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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1259019
審判番号 不服2009-10200  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-05-25 
確定日 2012-06-20 
事件の表示 特願2003-552921「bgl5β-グルコシダーゼ及びそれをエンコードする核酸」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月26日国際公開、WO03/52054、平成17年 5月12日国内公表、特表2005-512534〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は,2002年10月30日(パリ条約による優先権主張2001年12月18日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成21年2月19日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成21年5月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。そして,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成21年6月24日の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「以下からなる群より選択される単離ポリヌクレオチド:
(a)図2(配列番号2)で表すアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一を有するポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列;
(b)図2(配列番号2)で表すアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列;
(c)図2で表すアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列;
(d)図2で表すアミノ酸配列を有するポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列;
(e)配列番号2として表すアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列;
(f)配列番号2として表すアミノ酸配列を有するポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列;
(g)配列番号3として表す核酸配列またはその相補的配列;及び
(h)高ストリンジェンシーな条件下で配列番号3として表す配列にハイブリダイズする核酸配列またはその相補的または断片配列であり,前記単離ポリヌクレオチドがβ-グルコシダーゼの生物学的活性を有するポリペプチドをエンコードするもの。」

第2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された,本願優先日前に頒布された刊行物である国際公開第00/56762号(以下,「引用例」という。)には,
「別の好ましい態様として,ESTは,Trichoderma reeseiから得られる。別のより好ましい態様として,ESTは,Trichoderma reesei株RutC-30(Montenecourt and Eveleigh, 1979, Adv.Chem.Ser. 181:289-301)から得られる。別の最も好ましい態様として,ESTは,配列番号7402-7860,配列番号7402-7860の核酸フラグメント,又は配列番号7402-7860の配列との相同性が少なくとも95%,好ましくは少なくとも99%,そして最も好ましくは少なくとも99.9%の核酸配列からなる群から選ばれる。」(6頁26?32行)と記載され,
326頁の表に,配列番号7458の配列がsptremblデータベースのO93784のデータにより,ベータグルコシダーゼとアノテーションされたことが記載され,
2654頁に配列番号7458の配列が,
cattcccctc ggcggcaggc tggatcccgt caacgaggag ggaattgagt tttacagcaa 60
actgattgac gccctgttga ggcggggtat cacgccttgg gtgactttgt accactggga120
tctgcctcag gcgcttcacg atcgctatgg aggctggctc aacgtggaag aggtccagct180
ggactttgag cggtatgcga ggttgtgctt tgaacgtttt ggggaccgag tccagaactg240
gatcaccatc aacgaaccct ggattcaggc catctatgga tatgccaccg gcagcaacgc300
cccgggcagg agcagcatta acaagcactc caccgagggc aacactgcca ctgagccgtg360
gctcgctgga aaggcccaga tcatgagcca tgcccgcgcc gtggccgtct acagcaggga420
ctttcgcccc tcgcaaaagg gccagatcgg catctcgctc aacggcgact actatgagcc480
ctgggacagc aatgagcctc gggacaagga ggctgctgag cgacggatgg aatttcacat540
tggctggttt gccaatccca tcttcttgaa gaaggactat tcnagaaagc atgaagaagc600
aacttggggc gagaggcttt caacccttac ttcccgcgga cttttgccat ccttnaatgc660
cggagagaac cgactttcta ccgggcatgg aaattaccta ccccaatccc cagnttcgcc720
gccgcccaan cttaa 735
と記載されている。

第3 対比
本願の配列番号3の配列は,引用例の配列番号7458の配列と比較すると,96%の相同性を有する部分を含み,この96%の相同性を有する部分のうちの3’側においては相同性が低い部分があるものの,5’側の相同性は99%を越える部分があるから,引用例に記載された配列番号7458のESTは,高ストリンジェンシーな条件下で,本願の配列番号3の配列にハイブリダイズする核酸配列といえる。
そこで,本願発明のうち,(h)を選択した場合の発明と,引用例に記載された配列番号7458のESTの発明を比較すると,両者は,高ストリンジェンシーな条件下で本願の配列番号3として表す配列にハイブリダイズする核酸配列またはその相補的または断片配列である単離ポリヌクレオチドである点で一致しているものの,本願発明においては,単離ポリヌクレオチドがβ-グルコシダーゼの生物学的活性を有するポリペプチドをエンコードするものであるのに対し,引用例に記載された配列番号7458のESTがエンコードするポリペプチドがβ-グルコシダーゼの生物学的活性を有するか明らかでない点で相違している。

第4 判断
糸状菌のβ-グルコシダーゼに興味のある当業者であれば,当然に引用例の配列番号7458のESTに興味を持つものである。そして,引用例には,該ESTを,sptremblデータベースのO93784のデータにより,ベータグルコシダーゼとアノテーションしたことが記載されており,引用例の配列番号7458の配列とO93784のデータをアライメントすると,引用例の配列番号7458の配列は,5’側も3’側も欠けている可能性が高いことに容易に気付くことから,当業者であれば,全長のcDNAを得てみようとするものであり,そのとき,引用例の配列番号7458の配列を利用してプローブやプライマーを作成し,慣用の遺伝子工学の手法により,容易に全長のcDNAを得ることができ,本願の発明のごとくすることができる。
そして,本願の明細書の記載を見ても,配列番号3の配列のポリヌクレオチドにエンコードされているポリペプチドが,β-グルコシダーゼの生物学的活性を有するかどうかも明らかにされておらず,本願発明の単離ポリヌクレオチドが格別顕著な効果を有するものとも認められない。

なお,請求人は,酵素間でアミノ酸配列の一致度が50%程度である場合に,その酵素間の構造が相違し,それらの機能も相違することは一般的に明らかで,当業者が容易になしえたものとする拒絶理由は不当であることを主張しているが,引用例に記載される配列番号7458の配列を利用して,当業者が容易に取得できる全長のcDNAにエンコードされるアミノ酸配列との一致度が低いわけもなく,請求人の主張は採用できるものでない。

第5 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,本出願に係る他の請求項について検討するまでもなく,本出願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-20 
結審通知日 2012-01-24 
審決日 2012-02-06 
出願番号 特願2003-552921(P2003-552921)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横田 倫子  
特許庁審判長 平田 和男
特許庁審判官 冨永 みどり
伏見 邦彦
発明の名称 bgl5β-グルコシダーゼ及びそれをエンコードする核酸  
代理人 山崎 行造  

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