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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1257360
審判番号 不服2011-9912  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-11 
確定日 2012-05-24 
事件の表示 特願2007-258801「表示装置、および表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月23日出願公開、特開2009- 87224〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成19年10月2日の出願であって、平成23年2月10日付けで拒絶査定がなされたところ、これに対して同年5月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。

第2 補正却下の決定
平成23年5月11日に提出された手続補正書による補正の却下の決定

(1)[補正却下の決定の結論]
平成23年5月11日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

(2)[補正却下の決定の理由]
(a)補正の内容
本件補正によると、その特許請求の範囲の請求項1は、
「タッチパネルに対する拡大率とマウスに対する拡大率がそれぞれ個別に設定された複数の表示要素を画像上に表示する表示手段と、
前記画像上の座標を入力する第一の入力手段としてのタッチパネルと、
前記画像上の座標を入力する第二の入力手段としてのマウスと、
前記タッチパネルおよび前記マウスのいずれを入力手段として使用しているか判断する判断手段と、
前記判断手段が使用していると判断した入力手段で入力された画像上の座標に対応した前記表示要素に設定されている該入力手段に対応した拡大率で該表示要素を拡大表示する表示制御手段と、
を備えることを特徴とする表示装置。」
と補正されている。

上記補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「画像と前記画像上に複数の表示要素を表示する表示手段」、「第一の入力手段」、「第二の入力手段」及び「前記判断及び前記画像上で入力されている座標に対応する表示要素に基づいて表示要素の拡大率を変化させる表示制御手段」を、それぞれ「タッチパネルに対する拡大率とマウスに対する拡大率がそれぞれ個別に設定された複数の表示要素を画像上に表示する表示手段」、「第一の入力手段としてのタッチパネル」、「第二の入力手段としてのマウス」及び「前記判断手段が使用していると判断した入力手段で入力された画像上の座標に対応した前記表示要素に設定されている該入力手段に対応した拡大率で該表示要素を拡大表示する表示制御手段」とするものであり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて以下検討する。

(b)引用文献
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-101759号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下のような記載がある。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ディスプレイ手段に表示される複数種類の入力領域と複数種類の入力手段とを有する電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の電子機器の中には、ポインティングデバイスとしてマウスやタッチパネルを備え、GUI(graphical user interface)のアイコンで入力するものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来技術において用いられるマウスとタッチパネルを同一のGUI(graphical user interface)のアイコンで使おうとすると、オペレーションによっては、操作性が悪くなるという欠点があった。
【0004】この発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、入力手段の種類に応じたGUI(graphical user interface)のアイコンを用いることにより操作性を改善した電子機器を提供することをを目的とする。」(段落【0001】?【0004】)

(イ)「【0005】
【課題を解決するための手段】この発明は上記の目的を達成するためのもので、ディスプレイ手段と、このディスプレイ手段に表示される複数種類の入力領域と、複数種類の入力手段と、入力中の入力手段の種類を判断する入力手段判断手段とを有し、入力手段判断手段の判断結果によりディスプレイ手段に表示される入力領域の種類を選択することにより、電子機器の操作性を向上させるものである。
【0006】また、第一の入力手段としてのマウスと、第二の入力手段としてのタッチパネルと、ディスプレイ手段に表示される第一の入力領域と、該第一の入力領域より広い面積を有する第二の入力領域とを有し、前記第一の入力手段としてのマウスにて入力されている場合には、前記第一の入力領域を選択し、第二の入力手段としてのタッチパネルにて入力されている場合には、前記第一の入力領により、電子機器の操作性を向上させるものである。
【0007】また、ディスプレイ手段に同時に表示される複数の第一の入力領域と、ディスプレイ手段に同時に表示される複数の第二の入力領域とを有し、第二の入力領域間の間隔が第一の入力領域の間隔よりも広いことにより、電子機器の操作性を向上させるものである。」(段落【0005】?【0007】)

