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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1259275
審判番号 不服2010-1245  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-20 
確定日 2012-06-28 
事件の表示 特願2003-407408「携帯型電話装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月23日出願公開、特開2005-167909〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年12月5日の出願であって、原審において平成21年10月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成22年1月20日に審判請求がなされたものであり、
当審において、平成24年1月27日付けで拒絶理由が通知され、これに対し同年4月2日に意見書および手続補正書が提出されたものである。


2.本願発明
本件出願の請求項に係る発明は、平成24年4月2日に補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下「本願発明」という。)

(本願発明)
「 【請求項1】
テレビ放送視聴機能を備えた携帯型電話装置において、
テレビ放送視聴モードの画像及び待ち受け画面を表示している電話モードの画像を表示する表示装置と、
テレビ放送視聴モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報と電話モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報が格納される記憶手段と、
テレビ放送視聴モードでは前記テレビ放送視聴モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報を前記記憶手段から読み出して前記表示装置の表示の設定を行う一方、
電話モードでは前記電話モードにおける表示装置の表示に関する設定情報を前記記憶手段から読み出して前記表示装置の表示の設定を行う制御手段と、
を備えており、
待ち受け画面を表示している電話モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報については時間経過で画面輝度を低下させる低輝度設定情報を持たせる一方でテレビ放送視聴モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報については前記低輝度設定情報を持たない設定が行えるようにしてあり、
前記テレビ放送視聴モードで前記表示装置が所定輝度を維持している状態から前記待ち受け画面を表示している電話モードになるときには当該電話モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報に基づいて時間経過で画面輝度を低下させることを特徴とする携帯電話装置。」

なお、見やすさのため、当審において適宜改行を挿入した。


3.引用例に記載された発明

当審で通知した拒絶理由に引用した、特開2002-94656号公報(以下、「引用例」という。)には、「無線通信端末」として、図面とともに以下の記載がある。

イ.「【請求項1】 外部機器との間で各種データを送受信する複数の通信モードを有する無線通信端末において、
データの送受信を行う送受信手段と、
ユーザがデータを入力するための入力手段と、
前記送受信手段が受信したデータ及び前記ユーザによって入力されたデータを表示する表示手段と、
前記入力手段に対応した照明系統と前記表示手段に対応した照明系統とを有し、当該入力手段及び当該表示手段を照明する照明手段と、
動作中の通信モードを認識し、当該モードに応じて前記各照明系統を制御して、前記入力手段に対する照明の輝度と前記表示手段に対する照明の輝度とを別個に調整する制御手段とを具備したことを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】(・・・中略・・・)
【請求項3】 前記通信モードは、音声データのみを送受信する音声通話モードを少なくとも有し、
前記制御手段は、前記送受信手段による受信又は前記入力手段による入力を検出すると前記各照明系統を制御して前記入力手段及び前記表示手段に対する照明をともに点灯し、その後所定時間が経過した時点で動作中の通信モードが前記音声通話モードか否かを判定し、当該各照明系統を制御して、当該音声通話モードの場合は当該入力手段及び当該表示手段に対する照明をともに消灯し、当該音声通話以外の場合は当該入力手段に対する照明のみを減光又は消灯することを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。」(2頁1欄)

ロ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、照明装置を内蔵した無線通信端末に係り、特に動作中の通信モードに応じて端末上の照明対象となる部位を変更する無線通信端末に関する。
【0002】
【従来の技術】図6に示すように、携帯電話等の無線通信端末601は、一般にディスプレイからなる表示部602やテンキー等からなる操作部603等、端末自体を照明するための照明装置を内蔵している。従来、無線通信端末においては、消費電力を低減するために、この照明装置を予め定めたタイミングで一括して点灯し消灯する照明制御方法が採用されていた。しかしながら、この予め定めたタイミングでの一括消灯により、ユーザにとっては不適切なタイミングであるにも拘らず、無線通信端末の現行の使用に必要な照明までもが消灯されてしまうという不具合が生じていた。
【0003】これに対し、特開平10-200615では、この一括消灯をより適切なタイミングで行うための技術が開示されている。これは液晶ディスプレイ(LED)のバックライトを電話機の使用状況に応じて一括消灯するものであり、これによりデバイスの延命とユーザの照明切替の負担軽減が図られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来の無線通信端末においては、使用状況に応じた照明のON/OFF制御は行われていたが、表示部や操作部といった端末上の照明対象となる各部位については照明制御の上で全く考慮されておらず、全部位に対し一律な照明制御が行われていた。しかしながら、近年、無線通信端末は更に多種多様な機能を持つようになり、一層の消費電力の低減が望まれていた。
【0005】本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、無線通信端末において照明対象となる各部位の使用上の特性を考慮し、動作中の通信モードに応じた適切なタイミングで当該各部位の照明輝度を個別に調整することにより、ユーザの利便性を維持したままで消費電力を低減する無線通信端末を提供することを目的とする。」(2頁1?2欄)

