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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01F
管理番号 1260346
審判番号 不服2010-23595  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-20 
確定日 2012-07-19 
事件の表示 特願2006-354578「リアクトル」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月17日出願公開、特開2008-166503〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成18年12月28日に出願されたものであって、平成22年5月7日付け拒絶理由に対して平成22年7月5日付けで手続補正書が提出されたが、平成22年7月22日付けで拒絶査定がされたものである。
これに対して平成22年10月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されている。
そして、前置報告書を利用した審尋に対して、平成24年1月27日付けで回答書が提出されている。

第2 平成22年10月20日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成22年10月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明

当該補正書による補正後の請求項に係る発明は、平成22年10月20日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された次のものと認められる。

【請求項1】
通電により磁束を発生するコイルと、該コイルの内側及び外周に配され磁性粉末を混入させてなる磁性粉末混合樹脂からなるコアとを有するリアクトルであって、
上記コイルの形状及び上記コアの外形は、上記コイルの軸方向に直交する面に対して上記コイル及び上記コアを軸方向に投影したときに形成される投影形状が、いずれも略楕円形状または略長方形状であり、
上記コイルの内側に配設される上記磁性粉末混合樹脂からなる上記コアの内側には空洞部が形成されており、該空洞部の外形は、上記コイルの軸方向に直交する面に対して上記コアを軸方向に投影したときに形成される投影形状が、上記コイル及び上記コアの長軸方向に延在する非円形状であるとともに、上記空洞部の内側に接する非円形状の放熱部材が配設されていることを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
請求項1において、上記放熱部材は、他の部位よりも磁束密度が高い部位の近傍に配設されていることを特徴とするリアクトル。

当該補正は、補正前の請求項1に記載した発明を減縮するものであって、特許法第17条の2第4項第2号(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号)の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、補正後の請求項1ないし2の内、請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができたものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
以下、平成22年10月20日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明を「本願補正後発明」とする。

[本願補正後発明]
(ア)通電により磁束を発生するコイルと、該コイルの内側及び外周に配され磁性粉末を混入させてなる磁性粉末混合樹脂からなるコアとを有するリアクトルであって、
上記コイルの形状及び上記コアの外形は、上記コイルの軸方向に直交する面に対して上記コイル及び上記コアを軸方向に投影したときに形成される投影形状が、いずれも略楕円形状または略長方形状であり、
上記コイルの内側に配設される上記磁性粉末混合樹脂からなる上記コアの内側には空洞部が形成されており、該空洞部の外形は、上記コイルの軸方向に直交する面に対して上記コアを軸方向に投影したときに形成される投影形状が、上記コイル及び上記コアの長軸方向に延在する非円形状であるとともに、上記空洞部の内側に接する非円形状の放熱部材が配設されていることを特徴とするリアクトル。

2.公知刊行物の記載

原査定の拒絶の理由で引用された刊行物1(平09-306715号公報)には、図面)とともに、以下(イ)?(ク)の事項が記載されている。

(イ)「【請求項2】 少なくとも巻線と、磁芯と、電極とから成る電子部品において、該磁芯が表面に酸化被膜を有する球状の軟磁性体粉末と有機結合剤とからなる複合磁性体層であることを特徴とする電子部品。」

(ウ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インダクタ及びインピーダなどの電子部品、及び電子部品の製造方法に属し、特にパワーライン用として、各種の電源用平滑チョークコイル、DC/DCコンバータ用の電圧変換チョークコイル、及びそれらのノイズ防止用のコイル等として用いられる電子機器及びその製造方法に属する。」

(エ)「【0005】図4は従来のSMDコイルを示している。SMDコイルは、巻線1とEI型コア8と、樹脂ケース3とを有している。巻線1及びEI型コア8は、これらの周囲で樹脂ケース3によって封止されている。さらに樹脂ケース3の一対の外側面及び一対の外側面から底面には一対の電極4がそれぞれ設けられている。巻線1は、ドーナツ状を呈しており、この巻線1の内側を含む周囲をEI型コア8が取り囲む様に配設されている。さらに、巻線1は電極4のそれぞれに接続されている。巻線1とEI型コア8との間には、若干の隙間(クリアランス)9がある。これはEI型コア8に被覆銅線で巻線されたコイルを挿入するため、組み合わせ用のクリアランスであり構造上必要とされている。」

(オ)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記金属磁性微粉末と被覆銅線を用いた巻線ボビンレスの形状を呈する一体型閉磁路構造であるSMDコイルの磁芯は、例えばEI型コア8の様な形状に形成されたコアに被覆銅線で巻線されたコイルを挿入する構造となっているため、組み合わせのクリアランスにより、インダクタンスに寄与しないスペースが残る。」

