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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1255443
審判番号 不服2011-5656  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-14 
確定日 2012-04-12 
事件の表示 特願2007- 58775「電子カレンダー」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月25日出願公開、特開2008-225562〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成19年3月8日を出願日とする出願であって、平成22年9月15日付けの拒絶理由通知に対して同年11月19日付けで手続補正がなされたが、同年12月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年3月14日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされた。
その後、平成23年9月29日付けで審尋がなされ、同年12月2日付けで回答書が提出されたものである。


第2 平成23年3月14日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成23年3月14日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正

本件補正前に、
「【請求項1】
表示部と、
現在月情報に基づいて前記表示部に対応するカレンダー本体表示を行うとともに、現在月と同じ月に撮影されたイメージを表示する制御を行う表示制御部と
を有することを特徴とする電子カレンダー。
【請求項2】
表示部と、
イメージを格納する記憶部と、
現在月情報に基づいて前記表示部に対応するカレンダー本体表示を行うとともに、現在月情報と同じ月に撮影されたイメージを前記記憶部から取得して表示する制御を行う表示制御部と
を有することを特徴とする電子カレンダー。
【請求項3】
表示部と、
現在月情報に基づいて前記表示部に対応するカレンダー本体表示を行うとともに、現在月情報と同じ月に撮影されたイメージを外部から取得して表示する制御を行う表示制御部と
を有することを特徴とする電子カレンダー。
【請求項4】
前記イメージに、撮影時情報が付加されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の電子カレンダー。
【請求項5】
前記現在月情報は、年度と無関係であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の電子カレンダー。
【請求項6】
前記表示制御部は、現在日情報に基づいて、前記表示部に表示させる前記イメージデータを絞り込むことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の電子カレンダー。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記表示部の画面内に連続する複数ヶ月分のカレンダー本体を表示するとともに、前記複数ヶ月分のうちから現在月情報と同じ月に撮影されたイメージを表示させることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の電子カレンダー。
【請求項8】
表示させる前記イメージに撮影月に関する撮影時情報が付加されている場合に、該撮影時情報に関する表示も行うことを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の電子カレンダー。
【請求項9】
前記イメージは、撮影年度に関係なく、1から12までの月に対応するフォルダに振り分けられて格納されていることを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の電子カレンダー。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の電子カレンダーと、
前記電子カレンダーに対して、撮影したイメージに撮影時情報を付して送る撮影装置とを有することを特徴とする電子カレンダーシステム。
【請求項11】
表示部と、
現在月情報に基づいて前記表示部に対応するカレンダー本体表示を行うとともに、現在月と同じ月に撮影されたイメージを表示する制御を行う表示制御部とを有する電子カレンダーにおけるイメージの選択表示方法であって、
イメージを取得するステップと、
取得したイメージに撮影時情報が付されている場合に、該撮影時情報に基づいて、撮影年度に関係なく、記憶部の1から12までの月に対応するフォルダに振り分けて記憶するステップと
該記憶部に記憶されているイメージ中から現在月情報に基づいて表示対象イメージを選択するための表示を行うことにより選択を促すステップと
を備えるイメージの選択表示方法。
【請求項12】
請求項11に記載されるステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムを格納するコンピュータ読みとり可能な記録媒体。」
とあったところを、

