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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1255923
審判番号 不服2010-4479  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-01 
確定日 2012-04-26 
事件の表示 特願2007- 25206「ディジタル放送受信機」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月 5日出願公開、特開2007-174696〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成19年2月5日の特許出願であって、特願平10-37413号(平成10年2月19日出願)の分割出願として出願されたものであり、平成20年11月13日付けで拒絶理由が通知され、平成21年1月16日付けで手続補正書が提出され、同年8月28日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年10月30日付けで手続補正書が提出され、同年11月20日付けで同年10月30日付けの手続補正に対する補正の却下の決定がされ、同日付けで拒絶査定され、これに対して平成22年3月1日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。


2.平成22年3月1日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年3月1日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の請求項1に係る発明
平成22年3月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、以下のとおり、特許請求の範囲の請求項1を、平成21年1月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「補正前の請求項1」という)から補正後の請求項1に変更する補正事項を含むものである。

<補正前の請求項1>
「放送波を受信する受信部と、
情報を表示する表示部と、
受信中の周波数に放送波が存在するかを検知する放送波検知部と、
前記放送波検知部が放送波を検知した場合、該放送波の周波数に基づく第1の情報を前記表示部に表示する周波数表示制御部と、
前記受信部により受信した該放送波から取得した放送情報に基づく第2の情報を前記表示部に表示する放送情報表示制御部と、を備え、
前記周波数表示制御部は、前記放送情報表示制御部による前記第2の情報の表示に先立ち前記第1の情報を表示し、
前記放送情報表示制御部は、前記周波数表示制御部による前記第1の情報の表示後、前記第2の情報を追加表示することを特徴とするディジタル放送受信装置。」

<補正後の請求項1>
「設定された周波数の放送波を受信する受信部と、
情報を表示する表示部と、
受信設定された周波数に放送波が存在するかを検知する放送波検知部と、
前記放送波検知部が放送波を検知した場合、該放送波の周波数に基づく第1の情報を取得して前記表示部に表示させる周波数表示制御部と、
前記受信部により受信した該放送波から取得した放送情報に基づく第2の情報を取得して前記表示部に表示させる放送情報表示制御部と、を備え、
前記周波数表示制御部は、前記放送情報表示制御部による前記第2の情報の取得に先立ち前記第1の情報を前記表示部に表示させ、
前記放送情報表示制御部は、前記周波数表示制御部による前記第1の情報の表示後、前記第2の情報を前記表示部に追加表示することを特徴とするディジタル放送受信装置。」

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、受信部が受信する「放送波」については「設定された周波数の放送波」、放送波検知部が検知する「周波数」については「受信設定された周波数」、周波数表示制御部による「第1の情報を前記表示部に表示する」については「第1の情報を取得して前記表示部に表示させる」、放送情報表示制御部による「第2の情報を前記表示部に表示する」については「第2の情報を取得して前記表示部に表示させる」との補正事項により限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。


(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-153630号公報(以下、「引用例」という)には、下記の事項が記載されている。

(あ)「本発明は、以上の様に構成したものであるから、受信放送信号に放送局名データを有する付加情報データが多重されていた場合、受信後、所定時間は、受信周波数を表示し、その後放送局名を一度に表示する。」(第3頁左下欄第7行?第11行)

(い)「第4図(A)(B)は、前記プログラムメモリ(17)に書き込まれたプログラムの要部のフローチャートを示し、以下これに基づいて動作を説明する。
まず、電源投入後、CPU(16)は、フラグレジスタFを0にイニシャルセットし、プリセットキー(10)乃至(13)の操作状態を監視する。ここで、いずれかのプリセットキーが操作された場合、このプリセットキーに対応する周波数データをデータメモリ(18)より読み出してFMチューナ回路(2)の局部発振回路及び駆動回路(9)に送出し、FMチューナ回路(2)をその周波数に同調させると共に文字表示器(8A)に周波数表示させる(周波数表示の場合は、ドットを小数点表示として使用する)(ステップS-1?3)。次に、FMチューナ回路(2)が所定の周波数に同調すれば、受信局がRDS局か否かを判断し(RDSデコーダ(7)は、57KHzの副搬送波を検出すると、所定の信号を出力する)、RDS局であれば、RDSランプ点灯信号を駆動回路(9)に出力し、RDSランプ(8B)を点灯させる(ステップS-4,5)。そして、受信局がRDS局である場合は、RDSデータのグループタイプコードを解読してこのRDBデータにPSが含まれているか否かを判断し、PSが含まれていれば、PSランプ点灯信号を駆動回路(9)に出力し、PSランプ(8C)を点灯せしめると共にタイマーをイニシャルスタートし、そしてフラグレジスタFを1にセットする(ステップS-6?9)。次に、RDSデータの1グループからアドレスコード、文字コードの夫々を検出し、このアドレスコードに応じたコードメモリ(19)の領域に文字コードをストアする(アドレスコードに従って文字コードをストアすることにより、表示順(コードメモリのアドレス順)に文字コードがストアされることになる)(ステップS-10)。而して、8文字分の文字コード(スペースも含め)を全てコードメモリ(19)にストアした後は、コードメモリ(19)より文字コードをアドレス順に読み出し、そして、文字コードに対応する文字データをフォントメモリ(20)より読み出してデータメモリ(18)にストアする(ステップS-11,12)。この状態で7秒(ステップS-9?12の処理時間よりも十分長く、受信周波数を認識するに十分な時間)経過後、データメモリ(18)の文字データを駆動回路(9)に送出し、全ての文字を同時に文字表示器(8A)に表示する(ステップS-13,14)、ここでは、前述した様に放送局名が”P3Jonk”(審決注:「P3Jonk」の「o」は実際にはウムラウト記号のついた文字であるが表記できないためウムラウト記号のついてない文字で代替してある)であれば”P3 J nk”と表示される。」(第4頁左下欄第9行?第5頁左上欄第15行)

