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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1259043
審判番号 不服2010-24184  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-27 
確定日 2012-06-20 
事件の表示 特願2003-533325号「複数のボンド・パッド列を備えた半導体」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月10日国際公開、WO03/30225、平成17年10月27日国内公表、特表2005-532672号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成14年9月12日(パリ条約による優先権主張2001年9月28日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成22年6月24日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年10月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2.原査定
原査定における拒絶の理由は,以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開平8-340018号公報
2.東独国経済特許第272945号明細書(DD 272945 A1)
3.特開2000-307057号公報
上記刊行物のうち,特開平8-340018号公報を,以下「引用例1」といい,特開2000-307057号公報を,以下「引用例2」という。

第3.平成22年10月27日付け手続補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年10月27日付け手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は,平成22年3月17日付けで補正された特許請求の範囲をさらに補正するもので,請求項1については,補正前に
「少なくとも1つの辺に複数のボンド・パッド列を有するダイであって,該複数のボンド・パッド列はダイのエッジまでの距離が異なり,同ダイのエッジにそれぞれ平行に整列している,ダイと,
同ダイをサポートするためのダイ・キャリアであって,同ダイ・キャリアの上には,同一平面上に複数のボンド・フィンガを有する複数のボンド・フィンガ列が該ダイの周縁に分散し,その第1の列が該ダイ・キャリアの内部領域に配置され,第2の列が該ダイ・キャリアの外部領域に配置されたダイ・キャリアと,
それぞれ該ボンド・パッドのうちの所定の1つを該複数のボンド・フィンガのうちの所定の1つに接続する複数のボンド・ワイヤと,
からなり,
前記ダイ上の複数のボンド・パッド列のうちの第1のボンド・パッド列のボンド・パッドと第2のボンド・パッド列のボンド・パッドとは,前記ダイのエッジに対して直角をなす軸を介して,各々の所定のボンド・パッドと整列したボンド・パッドを有することと,
第1のボンド・パッド列のボンド・パッドと第1のボンド・フィンガ列のボンド・フィンガとを結合し,第2のボンド・パッド列のボンド・パッドと第2のボンド・フィンガ列のボンド・フィンガとを結合すべく,異なるワイヤ・ボンディング工程を使用する結果,ループ高さが異なることと,
該第1のボンド・パッドはリバース・スティッチのボンド・プロファイルを有し,該第2のボンド・パッドはボール・ボンド・プロファイルを有すること,
からなる半導体パッケージ。」
とあるのを

「ダイキャリア(14,106)と,前記ダイキャリア(14,106)によってサポートされた半導体ダイ(12,104)とを有する半導体パッケージ(10,100)であって,
前記半導体ダイ(12,104)の頂部表面であるダイ頂部表面(40)には,前記半導体ダイ(12,104)の一辺のダイエッジ(21)に並列に並べられた複数の第1ボンドパッド(34)からなる第1ボンドパッド列(16)と,前記第1ボンドパッド列(16)よりも前記ダイエッジ(21)から離れて前記ダイエッジ(21)に並列に並べられた複数の第2ボンドパッド(32)からなる第2ボンドパッド列(18)とが配置され,前記第1ボンドパッド(34)と前記第2ボンドパッド(32)は,前記ダイエッジ(21)に対して直角をなす軸に整列し,
前記ダイキャリア(14,106)の頂部表面であるダイキャリア頂部表面(42)の内部領域には,前記半導体ダイ(12,104)の周縁に分散する複数の第1ボンドフィンガ(36)が配置され,前記ダイキャリア頂部表面(42)の外部領域には,前記半導体ダイ(12,104)の周縁に分散する複数の第2ボンドフィンガ(38)が前記第1ボンドフィンガ(36)と同一平面上であるように配置され,前記ダイキャリア頂部表面(42)において前記半導体ダイ(12,104)と前記第1ボンドフィンガ(36)の間には,前記半導体ダイ(12,104)を取り囲む導電リング(22,24)が配置され,
それぞれ前記第1ボンドパッド(34)に形成された第1ボールは,前記導電リング(22,24)に形成された第2ボールにリバースステッチのボンドプロファイルを有するようにボールボンディングされる第1ボンドワイヤ(42)によって前記第2ボールに電気接続され,
それぞれ前記第2ボンドパッド(32)に形成された第3ボールは,前記第1ボンドワイヤ(42)とは異なるボンドプロファイルを有するように前記第1ボンドフィンガ(36)にウェッジボンディングされる第2ボンドワイヤによって前記第1ボンドフィンガ(36)に電気接続され,
前記第1ボンドワイヤ(42)のループ高さである第1ループ高さは,前記第1ボールの最高点と同じ高さに形成され,
前記第2ボンドワイヤ(44)のワイヤボンディング工程が,前記第1ボンドワイヤ(42)のワイヤボンディング工程とは異なるものを使用する結果,前記第2ボンドワイヤのループ高さである第2ループ高さは,前記第1ループ高さよりも大きく,
前記第3ボールから延びる前記第2ボンドワイヤの部分は,前記ダイ頂部表面(40)に対して傾き,
前記第2ボンドワイヤの前記ダイ頂部表面(40)に平行な部分は,前記導電リング(22,24)の幅よりも長く延びるように形成される
ことを特徴とする,半導体パッケージ(10,100)。」
と補正するものである。

