• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23K
審判 全部無効 2項進歩性  A23K
管理番号 1256631
審判番号 無効2011-800102  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-06-22 
確定日 2012-04-16 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4477700号発明「飼料」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
平成21年 2月17日 本件国際出願
(PCT/JP2009/000617,
優先権主張 平成20年6月27日,日本国)
平成21年11月30日 国内段階移行
(特願2009-550182号)
平成22年 3月19日 特許権の設定登録
(特許第4477700号,請求項の数2)
平成23年 6月22日 本件無効審判請求
平成23年10月 7日 被請求人より答弁書及び訂正請求書提出
平成23年11月17日 請求人より弁駁書提出
平成23年12月 2日 請求人より手続補正書提出
平成23年12月15日 審理事項通知
平成24年 1月24日 請求人,被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成24年 2月 7日 口頭審理

第2 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は,特許4477700号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,その理由として以下の無効理由を主張し,証拠方法として甲第1?12号証を提出した。

[無効理由]
(1)無効理由1
本件特許の請求項1及び2に係る発明は,甲第1号証に記載された発明であり,少なくとも甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証に記載の技術常識に基いて当業者が容易に想到し得たものであるから,特許法第29条第1項第3号または特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,請求項1及び2に係る特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。

(2)無効理由2
本件特許の請求項1及び2に係る発明は,甲第2号証に記載された発明であり,少なくとも甲第2号証に記載された発明及び甲第4号証に記載の技術常識に基いて当業者が容易に想到し得たものであるから,特許法第29条第1項第3号または特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,請求項1及び2に係る特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。

(3)無効理由3
本件特許の請求項1及び2に係る発明は,甲第3号証に記載された発明であり,少なくとも甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証に記載の技術常識に基いて当業者が容易に想到し得たものであるから,特許法第29条第1項第3号または特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,請求項1及び2に係る特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。

(4)無効理由4
請求項1及び2は,以下の点で,特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定の要件を満たしておらず,請求項1及び2に係る特許は,特許法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものである。
ア 請求項1の「蛋白質含量42.5?55%」及び「粗繊維6%以下」なる数値限定は,どのような水分含量における数値限定であるかが不明であるため,当該数値限定の技術的意義が不明であり,どのようなものが技術的範囲に包含されるかが不明確であるから,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
イ 請求項1には,「蛋白質含量42.5?55%」及び「粗繊維6%以下」との記載があるが,明細書には,このうちの一部しか開示がなく,その他の含量においても本件特許発明の効果を奏するのか不明であって,「蛋白質含量42.5?55%」及び「粗繊維6%以下」の数値範囲全てがサポートされたものではない。よって,請求項1は,特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものである。
ウ 請求項1には飼料中の粗繊維含量が規定されておらず,発明の技術的意義が不明である。よって,請求項1は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
エ 請求項1には,飼料中のその他の配合成分が規定されていないため,その他の成分としてどのようなものでも含み得るが,実施例においてはある特定の配合について開示されているのみであるから,明細書に開示の無い発明を包含していることは明らかでありサポート要件を満たしていない。
よって,請求項1は,特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものである。
オ 請求項2も請求項1と同様であり,特許法第36条第6項第1号及び第2号に違反する。

(5)平成23年10月7日付け訂正請求書による訂正は,以下のように訂正要件に違反するものであるから,認容されるべきではない。
ア 平成23年10月7日付け訂正請求書による訂正のうち,請求項1に「菜種粕を篩分け処理して得られ,そして」を追記する訂正は,実質的に発明のカテゴリーを変更し,実質上特許請求の範囲を変更するものであるから,特許法第134の2第5項で準用する特許法第126条第4項に規定する訂正の要件を満たしていない。
イ 平成23年10月7日付け訂正請求書による訂正のうち,請求項1に「粗脂肪2.26?3.6%」を追記する訂正は,新規事項を追加する訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を変更するものであるから,特許法第134の2第5項で準用する特許法第126条第3項及び第4項に規定する訂正の要件を満たしていない。
すなわち,訂正後の発明に相当する実施例は,本件特許明細書の実施例1のみである。粗脂肪含量3.6%の根拠となる実施例10は,菜種粕を篩分け処理して得られたものであるか不明であり,実施例1と傾向が異なることから,菜種粕を篩分け処理して得られたものとは考えにくい。また,2.26%,3.6%との数値が連続的数値範囲の上限,下限等の境界値として記載されたものとも認められないから,請求項に「粗脂肪2.26?3.6%」を追記する訂正は,新規事項を追加する訂正である。そして,当該事項に基いて技術的意義や臨界的意義・格別の効果を主張することは,実質上特許請求の範囲の変更である。
ウ 平成23年10月7日付け訂正請求書による訂正のうち,特許明細書段落【0017】の「菜種を脱皮する方法,洗浄や酵素処理,アルコール処理,篩分け処理などにより蛋白質を濃縮する方法など,いずれでも可能」を「菜種粕を篩分け処理により蛋白質濃縮する方法が可能」とする訂正は,明りょうでない記載の釈明に該当せず,その後に続く「中でも」の意味を異ならせるものであるから,新規事項を追加する訂正に該当し,特許法第134の2第1項及び同条第5項で準用する特許法第126条第3項に規定する訂正の要件を満たしていない。

(6)訂正後の請求項1,2に係る発明に対する無効理由1
仮に本件訂正が認められるとしても,訂正後の請求項1,2に係る発明は,甲第4号証記載の技術常識を考慮すれば,甲第1号証記載の発明及び菜種粕を高蛋白・低繊維含量とするために菜種粕を篩分け処理するという周知技術から,または該周知技術を組み合わせるまでもなく甲第1号証記載の発明から,当業者が容易に想到することができたものであり,依然として,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,訂正後の請求項1,2に係る発明に係る特許は,特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。
ア 甲第1号証には,「蛋白質含量42.5?55%かつ粗繊維6%以下の菜種粕を1?20%配合した飼料」の範囲に包含される飼料が開示される。
甲第1号証には,高蛋白,比較的高い脂質,粗繊維が低いものが記載されているが,技術常識を考慮すれば,高蛋白・低繊維の菜種粕を飼料に添加することが示されているといえる。
飼料の技術分野における,菜種粕を高蛋白・低繊維含量とする技術として,菜種粕を篩分け処理することは,甲第8号証,甲第11号証に記載のように周知の技術である。
甲第1号証記載の発明の高蛋白・低繊維含量の菜種粕の製造がコスト高になることは当業者に明らかであり,高蛋白・低繊維含量の菜種粕を得るためによりコストに見合う安価な製造法として,周知技術である菜種粕の篩分け処理を適用しようとすることには動機があるから,甲第1号証に記載の発明において,高蛋白・低繊維含量の菜種粕を得るために,甲第8号証,甲第11号証に示される菜種粕を篩分け処理する技術を適用しようと試みることは,当業者が容易になし得ることである。粗脂肪含量2.26?3.6%は,一般的な菜種粕を篩分け処理の原料として使用した結果に過ぎず,粗脂肪含量に何らの技術的意義はなく,数値範囲に臨界的意義もない。
また,油は絞れるだけ絞って売るということが常識であるから,菜種粕の粗脂肪を減らすことには動機がある。
よって,甲第1証記載の発明と周知技術から,訂正後の請求項1に係る発明を構成することは,当業者が容易になし得たことである。
イ 甲第1号証には,「蛋白質含量42.5?55%かつ粗繊維6%以下の菜種粕を1?20%配合した飼料」の範囲に包含される飼料を家畜に投与することが開示される。
飼料中の粗繊維含有量が低下すると消化効率が向上しふん量が減少することは,甲第4号証に示されるように,出願時の技術常識である。
よって,甲第1号証に記載の発明と周知技術から,訂正後の請求項2に係る発明を構成することは,当業者が容易になし得たことである。
ウ 訂正後の請求項1に係る発明は,物の発明であり,「菜種粕を篩分けして得られ」という製造プロセス部分は物として差別化する発明特定事項ではない。
甲第1号証には,「蛋白質含量42.5?55%かつ粗繊維6%以下の菜種粕を1?20%配合した飼料」の範囲に包含される飼料が開示される。
粗脂肪含量を2.26?3.6%とすることは,当業者が原料の選択や製造コストによって適宜変更する設計事項に過ぎず,訂正後の請求項1に係る発明は,甲第1号証記載の発明に基いて進歩性を欠如するものであり,特許法第29条第2項に違反してされたものである。
エ 訂正後の請求項2に係る発明において「菜種粕を篩分けして得られ」という製造プロセス部分は,請求項1同様,発明の内容を差別化する発明特定事項ではない。
粗脂肪含量を2.26?3.6%とすることは,当業者が原料の選択や製造コストによって適宜変更する設計事項に過ぎず,また,飼料中の粗繊維含有量が低下すると消化効率が向上しふん量が減少することは,甲第4号証に示されるように出願時の技術常識であるから,訂正後の請求項2に係る発明は,甲第1号証記載の発明に基いて進歩性を欠如するものであり,特許法第29条第2項に違反してされたものである。

(7)訂正後の請求項1,2に係る発明に対する無効理由2
仮に本件訂正が認められるとしても,訂正後の請求項1,2に係る発明は,甲第4号証記載の技術常識を考慮すれば,甲第2号証記載の発明及び菜種粕を高蛋白・低繊維含量とするために菜種粕を篩分け処理するという周知技術から,または該周知技術を組み合わせるまでもなく甲第2号証記載の発明から,当業者が容易に想到することができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,訂正後の請求項1,2に係る発明に係る特許は,特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。
ア 菜種粕を1?20%配合した飼料が,甲第1号証,甲第5?7号証に記載されるように周知技術であることを考慮すると,甲第2号証には,「蛋白質含量42.5?55%かつ粗繊維6%以下の菜種粕を1?20%配合した飼料」の範囲に包含される飼料が開示される。
甲第2号証のTable1は,脱皮粉末の組成を示しているが,脱皮粉末は菜種粕であると理解できる。低繊維・高蛋白の菜種粕の粉末は,甲第2号証のTable1にもTable3にも記載のように公知のものである
甲第1号証に関して指摘したのと同様の動機付けにより,甲第2号証記載の発明と上記周知技術から,訂正後の請求項1に係る発明を構成することは,当業者が容易になし得たことである。
イ 菜種粕を1?20%配合した飼料を家畜に投与することが,甲第1号証,甲第5?7号証に記載されるように周知技術であることを考慮すると,甲第2号証には,「蛋白質含量42.5?55%かつ粗繊維6%以下の菜種粕を1?20%配合した飼料」の範囲に包含される飼料を家畜に投与することが開示される。
甲第1号証に関して指摘したのと同様の動機付けにより,甲第2号証記載の発明と上記周知技術から,訂正後の請求項2に係る発明を構成することは,当業者が容易になし得たことである。
ウ 甲第1号証に関して指摘したのと同様の理由により,「菜種粕を篩分けして得られ」という製造プロセス部分は,請求項1,2に係る発明の内容を差別化する発明特定事項ではないから,訂正後の請求項1及び2に係る発明は,甲第2号証記載の発明に基いて進歩性を欠如するものであり,特許法第29条第2項に違反してされたものである。

(8)訂正後の請求項1,2に係る発明に対する無効理由3
仮に本件訂正が認められるとしても,訂正後の請求項1,2に係る発明は,甲第4号証記載の技術常識を考慮すれば,甲第3号証記載の発明及び菜種粕を高蛋白・低繊維含量とするために菜種粕を篩分け処理するという周知技術から,または該周知技術を組み合わせるまでもなく甲第3号証記載の発明から,当業者が容易に想到することができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,訂正後の請求項1,2に係る発明に係る特許は,特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。
ア 菜種粕を1?20%配合した飼料を家畜に投与することが,甲第1号証,甲第5?7号証に記載されるように周知技術であることを考慮すると,甲第3号証には,「蛋白質含量42.5?55%かつ粗繊維6%以下の菜種粕1?20%配合した飼料」の範囲に包含される飼料が開示される。
甲第3号証には,脂肪が0.5%のものも5%のものも含まれる。脂肪は,油抽出の効率を考えて調整可能であり,本件の範囲のものも算出可能である。
甲第1号証に関して指摘したのと同様の動機付けにより,甲第3号証記載の発明と上記周知技術から,訂正後の請求項1に係る発明を構成することは,当業者が容易になし得たことである。
イ 菜種粕を1?20%配合した飼料を家畜に投与することが,甲第1号証,甲第5?7号証に記載されるように周知技術であることを考慮すると,甲第3号証には,「蛋白質含量42.5?55%かつ粗繊維6%以下の菜種粕を1?20%配合した飼料」の範囲に包含される飼料を家畜に投与することが開示される。
甲第1号証に関して指摘したのと同様の動機付けにより,甲第2号証記載の発明と上記周知技術から,訂正後の請求項2に係る発明を構成することは,当業者が容易になし得たことである。
ウ 甲第1号証に関して指摘したのと同様の理由により,「菜種粕を篩分けして得られ」という製造プロセス部分は,請求項1,2に係る発明の内容を差別化する発明特定事項ではないから,訂正後の請求項1及び2に係る発明は,甲第3号証記載の発明に基いて進歩性を欠如するものであり,特許法第29条第2項に違反してされたものである。

(9)訂正後の請求項1,2に係る発明に対する無効理由4
仮に本件訂正が認められるとしても,訂正後の請求項1及び2は,特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定の要件を満たしておらず,請求項1及び2に係る特許は,特許法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものである。
ア 訂正前の無効理由4は,訂正によって何ら解消されていない。
イ 実施例2,3,6,7は粗脂肪率の記載がなく,実施例9は菜種粕の配合割合が30%であって本件発明の範囲ではなく,実施例10は菜種粕が「篩分け処理して得られ」たものか不明であるから,本件訂正発明に相当する実施例は実施例1のみであり,実施例1の数値のみから訂正後の請求項1に記載の「菜種粕を篩分け処理して得られ,そして蛋白質含有量42.5?55%,粗繊維6%以下,及び粗脂肪2.26?3.6%の菜種粕を,1?20%配合」という数値範囲に拡張,一般化することはできない。
よって,訂正後の請求項1,2に係る発明は,サポート要件を満たさない。

(10)被請求人主張の本件発明の効果について
高蛋白・低繊維化により消化率が向上することは公知であり,本件発明には,予測できない顕著な効果はない。
本件特許発明の菜種粕の飼料への配合量1?20%に臨界的な意義はない。また,甲1?3号証に対して顕著な効果があることは示されていない。

[証拠方法]
甲第 1号証 V.Danielsen他著,"Dehulled protein-rich rapeseed meal as a protein source for early weaned piglets",Animal Feed Science and Technology 46号,1994年発行,239?250頁
甲第 2号証 F.SOSULSKI他著,"Fractionation of Rapeseed Meal into Flour and Hull Components", JAOCS,1981年2月発行,96?98頁
甲第 3号証 特開昭54-62206号公報
甲第 4号証 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構編「日本飼養標準・豚(2005年版)」,社団法人中央畜産会,平成17年11月21日発行,66頁
甲第 5号証 特公平1-16458号公報
甲第 6号証 特開2002-65173号公報
甲第 7号証 特開2004-321170号公報
甲第 8号証 特許第3970917号公報
甲第 9号証 独立行政法人農業技術研究機構編,「日本標準飼料成分表(2001年版)」,社団法人中央畜産会,平成13年2月15日発行,90?91頁
甲第10号証 "Grains and Oilseeds Handling,Marketing,Processing Volume II",Canadian International Grains Institute,1993年,930頁
甲第11号証 特開平10-229828号公報
甲第12号証 "9th PROJECT REPORT RESEARCH ON CANOLA SEED OIL AND MEAL",1991年,320頁

2 被請求人の主張
被請求人は,答弁書を提出するとともに,本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を訂正明細書及び訂正特許請求の範囲の通り訂正することを求めるとの趣旨の訂正請求書を提出し,本件審判の請求は成立しない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め,その理由として以下のように主張し,証拠方法として乙第1?6号証を提出した。

[無効理由に対する反論]
(1)訂正について
平成23年10月7日付けの訂正請求書による訂正は,適法になされたものである。
本件特許発明の実施例9,10の菜種粕発明品は,実際,篩分け処理して得られたものである。本件特許明細書における実施例では,実施例1の菜種粕発明品として菜種粕を篩分けしたものが記載され,明細書全体を参酌すれば,実施例9,10の原料として,菜種粕を篩分けして得たものを使用しているといえる。
また,粗脂肪2.26?3.6%は,特許請求の範囲を減縮したものであって,第3者に不測の不利益を与えるものではない。

(2)無効理由1について
甲第1号証記載の発明は,水性酵素抽出により脱皮した菜種粕を使用している点で,篩分け処理した菜種粕を用いる訂正後の本件発明と相違し,菜種粕の組成の点でも,粗脂肪が,訂正後の本件発明は2.26?3.6%であるのに対し,甲第1号証記載の発明は26.9%及び27.5%であり,明確に異なる。
甲第4号証は,消化率の低い粗繊維の配合量を低く抑えた飼料を給餌することでふん量が減少するという従来の技術を述べたに過ぎない。
高蛋白・低繊維の菜種粕を得る手段として篩分けが従来より知られていた技術であるとしても,甲第1号証には,菜種粕を篩分けされた菜種粕とする動機がない。
訂正後の請求項2についても,甲第1号証には,排泄物低減について記載も示唆もされておらず,訂正後の請求項2に係る「家畜の排泄物抑制方法」の発明は,甲第1号証に記載の技術から当業者が容易になし得たものではない。
訂正後の本件発明は,本件特許明細書に記載のとおりの効果を奏する。

(3)無効理由2について
訂正後の本件発明は,菜種粕を篩分け処理したものを飼料に配合するものであって粗脂肪の含量が2.26?3.6%であるのに対し,甲第2号証記載の発明は,菜種粕を150メッシュtyler篩を通るように微粉砕後,液体サイクロンにかけてオーバーフローに回収される脱皮した粉フラクションであって,油分1.1?1.3%である点で相違する。
また,甲第2号証には菜種粕の含有量を1?20%に指定した豚及び家禽飼料は記載されていない。
甲第2号証記載の発明は,脱皮により粗蛋白含量の増量された粉フラクションが得られれば良いものであって,甲第2号証の記載から「蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下」に限定する動機はなく,訂正後の本件発明の効果も予測できない。
高蛋白・低繊維の菜種粕を得る手段として篩分けが従来より知られていた技術であるとしても,甲第2号証には,菜種粕を篩分けされた菜種粕とする動機がない。
訂正後の請求項2についても,甲第2号証には,排泄物低減について記載も示唆もされておらず,訂正後の請求項2に係る「家畜の排泄物抑制方法」の発明は,甲第2号証に記載の技術から当業者が容易になし得たものではない。
訂正後の本件発明は,本件特許明細書に記載のとおりの効果を奏する。