(う)上記(い)には、チューナ回路で受信する放送信号は、プリセットキーにより受信を設定された周波数に対応する放送信号であることが記載されているので、引用例のチューナ回路は、「設定された周波数の放送信号を受信するチューナ回路」であるといい得るものである。

(え)上記(い)には、プリセットキーにより受信するために設定された周波数データをFMチューナ回路と駆動回路へ送出し、FMチューナ回路がその周波数に同調すれば、受信局がRDS局か否かの判断を行っていることが記載されているので、引用例の構成では「受信設定された周波数で同調したかを判断する判断構成」を有していることは明らかである。

(お)上記(い)には、文字表示器に表示される周波数はデータメモリ(18)から取り出されるものであることが記載されているので、引用例の構成は、「受信設定された周波数を取得して文字表示器に表示させる周波数表示のための構成」を有しているといえる。

(か)上記(あ)及び(い)には、プリセットキーが操作されると、プリセットキーに対応する周波数が文字表示器に表示され、受信局がRDS局である場合には、文字表示器に周波数を表示した後に、受信した放送信号のRDBデータに基づいて放送局名を取得し、取得した放送局名を文字表示器に表示させることが記載されているので、引用例の構成は、「チューナ回路により受信した放送信号から取得したRDBデータに基づく放送局名を取得して文字表示器に表示させる放送局名表示のための構成」を有しており、また、「放送局名の取得に先立ち周波数を文字表示器に表示」させているものといえる。

上記(あ)乃至(か)及び関連図面の記載から、引用例には、実質的に下記の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
「設定された周波数の放送信号を受信するチューナ回路と、
周波数及び放送局名を表示する文字表示器と、
受信設定された周波数で同調したかを判断する判断構成と、
受信設定された周波数を取得して前記文字表示器に表示させる周波数表示のための構成と、
前記チューナ回路により受信した該放送信号から取得したRDBデータに基づく放送局名を取得して文字表示器に表示させる放送局名表示のための構成と、を備え、
前記周波数表示のための構成は、前記放送局名表示のための構成による前記放送局名の取得に先立ち前記周波数を前記文字表示器に表示させ、
前記放送局名表示のための構成は、前記周波数表示のための構成による前記周波数の表示後、前記放送局名を前記文字表示器に表示する受信機。」


(3)対比
(3-1)本件補正発明と引用発明との対応関係について
(ア)引用発明の「放送信号」、「チューナ回路」、「文字表示器」は、本件補正発明の「放送波」、「受信部」、「表示部」に相当する。

(イ)引用発明では、「受信設定された周波数で同調したかを判断」することが行われるが、「同調した」とは「受信設定された周波数」において放送信号が存在したことを意味していることを鑑みれば、引用発明の「受信設定された周波数で同調したかを判断する判断構成」は、本件補正発明の「受信設定された周波数に放送波が存在するかを検知する放送波検知部」に相当している。

(ウ)引用発明で文字表示器に表示される「受信設定された周波数」は、いずれかの放送信号の周波数に対応したものであることは明らかであり、また、引用発明では、受信設定された周波数の放送信号が同調した場合と、同調しなかった場合のそれぞれにおいて「受信設定された周波数」が文字表示器に表示される構成になっている。
してみると、引用発明の「受信設定された周波数」は、「放送信号の周波数」といい得るものであり、また、引用発明の「周波数表示のための構成」は、放送信号の周波数で同調した場合、該放送信号の周波数を取得して文字表示器に表示させるものであるということができる。
よって、引用発明の「受信設定された周波数を取得して前記文字表示器に表示させる周波数表示のための構成」は、本件補正発明の「前記放送波検知部が放送波を検知した場合、該放送波の周波数に基づく第1の情報を取得して前記表示部に表示させる周波数表示制御部」に相当している。

