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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する A61M
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A61M
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A61M
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する A61M
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する A61M
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する A61M
管理番号 1255363
審判番号 訂正2011-390123  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2011-11-11 
確定日 2012-03-23 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4417832号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4417832号に係る明細書(特許請求の範囲及び明細書)を本件審判請求書に添付された訂正明細書(全文訂正特許請求の範囲及び全文訂正明細書)のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第4417832号の請求項1ないし請求項17に係る発明は、平成21年12月4日にその特許権の設定登録がなされたものであって、平成23年11月11日に本件訂正審判の請求がなされた後、平成23年12月13日付けで訂正拒絶理由が通知され、これに対して、平成24年2月3日付けで、審判請求書に添付された全文訂正特許請求の範囲及び審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書とともに、全文訂正特許請求の範囲、審判請求書の請求の理由の全文、全文訂正明細書及び意見書が提出された。

第2 平成24年2月3日付けの手続補正
1.平成24年2月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容
本件補正は、審判請求書に添付された全文訂正特許請求の範囲及び審判請求書の請求の理由について以下のような補正をするものである。
なお、平成24年2月3日付けで提出された全文訂正明細書は、審判請求書に添付された全文訂正明細書と同一であって、その記載に変更はない。

1-1.全文訂正特許請求の範囲についての補正事項
本件補正による全文訂正特許請求の範囲についての補正事項は、以下のとおりである。

補正事項1:全文訂正特許請求の範囲の請求項1における「透析装置(1)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供されている透析装置、ここで当該手段は加熱及び冷却装置(6)並びに代替物を加えるための装置(7)から成る群から選択される、及び」との記載を「透析装置(1)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供されている透析装置、及び」(補正箇所は下線部で示す、以下同じ)に補正する。

補正事項2:全文訂正特許請求の範囲の請求項17における「透析装置(1)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供されている透析装置、ここで当該手段は加熱及び冷却装置(6)並びに代替物を加えるための装置(7)から成る群から選択される、及び」との記載を「透析装置(1)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供されている透析装置、及び」に補正する。

補正事項3:全文訂正特許請求の範囲の請求項17における「ここで、塩基を加えることによってpHを調整するための1の装置(4)が、1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の上流側又は下流側のいずれかに備えられ、かつ、酸を加えることによってpHを調整するための1の装置(4)が、1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の下流側又は上流側のいずれかに備えられる、
ここで前記透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の下流側に備えられたpHを調整するための装置(4)が、当該使用可能流体のpHを中性に調整するように適合される、」との記載を、
「ここで、塩基を加えることによってpHを調整するための1の装置(4)が、1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の上流側又は下流側のいずれかに備えられ、かつ、酸を加えることによってpHを調整するための1の装置(4)が、1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の下流側又は上流側のいずれかに備えられる、
ここで前記1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の下流側に備えられたpHを調整するための1の装置(4)が、当該使用可能流体のpHを中性に調整するように適合される、」に補正する。

1-2.審判請求書の請求の理由について補正事項
本件補正は、審判請求書の請求の理由の記載を全文訂正特許請求の範囲についての補正事項1?3と整合するように変更するとともに、全文訂正特許請求の範囲の訂正事項とその原因を追加、整理するものである。

2.本件補正の適否
2-1.全文訂正特許請求の範囲についての補正事項
本件補正の全文訂正特許請求の範囲についての補正事項の適否について以下検討する。
(1)補正事項1,2
補正事項1,2は、「透析装置(1)」に関し、本件訂正審判により付加された「ここで当該手段は加熱及び冷却装置(6)並びに代替物を加えるための装置(7)から成る群から選択される」との訂正事項を削除するものであって、請求の趣旨を減縮的に変更するものであるから、審判請求の要旨を変更するものとはいえない。

(2)補正事項3
本件訂正審判により訂正された請求項17の「ここで、塩基を加えることによってpHを調整するための1の装置(4)が、1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の上流側又は下流側のいずれかに備えられ、かつ、酸を加えることによってpHを調整するための1の装置(4)が、1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の下流側又は上流側のいずれかに備えられる、
ここで前記透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の下流側に備えられたpHを調整するための装置(4)が、当該使用可能流体のpHを中性に調整するように適合される、」との記載における「前記透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の下流側に備えられたpHを調整するための装置(4)」は、訂正された請求項17の記載からして、「前記1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の下流側に備えられたpHを調整するための1の装置(4)」を意味すると解されるから、補正事項3は、請求の趣旨を変更するものではなく、審判請求の要旨を変更するものとはいえない。

2-2.審判請求書の請求の理由について補正事項
審判請求書の請求の理由について補正事項は、審判請求書の請求の理由の記載を全文訂正特許請求の範囲についての補正事項1?3と整合するように変更し、さらに、全文訂正特許請求の範囲の訂正事項とその原因を追加、整理するものであって、請求の趣旨を変更するものではなく、審判請求の要旨を変更するものとはいえない。

なお、平成24年2月3日付けで提出された全文訂正明細書は、審判請求書に添付された全文訂正明細書と同一であって、その記載に変更はなく、全文訂正明細書についての補正事項は存在しないから、平成24年2月3日付けで提出された全文訂正明細書は、審判請求の要旨を変更するものとはいえない。

3.以上によれば、本件補正は、審判請求の要旨を変更するものとはいえないから、特許法第131条の2第1項の規定に適合するので、当該補正を認める。

第3 請求の趣旨
上記「第2 平成24年2月3日付けの手続補正」で述べたとおり、本件補正は、審判請求の要旨を変更するものとはいえず、当該補正は認められるから、本件補正により補正された審判請求書並びにそれに添付された本件補正により補正された全文訂正特許請求の範囲及び全文訂正明細書は認められる。
したがって、本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第4417832号に係る明細書(特許請求の範囲及び明細書)を審判請求書に添付された訂正明細書(全文訂正特許請求の範囲及び全文訂正明細書)(「審判請求書」、「全文訂正特許請求の範囲」は、それぞれ「本件補正により補正された審判請求書」、「本件補正により補正された全文訂正特許請求の範囲」をいう。)のとおり訂正することを求めるものである。

第4 訂正事項
本件補正により補正された審判請求書並びにそれに添付された本件補正により補正された全文訂正特許請求の範囲及び全文訂正明細書の記載からして、本件訂正審判の訂正事項は以下のとおりのものと認められる。(なお、下線部は訂正個所を示す。)

(1)訂正事項1
訂正前の請求項1に「生物流体回路(3)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供されている生物流体回路、及び」とあるのを、「生物流体回路(3)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供されている生物流体回路、ここで当該手段は加熱及び冷却装置(6)並びに代替物を加えるための装置(7)から成る群から選択される、」に訂正する。

(2)訂正事項2
訂正前の請求項1に「透析装置(1)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4:6:7;8;9)が供されている透析装置を伴い、そして」とあるのを、「透析装置(1)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供されている透析装置、及び」に訂正する。

(3)訂正事項3
訂正前の請求項1に「1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)が透析流体回路(2)中に供されており、
ここで、当該透析の手段中で使用可能な透析流体は、当該生物流体からタンパク質に結合した除去されるべき物質に対する吸着体を含み」とあるのを、
「透析流体回路(2)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供され、かつ1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)が中に供されている透析流体回路、を伴い、
ここで、当該透析の手段中で使用可能な透析流体は、当該生物流体からタンパク質に結合した除去されるべき物質に対する吸着体を含み」に訂正する。

(4)訂正事項4
訂正前の請求項7を削除する。

(5)訂正事項5
訂正前の請求項8を、訂正後の請求項7に訂正するとともに、訂正前の請求項8において引用されていた「請求項1?7」を、訂正後の請求項7では「請求項1?6」に訂正する。

