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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B05B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B05B
管理番号 1258634
審判番号 不服2011-8753  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-25 
確定日 2012-06-13 
事件の表示 特願2005-154909「噴霧装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月 7日出願公開、特開2006-326513〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成17年5月27日の出願であって、平成22年5月11日付けの拒絶理由通知に対して平成22年7月16日付けで意見書が提出されたが、平成23年1月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年4月25日に拒絶査定に対する審判請求がされると同時に、同日付けの手続補正書により明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正がなされ、その後、当審における平成24年1月10日付けの書面による審尋に対して平成24年2月10日付けで回答書が提出されたものである。

第2.平成23年4月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成23年4月25日付けの手続補正を却下する。
〔理由〕
1.本件補正について
(1)本件補正の内容
平成23年4月25日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の特許請求の範囲の下記(a)に示す請求項1ないし5の記載を、下記(b)に示す請求項1と補正するものである。

(a)本件補正前の請求項1ないし5
「【請求項1】
セットされたスプレー缶から噴霧剤を自動的に噴霧する噴霧装置において、
前記スプレー缶から噴霧剤を噴霧する前に噴霧することを表示して予告する予告手段を備えたことを特徴とする噴霧装置。
【請求項2】 前記予告手段が、視覚を通じて認識できるものであることを特徴とした請求項1記載の噴霧装置。
【請求項3】 前記予告手段が、発光手段であることを特徴とした請求項1又は2記載の噴霧装置。
【請求項4】 前記発光手段が、前記噴霧剤を自動的に噴霧する自動噴霧制御運転中であることを示す状態と、前記噴霧剤を噴霧する前に前記状態と異なる状態に変化させて予告を行うことを特徴とした請求項3記載の噴霧装置。
【請求項5】 前記噴霧剤を自動的に噴霧する自動噴霧制御実行中であることを発光手段を点滅して表示する自動制御中表示手段を備え、
前記予告手段は、前記噴霧剤を噴霧する前に前記発光手段の点滅間隔を変化させて前記予告を行うことを特徴とした請求項1記載の噴霧装置。」

(b)本件補正後の請求項1
「【請求項1】
セットされたスプレー缶から噴霧剤を自動的に噴霧する噴霧装置において、
ケースの前面に前記噴霧剤を噴霧するための放出口と、該放出口から前記噴霧剤を噴霧する前に噴霧することを予告する発光手段とを設け、前記噴霧剤の噴霧方向と前記発光手段による発光方向とを同方向に設定する一方、 前記噴霧剤を自動的に噴霧する自動噴霧制御実行中であることを前記発光手段を点滅して表示するとともに、その点滅間隔を、前記噴霧剤を噴霧する前に短くして前記予告を行うことを特徴とした噴霧装置。」
なお、下線は請求人が補正個所を明確にするために付した。

(2)本件補正の目的
本件補正においては、本件補正後の請求項1は、記載された発明特定事項からみて、本件補正前の(請求項1を引用する請求項3をさらに引用する)請求項4に対応し、本件補正前の請求項1ないし3及び5は削除されたものと認められ、請求項1について、本件補正前の(請求項1を引用する請求項3をさらに引用する)請求項4に記載された発明の発明特定事項における「発光手段」を「放出口」との位置関係等において特定し、「発光手段」の表示に関して、噴霧装置の動作状態に応じてそれぞれの点滅間隔を特定するものであって、本件補正前の請求項4に係る発明の発明特定事項に関して限定を付加するものと認められるところであり、本件補正は平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2.本件補正の適否についての判断
本件補正における請求項1に関する補正事項は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正により補正される請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

(1)引用文献に記載された発明
原査定の拒絶理由に引用された特開2004-298781号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、消臭芳香剤や殺虫剤等を、一定時間毎に自動的に噴霧するスプレー装置に関する。」(段落【0001】)