2.本件補正の目的
本件補正により,請求項1に係る発明には本件補正前には特定されていなかった「導電リング」が付加され,第1のボンド・パッドに関し,本件補正前において,「第1のボンド・パッド列のボンド・パッドと第1のボンド・フィンガ列のボンド・フィンガとを結合し」ていたものが,本件補正後においては,「それぞれ前記第1ボンドパッド(34)に形成された第1ボールは,前記導電リング(22,24)に形成された第2ボールにリバースステッチのボンドプロファイルを有するようにボールボンディングされる第1ボンドワイヤ(42)によって前記第2ボールに電気接続され」るものに変更された。そして,この補正事項は,第1のボンド・パッド列のボンド・パッドの結合対象を,第1のボンド・フィンガ列のボンド・フィンガから導電リングに変更するものであり,発明特定事項を限定するものではない。
また,第2のボンド・パッドに関し,本件補正前において,「第2のボンド・パッド列のボンド・パッドと第2のボンド・フィンガ列のボンド・フィンガとを結合」していたものが,本件補正後においては,「それぞれ前記第2ボンドパッド(32)に形成された第3ボールは,前記第1ボンドワイヤ(42)とは異なるボンドプロファイルを有するように前記第1ボンドフィンガ(36)にウェッジボンディングされる第2ボンドワイヤによって前記第1ボンドフィンガ(36)に電気接続され」るものに変更された。この補正事項は,第2のボンド・パッド列のボンド・パッドの結合対象を,第2のボンド・フィンガ列のボンド・フィンガから第1ボンドフィンガに変更するものであり,発明特定事項を限定するものではない。
さらに,第2のボンド・パッドに関し,本件補正により,「第2のボンド・パッドはボール・ボンド・プロファイルを有する」という発明特定事項の限定が削除されている。

したがって,請求項1の補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく,また,誤記の訂正や明りょうでない記載の釈明を目的とするものではないことは明らかである。

3.むすび
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159号第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第4.本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成22年3月17日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下「本願発明」という。「第3」の「1.本件補正の概要」参照。)。