(ウ)「図1は、入力装置としてマウスとタッチパネルの両方を持つ電子機器の概略構成図である。電子機器は、データの表示を行なうためのディスプレイ1、演算処理等を行なうコンピュータ装置2、・・・(中略)・・・、机等の平面上を手動操作により移動させることによりディスプレイ1上の入力位置を移動させることができ、任意の位置においてスイッチを指で操作することにより入力を行なうことが出来るマウス6、ディスプレイ装置1の画面付近に配置され、操作者がその表面の特定位置を指にて押圧することにより入力が行なえるタッチパネル7等からなる。電子機器は、図1の構成に限定されるものではなく、種々の変形が考えられる。例えば、文字情報や画像情報を記憶させるための磁気ディスク装置や光ディスク装置からなるメモリ装置を含むこともありえる。
【0013】電子機器の具体例としては、電子ファイリングシステム、デスクトップパブリシィングシステム、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータシステム、ワークステーション、計測装置、自動制御システム等がある。
【0014】図2は、入力手段としてマウスとタッチパネルの両方を持つ電子機器の要部の制御ブロック図である。タッチパネル7からの入力信号を受信する第一受信部17、マウス6からの入力信号を受信する第二受信部18、入力データを記憶するメモリ13、それを判断する判断制御部12、各制御部に処理命令を出すCPU11、表示する種々のアイコンを記憶しておくアイコンROM14、表示制御部15、表示駆動部19、表示をおこなうディスプレイ1、スピーカー制御部16、スピーカー駆動部20、およびスピーカー8から成る。
【0015】図3は、入力信号がどちらの入力手段からのものかを判断し、それに適したディスプレイ1の画面上の入力領域(アイコン)を表示し、その入力にあった処理を行なうまでのソフトウェアの処理フロー図である。
【0016】入力手段より入力があると、それがマウス6もしくはタッチパネル7からなのかを判断しマウス6からであればアイコンは、図5に示されるような操作量(移動量)の少なくて済むように小さく、かつ入力領域の間隔が狭く隣接したマウスに適したアイコンを表示する。プルダウンメニューはドラッグ・アンド・リリースにて選択できるものを表示する。
【0017】一方、タッチパネルの場合は、アイコンが小さく、隣接していると指では操作性が悪いので、図4に示されるようにより大きくかつ入力領域の間隔が広いものを表示し、マウス6のポインティングポイントよりも広い指で押圧しても、隣接した入力領域にかからないようなタッチパネルに適したアイコンを表示する。プルダウンメニューはポイント・アンド・リリースの繰り返しにより選択できるものを表示する。」(段落【0012】?【0017】)

(エ)「【0020】電子機器の起動後、いずれの種類の入力手段も使用されていない段階では、どの種類の入力手段が使用されるかを電子機器側では予測出来ない。従って、電子機器の起動後、いずれの種類の入力手段も使用されていない段階で、どの種類のアイコンを表示するかが問題となる。
・・・(中略)・・・
【0022】第二の対処方法は、電子機器の起動後、いずれの種類の入力手段も使用されていない段階の初期画面用のアイコンとして、ある程度どちらの入力手段でも入力し易いアイコンとするものである。具体的には、図4と図5の中間の特性を有するアイコンを初期画面用のアイコンとして電子機器に持たせるのである。すなわち、入力領域の大きさと、入力領域間の間隔を図4と図5の中間的な値に設定したアイコンを初期画面用のアイコンとする訳である。」(段落【0020】?【0022】)