(エ)本願明細書の段落【0028】には、放送情報が放送局、放送内容等の情報を含むことが記載されているので、引用発明の「RDBデータ」、「放送局名」は、本件補正発明の「放送情報」、「第2の情報」に相当している。

(オ)上記(ア)、(ウ)及び(エ)の関係から、引用発明の「周波数及び放送局名を表示する文字表示器」は、本件補正発明の「情報を表示する表示部」に相当している。

(カ)上記(ア)、(エ)及び(オ)の関係から、引用発明の「前記チューナ回路により受信した該放送信号から取得したRDBデータに基づく放送局名を取得して文字表示器に表示させる放送局名表示のための構成」は、本件補正発明の「前記受信部により受信した放送波から取得した該放送情報に基づく第2の情報を取得して前記表示部に表示させる放送情報表示制御部」に相当している。

(キ)引用例の第4頁左上欄第8行?左下欄第8行には、RDS受信機が、2相PSK変調され音声信号と多重化されたRDSデータを受信後、RDS変調信号を復調して文字データを表示することが記載されているので、引用発明の「受信機」は「ディジタル放送受信機」と呼び得るものである。

(3-2)本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点について
上記の対応関係から、本件補正発明と引用発明は、下記の点で一致し、また相違する。

(一致点)
「設定された周波数の放送波を受信する受信部と、
情報を表示する表示部と、
受信設定された周波数に放送波が存在するかを検知する放送波検知部と、
前記放送波検知部が放送波を検知した場合、該放送波の周波数に基づく第1の情報を取得して前記表示部に表示させる周波数表示制御部と、
前記受信部により受信した該放送波から取得した放送情報に基づく第2の情報を取得して前記表示部に表示させる放送情報表示制御部と、を備え、
前記周波数表示制御部は、前記放送情報表示制御部による前記第2の情報の取得に先立ち前記第1の情報を前記表示部に表示させ、
前記放送情報表示制御部は、前記周波数表示制御部による前記第1の情報の表示後、前記第2の情報を前記表示部に表示することを特徴とするディジタル放送受信装置。」

(相違点)
放送情報表示制御部により表示させられる第2の情報は、本件補正発明では、「前記第1の情報の表示後、前記第2の情報を前記表示部に追加表示」するとされているのに対し、引用発明では、表示されている「周波数」に対して「放送局名」は追加表示されない点。


(4)当審の判断
(4-1)相違点について
放送受信装置において、放送受信装置が受信している周波数及び該周波数に対応した放送局名を表示させることは、例えば、実願平3-104596号(実開平5-48430号公報)のCD-ROM(段落【0007】?【0008】には、RDS受信機が、プリセットキーに対応する放送局を受信し、放送局名と周波数を両方表示することが記載されている)に記載されているように周知技術である。

してみると、引用発明の放送受信装置に上記周知技術を適用し、周波数を表示させた後に放送局名を追加表示することには、格別の困難性は認められない。

よって、引用発明の「前記周波数表示のための構成による前記周波数の表示後、前記放送局名を前記文字表示器に表示する」を、「前記周波数表示制御部による前記第1の情報の表示後、前記第2の情報を前記表示部に追加表示する」ようなものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(4-2)本件補正発明の作用効果について
また、本件補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。


(5)むすび
よって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。



3.補正却下の決定を踏まえた検討
(1)本願発明
平成22年3月1日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成21年1月16日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。

「放送波を受信する受信部と、
情報を表示する表示部と、
受信中の周波数に放送波が存在するかを検知する放送波検知部と、
前記放送波検知部が放送波を検知した場合、該放送波の周波数に基づく第1の情報を前記表示部に表示する周波数表示制御部と、
前記受信部により受信した該放送波から取得した放送情報に基づく第2の情報を前記表示部に表示する放送情報表示制御部と、を備え、
前記周波数表示制御部は、前記放送情報表示制御部による前記第2の情報の表示に先立ち前記第1の情報を表示し、
前記放送情報表示制御部は、前記周波数表示制御部による前記第1の情報の表示後、前記第2の情報を追加表示することを特徴とするディジタル放送受信装置。」


