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審決分類 |
審判 全部無効 特126 条1 項 B65D 審判 全部無効 2項進歩性 B65D 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 B65D 審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) B65D 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B65D |
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管理番号 | 1258459 |
審判番号 | 無効2009-800120 |
総通号数 | 152 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-08-31 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2009-06-01 |
確定日 | 2012-03-21 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3999248号「エアゾール容器用キャップ」の特許無効審判事件についてされた平成22年 2月 2日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成22年(行ケ)第10087号及び平成22年(行ケ)第10089号、平成22年 7月15日)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許無効審判被請求人大和製罐株式会社は、下記ア記載の特許の特許権者であり、その経緯概要は下記イのとおりである。 ア 特許第3999248号「エアゾール容器用キャップ」 特許出願 平成18年 3月29日 出願番号 特願2006-92041号 設定登録 平成19年 8月17日 イ 平成21年 6月 1日 無効審判請求 請求項1ないし5 (無効2009-800120号) 請求人:東洋製罐株式会社 同 年 8月17日 答弁書提出 同 日 訂正請求書提出 同 年10月 2日 弁駁書提出 同 年12月 2日 口頭審理 平成22年 2月 2日 審決 訂正を認める。 請求項1に係る発明についての特許を 無効とする。 請求項2ないし4に係る発明について の請求不成立。 同 年 2月15日 審決送達 同 年 3月15日 審決取消訴訟提起 (平成22年(行ケ)第10087号) 同 年 3月16日 審決取消訴訟提起 (平成22年(行ケ)第10089号) 同 年 6月 2日 訂正審判請求 (訂正2010-390053号 特許法第134条の3第4項の規定により、 取り下げられたものとみなされた。) 同 年 7月15日 審決取消決定 同 年 9月27日 訂正請求書提出 同 日 被請求人上申書提出 同 年11月16日 弁駁書提出 同 年11月17日 請求人上申書提出 第2 訂正の可否に対する判断 1.基準明細書等 1)本件特許は、請求項1ないし5に係る発明について、特許権の設定登録がなされたものである。その後、平成21年8月17日付けの訂正請求書(以下、「第1次訂正請求書」という。)に添付された全文訂正明細書の請求項1ないし4に係る発明に対する平成22年2月2日付けの審決(以下、「第1次審決」という。)に対し、請求項1ないし4に対する審決部分の取り消しを求め、知的財産高等裁判所に出訴され、平成22年(行ケ)第10087号事件及び平成22年(行ケ)第10089号事件として審理された結果、「特許庁が無効2009-800120号事件について平成22年2月2日にした審決を取り消す。」との決定がなされたものである。 2)ここで、平成21年8月17日付けの訂正(以下、「第1次訂正」という。)は、第1次審決によれば、 ・登録時の請求項1ないし4の削除による特許請求の範囲の減縮 ・登録時の請求項5についての特許請求の範囲の減縮または明りょうでない記載の釈明 を目的とする訂正を含むものである。 そして、第1次審決中、登録時の請求項1ないし4の削除に係る訂正を認めた部分については、第1次審決送達時である平成22年2月15日に形式的に確定した(すなわち、登録時の請求項1ないし4の削除について、部分確定が生じた。)。 よって、訂正の基準となる明細書、特許請求の範囲または図面(以下、「基準明細書等」という。)は、登録時の請求項1ないし4を削除したものであると認める。 3)なお、この点について、被請求人は、平成22年9月27日付け上申書において、 (ア)第1次訂正において、登録時の請求項5を削除する訂正を含むものではあるが、登録時の請求項1ないし4の削除を含む訂正を行った事実はない。 (イ)本件特許の全部の請求項について無効審判が請求され、かつ全部の請求項について審決取消訴訟が提起されているので、部分確定は生じない。 旨、主張し、請求人は、平成22年11月16日付け弁駁書において、 (ウ)第1次訂正請求書による請求項の訂正は、請求項1を訂正し、請求項5を削除するものである。 (エ)審決取消決定により、第1次審決はその一部ではなく全てが取り消されたものであり、基準明細書等は、登録時の明細書、特許請求の範囲または図面である。 旨、主張している。 4)しかしながら、 (ア)(ウ)について;第1次訂正が、登録時の請求項1ないし4の削除を含むものであることは、第1次審決で示したとおりである。第1次訂正請求は、明細書及び特許請求の範囲の記載を、第1次訂正請求書に添付した全文訂正明細書のとおりに訂正することを請求の趣旨とするものであるところ、訂正前の特許請求の範囲の記載と訂正後の特許請求の範囲の記載とを対比すれば、訂正後の請求項1ないし4が、訂正前の請求項1ないし4を引用する訂正前の請求項5に対応するものであることが明らかである。 (イ)(エ)について;知財高裁平成19年(行ケ)第10380号判決に、「本件第3訂正は登録時の請求項4ないし6の削除を伴うものであり,同訂正を認めた第2次審決中,これらの請求項の削除に係る訂正を認めた部分については,原告・被告とも取消訴訟を提起する原告適格を有しないというべきであって,本件第3訂正のうち請求項4ないし6を削除した部分は,同審決の送達により,既に形式的に確定している」と説示されているとおり、請求項の削除訂正は、その訂正を容認する審決の送達とともに確定する。してみれば、本件特許において、登録時の請求項1ないし4の削除訂正は、第1次審決の送達とともに形式的に確定しているものである。 よって、被請求人及び請求人の上記主張は採用できず、上記のとおり、基準明細書等を認定する。 2.訂正請求の内容 被請求人は、平成22年9月27日に訂正請求書(以下、「第2次訂正請求書」という。)を提出して訂正を求めた(以下、「第2次訂正」という。)。当該訂正の内容は、基準明細書等を第2次訂正請求書に添付した全文訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。 すなわち、下記訂正事項AないしGのとおり訂正することを求めるものである。 訂正事項A;特許請求の範囲の記載につき、 [旧特許請求の範囲] 「 【請求項1】 上面部の周辺部から垂下した筒状部を備え、その筒状部の下端内周部に形成されている第一係合部をエアゾール容器の上端部に形成されている巻締部に係合させることにより、前記エアゾール容器の上端部に突出させてある噴射用のステムを覆うエアゾール容器用キャップにおいて、 前記上面部の中央部に、前記キャップを反転させた場合に前記ステムを嵌合させて押し下げる凹部が、キャップの内側に窪んで形成され、前記ステムの先端が突き当たる前記凹部の底面部分には、所定のクリアランスもしくは僅かな空間が設けられ、このクリアランスもしくは前記空間と前記凹部の内部とが連通することにより前記ステムから噴出したガスが前記凹部の内部に流出するように、前記凹部が設けられ、前記底面部分よりも前記凹部の開口端側に寄った前記凹部の内部のガスを外部へ逃がすために周壁部に貫通孔が形成され、更に、前記キャップを反転させて前記凹部に前記ステムを嵌合させてガスを噴出させるように押し下げた状態に前記キャップを前記エアゾール容器の上端部に係合させる第二係合部が設けられ、かつ前記エアゾール容器の上端部に前記キャップの第二係合部を係合させた状態で前記凹部の内面と前記エアゾール容器の上端部外面との間に前記ステムの開口端から前記ガス貫通孔に到るガス流路が形成されるように構成されていることを特徴とするエアゾール容器用キャップ。 【請求項2】 前記キャップの上面部のうち前記凹部よりも外周側でかつ前記上面部の外周端より内周側に、前記エアゾール容器の上端部に係合する円筒状の第二係合部が前記凹部と同心円状に突出して形成され、前記円筒状の第二係合部を前記所定箇所に係合させた状態で前記ステムを前記凹部で押し下げるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール容器用キャップ。 【請求項3】 前記上面部に前記凹部と同心円状に環状凹部が形成され、その環状凹部の内部に前記第二係合部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のエアゾール容器用キャップ。 【請求項4】 前記エアゾール容器の上端部は、前記ステムを保持しているマウンテンカップを前記エアゾール容器の上端部に一体化させている巻締部を含み、前記第二係合部はそのマウンテンカップの巻締部に係合するように構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載のエアゾール容器用キャップ。 【請求項5】 前記凹部は、前記ステムを嵌合可能に形成された小径凹部とこの小径凹部より開口端側で形成されている大径凹部とからなり、この大径凹部に貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のエアゾール容器用キャップ。」 における請求項5(前記第2の1.