イ.「【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、本発明によるスプレー装置の第1の特徴は、スプレー缶を着脱可能に装着するケースと、このケースに装着されたこのスプレー缶のノズルを開閉する作動機構部と、この作動機構部を駆動する駆動部と、この作動機構部を所定時間毎に作動するようにこの駆動部を制御する制御部とを有し、この制御部は、この作動機構部の作動回数を積算して、この作動回数に応じた表示を表示手段に表示させることにある。また本発明によるスプレー装置の第2の特徴は、上記特徴1に記載した表示手段はLEDであって、上記作動機構部の作動回数に応じて、上記制御部がこのLEDを点灯または点滅状態に変化させるものであることにある。
【0007】
このように作動機構部の作動回数を積算して、この作動回数に応じた表示を表示手段に表示させることによって、スプレー缶の内容物の残量または使用量を正確かつ直ちに知ることができる。すなわち、予め、使用するスプレー缶の内容物が、何回のノズル開放で全て使い切るかを調べておけば、ノズルを開放する作動機構部の作動回数を積算することによって、使用量または残量を直ちに算出することができるので、その算出結果を容易に表示手段に表示させることができる。ここで、スプレー缶の内容物の使用量または残量を表示させる表示手段としては、制御部に作動機構部の作動回数に応じた信号を発生させ、この信号に基づいて作動するものであればいずれの手段でもよく、ダイヤルメータ、棒状メータ、あるいはLED等を含む。
【0008】
本発明によるスプレー装置の第2の特徴は、前記特徴1に記載した表示手段はLEDであって、前記作動機構部の作動回数に応じて、前記制御部がこのLEDを点灯または点滅状態に変化させるものであることにある。ここで、LEDの点灯には、作動機構部の作動回数に応じて、LEDの輝度を変化させる場合、および色が異なるLEDを使い分ける場合も含む。
【0009】
このように表示手段としてLEDの点灯または点滅を使用することによって、表示手段の小型軽量化、省電力化、制御の容易化、および低コスト化を図ることができる。」(段落【0006】ないし【0009】)

ウ.「【0014】
【発明の実施の形態】
図1?図4を参照しつつ、本発明によるスプレー装置の構成について説明する。すなわち、スプレー装置は、スプレー缶1を着脱可能に装着するケース2と、このケースに装着されたスプレー缶1のノズル11を開閉する作動機構部3と、この作動機構部を駆動する駆動部4と、作動機構部3を所定時間毎に作動するように、駆動部4を制御する制御部5と、この制御部に電力を供給するスイッチ9とを有している。制御部5には、駆動部3の駆動電圧を監視する電圧監視手段7が組み込まれている。そして、駆動部4及び制御部5は、ケース2に装着した電池8の電力によって作動する。
【0015】
さて、ここで発明の内容の理解を容易にするために、まず上述したスプレー装置の構成部品の構成と機能とについて説明する。その後に、スイッチ9による制御部5の制御の切り替えについて説明する。スプレー缶1は、一般的に市販されている芳香剤スプレー缶であって、芳香剤を収納する縦長円柱状の容器本体12の上端に、ノズル11を取付けたものであり、このノズルを横方向に倒すとこのノズル先端から軸方向に噴霧する形式のものを使用している。またケース2は、プラスチック製の薄肉容器であって、スプレー缶1よりやや大きめの縦長形状に形成してある。ケース2の後側部は、スプレー缶1を挿入自在に収納する形状になっており、開閉可能な底蓋21を開いて、このスプレー缶を挿入する。また、スプレー缶1のノズル11は、ケース2の上方に設けたガイド孔22に挿入される。
【0016】
ケース2の前側面は略平面状になっており、その内側に作動機構部3と、この作動機構部を駆動する駆動部4と、この作動機構部を所定時間毎に作動するようにこの駆動部を制御する制御部5が収納してある。なお、ケース2の前側の下部は、開放可能な前蓋23が付いた電池ホルダになっており、この電池ホルダに電池8を装填する。また、ケース2の頂部には、LED6が設けてあり、このLEDは、スプレー缶1の内容物の残量と、駆動部4の駆動電圧の状態とを表示する。また、ケース2の前面には、スイッチ9と、ノズル11の開放時間間隔を3段階に切り替えることができる、噴霧間隔設定スイッチ10とが設けてある。」(段落【0014】ないし【0016】)

