• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1261282
審判番号 不服2011-23270  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-28 
確定日 2012-08-10 
事件の表示 特願2006-168678号「空調システム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月27日出願公開、特開2007-333355号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成18年6月19日の出願であって 、平成23年7月29日付けで拒絶査定がなされ(発送:8月3日)、これに対し、平成23年10月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成23年10月28日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年10月28日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
平成23年10月28日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。

「【請求項1】
パッケージ空調機であり、室内のタスク域に空気を供給するタスク空調機と、
パッケージ空調機であり、室内のアンビエント域に空気を供給するアンビエント空調機と、
室の下部に設け、前記タスク空調機から空気を供給される二重床と、
複数の羽根を有する開閉可能なシャッターを装着し、前記二重床の床パネルからタスク域に空気を供給するパーソナル吹出口と、
を備え、
前記タスク空調機と前記アンビエント空調機のそれぞれの容量は、全負荷を一台の空調機で使用する場合の容量と比較して小さいことを特徴とする空調システム。」(下線部は補正箇所に対応する。下線は当審にて付与、以下同じ。)

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である
「前記二重床の床パネルからタスク域に空気を供給するパーソナル吹出口と、
を備え、
前記パーソナル吹出口は、複数の羽根を有する開閉可能なシャッターを装着する」
との記載を、語順を変更して
「複数の羽根を有する開閉可能なシャッターを装着し、前記二重床の床パネルからタスク域に空気を供給するパーソナル吹出口と、
を備え、」
と補正(この部分では、実質的な補正は行われていない)すると共に、
補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「タスク空調機及びアンビエント空調機」に関して
「前記タスク空調機と前記アンビエント空調機のそれぞれの容量は、全負荷を一台の空調機で使用する場合の容量と比較して小さい」
との限定を付すものでり、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることが出来るものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶理由にて引用された刊行物である特開平3-164641号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。

ア.「(産業上の利用分野)
本発明は、アンビエント域(室全体の雰囲気)とタスク系(個人の作業域)とに分けて空調を行うパーソナル空調において、アンビエント域空調の設定温度を決める方法に関する。」(第1頁左下欄第15行?第19行)

イ.「本発明は、上記の問題点を解消し、タスク系の装置容量を可及的に小さくしうるパーソナル空調の制御方法を提供することを目的とするものである。」(第2頁左上欄第15行?第18行)

ウ.「第1図において、1は空調を行う部屋、2は座席等の在室者の作業域、3はタスク系AHU、4はタスク系AHUの空気吐出管、5はタスク系エアチヤンバー、6はアンビエン系AHU、7はアンビエント系AHUの空気吐出管、8はタスク系AHU3およびアンビエント系AHUの空気吸込管、9は各座席2に設けたフアン、10はタスク系エアチヤンバー5内に設けた温度センサー、11は各フアン9のON-OFF信号を受ける変換機、12はタスク系AHUの空気温度を調節する冷温水熱源機器、13は温度センサー10および変換器11よりの信号を受けタスク系AHU3を制御するユニツトコントローラーである。
このような装置において、アンビエント系AHU6を出た空気は空気吐出管7、部屋1および空気吸込管8を経て循環して部屋1全体を空調する。
タスク系AHU3を出た空気は空気吐出管4、エアチヤンバー5に入り、在席者がスイツチを入れたフアン9より在席者に向けて吹出し、部屋lおよび空気吸込管8を経て循環する。
AHU3および6の吐出空気温度は、例えば夏場で、タスク系AHU3は一定(約18℃)、アンビエント系AHU6は設定温度が変動(約27°C?29°C)する。フアン9は送風量の調節が可能であり、各在室者はフアン9の運転により好みのタスク域を作り出す。フアン9が運転状態の場合に、この在室者はタスク系空調を使用中と判断し、座席2全部からフアン9の運転、停止の状態を各階のユニツトコントローラー13に取込み、運転台数/全座席数をタスク系空調使用率とし、この使用率に応じてアンビエント域の設定温度、即ちアンビエント系AHU6の設定温度を変化させる。
タスク系空調の同時使用率を60%として熱源機器12の容量を小さく設定する。タスク系空調の使用率が60%よりも大きくなってきた時は、アンビエント系AHU6の温度設定値を厳しく、即ち冷房時には低く、暖房時には高く再設定して、タスク系空調の使用率が上昇し続けるのを防ぐ。その設定例を第2図に示す。」(第2頁右上欄第13行?右下欄第11行)

エ.「また、タスク系空調の使用率が100%にならないようにアンビエント域設定温度を変化させるため、タスク系の装置容量を小さく設計することができる。 」(第3頁右上欄第1行?第4行)