第5.引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用例1には,ワイヤボンディング方法及び半導体装置に関し,図面とともに次の事項が記載されている。
1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はワイヤボンディング方法及び半導体装置及びワイヤボンディング用キャピラリー及びボールバンプの形成方法に関する。一般に,半導体装置に設けられる半導体素子は,ワイヤにより外部接続端子となるリードに電気的に接続された構成とされている。このワイヤは,ワイヤボンディング装置を用いて半導体素子に形成された電極パッドとリードのインナーリード部との間に配設される。」
1b)「【0011】上記のように,従来において最も一般的に行われているワイヤボンディング方法では,1stボンディングにおいてボールボンディングを行い,また2ndボンディングにおいてステッチボンディングを行うことにより,図22に示されるように,ワイヤ1を半導体素子2の電極パッド2aとリードフレーム3のインナーリード部3aとの間に配設する方法が採用されていた(尚,上記したワイヤ1の接続方法を,以下順打ちボンデイングという)。」
1c)「【0072】更に,本実施例に係るワイヤボンディング方法を用いることにより,ワイヤ16のループを低背化することができる。これについて図7を用いて説明する。図7は,本実施例に係るワイヤボンディング方法を用いて配設されたワイヤ16と,従来のワイヤボンディング方法(順打ちボンディング)を用いて配設されたワイヤ1とを比較するために同一図面に記載したものである。
【0073】従来の順打ちボンディングを用いて配設されたワイヤ1は,同図に示されるように半導体素子10の上面より高く延出したループ形状を有している。これに対し,本実施例に係るワイヤボンディング方法により配設されたワイヤ16は,先ずインナーリード部13にワイヤ16を接続し,続いてワイヤ16を略L字状のループ形状で引出し電極パッド11に接続する,いわゆる逆打ちボンディングによりワイヤ16を配設している。このため,ワイヤ16のループを低くすることができる。
【0074】また,本実施例に係るワイヤボンディング方法では,逆打ちボンディングと同様の工程によりワイヤ16を配設するが,上記したように第2のボール部18はスパーク電極15を用いてワイヤ16にアーク放電により直接形成されるため,少ない工程で逆打ちボンディングと同様の低いループ形状でワイヤ16を配設しすることが可能となる。」
1d)「【0078】図9は本発明に係るワイヤボンディング方法の変形例を示している。同図では,上記した本発明に係るワイヤボンディング方法を第1のワイヤ16と第2のワイヤ24を上下方向に離間させた状態で重ねた状態で配設するワイヤ接続構造に適用した例を示している。
【0079】近年,半導体素子の高密度化に伴う電極パッド数の増大に伴い,図9に示されるように半導体素子10上に2列となるよう電極パッド11,25を配設した構造のものが提供されている(平面的に見ると,この電極パッド11,25は直線状に2列或いは千鳥状となるよう2列に配設される場合が多い)。
【0080】この種の半導体素子10においては,各パッド11,25から2本のワイヤ16,24を引き出す必要があり,従って第1のワイヤ16及び第2のワイヤ24を上下方向に離間させた状態で重ねた状態で配設するワイヤ接続構造を取る必要がある。
【0081】図9に示す例では,半導体素子10はベース基板27に設けられたダイボンディング層28上に搭載されている。また,ベース基板27は,上部より第1の配線層29,第1の絶縁層30,第2の配線層30,第2の絶縁層32をベース材33に積層配設した積層基板とされている。電極パッド11は第1のワイヤ16により第2の配線層30と電気的に接続され,また電極パッド25は第2のワイヤ24により第1の配線層29と電気的に接続された構成とされている。
【0082】上記構成において,第1のワイヤ16は本発明に係るワイヤボンディング方法により配設されており,また第2のワイヤ24は従来の順打ちボンディングにより配設されている。上記したように,本発明に係るワイヤボンディング方法により配設される第1のワイヤ16は,順打ちボンディングにより配設される第2のワイヤ24のループ高さに比べてそのループ高さが低いため,第1及び第2のワイヤ16,24が上下方向を重ねた状態で配設しても,各ワイヤ16,24が干渉し短絡してしまうことを確実に防止することができる。
【0083】また,従来においては順打ちボンディングにより配設されたループ高さの高いワイヤの上部に,更に離間させてワイヤを配設する必要があったため,全体としてのループ高さは非常に高いものであった。しかるに,第1のワイヤ16の配設に本発明に係るワイヤボンディング方法を採用することにより,各ワイヤ16,24全体としてのループ高さを低くすることができる。」
1e)図9を参照すると,第1の配線層29の第2ワイヤ24と接続する部分はベース基板の外部領域に配置され,第2の配線層31の第1ワイヤ16と接続する部分はベース基板の内部領域に配置されていることが看取できる。
1f)図9を参照すると,電極パッド25に第3のボール部26が設けられていることが看取できる。

上記記載事項1a?1f及び図面の記載によれば,引用例1には以下の発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。)。
「半導体素子10であって,半導体素子10上に2列となるよう電極パッド11,25を配設した構造であり,平面的に見ると,前記電極パッド11と電極パッド25は直線状に2列となるように配設される半導体素子10と,
前記半導体素子10が搭載されるベース基板27であって,上部より,第1の配線層29,第1の絶縁層30,第2の配線層31,第2の絶縁層32をベース材33に積層配設した積層基板とされているベース基板27と,
前記電極パッド11と前記第2の配線層31を電気的に接続する第1のワイヤ16及び前記電極パッド25と前記第1の配線層29を電気的に接続する第2のワイヤ24と,からなり,
第1の配線層29の第2ワイヤ24と接続する部分はベース基板の外部領域に配置され,第2の配線層31の第1ワイヤ16と接続する部分はベース基板の内部領域に配置されており,
前記第1のワイヤ16を逆打ちボンディングにより配設し,第2のワイヤ24を順打ちボンディングにより配設することにより,第1のワイヤ16は,第2のワイヤ24のループ高さに比べてそのループ高さが低くされ,
前記電極パッド25には第3のボール部26が設けられている
半導体装置。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用例2には,半導体装置に関し,図面とともに次の事項が記載されている。
2a)「【0062】図1では,半導体チップ1,2,3と基板4との接続はすべてリバース法で行われている。すなわち,第一に,金のワイヤをキャピラリに通し,ワイヤ先端をトーチで溶融して金ボールを形成し,半導体チップ1のボンディングパッドに金ボールを圧着し,金ボールの付け根でワイヤを切断して,金バンプ5′を形成する。第二に,同様にワイヤを溶融して形成した金ボール5を基板4のボンディングパッドに圧着してファースト・ボンディングを行う。第三に,半導体チップ1のボンディングパッドへ金線を導き,ボンディングパッド上の金バンプ5′にセカンド・ボンディングを行うことによって,半導体チップ1と基板4とを接続するワイヤ6を形成する。つづいて,半導体チップ1と同様の手順で,半導体チップ2と基板4とを接続するワイヤ6を形成し,最後に同様の手順で,半導体チップ3と基板4とを接続するワイヤ6を形成する。
【0063】リバース法は,ワイヤ長Lbが長くなってもフォワード法よりもワイヤ高Lhを低く抑えて安定したボンディングができるとともに,ファースト・ボンディング部からほぼ垂直にワイヤ6が立ち上がることから,ワイヤ6同士の間のクリアランスが確保し易い。」