(6)訂正事項6
訂正前の請求項9を、訂正後の請求項8に訂正するとともに、訂正前の請求項9において引用されていた「請求項1?8」を、訂正後の請求項9では「請求項1?7」に訂正する。

(7)訂正事項7
訂正前の請求項10を、訂正後の請求項9に訂正するとともに、訂正前の請求項10において引用されていた「請求項2?9」を、訂正後の請求項9では「請求項2?8」に訂正する。

(8)訂正事項8
訂正前の請求項11を、訂正後の請求項10に訂正するとともに、訂正前の請求項11において引用されていた「請求項1?10」を、訂正後の請求項10では「請求項1?9」に訂正する。

(9)訂正事項9
訂正前の請求項12を、訂正後の請求項11に訂正するとともに、訂正前の請求項12において引用されていた「請求項10」を、訂正後の請求項11では「請求項9」に訂正する。

(10)訂正事項10
訂正前の請求項13を、訂正後の請求項12に訂正するとともに、訂正前の請求項13において引用されていた「請求項10」を、訂正後の請求項12では「請求項9」に訂正する。

(11)訂正事項11
訂正前の請求項14を、訂正後の請求項13に訂正するとともに、訂正前の請求項14において引用されていた「請求項10」を、訂正後の請求項13では「請求項9」に訂正する。

(12)訂正事項12
訂正前の請求項15を、訂正後の請求項14に訂正するとともに、訂正前の請求項15において引用されていた「請求項1?10」を、訂正後の請求項14では「請求項1?9」に訂正する。

(13)訂正事項13
訂正前の請求項17を、訂正後の請求項16に訂正するとともに、訂正前の請求項17において引用されていた「請求項1?15」を、訂正後の請求項16では「請求項1?14」に訂正する。

(14)訂正事項14
訂正前の請求項16を、訂正後の請求項15に訂正するとともに、訂正前の請求項16において引用されていた「請求項1?15」を、訂正後の請求項15では「請求項2?14」に訂正する。

(15)訂正事項15
以下の請求項を訂正後の請求項17として追加する。
「 タンパク質に結合した除去されるべき物質を含有する生物流体を透析するための手段であって:
-生物流体回路(3)であってタンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供されている生物流体回路、ここで当該手段は加熱及び冷却装置(6)並びに代替物を加えるための装置(7)から成る群から選択される、
-透析装置(1)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供されている透析装置、及び
-透析流体回路(2)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供され、かつ1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)が中に供されている透析流体回路、を伴い、
ここで、当該透析の手段中で使用可能な透析流体は、当該生物流体からタンパク質に結合した除去されるべき物質に対する吸着体を含み、そして
当該除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための当該手段(4;6;7;8;9)が、
-塩基を加えることによってpH8?13に調整することができる、当該使用可能流体のpHを調整するための1の装置(4)、及び-酸を加えることによってpH2.5?5に調整することができる、当該使用可能流体のpHを調整するための1の装置(4)
を含み、
ここで、塩基を加えることによってpHを調整するための1の装置(4)が、1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の上流側又は下流側のいずれかに備えられ、かつ、酸を加えることによってpHを調整するための1の装置(4)が、1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の下流側又は上流側のいずれかに備えられる、
ここで前記1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の下流側に備えられたpHを調整するための1の装置(4)が、当該使用可能流体のpHを中性に調整するように適合される、
ことを特徴とする、前記手段。」

第5 訂正拒絶理由の概要
訂正拒絶理由の概要は、
『・・・訂正事項2は、訂正前の請求項1の「透析装置」に「供されている」「タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)」を、「当該手段は加熱及び冷却装置(6)並びに代替物を加えるための装置(7)から成る群から選択される」点で限定するものであるから、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件訂正後の請求項1の記載には、「透析流体回路」に「タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供されている」と記載され、該記載に引き続いて、
「ここで、・・・そして
当該除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための当該手段(4;6;7;8;9)が、
-塩基を加えることによってpH8?13に調整することができる、当該使用可能流体のpHを調整するための1以上の装置(4)、及び
-酸を加えることによってpH2.5?5に調整することができる、当該使用可能流体のpHを調整するための1以上の装置(4)
を含み」と記載されている。
「透析流体回路」に「供されている」「タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)」が、「透析流体回路」を介して「透析装置」に「供されている」とともに、上記「当該除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための当該手段(4;6;7;8;9)」は、「透析流体回路」に「供されている」「タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)」であることも明らかであるから、上記記載は、「-塩基を加えることによってpH8?13に調整することができる、当該使用可能流体のpHを調整するための1以上の装置(4)、及び-酸を加えることによってpH2.5?5に調整することができる、当該使用可能流体のpHを調整するための1以上の装置(4)」のような「加熱及び冷却装置(6)並びに代替物を加えるための装置(7)から成る群から選択される」もの以外の「タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)」も「透析流体回路」を介して「透析装置」に「供されている」ことを意味するといえる。
してみると、訂正事項2により、本件訂正後の請求項1の記載は、「透析装置」に「供されている」「タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)」について、一方で、「加熱及び冷却装置(6)並びに代替物を加えるための装置(7)から成る群から選択される」旨規定されながら、他方で、「加熱及び冷却装置(6)並びに代替物を加えるための装置(7)から成る群から選択される」もの以外のものも「透析流体回路」を介して「透析装置」に「供されている」旨規定されることになるから、訂正事項2により、本件訂正後の請求項1の記載は、「透析装置」に「供されている」「タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)」が、「加熱及び冷却装置(6)並びに代替物を加えるための装置(7)から成る群から選択される」ものを意味するのか或いはそれ以外のものをも意味するのか不明確になるといえる。
したがって、訂正事項2を含む本件訂正により訂正された請求項1の記載は、「透析装置」に「供されている」「タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)」が不明確であるから、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしておらず、訂正事項2を含む本件訂正により訂正された請求項1に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。・・・
訂正事項15は、訂正後の請求項1に訂正前の請求項16を挿入するとともに、訂正前の請求項1に記載された「装置(4)」の数を「1以上」から「1」に減縮するものではあるが、訂正前の請求項16に記載された「装置(4)」の数についての「1以上」との特定を無くした請求項を本件訂正後の請求項17として追加するものである。
してみると、上記のような請求項17を追加する訂正事項15は、特許法第126条第1項第1号ないし第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しない。・・・』というものである。