オ.第1図には、以下の事項が図示されている。
・エアチヤンバー5は、部屋1の下部に設けられ二重床で形成されていること、
・座席には、二重床の床パネルと連通するとともに上流部に在室者により送風量が調節可能なフアン9を設置して、前記二重床の床パネルからタスク域に吹き出す開口が設けられていること

カ.上記「タスク系の装置容量を可及的に小さくしうる」(摘記事項イ)、「12はタスク系AHUの空気温度を調節する冷温水熱源機器」(摘記事項ウ)、「タスク系の装置容量を小さく設計することができる」(摘記事項エ)の記載から、
空調システムを構成する、「タスク系AHU3の空気温度を調節する冷温水熱源機器12」と、図示されていない「アンビエント系AHU6の空気温度を調節する冷温水熱源機器」は別装置であるものと解される。
そして冷温水熱源機器を分離し冷凍サイクル自体が独立のものであれば、タスク系AHU(及び冷温水熱源機器12)とアンビエントAHU(及び冷温水熱源機器)のそれぞれの容量が、全負荷を一台の空調機で使用する場合の容量と比較して小さくなることは、自明の事項である。

以上の事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「部屋1内のタスク域に空気を吐出するタスク系AHU3と、
部屋1内のアンビエント域に空気を吹き出すアンビエント系AHU6と、
部屋1のの下部に設け、前記タスク系AHU3から空気を吐出される二重床と、
座席2に設けられ、二重床の床パネルと連通するとともに上流部に在室者により送風量が調節可能なフアン9を設置して、前記二重床の床パネルからタスク域に吹き出す開口と、
を備え、
前記タスク系AHU3(及び冷温水熱源機器12)と前記アンビエントAHU6(及び冷温水熱源機器)のそれぞれの容量は、全負荷を一台の空調機で使用する場合の容量と比較して小さい
空調システム。」

(2)原査定の拒絶理由にて引用された刊行物である特開2003-322356号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。

キ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,床吹き出し空調システムと空調方法に関する。」(段落【0001】)

ク.「【0033】さて,この空調システム1を運転する場合,空調域である室10内を空調する前に,先に図4で説明した開閉ダンパ61を開き,ファン70を稼動させる。そして,空調機29の稼動により,天井還気チャンバ23からダクト30を介して取込んだ還気RAを空調し,作り出した給気SAを二重床チャンバ21に送り込む。こうして,図7に示すように,空調機29から二重床チャンバ21内へ供給された給気SAを,ファン70の吸引によって,置換換気チャンバ55からダクト60を通じて,室10内を通さずに,そのまま天井還気チャンバ23内に強制的に送る。この際,床吹き出し口35が開閉ダンパやシャッタなどを備えている場合には,それらを閉止すると良いが,それらが無いような場合でも,床吹き出し口35から室10内への給気SAの漏れ量は小さいので,熱ロスは無視できる。なお,空調機29には外気取入ダクト31から外気OAの取込みをせずに,還気ダクト30を通じて還気RAのみを取込んで温度調節して給気SAを作り,その給気SAを二重床チャンバ21に送り込んで循環させると良い。」(段落【0033】)

ケ.「【0039】そして,床20に設けられた床吹出し口35から上向きに吹き出された給気SAは,室10内のタスク域13に存在する各作業スペース15に対して,それぞれ空調(タスク空調)を行う。この場合,各作業スペース15に配置されたコントローラ36を作業員11が操作することにより,各作業スペース15の床吹出し口35から上向きに吹き出される給気SAの風量が調整され,タスク域13に存在する各作業スペース15に対する個別制御も可能である。」(段落【0039】)

以上を総合すると、刊行物2には、タスク空調を行う床吹き出し空調システムおける風量調整可能な開口に関する発明として、次の発明(以下「刊行物2記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「開閉シャッタを備え、二重床チャンバ21の床20からタスク域13に空気を供給する床吹き出し口35。」

(3)本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-279100号公報(以下「周知刊行物1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。

コ.「【0018】シャッタ33は,複数枚の羽37を備えており,モータ39の稼動でシャフト35を中心に羽37を回転させて,互いの羽37の位置を変更できるようになっている。例えば,図3に示すように,各羽37を同じ位置に揃えて重ねた場合は,羽37によって遮られる面積が小さくなってシャッタ33は開かれた状態となり,吹出し口30を通る給気SAの風量が多くなる。また例えば,図4に示すように,各羽37の位置をずらして広げた場合は,羽37によって遮られる面積が大きくなってシャッタ33は閉じられた状態となり,吹出し口30を通る給気SAの風量が少なくなる。」(段落【0018】)

