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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B24B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B24B
管理番号 1260734
審判番号 不服2011-27454  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-20 
確定日 2012-07-26 
事件の表示 特願2006- 47015「ラッピング加工方法および加工装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月 6日出願公開、特開2007-222988〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成18年2月23日の特許出願であって、平成23年4月21日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月21日に手続補正がなされ、同年9月12日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同年12月20日に本件審判の請求とともに手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、平成24年3月2日付けで審尋がなされ、同年5月1日に回答書が提出されたものである。

第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲、発明の詳細な説明について補正をするものであって、請求項1について、補正前後の記載は、以下のとおりである。

(1)補正前
「窒化ケイ素セラミックスまたはサイアロンセラミックスよりなる被加工物の表面を研磨材料によりラッピング加工する球体のラッピング加工方法であって、
前記研磨材料は前記被加工物よりも高硬度の砥粒を含み、
前記被加工物にトライボケミカル反応を起こさせるような粒子を含む液体を前記被加工物と前記研磨材料との間に供給してラッピング加工し、
前記液体は水または水溶液よりなり、かつ前記液体のpHが9以上12以下であることを特徴とする、ラッピング加工方法。」

(2)補正後
「窒化ケイ素セラミックスまたはサイアロンセラミックスよりなる被加工物の表面を研磨材料によりラッピング加工する球体のラッピング加工方法であって、
前記研磨材料は前記被加工物よりも高硬度の砥粒を含み、
前記被加工物にトライボケミカル反応を起こさせるような粒子を含む液体を前記被加工物と前記研磨材料との間に供給してラッピング加工し、
前記液体は水または水溶液よりなり、かつ前記液体のpHが9以上12以下であり、
前記粒子の粒径は、研磨粉および前記砥粒の粒径よりも小さいことを特徴とする、ラッピング加工方法。」

2.補正の適否
本件補正の特許請求の範囲の補正後の請求項1についての補正は、トライボケミカル反応を起こさせるような粒子について、「粒子の粒径は、研磨粉および前記砥粒の粒径よりも小さい」とするものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。

(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、上記1.(2)のとおりのものと認める。

(2)刊行物に記載された発明
これに対し、原査定の拒絶理由で引用された刊行物である特開平4-122571号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ア)第1ページ左下欄第15?18行
「本発明はセラミックスの精密研磨方法に関し、さらに詳しくは、高度に平滑な仕上が要求される難研磨材の研磨に好適なセラミックスの精密研磨方法に関する。」

(イ)第3ページ左下欄第13?19行
「前記高密度低結合度砥石を構成する砥粒としては、例えば、ダイヤモンド、窒化硼素、炭化珪素、酸化アルミ、酸化ジルコン、その他各種の微細なセラミック粒子などを挙げることができる。これらの内、選定される砥粒の硬度は、具体的には被研磨材であるセラミックスと同等ないしはやや硬いものてなくてはならない。」

(ウ)第4ページ左上欄第12行?左下欄第3行
「この特定の粉末と特定の被研磨材との間に、メカノケミカル研磨の概念によって説明されている研磨作用が認められる。この研磨作用は、接触する微小部分における高熱の発生などに伴う化学変化によるものとみられている。
メカノケミカルな作用を有する粉末の具体例としては、鉄、ニッケル、アルミなどの金属、酸化クロム、酸化珪素、酸化鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物、酸化セリュウムなど希土類金属の酸化物、バリュームフェライトなどの鉄酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリュウムなどの金属の炭酸塩などを挙げることかできる。
前記粉末の添加は、高密度低結合度砥石を製造する際に、予め砥石に添加しておいて、この砥石に水などの加工液を流しながら被研磨材を押圧してもよいし、または砥石面に粉末を散布したり、あるいは加工液に分散しておき、この加工液を流しかけるなどの方法て、砥石表面に供給しても良い。
粉末の粒度については、特に制約はないが、硬度が高く被研磨材に近接し、あるいはこれを上回って、フィジカルな研磨機能を有するような粉末については、研磨面に対するダメージを考慮して、充分微細なものを使用することが望ましい。
また、粉末を散布したり流しかけて砥石面に供給する時は、やはり微細な粒子を使用しないと、粉末が砥石面から逃げて有効に作用しないことがある。粉末の粒径が高密度低結合度砥石を構成する砥粒より小さいときは、粉末は砥粒の空隙に保持されるので一層効果的である。」

(エ)第6ページ右上欄第15行?左下欄第11行
「(実施例3)
被研磨材のセラミックスとして、新モース硬度で13前後の窒化珪素を高密度低結合度砥石を用いて研磨した。
研磨に使用した高密度低結合度砥石は、砥粒として酸化アルミニウム(平均粒子径3μ)重量94%、・・・、φ200のディスク状に成形されている。この砥石を平面片面ラップ盤に装着、この砥石の上に被研磨材である窒化珪素ブロック(・・・)を貼りつけたキャリァを乗せて、70rpmで回転させた。
研磨面にかかる加工荷重は3.2kg/cm^(2)であった、加工液として水を用い、この水の中に酸化クローム粉末を約5重量%加えて、攪拌しながら砥石面に流しかけた。」