(4)無効理由3について
訂正後の本件発明は,菜種粕を篩分け処理したものを飼料に配合するものであって粗脂肪の含量が2.26?3.6%であるのに対し,甲第3号証記載の発明が菜種粕を150メッシュtyler篩を通るように微粉砕後,液体サイクロンにかけてオーバーフローに回収される脱皮した粉フラクションであって,脂肪0.5%である点で相違する。
また,甲第3号証には,菜種粕の含有量を1?20%に指定した動物飼料は記載されていない。
甲第3号証の発明は,脱皮により粗蛋白含量の増大された粉フラクションさえ得られれば目的を達するものであり,甲第3号証の記載から「蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下」に限定する動機はなく,訂正後の請求項1に係る発明の効果も予測できない。
高蛋白・低繊維の菜種粕を得る手段として篩分けが従来より知られていた技術であるとしても,甲第2号証には,菜種粕を篩分けされた菜種粕とする動機がない。
訂正後の請求項2についても,甲第3号証には,排泄物低減について記載も示唆もされておらず,訂正後の請求項2に係る「家畜の排泄物抑制方法」の発明は,甲第3号証に記載の技術から当業者が容易になし得たものではない。
訂正後の本件発明は,本件特許明細書に記載のとおりの効果を奏する。

(5)無効理由4について
ア 本件特許明細書において菜種粕は,一貫して含水ベースで記載されたものであり,特許請求の範囲も,含水ベースで記載されている。
イ 本件明細書記載の実施例9,10の菜種粕も,実際に,篩分けで得たものである。
「蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下」との数値範囲について,本件明細書【表4】で,複数の実施例と比較例で発明の効果を証明しており,サポート要件を満たしている。
ウ 本件特許発明は,蛋白質含量42.5?55%,かつ粗繊維6%以下の菜種粕を飼料へ1?20%配合すれば,菜種粕各成分の消化率が改善されるという効果を奏する。
本件特許発明は,発明の効果を奏する要件を必要十分に規定している。
エ 本件特許明細書は,本件特許発明の効果を実証する上で必要十分な実施例を示しており,サポート要件違反を満たしている。

[証拠方法]
乙第1号証 日本標準飼料成分表(2001年版)第2版,独立行政法人農業技術研究機構編,社団法人中央畜産会,平成15年5月30日発行,第70-71頁,90-91頁,第98-99頁
乙第2号証 家畜排せつ物の管理の適正化及び利用促進に関する法律(平成11年7月28日法律第112号),最終改正:平成23年5月2日法律第39号
乙第3号証 農林水産省の家畜排せつ物法の啓蒙パンフレット「ご存じですか?家畜排せつ物のこと!」
乙第4号証 「農林水産統計 畜産統計(平成23年2月1日現在)」の抜粋,農林水産省大臣官房統計部,平成23年8月4日
乙第5号証 「畜産の動向 生産局畜産部畜産企画課」農林水産省,平成23年8月
乙第6号証 日本標準飼料成分表(2009年版),独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構編,社団法人中央畜産会,平成22年2月25日発行,第66-67頁,80-81頁,第84-85頁,第106-107頁,110-111頁,第116-117頁,第120-123頁

第3 本件特許明細書の記載事項
本件特許の願書に添付された明細書の発明の詳細な説明欄には,以下の記載がある。

(a)「【発明の開示】
【0007】
本発明の目的は,飼料として利用されている菜種粕のエネルギー利用効率を高めるとともに,菜種粕を使用する際に発生する排泄物の量を低減あるいは抑制することの可能な飼料を提供することである。
【0008】
本発明者らは,上記課題の解決に向け鋭意研究する中で,特定の性状を示す菜種粕を特定量配合した新規な飼料を開発した。すなわち,本発明は,蛋白質含量41%以上,かつ粗繊維8%以下の菜種粕を0.1?30%配合した飼料を提供する。本発明者らは,この飼料の栄養価が従来に比べて改善されることも見いだした。したがって,この飼料は,栄養価の改善された家畜飼料として好適である。そこで,本発明は,蛋白質含量41%以上,かつ粗繊維8%以下の菜種粕を0.1?30%配合した新規な家畜向けに栄養価の改善された飼料を提供する。ここで,%は,重量%を意味する。
【0009】
本発明者らは,さらに,この飼料が家畜の排泄物量を顕著に抑制または低減することも見いだした。したがって,この飼料は,家畜の排泄物を抑制する飼料として好適である。そこで,本発明は,蛋白質含量42.5?55%,かつ粗繊維6%以下の菜種粕を1?20%配合した飼料も提供する。
【0010】
本発明はまた,上記飼料を用いた家畜の飼育方法,栄養改善方法および排泄物量抑制方法を提供する。」
(b)「【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の飼料に配合する菜種粕は,菜種粕中の粗蛋白質と粗繊維の割合が重要であり,両方が特定範囲にあるときにのみ,効果を奏するものである。すなわち,菜種粕の蛋白質含量は,42.5?55%である。蛋白質含量が41%未満であると,飼料に添加したときに排泄物抑制効果やエネルギーの利用効率の向上効果が得られない。
【0015】
また,前記菜種粕の粗繊維含量は,6%以下であり,より好ましくは1?6%である。粗繊維含量が8%を越えると,飼料に添加したときに排泄物抑制効果やエネルギーの利用効率の向上効果が得られない。
・・・
【0017】
上記のような菜種粕を製造する方法には,菜種を脱皮する方法,洗浄や酵素処理,アルコール処理,篩分け処理などにより蛋白質を濃縮する方法など,いずれでも可能である。中でも,32メッシュ(目開き500μm)以下の篩い分け処理が,蛋白質含量および粗繊維の条件を兼ね備える菜種粕を容易に得られる点で好ましい。」
(c)「【実施例】
【0021】
以下に,実施例および比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが,本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1,比較例1〕(鶏投与試験)
(飼料の調製)
表1に示す基本飼料を給与する基本飼料給与区と,この基本飼料と表2に示す二種類の被検物質(菜種粕従来品または菜種粕発明品)を8:2の割合で混合した試験飼料(菜種粕従来品配合飼料または菜種粕発明品配合飼料)を給与する試験飼料給与区2区の計3区を設定した。なお,基本飼料および試験飼料とも,指示物質として酸化クロムを0.1%ずつ混合した。
【0022】
【表1】

・・・
【0023】
【表2】



*菜種粕従来品(商品名菜種粕,(株)J-オイルミルズ製)の48メッシュ(目開き300μm)による分級物
**菜種粕従来品 商品名菜種粕,(株)J-オイルミルズ製」
(d)「【0034】
〔実施例2?3,比較例2?3,8〕
実施例1において,蛋白質含量と繊維の含量が表4に示すように異なる菜種粕を用いた以外は実施例1と同様の鶏投与試験を行なった。実施例の原料については菜種粕の48メッシュ(目開き300μm)以下での分級物を使用した。排泄物量についての評価結果を,表4に実施例1および比較例1の評価とともに示す。
【0035】
【表4】

判断基準
優:比較例1に対して摂食量あたりの排泄物の低減が1%以上
良:比較例1に対して摂食量あたりの排泄物の低減が0.5%以上
可:比較例1に対して排泄物の低減効果あり
不可:比較例1に対して排泄物の低減効果なし」
(e)「【0037】
〔実施例6?7,比較例4?5,9?10〕
実施例2において,菜種粕の飼料への配合量を20%から表5に示す量に変えた以外は実施例2と同様の試験を行い,排泄物の低減効果を評価した。結果を,実施例2の結果とともに表5に示す。
【0038】
【表5】


判断基準は先の試験同様
【0039】
この結果から,0.1%未満の配合量では添加の効果が見られなかった。40%以上においても効果が見られず,過添加による弊害が予想された。配合量1%以上,20%以下において,特に顕著な効果となった。さらにこのなかでも配合量1%以上,18%以下については,比較例1で菜種粕の添加によって排泄物が増加した量に対して,その増加量は半分以下に抑制されていた。」
(f)「【0040】
〔実施例9,比較例6〕(豚投与試験)
(飼料の調製)
表6に示す基本飼料を給与する基本飼料給与区と,基本飼料と表7の二種類の被検物質(菜種粕従来品または菜種粕発明品)を7:3の割合で混合した二種類の試験飼料(菜種粕従来品配合飼料または菜種粕発明品配合飼料)を給与する試験飼料給与区の計3区を設定した。なお,基本飼料及び試験飼料には,指示物質として酸化クロム(Cr_(2)O_(3))を0.1%ずつ混合した。
【0041】
【表6】

・・・
【0042】
【表7】



(g)「【0053】
〔実施例10,比較例7〕(反芻動物投与試験)
(飼料の調製)
表8に示す基本飼料を給与する基本飼料給与区と,この基本飼料と表9に示す二種類の被検物質(菜種粕従来品または菜種粕発明品)を8:2の割合で混合した二種類の試験飼料(菜種粕従来品配合飼料または菜種粕発明品配合飼料)を給与する試験飼料給与区2区の計3区を設定した。なお,基本飼料および試験飼料とも,指示物質として酸化クロムを0.1%ずつ混合した。
【0054】
【表8】

・・・
【0055】
【表9】




第4 訂正の適否についての当審の判断
1 訂正の内容
平成23年10月7日付けの訂正請求は,本件特許の願書に添付した特許請求の範囲及び明細書を次のとおりに訂正しようとするものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲を,次のとおりに訂正する。
「【請求項1】
菜種粕を篩分け処理して得られ,そして蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下及び粗脂肪2.26?3.6%の菜種粕を,1?20%配合した飼料。
【請求項2】
菜種粕を篩分け処理して得られ,そして蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下,及び粗脂肪2.26?3.6%の菜種粕を,1?20%配合した飼料を家畜に投与することからなる家畜の排泄物抑制方法。」

(2)訂正事項2
明細書の段落【0009】中の「蛋白質含量42.5?55%,かつ粗繊維6%以下の菜種粕を」を,「菜種粕を篩分け処理して得られ,そして蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下,及び粗脂肪2.26?3.6%の菜種粕を,」に訂正する。

(3)訂正事項3
明細書の段落【0017】中の「菜種を脱皮する方法,洗浄や酵素処理,アルコール処理,篩分け処理などにより蛋白質を濃縮する方法など,いずれでも可能」を,「菜種粕を篩分け処理により蛋白質を濃縮する方法が可能」に訂正する。

2 訂正の目的の適否,新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は,訂正前の請求項1及び2に係る発明を特定する菜種粕を,請求前のものから,さらに「篩分け処理して得られ,粗脂肪2.26?3.6%」のものに限定しようとするものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする。
イ 新規事項の有無
本件特許明細書(記載事項(c);上記「第3」を参照。)には,実施例1に使用する菜種粕発明品として,菜種粕を篩分け処理して得られ,蛋白質含量45.63%,粗繊維5.51%,粗脂肪2.26%の菜種粕が示されている。
また,実施例9の菜種粕発明品として,蛋白質含量44.19%,粗繊維5.43%,粗脂肪3.02%の菜種粕が,実施例10の菜種粕発明品として,蛋白質含量44.0%,粗繊維4.9%,粗脂肪3.6%の菜種粕が示されている(記載事項(f)(g))。
ここで,実施例9の菜種粕発明品は,豚の基本飼料に30%配合して投与する実験に使用したものであるが,菜種粕を本件発明に規定された「蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下」の範囲内に調整したものであるから,実施例1,10同様の菜種粕発明品である。
そして,実施例9,10の菜種粕発明品の製造方法については本件特許明細書に何ら言及されていないが,菜種粕の種々の製造方法の中で,32メッシュ(目開き500μm)以下の篩分け処理が,蛋白質含量及び粗繊維の条件を兼ね備える菜種粕を容易に得られる点で好ましいことが記載されていること(記載事項(b)),先の実施例1?3において菜種粕発明品が篩分け処理して得られるものであることが示されており(記載事項(c)(d)),実施例1と実施例9,10の菜種粕発明品の成分組成が類似していること,その後の実施例において他の製造方法についての言及がなされていないこと等を総合すると,実施例9,10が他の製造方法で得られたものとはいえず,実施例9,10の菜種粕発明品も篩分け処理で得られたものと解せられる。

してみると,本件特許明細書には,菜種粕を篩分けして,蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下の範囲内であり,さらに,粗脂肪2.26%,3.02%,3.6%の菜種粕が開示されている。
また,本件特許明細書の実施例1,9,10の篩分け処理により得られた菜種粕の粗脂肪は,それぞれ2.26%,3.02%,3.6%,比較例1,6,7の篩分け前の菜種粕の粗脂肪は,2.5%,3.33%,3.0%であることが示され,篩分け処理によって粗脂肪の割合に大きな変化をもたらされないことも把握でき,菜種粕を篩分け処理すれば,篩分け処理後の菜種粕の粗脂肪の量が2.26?3.6%のものが得られることは本件特許明細書に接した当業者が把握できる事項であると認められる。
よって,「菜種粕を篩分け処理して得られ,そして蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下,及び粗脂肪2.26?3.6%の菜種粕」は,当業者が願書に添付された明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であって,新たな技術的事項を導入したものでもない。
したがって,訂正事項1において,菜種粕を篩分け処理して得られ,そして蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下,及び粗脂肪2.26?3.6%の菜種粕とする訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内でなされたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
「菜種粕を篩分けして得られ」との構成を付加する訂正は,菜種粕を篩分け処理して得られるものに限定したものであって,発明のカテゴリーを変更するものではない。
したがって,「蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下の菜種粕」を「菜種粕を篩分け処理して得られ,そして蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下,及び粗脂肪2.26?3.6%の菜種粕」とする訂正は,特許請求の範囲を拡張ないし変更するものではない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は,特許明細書段落【0009】を,特許請求の範囲と整合するように訂正したものであるから,明りょうでない記載の釈明を目的とする。
そして,「第4 2(1)訂正事項1」で検討したように,「蛋白質含量42.5?55%,かつ粗繊維6%以下の菜種粕を」を,「菜種粕を篩分け処理して得られ,そして蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下,及び粗脂肪2.26?3.6%の菜種粕を,」とする訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内でなされたものであり,実質上特許請求の範囲を拡張ないし変更するものでもない。

(3)訂正事項3
訂正事項3は,特許請求の範囲において,菜種粕を「篩分けして得られ」るものに限定するのに伴って,特許明細書段落【0009】を,「菜種を脱皮する方法,洗浄や酵素処理,アルコール処理,篩分け処理などにより蛋白質を濃縮する方法など,いずれでも可能」から,「菜種粕を篩分け処理により蛋白質を濃縮する方法が可能」に訂正するものであり,明りょうでない記載の釈明を目的とする。
菜種粕の製造方法について,本件特許明細書の段落【0017】には,菜種粕を製造する方法の1例として菜種粕を篩分け処理により蛋白質を濃縮する方法が記載され,より好ましい例として,32メッシュ(目開き500μm)以下の篩分け処理が記載されていたものであるから,当該訂正は願書に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内でなされたものであり,当該訂正によって新規事項は何ら追加されていない。また,当該訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張ないし変更するものでもない。

3 訂正の適否についての当審の判断のむすび
したがって,訂正事項1?3は,第134条の2第1項ただし書きに適合し,特許法第134条の2第5項において準用する特許法第126条第3項及び第4項に適合するから,当該訂正を認める。

第5 本件発明
上記「第4」で判断したとおり,平成23年10月7日付けの訂正請求は適法になされたものと認められるから,本件特許の請求項1及び2に係る発明は,訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載した事項により特定される以下のとおりのものと認められる。

【請求項1】
菜種粕を篩分け処理して得られ,そして蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下及び粗脂肪2.26?3.6%の菜種粕を,1?20%配合した飼料。
【請求項2】 菜種粕を篩分け処理して得られ,そして蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下,及び粗脂肪2.26?3.6%の菜種粕を,1?20%配合した飼料を家畜に投与することからなる家畜の排泄物抑制方法。
以下,本件特許の訂正後の請求項1及び2に係る発明を,その項番号により「本件特許発明1」等という。

