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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1258809
審判番号 不服2011-23067  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-26 
確定日 2012-06-21 
事件の表示 平成11年特許願第540277号「電池ケース用シートおよび電池装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 8月12日国際公開、WO99/40634〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年2月5日を国際出願日とする出願であって、平成21年10月7日付けで拒絶理由が通知され、同年12月2日付けで手続補正がされ、平成22年11月29日付けで拒絶理由が通知され、平成23年2月7日付けで手続補正がされ、同年7月13日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年10月26日に審判請求がされたものである。
そして、その発明は、平成23年2月7日付けの手続補正によって補正された請求の範囲の請求項1?2のそれぞれに記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。

「1. 内部に電池を収納する積層体シートからなる電池ケース用シートにおいて、
積層体シートは第1の基材フィルム層と、
第1の基材フィルム層の内側に配置された熱接着性樹脂層と、
前記第1の基材フィルム層と前記熱接着性樹脂層との間に配置されたバリヤー層と、
を備え、
積層体シートは一対設けられ、各積層体シートの熱接着層はその周縁部が熱接着され、
各積層体シートは周縁部において外方から押圧されて凹部を形成し、各積層体シートのバリヤー層同士が接近あるいは接触し、一方の積層体シートの凹部と、他方の積層体シートの凹部は互いに対向して配置されていることを特徴とする電池ケース用シート。
2. 内部に電池を収納する積層体シートからなる電池ケース用シートにおいて、
積層体シートは第1の基材フィルム層と、
第1の基材フィルム層の内側に配置された熱接着性樹脂層と、
前記第1の基材フィルム層と前記熱接着性樹脂層との間に配置されたバリヤー層と、
を備え、
積層体シートは一対設けられ、各積層体シートの熱接着層はその周縁部が熱接着され、
各積層体シートは周縁部の端部において外方から押圧されて押圧部を形成し、、各積層体シートのバリヤー層同士が接近あるいは接触し、一方の積層体シートの押圧部と、他方の積層体シートの押圧部は互いに対向して配置されていることを特徴とする電池ケース用シート。」(以下、請求項1に記載された発明を「本願発明1」、また、請求項2に記載された発明を「本願発明2」という。)

第2 原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶理由の概要は、本願発明1は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物1に記載された発明に基いて、また、本願発明2は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

<引用刊行物>
刊行物1 特開昭61-29065号公報
刊行物2 特開昭61-29064号公報

第3 刊行物の記載事項
1 刊行物2
[1a]「軽金属を活物質とする負極と、正極と、非水電解質とからなる発電要素と、この発電要素を包被するフィルム状外装体を備え、前記フィルム状外装体は少なくとも中間層の一層にアルミニウム箔を有し、かつ最内層を熱溶着性樹脂フィルムとした多層構造であって、発電要素の周囲において前記外装体を熱溶着するとともに、その後溶着部を所定寸法に切断し、かつ切断部を加熱加圧することを特徴とする扁平電池の製造法。」(特許請求の範囲)

[1b]「発明の構成 本発明は従来例と同様につくられた電池の周辺溶着部を所定寸法に切断し、この切断部近傍を加熱加圧し、多層構造からなる外装フィルム1中のアルミニウム箔1bと1b′とを切断部で当接させ、電池内部への水分の侵入を抑制するものである。」(第2頁左下欄第17行?同頁右上欄第2行)

[1c]「実施例の説明 扁平電池は、周囲の四辺を熱シールする場合と、負極側外装フィルム1′と正極側外装フィルム1″を一枚の外装フィルム1を2つ折りにして構成し、その折り曲げ部は溶着せず、その他の三辺が熱シールされる場合(以下三辺シール方式という)がある。 ここでの実施例として三辺シール方式を説明する。負極5,正極合剤6,セパレータ7等を2つに折り曲げられた外装フィルム1にはさみこみ、折り曲げ部に隣り合う両端側の二辺を熱シールし、次にシールしていない一辺より…非水電解質を注入する。注入後は、電解質がセパレータ7になじませる工程を経て、真空状態で電解質の注入口を熱シールする。次に電池周辺3辺のシール部を金型で所定寸法に打抜く。そのときの打抜き部の切口は、第3図Pで示すような状態となる。定寸法の金型での打抜きは、製品の外観上、ならびに寸法精度をだすために必要なものである。本発明はこのようにしてできた電池の打抜き部Pの近傍を更に加熱加圧し、第4図に示すようにポリエチレンフィルム1a,1a′を押しだすようにし、フィルム中のアルミニウム箔1bと1b′との端部が当接するようにしたものである。なお、外側へ押しだされたポリエチレン1a,1a′はこれを削り取るか又は型で打抜く等の処理をとって除去している。」(第2頁右下欄第3行?第3頁左上欄第10行)