「【請求項1】
表示部と、
現在月情報に基づいて前記表示部に対応するカレンダー本体表示を行うとともに、現在月および現在月と年を隔てた同じ月に撮影されたイメージから選択したイメージを表示する制御を行う表示制御部と
を有することを特徴とする電子カレンダー。
【請求項2】
表示部と、
イメージを格納する記憶部と、
現在月情報に基づいて前記表示部に対応するカレンダー本体表示を行うとともに、現在月および現在月と年を隔てた同じ月に撮影されたイメージから選択したイメージを前記記憶部から取得して表示する制御を行う表示制御部と
を有することを特徴とする電子カレンダー。
【請求項3】
表示部と、
現在月情報に基づいて前記表示部に対応するカレンダー本体表示を行うとともに、現在月および現在月と年を隔てた同じ月に撮影されたイメージから選択したイメージを外部から取得して表示する制御を行う表示制御部と
を有することを特徴とする電子カレンダー。
【請求項4】
前記イメージに、撮影時情報が付加されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の電子カレンダー。
【請求項5】
前記表示制御部は、現在日情報に基づいて、前記表示部に表示させる前記イメージデータを絞り込むことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の電子カレンダー。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記表示部の画面内に連続する複数ヶ月分のカレンダー本体を表示するとともに、前記複数ヶ月分のうちから現在月情報と同じ月に撮影されたイメージを表示させることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の電子カレンダー。
【請求項7】
表示させる前記イメージに撮影月に関する撮影時情報が付加されている場合に、該撮影時情報に関する表示も行うことを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の電子カレンダー。
【請求項8】
前記イメージは、撮影年度に関係なく、1から12までの月に対応するフォルダに振り分けられて格納されていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の電子カレンダー。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の電子カレンダーと、
前記電子カレンダーに対して、撮影したイメージに撮影時情報を付して送る撮影装置とを有することを特徴とする電子カレンダーシステム。
【請求項10】
表示部と、
現在月情報に基づいて前記表示部に対応するカレンダー本体表示を行うとともに、現在月および現在月と年を隔てた同じ月に撮影されたイメージから選択したイメージを表示する制御を行う表示制御部とを有する電子カレンダーにおけるイメージの選択表示方法であって、
イメージを取得するステップと、
取得したイメージに撮影時情報が付されている場合に、該撮影時情報に基づいて、撮影年度に関係なく、記憶部の1から12までの月に対応するフォルダに振り分けて記憶するステップと、
該記憶部に記憶されているイメージ中から現在月情報に基づいて表示対象イメージを選択するための表示を行うことにより選択を促すステップと
を備えるイメージの選択表示方法。
【請求項11】
請求項10に記載されるステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムを格納するコンピュータ読みとり可能な記録媒体。」
とするものである。


本件補正により補正された請求項1ないし3、10は、補正前の「現在月と同じ月に撮影されたイメージ」との発明特定事項を、「現在月および現在月と年を隔てた同じ月に撮影されたイメージから選択したイメージ」と限定するものである。

よって、本件補正は、補正前の請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

本願補正発明は、再掲すれば、次に記載するとおりのものである。

「表示部と、
現在月情報に基づいて前記表示部に対応するカレンダー本体表示を行うとともに、現在月および現在月と年を隔てた同じ月に撮影されたイメージから選択したイメージを表示する制御を行う表示制御部と
を有することを特徴とする電子カレンダー。」


2 引用例及びその記載事項

(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開平10-83146号公報(平成10年3月31日公開、以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

(a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、写真データを表示する電子式写真立てに関する。」

(b)「【0035】また、請求項12の発明は、請求項1?11のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記表示手段に前記写真データと共に、少なくともカレンダ情報及び時間情報のうちのいずれか一方又は両方を表示することを特徴とする。
【0036】これにより、この電子式写真立てを、カレンダ及び時計の少なくともどちらか一方、又はカレンダ及び時計の両方として利用することも可能となる。」

(c)「【0042】この電子式写真立て1は、写真データを表示する表示手段であるLCDパネル110と、前記LCDパネル110での前記写真データの表示を制御する制御手段である制御部112とを含む本体11と、前記本体11を着脱自在に支持する基台12とを有する。」