第6 当審の判断
1.本件訂正審判の訂正事項が訂正の要件を満たしているか否かについて、以下検討する。

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「生物流体回路」に「供されている」「タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)」を、「当該手段は加熱及び冷却装置(6)並びに代替物を加えるための装置(7)から成る群から選択される」点で限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、願書に添付された明細書の「この目的は、適切な手段により、透析流体回路中、生物流体回路中又は両方の回路中での遊離毒素及び遊離タンパク質に対する毒素-タンパク質複合体の濃度比を、遊離物質に応じてシフトさせ、そして当該毒素を除去する方法による本発明によって達成されている。同じように、遊離毒素及び吸着体に対する吸着される毒素の濃度比を考えることも可能である。」(【0016】)との記載、「遊離毒素及び遊離タンパク質に対する毒素-タンパク質複合体の濃度比を変化せしめるための手段は、使用可能な流体のpHを調節するための装置、使用可能な流体の温度を調節するための装置、使用可能な流体の組成(例えば塩濃度)を希釈又は変化せしめるために代替物を加えるための装置、除去されるべき物質に対して結合する透析可能化合物を加えるための装置及び使用可能流体に波動を照射するための装置を含んで成る。本発明の枠組みの中で、様々な装置が任意の所望の態様で他の装置と組み合わされて良い。循環系において、pHを調節するために1以上の装置を、そして温度を調節するために1以上の装置を使用することが好適である。」(【0021】)との記載及び「遊離毒素及び遊離タンパク質に対する毒素-タンパク質複合体の濃度を変化せしめるための本発明の1以上の方法の提供は、担体タンパク質に対して結合した、除去されるべき物質を含む生物流体の回路においてもなされて良い。従って、例えば、温度を高める効果は、担体タンパク質の結合親和性を低下せしめ、そして物質を可溶化し、溶解させて透析されるべき物質を遊離させることができる。」(【0027】)との記載からして、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
そして、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1の記載を訂正事項3の「透析流体回路(2)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供され、かつ1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)が中に供されている透析流体回路、を伴い」との記載と整合させるために、訂正前の請求項1の「透析装置(1)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供されている透析装置を伴い、そして」における「を伴い、そして」との記載を「、及び」に訂正するものであるから、訂正事項2は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項1の「1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)が・・・中に供されて」いる「透析流体回路(2)」を、「タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供され」る点で限定するとともに、「タンパク質に結合した除去されるべき物質を含有する生物流体を透析するための手段」が、「透析流体回路(2)、を伴」うことを明確にするものであるから、訂正事項3は、上記の点で特許請求の範囲の減縮を目的とするとともに、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、願書に添付された明細書の「この目的は、適切な手段により、透析流体回路中、生物流体回路中又は両方の回路中での遊離毒素及び遊離タンパク質に対する毒素-タンパク質複合体の濃度比を、遊離物質に応じてシフトさせ、そして当該毒素を除去する方法による本発明によって達成されている。同じように、遊離毒素及び吸着体に対する吸着される毒素の濃度比を考えることも可能である。」(【0016】)との記載、「遊離毒素及び遊離タンパク質に対する毒素-タンパク質複合体の濃度比を変化せしめるための手段は、使用可能な流体のpHを調節するための装置、使用可能な流体の温度を調節するための装置、使用可能な流体の組成(例えば塩濃度)を希釈又は変化せしめるために代替物を加えるための装置、除去されるべき物質に対して結合する透析可能化合物を加えるための装置及び使用可能流体に波動を照射するための装置を含んで成る。本発明の枠組みの中で、様々な装置が任意の所望の態様で他の装置と組み合わされて良い。循環系において、pHを調節するために1以上の装置を、そして温度を調節するために1以上の装置を使用することが好適である。」(【0021】)との記載及び「透析流体回路中、遊離毒素及び遊離タンパク質に対する毒素-タンパク質複合体の濃度比を変化せしめるための本発明の手段が1以上提供されれば、透析の手段において使用されて良い透析流体は、当該生物流体から除去されるべき物質に対する吸着体を含むべきだ。生物流体中少ない割合のタンパク質-結合毒素が当該溶液中で遊離形態に在り、そしてこの割合は、透析装置の半透膜を介して拡散し、そして透析流体中の吸着体の遊離結合部位に対して結合する。次いで、遊離毒素及び遊離タンパク質に対する毒素-タンパク質複合体の比を変化せしめる本発明の手段、例えば、酸を加えるための装置を介して、吸着体と毒素との間の結合親和性が少なくとも一時的に低下させられ、それによって、除去されるべき物質が溶液を通過し、そして本発明中以降でジアフィルタレーションとよばれる、透析(拡散)もしくはろ過(向流)もしくはその両方の組み合わせを介し、透析回路から取り除かれて良い。」(【0025】)との記載からして、訂正事項3は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
そして、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項4について
訂正前の請求項1?6を引用し、「前記生物流体回路(3)中に1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)が供されていること」を特定する訂正前の請求項7を削除する訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(5)訂正事項5?13について
訂正事項5?13は、訂正事項4による請求項7の削除にともなう下位請求項番号の訂正と多数項引用形式請求項における引用請求項の削除であるから、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(6)訂正事項14について
訂正事項14は、訂正事項4による請求項7の削除にともなう請求項番号の訂正と多数項引用形式請求項における引用請求項の削除であるから、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(7)訂正事項15について
訂正事項15は、訂正後の請求項1を訂正前の請求項16で限定するとともに、訂正前の請求項1及び請求項16に記載された「装置(4)」の数を「1以上」から「1」に減縮し、独立請求項とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(8)以上によれば、訂正事項1?15は、特許請求の範囲の減縮ないし明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、本件訂正後の請求項1?17に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由も見当たらない。
そして、上記訂正拒絶理由は解消しているといえる。

2.まとめ
したがって、訂正事項1?15は、特許法第126条第1項第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項ないし第5項の規定に適合する。