(カ)「【0013】本発明の課題は、上記のクリアランスをゼロとした、つまり巻線と磁芯とを一体成形化する構成とすること、及び/または比透磁率の異なる磁性体を組み合わせ、見かけ上の比透磁率を大きくすることで、同じ外形寸法で大きいインダクタンス(またはインピーダンス)を得る電子部品及びその製造方法を提供することにある。」

(キ)【0015】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、少なくとも巻線(コイル)と磁芯と電極から成る電子部品において、該磁芯が表面に酸化被膜を有する偏平状及び/または針状の軟磁性体粉末と有機結合剤からなる複合磁性体層であることを特徴とする電子部品が得られる。」

(ク)【0021】また、本発明によれば、電子部品において、巻線と該磁芯が一体成形体であることを特徴とする電子部品の製造方法が得られる。

そして、発明の実施例を示す図面(【図1】、【図2】)には、巻線の形状及び磁芯の巻線の軸方向に直交する面方向における外形が、略長方形状である電子部品が示されている。

そうすると、これらの記載から、刊行物1には、次の(ケ)なる発明が実質的に記載されているといえる。
以下、これを「刊行物1発明」という。

[刊行物1発明]
(ケ)巻線と、該巻線の内側及び外周に配され軟磁性体粉末と有機結合剤とからなる複合磁性体層である磁芯とを有するインダクタであって、
巻線の形状及び磁芯の、巻線の軸方向に直交する面方向における外形が、略長方形状であるインダクタ。

3 対比

本願補正後発明と刊行物1発明とを対比する。

刊行物1発明における「巻線」「磁芯」「インダクタ」は、本願補正後発明における「通電により磁束を発生するコイル」「コア」「リアクトル」に他ならない。
また、刊行物1発明における「軟磁性体粉末と有機結合剤とからなる複合磁性体層」とは、「磁性粉末混合樹脂」によって構成される層に他ならない。
そして、刊行物1発明における「巻線の形状及び磁芯の巻線の軸方向に直交する面方向における外形が、略長方形状」であるものは、巻線の形状及び磁芯の外形の、巻線の軸方向に直交する面に対して巻線及び磁芯を軸方向に投影したときに形成される投影形状が、いずれも略長方形状となることは自明である。

そうすると、本願補正後発明と刊行物1発明とは、 次の(コ)において一致し、(サ)において相違する。

[一致点]
(コ)通電により磁束を発生するコイルと、該コイルの内側及び外周に配され磁性粉末を混入させてなる磁性粉末混合樹脂からなるコアとを有するリアクトルであって、
上記コイルの形状及び上記コアの外形は、上記コイルの軸方向に直交する面に対して上記コイル及び上記コアを軸方向に投影したときに形成される投影形状が、いずれも略長方形状であるリアクトル。

[相違点]
(サ)本願補正後発明が、「コアの内側には空洞部が形成されており、該空洞部の外形は、上記コイルの軸方向に直交する面に対して上記コアを軸方向に投影したときに形成される投影形状が、上記コイル及び上記コアの長軸方向に延在する非円形状であるとともに、上記空洞部の内側に接する非円形状の放熱部材が配設されている」ものであるのに対し、刊行物1発明は、そのような構成を有していない点。

4. 判断

相違点(サ)について検討する。

原査定の拒絶の理由で引用された刊行物4(特開2004-319618号公報)には、図面ともに以下の記載がされている。

(シ)「【0018】
一方、ステップA1により得られたリアクトル1は、アルミニウムケース(放熱用ケース)5に収容する(ステップA2)。この場合、まず、アルミニウムケース5とリアクトルホルダ22を用意する。アルミニウムケース5は、図1(図2)に示すように、平面視を矩形に形成し、上面から下方に窪んだリアクトル収容部5iを有する。リアクトル収容部5iは、内部底面5idの中央部位から上方へ一体形成した放熱用突出部6を有する。この放熱用突出部6は、アルミニウムケース5に収容されたリアクトル1の内側の空間Kを埋めるように形成することが望ましい。」

そして、図1を参酌するに、図示されている実施例の放熱用突出部6は非円形状のものである。

したがって、刊行物4には、アルミニウムケース(放熱用ケース)5に収容されるリアクトルにおいて、アルミニウムケース5はリアクトル収容部5iを有し、リアクトル収容部の底面の中央部位から上方へ一体形成した放熱用突出部6を有するものであって、この放熱用突出部6は、アルミニウムケース5に収容されたリアクトル1の内側の“空間”を埋めるように形成された非円形状のリアクトルの放熱機構の発明が記載されている。

そして、刊行物4の記載を参照するまでもなく、リアクトルの通電において、巻線の電気抵抗に起因して熱となる「銅損(ジュール損)」と、コア内の磁束変化に起因して熱となる「鉄損(ヒステリシス損、渦電流損)」が発生し、その発熱が少ないことが好ましいこと、発熱による温度上昇を小さくするために放熱機構を設けることことは、電磁気学、電気部品設計における基本事項であって、周知技術である。