で示したとおり、請求項1ないし4の削除は確定しているので、請求項1ないし4は、請求項5で引用される限りにおいて存在しているものである。) (以下、「旧特許請求の範囲」に記載された各請求項を、それぞれ「旧請求項1」などという。) を、 [新特許請求の範囲] 「 【請求項1】 上面部の周辺部から垂下した筒状部を備え、その筒状部の下端内周部に形成されている第一係合部をエアゾール容器の上端部に形成されている巻締部に係合させることにより、前記エアゾール容器の上端部に突出させてある噴射用のステムを覆うエアゾール容器用キャップにおいて、 前記上面部の中央部に、前記キャップを反転させた場合に前記ステムを嵌合させて押し下げる凹部が、キャップの内側に窪んで形成され、前記ステムの先端が突き当たる前記凹部の底面部分には、所定のクリアランスもしくは僅かな空間が設けられ、このクリアランスもしくは前記空間と前記凹部の内部とが連通することにより前記ステムから噴射したガスが前記凹部の内部に流出するように、前記凹部が設けられ、前記凹部は、前記ステムを嵌合可能に形成された小径凹部とこの小径凹部より開口端側に形成されている大径凹部とからなり、この大径凹部の周壁部分のみに前記凹部の内部に存在するガスを外部へ逃がすための貫通孔が形成され、更に、前記キャップを反転させて前記凹部に前記ステムを嵌合させてガスを噴出させるように押し下げた状態に前記キャップを前記エアゾール容器の上端部に係合させる第二係合部が設けられ、かつ前記エアゾール容器の上端部に前記キャップの第二係合部を係合させた状態で前記凹部の内面と前記エアゾール容器の上端部外面との間に前記ステムの開口端から前記貫通孔に到るガス流路が形成されるように構成されていることを特徴とするエアゾール容器用キャップ。 【請求項2】 前記キャップの上面部のうち前記凹部よりも外周側でかつ前記上面部の外周端より内周側に、前記エアゾール容器の上端部に係合する円筒状の第二係合部が前記凹部と同心円状に突出して形成され、前記円筒状の第二係合部を前記所定箇所に係合させた状態で前記ステムを前記凹部で押し下げるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール容器用キャップ。 【請求項3】 前記上面部に前記凹部と同心円状に環状凹部が形成され、その環状凹部の内部に前記第二係合部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のエアゾール容器用キャップ。 【請求項4】 前記エアゾール容器の上端部は、前記ステムを保持しているマウンテンカップを前記エアゾール容器の上端部に一体化させている巻締部を含み、前記第二係合部はそのマウンテンカップの巻締部に係合するように構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載のエアゾール容器用キャップ。」 (以下、「新特許請求の範囲」に記載された各請求項を、それぞれ「新請求項1」などという。) と訂正する。 (第2次訂正請求書における「訂正事項1及び3」に該当。) 訂正事項B;段落【0009】の記載につき、 「前記凹部が設けられ、前記底面部分よりも前記凹部の開口端側に寄った前記凹部の内部のガスを外部へ逃がすために周壁部に貫通孔が形成され」 を、 「前記凹部が設けられ、前記凹部は、前記ステムを嵌合可能に形成された小径凹部とこの小径凹部より開口端側に形成されている大径凹部とからなり、この大径凹部の周壁部分のみに前記凹部の内部に存在するガスを外部へ逃がすための貫通孔が形成され」 と訂正する。 (第2次訂正請求書における「訂正事項6」に該当。) 訂正事項C;段落【0009】の記載につき、 「ガス貫通孔」を「貫通孔」と訂正する。 (第2次訂正請求書における「訂正事項4」に該当。) 訂正事項D;段落【0012】の記載につき、 「また、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記凹部は、前記ステムを嵌合可能に形成された小径凹部とこの小径凹部より開口端側で形成されている大径凹部とからなり、この大径凹部に貫通孔が形成されていることを特徴とするエアゾール容器用キャップである。」 を削除する。 (第2次訂正請求書における「訂正事項7」に該当。) 訂正事項E;段落【0013】の記載につき、 「凹部にステムを挿入した状態でキャップをエアゾール容器に向けて押し下げると、ステムが押されて内部のガスあるいは内容物がステムから噴射されるが、凹部は閉じているので、直ちに外部に吹き出すことはなく、凹部の外側に漏れ出し、その後、凹部より外周側に形成してあるガス排出孔から筒状部の内側に流出する。そのため、ガスもしくは内容物は、凹部より広い空間部分に一旦流出し、ここから実質的な外部である筒状部の内側に流れ出るので、ガスや内容物が勢いよく吹き出したり、周囲に拡散したりすることを防止もしくは抑制することができる。」 を、 「凹部にステムを挿入した状態でキャップをエアゾール容器に向けて押し下げると、ステムが凹部の底面部分に押されて内部のガスあるいは内容物がステムから噴射されるが、凹部の底面部分には、所定のクリアランスもしくは僅かな空間が設けられ、このクリアランスもしくは空間と凹部の内部とが連通しているので、噴射されたガスあるいは内容物は、凹部の内部に流出し、その後、小径凹部より開口端側に形成されている大径凹部の周壁部分のみに設けられている貫通孔から実質的な外部である筒状部の内側に流出する。その際に、貫通孔がステムの先端部に対向していないので、ガスや内容物が勢いよく吹き出したり、周囲に拡散したりすることを防止もしくは抑制することができる。」 と訂正する。 (第2次訂正請求書における「訂正事項8」に該当。) 訂正事項F;段落【0014】の記載につき、 「また、ガス排出孔がこの円筒状の第二係合部と凹部との間に形成されているので、ここを経由して外部に排出されるガスもしくは内容物の勢いが弱くなり、周囲に広く拡散するなどの事態を防止もしくは抑制することができる。」 を削除する。 (第2次訂正請求書における「訂正事項9」に該当。) 訂正事項G;段落【0028】の記載につき、 「嵌合凹部14」を「環状凹部14」と訂正する。 (第2次訂正請求書における「訂正事項5」に該当。) 3.当審の判断 これらの訂正事項について検討する。 (1)訂正事項Aについて 訂正事項Aは、 ・旧請求項1を引用する旧請求項5を、新請求項1とし、 ・旧請求項2を引用する旧請求項5を、新請求項2とし、 ・旧請求項3を引用する旧請求項5を、新請求項3とし、 ・旧請求項4を引用する旧請求項5を、新請求項4とする 訂正であるといえる。 (1-1)旧請求項1を引用する旧請求項5を、新請求項1とする訂正について 該訂正は、下記訂正事項A1及びA2を含むものといえる。 訂正事項A1;旧請求項1記載の「前記凹部が設けられ、前記底面部分よりも前記凹部の開口端側に寄った前記凹部の内部のガスを外部へ逃がすために周壁部に貫通孔が形成され」及び 旧請求項5記載の「前記凹部は、前記ステムを嵌合可能に形成された小径凹部とこの小径凹部より開口端側で形成されている大径凹部とからなり、この大径凹部に貫通孔が形成されている」を、 「前記凹部が設けられ、前記凹部は、前記ステムを嵌合可能に形成された小径凹部とこの小径凹部より開口端側に形成されている大径凹部とからなり、この大径凹部の周壁部分のみに前記凹部の内部に存在するガスを外部へ逃がすための貫通孔が形成され」と訂正する。 訂正事項A2;旧請求項1記載の「ガス貫通孔」を「貫通孔」と訂正する。 (1-1-1)訂正事項A1について 1)旧請求項5記載の「大径凹部に貫通孔が形成されている」事項は、該「大径凹部」が「小径凹部より開口端側で形成されている」ことから、旧請求項1記載の「底面部分よりも凹部の開口端側に寄った」「貫通孔が形成され」ている事項を言い換えたものであるということができる。 このことから、旧請求項1を引用する旧請求項5には、実質的に、 「前記凹部が設けられ、前記凹部は、前記ステムを嵌合可能に形成された小径凹部とこの小径凹部より開口端側で形成されている大径凹部とからなり、この大径凹部の周壁部に前記凹部の内部のガスを外部へ逃がすために貫通孔が形成され」 る事項が記載されていたものと認められる。 そこで、「大径凹部の周壁部に」を「大径凹部の周壁部分のみに」とする訂正について検討する。 2)基準明細書等の段落【0019】に、「凹部12の形状は、ステム3に合わせた形状になっており、図1,11に示す例では、中心部がステム3の先端部の外径より僅かに大径の小径凹部とされ、これより開口端側(図1では下側)が、マウンテンカップ8の中心部に形成されている膨出部13に緩く嵌合する大径凹部とされ、ガス流路となる間隙23が保持されている。また、図2,3,11に示すように大径凹部の周壁部分には、貫通孔22が形成されている。これは、凹部12の内部のガスを外部に逃がすためのものであって、例えば大径凹部の周壁部分にその軸線方向(もしくは周壁部分の母線の方向)に沿ったスリット状の貫通部分であり、周壁部分の円周方向に一定の間隔をあけて複数本の貫通孔22が形成されている。」と記載されているとおり、大径凹部の、貫通孔22が形成されている部位について、「周壁部分」と記載されていることから、「周壁部」を「周壁部分」とする訂正は、特許請求の範囲の記載を発明の詳細な説明の記載「大径凹部の周壁部分に」と整合させるための、不明りょうな記載の釈明を目的とするものであると認められる。 3)また、上記段落【0019】の摘記及び第11図の記載などから、貫通孔が大径凹部の周壁部分に形成され、小径凹部には形成されていないことは明らかである。 ここで、新請求項1の記載を見ると、「前記凹部は、前記ステムを嵌合可能に形成された小径凹部とこの小径凹部より開口端側に形成されている大径凹部とからなり、この大径凹部の周壁部分のみに前記凹部の内部に存在するガスを外部へ逃がすための貫通孔が形成され」と記載されており、「この大径凹部の周壁部分のみに前記凹部の内部に存在するガスを外部へ逃がすための貫通孔が形成され」との記載は「前記凹部は、」の記載を受けるもの、すなわち「凹部」の構成について説明したものであると解釈できる。 してみれば、「凹部」について見た時に、上記のとおり、貫通孔は小径凹部には形成されておらず、大径凹部の周壁部分のみに形成されるものであるから、「大径凹部の周壁部に」を「大径凹部の周壁部分のみに」とする訂正は、貫通孔が小径凹部には形成されないことを明確にするための、不明りょうな記載の釈明を目的とするものである。あるいは、貫通孔が大径凹部の周壁部分だけでなく小径凹部にも形成されるような態様を除外する、下位概念への変更に相当し、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。 4)なお、この点について、請求人は、平成22年11月16日付け弁駁書において、「凹部内に存在するガスを外部へ逃がすための貫通孔は、大径凹部の周壁部分に形成されている貫通孔(22)のみならず、キャップの上面部にも形成されていることが明らかである。