エ.「【0019】
制御部5は、マイクロチップを含む電子回路で構成され、上述した駆動部3の駆動電圧を監視する電圧監視手段7の他にタイマー5aを内蔵している。次に、制御部5の機能について説明する。第1に、時間間隔設定スイッチ10によって設定された時間間隔を記憶し、タイマー5aからの時間信号を積算して、設定された時間間隔が経過する度に、駆動部3に電池8から電流を供給して、作動機構部3のカム軸31を、所定の回転速度で一回転させる。したがって、ノズル11は、カム軸31が回転して、第1のレバー32がこのノズルを傾斜させている所定の間だけ開放されて噴霧する。したがって、ギア比やモータ45の回転速度を変える等によって、カム軸31の回転速度を変えれば、ノズル11の噴霧時間を調整することができ、一回の噴霧量を容易に増減することができる。
【0020】
また、図3に示すように、第1のレバー32の停止位置は、初期位置スイッチ51の作動によって、常にノズル11に接触する位置より90度遅れた位置に設定される。すなわち、第1のレバー32が、ノズル11を所定の時間だけ開放した後、さらに回転して上述した位置に来たときに、この第1のレバーとはカム軸方向位置が異なる位置であって、回転方向に90度先行する位置に設けた第2のレバー33が、駆動部4に設けた初期位置スイッチ51を作動させ、電池8から駆動部3へ供給する電流を遮断して、この駆動部を停止させる。したがって、駆動部3への電流の供給が絶たれているときには、常に第1のレバー32がノズル11と干渉しない位置に置かれるので、スプレー缶1を装着する際に、第1のレバー32がノズル11にぶつかって誤って噴霧させたり、制御部5の誤操作によって、第1のレバー32がノズル11と接触したまま停止するという不具合を確実に回避することができる。
【0021】
制御部5の第2の機能は、作動機構部4の作動回数を積算して、この作動回数に応じた表示をLED6に表示させることである。すなわち、ノズル11を所定時間毎に開放させる作動機構部4の作動回数を積算し、予め設定した回数以下の場合には、LED6を通常の速度(例えば2秒に1回)で点滅させ、予め設定した回数以上になった場合には、通常の2倍の速度(例えば1秒に1回)でこのLEDを点滅させることによって、スプレー缶1の残量が少なくなったことを警告して交換を促す。なお、作動機構部4の作動回数は、スプレー缶1を交換したときには、このスプレー缶が所定のリセットスイッチ(図示せず。)を作動し、積算回数ゼロの初期値にリセットされる。」((段落【0019】ないし【0021】)

オ.「【0031】
最後に、図10を参照しつつ、制御部5の制御ステップをまとめて説明する。すなわちスイッチ9を図6に示す第1位置に設定すると、電池8から電力が供給され、制御部5が起動する(A)。そして、制御部5を起動した場合には、この制御部を初期状態にリセットして(B)、誤操作の発生を防止する。なお、初期状態にリセットされた状態では、制御部5はLED6を2秒おきに点滅させ、電池8の電圧およびスプレー缶1の残量が正常であることを表示する制御状態におかれる(C)。次に、電圧監視手段7によって電池8の電圧が計測され(D)、所定の値より低い場合には、制御部5は、LED6を連続点灯させて(E)、この電池の消耗を警告する。なお、計測された電圧が、所定の値以上の場合には、制御部5は、LED6を2秒おきに点滅させたままにして、電圧が正常である旨を表示する(C)。
【0032】
さて、次に制御部5は、スイッチ9がプッシュ、すなわち第3位置に設定されているか否かをチェックし(F)、第3位置に設定されていない場合には、噴霧間隔設定スイッチ10で設定された噴霧間隔をチェックする(G)。そして、タイマー5aからの経過時間を計測し(H)、設定された噴霧間隔が経過したか否かをチェックする(I)。そして、制御部5は、設定された噴霧間隔が経過した場合には、モータ45を駆動させて(J)、カム軸31を回転させ、第1のレバー32がノズル11を押圧して噴霧する。制御部5は、第2のレバー33が、初期位置スイッチ51を作動させたか否かをチェックし(K)、この初期位置スイッチが作動した場合には、その位置でモータ8を停止させる(L)。
【0033】
また、制御部5は、初期位置スイッチ51が作動した場合には(K)、タイマー5aからの経過時間をゼロにリセットする(M)と共に、この初期位置スイッチの作動回数Kを累積して記憶する(N)。そして、制御部5は、作動回数Kが予め設定した150回以上になった場合には(O)、LED6を通常より2倍の速さの1秒おきに点滅させ、スプレー缶1が空になったことを警告する(P)。なお、制御部5は、スイッチ9がプッシュ、すなわち第3位置に設定された場合には(F)、モータ5を駆動させて(J)、上述した(K)?(P)のステップを実行し、モニター噴霧を行う。このようにして制御部5は、スイッチ9の第1位置、第2位置及び第3位置において、それぞれ上述した制御を行う。」(段落【0031】ないし【0033】)