(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。


(3)対比・判断
本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明から、同じく2.(1)で示した補正事項により限定する事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要素を全て含み、さらに特定の点に限定を施したものに相当する本件補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)附記
なお、審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】において、
「e)しかしながら、引用文献1及び2には、検知された放送波の周波数を表示(放送波が検出された場合はすぐに表示)することについての記載は無く、本願発明のように、サーチ受信時に利用者が検知された放送波を聴くかどうかを素早く判断できるようにするために、先ず、素早い表示が可能な、検知された放送波の周波数(周波数に基づく放送局名等)表示を行い、その後に復号後の詳細情報を表示するという、本発明独自の技術思想は開示され示唆されておりません。即ち、本願発明は、“使用者は受信周波数を見れば略放送局は認識できる(特に通常の生活範囲内に位置する場合)”と言う事実に思い至り、“受信データから得られる詳細情報は、放送波受信時点(放送波検出時点)から入手(表示可能な状態(復号処理完了))までに時間を要するが、受信周波数は即時得られる”ことから、“放送波受信時(放送波検出時)に、復号処理完了前に先ず受信周波数を表示し、復号処理完了後に詳細情報を表示すれば、受信周波数に対応する放送内容を略把握している多くの場合に好適に対応でき、詳細情報がなければ放送内容を把握できないといった場合でも好適に対応できる”と言う技術思想に基づいてなされたものです。このような本発明の本質的な技術思想は引用文献1及び2には全く開示され、示唆されておりません。
f)即ち、本願の「周波数表示制御部が、放送情報表示制御部による第2の情報の取得に先立ち前記第1の情報を前記表示部に表示させる」構成、さらに、「放送情報表示制御部が、周波数表示制御部による第1の情報の表示後、第2の情報を前記表示部に追加表示させる」構成は、引用文献1および2には全く開示され示唆されていません。」
と主張している。

しかしながら、下記のA乃至Cの事情を勘案すれば、上記請求人の主張を採用することはできない。

A.審判請求書において、請求人は、当審決の「引用例」である引用文献1には、「検知された放送波の周波数を表示する」ことについての記載が無いと主張している。
しかしながらが、上記2.(3)の(ウ)に摘記したように、引用発明の「周波数表示のための構成」は、放送信号の周波数で同調した場合、該放送信号の周波数を取得して文字表示器に表示させるものであるということができるので、引用例においても「検知された放送波の周波数を表示する」構成が記載されているといえるので、当該主張は当を得たものとはいえない。

B.審判請求書において、請求人は、「本願発明のように、サーチ受信時に利用者が検知された放送波を聴くかどうかを素早く判断できるようにするために、先ず、素早い表示が可能な、検知された放送波の周波数(周波数に基づく放送局名等)表示を行い、その後に復号後の詳細情報を表示するという、本発明独自の技術思想は開示され示唆されておりません。」と主張しているが、補正後の請求項1には、サーチ受信時である点を特定する構成は記載されておらず、引用例に記載されたプリセットキーの操作に基づく放送信号の受信構成を含むものとなっていることから、当該主張は請求項1の記載に基づいたものではない。

C.審判請求書において、請求人は、「本願の『周波数表示制御部が、放送情報表示制御部による第2の情報の取得に先立ち前記第1の情報を前記表示部に表示させる』構成、さらに、『放送情報表示制御部が、周波数表示制御部による第1の情報の表示後、第2の情報を前記表示部に追加表示させる』構成は、引用文献1および2には全く開示され示唆されていません。」と主張している。
しかしながら、上記2.(2)の(か)に摘記したように、引用例には、「放送局名の取得に先立ち周波数を文字表示器に表示」させることが記載され、引用発明の「周波数」、「放送局名」、「文字表示器」は、本願発明の「第1の情報」、「第2の情報」、「表示器」に相当しているので、少なくとも引用例には、「第2の情報の取得に先立ち前記第1の情報を前記表示部に表示させる」構成、及び、「第1の情報の表示後、第2の情報を前記表示部に表示させる」構成は記載されているといえる。
また、上記2.(4)(4-1)に記載したように、放送受信装置が受信している周波数及び該周波数に対応した放送局名を表示させることは周知技術にすぎないので、引用発明に上記周知技術を適用し、周波数の表示後、放送局名を「追加表示」させることに格別の困難性は認められない。以上のことを踏まえると、当該主張は当を得たものとはいえない。


(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-22 
結審通知日 2012-02-28 
審決日 2012-03-12 
出願番号 特願2007-25206(P2007-25206)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
P 1 8・ 575- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原田 聖子小池 堂夫石田 昌敏  
特許庁審判長 岩崎 伸二
特許庁審判官 飯田 清司
猪瀬 隆広
発明の名称 ディジタル放送受信機  
代理人 水谷 好男  
代理人 鶴田 準一  
代理人 青木 篤  

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