第7 むすび
以上のとおり、本件訂正審判請求による訂正は、特許法第126条第1項第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項ないし第5項の規定に適合する。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
タンパク質-結合した物質を除去するための方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物流体、特に、血液又は血しょうから、タンパク質-結合した物質を除去するための手段に関連し、その手段は、当該生物流体及び/又は透析流体中での遊離毒素及び遊離タンパク質に対する毒素-タンパク質複合体の濃度比を変化せしめるための手段を含み、そして、当該生物流体からタンパク質-結合した物質を除去するための方法に関連する。用語「毒素」とは本明細書中で非常に広く解釈され、そして更に、通常は直接的に毒素を意味しない、薬物、電解質、ホルモン、脂質、ビタミン、ガス及びビリルビンなどの代謝分解産物など、全てのタンパク質-結合した物質を網羅する。
【背景技術】
【0002】
多くの疾患、特に急性又は慢性の腎機能障害、急性又は慢性の肝機能障害もしくは外因性の中毒において、血しょう中に溶解した又はタンパク質に対して結合した病原性物質は血液から取り除かれなければならない。血液透析、血液ろ過又は血液透析ろ過などの常用の方法によってのみ少ない割合でタンパク質-結合した物質の除去が可能になる。
【0003】
タンパク質-結合した物質の不完全除外は、現在、腎機能代償(療法)において第二番目に重要であるにすぎない。急性又は慢性腎機能障害を有する患者の生命寿命は、腎代償療法(急性腎疾患の場合の器官機能の回復を伴う)によって正常化されるかあるいは少なくとも数年に渡り延長される(患者が尚も腎代償療法を必要とする場合)。
【0004】
急性肝機能障害又は慢性肝機能障害の急性悪化に関して、状況は全く異なる。腎代償療法に匹敵する方法は現在、このような場合には有効ではない。
【0005】
肝機能は2つの主な機能:
-生命に関わるタンパク質の合成、及び
-主にタンパク質-結合した毒素の除去、
に細分化される。
【0006】
基本的に、肝臓移植のみが現在、合成機能を代替するために有効である。正常な肝細胞の合成機能を少なくとも部分的に踏襲する、細胞による、いわゆるバイオリアクターが知られているが、これらは現在、実験的にのみ使用されており、それらの機能は尚も不完全である。肝臓移植は急性肝機能障害を伴う患者のおよそ20%で実施されており、その理由は、既存の解毒機能を踏襲するための十分な機能がなく、従って、肝機能を回復するためにとられる時間を埋めることができないからだ。
【0007】
タンパク質-結合した物質はおそらく、肝性脳症、肝性掻痒(hepatic prusitus)及び肝腎症候群の病因において重要な役割を果たす。アルブミンに対して優占的に結合するこれら病因物質としては特に、芳香族化合物の例えば、フェノール誘導体、インドール誘導体、フラン誘導体又は芳香族アミノ酸、ビリルビン、C_(4)?C_(7)カルボン酸、メルカプタン、ジジトキシン及びベンゾジアゼピンに類似する物質、並びに金属陽イオン、例えば、銅の陽イオン、アルミニウムの陽イオン又は鉄の陽イオンが挙げられる。本明細書中で最も重要な疾患は、肝性脳症であり、その理由は、それが生命を脅かしそして/又は恒久的障害を残すからだ。
【0008】
70年代以来、肝臓の解毒機能を代替する、大まかに透析技術に基づいた様々な試みがある。
【0009】
1.血液透析、血液ろ過又は血液ジアフィルタレーション
これらの常用の方法は現在、肝機能障害を有する多くの患者で使用されており、その理由は、多くの場合、肝疾患の最終ステージで、透析によって治療されなければならない腎機能障害をももたらす肝腎症候群が生じるからだ。しかし、これらの方法は、タンパク質-結合した物質の十分な除去を達成せず且つ本質的に低分子量又は中間分子量の水溶性物質のみを除去するにすぎない。
【0010】
2.血液灌流
この方法では、タンパク質-結合した毒素を除去するために、血液又は血しょうに吸着体(活性炭及び/又は陽イオンもしくは陰イオン交換物質)の上を通過させる(O’ GradyJ.G.、Gimson A.E.、O’ Brien C.J.、Pucknell A.、Hughes R.D.、Williams R.:Controlled Trails of Charcoal Hemoperfusion and Diagnostic Factors in flminant hepatic failure.Gastroenterology、vol.94、pp.1186?1192、1988)。この方法は、非特異的であり、従って重要な物質も血液又は血しょうから除去される欠点を有する。
【0011】
3.2つの異なる方法を伴う吸着体としてのアルブミン
A.MARS(Molecular Adsorbents Recirculating System)EP0615780に記載されているMARSは、アルブミン被覆した特別な透析膜を使用する。再循環するアルブミン含有透析物は、透析によって患者から取り除かれたタンパク質-結合した毒素を除外し、そして透析物質におけるアルブミンの、毒素のための結合部位を調製するために2つの吸着体カラム(活性炭及び樹脂)を通過させられる(Stange J.,Hassanein T.I.,Mehta R.,Mitzner S.R.,Bartlett R.H.:The molecular adsorbents recycling system as a liver support system based on albumin dialysis:a summary of preclinical investigations,prospective,randomized,controlled clinical trial,and clinical experience from 19 centers.Artif.Organs,vol.26,pp.103?110,2002)。
【0012】
B.アルブミン透析
アルブミン透析は連続血液透析に関連した方法である。連続腎代償療法の特徴は、ゆっくりとした透析物流(通常の透析30l/hに比較して1?2l/h)を使用することである。アルブミン透析では、常用の連続腎代償療法とは対照的に、アルブミンは透析物に対して5%溶液を与えるように加えられる(Kreymann B.,Seige M.,Schweigart U.,Kopp K.F.,Classen M.:Albumin dialysis:effective removal of copper in a patient with fulminant Wilson disease and successful bridging to liver transplantation:a new possibility for the elimination of protein-bound toxins.J.Hepatol.,vol.31,pp.1080?1085,1999)。アルブミンの使用は、それが血中でタンパク質-結合した毒素のための主たる担体タンパク質であることに基づいている。
【0013】
多数の患者に対して使用するために、上記のアルブミンベースの系は高い治療コスト(MARS又はアルブミン透析の現在の治療コストはおよそ2500ユーロ/日)を招く。更に、これらの系は満足に至らない解毒効率:タンパク質-結合した物質に関するマーカーとしてのビリルビンレベルにおいて平均たった10?30%の減少、を提供する。アルブミンベースの透析方法は肝臓の脳症の症状に改善をもたらすが、値の正常化は、高い治療コストの結果にしては達成されない。
【発明の開示】
【0014】
従って、本発明の目的は、他の不都合な透析可能物質と一緒に、タンパク質-結合した物質を、単純且つコスト効率の良い方法において1段階で生物流体から除去できうる、透析の手段及び透析の方法を供することである。
【0015】
この目的は、請求項1に記載の手段及び請求項14及び15に記載の方法によって、本発明により達成されている。
【0016】
この目的は、適切な手段により、透析流体回路中、生物流体回路中又は両方の回路中での遊離毒素及び遊離タンパク質に対する毒素-タンパク質複合体の濃度比を、遊離物質に応じてシフトさせ、そして当該毒素を除去する方法による本発明によって達成されている。同じように、遊離毒素及び吸着体に対する吸着される毒素の濃度比を考えることも可能である。
【0017】
この溶液は、それらが可溶化されており、物質を簡単且つ効果的に生物流体から除去できるので有利である。
【0018】
本発明の枠組みの中で、溶解した物質及び遊離毒素は、溶媒によって可溶化される個々の分子のみならず、透析可能物質に対して結合したものをも意味するとして解される。透析可能物質に対して結合した毒素も、複合体として透析可能でありうる。
【0019】
この方法は、急速透析を与えるのみならず、評価に値するコスト上の利点を伴い、それにより生物流体の特にスルー精製(thorugh purification)を達成することも可能である。