第6 甲号各証の記載内容
1 本件の優先日前に頒布された刊行物である甲第1号証には,以下の事項が記載されている(括弧内は審判請求人による抄訳を基礎に合議体が作成した抄訳)。
(1a)「Dehulled protein-rich rapeseed meal as a protein source for early weaned piglets」
(早期離乳子豚用のタンパク源としてのタンパク質の豊富な脱皮菜種ミール)(第239頁表題)
(1b)「abstract
Dehulled protein-rich rapeseed meal (DPR-meal) was produced by aqueous enzymatic extraction. Based on chemical analyses and balance experiments with piglets, the nutritive value was determined. The dry matter of the DPR-meal contained 56% crude protein, 27% HCl-fat, 12% carbohydrates, 5% ash and 1μmol g^(-1) glucosinolates. Four diets containing 0, 6, 12 and 18% DPR-meal were manufactured and tested in a balance trial as well as in two production trials with 4-week-old weaned piglets. In the balance trial, 16 pigs were reared in single cages and fed semi ad libitum. Each production trial was performed with 80 pigs, reared in pairs and fed ad libitum. The period of treatment lasted 4 weeks. Substitution of the highly digestible protein sources skim milk powder and fish meal with DPR-meal caused decreased digestibility of protein and energy with increasing dietary levels of DPR-meal. Deposited N and deposited N as a percentage of digested N were equal for the four diets. In addition, no negative effects on protein utilisation from the glucosinolates were observed. The decrease in digestibility of energy (r2 = 0.91) and protein (r2 = 0.90) correlated well with the insoluble dietary fibre (IDF) content. In the first production triala significant decrease in voluntary feed intake and reduced growth rate (P ≦0.001) of the pigs with increasing levels of DPR-meal was observed. In the second production trial, in which flavouring (Flavodan SW-783) was added to the DPR-meal, the decrease in voluntary feed intakewas almost halved and the growth rate was not significantly affected (P ≧ 0.05). In both production trials the feed to gain ratio was unaffected by the level of DPR-meal in the diets.」(第239頁要約欄)
(要約
タンパク質の豊富な脱皮菜種ミール(DPR-ミール)は,水性酵素抽出によって製造される。化学分析及び子豚のバランス実験に基づいて栄養価が決定された。DPR-ミールの乾燥物質は,粗タンパク質を56%,塩酸(HC1)-油脂を27%,炭水化物を12%,灰分を5%,及びグルコシノレートを1μmolg^(-1)含有していた。DPR-ミールをそれぞれ0,6,12及び18%含む4種の食餌が製造され,4週齢の離乳子豚を用いて,バランス試験及び2つの製品試験でテストされた。バランス試験において,16匹の豚が1つのケージ内で飼育され,半自由摂取給餌された。各製品試験は,一対で飼育されるとともに自由摂取給餌された80匹の豚で行われた。処置期間は,4週間続いた。極めて消化され易いタンパク質源であるスキムミルク粉末や魚粉の,DPR-ミールによる置換は,DPR-ミールの食餌量が増加するに従ってタンパク質及びエネルギーの消化率の低下を引き起こした。堆積N及び消化Nに占める堆積Nの割合は,4種の食餌で同等であった。また,グルコシノレートからのタンパク質の利用上における悪影響は観察されなかった。エネルギーの消化率の低下(r^(2)=0.91)及びタンパク質の消化率の低下(r^(2)=0.90)は,不溶性食物繊維(IDF)の含有量とよく相関していた。第1の製品試験においては,DPR-ミールの食餌量が増加するに従って,自発的な飼料摂取の著しい低下及び豚の成長率の減少(P≦0.001)が観察された。DPR-ミールに香味料(Flavodan SW-783」が加えられた第2の製品試験においては,自発的な飼料摂取の低下は約半減し,かつ成長率は顕著には影響を受けなかった(P≧0.05)。2つの製品試験において,食餌中のDPR-ミールの食餌量によって飼料摂取率は影響を受けなかった。)
(1c)「1. Introduction
Meal of traditional double low rapeseed varieties is an excellent protein source for growing-finishing pigs. Rapeseed meal can be included in a cereal-based diet at levels ranging from 10 to 20% without causing nutritional problems, though feed consumption and weight gain have occasionally been negatively affected(Schulz and Petersen, 1981; Bourdon et al., 1985;Eggum et al., 1985; Baidoo etal., 1987a).
Feeding trials, with traditional rapeseed meal fed to early weaned piglets, have shown decreasing weight gains with increasing dietary levels of rapeseed meal. The main reason for this was a significant decrease in daily feed intake. Baidoo et al. (1987b) observed a decrease in daily feedintake of 4g for each 1% inclusion of rapeseed meal. However, the feed conversion ratio was not affected. Inclusion of 20 or 40% full fat rapeseed meal in the diets of 4-week-old piglets was followed by a significant reduction in daily feed intake and daily weight gain. The feed efficiency of utilisation was also lowered, which might have been caused by the glucosinolate levels in the high rapeseed diets?3.4 and 6.8 μmol g^(-1) diet, respectively,according to the content measured for the whole seed (Gill and Taylor, 1989). High levels of glucosinolates in diets fed to non-ruminant animals decrease protein utilisation by lowering the biological value, as well as feed consumption as a result of a negative effect on palatability. The degradation products of the glucosinolates increase these and other antinutritional effects(Bille et al., 1983b; Bjerg et al.,1989). Danish pig producers are therefore recommended to only use diets containing less than 1μmol of glucosinolates per gram of feed (Sorensen, 1988).
With sufficiently low levels of glucosinolates in rapeseed meal-based diets, fed to early weaned piglets, other problems can occur owing to high contents of dietary fibre (Bjergegaard et al.,1991) and the palatability of the rapeseed (Baidoo et al., 1987b). However, digestibility can be increased by dehulling (Bille et al., 1983a; Bell, 1984; Bourdon et al., 1985).
Under Danish feeding conditions today, fishmeal, soya-bean and potato protein concentrates are major feedstuffs which are economically and nutritionally attractive as protein-rich sourcesfor early weaned piglets. Skim milk powder has become unattractive owing to high prices. Because of these economic aspects, there is a need for alternative protein sources for piglets.
The aim ol the present work was to test the nutritive value and applicability of a dehulled protein-rich rapeseed meal (DPR-meal)diet for piglets produced by a new process based on aqueous enzymatic extraction of rapeseed (Olsen, 1988; Jensen et al., 1990). 」(第240頁第1行?下第5行)
(1.序論
伝統的なダブル・ロー菜種品種のミールは,肥育豚のために優れたタンパク質源である。菜種ミールは,たまに,餌の消費量及び体重増加について悪影響を与えることがあるが,栄養学的な問題を引き起こすことなしに,10?20%の量で穀物ベースの食餌に含まれることができる(シュルツ及びピーターソン,1981;ブルドン等,1985;エッガム等,1985;ベイドゥー等,1987a)。
早期離乳子豚に伝統的な菜種ミールを与えた飼育試験では,菜種ミールの食餌量が増加するに従って体重増加の低下が示された。この主要な理由は,毎日の餌の摂取量の著しい低下であった。ベイドゥー等(1987b)は,菜種ミールの1%の含有ごとに4gの毎日の餌の摂取量の低下を観察した。しかしながら,飼料転換率は影響を受けなかった。4週齢の子豚の食餌中に脂肪分の高い菜種ミールを20或いは40%含有させると,毎日の餌の摂取量及び毎日の体重増加の著しい減少をもたらした。餌の利用効率も低下したが,これは高菜種食餌におけるグルコシノレート量(種子全体として測定された含有量によればそれぞれ食餌1g当り3.4及び6.8μmo1)が原因であろう(ジル及びテイラー,1989)。非反芻動物に与えられた食餌中の高水準のグルコシノレート量は,その生物価を低下させることによってタンパク質利用を低下させ,同様に,おいしさに悪影響を及ぼす結果として餌の消費量も低下させる。グルコシノレートの分解生成物は,このような及び他の栄養阻害作用を増加させる(ビレ等,1983b:ビエアウ等,1989)。このため,デンマークの養豚家は,グルコシノレートを餌の1g当り1μmo1未満含有する食餌だけを用いることを推奨されている(ソーレンセン,1988)。
菜種ミールベースの食餌中におけるグルコシノレート量を十分に低くして早期離乳子豚に与えると,食物繊維の高含有量のため(ビエアウガルト等,1991)及び菜種のおいしさのため(ベイドゥー等,1987b)に別の問題が生じることがある。しかし,消化率は,脱皮によって増大させることができる(ビレ等,1983a;ベル,1984;ブルドン等,1985)。
今日のデンマークの給餌状態の下では,早期離乳子豚にとってタンパク質の豊富な食餌源として経済的かつ栄養的に魅力的な,魚粉,大豆,及びポテトタンパク質濃縮物が主要な飼料となっている。スキムミルク粉末は,高価なため魅力的ではなくなっている。このような経済的な見地から,子豚用の代替タンパク質源が必要とされている。
今回の作業の狙いは,菜種の水性酵素抽出に基づいた新規なプロセスによって製造された子豚用のタンパク質の豊富な脱皮菜種ミール(DPR-ミール)食餌の栄養価及び適用性をテストすることである(オルセン,1988;イエンセン等,1990)。)
(1d)「2. Materials and methods
2.1. Preparation of DPR-meal
A cell wall degrading enzyme product was used in the process. This was the multi-activity preparation SP-311 produced from a selected strain of Aspergillus niger by Novo Nordisk A/S,DK-2830 Bagsvaerd, Denmark. The process was based on myrosinase inactivation followed by enzyme catalysed cell wall degradation in an aqueous slurry of dry milled rapeseed. The process was perfomed without the use of organic solvents, and the rapeseed was separated into four fractions:oil, DPR-meal, syrup and hulls. The DPR-meal was produced in Pilot Plant Scale at Novo Nordisk A/S, DK-2830 Bagsvaerd, Denmark, as follows. Dry milling of the seeds (Danish grown double low spring rape from Trifolium Silo A/S, DK-2630 Taastrup, Denmark) (100 kg was perfomed in a hammer mill, while heat treatment of the meal took place in 300 1 water at85-90°C for 10 min in order to inactivate myrosinases, lipases and lipoxygenases. The oil release was performed by wetmilling, adjusting PH to 4.5 (with phosphoric acid), cooling to 5°C and then adding SP-311 (0.5 w/w% based on seed weight). The reaction with cell wall degrading enzymes was performed for approximately 4h at 50°C.
The hulls (15 kg) were removed by decanting, while oil (35 kg), DPR-meal(30 kg) and syrup(15 kg), which are made up of low molecular weight compounds, were purified and separated by centrifugation in three washing and centrifugation steps. The fraction with DPR-meal was finally spray dried. Two batches were produced.
2.2. chemical analysis
The chemical composition of DPR-meal and of the diets was determined according to standard methods (Association of Official Analytical Chemists, 1984),as were the readily hydrolysablecarbohydrates (RHC) (starch and'sugars' as sucrose and lactose) (MacRae and Armstrong,1968; Jacobsen, 1981), starch (Aman and Hesselman, 1984), and Stoldt fat (Stoldt, 1952).Individual fatty acids were determined as methyl esters by gas chromatography. ...」(第240頁下第4行?第241頁第25行)
(2.原材料及び方法
2.1.DPR-ミールの調製
このプロセスには細胞壁破壊酵素生成物が用いられた。これは,デンマーク,バクスヴァルト,DK-2830,ノボ・ノルディスクA/Sによる黒かび(アスペルギルス・ニガー)の選択された菌株から製造された複合活性製剤SP-311である。このプロセスは,ミロシナーゼ不活性化に基づいており,続いて,乾式粉砕された菜種の水性スラリー中で酵素を触媒とした細胞壁破壊が行われた。このプロセスは,有機溶剤を用いることなしに行われ,かつ菜種は,油,DPR-ミール,シロップ及び外皮の4つの部分に分離された。DPR-ミールは,パイロット・プラント規模で,デンマーク,バクスヴァルト,DK-2830,ノボ・ノルディスクA/Sにおいて,以下のように製造された。種子(デンマークで栽培されたダブル・ローの春菜種:デンマーク,ターストルップDK-2630,トリフォリウム・サイロA/Sから入手)100kgの乾式粉砕が,ハンマー・ミルの中で行われ,その一方で,そのミールの熱処理が,300リットルの水中で,85?90℃で,10分間,ミロシナーゼ,リパーゼ及びリポキシゲナーゼの不活性化のために行なわれた。油放出が,湿式粉砕,リン酸によるpHの4.5への調整,50℃への冷却及びSP-311の添加(種子重量に基づき0.5w/w%)によって行われた。細胞壁破壊酵素との反応は,およそ4時間,50℃で行われた。
外皮(15kg)は,デカンティングによって除去され,その一方で,低分子量化合物から構成された,油(35kg),DPR-ミール(30kg)及びシロップ(15kg)が,3回の洗浄及び遠心分離工程における遠心分離によって精製及び分離された。DPR-ミールの部分は,最終的に噴霧乾燥された。2バッチが製造された。
2.2.化学分析
DPR-ミール及び食餌の化学組成は,標準方法(公認分析化学者協会,1984)に準拠して決定され,易加水分解性炭水化物(RHC)(でんぷん及び蔗糖及び乳糖のような「砂糖」)(マックレー及びアームストロング,1968;ヤコブセン,1981),でんぷん(アマン及びヘッセルマン,1984),及びシュトルツ油脂(シュトルツ,1952)も同様に決定された。個々の脂肪酸は,ガス・クロマトグラフィーによってメチルエステルとして決定された。・・・)
(1e)「2.3. Diets and feeding experiments
One balance trial and two production trials were carried out with piglets 4-8weeks of age. Piglets in the balance trial and the first production trial were fed the same batch of DPR meal.The second production trial was a repetition of the first, but a creamy milky flavou(0.17%Flavodan SW-783, Danisco A/S, DK-8200 Brabrand Denmark was added to the DPR-mealto improve palatability.
Four diets containing 0,6,12 and 18% DPR-meal were manufactured. In Diet 2(6%DPR,DPR-meal was substituted for the skim milk powder used in the control diet(0%DPR;Diet1).
In Diet 3 (12%DPR),the skim milk powder and half of the fish meal were replaced withDPRmeal, while Diet 4 (18% DPR) contained neither skim milk powder nor fish meal. A11 diets were adjusted to the same content of digestible protein, lysine, methionine, andthreonine inrelation to the expected content of net energy (Just, 1982).
In the balance and production trials, 176 4-week-old crossbred piglets (Yorkshire × DanishLandrace:criss cross) with an initial weight of 8.6 kg were used.The trials lasted for 4 weeks.
The balance trial was performed with 16 castrated males with four pigs on each diet. The pigs were housed in individual metabolic cages, and were fed approximately 5% below their eating ability. Four collection periods of 5 days per week were used. Urine and faeces from each pigwere analysted. Digestible dry matter (DDM), digestible energy (DE), apparent N digestibility(AD), true N digestibility (TD), deposited N per day and deposited N as a percentage of digested Nwere determined according to Eggum (1973).
In each of the two production trials, 80 piglets were grouped into ten blocks each containingeight litter mates. Piglets within the same block were penned in pairs and each pair was fed ad libitum one of thefour diets. The liveweight and feed consumption of the piglets were registered at weekly intervals. Manure consistency was examined daily and diarrhoea demanding treatment was registered .During the experimental period, the diets were analysed twice for dry matter(DM),ash, nitrogen, fat, crude fibre, soluble dietary fibre (SDF), insoluble dietary fibre (IDF) and aminoacid composition.」(第241頁第9行?第242頁第22行)
(2.3.食餌及び給餌実験
4?8週齢の子豚に,1つのバランス試験及び2つの飼育試験が行われた。そのバラス試験及び第1の飼育試験の子豚には,同一のバッチのDPR-ミールが給餌された。2の飼育試験は,第1の飼育試験の繰り返しであったが,おいしさを向上させるため,DPR-ミールに,クリーミーな乳状の香味料(0.17%,(Flavodan SW783,デンマーク,ブラブランドDK-8200,ダニスコA/S)が添加された。DPR-ミールをそれぞれ0,6,12及び18%含む4種の食餌が製造された。食餌2(6%DPR)において,DPR-ミールが,コントロール食餌(0%DPR;食餌1)に用いられるスキムミルク粉末の代りに用いられた。
食餌3(12%DPR)において,スキムミルク粉末と魚粉の半分とが,DPR-ミールで代替され,一方で,食餌4(18%DPR)はスキムミルク粉末及び魚粉のいずれも含まなかった。全ての食餌は,正味エネルギーの期待される含有量と関連して,可消化タンパク質,リジン,メチオニン,及びトレオニンが同一の含有量となるように調整された(ジャスト,1982)。
バランス及び飼育試験において,当初重量が8.6kgの4週齢の交雑種の子豚(ヨークシャー×デンマーク・ランドレース;クリス・クロス)が,176匹用いられた。この試験は,4日間続けられた。
バランス試験は,各食餌に4匹の豚で,合計16匹の去勢オスに行われた。豚は,個々の代謝ゲージに収容され,その摂食能力よりもほぼ5%低く,給餌された。週に付き5日間のうち4度の回収期間が用いられた。個々の豚からの尿及び糞便が分析された。可消化乾燥物質(DDM),可消化エネルギー(DE),見掛けのN消化率(AD)真のN消化率(TD),1日ごとの堆積N及び消化Nに占める堆積Nの割合は,エッガム(1973)に準拠して決定された。
2つの飼育試験のそれぞれにおいて,80匹の子豚が,それぞれ8匹の同腹子を含む10のブロックにグループ分けされた。同じブロック内の子豚は,ペアーで囲いに入れられ,各ペアーは,4つの食餌のうちの1つを不断給餌された。子豚の生体重及び餌の消費量は,週間隔で記録された。糞の堅さは,毎日吟味され,治療を必要とする下痢は,記録された。実験期間中,食餌は,乾燥物質(DM),灰分,窒素,油脂,粗繊維,可溶性食物繊維(SDF),不溶性食物繊維(IDF)及びアミノ酸組成に対して2回分析された。)
(1f)「3. Results
The DPR-meal had a high protein content (56%), a relatively high lipid content (27%), but a low content of crude fibre, nitrogen-free extracts (NFE), aromatic choline esters and ucosinolates(Table l) . The compositions of the four experimental diets and the analysed values of protein,starch, sugar,SDF, IDF and gross energy are presented in Table 2. The chemical analyses of the diets revealed some characteristic differences between the four diets, especially with respect to starch, sugar, dietary fibre (DF) and gross energy. The starch content decreased by 4% from the control diet to Diet 4(18%DPR-meal). Diet 2 had the lowest content of sugar. Diets 3 and 4were also considerably lower in sugar than the control diet with skim milkpowder. The decrease in easily digestible nutrients followed an increase in the levels of SDF and IDF due to increasing levels of DPR-meal in the diets. The gross energy content increased as a function of the level of DPR-meal in the diets, because of the high fat content in this product.... 」(第242頁下第11行?第243頁第4行)
(3.結論
DPR-ミールは,高いタンパク質含有量(56%),及び比較的高い脂質分(27%)を有していたが,粗繊維,可溶性無窒素物(NFE),芳香族コリンエステル及グルコシノレートの含有量は低かった(表1)。
4つの実験食餌の組成及びタンパク質,でんぷん,砂糖,SDF,IDF及び総エネギーの分析値は,表2に示される。食餌の化学的分析は,4つの食餌間で,特に,でんぷん,砂糖,食物繊維(DF)及び総エネルギーに関して,いくつかの特性の相違を明らかにした。でんぷんの含有量は,コントロール食餌から食餌4(18%DPR-ミール)で,4%減少した。食餌2は砂糖の含有量が最小であった。食餌3及び4は,スキムミルク粉末のコントロール食餌よりも砂糖の含有量がかなり低かった。食餌中のDPR-ミールの量の増加に起因するSDF及びIDFの量の増加に伴い易可消化養分が減少した。総エネルギーの含有量は,この製品中の高い油脂含有量のため,食餌中のDPR-ミールの量の関数として増加した。・・・)
(1g)「4. Discussion
Protein-rich rapeseed meal without hulls was produced in a new type of process (Olsen, 1988)resulting in very low contents of antinutritional compounds as glucosinolates and transformation products of glucosinolates (Jensen et al., 1990). The DPR-meal was investigated as a substitute for skim milk powder and fish meal in diets fed to early weaned piglets in both balance andproduction trials. Early weaned piglets are sensitive to glucosinolates and especially degradation products thereof (Danielsen et al., 1987). However, no negative effects could be detected in thetrials now performed, in agreement with the low concentrations of glucosinolates detected in theDPR-meal (Jensen et al., 1990).
The piglets in the balance trial deposited the same amount of N per day, as well as the samepercentage of digested N when fed increasing levels of DPR-meal. This reveals the good aminoacid composition of rapeseed when used in diets fed to piglets where only a minor supplementation with lysine and methionine was required. Moreover, the piglets on all four diets in the balance trial had the same average daily weight gain in spite of the lower digestibilities ofprotein and energy with increasing levels of DPR-meal. The digestibility of protein was more negatively affected by DPR-meal than the digestibility of energy, and both parameters correlated significantly with the IDF content of the diets. This is in agreement with Bjergegaard et al.(1991). The results from these experiments showed decreasing digestibility of protein (TD) and energy (DE) according to the equations
Y(%TD) = 99.9-1.43X(%IDF) r^(2)=0.983
Y(%DE)=94.1-0.31X(%IDF) r^(2)=0.778
These equations are in good agreement with the equations obtained in the present study.
The production trial confirmed a high nutritive value of DPR-meal according to the feed utilisation,which was at the same level for all diets. The negative effect of rapeseed/rapeseed meal on feed consumption and weight gain, reported by Baidoo et al.(1987b) and Gill and Taylor (1989) was also observed in the present work. However, it should be noted that in the experiments of Baidooet al. (1987b) and Gill and Taylor (1989) rapeseed/rapeseed meal replaced soya-bean meal, whereas in the present trials DPR-meal replaced skim milk powder and fish meal. According to Danielsen et al. (1979) and Kjeldsen et al. (1981) skim milk powder and fish meal enhance the feed intake and growth rate of weaned pigs, when used as replacement for dietary soya-bean meal. Possible reasons for the reduction in voluntary feed intake have often been ascribed to thecontent of glucosinolates and their degradation products, tannins and the high dietary fibre contentof rapeseed (Bell, 1984; Baidoo et al., 1987b). In the present trial, however, the concentrations of glucosinolates, products there of and phenolics were very low compared with rapeseed meal from traditional processing techniques, owing to the mild processing conditions applied in this study(Jensen et al., 1990). It is thus not likely that the palatability problem is caused by the glucosinolates or their degradation products. The explanation of the reduction in voluntary feed intake may be found in the lipid fraction. Possible candidates could be the dolichols (Sorensen,1991)....
In conclusion, the nutritional value of DPR-meal to piglets is high as demonstrated by N-utilisation and feed conversion ratios. It is important to notice that the DPR-meal in this experiment was compared with skim milk powder and fish meal, both of which are of high palatability and digestibility. The decrease in digestibility of protein and energy with increasing levels of DPR-meal correlated strongly with the content of IDF originating from the DPR-meal. This demonstrates that the relatively low digestibility of protein and energy in rapeseed is not solely attributable to the hulls. Therefore, the IDF fraction in the dehulled seeds should be carefully considered in order to be able to improve digestibility further.(第247頁下第2行?第249頁第11行)
(4.検討
タンパク質の豊富な脱皮菜種ミールは新規なプロセス(オルセン,1988)で製造され,グルコシノレートやグルコシノレートの変化物のような栄養を阻害する化合物が非常に低いものであった(イエンセン等,1990)。
DPR-ミールは,バランス試験と飼育試験の双方において早期離乳子豚に給餌される食餌のスキムミルク及び魚粉の代替として調査された。早期離乳子豚はグルコシノレート及び特にその分解物の影響を受けやすい(ダニエルセン等,1987)。しかし,今回なされた試験では,ネガティブな効果は何ら見受けられず,DPR-ミールにグルコシノレートが低濃度であることと一致する(イエンセン等,1990)
バランス試験の豚はDPR-ミールが増量されて給餌される際にも同量の窒素分/日が投与され,消化された窒素分のパーセンテージも同様である。子豚への食餌に使用した際にリジンとメチオニンの僅かな追加しか要さなかったことは,菜種のアミノ酸組成が良好であることを明らかにする。さらに,タンパク質とプロテインの消化率がDPR-ミールの量が多くなるにつれて低下するにも関わらず,バランス試験における4つの食餌の子豚は,平均の日毎の体重増加が同じであった。
タンパク質の消化率はDPR-ミールの増加によりエネルギー消化率よりも多く負の影響を受けた。そして,双方のパラメータは食餌中のIDFの量と有意に相関する。これは(ビエアウガルト等と一致する(1991)。
Y(%TD)=115-1.56X(%IDF) r^(2)=0.90
Y(%DE)=103-0.98X(%IDF) r^(2)=0.90
これらの式は,この研究で得られた式とよく一致する。
飼育試験は,飼料効率が全ての飼料において同レベルであったことによりDPR-ミールの飼料効率に関する高栄養価を確認した。ベイドゥー等(1987b)とジル及びテイラー(1989)によって報告された,菜種/菜種ミールの飼料消費量と体重増加に及ぼす負の効果は,本試験でも観察された。しかしながら,ベイドゥー等(1987b)とジル及びテイラー(1989)の試験においては,菜種/菜種ミールは大豆ミールとの置換えであり,一方で,本試験ではDPR-ミールは脱脂粉乳と魚粉の置換えであったことに注目すべきである。ダニエルセン等(1979)とKjeldsenら(1981)によると,脱脂粉乳と魚粉は,大豆ミールと置換えて使用されると,離乳豚の飼料摂取と成長率を高める。
自発的な食物摂取の減少の考えられる理由は,しばしば,グルコシノレートとその分解物,タンニン及び菜種の高繊維量のためとされる(ベル,1984;ベイドゥー等,1987)。しかし,今回の試験では,グルコシノレート及びその組成物,フェノール樹脂は,既存の製造技術による菜種ミールと比べて非常に低かった。よって,嗜好性の問題はグルコシノレートやその分解物によるものではなさそうである。自発的な食物摂取の減少の説明は,脂質分に見いだせるかもしれない。可能性のある候補はドリコールであろう(ソーレンセン1991)。・・・
まとめると,DPR-ミールの子豚に対する栄養価は窒素利用率及び飼料要求率に示されるように高い。この実験においてDPR-ミールは嗜好性や消化性が高いスキムミルク粉及び魚粉と比較されていることは特筆すべきである。DPR-ミールの増量に伴うタンパク質及びエネルギーの消化率の低下はDPR-ミールに由来するIDFの量と有意に相関した。
このことは,比較的低いタンパク質及びエネルギーの消化率はただ殻に起因するものとは言えないことを示す。よって,脱皮した種のIDF画分はさらなる消化率の向上のために慎重に考慮されるべきである。)
(1h)Table1には,2つのバッチのDPR-ミールの化学的組成として,以下の表が示されている。