[1d]「発明の効果 本発明の方法で外装フィルム1中のアルミニウム箔1bと1b′とを当接させる工程において、電池の端部を加熱加圧するために、前述のようなニッケル集電板3、アルミニウム集電板4と外装フィルム1中のアルミニウム箔1b,1b′との接触による絶縁不良やその他の影響を受けずに、しかも電池内部への水分の侵入を抑制できる効果がある。第5図は本発明の方法で作った扁平電池Aと、従来品Bとを60℃,90%恒温恒湿中で保存試験した結果を示す。なお、非水電解質電池の保存寿命は、高温多湿が最も強く影響し、本試験方法が最も保存寿命の推定に好ましいものであった。 第5図から明らかなように本発明では優れた保存寿命が得られる。」(第3頁左上欄第11行?同頁右上欄第5行)

第4 当審の判断
1 刊行物2に記載された発明
ア 刊行物2の[1a]には、「軽金属を活物質とする負極と、正極と、非水電解質とからなる発電要素と、この発電要素を包被するフィルム状外装体を備え、前記フィルム状外装体は少なくとも中間層の一層にアルミニウム箔を有し、かつ最内層を熱溶着性樹脂フィルムとした多層構造であって、発電要素の周囲において前記外装体を熱溶着するとともに、その後溶着部を所定寸法に切断し、かつ切断部を加熱加圧する」ことで得られた扁平電池が記載されている。

イ また、刊行物2の[1b]、[1c]及び[1d]には、上記の扁平電池について、周囲の四辺を熱シールする場合と、三辺シール方式とする場合とがあるが、いずれの場合も、外装体中のアルミニウム箔の端部同士を当接させることによって、電池内部への水分の侵入を抑制することが記載されていると認める。

ウ そして、上記の扁平電池が、周囲の四辺を熱シールする場合には、当然に、発電要素を包被する、一対のフィルム状外装体を備え、前記フィルム状外装体は少なくとも中間層の一層にアルミニウム箔を有し、かつ最内層を熱溶着性樹脂フィルムとした多層構造であって、発電要素の周囲において一対の前記外装体を熱溶着するとともに、その後溶着部を所定寸法に切断し、かつ切断部を加熱加圧することで得られた扁平電池となると認める。

エ そのような刊行物2記載の扁平電池においては、「多層構造のフィルム状外装体」は、少なくとも中間層の一層にアルミニウム箔を有し、かつ最内層を熱溶着性樹脂フィルムとした多層構造のフィルム状外装体であって、そのフィルム状外装体の一対で発電要素を包被し、その発電要素の周囲において一対の前記外装体を熱溶着するとともに、その後溶着部を所定寸法に切断し、かつ切断部を加熱加圧することで得られた多層構造のフィルム状外装体であり、一対の前記外装体中のアルミニウム箔の端部同士を当接させることによって、電池内部への水分の侵入を抑制した、外装体であると認める。

オ 以上によると、刊行物2には、以下の発明が記載されていると認める。
「扁平電池の発電要素を包皮する多層構造のフィルム状外装体であって、
前記フィルム状外装体は外側層と、
熱溶着性樹脂フィルムよりなる最内層と、
アルミニウム箔よりなる中間層と、
を備え、
前記フィルム状外装体は一対設けられ、各フィルム状外装体の発電要素の周囲の熱溶着性樹脂フィルムが熱シールされ、その熱シールした部分を所定寸法に切断し、かつ切断した部分を加熱加圧し、
各フィルム状外装体のアルミニウム箔の端部同士が当接されている、
フィルム状外装体。」(以下、「引用発明2」という。)

2 本願発明2と引用発明2との対比
ア 引用発明2の「扁平電池の発電要素を包皮する多層構造のフィルム状外装体」は、本願発明における、「内部に電池を収納する積層体シートからなる電池ケース用シート」に相当し、また、引用発明1の「外側層」、「熱溶着性樹脂フィルムよりなる最内層」、「アルミニウム箔よりなる中間層」は、それぞれ、本願発明1の「第1の基材フィルム層」、「第1の基材フィルム層の内側に配置された熱接着性樹脂層」、「前記第1の基材フィルム層と前記熱接着性樹脂層との間に配置されたバリヤー層」に相当する。

イ 引用発明2の「前記フィルム状外装体は一対設けられ、各フィルム状外装体の発電要素の周囲の熱溶着性樹脂フィルムが熱シールされ、その熱シールした部分を所定寸法に切断し、かつ切断した部分を加熱加圧し」は、切断した部分を加熱加圧することは、端部において外方から押圧された押圧部を形成することであるから、本願発明2の「積層体シートは一対設けられ、各積層体シートの熱接着層はその周縁部が熱接着され、積層体シートは周縁部において外方から押圧されて押圧部を形成し」に相当し、引用発明2の「各外装フィルムのアルミニウム箔の端部同士が当接されている」は、本願発明2の「各積層体シートのバリヤー層同士が接近あるいは接触し」に相当する。