(4)本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-300181号公報(以下「周知刊行物2」という。)には、図9?11と共に、以下の記載がある。

サ.「【0033】次に、第3形態に係る吹出口44を説明する。第3形態では、図9?図11に示すように、羽根板45で形成されたスリットの開口面積(吹出面積)を変化させ、風量を調整できるシャッター64、66、68、70が設けられている。
【0034】シャッター64、66、68、70は円板を4等分した恰好の扇型をしており、角部には筒状の軸部64A、66A、68A、70Aが設けられている。この軸部64A、66A、68A、70Aは、支持フレーム28の交差部に取付けられた軸受部90に軸支される操作ロッド92へ挿通される。」(段落【0033】?【0034】)

(5)本願の出願前に頒布された刊行物である実願平3-62111号(実開平5-8333号)のCD-ROM(以下「周知刊行物3」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。

シ.「 【0021】
以下、この揺動手段の動作について説明する。図8(b)で示される前記各ブレード9a?9hが全閉の場合、前記ブレード9の揺動ピン17は、カム軸10の外周面に形成された閉扉用カム溝22内に位置しており、カム軸10が前記カム軸回動機構により所定方向(この実施例においては蓋体2の下面に対して時計方向)に回動されると、先ず第1のブレード9aの揺動ピン17が、前記閉扉用カム溝22から移行用カム溝23を経て開扉用カム溝24に移動する。揺動ピン17が開扉用カム溝24に移動した場合、揺動支点ピン11からヒンジ12に至る揺動支点辺14を揺動支点としてブレード9aの揺動辺15が揺動し、このためにフレード9aは吹出ガイド孔8を図9(a)で示すように開扉するものである。
【0022】
さらにカム軸10を所定方向に回動させると、次にブレード9bの揺動ピン17が、閉扉用カム溝22から移行用カム溝23を経て開扉用カム溝24に移動して吹出ガイド孔8を開扉する。この動作は、同様にブレード9hまで繰り返すことができる。尚、開扉したブレードの揺動ピン17は、開扉用カム溝24の位置に保持されるので、開扉状態が維持されるものである。
【0023】
また、前記ブレードが全開の場合、各々のブレード9a?9hの揺動ピン17は、開扉用カム溝24内に位置しており、カム軸10が所定方向の逆方向(蓋体の下面に対して反時計方向)に回動することにより、先ずブレード9hの揺動ピン17が、開扉用カム溝24から移行用カム溝23を経て閉扉用カム溝22に移動することにより、揺動辺15が押し下げられてブレード9hは吹出ガイド孔8を閉扉するものである。以上の動作を繰り返すことによりブレード9g?9aの閉扉が行われるものである。尚、閉じられたブレードの揺動ピン17は、閉扉用カム溝22に保持されるものである。」(段落【0021】?【0023】)

3.発明の対比
本願補正発明と刊行物1記載の発明を対比すると、刊行物1記載の発明における「タスク系AHU3」は本願補正発明における「パッケージ空調機であるタスク空調機」に相当し、以下同様に、「アンビエント系AHU6」は「パッケージ空調機であるアンビエント空調機」に、「部屋1」は「室」に、「吐出する」及び「吹き出す」は「供給する」に、「前記タスク系AHU3(及び冷温水熱源機器12)と前記アンビエントAHU6(及び冷温水熱源機器)のそれぞれの容量は、全負荷を一台の空調機で使用する場合の容量と比較して小さい」は「前記タスク空調機と前記アンビエント空調機のそれぞれの容量は、全負荷を一台の空調機で使用する場合の容量と比較して小さい」に、各々相当する。

また、刊行物1記載の発明における「座席2に設けられ、二重床の床パネルと連通するとともに上流部に在室者により送風量が調節可能なフアン9を設置して、前記二重床の床パネルからタスク域に吹き出す開口」も本願補正発明における「複数の羽根を有する開閉可能なシャッターを装着し、前記二重床の床パネルからタスク域に空気を供給するパーソナル吹出口」も、共に「風量調整機構を設けた、二重床の床パネルからタスク域に空気を供給するパーソナル吹出口」ということができる。

よって、両者の一致点、相違点は、次のとおりである。

(一致点)
パッケージ空調機であり、室内のタスク域に空気を供給するタスク空調機と、
パッケージ空調機であり、室内のアンビエント域に空気を供給するアンビエント空調機と、
室の下部に設け、前記タスク空調機から空気を供給される二重床と、
風量調整機構を設けた、二重床の床パネルからタスク域に空気を供給するパーソナル吹出口と、
を備え、
前記タスク空調機と前記アンビエント空調機のそれぞれの容量は、全負荷を一台の空調機で使用する場合の容量と比較して小さい
空調システム。