上記記載事項(1a)?(1h)からみて,刊行物1には,以下の2つの発明が記載されていると認められる(以下,「甲1発明1」等という。)。

甲1発明1
乾式粉砕された菜種を水性スラリー中で細胞壁分解酵素を触媒として細胞壁を破壊したものから,デカンティングによって外皮を除去し,さらに遠心分離及び洗浄によって油,シロップ等の他の成分と分離し,乾燥されて得られるDPRミールであって,乾燥状態で,粗タンパク質を56%程度,塩酸(HC1)-油脂を27%程度,炭水化物を12%程度,灰分を5%程度,粗繊維を4.6%程度及びグルコシノレートを1μmolg^(-1)程度含有するDPRミールを6,12または18%,穀物を主体とした食餌に配合した早期離乳子豚用食餌。

甲1発明2
乾式粉砕された菜種を水性スラリー中で細胞壁分解酵素を触媒として細胞壁を破壊したものから,デカンティングによって外皮を除去し,さらに遠心分離及び洗浄によって油,シロップ等の他の成分と分離し,乾燥されて得られるDPRミールであって,乾燥状態で,粗タンパク質を56%程度,塩酸(HC1)-油脂を27%程度,炭水化物を12%程度,灰分を5%程度,粗繊維を4.6%程度及びグルコシノレートを1μmolg^(-1)程度含有するDPRミールを6,12または18%,穀物を主体とした食餌に配合した早期離乳子豚用食餌を子豚に投与する,子豚の飼育方法。

2 本件の優先日前に頒布された刊行物である甲第2号証には,以下の事項が記載されている(括弧内は審判請求人による抄訳を基礎に合議体が作成した抄訳)。
(2a)「Fractionation of Rapeseed Meal into Flour and Hull Components」
(菜種ミールの粉末及び外皮成分への分別)(第96頁表題)
(2b)「ABSTRACT
Fine-ground rapesced meal can be fractionated by liquid cyclone processes into flour and hull fractions. The process can be applied to expeller meal or to the marc after solvent extraction. A nonpolar solvent such as hexane is particularly effective because residual oil in the products is also substantially reduced. The flour, obtained in yield of about 66% of the meal, contained over45% protein and 5-8% of crude fiber. Rapeseed meal is relatively low in digestible energy and the flour fraction would have greater application as a protein supplement in pig and poultry feeds.」(第96頁左欄第1?10行)
(要約
細かく磨り潰された菜種ミールは,液体サイクロンプロセスで粉末及び外皮成分へ分別される。このプロセスは,圧搾ミール又は溶剤抽出後の搾りかすに適用される。ヘキサン等の無極性溶剤は,製品中の残留オイルも実質上減少するので特に効果的である。粉末は,ミールの約66%の収率で得られ,45%を超えるタンパク質及び5?8%の粗繊維を含んでいた。菜種ミールは,比較的可消化エネルギーが低く,粉末部分は,豚及び家禽飼料におけるタンパク質栄養補助品としてより大きな用途を持つであろう。)
(2c)「INTRODUCTION
Rapesced is the most important oilseed crop in Canada, the oil content of the seed being about 45%, dry basis. The residual meals contain nearly 40% protein (N ×6.25) but are poor components in animal feeds because of their glucosinolate content, high fiber, low metabolizableenergy and poor palatability. The glucosinolate problem is being solved by plant breeding of newcultivars such as Tower, Regent and Candle which contain one-fifth to one-tenth of the originalglucosinolate level. The major limitations of low protein/energy levels and poor palatability couldbe overcome by the mechanical dehulling of the seed or meal. Some decrease in crude fiber levelhas been achieved by the development of yellow-seeded strains such as Candle, but technologicalprocessing would result in additional improvements in the nutritive value of the meal. It isestimated that the economic returns from the sale of the meal would be increased ca. 18% byfractionation of the high and low fiber components in the meal. 」(第96頁左欄第11?29行)
(序論
菜種は,種子の油分含有量が無水ベースで約45%であり,カナダにおいて最も重要な油糧種子作物である。残りのミールは,ほぼ40%のタンパク質(N×6.25)を含むが,動物飼料においては,グルコシノレート量,高繊維,低代謝エネルギー,及びおいしさに乏しいため,芳しくない成分である。グルコシノレートの問題は,もとのグルコシノレート量の15分の1?10分の1を含む,例えば,「タワー(Tower)」「レジェント(Regent)」及び「キャンドル(Candle)」等の新しい栽培品種の植物育種によって解決されつつある。低タンパク質/エネルギー量及び乏しいおいしさという大きな制約は,種子又はミールを機械的に脱皮することによって克服されるであろう。粗繊維量のかなりの低下は,例えば,「キャンドル(Candle)」のような黄色シード(yellow-seeded)品種の開発によって達成されてきたが,技術的な処理によって,ミールの栄養価のさらなる改良がもたらされるであろう。このミールの販売からの経済的な利益は,ミールにおける高低の繊維成分の分別によって,およそ18%増加すると見積もられる。)
(2d)「Seed Characteristics
The seed coats of Brassica seeds adhere very tightly to the cotyledons or meats and are,therefore,difficult to remove without loss of meat fines in the hull fraction. Compared to the meats, the seedcoats are relatively thick due, in part, to the small seed size. Generally, the proportions of hulls inturnip rapeseed, rapesecd and yellow mustard of 23, 22 and18% are associated with the increasing seed size of 2.1, 4.0 and 7.9 mg, respectively. The influence ot hull percentage on meal composition is shown in Table I. There is a progressive reduction in crude fiber and ash, and an increase in protein content, with decreases in hull percentage among the three Brassica species.
Removal of the hulls by hand separation gave marked increases in protein content of the flour and reductions incrude fiber levels. However, there were still characteristic differences incomposition ot trie flour, yellow mustard flour beingparticularly high in protein content and lowin crude fiber. Dehulling served to increase the ash levels in the flour; much of the flour mineralsare bound tophytin, and resist aqueous extraction, as well.」(第96頁左欄第30行?右欄第16行)
(種子特性
アブラナ科の種子の種皮は,子葉又は果肉に極めて堅く固着しているため,外皮部分における果肉粉の損失なしには取り除くことが困難である。果肉に比べて,種皮は,一つには,種子サイズが小であるため,相対的に厚い。一般に,カブ菜種(turnip rapeseed),菜種,及びイエローマスタード中の外皮の割合が23,22及び18%であることは,種子サイズが2.1,4.0及び7.9mgとそれぞれ増大することに関連がある。ミール組成における外皮含有率の影響は,表1に示される。粗繊維及び灰分の漸進的な減少,及び3種のアブラナ科植物の間の外皮含有率の低下とともに,タンパク質含有量の増加が認められる。外皮を手で除去することによって,粉末のタンパク質含有量の顕著な増加及び粗繊維量の減少がもたらされた。しかしながら,粉末の組成における特性の相違が依然として認められ,例えば,イエローマスタード粉末は特にタンパク質含有量が高く粗繊維量が低かった。脱皮することによって粉未申の灰分量を増加させることができ,粉末ミネラルの大部分は,フィチンに結合され,しかも,水抽出に抵抗する。)

(2e)TABLE1には,以下の表が示されている。


(2f)TABLE3には,以下の表が示されている。


上記記載事項(2a)?(2f)からみて,甲第2号証には,以下の発明が記載されていると認められる(以下,「甲2発明」という。)。

甲2発明
細かく磨り潰された油抽出後の菜種ミールを液体サイクロンプロセスで粉末及び外皮分へ分別して得られる菜種粉末であって,蛋白質46.9%,油脂分1.0%,繊維5.7%,灰分6.9%の,豚及び家禽飼料に使用可能な菜種粕の粉末。

3 本件の優先日前に頒布された刊行物である甲第3号証には,以下の事項が記載されている。
(3a)「2.特許請求の範囲
(1)油およびたん白の多い粉を高回収する菜種およびからしな種実の分別方法において,
(a)種実を圧砕し,それから油を除去して粉および種皮を含むミールを得,
(b)たん白用溶媒ではない非水性溶媒中でミールをサスペンジョンとし,その固形含量は約5?約33重量%であり,
(c)サスペンジョン中のこのミールの含水量は,約10重量%以下で,粒度仕150メッシュスクリーン(タイラー)を通すのに十分な微細であることを条件とし,
(d)このミールサスペンジョンを遠心分離もしくは重力液体分離させ,オーバーフローとして粉スラリーおよび種皮スラリーを得,そして
(e)各スラリーから溶媒を分離し,油,粉および種皮固形を分離生成物として回収することより成る上記分別方法。
・・・
(3)工程(d)における分離は液体サイクロン,デカンター遠心分離もしくはデカンテーション要素で行なう第(1)項記載の方法。
・・・」(公報第1頁左下欄第4行?右下欄第8行)
(3b)「3.発明の詳細な説明
本発明は菜種もしくはからしな(Braseica種)を油および粉からのたん白の損失を少くして油,粉およぴ種皮に処理することを目的とする。
菜種はカナダにおけるもっとも重要を油糧作物であり約44?46%の食用植伽油(乾物換算)を含む。残留ミール(種肉十種皮)は約40%のたん白(乾物換算)を含む。このたん白の栄養価(たん白有効比)は良好で,できるだけ多くの油およびたん白(種皮を含まない形で)を回収することが望ましい。」(公報第2頁右上欄第2?12行)
(3c)「一般には,菜種ミールは高繊維含量,グルコシノレートの存在および低たん白レベルのために単胃動物飼料では大豆ミールと対抗できない。新しい2倍のゼロ変種(double zero varieties)はグルコシノレートの消化に関連する毒性を減ずるであろうが,高割合の種皮は尚低消化性エネルギ一およびたん白レベルであろう。反すう動物飼料市場では菜種ミールはルーメン内バクテリアの窒素源として安い尿素と競争しなければならない。従って菜種ミールの価格は一般に大豆ミールおよび他の種実副生物に比し低い。」(公報第2頁左下欄第16行?右下欄第6行)
(3d)「例3
上記試験(例2)からのかなりの量を含むミセラは残留油の非常に高い予備圧搾プラス溶媒絞りかすの液体サイクロンに使用した。分別は粉及び種皮の回収には成功したが脱脂には無効であった(第4表)。

第4表 高レベルの残留油を含む予備圧搾プラス溶媒絞りかすの液体サイクロン分別
生成物 収量% たん白% 脂肪% 繊維% 灰分%
絞りかす 100 41.0 4.9 12.0 7.6
粉 67 45.1 5.0 5.5 6.6
種皮 33 26.2 3.9 23.4 6.3

油及び水分を含まぬ新しい溶媒は,脱脂が方法の機能の1つを構成する場合には必須であると結論された。」(公報第12頁左下欄第3行?下第2行)
(3e)「例4
低グルコシノレートレベルのタワー(tawer)菜種を商業プラントで処理し,このミールからの絞りかす液体サイクロン分別はこれらの結果を示す(第5表)。

第5表
生成物 収量% たん白% 脂肪% 繊維% 灰分%
絞りかす 100 41.8 4.7 12.8 7.3
粉 66 52.5 0.5 4.8 8.1
種皮 34 24.1 1.0 28.0 6.0

タワーは一貫して粉中に高たん白レベルと低繊維レベルを示す。低グルコシノレート含量と組み合せると,生成物は動物飼料の栄養価に非常な増加を表わすであろう。」(公報12頁左下欄下第1行?右下欄下第6行)

上記記載事項(3a)?(3e)からみて,甲第3号証には,以下の発明が記載されていると認められる(以下,「甲3発明」という。)。

甲3発明
種実を圧砕し,それから油を除去して粉および種皮を含むミールを得,たん白用溶媒ではない非水性溶媒中でミールをサスペンジョンとし,このミールサスペンジョンを遠心離もしくは重力液体分離させ,オーバーフローとして粉スラリーおよび種皮スラリーを得,そして各スラリーから溶媒を分離することによって油,種皮等の他の成分と分離して得られる菜種粕の粉であって,蛋白質52.5%,脂肪0.5%,繊維4.8%,灰分8.1%の,動物飼料に使用可能な菜種粉。

4 本件の優先日前に頒布された刊行物である甲第4号証には,以下の事項が記載されている。
(4a)「一般に使用されている養豚用配合飼料の成分のうち,蛋白質の消化率は比較的高いのに対して,粗繊維の消化率は25%と低い。飼料の消化率を高めることは,ふん量低減には有効である。豚では高エネルギーで粗繊維の低い飼料を給与することで消化率が向上し,ふん量が減少する。」(第66頁左欄下第13行?下第7行)

5 本件の優先日前に頒布された刊行物である甲第5号証には,以下の事項が記載されている。
(5a)「本発明の詳細な説明
本発明は,草食動物に好適な固形飼料に関する。」(公報第1頁第1欄第12?14行)
(5b)「実施例3
とうもろこしをロールミルで粉砕して1200μmの目開きの篩3段および300μmの目開の篩3段を備えたシフターを通し,1200μm篩の上より平均粒径2300μmの原料を,300μm篩の下より平均粒径110μmの原料を,そして両篩の中間より平均粒径600μmの原料を得る。
次いで前記平均粒径2300μmのとうもろこし45kg,丸粒大麦,(平均粒径:縦長8100μm×横幅3500μm)15kg,実施例2で得られた平均粒径700μmのマイロ15kgおよび前記平均粒径100μmの小麦25kgを混合する。得られた穀類原料配合物より75kgをとり,これに実施例1で用いた皺15kg,平均粒径400μmの菜種粕2kg,平均粒径380μmの棉実粕2kg,糖蜜4kgおよびビタミン・ミネラル剤2kgを加えて混合する。この混合物に蒸気4kgを加えて造粒機〔上田鉄工(株)製ペレツトミル〕で造粒して直径6mmおよび長さ12mmの固形飼料を得た。」(公報第6頁第12欄第23?41行)
(5c)「実施例6
実施例1で得られた平均粒径2200μmのとうもろこし45kg,実施例3で用いた大麦20kg,実施例2で得られた平均粒径700μmのマイロ25kg,実施例1で得られた平均粒径100μmの小麦10kgを混合する。このようにして得られた穀類原料配合物より70kgをとり出し,このものに実施例1で用いた皺12kg,実施例2で用いたコーングルテンフイード5kg,実施例1で用いたアマニ粕3kg,実施例3で用いた菜種粕2kg,および平均粒径320μmのアルフアルフアミール3kgを加え,更に糖蜜3kgおよびビタミン・ミネラル剤2kgを加えて混合する。このものを実施例1と同様の方法で加水および造粒して固形飼料(直径6mm×長さ15mm)を得る。」(公報第7頁第13欄第24行?第14欄第12行)