以上の記載によれば、この引用例1には以下のような発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「ディスプレイ1と、
第一の入力手段としてのマウス6と、
第二の入力手段としてのタッチパネル7を備え、
入力手段より入力があると、それがマウス6もしくはタッチパネル7からなのかを判断し、
入力がマウス6からであればディスプレイ1の画面上の複数の入力領域(アイコン)は、操作量(移動量)の少なくて済むように小さく、かつ入力領域の間隔が狭く隣接したマウスに適した複数の入力領域(アイコン)を表示し、
入力がタッチパネルの場合は、入力領域(アイコン)が小さく、隣接していると指では操作性が悪いので、より広い面積で、かつ入力領域(アイコン)の間隔が広く、マウス6のポインティングポイントよりも広い指で押圧しても、隣接した入力領域(アイコン)にかからないようなタッチパネルに適した複数の入力領域(アイコン)を表示することをソフトウェアにより実行する電子機器。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-285598号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下のような記載がある。
(ア)「【0001】
本発明は、指先等でタッチすることによりデータの入力操作を行うタッチパネル装置に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
指等でタッチすることにより入力操作を行うタッチパネル装置は、各種情報端末装置、携帯端末等に種々用いられており、その種類及び操作方法は多様化している。このタッチパネル装置は、表示部の画面上に透明のタッチパネルを重ねて配設して、タッチパネル表面上に触れることによりデータの入力が行われる。
【0003】
タッチパネル上の座標と表示部の座標は整合性を有しており、表示部に表示されたボタン上のタッチパネルに触れるとボタンが操作されたものとして判断される。従って、タッチパネル装置の操作は、操作しようとするボタン上のタッチパネルに正確に触れる必要があった。
・・・中略・・・
【0006】
このような問題を鑑みて、特開平11-45141に示すデータ入力装置が提案されていた。このデータ入力装置は、表示部と、該表示部に重ねて配設されるタッチパネルと、該タッチパネル装置に触れている部分が前記表示部のどの部分に対応するかを検出する座標検出手段と、前記タッチパネルに触れることを以て前記表示部に表示されるボタンを操作したかどうかを判断するボタン識別判断部と、を備えたデータ入力装置において、前記ボタンに割り当てられたボタン識別範囲内の座標を連続して触れている時間が予め定められている操作時間を超えたときに前記ボタンが操作されたとして前記ボタン識別部において判断するようにしたことを特徴としている。
【0007】
このデータ入力装置は前記構成により、操作しようとしたボタン以外のボタンに触れたとしても、ただちにボタンが操作されたと判断しないため、誤入力の発生を低減し、利用者は入力の煩わしさを感じることが少なくなった。
【0008】
また、前記データ入力装置は、前記タッチパネルの最初に触れた点の近傍を前記表示部に拡大表示する構成を備えている。この構成により、利用者がボタンの操作を行おうとするとき、表示部のボタンを自動的に拡大表示するため、利用者の誤入力を更に防止することが可能であった。
【0009】
しかし、前記データ入力装置は、一定の操作時間の経過によって操作したか否かを判断するため、操作に操作時間以上の時間を要し、迅速な操作を行えないという問題点があった。また、最初に触れた点の近傍を拡大表示することにより、利用者のタッチすべき箇所を見やすくすることができるものの、タッチ位置によっては操作しようとするボタン以外の箇所が拡大表示されることもあり、操作性の向上に繋がらないこともあった。」(段落【0001】?【0009】)

(イ)「【0028】
本実施の形態1に係るタッチパネル装置は、前記拡大表示をすることにより、タッチ位置の周辺を利用者に見えやすいように表示して、利用者に正確なキー操作を促すことができる。特に、キーが近接して配置されているときには、誤入力を低減することが可能となる。また、利用者が操作したか否かを接触圧によって判別するため、即時に操作したか否かを判別することができる。従って、タイムラグが少なくなり、迅速な処理を行うことが可能となる。
【0029】
実施の形態1では、タッチ位置を中心にその周辺を四倍率で拡大表示したが、拡大する倍率は適宜に変更することが望ましく、例えば、「倍率変更」キーを設けて、利用者が倍率を選択できるようにしてもよい。」(段落【0028】、【0029】)

(ウ)「【0034】
<実施の形態2>
実施の形態2は、実施の形態1と表示画面の変化の態様を異ならせた実施例である。タッチパネル装置の概略構成は、同様であるため、同符号を用いて説明を省略する。以下、本実施の形態2に係るタッチパネル装置の動作について、図5に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0035】
ステップ1からステップ7は、実施の形態1と同様である。利用者がタッチしたタッチ位置の接触圧が、P1未満のときには、利用者が操作処理をしてないと判断して、液晶表示部の表示態様を変化させる。具体的には、まず、タッチ位置の座標とキーの座標が一致するか否かを判別する(ステップ9)。
【0036】
タッチ位置の座標とキーの座標が一致するときには、当該キーのみを拡大表示する(ステップ10)。例えば、利用者が「詳細」キーをタッチしたときは、「詳細」キーを画面上に拡大表示する(図6参照)。利用者に対して、操作処理すべきキーが当該キーで良いのか否かを再確認させるためである。以下、再度のタッチ操作を待って、処理が繰り返される。
【0037】
一方、前記タッチ位置の座標とキーの座標が一致しないときには、前記タッチ位置の周辺に配置されたキーのみを拡大表示する(ステップ11)。この場合、周辺に配置されたキーのうち最も近いキーを選択して表示してもよいし、複数選択して表示しても良い。ただし、利用者がタッチ操作したタッチ位置との距離で選択することが望ましい。
【0038】
このようにキーのみを選択して拡大表示することにより、限られたスペースである画面上にキーを大きく表示することができ、利用者はキーを識別しやすくなり、更に誤入力を低減することができる。」(段落【0034】?【0038】)