ハ.「【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明を適用した一実施形態である無線通信端末の構成を示すブロック図である。この無線通信端末は、無線部101、制御部102、入出力部103、及び電源部104から構成される。
【0015】無線部101は、アンテナ105、送信部106、受信部107、デュプレクサ108、シンセサイザ109を有する。基地局等の外部機器から発信された無線信号はアンテナ105で受信され、この受信信号はデュプレクサ108と受信部107を経由してベースバンド処理部110で信号処理される。逆に、送信信号は、ベースバンド処理部110から送信部106とデュプレクサ108を経由してアンテナ105より送信される。シンセサイザ109はベースバンド処理部110により制御され、送受信時のチャネルの切替を行う。
【0016】制御部102は、無線通信端末全体の制御を司るベースバンド処理部110、メインメモリであるRAM111、無線通信端末の動作に関する各種制御プログラムを格納するROM112を有する。RAM111には特定のプログラムの動作状況、即ち動作又は非動作を示すフラグを複数格納するフラグ領域113が設けられている。ベースバンド処理部110は、無線通信端末の制御過程においてこれら特定プログラムの動作を開始/終了する際に、対応するフラグについてそれぞれ設定/解除を行う。
【0017】これにより、無線通信端末において動作中の通信モード、例えば音声通話、動画像通信、メール、ブラウジング、テレビ電話等を記憶可能となる。尚、フラグ領域はベースバンド処理部110内のRAM領域に設けても良い。
【0018】入出力部103は、表示部114、表示制御部115、動画処理部116、照明部117、照明制御部118、操作部119、スピーカー120、マイク121、及び音声制御部122を有する。
【0019】表示部114は例えば液晶ディスプレイ(LCD)からなり、表示制御部115により制御され、無線部101が受信したデータやユーザが操作部119から入力したデータ、コマンド等を表示する。動画処理部116は、受信したMPEG4形式等の動画像データをデコードして表示制御部115に供給する。照明部117は例えば複数の発光ダイオード(LED)を有し、照明制御部118により制御され、一部は表示部114のバックライトとして機能し、また一部は操作部119のキーパッド等を内側から照明する。ユーザは操作部119により、送信データや無線通信端末に対するコマンドを入力する。
【0020】受信した相手方の音声を出力するスピーカー120とユーザが音声を入力するマイク121は音声制御部122により制御される。尚、入出力部103は、ユーザが映像を入力するためのカメラ、相手方からの着信を報知するためのバイブレータやサウンダ等を更に備えても良い。
【0021】電源部104は、電池123、電源充電部124を有し、携帯端末の各部へ電力を供給する。
【0022】図2は、本実施形態に係る無線通信端末の照明制御に関する制御部102内の動作を示す機能ブロック図である。ベースバンド処理部110は、検出部201、コントローラ202、及びタイマ203を有する。
【0023】検出部201は、受信部107での着信や操作部119でのユーザによる操作を検出して、その旨をコントローラ202に伝える。コントローラ202は、これを受けて時間管理のためのタイマ203を操作するとともに、フラグ112を参照して動作中の通信モードを認識し、照明制御部118に対し当該モードに応じた照明部117の制御情報を供給する。この通信モードと制御情報との関係はテーブル化してROM114内に格納しておいても良い。」(3頁3欄?4頁5欄)