6 本件の優先日前に頒布された刊行物である甲第6号証には,以下の事項が記載されている。
(6a)「【0023】(実施例2)本実施例では,とうもろこし61wt%,大豆粕14.5wt%,なたね粕4wt%,糖蜜0.5wt%,魚粉1wt%,肉骨粉1.3wt%,牛脂1.2wt%,ビタミン・ミネラル類1.5wt%の配合の飼料組成物を調製した。この飼料組成物の全体を,110℃に加熱した加熱装置内に入れ,30気圧で20秒間加熱した。
【0024】加熱した飼料組成物を100日令の子豚より不断でドライ給餌し,ウインドレス豚舎で飼養した。・・・」
(6b)「【0030】(実施例4)本実施例では,本発明の飼料組成物を豚に給餌して,得られる豚肉の肉色を評価した。本実施例では,とうもろこし61.02wt%,マイロ15wt%,大豆粕14.5wt%,なたね粕4wt%,糖蜜0.5wt%,魚粉0.1wt%,肉骨粉2.8wt%,牛脂1.2wt%,炭酸カルシウム0.65wt%,食塩0.24wt%,リジン0.04wt%,ビタミン・ミネラル類0.15wt%の配合の飼料組成物を調製した。この飼料組成物の全体を,75?85℃の加熱装置内に入れて,常圧で1分加熱して予熱した。次いで,この予熱飼料を,110℃の加熱装置内に入れて,30気圧で20秒間加熱して,加熱飼料組成物Aとした。さらに,別の予熱飼料を,130℃の加熱装置内に入れて,20気圧で3?5秒間加熱して,加熱飼料組成物Bとした。
【0031】これら2種の加熱飼料組成物を,それぞれ,115日令の子豚(去勢5頭、雌5頭)より不断でドライ給餌し,ウインドレス豚舎で飼養した。・・・」

7 本件の優先日前に頒布された刊行物である甲第7号証には,以下の事項が記載されている。
(7a)「【請求項2】
85容積%の大麦,7.5容積%?10容積%の綿実粕,及び,5容積%?7.5容積%の菜種粕を粉状にして混合し,100°C±10°Cで加熱し、加圧して押し出し成形することによって形成されることを特徴とするペレット状配合飼料。」
(7b)「【0001】
本発明は一般に,家畜用配合飼料に関する。より詳細には,本発明は,大麦等を加工したペレット状の配合飼料に関する。」

8 本件の優先日前に頒布された刊行物である甲第8号証には,以下の事項が記載されている。
(8a)「【請求項1】
菜種粕を32?60メッシュのいずれかの篩にかけて,粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと,粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画することからなる,菜種ミールの製造方法。
・・・
【請求項5】
菜種粕を32?60メッシュのいずれかの篩にかけることからなる,菜種ミールの窒素含量の調整方法。」
(8b)「【技術分野】
【0001】
本発明は,菜種ミールの製造方法に関し,より詳細には,産業的利用価値の高い菜種ミールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
菜種から油分を搾り取った後に残る菜種粕は,現在,菜種ミールとして飼料や肥料用途へ利用されている。しかし,菜種ミールは,大豆ミールと比べると,蛋白質含量が低い,栄養価が低い,動物の嗜好性が悪い,色が悪いなどの点で劣っている。この原因は,菜種ミールが繊維質や苦味物質を多く含み,蛋白質分が比較的少ないことにある。
【0003】
菜種ミールに含まれる窒素分やミネラルは,栄養源として飼肥料用途に重要な成分であるが,その含有量は菜種種子そのものの組成に影響され,収穫時期や品種によってばらつきが生じる。栄養分が低い菜種から得られる菜種ミールは,製品規格値を下回るリスクが増す。逆に,栄養分が高い場合,飼肥料として利用した際に有効量よりも過剰となり,環境負荷物質の排出量が増加する要因となってしまう。」
(8c)「【0010】
このように,従来の方法は,菜種ミールの栄養調整のために産業的利用可能な技術とは言い難い。そこで,本発明の目的は,菜種粕から蛋白質を代表とした栄養価を調節した菜種ミールを簡便かつ安価に製造する方法であって,しかも廃棄部分の少ないかあるいは全く出ない製造方法を提供することである。」
(8d)「【発明の効果】
【0016】
本発明は,搾油後の菜種粕を篩うという簡便かつ安価な操作で,細粒度菜種ミールと粗粒度菜種ミールという粒度の揃った二種類の菜種ミールを製造することができる。
【0017】
32?60メッシュ篩下の細粒度菜種ミールは,蛋白質含量が高い。しかも,飼料としての利用価値の高い特定のアミノ酸を通常の菜種ミールよりも高い比率で含有するので栄養価も優れる。細粒度菜種ミールは,色目も改善される。さらに,48?60メッシュ篩下のより細粒度の菜種ミールは,窒素含量6.53%以上7.27%以下のより高蛋白質含量の菜種ミールとなる。
・・・
【0019】
本発明の菜種粕を32?60メッシュのいずれかの篩にかけることからなる,菜種ミールの窒素含量の調整方法によれば,菜種ミールの窒素含量の移行が任意に調整可能である。これは,収穫時期や品種に応じて,窒素含量および栄養価の低い原料菜種粕を得た場合に,窒素含量および栄養価を高めるのに有用である。また,窒素含量および栄養価が高い原料菜種粕を得た場合に,窒素含量を適正量に調整した菜種ミールおよびそれを配合した飼肥料を調製することで,環境負荷物質を発生させないようにするのに有用である。」
(8e)「【0020】
以下に,発明の菜種ミールの製造方法の一実施の形態を説明する。本発明の製造方法の原料として用いる菜種粕は,菜種から搾油した残渣を意味する。菜種の品種は特に限定されず,すべての菜種を用いることができる。好ましくは,エルカ酸やグルコシノレートが低減された品種であり,キャノーラ種が例示される。
【0021】
菜種からの搾油は,通常,2工程に分かれている。まず,菜種を圧搾機により搾油し,続いて,圧搾粕に残された油分をn-ヘキサンなどの有機溶剤を用いて抽出し,上記圧搾油と抽出油を合わせて精製する。2段階の搾油工程を経てできた菜種粕は,搾油工程で一部が造粒されることにより,特徴のある粒度分布を持つようになる。これを篩で篩うことで,画分に応じて特徴のある菜種ミールを得ることができる。なお,圧搾粕を砕いて,有機溶剤抽出した時と同様の粒度分布を持たせた物を本発明の製造方法の原料としてもよい。
【0022】
上記菜種粕を32?60メッシュ,好ましくは35?60メッシュ,さらに好ましくは35?48メッシュ,特に好ましくは35?42メッシュのいずれかの篩にかけて,粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと,粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画する。これにより,篩上と篩下とで菜種ミールの性状が異なるものが得られる。なお,本発明は,上記の篩が含まれる限り,複数の篩を使用することを妨げるものではない。本発明は,また,分画して得られた粗粒度菜種ミールをさらに分級し,また,分画して得られた細粒度菜種ミールをさらに分級することを妨げるものではない。したがって,これらの分級物も本発明に含まれる。」
(8f)「【0023】
具体的には,32?60メッシュの篩下には窒素含量6%以上で,蛋白含量37.50%以上の栄養価の優れた細粒度菜種ミールが選別される。細粒度菜種ミールは,消化率が向上する。細粒度菜種ミールは,色目が薄くて,飼料原料として好適である。
【0024】
さらに48?60メッシュ篩下に限定された細粒度菜種ミールは,原料となる菜種粕の窒素含量が5.8%以上のときに窒素含量7%以上で蛋白含量43.75%以上,原料となる菜種粕の窒素含量が5.8%以下のときでも窒素含量6.5%以上で蛋白含量40.625%以上となり,原料菜種粕に対して窒素含量及び蛋白含量を平均して約1.2倍高めることができる。
【0025】
上記特性を有する細粒度菜種ミールは,通常の菜種ミールよりも蛋白質などの栄養価が高いために,飼肥料としての添加量が少なくてすむほか,豚,牛,鳥,魚の飼養効率の改善に有効である。」
(8g)「【0030】
以下に,実施例および比較例を用いて,本発明をより詳細に説明する。しかし,実施例の内容が本発明の技術的範囲を限定するものではない。
〔実施例1〕
上から順に12メッシュ(目開き1.4mm,以下,メッシュをMということがある),20M(目開き850μm),32M(目開き500μm),35M(目開き425μm),48M(目開き300μm)および60M(目開き250μm)の篩を積み上げ,その最上部に菜種粕((株)J-オイルミルズ製)を500g載せ,手作業にて10分間篩分けした。
【0031】
篩分けの結果を観察すると,12メッシュ上には,皮と子葉および胚軸部とが一度はがれた後に造粒されたものが大部分を占めた。12メッシュ以下では,造粒物が減少した。20?32メッシュでは,皮部分が最も多くなった。菜種ミール通常品(篩分け無し),粗粒度菜種ミールおよび細粒度菜種ミールを粉砕機により粉砕し,色差計(製品名:カラーリーダーCR-10,コニカミノルタ(株)製)を用いて色目評価を行った。図1に菜種ミールの色調の測定結果を示す。特に35メッシュ下の画分において,白色および黄色が強く,明るい色調となっていた。
【0032】
篩分けされた画分の重量割合,水分,窒素含量(N分),油分および蛋白質含量(蛋白分)を測定した。その際,水分は,飼料分析基準の加熱乾燥法,N分は基準油脂分析試験法のケルダール法,そして,油分は基準油脂分析試験法のエーテル抽出法により求めた。蛋白分は,測定されたN分に蛋白質換算係数6.25を乗じて求めた。その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】



(8h)
「【0036】
表1に示した菜種ミール通常品,粗粒度菜種ミールおよび細粒度菜種ミールのタンニン,グルコシノレート,繊維質,水溶性窒素指数(NSI)の分析を行った。タンニンは,Folin-Denis法に従うタンニン酸としての量で示す。グルコシノレートは,HPLCによるAOCS公定法により,繊維質およびNSIは,基準油脂分析試験法の方法により測定した。その結果を表2に示す。
【0037】
【表2】



9 本件の優先日前に頒布された刊行物である甲第11号証には,以下の事項が記載されている。
(11a)「【請求項1】 菜種粕中の成長阻害物質を実質的に含有せず,しかもタンパク質含有量が55%(乾燥重量)以上である菜種タンパク濃縮物。
【請求項2】 成長阻害物質であるリグニン含量が2%(乾燥重量)以下のものである請求項1記載の菜種タンパク濃縮物。
【請求項3】 菜種タンパク濃縮物が,菜種粕から,以下に述べる製造工程を適宜選択して,組み合わせることにより製造したものである請求項1又は請求項2記載の菜種タンパク濃縮物。
(1)菜種粕の粉砕工程
(2)種皮の分離工程
(3)酵素処理工程
(4)水処理工程
(5)乾燥工程
【請求項4】 (1)菜種粕の粉砕工程が,菜種粕を種皮を実質的に粉砕しない条件下で粉砕する手段を含むものである請求項3記載の菜種タンパク濃縮物。
【請求項5】 (1)菜種粕を種皮を実質的に粉砕しない条件下で粉砕する手段が,200?500μmの間隔の粉砕面を有する粉砕手段を含むものである請求項4記載の菜種タンパク濃縮物。
【請求項6】 (1)菜種粕の粉砕工程が,湿式で行われるものである請求項3乃至請求項5のいずれか一つに記載の菜種タンパク濃縮物。
【請求項7】 請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載の菜種タンパク濃縮物をタンパク源とする海洋性養殖魚用飼料。
【請求項8】 海洋性養殖魚がタイ,ブリ,ヒラマサ,カンパチ,フグ,カレイ又はヒラメである請求項7記載の海洋性養殖魚用飼料。」
(11b)「【0020】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,特に海洋性養殖魚用飼料のタンパク質源に適するところの,成長阻害物質を実質的に含まない,菜種由来タンパク質高含量の菜種タンパク濃縮物を提供することを目的とするものである。」
(11c)「【0037】本発明の菜種タンパク濃縮物は,菜種粕に高タンパク化処理を施し,その高タンパク化を図るとともに,リグニンやその他の成長阻害物質(グルコシノレ-ト,フィチン酸等)を除去させたものである。
【0038】このような菜種タンパク濃縮物は,次に述べる製造工程を,(1),(2)の工程を核として,適宜選択して,組み合わせることにより製造することができる。
【0039】本発明の製造工程としては,以下のものが挙げられる。
【0040】(1)菜種粕の粉砕工程,(2)種皮の分離工程,(3)酵素処理工程,(4)水処理工程,(5)乾燥工程。
【0041】以下,上記の各工程について,説明する。
【0042】(1)菜種粕の粉砕工程:この工程は,リグニンを含む種皮の除去の一貫として行うものであって,菜種粕の粉砕は,本発明の目的からみて,種皮を実質的に粉砕しない条件で粉砕することが必要である。
【0043】このような菜種粕の粉砕工程は,本発明によって,初めて見い出されたものである。
【0044】本発明の粉砕対象物である菜種粕は,菜種(球状で大きさ一定で剥離し易い)などと異なり,大きさはバラバラで,不定形で,お互いに引っかかり易く,しかも圧搾工程で種皮とミールがくっついているという特性を有しているので,その粉砕方法には,十分な配慮が必要である。
・・・
【0047】一般に,粉砕は,粉砕面の荒さと間隔及び粉砕対象物の流速で決定されるとされていることからみて,粉砕面については,平均粒径が菜種粕のような500μm程度(10?2000μm)の柔らかい粒体を粉砕することを考えると,粉砕面は,荒くして,その間隔は100μm以下にするのが常識である。
【0048】ところが,本発明では,驚くべきことに,粉砕面が比較的滑らかで,しかもその間隔は粉砕対象物の粒径,すなわち,200?500μm程度とするのがよい。
【0049】本発明の粉砕手段としては,粉砕部が複数の回転するロールで構成されているもの,例えば,ロールミル等が,また,粉砕部が2枚の円盤で構成されているもの,例えば,グローミル,マスコロイダー,セレンデュピター等のグラインダーミルが,それぞれ,挙げられる。
【0050】通常の個体の粉砕手段,例えば,ハンマーミル,ピンミル,ジェットミル,ボールミル等は適当ではない。
【0051】このように,本発明の粉砕法は,通常の個体の粉砕や擦って種皮をむくという従来技術,例えば,菜種や米の脱皮では,考えられないような手段を採用していることからみて,本発明の粉砕法には,格別の意義があり,単なる従来技術の適用に該当しない。
【0052】(2)種皮の分離工程:この工程では,菜種由来タンパク質を濃縮するとともに,リグニンを低減することができ,前記の粉砕工程を経ることにより,より高い効果が得られる。
【0053】前記の粉砕工程で得られた粉砕後の固形物には,鱗片状で約100μmと大きく比重の高い種皮と,100μm以下の繊維質とタンパク質粒子が存在する。種皮は,形状,比重あるいは大きさの差を利用して分離することができる。実際の装置としては,遠心分離器,デカンタ-,液体サイクロン,シックナ-,篩,アスピレ-タ-等を利用することができる。この種皮を除去する工程は,次の酵素処理工程を実施した場合は,その後で行ってもよい。」
(11d)「【0077】《ブリ飼育試験2》菜種粕5kgに75kgの水を加え,95℃で5分間加熱処理した後,グローミル(グローエンジニアリング社製)で,グラインダーの間隔を250μmに設定して粉砕した。粉砕液をリン酸でpH4.5に調整した後,繊維質分解酵素SP-311を0.5%添加して4時間反応した。そして,反応後の液を3倍に希釈し,デカンテーションで上層を回収し,連続遠心分離機でタンパク濃縮物を回収した。回収したタンパク濃縮物に対して3倍量の加水を行い,5N水酸化ナトリウムでpH6.0に調整して,再度,連続遠心分離機で菜種タンパク濃縮物を回収した。回収した菜種タンパク濃縮物を,凍結乾燥した後,室内に放置し平衡水分とした。この時の菜種粕に対する歩留まりは28%であった。得られたタンパク濃縮物は,タンパク質含量71.2%(乾燥重量),リグニン含量0.3%(乾燥重量)であった。
・・・
【0080】次に,基準配合飼料に,菜種由来以外のタンパク質の組成及び添加量を一定とし,飼料中のタンパク質含量が約51%となるように,前記の各タンパク濃縮物を添加した。得られた各配合飼料(試験区I:種皮含有画分不含,試験区II:種皮含有画分5%,試験区III:種皮含有画分10%)を,1水槽当たり平均体重37gのブリ,30個体に与え,28日間飼育した。・・・」
(11e)【0086】
【実施例1】菜種粕100kgを750kgの水に加え,95℃で10分間加熱した後,粉砕機スーパーマスコロイダー(増幸産業(株)製)で,グラインダーの間隔を350μmに設定して湿式粉砕し,粉砕した菜種粕に,繊維質分解酵素SP-311(ノボノルデイスク社製)を0.5%添加して,pH4.5,50℃で4時間反応した。次いで,目開き250μmの篩で種皮,未分解の繊維質を除去した後,pH6に調整し,連続遠心分離機で固形分を回収し,加熱乾燥して,菜種タンパク濃縮物を得た。得られたタンパク濃縮物は,タンパク質含量60.3%(乾燥重量),リグニン含量0.8%であった。」
(11f)「【0096】
【実施例4】菜種粕10kgをロールミル(テストロール (株)佐竹製作所)で,粉砕面の間隔を250μmに設定して粉砕し,目開き500μmの篩にかけた。その篩下を,再度,ロールミルで粉砕し,目開き355μmの篩にかけて,篩下を回収し,菜種タンパク濃縮物を得た。得られた菜種タンパク濃縮物は,タンパク質含量55.6%(乾燥重量),リグニン含量2%(乾燥重量)であった。」
(11g)「【0101】
【発明の効果】
本発明は,そのままでは,海洋性養殖魚用飼料のタンパク質源として適さない菜種粕に対し,高タンパク化処理を施し,繊維質やリグニン等の成長阻害物質等を実質的に含有しない菜種タンパク濃縮物とすることにより,油糧副産物である菜種粕の利用を図ったものである。」