キャップの上面部の貫通孔、即ちガス排出孔(17)を省略して、凹部内に存在するガスを外部へ逃がすための貫通孔を大径凹部に形成されている貫通孔(22)のみにせしめることについて、基準明細書等には全く記載も示唆もなされていない。」旨、主張している。 しかしながら、上記3)で検討したとおり、上記訂正は、凹部について見た時に、凹部には、貫通孔が大径凹部の周壁部分のみに形成されるという事項を明りょうにする、あるいは、減縮するものであり、キャップの上面部のガス排出孔(17)の有無を示すものではない。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 5)よって、上記訂正は、特許請求の範囲の減縮または明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 (1-1-2)訂正事項A2について 1)旧請求項1には、「前記ガス貫通孔」との記載があったが、該記載以前に「ガス貫通孔」の記載はなく、不明りょうな記載であった。 2)一方、旧請求項1の「前記ガス貫通孔」との記載以前に、ガスに関する貫通孔の記載としては、「前記底面部分よりも前記凹部の開口端側に寄った前記凹部の内部のガスを外部へ逃がすために周壁部に貫通孔が形成され」という記載のみが認められる。 3)してみれば、「前記ガス貫通孔」は底面部分よりも凹部の開口端側に寄った前記凹部の内部のガスを外部へ逃がすために周壁部に形成される貫通孔であると解されるから、「前記ガス貫通孔」を「前記貫通孔」と訂正することにより、上記1)の不明りょうさを解消するものである。 4)なお、この点について、請求人は、平成22年11月16日付け弁駁書において、「基準明細書等に記載されていたのは、『前記ガス排出孔(17)に到るガス流路(23)』であり、『前記貫通孔(22)に到るガス流路』は、記載も示唆もされていない。」旨、主張している。 しかしながら、旧請求項1記載の「前記ガス貫通孔」が「貫通孔(22)」を意味するものであったことは、前記1)ないし3)で検討したとおりである。 また、「ガス流路」についても一応の検討を加える。「ガス流路」とは、一般的に「ガスが流れる道」を意味するものであり、本件特許においては、「凹部の内面とエアゾール容器の上端部外面との間に」形成される、ガスの流れる道全体であると解される。 ここで「貫通孔に到るガス流路」という場合、凹部の内面とエアゾール容器の上端部外面との間に形成されるガス流路全体のうち、ステム開口端から貫通孔に到る部分のガス流路を指すと解せる。 一方、段落【0019】には「ガス流路となる間隙23」との記載があるが、該記載は「間隙23」が「ガス流路」の一部を構成すると解するのが自然であり、「間隙23」を経由する経路のみを「ガス流路」であると解釈する理由がない。 よって、「間隙23」以外の「凹部の内面とエアゾール容器の上端部外面との間」の、ガスの流れる道も「ガス流路」と解釈することを前提とした上記検討に矛盾はなく、請求人の上記主張は採用できない。 5)よって、上記訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 (1-2)旧請求項2?4を引用する旧請求項5を、新請求項2?4とする訂正について 請求項2?4は請求項1を引用するものであるから、上記訂正は、旧請求項1を引用する旧請求項5を新請求項1とする訂正と同様の訂正を含むものである。 また、請求項2?4の記載自体に変更はない。 よって、上記(1-1)で検討したのと同様の理由により、上記訂正は、特許請求の範囲の減縮または明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 (2)訂正事項Bについて 訂正事項Bは、訂正事項A1に伴って、訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるための不明りょうな記載の釈明を目的とするものである。 (3)訂正事項Cについて 訂正事項Cは、訂正事項A2に伴って、訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるための不明りょうな記載の釈明を目的とするものである。 (4)訂正事項Dについて 訂正事項Dは、訂正事項Aに伴って、訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるための不明りょうな記載の釈明を目的とするものである。 (5)訂正事項Eについて 1)訂正事項Eは、訂正事項Aに伴って、訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明における効果の記載とを整合させるための、不明りょうな記載の釈明を目的とするものである。 その理由を以下に詳述する。 2)段落【0013】は、新請求項1に係る発明について、その効果を記載する段落であると認められる。 3)ここで、訂正前の段落【0013】の「凹部は閉じているので、直ちに外部に吹き出すことはなく、凹部の外側に漏れ出し、その後、凹部より外周側に形成してあるガス排出孔から筒状部の内側に流出する。そのため、ガスもしくは内容物は、凹部より広い空間部分に一旦流出し、ここから実質的な外部である筒状部の内側に流れ出るので」を削除し、「凹部の底面部分には、所定のクリアランスもしくは僅かな空間が設けられ、このクリアランスもしくは空間と凹部の内部とが連通しているので、噴射されたガスあるいは内容物は、凹部の内部に流出し、その後、小径凹部より開口端側に形成されている大径凹部の周壁部分のみに設けられている貫通孔から実質的な外部である筒状部の内側に流出する。その際に、貫通孔がステムの先端部に対向していないので」を追加する訂正は、新請求項1に係る発明に含まれない構成であるガス排出孔による効果を削除し、新請求項1に係る発明に含まれる構成である貫通孔による効果を追加する訂正といえ、新請求項1に係る発明についての効果を記載するための、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであると認められる。 4)また、基準明細書等の段落【0024】に、「ステム3から噴出したガスもしくは内容物の一部は、前記間隙23を通過する過程で、前記貫通孔22から外部に排出される。その場合、貫通孔22がステム3の先端部に対向していないうえに、貫通孔22の総開口面積がステム3の開口面積より大きいので、ガスもしくは内容物は勢いを減殺された状態で流出し、周囲に飛散するなどのことが防止もしくは抑制される。」と記載されていることから、上記訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内のものである。 (6)訂正事項Fについて 1)訂正事項Fは、訂正事項Aに伴って、訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明における効果の記載とを整合させるための、不明りょうな記載の釈明を目的とするものである。 その理由を以下に詳述する。 2)段落【0014】は、新請求項2に係る発明について、その効果を記載する段落であると認められる。 3)ここで、段落【0014】についての訂正事項Fは、新請求項2に係る発明に含まれない構成であるガス排出孔による効果を削除する訂正といえ、新請求項2に係る発明についての効果のみを記載するための、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであると認められる。 (7)訂正事項Gについて 訂正事項Gは、誤記の訂正を目的とするものである。 訂正の対象である段落【0028】の「嵌合凹部14」との記載以外で、基準明細書等において、「嵌合凹部」なる記載はなく、また、符号「14」について、他の箇所では全て「環状凹部14」と記載されていることから、「嵌合凹部14」が「環状凹部14」の誤記であることは明白である。 (8)そして、上記各訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張しまたは変更するものでない。 4.むすび したがって、第2次訂正は、特許法第134条の2ただし書き、及び同条第5項において準用する同法第126条第3、4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。 5.備考 1)なお、第1次訂正が、前記第2の1.3)(ア)(ウ)のように、 ・登録時の請求項1の特許請求の範囲の減縮または明りょうでない記載の釈明 ・それに伴う、登録時の請求項2ないし4の、特許請求の範囲の減縮または明りょうでない記載の釈明 ・登録時の請求項5の削除 を含むものであると仮定した場合について、一応の検討を加えておく。 2)上記訂正において、登録時の請求項5の削除に係る訂正については、形式的に確定する(部分確定が生じる)こととなるため、訂正の基準となる特許請求の範囲は、登録時の請求項1ないし4となる。 3)そこで、第2次訂正の可否について検討する。 第2次訂正のうち、旧請求項1記載の「前記凹部が設けられ、前記底面部分よりも前記凹部の開口端側に寄った前記凹部の内部のガスを外部へ逃がすために周壁部に貫通孔が形成され」を「前記凹部が設けられ、前記凹部は、前記ステムを嵌合可能に形成された小径凹部とこの小径凹部より開口端側に形成されている大径凹部とからなり、この大径凹部の周壁部に前記凹部の内部に存在するガスを外部へ逃がすための貫通孔が形成され」とする訂正は、上位概念から下位概念への変更に相当し、特許請求の範囲の減縮と認められる。 また、基準明細書等の段落【0019】の記載により、上記訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 4)その他の訂正事項については、前記第2の3.で検討したとおりである。 5)よって、上記仮定によっても、第2次訂正は、特許法第134条の2ただし書き、及び同条第5項において準用する同法第126条第3、4項の規定に適合するので適法な訂正である。 6)また、第1次訂正が、前記第2の1.3)(イ)(エ)のように、何ら確定する部分がないと仮定した場合、すなわち、基準明細書等が登録時の明細書、特許請求の範囲または図面であると仮定した場合においても、第2次訂正が適法な訂正であることは、前記第2の3.での検討からして明らかである。 第3 本件特許発明に対する判断 1.