刊行物1発明も、刊行物4に記載の発明も、リアクトルに係る発明であるから、刊行物1発明において、放熱という周知の課題を解決するためにとして刊行物4に記載の発明を採用することは、当業者が容易に想到することである。

したがって、本願補正後発明は、当業者が、刊行物1に記載の発明及び刊行物4に記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

なお、本願補正後発明は、「空洞部の内側に接する非円形状の放熱部材が配設されている」ものであるから、空洞部に内接して放熱部材が配設された空洞部は、放熱部材が内側に接して埋められることになり、結果として空洞としての空間が存在するものではなく、放熱部を設けるための箇所を「空洞部」という名称としているにすぎない。本願実施例として示されている各図においても、空洞部を意味する番号30が記されているものの、その内側領域の全てはは放熱のための凸部を意味する細斜線領域400であって、実質的に空洞は存在していない。
本願補正後発明は、「空洞部の内側に接する非円形状の放熱部材が配設されている」ことにより、「放熱効率が比較的悪くなりがちなコイル2の内側のコア3における放熱を充分に行うことができる。」(段落【0027】の記載)ものである。

そして、刊行物1発明に刊行物4発明である、「アルミニウムケース5に収容されたリアクトル1の内側の“空間”を埋めるように形成された非円形状のリアクトルの放熱機構」を適用すれば、「空洞部の内側に接する非円形状の放熱部材が配設されている」ことにより、結果として「放熱効率が比較的悪くなりがちなコイル2の内側のコア3における放熱を充分に行うことができる」ものとなる。

5.補正の却下についてのむすび

以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

6.補正の却下についての付記

本件補正は、補正前の請求項1における「空洞部」について、「空洞部の内側に接する非円形状の放熱部材が配設されている」とする補正である。これは実質的に“その内側に接する非円形状の放熱部材が配設されている空洞部”ということであるから、当該補正は、補正前の請求項1を限定的に減縮したものであると判断した。

本件補正には、他に却下理由が存在するので付記する。
請求項2の記載は、特許法第36条第6項第1号、第2号の規定に違背するものである。

補正された請求項2における「前記放熱部材」は、「他の部位よりも磁束密度が高い部位の近傍に配設されている」ものである。
そして、補正された請求項2は請求項1の引用請求項であって、当該請求項2は補正前の請求項5に相当するものであると一応判断される。。

補正前の請求項1においては「放熱部材」が存在しないため、その請求項1に係る発明において、請求項5に係る発明が、「他の部位よりも磁束密度が高い部位の近傍に配設されている」放熱部材を有するものであることに、何らの問題はない。

しかしながら、本件補正により、請求項1は、空洞部の外形が「上記コイルの軸方向に直交する面に対して上記コアを軸方向に投影したときに形成される投影形状が、上記コイル及び上記コアの長軸方向に延在する非円形状であるとともに、上記空洞部の内側に接する非円形状の放熱部材が配設されている」というものになった。
したがって、「上記放熱部材」はこれを意味することになる。

ここで、外形が「上記コイルの軸方向に直交する面に対して上記コアを軸方向に投影したときに形成される投影形状が、上記コイル及び上記コアの長軸方向に延在する非円形状である」空洞部において、その「空洞部の内側に接する非円形状の放熱部材が配設されている」ということは、該「放熱部材」が本願明細書で「凸部400」として説明されている放熱機構であることを意味する。図面においてもそのように明確に記載されている。

一方、補正前の請求項5における「放熱部材」とは、明細書及び図面の記載から明らかなように「放熱部材7」を意味するものである。

そうすると、補正された請求項1における「凸部400」を意味する「放熱部材」と、請求項2において「放熱部材7」を意味する「放熱部材」は、そもそも異なる構成要素であって、請求項2における「上記放熱部材」とは、何を示すものであるか明らかでない。
また、「他の部位よりも磁束密度が高い部位の近傍に配設」されている「放熱部材」が、「該空洞部の外形は、上記コイルの軸方向に直交する面に対して上記コアを軸方向に投影したときに形成される投影形状が、上記コイル及び上記コアの長軸方向に延在する非円形状であるとともに、上記空洞部の内側に接する非円形状の放熱部材が配設されている」ものであることは、明細書には記載されていない。

してみれば、補正された請求項2の記載は、明確でなく、そのような発明は発明の詳細な説明に記載されていないものであって、請求項2の記載は、特許法第36条第6項第1号、第2号の規定に違背するものである。
そして、当該請求項2についての違背は、本件補正により請求項1を補正することにより新たに生じた拒絶の理由である。

したがって、補正された請求項2に係る発明は独立して特許を受けられるものではなく、本件補正は、当該補正は特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであるから、本件補正は特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものとなる。