ニ.「【0027】図4は、本実施形態に係る無線通信端末の照明制御機構の動作を示すフローチャートである。ここでは一例として、無線通信端末上で音声通話と動画像通信の2種類の通信モードが動作するものとする。
【0028】無線通信端末の稼動中、検出部201は、受信部107での着信、或いは操作部119でのユーザによる操作を検出すると、その旨をコントローラ202に伝える(ステップS401)。コントローラ202は、これを受けてタイマ203の値を所定時間tに設定し(ステップS402)、照明制御用トランジスタ301a及び301bをONにして表示部用LED302及び操作部用LED304をともに点灯する(ステップS403)。その後、所定時間tが経過するまでコントローラ202はタイマ値の取得を繰り返し、その間、表示部114、操作部119はともに照明が継続される。
【0029】所定時間tが経過した時点で(ステップS404)、コントローラ202はフラグ領域113を参照して現行通信モードが動画像通信か音声通話かを判定する(ステップS405)。ここで、動画像通信である場合、ユーザにとって表示部114の照明は必要であるが操作部119の照明は不要であるため、コントローラ202は照明用トランジスタ301bのみOFFにして操作部用LED304を消灯する(ステップS406)。その後、当該通信が完了した時点で(ステップS407)、コントローラ202は照明用トランジスタ301aもOFFにして表示部用LED302の照明も消灯する(ステップS408)。
【0030】一方、ステップS405で現行通信モードが音声通話である場合、ユーザにとって表示部114、操作部119ともに照明は不要であるため、照明用トランジスタ301a及び301bをOFFにして表示部用LED302及び操作部用LED304をともに消灯する(ステップS409)。
【0031】着信時や操作開始時といった照明が不可欠な時点では所定時間だけ表示部114と操作部119をともに照明し、その後、動画像通信のように表示部114のみの照明で良い場合には操作部119の照明を消灯し、或いは、音声通話のように特に照明を必要としない場合には表示部114、操作部119ともに消灯することにより、ユーザの利便性を維持したままで消費電力の低減、延いてはデバイスの延命化が可能となる。
【0032】尚、ここではステップS405において、動画像通信か音声通信かを判定したが、動画像通信は、表示画面119上に表示された動画を暫くの間ユーザが眺める時間が必要であることを特徴とするものであり、他にもメール、ブラウジング、テレビ電話等の通信モードにおいて同様である。
【0033】また、通話モードに応じて消灯までのタイマ値を異ならせる技術を組合せて、一層利便性の高いものとすることが可能である。例えば、音声通話の場合は照明の必要が無いため消灯までのタイマ値を小さめに設定し、メール受信の場合は表示内容を読む必要があるためタイマ値を大きめに設定すること等が考えられる。」(4頁5?6欄)

ホ.「【0037】更に、図5では、ベースバンド部110と照明制御部118の間にPWM(Pulse Width Modulator)506が設けられている。LED等の発光素子はパルス駆動させることにより明るさの調整が可能である。PWM506は、各照明制御用トランジスタ501に対しコントローラ202からの制御情報に基づいてPWM信号を生成・供給し、表示部用LED502及び操作部用LED504の各部位毎に照明の輝度調整を行う。
【0038】これにより、通信モードに応じて重要度の高い部位を明るくし、そうでなければ減光すること等も可能となり、より高い操作性を実現することができる。また、PWM506を用いずとも、通信モードに応じて特定のLEDの使用を間引くことでも同様の効果を得ることができる。
【0039】尚、上述の通信モードと各部位の照明輝度との関係はROM114内に格納しておいても良い。また、本実施形態における照明用素子はLEDに限られるものでなく、各種発光素子を適用可能である。」(5頁7欄)


上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
まず、上記引用例記載の「無線通信端末」は、上記ロ.【0002】、図6にあるように「携帯電話」であり、
上記イ.【請求項1】、ハ.【0017】にあるように、動作可能な「複数の通信モード」として、「例えば音声通話、動画像通信、メール、ブラウジング、テレビ電話等」の機能を有するものであるから、『例えば音声通話、動画像通信、メール、ブラウジング、テレビ電話等の複数の通信モードを備えた携帯電話』である。

また、上記引用例記載の「無線通信端末」(携帯電話)は、上記イ.【請求項1】にあるように、「表示手段」と「当該表示手段を照明する照明手段」を有するものであり、
この「表示手段」(引用例図1の「表示部114」)の画面には、前記「複数の通信モード」に応じた「画像」が表示されることは技術常識から明らかであり、
前記「照明手段」(引用例図1の「照明部117」)と併せて、全体として『複数の通信モードに応じ表示部の画面に画像を表示する表示装置』ということができる。