本件特許発明 第2次訂正後の本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、第2次訂正請求書に添付された全文訂正明細書及び図面の記載からみて、第2次訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりの、前記第2の2.の[新特許請求の範囲]のとおりのものと認める。 2.請求人の主張 1)請求人は、新請求項1ないし4についての本件特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする趣旨の無効審判を請求し、後記の証拠方法をもって、以下に示す無効理由1ないし5により無効にされるべきであると主張していると認める。 無効理由1;本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に適合せず、同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 記 新請求項1記載の「前記凹部の内面と前記エアゾール容器の上端部外面との間に前記ステムの開口端から前記貫通孔に到るガス流路が形成されるように構成」との発明特定事項は、明確でない。 無効理由2;本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に適合せず、同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 記 新請求項1記載の「前記エアゾール容器の上端部に前記キャップの第二係合部を係合させた状態で前記凹部の内面と前記エアゾール容器の上端部外面との間に前記ステムの開口端から前記貫通孔に到るガス流路が形成されるように構成されている」との発明特定事項は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 無効理由3;本件特許の新請求項1ないし4に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物である後記の甲第1号証に記載された発明であるから、本件特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 無効理由4;本件特許の新請求項1ないし4に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物である後記の甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 無効理由5;本件特許の新請求項1ないし4に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物である後記の甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 2)証拠方法 甲第1号証;特開2000-219283号公報 甲第2号証;特開2002-12276号公報 甲第3号証;特許第3999248号公報(本件特許公報) 甲第4号証;特開2007-261659号公報(本件特許の公開特許公報) 甲第5号証;本件特許の審査段階における平成19年4月25日付け拒絶理由通知書 甲第6号証;本件特許の審査段階における平成19年7月2日付け手続補正書 甲第7号証;本件特許の審査段階における平成19年7月2日付け意見書 3.被請求人の主張 一方、被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判の費用は請求人の負担とする旨、主張していると認める。 4.無効理由1について 第2次訂正における上記訂正事項A2により、「ガス貫通孔」との記載が「貫通孔」と訂正され、「ガス貫通孔」についての不明りょうさが解消された。 また、「ガス流路」の記載については、上記第2の3.(1)(1-1)(1-1-2)4)で検討したとおりであり、明確である。 なお、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明における効果の記載との整合性については、上記訂正事項E及びFにより、解消された。 よって、無効理由1に理由はない。 5.無効理由2について 発明の詳細な説明の段落【0024】には、「ステム3から噴出したガスもしくは内容物の一部は、前記間隙23を通過する過程で、前記貫通孔22から外部に排出される。その場合、貫通孔22がステム3の先端部に対向していないうえに、貫通孔22の総開口面積がステム3の開口面積より大きいので、ガスもしくは内容物は勢いを減殺された状態で流出し、周囲に飛散するなどのことが防止もしくは抑制される。」と記載されており、新請求項1記載の「前記ステムの開口端から前記貫通孔に到るガス流路が形成されるように構成されている」との発明特定事項は、発明の詳細な説明に記載されたものである。 なお、請求人は、新請求項1の記載について、ステム3から噴出されたガスの全部が貫通孔22から排出されるものであるのに対し、発明の詳細な説明には、ステム3から噴出したガスはガス排出孔17から外部に排出されるものであり、その一部が間隙23を通過する過程で貫通孔22から外部に排出されるという構成により、ガスが周囲に広く拡散したり飛び散ったりすることを防止もしくは抑制するという本件特許発明の効果を奏するという事項しか開示されていない旨、主張している。 しかしながら、ガス排出孔17及び貫通孔22の両者を備えるものは、本件特許発明の実施例として記載されたものにすぎず、また、貫通孔22も、上記段落【0024】摘記のとおり、「ガスもしくは内容物は勢いを減殺された状態で流出し、周囲に飛散するなどのことが防止もしくは抑制される」との効果を奏するものであるから、請求人の上記主張は採用できない。 よって、無効理由2に理由はない。 6.無効理由3ないし5について (1)甲号証 (1-1)甲第1号証 請求人の提出した甲第1号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。 (1a)「【0001】 【発明の属する技術分野】 この発明は、殺虫剤・塗料・化粧料・洗剤などの内容物を収容するエアゾール容器に関する。詳しくは、そのようなエアゾール容器において、エアゾール容器内に内容物が未だあるときは、不使用時に、エアゾール容器に取り付け、ステムに取り付ける噴射釦を被う一方、エアゾール容器内の内容物を使い切ったときは、反転してエアゾール容器に取り付け、ステムを押し下げてエアゾール容器内のガス抜きを行うキャップに関する。」 (1b)「【0007】 そこで、この発明の課題は、ガスが勢いよく噴出して周囲を汚すおそれがなく、すべてのエアゾール容器のガス抜きを行うことができる、ガス抜き具を兼ねるエアゾール容器用キャップを提供することにある。」 (1c)「【0010】 【発明の実施の形態】 以下、図面を参照しつつ、この発明を説明する。 図1には、この発明によるキャップ10をエアゾール容器20に取り付けた状態で示す。 【0011】 エアゾール容器20は、容器本体21内に、殺虫剤・塗料・化粧料・洗剤などの内容物を収容する。上部には上向きにステム30を突出し、そのステム30に噴射釦22を取り付けてなる。そして、使用時は、キャップ10を取り外して噴射釦22を押し下げることにより、ステム30を押し込み、内容物を噴射釦22のノズル22aから吐出する。 【0012】 不使用時は、図示するように、噴射釦22を被ってキャップ10を被せ、後述する複数の内向き突部11bを、図示するようにエアゾール容器20の巻き締め部23に掛け止めてなる。 【0013】 図2にはキャップ10の縦断面、図3には平面、図4には底面を示す。 キャップ10は、円筒状の側部11と球面状の頂部12とからなる。 【0014】 側部11には、内面に、高さ方向にのびる補強リブ11aを、周方向に45度置きに8つ設ける。また、下縁に沿って周方向にのびる上述した内向き突部11bを、周方向に90度置きに4つ設ける。 【0015】 一方、頂部12には、中央に、中間段部12aを有するステム嵌入穴12bを上向きに設け、その底部をステム突き当て部12cとする。そして、ステム嵌入穴12bの下段の小径部まわりを下方に向けて漸次小径となるようにテーパ状につくり、該ステム嵌入穴12bの小径部から中間段部12aにかけてのびるスリットsを、周方向に90度置きに4つ設け、そのスリットsで仕切って、ステム突き当て部12cから放射状にのびてそのステム突き当て部12cを支持する弾性支持部12dを4つ形成する。 【0016】 また、キャップ10の頂部12には、ステム嵌入穴12bを中心としてそのまわりに環状の嵌合凹部12eを設ける。その嵌合凹部12eには、周方向に120度置きに3つの円弧孔12fをあける。円弧孔12fの上縁には、掛止突部12gを形成する。 【0017】 この発明によるキャップ10は、たとえば以上のように形成する。 そして、エアゾール容器20の内容物を使い切ったとき、同エアゾール容器20のステム30から噴射釦22を取り外し、キャップ10を反転して図5に示すように同エアゾール容器20に取り付ける。 【0018】 このとき、エアゾール容器20のステム30をステム嵌入穴12b内に入れて先端をステム突き当て部12cに突き当てる。その後、該キャップ10を押し下げて上向き付勢力に抗してステム30を押し込むと、ステム30から噴出するガスがスリットsを通して外部に排出される。 【0019】 ステム30の先端が突き当たるステム突き当て部12cの内面は、たとえば格子状の溝や平行溝を有する面とか、凹凸を有するシボ面とかにして、ステム30の噴出口を塞がないようにし、ステム30から噴出したガスがそれらの溝とか凹部を通してスリットsから外部に排出され得るようにする。 【0020】 そして、図8のA、C、D、F、I、J、K、Lのようにステム30の突出長さLが大きいときは、ステム30のさらなる押し込みとともに、徐々にステム30の上向き付勢力が大きくなってやがて図6(A)に示すように弾性支持部12dにはたわみを生ずる。 【0021】 一方、図8のB、E、G、Hのようにステム30の突出長さLが小さいときは、図6(B)に示すように弾性支持部12dがたわむ前にステム30が完全に押し込まれる。 【0022】 そして、やがて嵌合凹部12e内にエアゾール容器20のマウンテンカップ24をはめ込み、マウンテンカップ24の一部を円弧孔12f内に入れてそのマウンテンカップ24に掛止突部12gを掛け止め、キャップ10をエアゾール容器20に掛け止めて、ステム30を押し込み状態で保持し、エアゾール容器20内のガスを完全に抜く。」 (1d)「【0027】 【発明の効果】 以上説明したとおり、この発明によれば、ステムの突出長さが大きいときは、ステムを押し込むとき弾性支持部をたわませてその押し込みを緩衝するから、ステムからガスが勢いよく噴出することなく、突出長さがばらつくすべてのステムに対応してすべてのエアゾール容器のガス抜きを行うことができる。」 (1e)また、第1図の記載から、巻き締め部23がエアゾール容器20の上端部に形成されているのが看て取れる。 これらの記載事項によると、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。 「円筒状の側部11と球面状の頂部12とからなり、その側部11の下縁に沿って周方向にのびる内向き突部11bをエアゾール容器20の上端部に形成されている巻き締め部23に掛け止めることにより、前記エアゾール容器20の上部に突出させてある噴射用のステム30を被うエアゾール容器用キャップ10において、 前記頂部12の中央に、前記キャップ10を反転させた場合に前記ステム30を嵌入させて押し込むステム嵌入穴12bが、上向きに設けられ、前記ステム30の先端が突き当たる前記ステム嵌入穴12bの底部のステム突き当て部12cには、格子状の溝や平行溝を有する面もしくは凹凸を有するシボ面が設けられ、ステム30の噴出口を塞がないようにし、前記ステム30から噴出したガスがそれらの溝もしくは凹部を通して排出され得るように、前記ステム嵌入穴12bが設けられ、前記ステム嵌入穴12bは、中間段部12aを有し、下段に前記ステム30を嵌入可能に形成された小径部が形成され、この小径部から中間段部12aにかけてのびるガスを外部に排出させるためのスリットsが設けられ、更に、前記キャップ10を反転させて前記ステム嵌入穴12bに前記ステム30を嵌入させてガスを噴出させるように押し込んだ状態に前記キャップ10を前記エアゾール容器20のマウンテンカップ24に掛け止める掛止突部12gが設けられ、かつ前記エアゾール容器20のマウンテンカップ24に前記キャップ10の掛止突部12gを掛け止めた状態で前記ステム30から噴出するガスが前記スリットsを通して外部に排出されるように構成されているエアゾール容器用キャップ。」 (1-2)甲第2号証 請求人の提出した甲第2号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。 (2a)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本願発明は、エアゾール容器のガス抜きを容易に行い得るエアゾール容器の廃ガス処理用バルブボタン及び、これを装着したエアゾール容器用キャップに関するものであり、より詳しくは、廃ガス処理後、そのまま廃棄しても正しく分別廃棄し得る廃ガス処理用バルブキャップ及び、これを装着したエアゾール容器用キャップに関する。」 (2b)「【0007】 この実施の形態に係るエアゾール容器101の廃ガス処理用バルブボタン1は、全体が有頭筒状をなした金属製のボタンであり、通常の噴射ボタンを取り外したバルブステム102に取り付けて使用される。」 (2c)「【0008】 このバルブボタン1は、バルブステム102の先端と当接して押圧することができる作用部2を、ボタン頭部11の内部に備えると共に、バルブステム102から吐出されるエアゾール容器の内容物(噴射ガス)を外部に排出させる排気口3を備える(図2参照)。」 (2d)「【0009】 この作用部2には、バルブステム102の端部に設けられた吐出口102aに位置して内容物の吐出を可能とする通気路5が形成されている。即ち、作用部2がバルブステム102に当接する際、その吐出口102aを閉ざしてしまうと、円滑な廃ガスができないため、吐出口102aに当たる位置に溝状の通気路5を設けたもので、吐出口102aから吐出される内容物(噴射ガス)を、バルブボタン1の中心から外方向(側壁12に近づく方向)に案内し、側壁12の内側から排気口3を経て外部に排出させる。 【0010】 上記の排気口3は、図2に示すように、側壁12の下部に設けられている。即ち、側壁12の開口端から上方に向けて切り欠き形成されたスリット3として実施されている。」 (2)本件特許発明1について (2-1)対比 そこで、本件特許の新請求項1に係る発明(以下、新請求項の項番に対応させて「本件特許発明1」などという。)と上記引用発明とを対比すると、 引用発明のキャップ10が「円筒状の側部11と球面状の頂部12とから」なる事項は、図面の記載も参酌すると、本件特許発明1のキャップが「上面部の周辺部から垂下した筒状部を備え」る事項に相当する。 引用発明の「側部11の下縁に沿って周方向にのびる内向き突部11b」は、本件特許発明1の「筒状部の下端内周部に形成されている第一係合部」に相当する。 引用発明の「エアゾール容器20」、「巻き締め部23」、「ステム30」、「キャップ10」及び「ステム嵌入穴12b」は、それぞれ本件特許発明1の「エアゾール容器」、「巻締部」、「ステム」、「キャップ」及び「凹部」に相当する。 引用発明のステム嵌入穴12bが「上向きに設けられ」る事項は、図面の記載も参酌すると、本件特許発明1の凹部が「キャップの内側に窪んで形成され」る事項に相当する。 引用発明の「ステム嵌入穴12bの底部のステム突き当て部12c」は、本件特許発明1の「凹部の底面部分」に相当する。 引用発明の「格子状の溝や平行溝を有する面もしくは凹凸を有するシボ面が設けられ、ステム30の噴出口を塞がないようにし、前記ステム30から噴出したガスがそれらの溝もしくは凹部を通して排出され得る」事項は、該溝や凹部が所定のクリアランスもしくは空間を形成することが明らかであり、またその作用から、本件特許発明1の「所定のクリアランスもしくは僅かな空間が設けられ、このクリアランスもしくは前記空間と前記凹部の内部とが連通することにより前記ステムから噴射したガスが前記凹部の内部に流出する」事項に相当する。 引用発明の「ステム嵌入穴12bは、中間段部12aを有し、下段に前記ステム30を嵌入可能に形成された小径部が形成され」る事項は、ステム嵌入穴12bの上段に中間段部12aを介して大径部が形成されているといえるので、本件特許発明1の「凹部は、前記ステムを嵌合可能に形成された小径凹部とこの小径凹部より開口端側に形成されている大径凹部とからな」る事項に相当する。 引用発明の「スリットs」、「エアゾール容器20のマウンテンカップ24」及び「掛止突部12g」は、本件特許発明1の「貫通孔」、「エアゾール容器の上端部」及び「第二係合部」に相当する。 引用発明の「前記ステム30から噴出するガスが前記スリットsを通して外部に排出される」事項は、ステム30から噴出するガスが、ステム嵌入穴12bの内面とエアゾール容器20のマウンテンカップ24外面との間を通って、スリットsに到り、外部に排出されるものであり、そこにガスの流れる道が形成されるものといえるから、本件特許発明1の「前記凹部の内面と前記エアゾール容器の上端部外面との間に前記ステムの開口端から前記貫通孔に到るガス流路が形成される」事項に相当する。 よって、本件特許発明1と引用発明とは、 「上面部の周辺部から垂下した筒状部を備え、その筒状部の下端内周部に形成されている第一係合部をエアゾール容器の上端部に形成されている巻締部に係合させることにより、前記エアゾール容器の上端部に突出させてある噴射用のステムを覆うエアゾール容器用キャップにおいて、 前記上面部の中央部に、前記キャップを反転させた場合に前記ステムを嵌合させて押し下げる凹部が、キャップの内側に窪んで形成され、前記ステムの先端が突き当たる前記凹部の底面部分には、所定のクリアランスもしくは僅かな空間が設けられ、このクリアランスもしくは前記空間と前記凹部の内部とが連通することにより前記ステムから噴射したガスが前記凹部の内部に流出するように、前記凹部が設けられ、前記凹部は、前記ステムを嵌合可能に形成された小径凹部とこの小径凹部より開口端側に形成されている大径凹部とからなり、前記凹部に前記凹部の内部に存在するガスを外部へ逃がすための貫通孔が形成され、更に、前記キャップを反転させて前記凹部に前記ステムを嵌合させてガスを噴出させるように押し下げた状態に前記キャップを前記エアゾール容器の上端部に係合させる第二係合部が設けられ、かつ前記エアゾール容器の上端部に前記キャップの第二係合部を係合させた状態で前記凹部の内面と前記エアゾール容器の上端部外面との間に前記ステムの開口端から前記貫通孔に到るガス流路が形成されるように構成されているエアゾール容器用キャップ。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 相違点1;本件特許発明1の貫通孔が「大径凹部の周壁部分のみに」形成されるのに対し、引用発明のスリットsが「小径部から中間段部12aにかけてのびる」ように設けられる点。 (2-2)当審の判断 上記相違点1について検討する。 引用発明のスリットsは、ステムからガスが勢いよく噴出することなく、突出長さがばらつくすべてのステムに対応してすべてのエアゾール容器のガス抜きを行うことができるために、ステムの突出長さが大きいときは、ステムの押し込みとともに、スリットsで仕切られた弾性支持部12dをたわませてその押し込みを緩衝するよう、小径部から中間段部12aにかけてのびるように設けられたものである(前記摘記(1c)の【0015】、【0020】、【0021】及び(1d)の【0027】参照。)。 引用発明において、スリットsで仕切られた弾性支持部12dを、ステムの突出長さに応じて適切にたわませるためには、スリットsは、少なくとも小径部から中間段部12aにかけてのびるように設けられる必要がある。逆にいえば、スリットsを、ステム嵌入穴12bの上段の大径部の周壁部分のみに形成した場合、小径部から中間段部12aにかける部分、または大径部の周壁部分のみに形成されたスリットs間の部分、のいずれの部分においても、ステムの突出長さに応じてたわむことができず、引用発明の上記目的を達成することができない(スリットsを、ステム嵌入穴12bの大径部の側壁部分のみまたは中間段部12aのみに設けた場合、スリットs間の部分でたわむことができないことは明らかである。また、スリットsを、ステム嵌入穴12bの大径部の側壁部分から中間段部12aにかけてのびるように設けた場合も、上記大径部がステム保持部に嵌合しているため、スリットs間の部分でたわむことができない。)。 よって、引用発明において、スリットsの位置を、大径凹部の周壁部分のみとすることには阻害要因があり、本件特許発明1が引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 また、本件特許発明1は、引用発明ではない。 