第7 無効理由4についての当審の判断
本無効審判請求事件においては,無効理由4として,本件特許の請求項1,2に係る発明は明確でない,本件特許の請求項1,2に係る発明は明細書に記載された発明ではないとの主張がなされているので,まず,当該無効理由4の理由の有無について検討する。

1 「蛋白質含量42.5?55%」及び「粗繊維6%以下」との構成の明確性について(第2 1(4)無効理由4のア)

菜種粕の組成について特許明細書を参酌すると,菜種粕発明品は,実施例1(表2),実施例9(表7),実施例10(表9)(表2,表7,表9の記載内容は「第3」の記載事項(c)(f)(g)に同じ)において,水分がそれぞれ,9.99%,12.10%,12.5%の菜種粕について,蛋白質含量がそれぞれ,45.63%,44.19%,44.0%であり,粗繊維がそれぞれ,5.51%,5.43%,4.9%であることが示されている。
一方,乙第1号証である日本標準飼料成分表(2001年度版)第2版,第70頁の「492 菜種粕」欄には,水分の量が原物中に12.3%(標準偏差1.4)であることが示されており,乾燥していない菜種粕の水分量が12.3%程度であることは,飼料分野の当業者に周知の事項である。
本件特許の請求項1,2の菜種粕の量を「蛋白質含量42.5?55%」,「粗繊維6%以下」とする構成は,このような特許明細書の記載を基礎としたものであり,本件特許明細書の記載及び技術常識を考慮すれば,特許の請求項1,2の菜種粕の蛋白質含量及び粗繊維は,特段の乾燥処理がなされていない菜種粕中の含量であると解せられ,審判請求人が主張するように乾物中の水分量であると解する余地はない。
そして,本件特許の請求項1,2に係る発明において,「蛋白質含量42.5?55%」,「粗繊維6%以下」とする構成は,菜種粕の蛋白質含量,粗繊維の量を水分を含んだ原物中の比率において,菜種粕の蛋白質含量を42.5?55%に,粗繊維を6%以下に限定するものであり,所定の菜種粕のうち蛋白質含量が42.5?55%,粗繊維が6%以下のものに特定するものであるから,当該記載は明確である。

2 「菜種粕を篩分け処理して得られ,そして蛋白質含有量42.5?55%,粗繊維6%以下,及び粗脂肪2.26?3.6%の菜種粕を,1?20%配合」と記載された本件特許の請求項1,2が,特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものであるかについて(第2 1(4)無効理由4のイ)

訂正後の本件特許明細書の段落【0009】【0010】には,
「・・・そこで,本発明は,菜種粕を篩分け処理して得られ,そして蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下,及び粗脂肪2.26?3.6%の菜種粕を,1?20%配合した飼料も提供する。
・・・
本発明はまた,上記飼料を用いた・・・排泄物量抑制方法を提供する。」との記載があり,

訂正後の本件特許明細書の段落【0014】(記載事項(b)に同じ)には,
「本発明の飼料に配合する菜種粕は,菜種粕中の粗蛋白質と粗繊維の割合が重要であり,両方が特定範囲にあるときにのみ,効果を奏するものである。すなわち,菜種粕の蛋白質含量は,42.5?55%である。蛋白質含量が41%未満であると,飼料に添加したときに排泄物抑制効果やエネルギーの利用効率の向上効果が得られない。」との記載がある。

また,訂正後の本件特許明細書段落【0021】以降には実施例が記載されている。
ここで,まず,これら実施例の記載内容について検討する。
実施例10(記載事項(g)に同じ)には,蛋白質含有量44.0%,粗繊維4.9%,粗脂肪3.6%の菜種粕を,20%配合した飼料及び該飼料を山羊に給与した実験について開示されている。「第4 2(1)イ」で検討したとおり,当該実施例10の菜種粕発明品も篩分け処理で得られたものと解せられる。
また,実施例2,3,6,7(記載事項(d)(e)に同じ)の実験に用いられる菜種粕の組成には粗脂肪の比率は記載されていないが,「第4 2(1)イ」で検討したように,粗脂肪2.26?3.6%との規定は,菜種粕が篩分け処理により得たものであることを明確にするための限定であって,同じ篩分けにより得られた菜種粕の粗脂肪は,同程度の粗脂肪を含有すると認められるから,実施例2,3,6,7で用いられる菜種粕の粗脂肪も実施例1,9,10と同様に実質的に2.26?3.6%程度と認められる。

してみると,本件特許明細書には,実施例として,菜種粕を篩分け処理して得られ,そして蛋白質含有量42.5?55%,粗繊維6%以下,及び粗脂肪2.26?3.6%の菜種粕を,飼料へ1%,18%,20%配合した鶏の飼料を作成したこと,同様の菜種を20%配合した反芻動物である山羊の飼料を作成したこと,さらに,これら飼料の鶏及び山羊への投与実験を行い,篩分けをしない菜種粕従来品と比べて排泄物が抑制または低減するとの結果を得たことが開示されているといえる。
実施例1?3,10(記載事項(c)(d)(g)に同じ)で示されるのは,
粗蛋白(%)45.6,46.2,42.9,44.0
粗繊維(%) 5.5, 4.7, 5.5, 5.9
と,離散した数値のみであるが,飼料中の成分の家畜に対する効果は僅かな成分量の相違では変化しないことは当該分野の技術常識であり,これら数値に示される程度の蛋白質含量,粗繊維含量であれば本件発明と同様の効果を奏することは当業者にとって自明である。
なお,粗蛋白は,実施例においては最大でも46.2%のものまでの開示となっているが,段落【0009】及び段落【0014】には蛋白質含有量42.5?55%との範囲が開示されており,蛋白質は消化率がいいとの技術常識を考慮すれば,蛋白質含量を55%まで増加させたものにおいて,本件発明の効果を奏さないとする理由はない。

そして,本件特許明細書の記載を総合すると,
「菜種粕を篩分け処理して得られ,そして蛋白質含有量42.5?55%,粗繊維6%以下,及び粗脂肪2.26?3.6%の菜種粕を,1?20%配合」した飼料,
「菜種粕を篩分け処理して得られ,そして蛋白質含有量42.5?55%,粗繊維6%以下,及び粗脂肪2.26?3.6%の菜種粕を,1?20%配合」した飼料を家畜に投与することからなる家畜の排泄物抑制方法は,発明の詳細な説明に記載したものと認められ,本件特許の請求項1及び2は,特許法第36条第6項第1号の規定を満たしている。

3 本件特許の請求項1,2が特許請求の範囲において飼料中の粗繊維含量を規定していないことに起因する発明の明確性について(第2 1(4)無効理由4のウ)

鶏,豚,牛,山羊などの家畜飼料には,乙第1号証等に示されるように,飼育する家畜に適した,標準的な飼料の配合が知られている。
そして,本件特許明細書の実施例においても,【表1】(記載事項(c)に同じ)や,【表8】(記載事項(g)に同じ)に例示されるように,菜種粕以外の成分としては,標準的な飼料を「基本飼料」として用いていることが示される。
このような特許明細書を基礎とした特許請求の範囲において,「他の飼料」が特定されない場合,当該「他の飼料」として家畜に適した標準的な飼料が好適に使用されることは,当業者であれば当然に認識できることと認められる。
そして,本件特許明細書の実施例においては,基本飼料に菜種粕従来品,菜種粕発明品をそれぞれ配合した試験飼料を用い,菜種粕従来品と比べて排泄物が低減する等の効果を奏するとするものであるから,通常用いられるような標準的な飼料を用いれば,その効果を確認できるものと認められ,特許請求の範囲において「他の飼料」を特定しなければ発明が特定できないとはいえない。
審判請求人は,「請求項1は,『蛋白質含量42.5?55%,かつ粗繊維6%以下の菜種粕を1?20%配合』することを規定するのみで,飼料中の粗繊維含量が規定されていないところ,その他の配合成分によって飼料中の粗繊維含量が増大した場合には(例えば,その他の成分として粗繊維含量10%以上の菜種粕を大量に配合させた場合など),本件特許発明の効果を奏するとは考えられない。」と主張するが,一般的には想定されないケースにおいて本件発明の効果を奏することが確認されないことをもって,発明が不明確なものであるとはいえない。

よって,特許請求の範囲においてその他の成分の粗繊維含量を規定していないことをもって,本件特許の請求項1及び2に係る発明が明確でないとはいえない。

4 飼料中のその他の成分を規定していない本件特許の請求項1及び2が,特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものであるかについて(第2 1(4)無効理由4のエ)

本件特許明細書は実施例において菜種粕以外の成分として,飼育する家畜に適した,標準的な飼料を「基本飼料」として用い,当該基本飼料に菜種粕従来品,菜種粕発明品をそれぞれ配合して試験飼料とし,菜種粕発明品を配合した試験飼料は,菜種粕従来品を配合した試験飼料と比較した際に排泄物が低減する等の本件特許明細書記載の効果を奏することを開示している。
「3」で言及したように,鶏,豚,牛,山羊などの家畜飼料として,飼育する家畜に適した,標準的な飼料の配合は当業者に広く知られたものであり,飼料中の菜種粕以外の「他の成分」として,通常は,飼育される家畜の飼料として使用される標準的な飼料を用いることは本件特許明細書に接した当業者であれば認識できることである。
そして,本件特許の請求項1,2の基礎となる本件特許明細書の実施例は,上記したように基本飼料に菜種粕従来品,菜種粕発明品をそれぞれ配合した試験飼料を用い,菜種粕従来品と比べて排泄物が低減する等の効果を奏するとするものであり,飼料中の他の成分を特定しなければ発明の効果が奏されないというものではない。
してみると,本件特許の請求項1及び2に係る発明は,出願時(本件優先権主張時)の技術常識に照らして特許明細書の記載から一般化できる範囲のものであり,明細書に開示の無い「他の飼料」を採用した飼料が包含されるからとの理由で,発明の詳細な説明に記載したものではないとはいえない。
よって,本件特許の請求項1及び2は,特許法第36条第6項第1号の規定を満たしている。

5 無効理由4についての当審の判断のむすび
以上検討したように,本件特許の請求項1及び2に請求人が主張する特許法第36条第6項第1号及び第2号の違反はなく,無効理由4は理由がない。

第8 無効理由1についての当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「粗タンパク質」,「粗繊維」,「早期離乳子豚用食餌」は,本件発明1の「タンパク質含量」,「粗繊維」,「飼料」に相当する。
甲1発明1の「DPRミール」の粗蛋白含量は,乾燥状態で56%程度であって,乾燥しない菜種粕の水分含量が「第7 1」で指摘したとおり12%程度であることを考慮すれば,本件発明1の「蛋白質含量42.5?55%」の範囲内であると認められる。
甲1発明1の「DPRミール」の粗繊維は,4.6%程度であって,本件発明1の「6%以下」の範囲内である
甲1発明1のDPRミールの配合量は,6,12または18%であって,本件発明1の「1?20%」の範囲内である。
本件発明1の「菜種粕」と甲1発明1の「DPRミール」とは,共に,菜種から油を分離した後の物であるから,「菜種油分離処理品」である点で共通する。

してみると,本件発明1と甲1発明1とは,
(一致点)
「蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下の菜種油分離処理品を,1?20%配合した飼料」の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1A)
菜種油分離処理品が,本件発明1は,菜種粕を篩分け処理して得られたものであって,粗脂肪2.26?3.6%であるのに対し,甲1発明1は,乾式粉砕された菜種を水性スラリー中で細胞壁分解酵素を触媒として細胞壁を破壊したものから,デカンティングによって外皮を除去し,さらに遠心分離及び洗浄によって油,シロップ等の他の成分と分離し,乾燥されて得られるものであり,また,油脂分が,乾燥状態において塩酸(HC1)-油脂を27%程度(26.9%,27.5%)含むものであって,水分量や計測の差を考慮しても本件発明1よりも多いものであり,粗脂肪2.26?3.6%ではない点。

(2)判断
審判請求人は,本件発明1,2の「菜種粕を篩分け処理して得られ」という製造プロセスに係る構成は,物の発明の内容を差別化する発明の特定事項ではないと主張する(第2 1(6)ウ)ので,まず,この点について検討する。

物の発明について,特許請求の範囲に当該物の製造方法が記載されている場合において,発明の対象となる物の構成を,製造方法によることなく,物の構造又は特性により直接的に特定することが不可能または困難であるといった特段な事情が存在しない場合には,特許請求の範囲に記載された製造方法により製造された物に限定して認定されるべきものである(知財高裁判決平成22年(ネ)第10043号)。
本件発明1,2においても「菜種粕を篩分け処理して得られ」との記載は,本件発明1,2において飼料に配合する菜種粕を「菜種粕を篩分け処理して得られ」る菜種粕に限定し,他の製法で得られる菜種粕を本件発明1,2の特許請求の範囲から排除するものであるから,本件発明1,2の発明を特定する事項であり,また,菜種粕を篩分け処理して得られる菜種粕と他の製法で得られる菜種粕とは,製造方法に起因して菜種粕の組成も異なるものである。

次に,上記相違点1Aについて検討する。
甲第1号証は,早期離乳子豚の蛋白質源としてのDPRミールの適用の可能性について子豚の飼育実験をした報告書であり(記載事項(1a);甲号各証の記載事項については「第6」を参照,以下同様。),従来の菜種粕はグルコシノレートが高水準であり,このような菜種粕を配合した食餌を子豚に給餌すると,餌の摂取量の低下,体重増加の著しい減少,蛋白質利用の低下,おいしさへの悪影響等の問題があり,また,食物繊維の高含有量も問題があるとの知見に基づき,高蛋白の菜種粕で,飼育の際に成長を阻害するグルコシノレート及び粗繊維の量が低いミールが,1988年にオルセンによって開発された新たな製法で製造されたため,その適用可能性を実験したものである(記載事項(1c))。
そして,DPRミールの組成は,乾燥状態で,粗タンパク質を56%程度(56.6%,55.4%),塩酸(HC1)-油脂を27%程度(26.9%,27.5%),炭水化物を12%程度,灰分を5%程度,及びグルコシノレートを1μmolg^(-1)程度のものであり(記載事項(1b)(1h)),DPRミールを用いた飼育実験においては,グルコシノレート低含量であり,グルコシノレートによるネガティブな効果は何ら見受けられなかった,食餌中のDPRミールの割合が増加するとタンパク質とプロテインの消化率がDPRミールの量が多くなるにつれて低下するが,それにも関わらず,バランス試験における4つの食餌の子豚は,平均の日毎の体重増加が同じであった,等との結果が得られている(記載事項(1g))。

しかし,甲第1号証は,グルコシノレートが子豚の給餌に悪影響を与えているところ,新たな製法が開発され,低グルコシノレート含有量のミール(DPRミール)が得られたことを背景として,DPRミールのスキムミルク粉や魚粉に代替する蛋白源としての早期離乳子豚への適用性の試験結果をまとめた論文であって,他の方法で得られた高蛋白質かつ低繊維の菜種粕を使用することを示唆するものではなく,当然,菜種粕を篩分け処理することにより得られる菜種粕を使用することについても何らの記載も示唆もない。
また,甲第1号証は,DPRミールのグルコシノレート量が少ない点を評価しているものであって,甲第1号証の種々の成分の中から蛋白質含量と粗繊維を特に重視して他の製法で得られた菜種粕と置換するという発想はない。

グルコシノレート量について検討すると,甲第8号証(記載事項(8h)段落【0037】【表2】)によれば,35メッシュの篩により画分された菜種粕のグルコシノレート量は4.11μmo1/gであり,甲第1号証(記載事項(1c))においてデンマークの養豚家が推奨されているとする「グルコシノレートを餌の1g当り1μmo1未満」を大きく超える。甲第1号証は,嗜好性低下の原因がグルコシノレートやその分解物に無い可能性も示唆するものであるものの(記載事項(1e)),グルコシノレートやその分解物が家畜の飼料の消化性に悪影響を及ぼすことは,甲第1号証(記載事項(1c))の他,甲第2号証(記載事項(2c)),甲第3号証(記載事項(3c))にも記載されるように当業者の技術常識であり,低グルコシノレート量のDPRミールに代えて,グルコシノレート量が高い菜種粕を篩分け処理をして得られる菜種粕を使用することはむしろ阻害する要因があり,当業者が容易に想到し得るとすることはできない。

また,粗繊維等について検討しても,甲1発明1の菜種油分離処理品を,「蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下,及び粗脂肪2.26?3.6%」の菜種粕を篩分け処理して得た菜種粕として本件発明の構成とすることが,当業者に容易になし得たことであるとはいえない。
すなわち,甲第1号証(記載事項(1c))には,「菜種ミールベースの食餌中におけるグルコシノレート量を十分に低くして早期離乳子豚に与えると,食物繊維の高含有量のため(ビエアウガルト等,1991)及び菜種のおいしさのため(ベイドゥー等,1987b)に別の問題が生じることがある。」と記載され,粗繊維は少ない方が望ましいものとされており,また,高い油脂含有量によって食餌の総エネルギー量が高まったことも示されている(記載事項(1f))が,菜種粕を篩分け処理して得た菜種粕の粗繊維を,甲1発明1のように4.5%ないし4.7%(水分を考慮すると,4.0?4.1%)程度またはそれ以下にできることも,菜種粕を篩分け処理して得た菜種粕の粗脂肪を,甲1発明1のように27%程度とできることも,甲第8号証や甲第11号証には示されていない。

したがって,篩分けして得る方法が菜種粕から高蛋白・低繊維の菜種粕を得る安価な製造方法であるとしても,甲1発明1のDPRミールに代えて菜種粕を篩分け処理をして得られる菜種粕を採用することは,当業者が容易になし得たことではない。

また,豚に高エネルギーで粗繊維の低い飼料を給与すると消化率が向上しふん量が減少するとの甲第4号証に示された技術常識は,甲1発明1のDPRミールの代替として菜種粕を篩分け処理をして得られる菜種粕を採用することについて何ら記載も示唆も与えるものではない。

よって,甲1発明1において,DPRミールの代替として菜種粕を篩分け処理することにより得られる菜種粕を使用する動機付けはなく,甲1発明1において,DPRミールの代替として,周知技術である菜種粕を篩分け処理をして得られる菜種粕を採用し,その組成を「蛋白質含有量42.5?55%,粗繊維6%以下,及び粗脂肪2.26?3.6%」として本件発明の構成とすることは,当業者に容易になし得たことであるとはいえない。
したがって,本件発明1は,甲1発明1,甲第4号証に示される技術常識,甲第8,11号証に示される周知技術から当業者が容易になし得たものではない。