また、引用例記載の「無線通信端末」(携帯電話)は、上記イ.【請求項1】にあるように、「前記表示手段に対する照明の輝度」を調整する「制御手段」(引用例図1、2の「制御部102」)も有するものであって、
上記ハ.【0018】、【0019】、図1、図2をも参照すれば該「制御部102」は、「表示制御部115」、「照明制御部118」などとともに全体として『表示装置の表示の制御を行う制御手段』ということができる。

また、上記ハ.【0023】、ホ.【0039】の記載によれば、該『制御手段』による表示装置の制御に必要となる「制御情報」は、前記「複数の通信モード」に応じて複数のものが「テーブル化してROM112内に格納」されているとあり、該「ROM112」は、「Read Only Memory」すなわち『記憶手段』であるから、『複数の通信モードに応じた表示装置の表示に関する制御情報が格納される記憶手段』ということができる。
(当審注:引用例の説明の記載には「ROM114」とあるが、図面および符号の説明などから、「ROM112」の誤記であると判断して、前記のように認定した。)

また、前記『制御手段』による表示装置の制御に際しては、該『記憶手段』(ROM)に格納された制御情報が、その時のそれぞれの通信モードに応じて読み出されて制御がなされるのは、技術常識として明らかであるから、
『それぞれの通信モードでは当該通信モードにおける表示装置の表示に関する制御情報を前記記憶手段から読み出して前記表示装置の表示の制御を行う制御手段』ということができる。

また、上記イ.【請求項3】には、前記通信モードが「音声通話モード」とそれ以外の場合の制御動作の記載があり、
上記ニ.および図4には、「無線通信端末上で音声通話と動画像通信の2種類の通信モードが動作する」場合のフローチャートの例示があって、
「【0031】着信時や操作開始時といった照明が不可欠な時点では所定時間だけ表示部114と操作部119をともに照明し、その後、動画像通信のように表示部114のみの照明で良い場合には操作部119の照明を消灯し、或いは、音声通話のように特に照明を必要としない場合には表示部114、操作部119ともに消灯する」などの記載がある。
これらの記載によれば、前記「制御手段」は、「音声通話モード」においては、着信や操作開始による点灯から所定時間経過後に表示部の照明を消灯し、音声通話以外の場合(例えば「動画像通信モード」)においては、点灯から所定時間経過しても表示部の照明を消灯しない、よう表示制御することが判り、
該所定時間経過を判定する「タイマ203」には「所定時間t」の値(タイマ値)が設定されるものであって、上記ニ.【0033】には「通話モードに応じて消灯までのタイマ値を異ならせる」ことも記載があるから、該「タイマ値」は前記「記憶手段」に格納された「表示装置の表示に関する制御情報」である。
小括すると、前記「制御手段」は、
『音声通話モードにおける表示装置の表示に関する制御情報については、着信や操作開始による点灯から所定時間経過後に表示部の照明を消灯するタイマ値を持たせる一方で、動画像通信モードにおいては点灯から所定時間経過しても表示部の照明を消灯しない』ようにしてあり、
『音声通話モードにおける表示装置の表示に関する制御情報に基づいて、点灯から所定時間経過後に表示部の照明を消灯する』ものである。

したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「 例えば音声通話、動画像通信、メール、ブラウジング、テレビ電話等の複数の通信モードを備えた携帯電話において、
複数の通信モードに応じ表示部の画面に画像を表示する表示装置と、
複数の通信モードに応じた表示装置の表示に関する制御情報が格納される記憶手段と、
それぞれの通信モードでは当該通信モードにおける表示装置の表示に関する制御情報を前記記憶手段から読み出して前記表示装置の表示の制御を行う制御手段と、
を備えており、
音声通話モードにおける表示装置の表示に関する制御情報については、着信や操作開始による点灯から所定時間経過後に表示部の照明を消灯するタイマ値を持たせる一方で、動画像通信モードにおいては点灯から所定時間経過しても表示部の照明を消灯しないようにしてあり、
音声通話モードにおける表示装置の表示に関する制御情報に基づいて、点灯から所定時間経過後に表示部の照明を消灯する
携帯電話。」