なお、甲第2号証には、 「バルブボタン1は、側壁12の下部に、側壁12の開口端から上方に向けて切り欠き形成されたスリットとして排気口3が設けられ、バルブステム102から吐出される噴射ガスを、バルブボタン1の中心から外方向(側壁12に近づく方向)に案内し、側壁12の内側から排出口3を経て外部に排出させる」 事項が記載されており、請求人が平成22年11月16日付け弁駁書等で主張するとおり、周壁部分の開口端側に寄った位置に貫通孔を形成する技術的事項が開示されているものと認められるが、該事項を考慮しても、上記のとおり、引用発明において、大径凹部の周壁部分のみに貫通孔を形成することに阻害要因が存在する以上、本件特許発明1が引用発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (3)本件特許発明2?4について 本件特許発明2?4は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有するものであるから、引用発明でなく、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、引用発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)本件特許発明2について 本件特許発明2について、更に検討を加える。 本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するとともに、更に、「前記キャップの上面部のうち前記凹部よりも外周側でかつ前記上面部の外周端より内周側に、前記エアゾール容器の上端部に係合する円筒状の第二係合部が前記凹部と同心円状に突出して形成され、前記円筒状の第二係合部を前記所定箇所に係合させた状態で前記ステムを前記凹部で押し下げるように構成されていること」を、発明特定事項として有するものである。 そこで、本件特許発明2と引用発明とを対比すると、前記(2-1)の相違点1の他に、更に以下の点で相違している。 相違点2;第二係合部が、本件特許発明2では、円筒状であって、しかもキャップの上面部に突出して形成されているのに対し、引用発明では、嵌合凹部12eに形成された掛止突部12gである点。 上記相違点2について検討する。 甲第1号証または甲第2号証の記載を見ても、引用発明の嵌合凹部12eに形成された掛止突部12gを、キャップの上面部に突出して形成された円筒状のものとすることが容易に想到し得たとする根拠は見あたらない。 甲第1号証には、「キャップ10の頂部12には、ステム嵌入穴12bを中心としてそのまわりに環状の嵌合凹部12eを設ける。その嵌合凹部12eには、周方向に120度置きに3つの円弧孔12fをあける。円弧孔12fの上縁には、掛止突部12gを形成する。」(前記摘記(1c)の【0016】)事項しか記載されておらず、該掛止突部12gは円筒状のものとはいえず、また、これを円筒状のものとする動機も見あたらない。 よって、相違点2が、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に想到し得たとすることはできない。 したがって、本件特許発明2は、引用発明でなく、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、引用発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5)本件特許発明3,4について 本件特許発明3,4は、本件特許発明2の発明特定事項の全てを有するものであるから、引用発明でなく、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、引用発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (6)まとめ よって、無効理由3ないし5に理由はない。 7.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、新請求項1ないし4についての本件特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 エアゾール容器用キャップ (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 上面部の周辺部から垂下した筒状部を備え、その筒状部の下端内周部に形成されている第一係合部をエアゾール容器の上端部に形成されている巻締部に係合させることにより、前記エアゾール容器の上端部に突出させてある噴射用のステムを覆うエアゾール容器用キャップにおいて、 前記上面部の中央部に、前記キャップを反転させた場合に前記ステムを嵌合させて押し下げる凹部が、キャップの内側に窪んで形成され、前記ステムの先端が突き当たる前記凹部の底面部分には、所定のクリアランスもしくは僅かな空間が設けられ、このクリアランスもしくは前記空間と前記凹部の内部とが連通することにより前記ステムから噴射したガスが前記凹部の内部に流出するように、前記凹部が設けられ、前記凹部は、前記ステムを嵌合可能に形成された小径凹部とこの小径凹部より開口端側に形成されている大径凹部とからなり、この大径凹部の周壁部分のみに前記凹部の内部に存在するガスを外部へ逃がすための貫通孔が形成され、更に、前記キャップを反転させて前記凹部に前記ステムを嵌合させてガスを噴出させるように押し下げた状態に前記キャップを前記エアゾール容器の上端部に係合させる第二係合部が設けられ、かつ前記エアゾール容器の上端部に前記キャップの第二係合部を係合させた状態で前記凹部の内面と前記エアゾール容器の上端部外面との間に前記ステムの開口端から前記貫通孔に到るガス流路が形成されるように構成されていることを特徴とするエアゾール容器用キャップ。 【請求項2】 前記キャップの上面部のうち前記凹部よりも外周側でかつ前記上面部の外周端より内周側に、前記エアゾール容器の上端部に係合する円筒状の第二係合部が前記凹部と同心円状に突出して形成され、前記円筒状の第二係合部を前記所定箇所に係合させた状態で前記ステムを前記凹部で押し下げるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール容器用キャップ。 【請求項3】 前記上面部に前記凹部と同心円状に環状凹部が形成され、その環状凹部の内部に前記第二係合部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のエアゾール容器用キャップ。 【請求項4】 前記エアゾール容器の上端部は、前記ステムを保持しているマウンテンカップを前記エアゾール容器の上端部に一体化させている巻締部を含み、前記第二係合部はそのマウンテンカップの巻締部に係合するように構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載のエアゾール容器用キャップ。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、圧縮ガスを内容物と共に充填したエアゾール容器のキャップに関し、特に残留しているガスを排出するために噴射ヘッドなどのステムを押し下げ状態に維持する機能を備えたキャップに関するものである。 【背景技術】 【0002】 エアゾール容器を廃棄する場合、残留ガスを予め可及的に排出しておくことが求められており、そのためのスプレー缶用蓋が特許文献1および特許文献2に記載され、またガス抜き治具が特許文献3に記載されている。これらの特許文献に記載された蓋もしくは治具は、上面部に噴射ノズルもしくはステムを嵌合させる凹部を形成するとともに、その凹部に噴射ノズルもしくはステムを嵌合させた状態で、これら噴射ノズルもしくはステムと一体の噴出部の巻締部に係合する係止部を設けた構成である。 【0003】 したがって、これらの蓋もしくは治具によっていわゆるガス抜きを行う場合、噴射ノズルもしくはステムにとりつけてある噴射ボタン(もしくは噴射ヘッド)を抜き取って噴射ノズルもしくはステムを露出させ、この状態で反転させた上記の蓋あるいは治具をスプレー缶の上部に嵌着させると、前記凹部に嵌合した噴射ノズルもしくはステムが押し下げられて内容物が噴出し、またその状態で前記係止部が巻締部に係合するので、噴射ノズルあるいはステムの押し下げ状態すなわち内容物の噴射状態を維持できる。 【0004】 【特許文献1】実開平1-151861号公報 【特許文献2】特開2000-219283号公報 【特許文献3】特許第2729163号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 上述した特許文献1に記載されたキャップでは、本発明のステムに該当する噴射管を嵌合させる筒がキャップの上面部に、外部に開口させた状態に設けられるとともに、その内底に溝が形成されてガスの逃げ部とされ、その溝に連通した状態の排出口が、前記筒の周壁部を貫通させて形成されている。したがって、キャップを反転させて筒の内部に噴射管を嵌合させ、その状態でキャップを押し下げると、噴射管が筒の内底で押し下げられるので、スプレー缶の内部のガスが吹き出し、そのガスは溝を通って排出口から排出される。その場合、ガスはほぼ直接、排出口から吹き出すことになるので、その勢いが強く、その結果、周囲に広く拡散してしまう不都合があった。また、継続して噴射させるためには、キャップを押し続ける必要があり、操作性の点で改善する余地があった。 【0006】 また、特許文献2に記載されたキャップは、キャップを反転させた状態でステムを嵌合させる嵌入穴を上面部に有し、その内部に放射状にスリットを設けてガスを排出するように構成されている。そのために、上記の特許文献1に記載されているキャップと同様に、ステムから噴出するガスあるいは内容物を含むガスがスリットから勢いよく吹き出し、周囲に飛散してしまうなどの不都合があった。また、特許文献2に記載されたキャップでは、上面部の一部を環状に窪ませ、その環状溝部の開口端内面に、ステムを保持しているマウンテンカップの巻締部に係合する係合部を設けているので、キャップを反転させて容器に取り付けた状態を維持することができる。しかしながら、その係合部は、キャップのいわゆる本体部分の一部である上面部を形成している箇所に設けられているから、その剛性はキャップに要求される剛性程度に高く、そのため、ガス抜きを中止する場合やガス抜きの終了後にキャップを容器から取り外す際に大きい力を加える必要があり、いわゆる着脱操作性の点で改善する余地があった。 