【0020】
血液又は血しょう精製の場合、この方法は更に、緊急医療の領域において、急性の生命を脅かす症状に関して、治療を成功するために重要でありうる一層患者にやさしい治療方法を提供する。
【0021】
遊離毒素及び遊離タンパク質に対する毒素-タンパク質複合体の濃度比を変化せしめるための手段は、使用可能な流体のpHを調節するための装置、使用可能な流体の温度を調節するための装置、使用可能な流体の組成(例えば塩濃度)を希釈又は変化せしめるために代替物を加えるための装置、除去されるべき物質に対して結合する透析可能化合物を加えるための装置及び使用可能流体に波動を照射するための装置を含んで成る。本発明の枠組みの中で、様々な装置が任意の所望の態様で他の装置と組み合わされて良い。循環系において、pHを調節するために1以上の装置を、そして温度を調節するために1以上の装置を使用することが好適である。
【0022】
本発明の1つの利点とは即ち、簡単な手段、即ち、酸、塩基、代替物もしくは透析可能物質の溶液を加えるための常用の装置、又は冷却もしくは超音波素装置又は他の、光、赤外線、紫外線又は電磁波長(本明細書中では波長に言及する)発生装置により、除去されるべき物質が、タンパク質-結合性物質と担体タンパク質又は吸着体の間の結合を弱めることによる簡単且つコスト上効率の良い方法において可溶化できうることである。溶解した物質(毒素)は、透析可能であり、従って簡単に除去が容易である。
【0023】
実際に、アルブミンなどの担体タンパク質又は吸着体などの毒素に対する結合親和性は、多くの手段によって選択的に低下させられて良く、従って、溶液中の遊離毒素の濃度が高まる。生物流体又は透析流体中のタンパク質-結合した物質は実際に、少量の結合していない物質と平衡にある。結合親和性を低下させることにより、結合していない、透析可能物質の濃度を高め、溶液中へと遊離物質を移しめることが可能である。
【0024】
これらの手段は、結合した毒素を含む流体の温度を高めること、pH(酸性及び塩基性の範囲)を変化せしめること、波動を照射すること、流体を希釈すること、塩含有量を変化せしめること及び毒素に対して結合する透析可能物質を導入することを含む。これらの手段の最後の手段は、透析可能複合体の形成をもたらす。
【0025】
透析流体回路中、遊離毒素及び遊離タンパク質に対する毒素-タンパク質複合体の濃度比を変化せしめるための本発明の手段が1以上提供されれば、透析の手段において使用されて良い透析流体は、当該生物流体から除去されるべき物質に対する吸着体を含むべきだ。生物流体中少ない割合のタンパク質-結合毒素が当該溶液中で遊離形態に在り、そしてこの割合は、透析装置の半透膜を介して拡散し、そして透析流体中の吸着体の遊離結合部位に対して結合する。次いで、遊離毒素及び遊離タンパク質に対する毒素-タンパク質複合体の比を変化せしめる本発明の手段、例えば、酸を加えるための装置を介して、吸着体と毒素との間の結合親和性が少なくとも一時的に低下させられ、それによって、除去されるべき物質が溶液を通過し、そして本発明中以降でジアフィルタレーションとよばれる、透析(拡散)もしくはろ過(向流)もしくはその両方の組み合わせを介し、透析回路から取り除かれて良い。
【0026】
本発明によれば、吸着体及び遊離毒素は、例えば、血しょう交換を行うための血しょう分離中で使用されるような遠心によって分離されても良い。本発明の枠内で、従って、遠心は、分離方法として透析に対する代替を構成する。
【0027】
遊離毒素及び遊離タンパク質に対する毒素-タンパク質複合体の濃度を変化せしめるための本発明の1以上の方法の提供は、担体タンパク質に対して結合した、除去されるべき物質を含む生物流体の回路においてもなされて良い。従って、例えば、温度を高める効果は、担体タンパク質の結合親和性を低下せしめ、そして物質を可溶化し、溶解させて透析されるべき物質を遊離させることができる。
【0028】
好適に、生物流体回路及び透析流体回路には、遊離毒素及び遊離タンパク質に対する毒素-タンパク質複合体の濃度を変化せしめるための本発明の手段が1以上含まれる。
【0029】
本発明の1つの利点とは、異なる結合動態を有する物質が、様々な有効手段(特にもし異なる手段が他のものと組み合わされていれば)によって取り除かれて良いことである。
【0030】
1つの特に有効且つコスト上効率の良い手段は、流体のpHを調節するための装置である。流体のpHを酸性及び/又は塩基性範囲に調節することにより、担体タンパク質又は吸着体に対する様々な物質の結合に対し選択的に影響を与えることが可能になる。従って、酸を加えることで流体のpHを低下せしめることが可能であり、それによって酸性範囲でタンパク質に対する所定の毒素の結合を下げ、それにより流体中での遊離毒素の濃度を高める。
【0031】
例えば、銅イオンのアルミイオンに対する結合は、このようにして弱めることができ、それによりろ過後に、遊離の、溶解している銅イオンをフィルターの後で、透析、ろ過、ジアフィルタレーション又は遠心によって除去することができうる。同じように、流体のpHを塩基性の範囲に調節でき、従ってアルカリ範囲で遊離した毒素を流体から、透析、ろ過又はジアフィルタレーションによって除去することができうる。
【0032】
同じように、塩基を加えることによって、タンパク質に対する所定の毒素の結合を弱め、従って、流体中の遊離毒素の濃度を高めることができ、この場合、8?13のpH範囲が好適である。
【0033】
毒素を、透析、ろ過、ジアフィルタレーション又は沈殿によって流体から除去した後、pHは任意に、様々な有利な値に調節されて良い。
【0034】
このことは、アルブミンなどの吸着体で仕事をする場合に特に有利である。次いで、吸着体の毒素に対する親和性を再度高めるように様々な有利なpHが選択される。このことにより吸着体のリサイクルが可能になり、それ故に明らかなコスト上の利点が供される。
【0035】
循環系(精製されるべき生物流体又は透析流体のための)は、好適に2つの、そして非常に特に好適には3つの、pHを調節するための装置を含み、従って、pHは第一番目の装置により酸性もしくは塩基性範囲に、そして第二番目の装置により塩基性もしくは酸性範囲にそれぞれ調節されて良く、そして第三番目の装置により通常の範囲(通常は中性)に戻されて良い。更に好適に、循環系(精製されるべき生物流体又は透析流体のための)は、例えば、使用可能流体を加熱し、そして冷却することによって、従来の温度に戻す、又は他の所望の温度に戻すことができるように温度を調節するための2つの装置を含む。非常に特に好適に、循環系はpHを調節するための3つの装置及び温度を調節するための2つの装置を含む。
【0036】
本発明の他の利点とは、透析流体回路及び/もしくは生物流体回路中に備えられた透析、ろ過もしくはジアフィルタレーション装置によって、溶解した、透析可能物質を、当該流体(除去されるべき透析流体又は生物流体)から、担体タンパク質もしくは吸着体からの分離の後に、簡単且つ効果的に除去できうることである。これは、当業者に周知の常用の透析装置を使用することで行われて良い。加えて、pH/温度の値を変化せしめるための装置及びこれらの変化を適切にモニタリングするための装置を使用することが好適である。有利に、本発明の手段において、透析、ろ過、ジアフィルタレーション又は遠心装置は、遊離の、溶解した物質を流体から直接除去するために、使用されるべき流体のpH/温度を調節するための装置から下流に挿入されている。特に好適な手段は、酸又塩基を加えるための装置、透析、ジアフィルタレーション、ろ過又は遠心装置、塩基又は酸を加えるための装置、透析、ろ過、ジアフィルタレーション又は遠心装置及び酸又は塩基を加えるための装置が、このような順番で、透析流体回路及び/又は生物流体回路にあるものである。このことにより、様々なタンパク質-結合物質を透析流体及び生物流体から非常に効率的に除去すること及び精製された透析流体を順番に透析装置に対して再循環させ、吸着体にタンパク質-結合物質を再チャージすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
遊離毒素及び遊離タンパク質に対する毒素-タンパク質複合体の濃度比を変化せしめるための手段、例えば、pHを調節するための装置が生物流体回路にのみ配置されている、本発明の特に好適な実施態様の利点とは、不都合なタンパク質-結合した毒素を除去するために、透析流体が必ずしも吸着体、例えば、アクセプタータンパク質のアルブミン、を含む必要がなく、透析コストを劇的に下げることだ。
【0038】
pHを調節するため、特に酸又は塩基を加えるための装置は、例えば、定量ポンプを含む。適切な酸又は塩基は生物学的に適合する酸又は塩基の水溶液である。一般に、接合体塩基もしくは酸がヒト生物中で天然に生じるイオンである酸又は塩基を使用することが好適である。使用されて良い酸の例は、塩化水素酸、硫酸又は酢酸が挙げられ、塩化水素酸が好適である。使用されて良い塩基の例は、水酸化ナトリウム溶液又は水酸化カリウム溶液が挙げられ、水酸化ナトリウム溶液が好適である。生物流体又は透析流体は、pH1?7、有利にpH2.5?5へと酸を加えることによって、そしてpH7?13、有利にpH8?13へと塩基を加えることによって調節されて良い。各特定の場合、所望のpHは、実質上、使用される流体の性質、タンパク質の性質及び除去されるべき物質の特性に依存する。例えば、銅のアルブミンに対する結合親和性は、pH2付近で有意に低下する。反対に、このことは特に、銅が、約3より上のpHでアルブミンに対して特に高い結合親和性を有することを意味している。例えば、ビリルビンのアルブミンに対する結合親和性は、pH12付近で有意に低下することも確認されている。