4.対比・判断
本願発明と上記引用発明を対比する。

まず、引用発明の「携帯電話」は、本願発明の「携帯型電話装置」であって、
引用発明の「例えば音声通話、動画像通信、メール、ブラウジング、テレビ電話等の複数の通信モード」のうち、
「音声通話」の通信モードは、「携帯電話」におけるものであるから、本願発明の「電話モード」であって、
少なくとも「動画像通信」や「テレビ電話」の通信モードは、遠隔地の相手方の動画像を視聴可能とするテレビジョンとしての通信モードであるから、「放送」の点を除き、本願発明と「テレビ視聴モード」の点で一致し、当該通信モードの提供する機能として、「テレビ視聴機能」の点でも一致する。

また、上記2つのモードに関する認定を踏まえて、引用発明の「複数の通信モードに応じ表示部の画面に画像を表示する表示装置」と、本願発明の「テレビ放送視聴モードの画像及び待ち受け画面を表示している電話モードの画像を表示する表示装置」とを対比すると、
両者は「待ち受け画面を表示している」点を除き、「テレビ視聴モードの画像及び電話モードの画像を表示する表示装置」の点で一致する。

同様に、引用発明の「複数の通信モードに応じた表示装置の表示に関する制御情報が格納される記憶手段」と、本願発明の「テレビ放送視聴モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報と電話モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報が格納される記憶手段」とを対比すると、
「制御情報」も「設定情報」も共に「情報」であるから、両者は「テレビ視聴モードにおける前記表示装置の表示に関する情報と電話モードにおける前記表示装置の表示に関する情報が格納される記憶手段」の点で一致する。

同様に、引用発明の「それぞれの通信モードでは当該通信モードにおける表示装置の表示に関する制御情報を前記記憶手段から読み出して前記表示装置の表示の制御を行う制御手段」と、本願発明の「テレビ放送視聴モードでは前記テレビ放送視聴モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報を前記記憶手段から読み出して前記表示装置の表示の設定を行う一方、電話モードでは前記電話モードにおける表示装置の表示に関する設定情報を前記記憶手段から読み出して前記表示装置の表示の設定を行う制御手段」とを対比すると、
表示の「設定を行う」ことも「制御を行う」ことの一種であるから、両者は「テレビ視聴モードでは前記テレビ視聴モードにおける前記表示装置の表示に関する情報を前記記憶手段から読み出して前記表示装置の表示の制御を行う一方、電話モードでは前記電話モードにおける表示装置の表示に関する情報を前記記憶手段から読み出して前記表示装置の表示の制御を行う制御手段」の点で一致する。

同様に、引用発明の「音声通話モードにおける表示装置の表示に関する制御情報については、着信や操作開始による点灯から所定時間経過後に表示部の照明を消灯するタイマ値を持たせる一方で、動画像通信モードにおいては点灯から所定時間経過しても表示部の照明を消灯しないようにしてあり、」との構成と、本願発明の「待ち受け画面を表示している電話モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報については時間経過で画面輝度を低下させる低輝度設定情報を持たせる一方でテレビ放送視聴モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報については前記低輝度設定情報を持たない設定が行えるようにしてあり、」との構成を対比すると、
引用発明の「着信や操作開始による点灯から所定時間経過後に」とは「時間経過で」と言えることであり、
引用発明の「表示部の照明を消灯する」とは「(表示部の)画面輝度を低下させる」ことにほかならず、
引用発明の「タイマ値」とは、そのような画面輝度の低下した状態にするための設定情報といえるから「低輝度設定情報」であり、
両者は「電話モードにおける前記表示装置の表示に関する情報については時間経過で画面輝度を低下させる低輝度設定情報を持たせるようにしてあり、」との点で一致する。

そして、引用発明の「音声通話モードにおける表示装置の表示に関する制御情報に基づいて、点灯から所定時間経過後に表示部の照明を消灯する」構成と、本願発明の「前記テレビ放送視聴モードで前記表示装置が所定輝度を維持している状態から前記待ち受け画面を表示している電話モードになるときには当該電話モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報に基づいて時間経過で画面輝度を低下させる」構成を対比すると、
両者は「電話モードにおける前記表示装置の表示に関する情報に基づいて時間経過で画面輝度を低下させる」点で一致する。