ウ したがって、本願発明2と引用発明2とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点>
内部に電池を収納する積層体シートからなる電池ケース用シートにおいて、
積層体シートは第1の基材フィルム層と、
第1の基材フィルム層の内側に配置された熱接着性樹脂層と、
前記第1の基材フィルム層と前記熱接着性樹脂層との間に配置されたバリヤー層と、
を備え、
積層体シートは一対設けられ、各積層体シートの熱接着層はその周縁部が熱接着され、
積層体シートは周縁部の端部において外方から押圧されて押圧部を形成し、各積層体シートのバリヤー層同士が接近あるいは接触している
電池ケース用シート。

<相違点>
本願発明2は、周縁部の端部において外方から押圧されて押圧部を形成するのは、「各積層体シート」であり、「一方の積層体シートの押圧部と、他方の積層体シートの押圧部は互いに対向して配置されている」のに対して、引用発明2は、周縁部の端部において外方から押圧されて押圧部を形成するのは、「一方の積層体シート」か「各積層体シート」か不明である点。

3 本願発明2における引用発明2との相違点についての判断
ア 内部に電池を収納する電池ケース用シートであって、シートが一対設けられた電池ケース用シートにおいて、シートの周縁部において外方から押圧されて形成された押圧部を、各シートが周縁部において外方から押圧されて形成された押圧部とし、一方の積層体シートの押圧部と、他方の積層体シートの押圧部を互いに対向して配置することは、当業者が通常行っている周知の技術にすぎない。
(要すれば、
参考文献1 特開平9-288997号公報
参考文献2 特開平3-15150号公報
参考文献3 特開昭63-318066号公報 )

イ そうすると、引用発明2で、周縁部の端部において外方から押圧されて押圧部を形成するのを、各積層体シートとし、一方の積層体シートの押圧部と、他方の積層体シートの押圧部を互いに対向して配置することは、上記周知の技術に基づいて、当業者が容易になし得ることにすぎない。

ウ なお、請求人は審判請求書で、「電池ケース用シートにおいて、一方の積層体シートにのみ押圧部を形成することは周知としても、他の積層体シートに押圧部を形成する場合、一方の積層体シート側および他方の積層体シート側の双方に押圧部を形成するための部材を有する金型を配置する必要があり、製造装置は複雑化する。 さらに一方の積層体シートおよび他方の積層体シートの双方に互いに対向する押圧部を形成する場合、一方の積層体シート側および他方の積層体シート側において、押圧部を形成するための部材を互いに位置決めして配置する必要があり、このことからも一方の積層体シートおよび他方の積層体シートの双方に押圧部を設けるとともに、一対の積層体シートおよび他方の積層体シートの双方の押圧部を互いに対向させることは従来より全く行われていないのが実情である。」旨主張している。
しかしながら、本願発明2について、本願明細書には、「 具体的な構成を、図面に基づいて、詳述する。…図72(c)には、一対の積層シート10、10の周縁部115の端部の部位を、上下2方向から加圧して、シール層を排除しながら、袋の表面および裏面を構成するバリアー層2同士を接近あるいは接触させた構成が示されている。 更には、図72(c)の他の実施例として、一対の積層シート10、10の周縁部115の端部を、上方あるいは下方のいずれか一方向から加圧して、シール層を排除しながら、袋の表面および裏面を構成するバリアー層2同士を接近あるいは接触させた構成をとってもよい。 上記加工方法としては、熱板あるいは、超音波にて、シール層を排除しながら、袋の表面および裏面を構成するバリアー層2同士を接近あるいは接触させる方法が考えられる。」(国際出願時の明細書第148頁第23行?第149頁第16行)といったことが記載されているだけで、製造装置に係る発明は記載されていないし、また、内部に電池を収納する電池ケース用シートであって、シートが一対設けられた電池ケース用シートにおいて、シートの周縁部において外方から押圧されて形成された押圧部を、各シートが周縁部において外方から押圧されて形成された押圧部とし、一方の積層体シートの押圧部と、他方の積層体シートの押圧部を互いに対向して配置することは、上記「イ」で示すとおり、当業者が通常行っている周知の技術にすぎないから、請求人の上記の主張は当を得たものでない。

4 小括
したがって、本願発明2は刊行物2に記載された発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、請求項2に記載された発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、原査定は妥当である。
したがって、請求項1に記載された発明について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-25 
結審通知日 2012-04-27 
審決日 2012-05-09 
出願番号 特願平11-540277
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡部 朋也  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 佐藤 陽一
小川 進
発明の名称 電池ケース用シートおよび電池装置  
代理人 磯貝 克臣  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 永井 浩之  
代理人 勝沼 宏仁  

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