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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1261295 |
審判番号 | 不服2010-5735 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-03-16 |
確定日 | 2012-08-08 |
事件の表示 | 特願2000-558473「保管された情報へのアクセス、閲覧及び操作」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月13日国際公開、WO00/02146、平成14年 7月 9日国内公表、特表2002-520697〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、1999年6月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年7月2日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成21年4月13日付けで拒絶理由通知がなされ、同年10月19日付けで手続補正がなされたが、同年11月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成22年3月16日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年3月16日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正後の請求項1に係る発明 本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「1以上のコンピュータを備えるコンピュータシステムに保存された、1組以上のエントリの組を含むデータへのアクセス及び該データの閲覧、操作をコンピュータに行わせる方法であって、 前記コンピュータがその記憶装置に、前記データへのアクセス及び前記データの閲覧、操作を行うためのコンピュータプログラムを有し、前記コンピュータプログラムが実行する過程として、 前記コンピュータシステムの前記コンピュータの1つに備えられた記憶装置にあるジャーナルから1組のエントリの組を取り出す過程と、 前記コンピュータシステムの前記コンピュータの1つに備えられた記憶装置にある永続的なアーカイブに前記エントリの組を格納する過程と、 前記コンピュータの1つに備えられた記憶装置にあるノートブックに、前記エントリの1以上に対する参照の集合を2以上作成して格納する過程と、 前記コンピュータの1つに関連する表示装置に、前記参照の集合の1以上と前記エントリの1以上とを、ユーザが操作可能な形式で表示する過程とを含むことを特徴とする方法。」 と補正された。 上記補正は、補正前の請求項1における「1以上の参照の集合を格納する」を「参照の集合を2以上作成して格納する」に限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件手続補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された「近藤秀樹、三宅芳雄,情報共有に基づいたウェブ上の検索システム,第13回ヒューマン・インタフェース・シンポジウム論文集,日本,計測自動制御学会:ヒューマン・インタフェース部会,1997年10月23日,第377頁乃至第380頁」(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。 A.「最近では、WWW上で探した情報を手元に電子的な形で取っておくことも普通である。自分が手元に蓄積した情報は、多量な情報の中から自分にとって有用な情報を探索するという知的作業の結果であり、有効性の高い情報であると考えられる。 このような情報は他の人にとっても価値が高い可能性がある。特に同じような興味、目的、背景を持つ人がいた場合、自分が既に集めた情報はその人にとって、有用性が高いだろう。反対にその人が集めた情報は自分にとっても有効なものが多いだろう。集めた情報を互いに共用し利用することができれば、自分で始めから探索するよりもずっと効率的に必要な情報を手に入れることができる。例えば自分がアニメーションに興味を持っている時、同じアニメーションに興味を持っている仲間が既に集めた情報は自分にとっても意義が大きく有用性が高いだろう。」(第378頁左欄第2?16行) B.「上記のような考察に基づいてWebの情報を共有するシステムを実現し、情報共有の効果を検証することにした。Webの上で集められた情報が集積されているものの一つにいわゆるbookmarkがある。代表的なWebのブラウザにNetscape Navigatorがあるが、そのユーザは発見した有効なWeb上のページを後にも使えるように「ブックマークしておく」ことが少なくない。このようなbookmarkされたページは既に選択された情報であり、仲間の間で共有することが有効である可能性が高い。」(第378頁左欄第29行?右欄第2行) 上記A.及びB.には、WWW上の情報を集積したものであるbookmarkを、WWW上の情報の探索に利用することについての記載がされている。WWWというのは、1以上のコンピュータに分散して保存されている情報(Web上のページ)にアクセスし、該情報の閲覧や操作をコンピュータに行わせるシステムであるから、上記A.及びB.には、「1以上のコンピュータを備えるコンピュータシステムに保存された、1組以上のページの組を含む情報へのアクセス及び該情報の閲覧、操作をコンピュータに行わせる方法」が実質的に記載されているといえる。 そして、コンピュータが上記情報へのアクセスなどを行うためのコンピュータプログラムを記憶装置に有し、このコンピュータプログラムを用いて情報へのアクセスなどを行っていることは明らかである。