したがって、両者は以下の点で一致し、また相違している。

(一致点)
「 テレビ視聴機能を備えた携帯型電話装置において、
テレビ視聴モードの画像及び電話モードの画像を表示する表示装置と、
テレビ視聴モードにおける前記表示装置の表示に関する情報と電話モードにおける前記表示装置の表示に関する情報が格納される記憶手段と、
テレビ視聴モードでは前記テレビ視聴モードにおける前記表示装置の表示に関する情報を前記記憶手段から読み出して前記表示装置の表示の制御を行う一方、
電話モードでは前記電話モードにおける表示装置の表示に関する情報を前記記憶手段から読み出して前記表示装置の表示の制御を行う制御手段と、
を備えており、
電話モードにおける前記表示装置の表示に関する情報については時間経過で画面輝度を低下させる低輝度設定情報を持たせるようにしてあり、
当該電話モードにおける前記表示装置の表示に関する情報に基づいて時間経過で画面輝度を低下させることを特徴とする携帯電話装置。」


(相違点1)
「テレビ視聴モード」、「テレビ視聴機能」に関し、
本願発明は「テレビ放送視聴モード」、「テレビ放送視聴機能」であるのに対し、
引用発明では「複数の通信モード」の一部である「動画像通信」、「テレビ電話」等の通信モード及びその機能であって、「放送」との要件が無い点、

(相違点2)
「電話モード」に関し、
本願発明では「待ち受け画面を表示している電話モード」であるのに対し、
引用発明では単に「複数の通信モード」の一部である「音声通話」の通信モードであって、「待ち受け画面を表示している」との要件が無い点。

(相違点3)
「表示装置の表示に関する情報」および「表示装置の表示の制御」に関し、
本願発明では「表示装置の表示に関する設定情報」および「表示装置の表示の設定」であるのに対し、
引用発明では「表示装置の表示に関する制御情報」および「表示装置の表示の制御」である点。

(相違点4)
モード毎の設定情報についての「電話モードにおける前記表示装置の表示に関する情報については時間経過で画面輝度を低下させる低輝度設定情報を持たせるようにしてあり、」との構成に関し、
本願発明は「待ち受け画面を表示している電話モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報については時間経過で画面輝度を低下させる低輝度設定情報を持たせる一方でテレビ放送視聴モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報については前記低輝度設定情報を持たない設定が行えるようにしてあり、」であるのに対し、
引用発明は「音声通話モードにおける表示装置の表示に関する制御情報については、着信や操作開始による点灯から所定時間経過後に表示部の照明を消灯するタイマ値を持たせる一方で、動画像通信モードにおいては点灯から所定時間経過しても表示部の照明を消灯しないようにしてあり、」であって、「テレビ放送視聴モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報については前記低輝度設定情報を持たない設定が行える」との要件の明記が無い点。

(相違点5)
電話モードになるときの動作についての「当該電話モードにおける前記表示装置の表示に関する情報に基づいて時間経過で画面輝度を低下させる」構成に関し、
本願発明は「前記テレビ放送視聴モードで前記表示装置が所定輝度を維持している状態から前記待ち受け画面を表示している電話モードになるときには当該電話モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報に基づいて時間経過で画面輝度を低下させる」のに対し、
引用発明は単に「音声通話モードにおける表示装置の表示に関する制御情報に基づいて、点灯から所定時間経過後に表示部の照明を消灯する」構成であって、「前記テレビ放送視聴モードで前記表示装置が所定輝度を維持している状態から前記待ち受け画面を表示している電話モードになるときには」との要件の明記が無い点。


まず、上記相違点1の「テレビ放送視聴モード」、「テレビ放送視聴機能」について検討する。
携帯電話のような携帯端末においてテレビ放送を視聴するモードを設け、テレビ放送視聴機能を持たせることは、原審および当審の拒絶理由にも挙げた、特開2003-76455号公報(【0043】、図1、【0136】、図4等参照)のほか、例えば特開2002-271281号公報(【0165】図11の「テレビ受信型携帯電話501」参照)にもあるように周知技術であるから、引用発明をテレビ放送対応として、「テレビ放送視聴モード」、「テレビ放送視聴機能」を備えた相違点1は格別のことではない。