第6.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「半導体素子10」,「電極パッド11」,「電極パッド25」,「ベース基板27」,「第1のワイヤ16及び第2のワイヤ24」,「半導体装置」は,それぞれ本願発明の「ダイ」,「第1のボンド・パッド列のボンドパッド」,「第2のボンド・パッド列のボンドパッド」,「ダイ・キャリア」,「ボンド・ワイヤ」,「半導体パッケージ」に相当する。
引用発明において,電極パッド11と電極パッド25は,直線状に2列となるように配設されているが,ダイに複数のボンド・パッド列を配設する場合に,複数のボンド・パッド列を,ダイのエッジまでの距離が異なるように,ダイのエッジに平行に整列させることが技術常識であること(例えば,東独国経済特許第272945号明細書(DD 272945 A1)(原査定で引用した文献)の図1に示されたチップボンディングパッド4,特開平9-27512号公報の図5(b)に示された電極2a?2c,特開2001-244293号公報の図3に示された電極181,183参照。)を考慮すれば,電極パッド11と電極パッド25が,半導体素子のエッジまでの距離が異なり,半導体素子のエッジにそれぞれ平行に整列していることは明らかである。したがって,引用発明は,本願発明における「少なくとも1つの辺に複数のボンド・パッド列を有するダイであって,該複数のボンド・パッド列はダイのエッジまでの距離が異なり,同ダイのエッジにそれぞれ平行に整列している,ダイ」との要件を実質的に備えているといえる。また,引用例1の上記記載事項1dにおける「平面的に見ると,この電極パッド11,25は直線状に2列或いは千鳥状となるよう2列に配設される場合が多い」との記載,及び,複数列のボンド・パッドをダイのエッジに平行に整列して配設する際に,各列を構成する個々のボンド・パッドを,千鳥状ではなく,ダイのエッジに対して直角をなす軸を介して整列して配設することが従来から行われていること(例えば,東独国経済特許第272945号明細書(DD 272945 A1)(原査定で引用した文献)の図1に示されたチップボンディングパッド4,特開平9-27512号公報の図5(b)に示された電極2a?2c参照。)を考慮すれば,引用発明は,本願発明における「ダイ上の複数のボンド・パッド列のうちの第1のボンド・パッド列のボンド・パッドと第2のボンド・パッド列のボンド・パッドとは,ダイのエッジに対して直角をなす軸を介して,各々の所定のボンド・パッドと整列したボンド・パッドを有する」との要件を備える。
一般に,ダイに設けられた複数のボンド・パッド列の個々のボンド・パッドは,ダイ・キャリアに設けられた対応する1つのボンド・フィンガにワイヤを介して接続され,複数のボンド・フィンガは列をなして配設されるところ(例えば,東独国経済特許第272945号明細書(DD 272945 A1)(原査定で引用した文献)の図1に示されたキャリアボンディングパッド6,特開2001-244293号公報の図4に示された電極81,83参照。),引用発明において,第1の配線層29及び第2の配線層31は,2列に配設された電極パッド25,11にそれぞれ接続されるのであるから,該第1の配線層29の第2ワイヤ24と接続する部分及び第2の配線層31の第1ワイヤ16と接続する部分は,それぞれ複数のボンド・フィンガの列として構成されていることは明らかである。そうすると,引用発明は,本願発明における「複数のボンド・フィンガを有する複数のボンド・フィンガ列が該ダイの周縁に分散し,その第1の列が該ダイ・キャリアの内部領域に配置され,第2の列が該ダイ・キャリアの外部領域に配置されたダイ・キャリア」との要件を実質的に備えているといえる。
引用発明において,第2のワイヤ24は順打ちボンディングにより配設され,電極パッド25には第3のボール部26が設けられているから,引用発明は,本願発明の「第2のボンド・パッドはボール・ボンド・プロファイルを有する」との要件を備える。

