障子6Aの外召合せ框67は、室内側に露出する部分が殆ど無いため、アルミ押出形材によって一体成形された外召合せ框57と同じものが用いられている。一方、内障子6Bの内召合せ框68は、アルミ製の室外部材68Aと、この室外部材68Aの室内露出面を被覆するように配置され、かつ断熱性部材であるポリ塩化ビニル樹脂等の合成樹脂製の室内部材68Bとで構成されている。」 (1b)【図3】 上記図3には,アルミ形材断熱窓枠2と断熱複層障子6とを組み合わせた引違い窓を示す縦断面図が記載されており,以下の点が認められる。 (ア)外障子6A及び内障子6Bの上框61,62と下框63,64の内周面側に複層ガラス29が嵌合される溝(以下「ガラス嵌合溝」という。)を有すると共に,外周側面に,上枠11,下枠12に形成されるレール16?19でガイドされるように跨ぐ溝(以下「ガイド溝」という。)を有し,下框63,64は,前記ガイド溝内に戸車32を備えている。 (イ)内障子6Bの上框62は,アルミ製の室外部材62Aと合成樹脂製の室内部材62Bとで構成されており,アルミ製の室外部材62Aはガラス嵌合溝の室外面とガイド溝の室外面及び室内面を構成し,合成樹脂製の室内部材62Bはガラス嵌合溝の室内面を構成する板状の部分とアルミ製の室外部材により構成されるガイド溝の室内面を覆う板状の部分を有している。 上記合成樹脂製の室内部材62Bはガラス嵌合溝の室内面を構成する部分の根元部とアルミ製の室外部材により構成されるガイド溝の室内面を覆う板状の部分の先端に上記アルミ製の室外部材62Aに対して係合する部分(以下,それぞれ「第1係合部」,「第2係合部」という。)を有してなり,両係合部の近傍には中空部が形成されている。 (ウ)内障子6Bの下框64は,アルミ製の室外部材64Aと合成樹脂製の室内部材64Bとで構成されており,アルミ製の室外部材64Aはガラス嵌合溝の室外面とガイド溝の室外面を構成し,合成樹脂製の室内部材64Bはガラス嵌合溝の室内面を構成する板状の部分とガイド溝の室内面を構成する部分を有している。 上記合成樹脂製の室内部材64Bは,ガラス嵌合溝の室内面を構成する板状の部分の根元部とガイド溝の室内面を構成する部分に上記アルミ製の室外部材64Aに対して係合する係合部(以下,それぞれ「第3係合部」,「第4係合部」という。)を有している。 これらの事項(1a),(1b)から,刊行物1には,内障子として,以下の発明が記載されているものと認められる。 「窓枠内に配置されるものであって,上框と下框と戸先框と内召合せ框とをそれぞれ四角枠状に組んで構成され,各框の内周面には,複層ガラスが嵌合されており,各框は,それぞれアルミ製の室外部材と,合成樹脂製の室内部材とで構成されている断熱複層障子において, 上框と下框の内周面側に複層ガラスが嵌合されるガラス嵌合溝を有すると共に,外周側面に,上枠,下枠に形成されるレールでガイドされるように跨ぐガイド溝を有し,下框は,前記ガイド溝内に戸車を備え, 上記上框のアルミ製の室外部材はガラス嵌合溝の室外面とガイド溝の室内面及び室外面を構成し,上記上框の合成樹脂製の室内部材はガラス嵌合溝の室内面を構成する板状の部分とアルミ製の室外部材により構成されるガイド溝の室内面を覆う板状の部分とを有し,合成樹脂製の室内部材はガラス嵌合溝の室内面を構成する部分の根元部にアルミ製の室外部材に対して係合する第1係合部を有し,上記ガイド溝の室内面を覆う板状の部分の先端に上記アルミ製の室外部材に対して係合する第2係合部を有し,第1係合部近傍に中空部が形成されてなり, 上記下框のアルミ製の室外部材はガラス嵌合溝の室外面とガイド溝の室外面を構成し,上記下框の合成樹脂製の室内部材はガラス嵌合溝の室内面を構成する板状の部分とガイド溝の室内面を構成する部分とを有し,合成樹脂製の室内部材はガラス嵌合溝の室内面を構成する部分の根元部にアルミ製の室外部材に対して係合する第3係合部を有し,ガイド溝の室内面を構成する部分に上記アルミ製の室外部材に対して係合する第4係合部を有してなる, 断熱複層障子。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。) (2)刊行物2 本願出願前に頒布された刊行物である,特開平10-317808号公報(以下,「刊行物2」という。)には,以下の記載がある。 (2a)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、窓枠が金属枠と、その金属枠の屋内側に露出する部分を覆う樹脂枠とからなり、かつ、障子の框が金属框と、その金属框の屋内側に露出する部分を覆う樹脂框とからなる複合サッシに関する。」 (2b)【図11】 上記図11には,大型障子に補強金具を取付ける場合の一例が示されており,以下の点が認められる。 (エ)障子の上枠h及び下枠sは,内周側面に二重ガラスg0,g1を嵌めるガラス嵌合溝30h,30sを有すると共に,外周側面にレールをまたぐレール嵌合溝を有している。 (オ)障子の下枠sは,金属框smと樹脂框spとで構成されており,金属框smはガラス嵌合溝の室外面とレール嵌合溝の室外面及び室内面を構成し,樹脂框spはガラス嵌合溝の室内面を構成する板状の部分と金属框smにより構成されるレール嵌合溝の室内面を覆う板状の部分を構成しており,レール嵌合溝の室内面を覆う板状の部分の端部は金属框smのレール嵌合溝の室内面の外周側端部に係合するような形状をしている。 第4 当審の判断 1.本願発明と刊行物1記載の発明との対比 刊行物1記載の発明と本願発明とを対比すると,刊行物1記載の発明の「断熱複層障子」は,本願発明の「複合サッシの障子」に相当しており,以下同様に, 「上框と下框と戸先框と内召合せ框」は「上框と下框及び左右の縦框」に, 「複層ガラス」は「ガラス体」に, 「アルミ製の室外部材」は「室外側の金属框」に, 「合成樹脂製の室内部材」は「金属框の室内側露出面を覆う樹脂框」に, 「ガラス嵌合溝」は「ガラス開口溝」に 「ガイド溝」は「レール溝」に,それぞれ相当している。 そして,本願発明の「断面板状」という形状は,刊行物1記載の発明の「板状」に相当するものである。 したがって,両者は,以下の点で一致している。 「建物開口部に設けられる枠体内に納められるものであって,上框と下框及び左右の縦框を方形状に框組みした框体の内部にガラス体を納めてなり,上記上框と下框及び縦框は室外側の金属框と該金属框の室内側露出面を覆う樹脂框とから構成された複合サッシの障子において, 上記上框と下框は内周面側に上記ガラス体を納めるガラス開口溝を有すると共に,外周側面に上記枠体に形成されるレールを跨ぐレール溝を有し,上記下框は前記レール溝内に戸車を備える複合サッシの障子。」 そして,以下の点で相違している。 (相違点1) 本願発明は,上框と下框の金属框はガラス開口溝の室外面と,レール溝の室内面及び室外面を構成し,上框と下框の樹脂框はガラス開口溝の室内面を構成する断面板状のガラス溝構成部と,上記金属框により構成されるレール溝の室内面を重合状に覆う断面板状のレール溝構成部とを有するのに対して,刊行物1記載の発明は,上框については,その金属框はガラス開口溝の室外面と,レール溝の室内面及び室外面を構成し,その樹脂框はガラス開口溝の室内面を構成する断面板状のガラス溝構成部と,上記金属框により構成されるレール溝の室内面を重合状に覆う断面板状のレール溝構成部とを有しているが,下框については,その金属框はガラス開口溝の室外面とレール溝の室外面を構成しているものの,レール溝の室内面を構成しているか否かが明確ではなく,その樹脂框についてはガラス開口溝の室内面を構成する板状の部分とガイド溝の室内面を構成する部分とを有するものである点。 (相違点2) 上記相違点1に関連して,本願発明は,上框と下框の樹脂框はガラス溝構成部の根元部に金属框に対する固定部を有し,上記樹脂框のレール溝構成部は金属框のレール溝の室内面外周側端部に係合してなり,上記固定部近傍に中空部または肉厚部を有してなるのに対して,刊行物1記載の発明は,上框の樹脂框については,本願発明と同様の上記構成を備えているが,下框については,金属框と樹脂框の構成が相違点1において相違しているために,下框の樹脂框のガラス溝構成部の根元部には金属框に対する固定部(刊行物1記載の発明における「第3係合部」)を有しているが,その他の点については異なっている点。 (相違点3) 相違点1,2に関連して,本願発明は,樹脂框のガラス溝構成部はレール溝構成部よりも厚肉状に形成されるのに対して,刊行物1記載の発明は,そのように形成されているか不明な点。 2.相違点についての検討 (相違点1について) 刊行物1記載の発明において,上框については,相違点1に係る本願発明の上下框の構成を備えるものである。 さらに,上記相違点1に係る本願発明の上下框の構成は,刊行物2の記載事項(2b)の事項(オ)に示されているように,公知の技術である。 そして,刊行物1記載の発明において,上框のみならず,下框についても上記公知の技術を採用して,上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。 (相違点2について) 刊行物1記載の発明において,上框については,相違点2に係る本願発明の上下樹脂框の構成を備えているように,上記相違点2に係る本願発明の上下樹脂框の構成は公知の構成である。 そして,刊行物1記載の発明において,上框の樹脂框のみならず,下框の樹脂框についても上記公知の構成を採用して,上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。 (相違点3について) 本願発明において,樹脂框のガラス溝構成部をレール溝構成部よりも厚肉状に形成することの技術的意味について検討するために,発明の詳細な説明をみると,「ガラス溝構成部42aは、ガラス開口溝45の室内面を樹脂材のみで構成するものであるため、ガラス体3をグレチャン7を介して挟持するための強度が必要である。ガラス溝構成部42aをレール溝構成部42bよりも肉厚状とすることにより、その強度を充分に確保することができる。」(段落【0027】)と記載されている。 つまり,樹脂框のガラス溝構成部は,それによりガラス体を挟持するものであるから,それに耐える強度を得るために厚肉状に形成するとしたものであって,金属框に重合状となっているため強度を必要としないレール溝構成部に比べて厚肉状に形成すると特定しているものの,レール溝構成部に比べて厚肉状であること自体には意味はない。 そして,樹脂框のガラス溝構成部及びレール溝構成部の厚さを,必要となる強度等の各種条件に応じて設定することは,当業者が適宜なし得る設計事項に過ぎず,刊行物1記載の発明において,下框の樹脂框をガラス溝構成部とレール溝構成部の構成として,断面板状という構成を採用した際に,上下框の各構成部を必要強度に応じてその厚さを設定することは,当業者が容易になし得た設計事項であり,その結果,樹脂框のガラス溝構成部をレール溝構成部よりも厚肉状に形成することは当業者が適宜なし得たことである。 3.本願発明の効果について 本願発明が,その上下框の構成等全体の構成によって,各刊行物から予測できない格別の効果を奏するとも認められない。 4.請求人の主張に対して 請求人は,平成23年12月22日の意見書において,樹脂框のガラス溝構成部をレール溝構成部よりも厚肉状に形成したことは,逆に言うとレール溝構成部をガラス溝構成部より簿肉状としたことは,樹脂の使用量を少なくしてコストダウンを図り,かつ,薄肉状であることでレール溝構成部を弾性変形しやすくできるものであって,技術的な意味があるものである旨,及び,刊行物1記載の発明の内障子の上框は換気框であるからレール溝構成部が板状であって,下框のレール溝構成部を板状とする動機付けは無い旨主張している。 しかしながら,樹脂框のレール溝構成部を断面板状とし,金属框のレール溝の室内面外周側端部に係合するように構成することは,刊行物1記載の発明の上框の他にも刊行物2に記載された下框に開示されている公知の技術であり,断熱性向上を優先しないのであれば,上框や下框の構成として普通に採用し得る構成である。 そして,該公知の技術を採用してレール溝構造部を形成するに際して,レール溝構造部の厚さは強度等を考慮して決定すべきものであって,厚さを必要以上に厚くしないことも自明のことであるし,また,樹脂框のガラス溝構成部の厚さを考慮する特別な理由もない。 つまり,樹脂框のガラス溝構成部の厚さとレール溝構成部との厚さは,それぞれの条件に応じて決定されるものであって,樹脂框のガラス溝構成部の厚さをレール溝構成部との厚さとの関係において特定することに技術的な意味があるとは認められない。 したがって,請求人の主張は採用できない。 5.まとめ 以上より,本願発明は,刊行物1記載の発明及び刊行物2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第5 むすび 以上のとおり,本願発明は特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-01-24 |
結審通知日 | 2012-01-30 |
審決日 | 2012-02-23 |
出願番号 | 特願2005-3040(P2005-3040) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(E06B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 昌哉 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
宮崎 恭 土屋 真理子 |
発明の名称 | 複合サッシの障子 |
代理人 | 広川 浩司 |