【0039】
温度を調節するための装置は、特に、常用の加熱装置、マイクロ波装置もしくは赤外装置、又は常用の冷却ユニットなどの冷却装置を含む。1又は複数の加熱及び/もしくは冷却装置が透析流体回路及び/もしくは生物流体回路中に配置されて良い。特に、除去されるべき物質は、使用可能流体を加熱又は冷却することによって可溶化されて良く、しかも生物流体もしくは透析流体は、冷却もしくは加熱することによって、所望の温度に戻されて良い。使用される温度勾配の性質及び程度は、流体、吸着体及び除去されるべき毒素の性質に依存する。例えば、最初に加熱して再度冷却することが可能である。この逆の方法も有利である。加熱/冷却を段階的に行うことも有利でありうる。
【0040】
本発明の他の利点は、吸着体の結合親和性を、使用可能透析流体を冷却又は加熱するための装置によって選択的に増加せしめ、それによって遊離の、透析流体中に拡散している溶解した物質をリサイクルした吸着体によって結合できうることである。
【0041】
流体の使用されるべき所望の温度は、実質的にそれらの性質に依存する。もしも、使用される生物流体が血液又は血しょうもしくは血しょう画分などの部分血液産物であれば、温度を最大およそ150℃に加熱する(例えば、ミルクの熱殺菌に使用される対応する加圧と組み合わせて)、好適には45℃に加熱することが可能である。従って、生理的範囲を超えた加熱も可能である。本発明の透析の手段を患者に対する体外回路で使用する場合、温度は再度、35?37℃の範囲における患者の至適値に又は肝性脳症の患者の場合はおよそ35℃に再度下げられて良い。
【0042】
もしも、温度を調節するための装置が透析流体回路で使用されれば、温度は、蒸気などを加えることによって、もしくは圧力の増加、もしくは他の安定化因子(アルブミンの低温殺菌処理から公知)により150℃を超えるように増加されても良い。
【0043】
循環系において、使用される流体の加熱は、加熱装置によってかあるいはマイクロ波又は赤外線による加熱装置による流体-充填配管系の直接加熱を介して行われて良い。それは、例えば、透析流体回路においてのみ加熱装置を有することで十分であり、何故なら、それにもかかわらず、生物流体も、透析装置において、精製されるべき流体と当該透析流体との間での熱交換により加熱されるからだ。他の実施態様において、加熱装置が透析流体回路又は生物流体回路に対する入口から上流に、pHを調節するための装置又は代替物質を加えるための装置から下流に挿入されて良い。この場合、透析流体及び/又は精製される流体は加熱溶液を加えることによって加熱される。
【0044】
例えば、超音波装置は、波動を照射するための装置として使用されて良い。他の適切な装置は、光線、赤外線、紫外線、放射線及びマイクロ波を発生するために適したものである。
【0045】
遊離毒素及び遊離タンパク質に対する毒素-タンパク質複合体の濃度比を変化せしめるための他の可能な手段は、除去されるべき物質に対して結合する透析可能な化合物を加えることための装置である。かかる手段は、透析可能化合物の水溶液を導入する定量ポンプでありうる。いくつかが毒素に対して結合する透析可能物質は、常用の透析又はジアフィルタレーション装置を介して簡単に除去されて良い。使用されて良い、結合する化合物は、除去されるべき物質に対する強力な親和性によって識別される低/中分子量の透析可能化合物である。好適な化合物としては、ビリルビンを結合するカフェイン、及び銅イオン又は鉄イオンなどの金属の陽イオンに対して結合するペニシラミン、トリエンチン、デフェロキサミン、プレフェリプロン(preferiprone)、HBED、ビタミンC、BAL、DMPS又はDMSAなどの共通のキレート剤が挙げられる。透析可能化合物は、生物流体及び透析可能流体の両方に対して加えられて良いが、好適には透析流体に対して、透析による不完全除去の事象における生物流体の汚染の可能性が理由の複雑な状況を避けるために加えられて良い。
【0046】
更に、遊離毒素及び遊離タンパク質に対する毒素-タンパク質複合体の濃度比を変化せしめるために2つの手段、例えばpHの増加及び結合する化合物(例えば、カフェイン)の添加を使用する場合、相乗効果も生じうる。
【0047】
使用可能流体を希釈又は塩含有量を変化させるために代替物を加えるための装置は、代替物溶液を加えることができうる常用の定量ポンプを含む。かかる装置は好適に、それよりも下流に挿入された加熱装置との組み合わせにおいて使用され、従って加熱代替物は使用される流体の回路に対して加えられる。適切な代替物溶液は、様々な塩及び尿素を含みうる水溶液である。これらの溶液は、必要に応じ、塩を加えることによって所望の濃度に調節できうる市販の透析流体であって良い。しかし、上記のように、安定化剤、ヘパリン又はクエン酸など血液を薄くするための剤、もしくは塩など浸透圧平衡を変化せしめるための物質、もしくは正もしくは負に帯電した物質など電気生理学的な平衡を変化せしめる(Donnan効果)ための剤を使用することも可能である。代替物質は、流体中の塩濃度を変化せしめることによって除去されるべき物質を可溶化するのみではない。生物流体、例えば、血液の塩濃度も正確に、代替物を加えることによって患者の症状に従い、調節されて良い。更に、それは、透析回路中で毒素に体するリサイクルした吸着体の結合能力を回復するために使用することができる。そしてまた、尿素の添加は吸着体の結合能力を向上せしめるために必須でありうる。
【0048】
使用される透析装置は、肝性脳症などのために現在使用されている常用の透析装置でありうる。しかし、透析のために現在使用されている膜よりも大きな孔を有する膜を考えることもありえる。透析装置には常用の半透性の透析膜;この膜を介する拡散は任意に、ろ過の手段による対流性輸送によって支持される、が備えられている。透析装置は本質的に、透析膜によって隔てられた2つのチャンバーを含んで成り、各々に対しては使用される流体のための循環系(配管系)が連結されている。精製されるべき生物流体及び透析流体は、常用に向流において運ばれるが、それらは共流(co-current)において運ばれても良い。透析装置の常用の要素、例えば、マノメーター、空気検出器、ヘパリンポンプ、血液ポンプなどのポンピング装置も本発明の手段の一部を形成する。本発明の手段は、遅い透析物流(1?2L/h)及び通常の透析物流(25?50L/h)の両方、並びに必要に応じ中間の速度を達成する。
【0049】
本発明の方法又は本発明の手段において使用されて良い生物流体は、全てのヒト又は動物の体の流体、特に血液又は血しょう、特に好適にはヒトが起源の血液又は血しょうである。使用される生物流体からのタンパク質-結合した物質の除去は、水溶性物質、例えば、常用の透析で除去されて良い、尿素又は様々なイオンの除去を同時に伴う。除去されるべきタンパク質-結合した物質は、好適に担体タンパク質アルブミンに対して結合する。本発明の方法は特に医療部門で血液及び血しょうを精製するために適しており、そして血液銀行プロセッシングの分野及び患者に対する体外透析のための両方の分野において使用されて良い。
【0050】
使用される透析流体は、当業者に周知の常用の透析流体でありうる。イオン濃度は個々の患者のニーズに適合されて良い。市販のイオン含有水溶液又は純水が必要に応じて使用されて良い。常用の透析流体には、任意にタンパク質-除去されるべき結合する物質のための吸着体が提供される。可能な吸着体の例は、樹脂及びアクセプタータンパク質である。好適なアクセプタータンパク質は、アルブミンであり、それはヒト血清アルブミン、動物アルブミン又は遺伝子操作したアルブミンでありうる。ヒト血清アルブミンを使用することが特に好適である。血清アルブミン溶液は、任意に、水、常用の透析流体又は他の流体で希釈されて良い。使用される透析流体は、ヒト血清アルブミンを0.1?25g/100ml、好適には2?10g/100mlそして特に好適には4?6g/100mlの濃度で含んで良い。
【0051】
他の使用されて良い透析流体は、血液、血清又は新鮮凍結血しょうでありうる。透析流体は、バイオリアクターから透析されて良い。現在、多量の血液がバイオリアクター(肝代償療法のために生肝細胞により働く系)のために必要とされており;従って、最大で1Lの血液が、患者の循環系からバイオリアクターが循環する間に引き出されなければならない。しかしながら、バイオリアクター中の生細胞の合成機能を刺激するために、それは、通常肝臓で除去される毒性物質を含有する透析物を使用する系を使用するためにも十分でありうる。従って、1及び2の下で記載したように、透析物は、最初に、体外回路におけるバイオリアクター中を通過させられて良い。次いで、この透析物は、2に記載のように精製され、そして当該透析物は患者へと戻される。このようにするためには、アルブミンを連続的に透析物に対して加えるかあるいはキャピラリー又は現在使用されている透析膜よりもアルブミンを一層透過し易い膜、を使用することが必須でありうる。