そして、一般に情報処理分野において、コンピュータが、その記憶装置に、情報へのアクセス及び前記情報の閲覧、操作を行うためのコンピュータプログラムを有していることは、技術常識ともいえることである。 上記B.を参照すると、Webの上で集められた情報(Web上のページ)をbookmarkに集積することが示されている。ここで、技術常識を参酌すると、「bookmark」がコンピュータに備えられた記憶装置に記憶されていることは明らかであり、上記「Web上のページをbookmarkに集積する」というのは、Web上のページそのものを集積するのではなく、Web上のページの1以上に対する参照の集合をbookmarkに格納することを意味するものである。そして、「bookmarkに集積する」ためには、Webのブラウザなどのコンピュータプログラムが用いられるものであるから、上記B.に示された「Webの上で集められた情報であるWeb上のページをbookmarkに集積する」というのは、「コンピュータプログラム」が「コンピュータの1つに備えられた記憶装置にあるbookmarkに、Web上のページの1以上に対する参照の集合を作成して格納する」過程を実行することを意味しているといえる。 そしてまた、「bookmark」は、集めた情報を後でアクセスするために利用されるものであるから、集めた情報である、Web上のページに対する参照の集合を、選択操作可能な形式で表示装置に表示するようにすることは、当然に行われていることであり、また、アクセスしたWeb上のページそのものについてもページ内のハイパーリンクをクリックするなどの操作が可能な形式で表示することも、当然に行われていることであるから、Webのブラウザなどのコンピュータプログラムは、表示装置に、bookmarkに集積されたWeb上のページに対する参照の集合や、前記Web上のページそのものを、ユーザが操作可能な形式で表示するようにしているといえる。 よって、上記A.及びB.の記載を参照すると、引用例には、実質的に、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例記載の発明」という。) 「1以上のコンピュータを備えるコンピュータシステムに保存された、1組以上のWeb上のページの組を含む情報へのアクセス及び該情報の閲覧、操作をコンピュータに行わせる方法であって、 前記コンピュータがその記憶装置に、前記情報へのアクセス及び前記情報の閲覧、操作を行うためのコンピュータプログラムを有し、前記コンピュータプログラムが実行する過程として、 前記コンピュータの1つに備えられた記憶装置にあるbookmarkに、前記Web上のページの1以上に対する参照の集合を作成して格納する過程と、 前記コンピュータの1つに関連する表示装置に、前記参照の集合と前記Web上のページの1以上とを、ユーザが操作可能な形式で表示する過程とを含む方法。」 (3)対比 本願補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明における「Web上のページ」、「情報」、「bookmark」は、それぞれ、本願補正発明における「エントリ」、「データ」、「ノートブック」に相当するものである。 上記の事項を踏まえると、本願補正発明と引用例記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。 (一致点) 本願補正発明と引用例記載の発明とは、ともに、 「1以上のコンピュータを備えるコンピュータシステムに保存された、1組以上のエントリの組を含むデータへのアクセス及び該データの閲覧、操作をコンピュータに行わせる方法であって、 前記コンピュータがその記憶装置に、前記データへのアクセス及び前記データの閲覧、操作を行うためのコンピュータプログラムを有し、前記コンピュータプログラムが実行する過程として、 前記コンピュータの1つに備えられた記憶装置にあるノートブックに、前記エントリの1以上に対する参照の集合を作成して格納する過程と、 前記コンピュータの1つに関連する表示装置に、前記参照の集合と前記エントリの1以上とを、ユーザが操作可能な形式で表示する過程とを含む方法。」 である点。 (相違点) 相違点1:本願補正発明は、「コンピュータシステムのコンピュータの1つに備えられた記憶装置にあるジャーナルから1組のエントリの組を取り出す過程」及び「コンピュータシステムのコンピュータの1つに備えられた記憶装置にある永続的なアーカイブにエントリの組を格納する過程」を含んでいるのに対し、引用例記載の発明は、そのような過程を含むとはされていない点。 相違点2:本願補正発明は、「参照の集合を2以上作成」し、「前記参照の集合の1以上」を表示しているのに対し、引用例記載の発明は、そのようなものであるとはされていない点。 (4)判断 そこで、上記相違点1,2について検討する。 (相違点1について) 一般に、WWWにおいて、Webのブラウザなどによって他のシステムからアクセスされるWebサーバ上には、修正する必要のない、公開できる状態となった文書等のWeb上のページを格納し、作成途中の修正が必要な該ページは、Webサーバとは別のコンピュータに格納して、該ページの修正作業等を行い、公開できる状態になると、該ページを前記別のコンピュータからWebサーバへ移して、Webサーバの記憶装置に格納するようにすることは、ごく普通に行なわれていることであるから、引用例記載の発明においても、1組のWeb上のページの組をWebサーバとは別のコンピュータ上で作成し、前記別のコンピュータの記憶装置内の所定の箇所から作成された前記Web上のページの組を取り出し、Webサーバの記憶装置内の所定の箇所に前記Web上のページの組を格納するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 