これらを、補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。

「窒化珪素セラミックスよりなる被研磨材の表面を高密度低結合度砥石により平面片面ラップ盤で加工する加工方法であって、
前記高密度低結合度砥石は前記被研磨材よりもやや硬い砥粒を含み、
前記被研磨材に、接触する微小部分における高熱の発生などに伴う化学変化によるメカノケミカル作用を起こさせるような粉末を含む加工液を前記高密度低結合度砥石の表面に供給して加工し、
前記加工液は水よりなり、
前記粉末の粒径は、前記砥粒の粒径よりも小さい、加工方法。」

(3)対比
補正発明と刊行物1発明とを、技術常識を踏まえ、対比する。
刊行物1発明の「被研磨材」は補正発明の「被加工物」に相当し、同様に「高密度低結合度砥石」は「研磨材料」に、「平面片面ラップ盤で加工」は「ラッピング加工」に、「やや硬い」は「高硬度の」に、「接触する微小部分における高熱の発生などに伴う化学変化によるメカノケミカル作用」は「トライボケミカル反応」に、「粉末」は「粒子」に、「加工液」は「液体」に、「加工液を前記高密度低結合度砥石の表面に供給」は「液体を前記被加工物と前記研磨材料との間に供給」に、それぞれ相当する。

したがって、補正発明と刊行物1発明とは、次の点で一致している。
「窒化ケイ素セラミックスよりなる被加工物の表面を研磨材料によりラッピング加工するラッピング加工方法であって、
前記研磨材料は前記被加工物よりも高硬度の砥粒を含み、
前記被加工物にトライボケミカル反応を起こさせるような粒子を含む液体を前記被加工物と前記研磨材料との間に供給してラッピング加工し、
前記液体は水よりなり、
前記粒子の粒径は、前記砥粒の粒径よりも小さい、ラッピング加工方法。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。
相違点1:「被加工物」について、補正発明は「球体」であるが、刊行物1発明は明らかでない点。
相違点2:「液体」について、補正発明は「pHが9以上12以下」であるが、刊行物1発明は明らかでない点。
相違点3: 「粒子の粒径」について、補正発明は「研磨粉および前記砥粒の粒径よりも小さい」ものであるが、刊行物1発明は「砥粒の粒径よりも小さい」ものである点。

(4)相違点の検討
相違点1について検討する。
加工対象としての「球体」は、原査定の拒絶理由で引用された特開平5-77150号公報の要約、原査定で引用された特開2000-354955号公報の要約、段落0001にみられるごとく周知であり、単に対象物を限定したにすぎない。

相違点2について検討する。
研磨においては、供給される液体のpHが研磨性に影響を与えるものであるところ、セラミック等の硬脆材料の研磨において、被加工物と研磨材料との間に供給される液体を「pHが9以上12以下」とすることは、原査定で引用された特開2000-354955号公報の段落0001、0028、同じく特開2000-239652号公報の段落0031、0044、同じく特開2000-1666号公報の段落0009?0010、同じく特開平7-179848号公報の段落0002、0010にみられるごとく周知である。
よって、硬脆材料である窒化ケイ素セラミックスを研磨する刊行物1発明において、供給される液体のpHとして、かかる周知技術を採用し、相違点2に係るものとすることに格別の困難性は認められない。

相違点3について検討する。
補正発明において「粒子の粒径」が「研磨粉および前記砥粒の粒径よりも小さい」ことの技術的意義は、発明の詳細な説明の段落0044、0048に記載されているごとく、加工後の加工液から、「粒子の粒径」よりも粒径が大きい「研磨粉や脱落した砥粒などの異物」を除去し、加工液を再利用するためである。
刊行物1発明においても、環境の観点から、加工液の再利用を検討するにあたっては、加工により生じた「研磨粉や脱落した砥粒」を除去する必要がある。
加工液の再利用にあたり、粒径に着目し、粒径の「大きな」不要物を除去することは、新たに示す特開平2-257627号公報の請求項1、第4ページ右上欄第1?3行、特開2000-263441号公報の段落0030、特開2002-16027号公報の段落0002、0005、特開平10-118899号公報の段落0004、0026にみられるごとく周知である。
よって、除去されるべき「研磨粉や脱落した砥粒」の粒径よりも、再利用されるべき「粒子の粒径」を、「小さく」することに困難性は認められない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。
以上のことから、補正発明は、刊行物1発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、回答書で、「補正についても検討する所存」と主張しているが、そもそも法的根拠がなく、補正の具体性にも欠けることから、採用できない。

3.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし8に係る発明は、平成23年6月21日付けで補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)に示す請求項1に記載されたとおりである。

2.刊行物等
これに対して、原査定の際にあげられた刊行物及びその記載内容、刊行物1発明は、上記第2.2.(2)に示したとおりである。

3.対比
本願発明は、補正発明において付加された事項を削除するものである。
そうすると、本願発明も、上記第2.2.(4)と同様の理由により、刊行物1発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-23 
結審通知日 2012-05-29 
審決日 2012-06-11 
出願番号 特願2006-47015(P2006-47015)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B24B)
P 1 8・ 575- Z (B24B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 段 吉享田中 成彦  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 千葉 成就
長屋 陽二郎
発明の名称 ラッピング加工方法および加工装置  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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