(エ)「【0057】
例えば、前記実施の形態において、予めキーの表示倍率を設定していたが、利用者が個々に設定できるように構成しても良い。例えば、「ボタン倍率」キーを表示し、利用者が自らキーの表示倍率を設定できるように構成してもよい。」(段落【0057】)

(c)対 比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「複数の入力領域(アイコン)」及び「ディスプレイ1」は、それぞれ本願補正発明の「複数の表示要素」及び「表示手段」に相当し、引用発明のディスプレイ1の画面上に複数の入力領域(アイコン)を表示する構成は、本願補正発明の「タッチパネルに対する拡大率とマウスに対する拡大率がそれぞれ個別に設定された複数の表示要素を画像上に表示する表示手段」と「複数の表示要素を画面上に表示する表示手段」である点で共通するといえる。
(2)引用発明の「第二の入力手段としてのタッチパネル7」は、本願補正発明の「前記画像上の座標を入力する第一の入力手段としてのタッチパネル」と「前記画面上の座標を入力する第一の入力手段としてのタッチパネル」である点で共通する。
(3)引用発明の「第一の入力手段としてのマウス6」は、本願補正発明の「前記画像上の座標を入力する第二の入力手段としてのマウス」と「前記画面上の座標を入力する第二の入力手段としてのマウス」である点で共通する。
(4)引用発明の「入力手段より入力があると、それがマウス6もしくはタッチパネル7からなのかを判断」する構成は、本願補正発明の「前記タッチパネルおよび前記マウスのいずれを入力手段として使用しているか判断する判断手段」に相当する。
(5)引用発明の「入力がタッチパネルの場合は、入力領域(アイコン)が小さく、隣接していると指では操作性が悪いので、より広い面積で、かつ入力領域(アイコン)の間隔が広く、マウス6のポインティングポイントよりも広い指で押圧しても、隣接した入力領域(アイコン)にかからないようなタッチパネルに適した複数の入力領域(アイコン)を表示する」構成は、本願補正発明の「前記判断手段が使用していると判断した入力手段で入力された画像上の座標に対応した前記表示要素に設定されている該入力手段に対応した拡大率で該表示要素を拡大表示する表示制御手段」と「前記判断手段が使用していると判断した入力手段に対応して該表示要素を表示する表示制御手段」である点で共通する。
(6)引用発明の「電子機器」は、本願補正発明の「表示装置」に相当する。

そうすると、本願補正発明の用語を用いると両者は、
「複数の表示要素を画面上に表示する表示手段と、
前記画面上の座標を入力する第一の入力手段としてのタッチパネルと、
前記画面上の座標を入力する第二の入力手段としてのマウスと、
前記タッチパネルおよび前記マウスのいずれを入力手段として使用しているか判断する判断手段と、
前記判断手段が使用していると判断した入力手段に対応して該表示要素を表示する表示制御手段と、
を備えることを特徴とする表示装置。」
で一致するものであり、次の(1)?(3)の点で相違している。

(1)本願補正発明は、複数の表示要素を画像上に表示し、タッチパネル、マウスは画像上の座標を入力するのに対し、引用発明は、複数の入力領域(アイコン)を画像上に表示することは記載されていない点。

(2)本願補正発明では、複数の表示要素は、タッチパネルに対する拡大率とマウスに対する拡大率がそれぞれ個別に設定されているのに対し、引用発明では、複数の入力領域(アイコン)は、タッチパネルに対する拡大率とマウスに対する拡大率がそれぞれ個別に設定されたものではない点。

(3)本願補正発明は、入力手段で入力された座標に対応した前記表示要素に設定されている該入力手段に対応した拡大率で該表示要素を拡大表示するのに対し、引用発明は、入力手段で入力された座標に対応した設定されている該入力手段に対応した拡大率で該表示要素を拡大表示することについて記載がない点。

(d)当審の判断
・相違点(1)について
本願補正発明における「複数の表示要素を画像上に表示する」の「画像」は、どのような画像であるのか必ずしも明確ではないので、本願明細書の発明の詳細な説明を参照すると「図3は、本実施例の画面例である。3000は表示要素を配置したウィンドウである。この場合、ウィンドウの範囲が画像領域となる。ここでは印刷枚数を設定するウィンドウを表示要素の例として用いている。3001は印刷枚数を設定する表示要素としてのカウンターである。・・・中略・・・、3003は入力内容をキャンセルするキャンセルボタンである。」(段落【0021】)と記載されており、本願補正発明における「複数の表示要素を画像上に表示する」の「画像」は、ボタン等の表示要素を配置するウィンドウを含むものと判断される。
ウィンドウ上にボタン等の表示要素を配置して表示し、タッチパネルやマウスでウィンドウ上の座標を入力することは文献を示すまでもなく、本願出願前周知の技術である。
したがって、引用発明において、画像上に複数の入力領域(アイコン)を表示し、タッチパネル、マウスは画像上の座標を入力するようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