(d)「【0078】また、制御部112は、LCDパネル110に、前記メモリ114又はICカード130に記憶される写真データと共に、少なくともカレンダ情報及び時間情報のうちのいずれか一方を表示する。制御部112は、例えば内蔵するタイマ機能を使用して、カレンダ情報及び時間情報を表示する。前記カレンダ情報としては、例えば現在の月のカレンダを表示し、前記時間情報としては、例えば時計や数字によって現在の時刻を表示する。
【0079】具体的には、例えば図5に示すように、電子式写真立て1において、表示される写真データ50の下部に、さらに、カレンダ情報であるカレンダ52を表示する。」

ア 上記(a)の「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、写真データを表示する電子式写真立てに関する。」との記載、上記(b)の「【0035】‥‥‥制御手段は、前記表示手段に前記写真データと共に、少なくともカレンダ情報‥‥‥を表示する‥‥‥【0036】これにより、この電子式写真立てを、カレンダ‥‥‥として利用することも可能となる。」との記載、及び「【0079】具体的には、例えば図5に示すように、電子式写真立て1において、表示される写真データ50の下部に、さらに、カレンダ情報であるカレンダ52を表示する。」との記載から、引用例1に記載のものは、「写真データとカレンダー情報を表示する、電子式カレンダー」と捉えることができる。

イ 上記(c)の「【0042】この電子式写真立て1は、写真データを表示する表示手段であるLCDパネル110と、前記LCDパネル110での前記写真データの表示を制御する制御手段である制御部112とを含む本体11‥‥‥を有する。」との記載、及び上記(d)の「【0078】‥‥‥制御部112は、LCDパネル110に、前記メモリ114‥‥‥に記憶される写真データと共に、少なくともカレンダ情報‥‥‥を表示する。制御部112は、例えば内蔵するタイマ機能を使用して、カレンダ情報‥‥‥を表示する。前記カレンダ情報としては、例えば現在の月のカレンダを表示‥‥‥する。」との記載から、引用例1に記載の「電子式カレンダー」は、「LCDパネルに写真データを表示するとともに、内蔵するタイマ機能を使用して現在月のカレンダ情報を表示する制御部を有する」ものである。

上記引用例1に記載された事項、図面の記載、及び上記アないしイを総合すると、引用例1には、次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。

「LCDパネルに写真データを表示するとともに、内蔵するタイマ機能を使用して現在月のカレンダ情報を表示する制御部を有する、電子式カレンダー。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開2006-135430号公報(平成18年5月25日公開、以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

(e)「【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様のカレンダー表示機能を有する電子アルバムは、カレンダー表示としては月毎の表示を行い、表示当月を示す数字と曜日とを表示する月及び曜日表示行を該カレンダー表示の最上行に設け、上記月及び曜日表示行の下側のスペースに日付けを表示する複数の日付け表示行を設け、上記日付け表示行における上記月及び曜日表示行の中で月表示を示した列を画像を表示する画像表示部として用いることを特徴とするカレンダー表示機能を有することを特徴とする。」

(f)「【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第3の態様のカメラは、本発明の第1の態様に記載のカレンダー表示機能を有する電子アルバム機能を備えるカメラにおいて、以下の3つの表示モードにより、画像と日付けを関連付けした表示を行う。(a)月カレンダー表示と同時に、表示当月に入手又は撮影された1つの画像を表示し、上記月カレンダー表示においては、上記表示された画像の撮影日又は入手日の日付けを他の日付けから識別できるように表示する。(b)画像のみを表示し、さらに所定の操作を行うことにより月カレンダー表示を行うことができ、上記月カレンダー表示においては、上記表示された画像の撮影日又は入手日の日付けを他の日付けから識別できるように表示する。(c)月カレンダー表示と同時に、各週に撮影した画像を、上記月カレンダー表示において、撮影日の属する週の表示部と位置的に対応した位置に画像表示を行う。」

(g)「【0030】
図4に、上述の第x_(1)列の表示スペース(画像表示部25)を利用して画像を表示する場合の表示例を示す。同図は、表示当月に撮影した画像が、画像表示部25を上から下へ流れながら表示されていく様子を示している。また、同図に示すように、画像表示部25に表示される画像の撮影日に該当する日付部には、強調表示枠を設ける(図4では、1日の土曜日に強調表示枠)。」