ここにおいて、上記「Webサーバとは別のコンピュータの記憶装置内の所定の箇所」は、いつでも修正することができ、他のシステムからアクセスされることのない文書等のWeb上のページを格納するものであるところ、本願補正発明における「コンピュータシステムのコンピュータの1つに備えられた記憶装置にあるジャーナル」の中の「ジャーナル」が、本願の国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文の段落【0010】、【0011】などの記載を参酌すると、ユーザによっていつでも修正することができ、他の構成要素から利用することができないジャーナルエントリを有するものであると解されることを勘案するならば、本願補正発明における「コンピュータシステムのコンピュータの1つに備えられた記憶装置にあるジャーナル」は、上記「Webサーバとは別のコンピュータの記憶装置内の所定の箇所」に包含されるものである。 また、上記「Webサーバの記憶装置内の所定の箇所」は、修正する必要のない、他のシステムからアクセスすることできる前記Web上のページの組を格納するものであるところ、本願補正発明における「コンピュータシステムのコンピュータの1つに備えられた記憶装置にある永続的なアーカイブ」の中の「永続的なアーカイブ」が、本願の国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文の段落【0011】などの記載を参酌すると、「永続的な」という用語は記載されていないが、ユーザによって修正不可能な状態にして、他の構成要素が利用することが出来るようになったエントリを保存する箇所を意味するものと解されることを勘案するならば、本願補正発明における「コンピュータシステムのコンピュータの1つに備えられた記憶装置にある永続的なアーカイブ」は、上記「Webサーバの記憶装置内の所定の箇所」に包含されるものである。 したがって、引用例記載の発明において、本願補正発明における「コンピュータシステムのコンピュータの1つに備えられた記憶装置にあるジャーナルから1組のエントリの組を取り出す過程」及び「コンピュータシステムのコンピュータの1つに備えられた記憶装置にある永続的なアーカイブにエントリの組を格納する過程」を含むように構成することも、当業者が容易に想到し得るといえることである。 (相違点2について) 引用例から摘示した上記(2)A.に示されているように、bookmarkには、それを利用するユーザの興味、目的、背景に応じた様々な種類のWeb上のページに対する参照が格納されているものである。そして、通常、興味等の対象が複数ある場合には、それぞれの興味等に応じたWeb上のページに対する参照の集合を整理して別々のbookmarkとして格納するものであり、また、それらを表示するに当たって個別に表示させることは普通に行なうことであるから、引用例記載の発明にいおいても、「参照の集合を2以上作成」するとともに、「前記参照の集合の1以上」を表示するようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。 (本願補正発明の作用効果について) そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明及び周知技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび よって、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.補正却下の決定を踏まえた検討 (1)本願発明 平成22年3月16日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成21年10月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「1以上のコンピュータを備えるコンピュータシステムに保存された、1組以上のエントリの組を含むデータへのアクセス及び該データの閲覧、操作をコンピュータに行わせる方法であって、 前記コンピュータがその記憶装置に、前記データへのアクセス及び前記データの閲覧、操作を行うためのコンピュータプログラムを有し、前記コンピュータプログラムが実行する過程として、 前記コンピュータシステムの前記コンピュータの1つに備えられた記憶装置にあるジャーナルから1組のエントリの組を取り出す過程と、 前記コンピュータシステムの前記コンピュータの1つに備えられた記憶装置にある永続的なアーカイブに前記エントリの組を格納する過程と、 前記コンピュータの1つに備えられた記憶装置にあるノートブックに、前記エントリの1以上に対する1以上の参照の集合を格納する過程と、 前記コンピュータの1つに関連する表示装置に、前記参照の集合の1以上と前記エントリの1以上とを、ユーザが操作可能な形式で表示する過程とを含むことを特徴とする方法。」 (2)引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明における「参照の集合を2以上作成して格納する」の限定を省いて「1以上の参照の集合を格納する」としたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定の限定を省いた本願発明は、同様に、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-03-09 |
結審通知日 | 2012-03-13 |
審決日 | 2012-03-26 |
出願番号 | 特願2000-558473(P2000-558473) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 紀田 馨 |
特許庁審判長 |
長島 孝志 |
特許庁審判官 |
岩崎 伸二 久保 正典 |
発明の名称 | 保管された情報へのアクセス、閲覧及び操作 |
代理人 | 大島 陽一 |