したがって、上記の各記載事項ア.ないしオ.及び図面の記載を総合すると、引用文献には、次のような発明が記載されているといえる。
「着脱自在に装着されたスプレー缶から内容物を自動的に噴霧するスプレー装置において、ケースの上方面に内容物を噴霧するためのガイド孔と該ガイド孔から内容物を噴霧する噴霧状態を表示する(表示手段としての)LEDとを設け、内容物の噴霧方向とLEDによる発光方向とを同方向に設定し、内容物を自動的に噴霧する通常の正常な噴霧制御状態においてはLEDを通常の速度で(例、2秒おきに)点滅表示させ、予め設定された噴霧回数以上の噴霧状態となった際にはスプレー缶の内容物残量が少なくなったことを使用者等に警告しスプレー缶の交換を促すために、LEDを通常の正常な噴霧制御状態のときの点滅より2倍の速度で(例、1秒おきに)点滅表示させるように構成したスプレー装置。」(以下、「引用文献に記載された発明」という。)

(2)対比
(ア)本願補正発明と引用文献に記載された発明との対比
本願補正発明と引用文献に記載された発明とを対比すると、引用文献に記載された発明における「スプレー装置」、「着脱自在に装着されたスプレー缶」、「内容物」、「ガイド孔」及び「(表示手段としての)LED」は、それらの形状、構造、機能やそれらの意図する技術内容等からみて、それぞれ、本願補正発明の「噴霧装置」、「セットされたスプレー缶」、「噴霧剤」、「放出口」及び「発光手段」に相当する。
引用文献に記載された発明における「(表示手段としての)LED」は、通常の正常な噴霧制御状態においては、通常の速度で(例、2秒おきに)点滅表示するように構成されているところであり、本願補正発明と同様に、「自動噴霧制御実行中であることを点滅して表示している」といえる。また、引用文献に記載された発明における「(表示手段としての)LED」は、予め設定された噴霧回数以上の噴霧状態となったことによりスプレー缶の内容物残量が少なくなったことを使用者等に警告しスプレー缶の交換を促すために、LEDを通常の2倍の速度で(例、1秒おきに)点滅表示するように構成されており、このときのLEDの点滅間隔は、自動噴霧制御実行中であることを表示する点滅間隔よりも短く設定されている。
してみると、このLEDは、点滅間隔のより短い点滅表示によって、スプレー缶の内容物残量が少なくなり、「スプレー缶の内容物がまもなく空になること」を「予告」し、使用者等にスプレー缶の交換を促しているといえるところであり、予告機能を有するものである。
したがって、本願補正発明と引用文献に記載された発明は、「セットされたスプレー缶から噴霧剤を自動的に噴霧する噴霧装置において、ケースに噴霧剤を噴霧するための放出口と、該放出口から噴霧剤を噴霧する動作状態を点滅表示するとともに予告機能を有している発光手段とを設け、噴霧剤の噴霧方向と発光手段による発光方向とを同方向に設定し、
噴霧剤を自動的に噴霧する自動噴霧制御実行中であることを発光手段を点滅して表示し、また、「まもなく発生する事象」(本願補正発明においては「(所定時間経過後に)噴霧剤を噴霧すること」、引用文献に記載された発明においては「スプレー缶の内容物がまもなく空になること」)を使用者や周囲の人に予告するために、発光手段の点滅間隔を自動噴霧制御実行中であることを表示する点滅間隔よりも短くして、予告を行うようにした噴霧装置。」である点で一致し、次の1)及び2)の2点において相違する。
〈相違点〉
1)放出口及び発光手段が、本願補正発明においては、ケースの前面に設けられているのに対し、引用文献に記載された発明においては、ケースの上方面に設けられている点(以下、「相違点1」という。)。

2)発光手段をその点滅間隔を短くして点滅表示させることにより予告する「まもなく発生する事象」が、本願補正発明においては、「(所定時間経過後に)噴霧剤を噴霧すること」であり、噴霧剤を噴霧する前に予告し、注意を喚起するものであるのに対し、引用文献に記載された発明においては、「スプレー缶の内容物がまもなく空になること」であり、この予告によりスプレー缶の交換を促している点(以下、「相違点2」という。)。