(h)「【0032】
図6は、本実施形態に係るカレンダー表示機能を有する電子アルバムを使用するときの、実際の使用場面例を表す図である。以下、図6を用いて、本実施形態に係るカレンダー表示機能を有する電子アルバムの、実際の使用場面に応じた設置形態及び使用形態について説明する。
【0033】
まず、本実施形態に係るカレンダー表示機能を有する電子アルバム26をスタンド形式で用いる場合は、通常は図6(a)に示すようにスタンド28を用いて設置する。この場合は、例えば同図に示すように、食器棚等の家具の上にスタンド28を置き、そこにカレンダー表示機能を有する電子アルバム26を設置するような使用状況となる。このように設置することにより、ユーザー30は、同図に示すように日常的に気軽に、本実施形態に係るカレンダー表示機能を有する電子アルバムを鑑賞することができる。」

(i)「【0036】
以下、図7乃至図9に示す一連のフローチャートを用いて、本実施形態に係るカレンダー表示機能を有する電子アルバム26の動作制御について説明する。」

(j)「【0037】
まず、S1において、所望の画像再生を行う指示が行われたか否か(検索モードを選択したか否か)の判別を行う。すなわち、ユーザーによる入力手段2aの選択操作を、制御手段2が判断することにより、その判断結果に従って次のステップへ進む。以下、S1をY分岐して検索モードに進む場合の動作制御を説明する。検索モードが選択された場合には、S1をY分岐してS10へ進む。」

(k)「【0054】
次に、上記フローチャートのうち、カレンダーモードに関する動作制御の部分について説明する。
【0055】
まず、検索モードに進むか否かを決定するS1においてN分岐し、S2へ進む。S2は、カレンダーモードに進むか否かのユーザーの選択を判別するステップである。このステップでは、ユーザーによる入力手段2の操作を制御手段2が判別する。ここで、カレンダーモードが指定された場合には、ここをY分岐してS3へ進む。」
【0056】
S3は、ユーザーが、表示させたい月を指定するステップである。このステップでは、ユーザーによる入力手段2aの月指定操作を制御手段2が判断し、その判断結果に従った制御をすることにより、表示手段10に指定された月のカレンダーが表示される。」

ウ 上記(e)の「【0009】‥‥‥カレンダー表示機能を有する電子アルバムは、カレンダー表示としては月毎の表示を行い、‥‥‥月表示を示した列を画像を表示する画像表示部として用いる‥‥‥」との記載、上記(f)の「【0011】‥‥‥本発明の第1の態様に記載のカレンダー表示機能を有する電子アルバム機能を備えるカメラにおいて、‥‥‥(a)月カレンダー表示と同時に、表示当月に‥‥‥撮影された1つの画像を表示‥‥‥する。」との記載、及び上記(g)の「【0030】 図4に、‥‥‥表示スペース(画像表示部25)を利用して画像を表示する場合の表示例を示す。‥‥‥」との記載から、引用例2には、カレンダー表示機能を有する電子アルバムにおいて、月毎のカレンダー表示を行うとともに表示当月に撮影された画像を表示する技術が記載されている。

エ 上記(h)の記載、及び図6から、引用例2に記載の、カレンダー表示機能を有する電子アルバムは、その使用態様として、視認可能な場所に日常的に表示させることも予定されているから、現在月のカレンダー表示を行う、電子カレンダーとしても使用し得るものといえる。また、上記(i)ないし(k)の記載、及び図7のフローチャートから、所望の画像再生を行う「検索モード」の他に「カレンダモード」を有することからも現在月のカレンダー表示を行う、電子カレンダーとして使用し得るものといえる。

3 対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明において、「LCDパネル」は本願補正発明の「表示部」に相当する。