【0007】 さらに、特許文献3に記載されたキャップにおいても、ステムを嵌合させる係合貫通孔から直接、ガスもしくは内容物を噴射させる構成であるから、その噴射の勢いが強く、ガスや内容物が周囲に広く拡散してしまうおそれが多分にあった。また、反転させたキャップをいわゆるガス抜き状態に保持するための係合部を、キャップの上面部を窪ませて形成した凹部の内面に形成しているので、その係合部の剛性が高く、そのため、上記の特許文献2に記載されているキャップ同様に、着脱操作性の点で改善すべき余地があった。 【0008】 本発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、いわゆるガス抜きの際のガスの噴射の勢いを弱くすることができ、またガス抜きのための着脱操作が容易なエアゾール容器用キャップを提供することを目的とするものである。 【課題を解決するための手段】 【0009】 上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、上面部の周辺部から垂下した筒状部を備え、その筒状部の下端内周部に形成されている第一係合部をエアゾール容器の上端部に形成されている巻締部に係合させることにより、前記エアゾール容器の上端部に突出させてある噴射用のステムを覆うエアゾール容器用キャップにおいて、前記上面部の中央部に、前記キャップを反転させた場合に前記ステムを嵌合させて押し下げる凹部が、キャップの内側に窪んで形成され、前記ステムの先端が突き当たる前記凹部の底面部分には、所定のクリアランスもしくは僅かな空間が設けられ、このクリアランスもしくは前記空間と前記凹部の内部とが連通することにより前記ステムから噴射したガスが前記凹部の内部に流出するように、前記凹部が設けられ、前記凹部は、前記ステムを嵌合可能に形成された小径凹部とこの小径凹部より開口端側に形成されている大径凹部とからなり、この大径凹部の周壁部分のみに前記凹部の内部に存在するガスを外部へ逃がすための貫通孔が形成され、更に、前記キャップを反転させて前記凹部に前記ステムを嵌合させてガスを噴出させるように押し下げた状態に前記キャップを前記エアゾール容器の上端部に係合させる第二係合部が設けられ、かつ前記エアゾール容器の上端部に前記キャップの第二係合部を係合させた状態で前記凹部の内面と前記エアゾール容器の上端部外面との間に前記ステムの開口端から前記貫通孔に到るガス流路が形成されるように構成されていることを特徴とするエアゾール容器用キャップである。 【0010】 請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記キャップの上面部のうち前記凹部よりも外周側でかつ前記上面部の外周端より内周側に、前記エアゾール容器の上端部に係合する円筒状の第二係合部が前記凹部と同心円状に突出して形成され、前記円筒状の第二係合部を前記所定箇所に係合させた状態で前記ステムを前記凹部で押し下げるように構成されていることを特徴とするエアゾール容器用キャップである。 【0011】 請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記上面部に前記凹部と同心円状に環状凹部が形成され、その環状凹部の内部に前記第二係合部が形成されていることを特徴とするエアゾール容器用キャップである。 【0012】 請求項4の発明は、請求項2または3の発明において、前記エアゾール容器の上端部は、前記ステムを保持しているマウンテンカップを前記エアゾール容器の上端部に一体化させている巻締部を含み、前記第二係合部はそのマウンテンカップの巻締部に係合するように構成されていることを特徴とするエアゾール容器用キャップである。 【発明の効果】 【0013】 請求項1の発明によれば、筒状部を下に向けてエアゾール容器の上部に被せれば、その筒状部の下端内周部に形成されている第一係合部が巻締部に係合し、その結果、キャップがエアゾール容器に取り付けられて、ステムを覆う。一方、エアゾール容器から取り外したキャップを上下反転させて上面部を下側にすると、その凹部にステムを挿入することができる。その場合、ステムに取り付けられているノズルもしくはノブなどを予め取り外してもよく、あるいはこれを取り付けたまま凹部に挿入するように構成してもよい。凹部にステムを挿入した状態でキャップをエアゾール容器に向けて押し下げると、ステムが凹部の底面部分に押されて内部のガスあるいは内容物がステムから噴射されるが、凹部の底面部分には、所定のクリアランスもしくは僅かな空間が設けられ、このクリアランスもしくは空間と凹部の内部とが連通しているので、噴射されたガスもしくは内容物は、凹部の内部に流出し、その後、小径凹部より開口端側に形成されている大径凹部の周壁部分のみに設けられている貫通孔から実質的な外部である筒状部の内側に流出する。その際に、貫通孔がステムの先端部に対向していないので、ガスや内容物が勢いよく吹き出したり、周囲に拡散したりすることを防止もしくは抑制することができる。 【0014】 請求項2の発明によれば、前記凹部に対して同心円状に形成された筒状部の第二係合部をエアゾール容器の上部の所定個所に係合させることにより、前記凹部に挿入したステムを凹部で押し下げ、残留ガスを噴射させる状態に維持することができる。その円筒状の第二係合部は、キャップの上面部から突出させて形成されたものであって、上面部自体を構成するもの(エアゾール容器用のキャップに必要とされる硬さ、剛性、耐落下衝撃性、耐変形性等を与えるための上面部を構成する部分)ではないので、その剛性を相対的に低くすることができ、こうすることによりいわゆるガス抜きのためにキャップをエアゾール容器に着脱する操作力が小さくてよく、その操作性を向上させることができる。 【0015】 請求項3の発明によれば、第二係合部が上面部に突出するように形成されていても、その位置が環状凹部の内側であるから、第二係合部の先端と上面部の表面位置とをほぼ同一平面上に一致させることができ、したがって第二係合部が欠損したり、邪魔になるなどのことを未然に回避することができる。 【0016】 請求項4の発明によれば、いわゆるガス抜きの際に、マウンテンカップの巻締部を利用してキャップをエアゾール容器に取り付けることができ、したがって第二係合部を薄肉化してその剛性を低下させることに加えて、その径を小さくできるので、キャップの着脱操作性を向上させることができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0017】 つぎに本発明を具体例に基づいて説明する。本発明に係るエアゾール容器用キャップ1は、エアゾール容器2の上部に取り付けられて、ステム3あるいはこれら取り付けられるノズルもしくはノブ(それぞれ図示せず)を覆って保護するためのものであり、その基本的な構造として、上面部4と、その周辺部から垂下した筒状部5とを一体に形成した構造を備えている。なお、図1には、いわゆる残留ガスを排出させるために反転させた状態を示しているので、上下が反対になっている。また、本発明は、エアゾール容器用キャップ1を反転させてエアゾール容器2の上端部に係合させることによりガス抜きを行うための構造に関する発明であるため、エアゾール容器(缶胴6、蓋部7、マウンテンカップ8、巻締部9、10、ステム3等)の形状および構造等を簡略化して図示してある。 【0018】 このキャップ1が取り付けられるエアゾール容器2は、缶胴6の上端部に、中央部が盛り上がった環状の蓋部7を巻き締め、さらにその蓋部7の中心部に、前記ステム3を保持しているマウンテンカップ8を巻き締めて取り付けた構成を有している。キャップ1は、その蓋部7の巻締部9とマウンテンカップ8の巻締部10とを利用して、エアゾール容器2に取り付けるように構成されている。すなわち、筒状部5の下端(図1では上端)内周面に、前記蓋部7を缶胴6に取り付けている巻締部9に係合する本発明の第一係合部に相当する係合部11が形成されている。この係合部11は、キャップ1の円周方向に所定の長さを有する突条部分であり、図1、図4に示す例では、円周方向に等間隔で四つ設けられており、その対向する係合部11の先端同士の間隔すなわち内径が、巻締部9の外径より僅かに小さく形成されている。そして、キャップ1の全体が、弾性のある合成樹脂で形成され、したがって、キャップ1をエアゾール容器2の上部に対して押し付けることにより、あるいは引き抜くことにより、係合部11が弾性変形して巻締部9に対して係合し、また離脱するようになっている。 【0019】 残留ガスを排出させるための構成が上面部4に設けられている。具体的には、図1に示すように、上面部4の中央部に凹部12が形成されている。すなわち、キャップ1を反転させた場合に、ステム3に対応する位置に凹部12が形成されている。この凹部12は、ステム3を嵌合させた状態でステム3を押し下げるための部分であって、ノズルあるいはノブなどを取り付けた状態もしくはこれらを取り外した状態でステム3を嵌合させるように構成されている。したがって、凹部12の形状は、ステム3に合わせた形状になっており、図1、11に示す例では、中心部がステム3の先端部の外径より僅かに大径の小径凹部とされ、これより開口端側(図1では下側)が、マウンテンカップ8の中心部に形成されている膨出部13に緩く嵌合する大径凹部とされ、ガス流路となる間隙23が保持されている。また、図2、3、11に示すように大径凹部の周壁部分には、貫通孔22が形成されている。これは、凹部12の内部のガスを外部に逃がすためのものであって、例えば大径凹部の周壁部分にその軸線方向(もしくは周壁部分の母線の方向)に沿ったスリット状の貫通部分であり、周壁部分の円周方向に一定の間隔をあけて複数本の貫通孔22が形成されている。さらに、凹部12の底面部分(ステム3の先端が突き当たる部分)には、ステム3から噴出したガスを凹部12の内部に流出させるようにステム3の先端部と接触する1又は2個以上のごく小さな突起部21を設けるか、又はステム3の先端部と接触する1又は2個以上のごく小さな突起部21を設けることにより、凹部12の底面部分(ステム3の先端が突き当たる部分)には、所定のクリアランスもしくは空間が形成されるようにして、ステム3から噴出したガスを凹部12の内部に流出させるように構成してある。なお、図1にはノズルあるいはノブなどを取り外した状態のステム3を嵌合させる例を示してある。 【0020】 また、上記の凹部12と同心円状に環状凹部14が形成されている。この環状凹部14の直径および開口幅は、前述したマウンテンカップ8の巻締部10を挿入可能な寸法に設定されている。