ついで、相違点2の「待ち受け画面を表示している電話モード」について検討する。
これも一般に携帯電話のような表示装置を備えた携帯端末が、電話の着信待ちの状態において待ち受け画面を表示することは、特に例示するまでもなく周知のことであり、相違点2も格別のことではない。

ついで、相違点3の「設定情報」、「設定」について検討する。
引用例の上記ニ.【0028】(図4のステップS402)にあるように、引用発明の「制御情報」である「タイマ値」は所定時間経過を判定するためにタイマに「設定」されるものであるから、これを「設定情報」ということができるものであり、前述のようにその「設定」の動作も制御の一種であるから、引用発明の「制御情報」を「設定情報」として、その「制御」を「設定」とした相違点3も格別のことではない。

ついで、相違点4のモード毎の設定情報について検討する。
一般に、種々の動作モードを有する機器に、それぞれの動作モードに応じた設定が可能であるのは周知のことであって、それぞれの異なる動作モード毎に設定すべき情報の種類が異なるのも同様である。
引用発明の携帯電話においても、引用例の上記ニ.図4にもあるように、
「音声通話モード」(電話モード)における「タイマ値」が、表示装置の表示に関する制御情報として消灯までの時間を規定する「低輝度設定情報」として用いられるのに対し、
「動画像通信モード」(テレビ視聴モード)においては、「点灯から所定時間経過しても表示部の照明を消灯しない」のであるから、前記「タイマ値」は実際上、テレビ視聴モードの表示の照明については無関係であって、テレビ視聴モードは「低輝度設定情報を持たない設定」ということができる。
したがって、モード毎の設定情報を、「待ち受け画面を表示している電話モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報については時間経過で画面輝度を低下させる低輝度設定情報を持たせる一方でテレビ放送視聴モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報については前記低輝度設定情報を持たない設定が行えるようにしてあり、」とした相違点4も格別のものではない。

さいごに、電話モードになるときの動作についての相違点5を検討する。
これも一般に、種々の動作モードを有する機器において、特に制約のない限り、それぞれの動作モードの間で、動作モードの切換、移行が可能であるのは周知のことであるが、「前記テレビ放送視聴モードで前記表示装置が所定輝度を維持している状態から前記待ち受け画面を表示している電話モードになるときには」との要件について特に検討する。
まず、「放送」や「待ち受け画面」の点については、上記相違点1、2についての判断で検討したとおりであるが、
引用発明は、最初に「動画像通信モード」(テレビ視聴モード)にあるときは、「表示部の照明」は「点灯」状態、すなわち「表示装置が所定輝度を維持している状態」にあるのも明らかなことである。
そして、引用発明は(電話の)「着信」や(コマンド入力などの)「操作開始」を契機として動作するのであるから、電話の着信があったり、例えばユーザによる「テレビ視聴モード」終了のコマンド入力や、電話発信開始などの「操作」があれば、「動画像通信モード」(テレビ視聴モード)から「音声通話モード」(電話モード)にモード移行することも当然に想定されるものである。
そして、このようなモード移行により「音声通話モード」(電話モード)の動作を開始するときも、引用例の上記ニ.や図4にあるように、引用発明は「音声通話モードにおける表示装置の表示に関する制御情報に基づいて、点灯から所定時間経過後に表示部の照明を消灯する」のであるから、
結局、電話モードになるときの動作について、「前記テレビ放送視聴モードで前記表示装置が所定輝度を維持している状態から前記待ち受け画面を表示している電話モードになるときには当該電話モードにおける前記表示装置の表示に関する設定情報に基づいて時間経過で画面輝度を低下させる」とした相違点5も格別のことではない。

そして、本願発明の効果も上記引用発明および周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであり、当審の拒絶理由通知に対する意見書における審判請求人の主張も、これらの認定を覆すものではない。


5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-25 
結審通知日 2012-05-01 
審決日 2012-05-16 
出願番号 特願2003-407408(P2003-407408)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松永 隆志  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 矢島 伸一
神谷 健一
発明の名称 携帯型電話装置  
代理人 神保 泰三  

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