(2)引用発明において、「LCDパネル」に「内蔵するタイマ機能を使用して現在月のカレンダ情報を表示する」ことは、本願補正発明の「現在月情報に基づいて前記表示部に対応するカレンダー本体表示を行う」ことに相当する。

(3)引用発明において、「LCDパネル」に「写真データを表示する」ことは、本願補正発明の「撮影されたイメージを表示する」ことに相当する。

(4)引用発明において、「現在月のカレンダ情報」と「写真データ」とを「表示する制御部」は、本願補正発明の「カレンダー本体表示を行うとともに、」「イメージを」「表示する制御を行う制御部」に相当する。

すると、本願補正発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>

「表示部と、
現在月情報に基づいて前記表示部に対応するカレンダー本体表示を行うとともに、撮影されたイメージを表示する制御を行う表示制御部と
を有する電子カレンダー。」

<相違点>

表示するイメージに関し、本願補正発明が、「現在月および現在月と年を隔てた同じ月に撮影されたイメージから選択した」ものを表示するのに対し、引用発明は、このような特定がない点。


4 判断

<相違点>について
引用例2には、カレンダー表示機能を有する電子アルバムにおいて、月毎のカレンダー表示を行うとともに表示当月に撮影された画像を表示する技術が記載されており(上記2(2)ウ)、また、引用例2に記載の「カレンダー表示機能を有する電子アルバム」は、現在月のカレンダー表示を行う、電子カレンダーとして使用し得るものであるから(上記2(2)エ)、前記技術を、引用発明の、現在月のカレンダ情報が表示されるとともに写真データが表示される電子カレンダーに適用して、現在月に撮影されたイメージを表示することは、当業者が容易になし得ることである。
また、一般に、カレンダー本体の表示に加え、月や季節に合わせたイメージを表示することは、周知であり(例えば、登録実用新案第3040756号公報(段落【0010】「【考案の作用並びに効果】‥‥‥カレンダ-本体の表面の日付欄の余白部に、‥‥‥自分の選んだ家族旅行写真、慰安旅行写真、記念写真などをアルバム等から取り出して差込み掲示することにより、‥‥‥その月その月の季節にマッチした写真を選ぶことなども趣を添える‥‥‥」)、実願昭57-79933号(実開昭58-185463号)のマイクロフィルム(第4頁第8ないし12行「手持ちの色々な趣味や行事の写真‥‥‥子供や家族の写真、‥‥‥芸術写真などを、月や季節に合わせて構成・配置し、それを貼付しあるいは固定すると‥‥‥カレンダーが出来上る。」)、また、カレンダーの表示における経験則からも明らかである。
してみれば、引用発明に引用例2記載の技術を適用した際に、現在月に撮影された写真がない場合などに限らず、現在月と年を隔てた同じ月に撮影されたイメージを選択することは、当業者が適宜なし得る事項である。
したがって、本願補正発明のように、現在月および年を隔てた同じ月に撮影されたイメージから選択したイメージを表示することに格別の困難性を有しない。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願補正発明が奏する効果は引用例1、引用例2に記載された発明及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例1、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。


5 本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明

平成23年3月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成22年11月19日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1 」の本件補正前の「請求項1」として記載したとおりのものである。


2 引用例

原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2[理由] 2 引用例及びその記載事項」に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明の「現在月および現在月と年を隔てた同じ月に撮影されたイメージから選択したイメージ」から、「および現在月」「年を隔てた」「から選択したイメージ」との限定を削除し、「現在月と同じ月に撮影されたイメージ」とするものである。

そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 〔理 由〕 4 判断」に示したとおり、引用例1、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
 
審理終結日 2012-02-03 
結審通知日 2012-02-07 
審決日 2012-02-24 
出願番号 特願2007-58775(P2007-58775)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 俊範北元 健太  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 西山 昇
殿川 雅也
発明の名称 電子カレンダー  
代理人 今村 健一  
代理人 渡辺 敏章  
代理人 平木 祐輔  

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