【0052】
本発明の方法は、1又は複数の常用のpHメーター及び/又は温度計を、使用される流体の対応する特性をモニタリングするために、備えられて良い。
【0053】
本発明は更に、不都合な物質を生物流体から除去するための方法に関連し、その方法は、生物流体を透析流体に対して半透膜を介して透析することを含んで成り、当該透析流体が除去されるべきタンパク質-結合する物質のための吸着体を含むこと、及び当該透析流体を、酸、塩基又は透析可能物質を加えることによって、希釈によって、塩含量を変化せしめることによって、波動を照射することによってもしくは加熱することによって調節し、このようにして、結合した物質に対する吸着体の結合親和性を少なくとも一時的に低下させ、それによって透析流体中の遊離の不都合な物質の濃度を高めること、を特徴とする方法に関連する。
【0054】
生物流体から不都合な物質を除去するための方法も供されており、その方法は、生物流体を透析流体に対して半透膜を介して透析することを含んで成り、当該透析流体を、酸、塩基又は透析可能物質を加えることによって、希釈によって、塩含量を変化せしめることによって、波動を照射することによってもしくは加熱することによって調節し、このようにして、除去されるべき結合した物質に対する吸着体の結合親和性を少なくとも低下せしめ、それによって当該生物流体中で遊離する不都合な物質の濃度を高めることを特徴とする方法である。
【0055】
利点は、酸、塩基又は透析可能物質の少なくとも2重の添加、希釈、塩含量を変化せしめること、波動による照射又は透析流体もしくは生物流体の加熱/冷却を含んで成る循環系を使用する方法である。
【0056】
本発明の方法及び手段は、一般に、生物流体を精製するために使用されて良い。生物流体とは、全てのヒト又は動物の体の流体、特に血液又は血しょうを含み、ヒト起源の血液又は血しょうが特に好適である。本明細書中、取り出した流体、特に血液又は血しょうを体に戻すこと又はそれらを他の目的のために使用可能にすることが可能である。従って、例えば、精製されて良い血液ボトル又は精製された生物流体が他の商業上目的又は調査目的のために使用可能である。
【0057】
上記方法は、本発明の方法を実施するために適している。更に詳細に、この方法の特徴及び利点は前記手段の議論及び請求の範囲内で発見されて良い。
【0058】
本発明の3つのをより詳細に下の図を参照にすることで説明している。図は、本発明の手段の特定の実施態様を図示している。
【実施例】
【0059】
図1には血液透析の手段を示し、この手段は本質的に、透析装置(1)、透析流体回路(2)(図中で示唆されているのみ:使用された透析物はこの態様においてリサイクルされなくてもいい)、血液回路(3)(図中で示唆されているのみ)、加熱及び冷却装置(6)、代替物を加えるための装置(7)及び温度計(10)からなる。
【0060】
装置(7)を介して、加熱装置(6)で加熱された代替物、例えば、常用の血液透析溶液が、血液回路(3)の血液に対し、それが透析装置(1)入る前に、加えられる。次いで、暖かい血液が透析装置(1)の血液チャンバーに入る。血液の温度が高められているので、そこではタンパク質-結合した物質の担体タンパク質からの遊離が増え、従って、透析膜を介して透析装置(1)の透析チャンバー中に拡散する、溶解した、透析可能毒素のプールの上昇が生じる。タンパク質-結合した物質を精製された血液が透析装置(1)を離れた場合、それは冷却ユニット(6)によって再度生理的に許容できる温度に冷却され、その温度は温度計(10)によってチェックされる。代わりに、血液温度及び従って、患者の温度が透析物の温度を制御することによって調節されても良い。次いで、血液は血液回路(3)へと戻される。
【0061】
図2は血液透析の手段を示し、この手段は本質的に、透析装置(1)、透析流体回路(2)(図中で示唆されているのみ:使用された透析物はこの態様においてリサイクルされてもいい)、血液回路(3)(図中で示唆されているのみ)、酸又は塩基を加えるための定量ポンプ(4)、透析装置(5)及びpHメーター(9)からなる。定量ポンプ(4)によって、HCl溶液が血液回路(3)の血液に対しそれが透析装置(1)入る前に加えられる。これにより血液のpHを低下せしめ、そして毒素のいくらかが溶液に移る。次いで、酸性化された血液が透析装置(1)の血液チャンバーに入る。溶解した、透析可能物質が透析膜を介して透析装置(1)のチャンバー中に拡散しうる。タンパク質-結合した物質を部分的に含まない血液が透析装置(1)を離れる場合、NaOHが定量ポンプ(4)によって加えられ、それによって、pHが塩基性の範囲に調節されそして更にタンパク質-結合する毒素が溶液に移る。下流で、血液が他の透析装置(5)に入り、ここでは他の透析、ろ過又はジアフィルタレーションが、アルカリ範囲において溶解したタンパク質-結合した物質を別な方法で除外するために行われる。次いで、pHは、定量ポンプ(4)を介してHClを溶液により中性範囲の約7.4に調節され、これはpHメーター(9)によってチェックされる。次いで、血液は血液回路(3)に戻される。
【0062】
図3は、血液透析の手段を示し、この手段は本質的に、透析装置(1)、透析流体回路(2)、血液回路(3)(図中で示唆されているのみ)、酸又は塩基を加えるための定量ポンプ(4)、透析装置(5)及び加熱及び冷却装置(6)、代替物を加えるための装置(7)、カフェインを加えるための装置(8)、pHメーター(9)及び温度計(10)からなる。
【0063】
装置(7)を介して、加熱装置(6)で加熱された、例えば血液透析溶液に由来する代替物が、血液回路(3)の血液に対し、それが透析装置(1)入る前に加えられる。次いで、暖かい血液が透析装置(1)の血液チャンバーに入る。血液の温度が高められているので、透析膜を介して透析装置(1)の透析チャンバー中に拡散する、遊離した、透析可能毒素のプールの上昇が生じる。透析流体はアルブミンをも含み、アルブミンは毒素に対して結合し、従って透析流体中の遊離物質のプールが低く保たれ、従って、毒素の透析流体中への拡散が増強される。タンパク質-結合した物質を精製された血液が透析装置(1)を離れた場合、それは血液回路(3)へと戻される。
【0064】
透析装置(1)から、アルブミン-結合した毒素を含む透析流体は、透析流体の回路(2)に入る。HCl溶液は、定量ポンプ(4)を介して透析流体に対して加えられる。これにより、透析流体のpHが低下し、そして流体中の溶解した、遊離毒素のプールが増加する。透析流体回路(2)の下流に配置されているのは、透析流体を41?45℃に加熱する加熱装置であり、これによって遊離毒素のプールが更に増え、そしてタンパク質-結合した毒素の割合が低下する。循環系(2)における次の要素はカフェイン定量ポンプ(8)である。カフェインの添加は特にビリルビンを結合し、それによって透析流体におけるタンパク質-結合したビリルビンの割合が低下する。下流で、透析流体が他の透析装置(5)に入り、ここではいくらかの透析流体がこの系から、所望の濃度範囲に吸着体を維持するために、引き出される。加えて、透析物は、透析、ろ過又はジアフィルタレーションによって、特に、遊離の、タンパク質-結合する物質及びカフェイン-結合したビリルビンを除去するために精製される。アルブミンはそれが高分子量である故に膜を通過できない。透析流体回路(2)において透析装置(5)の出口から下流に配置されているのは、NaOH溶液を加えるための定量ポンプであり、加熱装置(6)はこの回路に対する入口から上流に配置されている。下流には、他の透析装置(5)が続き、それは加えられた流体を系から引き出し、そして透析、ろ過又はジアフィルタレーションによってアルカリ範囲で溶解した物質を除外する。循環系(2)における次の要素は、冷却装置(6)であり、それによって透析流体の温度が、患者の所望の温度に従い、適合される。次の定量ポンプ(4)は、HCl溶液を透析流体に対して、そのpHを中性範囲に調節するために使用されており、従って、アルブミンの結合能力が再度高まり、そして血液のpHが透析装置中で有害な影響を及ぼさない。循環系(2)における次の要素は、精製された透析流体が透析装置(1)内に再度入る前に、pH及び温度をチェックするためのpHメーター(9)及び温度計(10)である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】加熱及び冷却装置及び体外回路において代替物を加えるための装置を伴う本発明の手段の実施態様の簡略化した図示である。
【図2】体外回路においてpHを調節するための装置を伴う本発明の手段の実施態様の簡略化した図示である。
【図3】加熱及び冷却装置、透析流体回路においてpHを調節するための装置及び代替物を加えるための装置を伴う本発明の手段の実施態様の簡略化した図示である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質に結合した除去されるべき物質を含有する生物流体を透析するための手段であって:
-生物流体回路(3)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供されている生物流体回路、ここで当該手段は加熱及び冷却装置(6)並びに代替物を加えるための装置(7)から成る群から選択される、
-透析装置(1)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供されている透析装置、及び
-透析流体回路(2)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供され、かつ1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)が中に供されている透析流体回路、を伴い、
ここで、当該透析の手段中で使用可能な透析流体は、当該生物流体からタンパク質に結合した除去されるべき物質に対する吸着体を含み、そして
当該除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための当該手段(4;6;7;8;9)が、
-塩基を加えることによってpH8?13に調整することができる、当該使用可能流体のpHを調整するための1以上の装置(4)、及び
-酸を加えることによってpH2.5?5に調整することができる、当該使用可能流体のpHを調整するための1以上の装置(4)
を含み、
ここで、塩基を加えることによってpHを調整するための1以上の装置(4)が、1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の上流側又は下流側のいずれかに備えられ、かつ、酸を加えることによってpHを調整するための1以上の装置(4)が、1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の下流側又は上流側のいずれかに備えられる、
ことを特徴とする、前記手段。
【請求項2】
タンパク質に結合した除去されるべき物質を可溶化するための更なる手段(4;6;7;8;9)であって、以下の群:
-前記使用可能流体の温度を調整するための装置(6)、
-前記使用可能流体を希釈するため又は塩含量を変化せしめるために代替物を加えるための装置(7)、
-前記除去されるべき物質に対して結合する透析可能化合物を加えるための装置(8)、及び
-前記使用可能流体に波動を照射するための装置(9)、
から選択される手段を含んで成る、請求項1に記載の手段。
【請求項3】
前記使用可能流体のpHを調節するための装置(4)が酸を加えるための装置及び塩基を加えるための装置を含んで成ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の手段。
【請求項4】
前記温度を調節するための装置(6)が加熱又は冷却装置を含んで成ることを特徴とする、請求項2に記載の手段。
【請求項5】
前記加熱装置(6)が加熱装置、マイクロ波装置又は赤外線装置を含んで成り、そして前記冷却装置(6)が冷却ユニットであることを特徴とする、請求項4に記載の手段。
【請求項6】
前記照射装置(9)が超音波装置を含んで成ることを特徴とする、請求項2に記載の手段。
【請求項7】
前記生物流体を150℃に加熱するための装置(6)及び前記使用可能流体を冷却するための装置(6)が前記生物流体回路(3)中に供されていることを特徴とする、請求項1?6のいずれか1項に記載の手段。
【請求項8】
前記生物流体を45℃に加熱するための装置(6)及び前記使用可能流体を冷却するための装置(6)が前記生物流体回路(3)中に供されていることを特徴とする、請求項1?7のいずれか1項に記載の手段。
【請求項9】
前記加熱装置(6)は、前記透析流体回路(2)もしくは前記生物流体回路(3)に対する入口から上流に挿入されており、pHを調節するための装置(4)又は代替物を加えるための装置(7)から下流に挿入されていることを特徴とする、請求項2?8のいずれか1項に記載の手段。
【請求項10】
前記吸着体がアルブミンを含んで成ることを特徴とする、請求項1?9のいずれか1項に記載の手段。
【請求項11】
前記透析流体が、ヒト血清アルブミンを1?25g/100mlの濃度で含むことを特徴とする、請求項9に記載の手段。
【請求項12】
前記透析流体が、ヒト血清アルブミンを2?10g/100mlの濃度で含むことを特徴とする、請求項9に記載の手段。
【請求項13】
前記透析流体が、ヒト血清アルブミンを4?6g/100mlの濃度で含むことを特徴とする、請求項9に記載の手段。
【請求項14】
請求項1?9のいずれか1項に記載の、タンパク質に結合した除去されるべき物質を含有する生物流体を透析するための手段であって、前記透析の手段内で使用可能な透析流体が、当該生物流体から除去されるべき物質に対する吸着体を含まない手段。
【請求項15】
1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の下流に備えられた使用可能流体のpHを調整するための1以上の装置(4)が、当該使用可能流体のpHを中性に調整するように適合される、請求項2?14のいずれか1項に記載の手段。
【請求項16】
酸又は塩基を加えることによって使用可能流体のpHを調整するための1以上の更なる装置(4)を更に含み、該更なる装置(4)が当該使用可能流体のpHを中性に調整するように適合される、請求項1?14のいずれか1項に記載の手段。
【請求項17】
タンパク質に結合した除去されるべき物質を含有する生物流体を透析するための手段であって:
-生物流体回路(3)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供されている生物流体回路、ここで当該手段は加熱及び冷却装置(6)並びに代替物を加えるための装置(7)から成る群から選択される、
-透析装置(1)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供されている透析装置、及び
-透析流体回路(2)であって、タンパク質に結合した除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための1以上の手段(4;6;7;8;9)が供され、かつ1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)が中に供されている透析流体回路、を伴い、
ここで、当該透析の手段中で使用可能な透析流体は、当該生物流体からタンパク質に結合した除去されるべき物質に対する吸着体を含み、そして
当該除去されるべき物質を少なくとも部分的に可溶化するための当該手段(4;6;7;8;9)が、
-塩基を加えることによってpH8?13に調整することができる、当該使用可能流体のpHを調整するための1の装置(4)、及び
-酸を加えることによってpH2.5?5に調整することができる、当該使用可能流体のpHを調整するための1の装置(4)
を含み、
ここで、塩基を加えることによってpHを調整するための1の装置(4)が、1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の上流側又は下流側のいずれかに備えられ、かつ、酸を加えることによってpHを調整するための1の装置(4)が、1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の下流側又は上流側のいずれかに備えられる、
ここで前記1以上の透析、ろ過又はダイアフィルトレーション装置(5)の下流側に備えられたpHを調整するための1の装置(4)が、当該使用可能流体のpHを中性に調整するように適合される、
ことを特徴とする、前記手段。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2012-03-13 
出願番号 特願2004-503077(P2004-503077)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (A61M)
P 1 41・ 856- Y (A61M)
P 1 41・ 855- Y (A61M)
P 1 41・ 854- Y (A61M)
P 1 41・ 851- Y (A61M)
P 1 41・ 853- Y (A61M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内山 隆史  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 寺澤 忠司
関谷 一夫
登録日 2009-12-04 
登録番号 特許第4417832号(P4417832)
発明の名称 タンパク質-結合した物質を除去するための方法  
代理人 中村 和美  
代理人 福本 積  
代理人 武居 良太郎  
代理人 渡邉 陽一  
代理人 福本 積  
代理人 石田 敬  
代理人 石田 敬  
代理人 武居 良太郎  
代理人 古賀 哲次  
代理人 渡邉 陽一  
代理人 古賀 哲次  
代理人 青木 篤  
代理人 青木 篤  
代理人 中村 和美  

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