(3)判断
相違点について検討する。
(3)-1 相違点1について
引用文献に記載された発明においては、芳香剤を上方に向けて噴霧する噴霧装置であり、放出口及び発光手段はケースの上方面に設けられているけれども、噴霧装置における放出口や発光手段を設ける部位は、噴霧装置の使用形態や噴霧装置に用いる噴霧剤の特性等に応じて、適宜選択的に設定しうる程度のものであり、放出口や発光手段をケースの上方面、下方面あるいは前面のいずれに設けるかは、当業者が噴霧装置の使用形態や噴霧剤の特性等に応じて適宜設定し得る程度のものであり、相違点1に係る本願補正発明は単なる設計上の微差にすぎないものである。

(3)-2 相違点2について
噴霧装置やエアゾールシステム等において、(a)容器に充填されている噴射剤の噴射の開始に先立って噴射に関連する信号を発生させ、使用者や周囲の人等に対してこれから噴射が始まることを知らせて注意を喚起すること、さらに、(b)使用者や周囲の人等に対して注意を喚起するために、聴覚信号、触覚信号や発光ダイオード等の表示ランプによる点灯や点滅による発光を用いることは、周知の技術的事項(例えば、特開2003-311191号公報{(a)に関しては段落【0013】及び【0018】の記載参照、(b)に関しては段落【0007】及び【0019】の記載参照。}あるいは、国際公開第03/099452号(特に、段落【0066】の記載参照。))である。
したがって、引用文献に記載された発明において、点滅間隔を(自動噴霧制御実行中であることを表示する点滅間隔よりも)短くした発光手段の点滅表示により、「スプレー缶の内容物がまもなく空になること」を予告しているところであるが、前述した周知の技術事項を参酌して、「スプレー缶の内容物がまもなく空になること」の予告に代えて、噴霧剤を噴霧する前に「(所定時間経過後に)噴霧剤を噴霧すること」を予告するようになし、その予告のために発光手段を短い点滅間隔で点滅表示させて、使用者や周囲の人等に対して注意や警告を与えるように構成することは、当業者が格別な創意工夫を要することなく容易に想到し得る程度のものであって、相違点2に係る本願補正発明のように特定することは、当業者が格別困難なく容易に想到し発明し得るものである。

したがって、本願補正発明は、引用文献に記載された発明及び前述した周知の技術事項に基づいて当業者が格別な困難性を伴うことなく容易に想到し発明し得るものである。

しかも、本願補正発明は、全体構成でみても、引用文献に記載された発明及び前述した周知の技術事項から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

以上のように、本願補正発明は、引用文献に記載された発明及び前述した周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.手続の経緯及び本願発明
平成23年4月25日付けの手続補正は前述したとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし5に係る発明は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであり、その請求項4に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2.の〔理由〕1.(1)の(a)に記載されたとおりである。

2.引用文献に記載された発明
原査定の拒絶理由に引用された引用文献(特開2004-298781号公報)に記載された発明は、前記第2.の〔理由〕2.(1)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.の〔理由〕1.(1)及び(2)で検討したように、本願補正発明における発明特定事項である「発光手段」に関する「放出口」との位置関係等についての限定、及び「発光手段」の表示に関しての噴霧装置の動作状態に応じてのそれぞれの点滅間隔の限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2.の〔理由〕2.(1)ないし(3)に記載したとおり、引用文献に記載された発明及び前述した周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献に記載された発明及び前述した周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

また、審判請求人においては、平成24年2月10日付けの回答書において、特許請求の範囲の請求項1の補正案を提示しているところ、当該補正案に記載された事項によって特定された発明(以下、「補正案発明」という。)は、本願補正発明の発明特定事項の一部を削除するものに相当するものであり、補正案発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前述したように、引用文献に記載された発明及び前述した周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、補正案発明も、同様の理由により、引用文献に記載された発明及び前述した周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明及び前述した周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-26 
結審通知日 2012-04-03 
審決日 2012-04-16 
出願番号 特願2005-154909(P2005-154909)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B05B)
P 1 8・ 121- Z (B05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土井 伸次  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 金澤 俊郎
川口 真一
発明の名称 噴霧装置  
代理人 三好 千明  

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