2 本件発明2について
(1)対比
本件発明2と甲1発明2とを対比する。
本件発明2は,実質的に,本件発明1の飼料を家畜に投与することからなる家畜の排泄物抑制方法であって,本件発明1と甲1発明1と対比した結果は上記「第8 1(1)」の通りであり,また,甲1発明2の「早期離乳子豚用食餌」,「子豚」は,本件発明2の「飼料」,「家畜」に相当する。
本件発明2も,家畜に飼料を投与して飼育しているものであるから,甲1発明2の「早期離乳子豚用食餌を子豚に投与する,子豚の飼育方法」と本件発明2の「飼料を家畜に投与することからなる家畜の排泄物抑制方法」とは,所定の「飼料を投与する家畜の飼育方法」の点で共通する。

してみると,本件発明2と甲1発明2とは,

(一致点)
「蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下の菜種油分離処理品を,1?20%配合した飼料を家畜に投与する家畜の飼育方法。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1A:本件発明1の「相違点1A」と同じなので同じ名称とした)
菜種油分離処理品が,本件発明2は,菜種粕を篩分け処理して得られたものであって,粗脂肪2.26?3.6%であるのに対し,甲1発明2は,乾式粉砕された菜種を水性スラリー中で細胞壁分解酵素を触媒として細胞壁を破壊したものから,デカンティングによって外皮を除去し,さらに遠心分離及び洗浄によって油,シロップ等の他の成分と分離し,乾燥されて得られるものであり,また,油脂分が,乾燥状態において塩酸(HC1)-油脂を27%程度(26.9%,27.5%)含むものであって,水分量や計測の差を考慮しても本件発明1よりも多いものであり,粗脂肪2.26?3.6%ではない点。
(相違点2A)
本件発明2は,所定の「飼料を投与する家畜の排泄物抑制方法」であるのに対し,甲1発明2は,所定の「飼料を投与する家畜の飼育方法」であって,排泄物抑制がされるか否か不明な点。

(2)判断
まず,上記相違点1Aについて検討すると,先に「第8 1(2)」で検討したように,甲第4号証に示される技術常識を考慮しても,甲1発明2及び甲第8,11号証に示される周知技術から本件発明2の上記相違点1Aに係る構成を想到することは,当業者が容易になし得たことではない。

よって,本件発明2は,相違点2Aについて検討するまでもなく,甲1発明2,甲第4号証に示される技術常識,甲第8,11号証に示される周知技術から当業者が容易になし得たことではない。

3 「菜種粕を篩分けして得られ」という製造プロセス部分は,発明を特定する事項ではないから,訂正後の請求項1,2に係る発明は,甲第8,11号証に示される周知技術を適用するまでもなく甲第1号証記載の発明及び技術常識に基いて進歩性を欠如するものであり,特許法第29条第2項に違反してされたものであるとの主張について(第2 1(6)ウ及びエ)

上記「第8 1(2)」で検討したとおり,本件発明1,2の「菜種粕を篩分け処理して得られ」との構成は発明を特定する事項であり,本件発明1,2は,甲8,11号証記載の周知技術を適用するまでもなく甲1発明1,2及び甲第4号証に示される技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 無効理由1についての当審の判断のむすび
したがって,本件発明1は,甲1発明1,技術常識ないし周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。
また,本件発明2は,甲1発明2,技術常識ないし周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。
よって,無効理由1は理由がない。

第9 無効理由2についての当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「蛋白質」,「油脂分」,「繊維」は,本件発明1の「蛋白質含量」,「粗脂肪」,「粗繊維」に相当する。
本件発明1の「菜種粕」と甲2発明の「菜種粕の粉末」とは,共に,菜種から油を分離した後の物であるから,「菜種油分離処理品」である点で共通する。

してみると,本件発明1と甲2発明とは,
(一致点)
「蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下の菜種油分離処理品」
の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1B)
菜種油分離処理品が,本件発明1は,菜種粕を篩分け処理して得られたものであって,粗脂肪2.26?3.6%であるのに対し,甲2発明は,細かく磨り潰された油抽出後の菜種ミールを液体サイクロンプロセスで粉末及び外皮成分へ分別して得られるものであり,また,粗脂肪が1.0%であって,2.26?3.6%ではない点。
(相違点2B)
本件発明1は,菜種油分離処理品を1?20%配合した飼料であるのに対し,甲2発明は,豚及び家禽飼料に使用され得ることが示されているものの,菜種油分離処理品を配合して飼料としたものは開示されておらず,当然,配合割合も開示されていない点。

(2)判断
上記相違点1Bについて検討する。
本件発明1は,菜種粕を篩分けして得られた所定の組成の菜種粕を所定割合配合した飼料である。
一方,甲第2号証は,菜種粕を液体サイクロンにより粉及び殻に画分する技術に関する論文であって,油抽出後の菜種ミールを液体サイクロンによって分別して得た粉末が,蛋白質46.9%,脂肪1.0%,繊維5.7%,灰分6.9%であり,豚及び家禽用の飼料として好適に使用できることは記載されている。
しかし,当該方法によって得られる菜種粕の粉末に代えて他の方法で得られる菜種粕を使用して飼料とすることは記載も示唆もされておらず,菜種粕を篩分け処理し,菜種粕を篩分け処理により画分して,処理前の菜種粕に比して高蛋白質かつ低繊維の菜種粕を得ることが甲第8,11号証に示されるように周知技術であるとしても,甲2発明において,液体サイクロンによって得られる粉末に代えて菜種粕を篩分けして得られるものを採用することは,当業者が容易になし得たことではない。
また,甲第2号証は,油を効率良く回収し,菜種粕に残る油の残量を1%程度とするものであり,粗脂肪2.26?3.6%とすることを示唆するものでもない。
したがって,篩分けして得る方法が菜種粕から高蛋白・低繊維の菜種粕を得る安価な製造方法であるとしても,甲2発明の菜種粕の粉末に代えて菜種粕を篩分け処理をして得られる菜種粕を採用することは,当業者が容易になし得たことではない。

また,豚に高エネルギーで粗繊維の低い飼料を給与すると消化率が向上しふん量が減少するとの甲第4号証に示される技術常識,及び,飼料に配合する菜種粕の量として1?20%が一般的に使用されている量であるとの甲第5?7号証に示される周知技術も,液体サイクロンにより得られる菜種粕に代えて菜種粕を篩分け処理をして得られる菜種粕を採用することについて何ら記載も示唆も与えるものではない。

してみると,甲2発明の菜種粕の粉末に代えて,菜種粕を篩分け処理をして得られる菜種粕を採用し,さらにその組成を「蛋白質含有量42.5?55%,粗繊維6%以下,及び粗脂肪2.26?3.6%」として本件発明1の構成とすることが,甲2発明,甲第4号証に示される技術常識,甲第1,5?7号証に示される周知技術及び甲第8,11号証に示される周知技術から当業者に容易になし得たことであるとはいえない。

よって,本件発明1は,相違点2Bについて検討するまでもなく,甲2発明,甲第4号証に示される技術常識,甲第1,5?7号証に示される周知技術及び甲第8,11号証に示される周知技術から当業者が容易になし得たものではない。

2 本件発明2について
(1)対比
本件発明2と甲2発明との相当関係は本件発明1(「第9 1(1)」参照)と同様であり,本件発明2と甲2発明とは,

(一致点)
「蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下の菜種油分離処理品」
の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1B)
菜種油分離処理品が,本件発明2は,菜種粕を篩分け処理して得られたものであって,粗脂肪2.26?3.6%であるのに対し,甲2発明は,細かく磨り潰された油抽出後の菜種ミールを液体サイクロンプロセスで粉末及び外皮成分へ分別して得られる粉末であり,また,粗脂肪が1.0%であって,2.26?3.6%ではない点。
(相違点3B)
本件発明2は,菜種油分離処理品を1?20%配合した飼料を家畜に投与することからなる家畜の排泄物抑制方法であるのに対し,甲2発明は,菜種油分離処理品が豚及び家禽飼料として使用され得ることが示されているものの,菜種油分離処理品を配合して飼料としたものを開示するものではなく,当然,菜種油分離処理品の飼料への配合割合は開示されておらず,また,そのような飼料を家畜に投与することやその際の排泄物低減がなされるかについても何ら開示されていない点。

(2)判断
まず,上記相違点1Bについて検討する。先に「第9 1(2)」で検討したように,甲2発明,甲第4号証に示される技術常識,甲第1,5?7号証に示される周知技術及び甲第8,11号証に示される周知技術から本件発明2の上記相違点1Bに係る構成を想到することは,当業者が容易になし得たことではない。

よって,本件発明2は,相違点3Bについて検討するまでもなく,甲2発明,甲第4号証に示される技術常識,甲第1,5?7号証に示される周知技術及び甲第8,11号証に示される周知技術から当業者が容易になし得たものではない。

3 「菜種粕を篩分けして得られ」という製造プロセス部分は,発明を特定する事項ではないから,訂正後の請求項1,2に係る発明は,甲第8,11号証に示される周知技術を適用するまでもなく甲第2号証記載の発明に基いて進歩性を欠如するとの主張について(第2 1(7)ウ)

本件発明1,2の「菜種粕を篩分け処理して得られ」は,先に「第8 1(2)」で述べたとおり,本件発明1,2の発明特定事項である。
したがって,本件発明1,2は,甲8,11号証に示される周知技術を適用するまでもなく甲2発明,甲第1,5?7号証に示される周知技術及び甲第4号証に示される技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 無効理由2についての当審の判断のむすび
したがって,本件発明1及び2は,甲2発明,周知技術及び技術常識から当業者が容易に発明をすることができたとすることもできない。
よって,無効理由2は理由がない。

第10 無効理由3についての当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「蛋白質」,「脂肪」,「繊維」は,本件発明1の「蛋白質含量」,「粗脂肪」,「粗繊維」に相当する。
本件発明1の「菜種粕」と甲3発明の「菜種粕の粉」とは,共に,菜種から油を分離した後の物であるから,「菜種油分離処理品」である点で共通する。
してみると,本件発明1と甲3発明とは,
(一致点)
「蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下の菜種油分離処理品」の点で一致し,以下の点で相違する。
(相違点1C)
菜種油分離処理品が,本件発明1は,菜種粕を篩分け処理して得られたものであって,粗脂肪2.26?3.6%であるのに対し,甲3発明は,圧砕し,それから油を除去して粉および種皮を含むミールを得,たん白用溶媒ではない非水性溶媒中でミールをサスペンジョンとし,このミールサスペンジョンを遠心分離もしくは重力液体分離させ,オーバーフローとして粉スラリーおよび種皮スラリーを得,そして各スラリーから溶媒を分離することによって油,種皮等の他の成分と分離して得られる粉であり,また,粗脂肪は0.5%であり,2.26?3.6%ではない点。
(相違点2C)
本件発明1は,菜種油分離処理品を1?20%配合した飼料であるのに対し,甲3発明は,動物飼料として好適に使用され得ることが示されているものの,菜種油分離処理品を配合して飼料としたものは開示されておらず,当然,菜種油分離処理品の飼料への配合割合も開示されていない点。

(2)判断
相違点1Cについて検討する。
本件発明1は,菜種粕を篩分けして得られた所定の組成の菜種粕を所定割合配合した飼料である。
一方,甲第3号証は,油およびたん白の多い粉を高回収する菜種およびからしな種実の分別方法に関する発明の特許公報であって,種実を圧砕し,それから油を除去して粉および種皮を含むミールをたん白用溶媒ではない非水性溶媒中でミールをサスペンジョンとし,このサスペンジョンを分離した粉スラリーから溶媒を分離して得られる菜種粕の粉が,蛋白質52.5%,脂肪0.5%,繊維4.8%,配分8.1%であって,動物飼料として好適に使用できることが記載されている。
しかし,当該方法によって得られる菜種粉に代えて他の方法で得られる菜種粕を使用して飼料とすることは記載も示唆もされておらず,菜種粕を篩分け処理し,菜種粕を篩分け処理により画分して,処理前の菜種粕に比して高蛋白質かつ低繊維の菜種粕を得ることが甲第8,11号証に示されるように周知技術であるとしても,甲3発明において,液体サイクロンによって得られる菜種粉に代えて菜種粕を篩分けして得られる菜種粕を採用することは,当業者が容易になし得たことではない。
また,甲第3号証は,油を効率良く回収し,菜種粕に残る油の残量を少なくすることを意図するものであり,粗脂肪2.26?3.6%とすることを示唆するものでもない。
したがって,篩分けして得る方法が菜種粕から高蛋白・低繊維の菜種粕を得る安価な製造方法であるとしても,甲3発明の液体サイクロンにより得られる菜種粉に代えて菜種粕を篩分け処理をして得られる菜種粕を採用することは,当業者が容易になし得たことではない。

また,豚に高エネルギーで粗繊維の低い飼料を給与すると消化率が向上しふん量が減少するとの甲第4号証に示される技術常識,また,飼料に配合する菜種粕の量として1?20%が一般的に使用されている量であるとの甲第5?7号証に示される周知技術は,甲3発明の液体サイクロンにより得られる菜種粉に代えて菜種粕を篩分け処理をして得られる菜種粕を採用することについて何ら記載も示唆も与えるものではない。

してみると,菜種粕を篩分け処理し,菜種粕を篩分け処理により画分して,処理前の菜種粕に比して高蛋白質かつ低繊維の菜種粕を得ることが甲第8,11号証に示されるように周知技術であるとしても,甲3発明の液体サイクロンにより得られる菜種粉に代えて,菜種粕を篩分け処理をして得られる菜種粕を採用し,さらにその組成を「蛋白質含有量42.5?55%,粗繊維6%以下,及び粗脂肪2.26?3.6%」として本件発明1の構成とすることが,当業者に容易になし得たことであるとはいえない。
よって,本件発明1は,相違点2Cについて検討するまでもなく,甲3発明,甲第4号証に示される技術常識,甲第1,5?7号証に示される周知技術及び甲第8,11号証に示される周知技術から当業者が容易になし得たものではない。

2 本件発明2について
(1)対比
本件発明2と甲3発明との相当関係は本件発明1(「第10 1(1)」参照)と同様であり,本件発明2と甲3発明とは,

(一致点)
「蛋白質含量42.5?55%,粗繊維6%以下の菜種油分離処理品。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1C)
菜種油分離処理品が,本件発明2は,菜種粕を篩分け処理して得られたものであって,粗脂肪2.26?3.6%であるのに対し,甲3発明は,圧砕し,それから油を除去して粉および種皮を含むミールを得,たん白用溶媒ではない非水性溶媒中でミールをサスペンジョンとし,このミールサスペンジョンを遠心分離もしくは重力液体分離させ,オーバーフローとして粉スラリーおよび種皮スラリーを得,そして各スラリーから溶媒を分離することによって油,種皮等の他の成分と分離して得られる粉であり,また,粗脂肪が0.5%であって2.26?3.6%ではない点。
(相違点3C)
本件発明2は,菜種油分離処理品を1?20%配合した飼料を家畜に投与することからなる家畜の排泄物抑制方法であるのに対し,甲3発明は,菜種油分離処理品が動物飼料として好適に使用され得ることが示されているものの,菜種油分離処理品を配合して飼料としたものを開示するものではなく,当然,菜種油分離処理品の飼料への配合割合は開示されておらず,また,そのような飼料を家畜に投与することやその際の排泄物低減がなされるかについても何ら開示されていない点。

(2)判断
まず,上記相違点1Cについて検討する。先に「第10 1(2)」で検討したように,甲3発明,甲第4号証に示される技術常識,甲第1,5?7号証に示される周知技術及び甲第8,11号証に示される周知技術から本件発明2の上記相違点1Cを想到することは,当業者が容易になし得たことではない。

よって,本件発明2は,相違点3Cについて検討するまでもなく,甲3発明,甲第4号証に示される技術常識,甲第1,5?7号証に示される周知技術及び甲第8,11号証に示される周知技術から当業者が容易になし得たものではない。

3 「菜種粕を篩分けして得られ」という製造プロセス部分は,発明を特定する事項ではないから,訂正後の請求項1,2に係る発明は,甲第8,11号証に示される周知技術を適用するまでもなく甲第3号証記載の発明に基いて進歩性を欠如するとの主張について(第2 1(8)ウ)

本件発明1,2の「菜種粕を篩分け処理して得られ」は,先に「第8 1(2)」で述べた通り,本件発明1,2の発明特定事項である。
したがって,本件発明1,2は,甲8,11号証に示される周知技術を適用するまでもなく,甲3発明,甲第1,5?7号証に示される周知技術及び甲第4号証に示される技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 無効理由3についての当審の判断のむすび
したがって,本件発明1及び2は,甲3発明,周知技術及び技術常識から当業者が容易に発明をすることができたとすることもできない。
よって,無効理由3は理由がない。