以上のことから,本願発明と引用発明は,本願発明の表記にしたがえば,
「少なくとも1つの辺に複数のボンド・パッド列を有するダイであって,該複数のボンド・パッド列はダイのエッジまでの距離が異なり,同ダイのエッジにそれぞれ平行に整列している,ダイと,
同ダイをサポートするためのダイ・キャリアであって,同ダイ・キャリアの上には,複数のボンド・フィンガを有する複数のボンド・フィンガ列が該ダイの周縁に分散し,その第1の列が該ダイ・キャリアの内部領域に配置され,第2の列が該ダイ・キャリアの外部領域に配置されたダイ・キャリアと,
それぞれ該ボンド・パッドのうちの所定の1つを該複数のボンド・フィンガのうちの所定の1つに接続する複数のボンド・ワイヤと,
からなり,
前記ダイ上の複数のボンド・パッド列のうちの第1のボンド・パッド列のボンド・パッドと第2のボンド・パッド列のボンド・パッドとは,前記ダイのエッジに対して直角をなす軸を介して,各々の所定のボンド・パッドと整列したボンド・パッドを有することと,
第1のボンド・パッド列のボンド・パッドと第1のボンド・フィンガ列のボンド・フィンガとを結合し,第2のボンド・パッド列のボンド・パッドと第2のボンド・フィンガ列のボンド・フィンガとを結合すべく,異なるワイヤ・ボンディング工程を使用する結果,ループ高さが異なることと,
該第2のボンド・パッドはボール・ボンド・プロファイルを有すること,
からなる半導体パッケージ。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明は,複数のボンド・フィンガ列が同一平面上に有するのに対して,引用発明は,複数のボンド・フィンガ列が同一平面上に有する構成とはなっていない点。

[相違点2]
本願発明は,第1のボンド・パッドはリバース・スティッチのボンド・プロファイルを有するのに対して,引用発明は,第1のボンド・パッドに接続されるボンド・ワイヤは逆打ちボンディングにより配設されるが,第1のボンド・パッドがリバース・スティッチのボンド・プロファイルを有するか否か不明な点。

相違点1について検討する。
半導体装置の分野において,ダイ・キャリアの内部領域と外部領域にそれぞれ配置されるボンド・フィンガ列を同一平面上に配置することは,例えば,東独国経済特許第272945号明細書(DD 272945 A1)(原査定で引用した文献)の図1,2,特開2001-244293号公報の段落【0021】?【0033】,図2,3,特開平9-27512号公報の段落【0017】,図6?9に記載されているように周知技術である。
したがって,引用発明において上記周知技術を採用し,複数のボンド・フィンガ列が同一平面上に有するように構成して上記相違点1に係る構成とすることは,当業者であれば容易になし得たことである。

相違点2について検討する。
引用例2には,半導体装置のワイヤボンディング方法として,第一に,ワイヤをキャピラリに通し,ワイヤ先端を溶融してボールを形成し,半導体チップのボンディングパッドにボールを圧着し,ボールの付け根でワイヤを切断して,バンプを形成し,第二に,同様にワイヤを溶融して形成したボールを基板のボンディングパッドに圧着してファースト・ボンディングを行い,第三に,半導体チップのボンディングパッドへワイヤを導き,ボンディングパッド上のバンプにセカンド・ボンディングを行うことによって,半導体チップと基板とを接続するワイヤを形成するリバース法が記載されており,前記リバース法を採用することにより,ワイヤ高を低く抑えることができることが記載されている。
してみると,引用発明において,ループ高さが低くなるように配設される第1のワイヤのワイヤボンディング方法として,引用例2に記載されたリバース法を採用し,第1のボンド・パッドがリバース・スティッチのボンド・プロファイルを有するように構成して上記相違点2に係る構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして,本願発明により得られる作用効果も,引用発明,引用例2の記載事項及び周知技術から当業者であれば予測できる程度のものであって,格別のものとはいえない。

以上のことから,本願発明は,引用発明,引用例2の記載事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例2の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
したがって,原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-18 
結審通知日 2012-01-24 
審決日 2012-02-06 
出願番号 特願2003-533325(P2003-533325)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 園子  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 杉浦 貴之
小関 峰夫
発明の名称 複数のボンド・パッド列を備えた半導体  
代理人 池上 美穂  
代理人 本田 淳  

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