そして、この環状凹部14の内部で、マウンテンカップ8の巻締部10の外径に相当する位置には、図1、12に示すように本発明の第二係合部に相当する円筒状の係合部15が突出して形成されている。この円筒状の係合部15は、単純な円筒状をなす部分であって、その内径は巻締部10の外径とほぼ等しくなっており、その開口端部(図1での下端部)には巻締部10に係合する凸部が形成されている。そして、この円筒状の係合部15が巻締部10に係合した状態における前記凹部12の位置が、ステム3を押し下げて残留ガスを噴出させる位置に設定されている。 【0021】 円筒状の係合部15をマウンテンカップ8の巻締部10に係合させた状態では、その内周側でマウンテンカップ8と上面部4との間に空間部16が生じるようになっており、その空間部16を実質的な外部であるキャップ1の内側に連通させるガス排出孔17が、前記環状凹部14の底面部(図1では上側に位置する部分)18を貫通して複数形成されている。これらのガス排出孔17の総開口面積は、ステム3の開口面積より大きくなっている。したがって、ステム3から噴出させたガスを、前記貫通孔22およびガス排出孔17から外部に流出させるように構成されている。 【0022】 つぎに上記のキャップ1の作用について説明する。前述した筒状部5を下側にしてエアゾール容器2の上部にキャップ1を被せると、筒状部5に形成されている係合部11が蓋部7の巻締部9に係合し、キャップ1がエアゾール容器2に取り付けられる。その状態では、ステム3がキャップ1に覆われ、外部から遮蔽されるので、ステム3が保護される。また、この状態では、上面部4が上向きに露出しているが、円筒状の係合部15は環状凹部14の内部に突出形成されているので、環状凹部14の内部に隠れた状態になっており、したがって通常の使用状態では、円筒状の係合部15が邪魔になったり、外力が掛かって欠損したりするなどの事態が未然に防止される。 【0023】 エアゾール容器2の残留ガスを排出させる場合には、キャップ1を上下を反転させてエアゾール容器2に被せる。キャップ1の上面部4に設けられている凹部12は、ステム3に対応する位置に形成されているから、ステム3がその凹部12に挿入され、凹部12の底面に突き当たる。その状態からキャップ1を更に押し下げると、ステム3が凹部12の底面によって押し下げられ、その結果、ステム3からエアゾール容器2の内部の残留ガスが噴出する。また、これとほぼ同時に、円筒状の係合部15がマウンテンカップ8の巻締部10に係合し、上下を反転させたキャップ1がエアゾール容器2の上部に取り付けられる。その状態を図1に示してある。 【0024】 ステム3の先端部と凹部12の底面との間にクリアランスもしくは僅かな空間が設けられているので、ステム3から噴出したガスもしくは内容物は、先ずは、凹部12の小径凹部内に流入し、直ちに大径凹部側へ移動して、マウンテンカップ8の膨出部13と凹部12の大径凹部との隙間23から凹部12の外側へ流出し、その後、マウンテンカップ8と上面部4との間の空間部16に到り、この空間部分を満たす。その後、キャップ1の上面部4に形成されているガス排出孔17からキャップ1を形成している筒状部5の内側に流出する。このように、ステム3から噴出したガスもしくは内容物は、直接外部に排出されずに、エアゾール容器2の先端部分であるマウンテンカップ8と上面部4との間に形成されている相対的に広い空間部分に拡散させられた後、ステム3の開口面積より広い開口面積を備えているガス排出孔17から外部に流出される。そのため、ステム3から勢いよく噴出したガスもしくは内容物は、その勢いが減殺された後、ガス排出孔17から緩やかに外部に流出する。そのため、ガスや内容物が周囲に広く拡散したり飛び散ったりすることが防止もしくは抑制される。なお、ステム3から噴出したガスもしくは内容物の一部は、前記隙間23を通過する過程で、前記貫通孔22から外部に排出される。その場合、貫通孔22がステム3の先端部に対向していないうえに、貫通孔22の総開口面積がステム3の開口面積より大きいので、ガスもしくは内容物は勢いを減殺された状態で流出し、周囲に飛散するなどのことが防止もしくは抑制される。 【0025】 また、反転させたキャップ1は、前記円筒状の係合部15がマウンテンカップ8の巻締部10に係合することにより、凹部12がステム3を押し下げた状態で、エアゾール容器2の先端部に取り付けた状態に保持される。すなわち、反転させたキャップ1から手を離してもガス抜きを継続することができるので、操作性が良好である。また、ガス抜きが完了した後、もしくはその途中でキャップ1をエアゾール容器2から取り外す場合、キャップ1をエアゾール容器2に対して捻れば、円筒状の係合部15が弾性的に撓み、マウンテンカップ8の巻締部10に対する係合が外れるので、キャップ1をエアゾール容器2から取り外すことができる。その場合、円筒状の係合部15は上面部4の一部に形成されているものの、上面部4自体を構成しているものではないので、剛性の低いものとすることができ、したがって小さい力でキャップ1を捻るだけで、円筒状の係合部15を容易に弾性変形させてキャップ1をエアゾール容器2から取り外すことができる。すなわち、着脱操作性の良好なキャップ1とすることができる。 【0026】 残留ガスもしくは内容物が外部に噴出する勢いを弱くするためには、外部に対する排出孔の総開口面積を広くすることが好ましい。したがって、本発明では、上述した環状凹部14の底面にガス排出孔17を形成することに加えて、前記凹部12と環状凹部14との間の環状の平面部19にガス排出孔20を形成してもよい。その例を図5、図6、および図7に示してある。これらの図に示す例では、平面部19のガス排出孔20が楕円形もしくは長円形に形成されている。また、図8、図9および図10には、環状凹部14の底面に形成されているガス排出孔17を楕円形もしくは長円形としたキャップ1の例を示してある。なお、図5、図6および図7に示す構成、図8、図9および図10に示す構成のうち、他の部分は図1、図3および図4に示す構成と同様であるから、同じ構成の部分には、図5ないし図10に図1、図3および図4と同様の符号を付してその説明を省略する。 【0027】 これら図5、図6および図7に示す例、あるいは図8、図9および図10に示す例では、ガス排出孔17、20の形状を工夫してその総開口面積を大きくしてあるので、外部に対するガスもしくは内容物の噴出速度もしくは勢いを低減でき、その結果、残留ガスを抜く際に、ガスや内容物が周囲に拡散したり飛び散ったりすることを良好に防止もしくは抑制することができる。 【0028】 なお、本発明は上述した各具体例に限定されないのであって、ステムに嵌合させる凹部はストレートな形状であってもよい。また、キャップの全体としての形状は、断面円形である必要はなく、断面形状が角を丸めた矩形形状をなすものであってもよい。更に円筒状の係合部15の形状は円筒状に限らず、例えば環状凹部14の内部に円周方向に間隔をおいて複数設けられ、前記円筒状の係合部15の下端部から中心方向に形成される凸部を有していてもよい。さらにまた、円筒状の係合部15は、基部側は円筒状となり、先端側は円周方向に間隔をおいて複数個設けられ先端部が中心方向に突出した形状の係合部でも良い。或いは、円筒状の係合部15は環状凹部14の外周壁から内方に向けた突出部を間隔をあけて多数設けた係合部でも良い。また、上記の具体例では環状凹部14の内側に円筒状の係合部15を設けた例を示したが、本発明は上記の環状凹部14が設けられていないキャップを対象とすることもでき、その場合円筒状の係合部15は上面部4の所定個所に形成すればよい。 【図面の簡単な説明】 【0029】 【図1】本発明に係るキャップの一例を上下反転してエアゾール容器に取り付けた状態を簡略化して示す断面図である。 【図2】同キャップにおける図1のII-II線矢視断面図である。 【図3】同キャップにおける図1の上面部の平面図である。 【図4】同キャップにおける図1の底部の平面図である。 【図5】本発明のキャップの他の例を上下反転してエアゾール容器に取り付けた状態を簡略化して示す断面図である。 【図6】同キャップにおける図5の上面部の平面図である。 【図7】同キャップにおける図5の底部の平面図である。 【図8】本発明のキャップの他の例を上下反転してエアゾール容器に取り付けた状態を簡略化して示す断面図である。 【図9】同キャップにおける図8の上面部の平面図である。 【図10】同キャップにおける図8の底部の平面図である。 【図11】同キャップの凹部附近を拡大した縦断面図である。 【図12】同キャップのマウンテンカップ附近を拡大した縦断面図である。 【符号の説明】 【0030】 1 エアゾール容器用キャップ 2 エアゾール容器 3 ステム 4 上面部 5 筒状部 6 缶胴 7 蓋部 8 マウンテンカップ 9 巻締部 10 巻締部 11 係合部 12 凹部 13 膨出部 14 環状凹部 15 円筒状の係合部 16 空間部 17 ガス排出孔 18 環状凹部の底面部(図1では上側に位置する部分) 19 平面部 20 ガス排出孔 21 突起部 22 貫通孔 23 間隙 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2011-01-13 |
結審通知日 | 2011-01-17 |
審決日 | 2011-01-31 |
出願番号 | 特願2006-92041(P2006-92041) |
審決分類 |
P
1
113・
841-
YA
(B65D)
P 1 113・ 113- YA (B65D) P 1 113・ 121- YA (B65D) P 1 113・ 537- YA (B65D) P 1 113・ 85- YA (B65D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山口 直、村山 達也 |
特許庁審判長 |
鈴木 由紀夫 |
特許庁審判官 |
豊島 ひろみ 栗林 敏彦 |
登録日 | 2007-08-17 |
登録番号 | 特許第3999248号(P3999248) |
発明の名称 | エアゾール容器用キャップ |
代理人 | 服部 謙太朗 |
代理人 | 木村 耕太郎 |
代理人 | 油木 肇 |
代理人 | 岡本 利郎 |
代理人 | 奥貫 佐知子 |
代理人 | 服部 謙太朗 |
代理人 | 竹田 稔 |
代理人 | 油木 肇 |
代理人 | 岡本 利郎 |
代理人 | 島田 康男 |
代理人 | 小野 尚純 |
代理人 | 友松 英爾 |
代理人 | 友松 英爾 |
代理人 | 木村 耕太郎 |
代理人 | 竹田 稔 |