第11 むすび
以上のとおり,請求人の主張する理由及び証拠方法によっては,本件発明に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
飼料
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な飼料に関し、より詳細には、飼料の栄養価を改善した飼料や家畜の排泄物量を抑制するための飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜の飼育現場では、飼料の栄養成分を効率的に家畜に摂取させることが重要である。さらに、家畜の排泄物が飼育環境や周囲の住環境を悪化させ、その処理にも費用が掛かることから、糞などの排泄物の量を減らすことも重要である。
【0003】
家畜飼料として、従来、菜種の絞り粕からなる菜種粕が利用されている。菜種粕は、比較的高蛋白質で安価な原料であるが、エネルギー価(栄養価)が低いことと、飼料に用いた場合に排泄物量が増えてしまうことが問題であった。
【0004】
家畜の排泄物を低減する既存技術としては、トランスグルタミナーゼを添加した養魚用飼料(特開2003-235470号公報、特許文献1)、ダッタンソバを含有する家畜・家禽用飼料(特開2006-174790号公報、特許文献2)などが知られている。
【0005】
菜種粕の成分を調整する方法としては、湿式粉砕を行った後に種皮を分離し、酵素処理などを経て水処理により蛋白質を濃縮する方法(特許第3919866号公報、特許文献3)などが知られている。
【0006】
一般に、菜種粕を飼料に使用すると排泄物量が増える傾向にあるにもかかわらず、菜種粕を使用して排泄物を抑制する方法は全く検討されていない。
【特許文献1】特開2003-235470公報
【特許文献2】特開2006-174790公報
【特許文献3】特許第3919866号公報
【発明の開示】
【0007】
本発明の目的は、飼料として利用されている菜種粕のエネルギー利用効率を高めるとともに、菜種粕を使用する際に発生する排泄物の量を低減あるいは抑制することの可能な飼料を提供することである。
【0008】
本発明者らは、上記課題の解決に向け鋭意研究する中で、特定の性状を示す菜種粕を特定量配合した新規な飼料を開発した。すなわち、本発明は、蛋白質含量41%以上、かつ粗繊維8%以下の菜種粕を0.1?30%配合した飼料を提供する。本発明者らは、この飼料の栄養価が従来に比べて改善されることも見いだした。したがって、この飼料は、栄養価の改善された家畜飼料として好適である。そこで、本発明は、蛋白質含量41%以上、かつ粗繊維8%以下の菜種粕を0.1?30%配合した新規な家畜向けに栄養価の改善された飼料を提供する。ここで、%は、重量%を意味する。
【0009】
本発明者らは、さらに、この飼料が家畜の排泄物量を顕著に抑制または低減することも見いだした。したがって、この飼料は、家畜の排泄物を抑制する飼料として好適である。そこで、本発明は、菜種粕を篩分け処理して得られ、そして蛋白質含量42.5?55%、粗繊維6%以下、及び粗脂肪2.26?3.6%の菜種粕を、1?20%配合した飼料も提供する。
【0010】
本発明はまた、上記飼料を用いた家畜の飼育方法、栄養改善方法および排泄物量抑制方法を提供する。
【0011】
本発明の家畜向けに栄養価の改善された飼料によれば、家畜にとってきわめて高い栄養価を得ることができる。蛋白質含量を高めることによって家畜の摂取可能な蛋白質量が増えるのは当然であるが、本発明の飼料は、蛋白質、脂質、炭水化物の各成分の消化性が増し、その結果、エネルギー価として、鶏ではME(窒素補正代謝エネルギー)、豚や牛ではTDN(可消化養分総量)が10?20%以上増加する。エネルギー価が高いことは、飼料の削減につながる。これは、飼料コストの削減と排泄物量の低下をもたらす点で有利である。
【0012】
本発明の飼料による排泄物の低下または抑制については、単に難消化性の繊維の減少によるものではなく、投与した菜種粕の消化性以上の効果を奏する。それは、例えば反芻動物に対して、基本飼料に通常の菜種粕を混合して投与すると排泄物量は増加するが、本発明の飼料によれば対照となる基本飼料よりも減少するからである。家禽類や豚に投与した場合にも、従来の菜種粕と比べて顕著な排泄物抑制効果が見られる。これは、混合した菜種粕が飼料全体の排泄物量を抑制したことによるものと考えられる。このような予想を超えた排泄物抑制効果は、排泄物の処理労力やコストをさらに一層低減し、畜舎の衛生環境や飼育場周辺の環境改善に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】鶏への飼料投与期間の摂食量あたりの風乾排泄物量のグラフである。
【図2】豚へ飼料投与した際の被検物質の各成分の消化率、可消化エネルギーおよびTDNを示すグラフである。
【図3】豚への飼料投与期間の摂食量あたりの風乾排泄物量のグラフである。
【図4】反芻動物へ飼料投与した際の被検物質の各成分の消化率およびTDNを示すグラフである。
【図5】反芻動物への試料投与期間の摂食量あたりの風乾排泄物量のグラフを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の飼料に配合する菜種粕は、菜種粕中の粗蛋白質と粗繊維の割合が重要であり、両方が特定範囲にあるときにのみ、効果を奏するものである。すなわち、菜種粕の蛋白質含量は、42.5?55%である。蛋白質含量が41%未満であると、飼料に添加したときに排泄物抑制効果やエネルギーの利用効率の向上効果が得られない。
【0015】
また、前記菜種粕の粗繊維含量は、6%以下であり、より好ましくは1?6%である。粗繊維含量が8%を越えると、飼料に添加したときに排泄物抑制効果やエネルギーの利用効率の向上効果が得られない。
【0016】
また、繊維のうち、NDF(中性デタージェント繊維)は、通常、20%以下、好ましくは18%以下である。ADF(酸性デタージェント繊維)は、通常、15%以下、好ましくは13.4%以下である。リグニンは、通常、4%以下、好ましくは3%以下である。
【0017】
上記のような菜種粕を製造する方法には、菜種粕を篩分け処理により蛋白質を濃縮する方法が可能である。中でも、32メッシュ(目開き500μm)以下の篩い分け処理が、蛋白質含量および粗繊維の条件を兼ね備える菜種粕を容易に得られる点で好ましい。
【0018】
本発明の飼料への前記菜種粕の配合量は、1?20%であり、より好ましくは1?18%である。配合量が、0.1%より少ないと、排泄物抑制効果が得られない。逆に、30%を越えると、過添加による弊害が予想される場合がある。
【0019】
前記飼料に配合される菜種粕以外の原料は、家畜の種類に応じて、当業分野で公知のものを特に制限なく使用可能である。そのような原料の例には、米、玄米、ライ麦、小麦、大麦、トウモロコシ、マイロ、大豆などの穀類;ふすま、脱脂米ぬかなどのそうこう類;コーングルテンミール、コーンジャームミール、コーングルテンフィード、コーンスチープリカーなどの製造粕類;大豆粕、あまに油粕、ヤシ油粕などの植物性油粕類;大豆油脂、粉末精製牛脂、動物性油脂などの油脂類;硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛、ヨウ化カリウム、硫酸コバルト、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム、塩化ナトリウム、リン酸カルシウム、塩化コリンなどの無機塩類;リジン、メチオニンなどのアミノ酸類;ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンD3、ビタミンE、パントテン酸カルシウム、ニコチン酸アミド、葉酸などのビタミン類;魚粉、脱脂粉乳、乾燥ホエーなどの動物質飼料;生草;乾草などが挙げられる。
【0020】
本発明の飼料は、家畜、魚類、甲殻類などに使用できるが、家畜への適用が好適である。家畜の例には、牛、山羊、羊などの反芻動物、鶏、鶉、アヒルなどの家禽類、豚などが挙げられる。特に、摂食量当たりの排泄物量を顕著に削減できる点で、反芻動物向けに適用するのが好ましい。
【実施例】
【0021】
以下に、実施例および比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1、比較例1〕(鶏投与試験)
(飼料の調製)
表1に示す基本飼料を給与する基本飼料給与区と、この基本飼料と表2に示す二種類の被検物質(菜種粕従来品または菜種粕発明品)を8:2の割合で混合した試験飼料(菜種粕従来品配合飼料または菜種粕発明品配合飼料)を給与する試験飼料給与区2区の計3区を設定した。なお、基本飼料および試験飼料とも、指示物質として酸化クロムを0.1%ずつ混合した。
【0022】
【表1】

1)1kg中g;硝酸チアミン 2.0、リボフラミン 10.0、塩酸ピリドキシン 2.0、ニコチン酸アミド 2.0、D-パンテトン酸カルシウム 4.35、塩化コリン 138.0、葉酸1.0
2)1g中;ビタミンA油 10,000IU、ビタミンD_(3)油 2,000IU、酢酸dl-α-トコフェロ-ル 20mg
3)1kg中g;Mn 80、Zn 50、Fe 6、I 1、Cu 0.6
【0023】
【表2】

*菜種粕従来品(商品名菜種粕、(株)J-オイルミルズ製)の48メッシュ(目開き300μm)による分級物
**菜種粕従来品 商品名菜種粕、(株)J-オイルミルズ製
【0024】
(飼料の投与方法)
約4週齢のブロイラー専用種雄雛(チャンキー)30羽を準備した。供試鶏2羽を1群として代謝試験用ケージに収容し、全供試鶏に基本飼料を4日間給与して試験環境に馴致させた。その後、基本飼料あるいは二種類の試験飼料を5群ずつに割り付け、各飼料を10日間不断給与した。
【0025】
各飼料を給与開始後6日目より5日間に排泄された糞尿混合物を、毎日、朝、夕の2回、群毎に採取した。
【0026】
採取した糞尿混合物は、その都度、秤量後、全量を約60℃で2日間通風乾燥し、5日分を混合して微粉砕し、分析用試料とした。
【0027】
前記分析用試料は、ケルダール分析法により窒素(N)を分析するとともに、ボンブカロリーメーターを用いて総エネルギー(GE)を測定した。
【0028】
基本飼料、二種類の試験飼料および採取した糞尿混合物については、NおよびGEを分析するとともに、比色法(畜産試験場研究報告52,1992)により、酸化クロムを分析した。
【0029】
(消化率および栄養価)
酸化クロムを指示物質としたインデックス法(日本標準飼料成分表;2001年版)を用いて、基本飼料および二種類の試験飼料の窒素補正代謝エネルギー(ME)を算出した。次いで、二種類の被検物質のMEおよび代謝率を、以下の式により算出した。
【0030】
【数1】

【数2】

【0031】
被検物質のGE、MEおよび代謝率の測定結果を、表3に示す。
【表3】

注)平均値±標準偏差(n=5)
【0032】
基本飼料に配合した菜種粕従来品のMEおよび代謝率は、日本標準飼料成分表2001年版に収載されている菜種粕のME(1.69Mcal/kg)および代謝率(40.2%)とほぼ一致していた。一方、基本飼料に配合した菜種粕発明品に関しては、GEは変わらないでMEおよび代謝率が約2割上昇した。
【0033】
試験期間の摂食量あたりの風乾排泄物量の測定結果を、図1に示す。この結果から菜種粕従来品を添加した飼料を摂取することで、排泄物量が増加する。一方、菜種粕発明品を配合した飼料を摂取すると、排泄物量が菜種粕従来品の場合と比べて有意に抑制された。被検物質間の粗繊維の量の違いは3.55%(表2)であり、飼料中への添加量が2割であることから、菜種粕従来品または菜種粕発明品を配合した飼料中の粗繊維量の差は実質的に0.7%程度でしかない。しかし、摂食量当たりの排泄物量は、菜種粕従来品の場合より約1.5%低減されたことから、本発明の飼料の排泄物低減効果は、単純に粗繊維の低減によるものではないことが示された。
【0034】
〔実施例2?3、比較例2?3、8〕
実施例1において、蛋白質含量と繊維の含量が表4に示すように異なる菜種粕を用いた以外は実施例1と同様の鶏投与試験を行なった。実施例の原料については菜種粕の48メッシュ(目開き300μm)以下での分級物を使用した。排泄物量についての評価結果を、表4に実施例1および比較例1の評価とともに示す。
【0035】
【表4】

判断基準
優:比較例1に対して摂食量あたりの排泄物の低減が1%以上
良:比較例1に対して摂食量あたりの排泄物の低減が0.5%以上
可:比較例1に対して排泄物の低減効果あり
不可:比較例1に対して排泄物の低減効果なし
【0036】
表4のとおり、蛋白質含量41%以上、かつ繊維含量8%以下において、排泄物の低減効果が見られた。蛋白質含量が41.5%より多く、かつ繊維含量6.5%より低い場合において、特に顕著な排泄物低減効果となった。
【0037】
〔実施例6?7、比較例4?5、9?10〕
実施例2において、菜種粕の飼料への配合量を20%から表5に示す量に変えた以外は実施例2と同様の試験を行い、排泄物の低減効果を評価した。結果を、実施例2の結果とともに表5に示す。
【0038】
【表5】

判断基準は先の試験同様
【0039】
この結果から、0.1%未満の配合量では添加の効果が見られなかった。40%以上においても効果が見られず、過添加による弊害が予想された。配合量1%以上、20%以下において、特に顕著な効果となった。さらにこのなかでも配合量1%以上、18%以下については、比較例1で菜種粕の添加によって排泄物が増加した量に対して、その増加量は半分以下に抑制されていた。
【0040】
〔実施例9、比較例6〕(豚投与試験)
(飼料の調製)
表6に示す基本飼料を給与する基本飼料給与区と、基本飼料と表7の二種類の被検物質(菜種粕従来品または菜種粕発明品)を7:3の割合で混合した二種類の試験飼料(菜種粕従来品配合飼料または菜種粕発明品配合飼料)を給与する試験飼料給与区の計3区を設定した。なお、基本飼料及び試験飼料には、指示物質として酸化クロム(Cr_(2)O_(3))を0.1%ずつ混合した。
【0041】
【表6】

1)1kg中g;硝酸チアミン 1.0、リボフラミン 7.0、塩酸ピリドキシン 0.5、ニコチン酸アミド 6.0、D-パンテトン酸カルシウム 10.9、塩化コリン 57.6
2)1g中;ビタミンA 10,000IU、ビタミンD_(3) 2,000IU、酢酸dl-α-トコフェロ-ル 10mg
3)1kg中g;Mn 50、Fe 50、Cu 10、Zn 60、I 1
【0042】
【表7】

【0043】
上記の各種飼料について、飼料の安全性の確保および品質の改善に関する法律施行規則(昭和51年7月24日、農林省令第36号)の規定に基づく分析方法により、一般成分〔粗蛋白質(CP)、粗脂肪(EE)、粗繊維、粗灰分および可溶無窒素物(NFE)〕を分析した。さらに、総エネルギー(GE)を、ボンブカロリーメーターを用いて分析した。
【0044】
基本飼料および二種類の試験飼料について、前述の方法により、一般成分およびGEを測定するとともに、比色法によりCr_(2)O_(3)を分析した。
【0045】
(飼料の投与方法)
約3.5?4ヵ月齢のLW・D種去勢子豚(体重43.8?49.5kg、平均体重46.4kg)15頭を準備した。この豚を個体別に代謝ケージに収容し、全供試豚に基本飼料を5日間給与して試験環境に馴致させた。次いで、基本飼料および二種類の試験飼料を5頭ずつに割り付け、各飼料を10日間定量給与した。飼料給与量は、各供試豚の区分け時体重の約3%量とし、朝、夕の2回に分けて、等量ずつ給与した。
【0046】
両飼料給与開始後6日目より5日間に排泄された新鮮糞を毎日、朝、夕の2回、個体毎に採取した。採取した糞は、その都度、秤量後、全量を約60℃で2日間通風乾燥し、風乾した後、5日分を混合して微粉砕し、分析用試料とした。
【0047】
糞については、前述の方法により一般成分およびGEを測定するとともに、比色法によりCr_(2)O_(3)を分析した。
【0048】
(消化率、栄養価および排泄物量の測定)
Cr_(2)O_(3)を指示物質としたインデックス法の計算式を用いて、基本飼料および二種類の試験試料の各成分消化率を計算した後、二種類の被検物質の消化率、TDN(可消化養分総量)およびDE(可消化エネルギー)を、以下の式を用いて算出した。
【0049】
【数3】

【数4】

【数5】

【0050】
飼料に配合された菜種粕発明品のDEは、3.49±0.07Mcal/kgであった。これは、飼料に配合された菜種粕従来品のDE 3.05±0.08Mcal/kgの約1.14倍に相当した。
【0051】
二種類の被検物質における各成分の消化率、可消化エネルギーおよびTDNを、図2に示す。菜種粕発明品は、全ての成分において消化性が向上するとともに、可消化エネルギーおよびTDNも増大した。
【0052】
試験期間の摂食量あたりの風乾排泄物量の測定結果を、図3に示す。この結果から菜種粕従来品を添加した飼料を摂取することで、排泄物量が増加する。一方、菜種粕発明品を配合した飼料を摂取すると、排泄物量が菜種粕従来品の場合と比べて有意に抑制された。被検物質間の粗繊維の量の違いは4.47%であり、飼料中への添加量が3割であることから、菜種粕従来品と菜種粕発明品を配合した飼料中の粗繊維の量の差は実質的に1.3%(表7)程度しかない。しかし、摂食量当たりの排泄物は、菜種粕従来品より約2.2%低減されたことから、本発明の飼料の排泄物低減効果は、単純に粗繊維の低減によるものではないことが示された。
【0053】
〔実施例10、比較例7〕(反芻動物投与試験)
(飼料の調製)
表8に示す基本飼料を給与する基本飼料給与区と、この基本飼料と表9に示す二種類の被検物質(菜種粕従来品または菜種粕発明品)を8:2の割合で混合した二種類の試験飼料(菜種粕従来品配合飼料または菜種粕発明品配合飼料)を給与する試験飼料給与区2区の計3区を設定した。なお、基本飼料および試験飼料とも、指示物質として酸化クロムを0.1%ずつ混合した。
【0054】
【表8】

1)1g中;ビタミンA 10,000IU、ビタミンD_(3) 2,000IU、酢酸dl-α-トコフェロール 10mg
2)1kg中g;Mn 50、Fe 50、Cu 10、Zn 60、I 1
【0055】
【表9】

【0056】
(飼料の投与方法)
約16?83ヶ月齢の去勢成山羊(体重16.7?62.2kg、平均体重32.4kg)を15頭準備した。供試山羊を個体別に代謝ケージに収容し、全供試山羊に基本飼料を7日間給与して試験環境に馴致させた。次いで、5頭ずつに基本飼料または二種類の試験飼料を15日間定量給与した。飼料給与量は、各供試山羊の区分け時体重の1.5?2.5%量を目処に設定し、朝、夕の2回に分けて等量ずつ給与した。
【0057】
両飼料給与開始後8日目より7日間に排泄された糞を、個体毎に朝、夕の2回全量採取した。採取した糞は、秤量後、1日分を合併して約60℃で2日間通風乾燥し、風乾したのち、7日分を混合して微粉砕して分析用試料とした。
【0058】
二種類の被検物質、濃厚飼料、乾草及び糞について、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律施行規則(昭和51年7月24日、農林省令第36号)の規定に基づく分析方法により、一般成分〔粗蛋白質(CP)、粗脂肪(EE)、粗繊維、粗灰分及び可溶無窒素物(NFE)〕を分析した。
【0059】
全糞採取法の計算式を用いて、基本飼料及び試験飼料の各成分消化率を算出した後、以下の式を用いて二種類の被検物質の消化率および可消化養分総量(TDN)を算出した。また、飼料摂食量当たりの排泄物量を算出した。
【0060】
【数6】

【数7】

【0061】
二種類の被検物質における各成分の消化率およびTDNを、図4に示す。菜種粕発明品は、全ての成分において消化性が向上するとともに、TDNも1.21倍に増大した。
【0062】
試験期間の摂食量あたりの風乾排泄物量の測定結果を図5に示す。この結果から菜種粕従来品を添加した飼料を摂取することで、排泄物量が増加する。一方、菜種粕発明品を配合した飼料を摂取すると、排泄物量が菜種粕従来品の場合や基本飼料と比べて有意に減少した。被検物質間の粗繊維の量の違いは5%(表9)であり、飼料中への添加量が2割であることから、従来品と発明品で作成した飼料中の実質的な粗繊維の量は1%程度しか差が無い。しかし、摂食量当たりの排泄物は、菜種粕従来品より約3.7%も低減され、本発明の飼料の排泄物低減効果は単純に粗繊維の低減によるものではないことが示された。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
菜種粕を篩分け処理して得られ、そして蛋白質含量42.5?55%、粗繊維6%以下、及び粗脂肪2.26?3.6%の菜種粕を、1?20%配合した飼料。
【請求項2】
菜種粕を篩分け処理して得られ、そして蛋白質含量42.5?55%、粗繊維6%以下、及び粗脂肪2.26?3.6%の菜種粕を、1?20%配合した飼料を家畜に投与することからなる家畜の排泄物抑制方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2012-03-05 
出願番号 特願2009-550182(P2009-550182)
審決分類 P 1 113・ 537- YA (A23K)
P 1 113・ 121- YA (A23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 理紗  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 土屋 真理子
中川 真一
登録日 2010-03-19 
登録番号 特許第4477700号(P4477700)
発明の名称 飼料  
代理人 中嶋 伸介  
代理人 中嶋 伸介  
代理人 平田 忠雄  
代理人 岩永 勇二  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