(相違点)
「風量調整機構を設けた、二重床の床パネルからタスク域に空気を供給するパーソナル吹出口」における「風量調整機構」の構造及び「パーソナル吹出口」の配置位置が、本願補正発明においては 、「開口部に装着された複数の羽根を有する開閉可能なシャッター」及び「床パネル(それ自体)」であるのに対し、刊行物1記載の発明においては、「開口上流部に設置された送風量が調節可能なフアン9」及び「座席2」である点。

4.判断
そこで、相違点につき検討する。

まず、刊行物2記載の発明と本願補正発明を対比すると、刊行物2記載の発明における「開閉シャッタを備え」は本願補正発明における「開閉可能なシャッターを装着し」に相当し、以下同様に、「二重床チャンバ21」は「二重床」に、「床20」は「床パネル」に、「床吹き出し口35」は「パーソナル吹出口」に、各々相当する。

そうすると、タスク空調を行う床吹き出し空調システムおける風量調整可能な開口に関する発明である刊行物2記載の発明は、次のように言い換えることができる。

「開閉可能なシャッターを装着し、二重床の床パネルからタスク域に空気を供給するパーソナル吹出口。」

よって、刊行物1記載の発明において、「風量調整機構」の構造及び「パーソナル吹出口」の配置位置を、「開口部に装着された開閉可能なシャッター」及び「床パネル(それ自体)」とすることは、刊行物2記載の発明に倣って、当業者が容易に想到し得た事項である。

また、刊行物2には「開閉可能なシャッター(開閉シャッタ)」の具体的構造に関する記載はないが、床吹き出し空調を行う空調システムの技術分野において、吹出口に装着される開閉可能なシャッターとして「複数の羽根を有する開閉可能なシャッター」を用いることは、例えば、周知刊行物1(摘記事項コ「複数枚の羽37」参照)、周知刊行物2(摘記事項サ「シャッター64、66、68、70」参照)、周知刊行物3(摘記事項シ「ブレード9a?9h」参照)記載のように、従来より周知の技術手段である。

したがって、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用するに際して、「開閉可能なシャッター」の具体的構造として「複数の羽根を有する開閉可能なシャッター」を採用することは、上記周知の技術手段に倣って、当業者が、適宜なし得た事項である。

そして、本願補正発明により得られる効果も、刊行物1、2記載の発明及び上記周知の技術手段から、当業者であれば、予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1、2記載の発明及び上記周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.結び
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上述のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成23年6月7日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
パッケージ空調機であり、室内のタスク域に空気を供給するタスク空調機と、
パッケージ空調機であり、室内のアンビエント域に空気を供給するアンビエント空調機と、
室の下部に設け、前記タスク空調機から空気を供給される二重床と、
前記二重床の床パネルからタスク域に空気を供給するパーソナル吹出口と、
を備え、
前記パーソナル吹出口は、複数の羽根を有する開閉可能なシャッターを装着する
ことを特徴とする空調システム。」

2.引用刊行物とその記載事項
原査定で引用された刊行物(刊行物1、2)並びに周知刊行物と、その記載事項は、上記の「第2.2」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明における発明特定事項である「タスク空調機及びアンビエント空調機」に関して
「前記タスク空調機と前記アンビエント空調機のそれぞれの容量は、全負荷を一台の空調機で使用する場合の容量と比較して小さい」
との限定を削除するとともに、
「複数の羽根を有する開閉可能なシャッターを装着し、前記二重床の床パネルからタスク域に空気を供給するパーソナル吹出口と、
を備え、」との記載を、語順を戻して
「前記二重床の床パネルからタスク域に空気を供給するパーソナル吹出口と、
を備え、
前記パーソナル吹出口は、複数の羽根を有する開閉可能なシャッターを装着する」
としたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.4」に記載したとおり、刊行物1、2記載の発明及び上記周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから(本願補正発明においては、「タスク空調機及びアンビエント空調機」の容量に関する発明特定事項が付加がなされている。しかし、この付加された発明特定事項は、刊行物1に記載されている事項であり、相違点とはならなかった。)、本願発明も、同様の理由により、刊行物1、2記載の発明及び上記周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.結び
以上のとおり、本願発明は、刊行物1、2記載の発明及び上記周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-31 
結審通知日 2012-06-13 
審決日 2012-06-26 
出願番号 特願2006-168678(P2006-168678)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 礒部 賢  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長浜 義憲
前田 仁
発明の名称 空調システム  
代理人 小山 卓志  
代理人 青木 健二  
代理人 田中 貞嗣  
代理人 米澤 明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