・相違点(2)、(3)について
上記引用例2には、「タッチ位置の座標とキーの座標が一致するときには、当該キーのみを拡大表示する(ステップ10)。例えば、利用者が「詳細」キーをタッチしたときは、「詳細」キーを画面上に拡大表示する(図6参照)。利用者に対して、操作処理すべきキーが当該キーで良いのか否かを再確認させるためである。」(記載事項(ウ)段落【0036】)及び「前記実施の形態において、予めキーの表示倍率を設定していたが、利用者が個々に設定できるように構成しても良い。例えば、「ボタン倍率」キーを表示し、利用者が自らキーの表示倍率を設定できるように構成してもよい。」(記載事項(エ)段落【0057】)と記載されており、画面上に表示された複数のキー(「表示要素」に相当する。)は、拡大率が個別に設定され、入力手段で入力された座標に対応した前記キーに設定されている拡大率で該キーを拡大表示することが示されている。
また、画面上に表示される複数の表示要素について、当該表示要素が選択された際のスケール(「拡大率」に相当する。)が個別に設定されることは本願出願前周知の技術(例えば、特開2007-80255号公報段落【0111】?【0114】の記載参照。)である。
そして、引用発明は、入力手段より入力があると、それがマウス6もしくはタッチパネル7からなのかを判断し、入力がマウス6からであればディスプレイ1の画面上の複数の入力領域(アイコン)は、マウスに適した小さい面積の入力領域(アイコン)を表示し、入力がタッチパネルの場合は、より広い面積のタッチパネルに適した入力領域(アイコン)を表示するものであり、さらに、引用例1には、「電子機器の起動後、いずれの種類の入力手段も使用されていない段階の初期画面用のアイコンとして、ある程度どちらの入力手段でも入力し易いアイコンとする」(記載事項(エ)段落【0022】)ことが記載されている。
したがって、引用発明において、上記引用例2記載の技術及び周知技術を適用し、複数の表示要素は、タッチパネルに対する拡大率とマウスに対する拡大率がそれぞれ個別に設定され、入力手段で入力された座標に対応した前記表示要素に設定されている該入力手段に対応した拡大率で該表示要素を拡大表示するようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願補正発明により奏される効果は、引用発明、引用例2に記載された技術及び周知技術から、当業者が予想し得る範囲内のものと認められる。

(e)結論
そうすると、本願補正発明は、引用発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
上記のとおり、上記本件補正は却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年2月19日に提出された手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「画像と前記画像上に複数の表示要素を表示する表示手段と、
前記画像上の座標を入力する第一の入力手段と、
前記画像上の座標を入力する第二の入力手段と、
前記第一の入力手段および前記第二の入力手段のいずれかを入力に使用しているか判断する判断手段と、
前記判断及び前記画像上で入力されている座標に対応する表示要素に基づいて表示要素の拡大率を変化させる表示制御手段と、
を備えることを特徴とする表示装置。」

第4 引用例
原査定の拒絶理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 (2)(b)」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明の「タッチパネルに対する拡大率とマウスに対する拡大率がそれぞれ個別に設定された複数の表示要素を画像上に表示する表示手段」、「第一の入力手段としてのタッチパネル」、「第二の入力手段としてのマウス」及び「前記判断手段が使用していると判断した入力手段で入力された画像上の座標に対応した前記表示要素に設定されている該入力手段に対応した拡大率で該表示要素を拡大表示する表示制御手段」を、それぞれ「画像と前記画像上に複数の表示要素を表示する表示手段」、「第一の入力手段」、「第二の入力手段」及び「前記判断及び前記画像上で入力されている座標に対応する表示要素に基づいて表示要素の拡大率を変化させる表示制御手段」とするものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が前記「第2」に記載したとおり、引用発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-22 
結審通知日 2012-03-27 
審決日 2012-04-10 
出願番号 特願2007-258801(P2007-258801)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊田 朝子  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 稲葉 和生
安島 智也
発明の名称 表示装置、および表示方法  
代理人 黒岩 創吾  
代理人 阿部 琢磨  

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