なお、その場合においても、却下の結論が変わるものではない。

第3 本願発明について

1.本願発明の認定

平成22年10月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成22年7月5日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1から請求項5までに記載した事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明は、下記のとおりである。
以下、これを「本願発明」という。

[本願発明]
(ス)通電により磁束を発生するコイルと、該コイルの内側及び外周に配され磁性粉末を混入させてなる磁性粉末混合樹脂からなるコアとを有するリアクトルであって、
上記コイルの形状及び上記コアの外形は、上記コイルの軸方向に直交する面に対して上記コイル及び上記コアを軸方向に投影したときに形成される投影形状が、いずれも非円形状であり、
上記コイルの内側に配設される上記磁性粉末混合樹脂からなる上記コアの内側には空洞部が形成されており、該空洞部の外形は、上記コイルの軸方向に直交する面に対して上記コアを軸方向に投影したときに形成される投影形状が、非円形状であることを特徴とするリアクトル。

2.引用刊行物に記載の発明

原査定の拒絶理由に引用された刊行物1の記載事項は、前記「第2」における[理由]の「2.」に記載したとおりである。

3.対比

本願発明と刊行物1発明を対比するに、両者は、次の(セ)で一致し、(ソ)の点において相違する。

[一致点]
(セ)通電により磁束を発生するコイルと、該コイルの内側及び外周に配され磁性粉末を混入させてなる磁性粉末混合樹脂からなるコアとを有するリアクトルであって、
上記コイルの形状及び上記コアの外形は、上記コイルの軸方向に直交する面に対して上記コイル及び上記コアを軸方向に投影したときに形成される投影形状が、いずれも非円形状であるリアクトル。

[相違点]
(ソ)本願発明が、「コアの内側には空洞部が形成されており、該空洞部の外形は、上記コイルの軸方向に直交する面に対して上記コアを軸方向に投影したときに形成される投影形状が、非円形状である」ものであるのに対し、刊行物1発明は、そのような構成を有していない点。

4.判断

当該相違点(ソ)について判断する。

コイルの内側及び外周に配されたコアを有し、コイルの形状及びコアについて、コイルの軸方向に直交する面方向における外形形状が非円形状であるインダクタ、コアの中心部を空芯としたインダクタは、夫々周知のものである。そして、コイルの形状及びコアの、コイルの軸方向に直交する面方向における外形形状が非円形状であり、コアの中心部に空芯を有するインダクタであれば、空芯の形状が非円形状とすることが普通である。したがって、コアの内側は空芯であり、該空芯部の外形が、上記コイルの軸方向に直交する面に対して上記コアを軸方向に投影したときに形成される投影形状が、非円形状であるインダクタも周知のものにすぎない。

例えば、拒絶理由通知において提示されている刊行物2(特開平5-190336号公報)には、段落【0018】、【0025】等の記載から明らかなように、コイルの内側及び外周に配されたコアとを有し、コアの中心部に非円形状の空芯を有するインダクタの発明が記載されている。そして、実施例として、コイルの形状及びコアの、コイルの軸方向に直交する面方向における外形形状が、非円形状であるものが図示されている。

なお、コアの中心部に空芯を設けることの目的は、コアのセンターポールの断面積を小さくすることことにあり、当該刊行物2にも、これによりヨークの磁路に直交する断面積を小さくすることが可能になり、ヨークの薄型化、ひいてはコアの薄型化を可能にすることが記載されている。(段落【0014】等)
これは本願発明における「空洞部」の作用効果に合致するものであるから、本願発明における「空洞部」は、刊行物2に記載されている「空芯」に相当する。

そうすると、コイルの内側及び外周に配されたコアを有し、コアの中心部に非円形状の空洞部を有し、コイルの形状及びコアの、コイルの軸方向に直交する面方向における外形形状が、非円形状である刊行物2に記載されているような周知のリアクトル(インダクタ)におけるコアについて、刊行物1発明を適用し、「磁性粉末を混入させてなる磁性粉末混合樹脂からなるコア」とすることは当業者が容易に想到することである。

したがって、本願発明である請求項1に係る発明は、刊行物1発明及び刊行物2に記載されているような周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび

本願請求項1に係る発明は、以上のとおり刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 まとめ

本願請求項1に係る発明についての判断は以上のとおりであるから、残る請求項2から請求項5に係る各発明について特に検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

したがって、審判請求の理由について審理した結果、拒絶査定を取り消す理由は存在しないから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-18 
結審通知日 2012-05-22 
審決日 2012-06-07 
出願番号 特願2006-354578(P2006-354578)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01F)
P 1 8・ 575- Z (H01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 正文  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 馬場 慎
関谷 隆一
発明の名称 リアクトル  
代理人 伊藤 高順  
代理人 井口 亮祉  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 加藤 大登  

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