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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01C 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01C |
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管理番号 | 1261330 |
審判番号 | 不服2011-7395 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-03-22 |
確定日 | 2012-08-08 |
事件の表示 | 特願2000-129735「チップ分離搬送装置のローター」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月 9日出願公開、特開2001-313204〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年4月28日の出願であって、平成22年1月19日付け拒絶理由通知に応答して平成22年3月29日付け(受付日3月30日)で意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成22年12月10日付けで拒絶査定され、これに対して平成23年3月22日付け(受付日3月23日)に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成23年3月22日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成平成23年3月22日付けの補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願特許請求の範囲 当該補正は特許請求の範囲の記載を、次のとおりとするものである。 【請求項1】 円板状のローター本体の円周部に等角度毎にチップを1個宛出入自在に装填する長方形のチップ凹部を形成してなるローターを、高速間欠回転しつつその各チップ凹部にフィダー等で1列搬送してくるチップを1個宛に分離移乗装填して搬送し、搬送過程の一時停止時に、ローターの円周部に近接して備えた各種測定手段及び排除手段で各チップ凹部内のチップの各種測定及び不良チップの排除を行ったのち、設定位置でチップテープその他のチップ保持手段に1個宛移乗供給するように備えたものである周知構成のチップ分離搬送装置における周知構成のローターにおいて、 前記ローターにおける個々のチップ凹部の部分をローター本体と別素材のインサート部品で備えことを特徴とするものであり、 前記インサート部品をチップ凹部及びその設定周辺部分に相当する形状の長方形に備える一方、前記ローター本体をローター本体の円周部の等角度毎に上記インサート部品を嵌合するに見合った長方形の嵌合凹部を形成して備えたものであり、 前記ローター本体の各嵌合凹部に前記各インサート部品を一体的に嵌合固着することにより設けるようにしたことを特徴とする、 チップ分離搬送装置のローター。 【請求項2】 前記インサート部品を、耐摩擦性、絶縁性に優れた特性を有する硬質素材をもって、チップ凹部及びその設定周辺部分に相当する形状の長方形板片の一辺に前記チップ凹部3を形成して備えたことを特徴とする、 請求項1のチップ分離搬送装置のローター。 【請求項3】 前記インサート部品の片面の中心線上にチップ凹部の後部に通じる通気用の溝を切設したことを特徴とする、 請求項1のチップ分離搬送装置のローター。 【請求項4】 前記ローター本体を、プラスチック若しくは金属の絶縁性若しくは導電性の軽量で加工容易な素材製の円板の、円周部に等角度毎に上記インサート部品を嵌合するに見合った長方形の嵌合凹部を形成して備えたことを特徴とする、 請求項1のチップ分離搬送装置のローター。 【請求項5】 前記ローター本体の前記各嵌合凹部を、下面、前面開口で、上面、後面及び左右側面からなる長方形の凹部に形成すると共に、その上面の前面側に余剰接着剤を逃がす円弧形の切欠部をチップ凹部の平面より大に備え、もって、前記インサート部品を前記嵌合凹部に一体的に嵌合固着したときに余剰接着剤が直接チップ凹部にかからないようにしたことを特徴とする、 請求項1のチップ分離搬送装置のローター。 【請求項6】 前記インサート部品を前記ローター本体の各嵌合凹部に一体的に嵌合固着してローターを製造するにつき、 各インサート部品を前記切欠部を形成した各嵌合凹部に接着剤を介して嵌合加圧して、余剰接着剤を円弧形の切欠部にはみ出させることによって直接チップ凹部にかからないようにしつつ固着し、 上記のようにしてローター本体の各嵌合凹部にインサート部品を一体的に固着したものの、各切欠部が位置するローター本体の円周部の上面を切削除去して、ローター本体の円周部に各インサート部品のチップ凹部を露出形成して、ローター本体の円周部の等角度毎にチップ凹部を備えたローターを製し、次いで前記ローター全体を高精度寸法研磨加工して、ローターを完成するようにしたことを特徴とする、 請求項1のチップ分離搬送装置のローターの製造法。 【請求項7】 前記インサート部品を製造するにつき、 前記インサート部品用の複数個の小形長方形板片を用意し、各板片の前面を1直線上に揃え各上下面を重合並列してセットし、そのセット状態で各板片の前面中心線上を貫通して断面形状がチップ凹部の形状及び寸法の直線溝を切削することにより、各インサート部品のチップ凹部を全て均一に設けるようにしたことを特徴とする、 請求項1のチップ分離搬送装置のローターのインサート部品の製造法。 2.当該補正前の特許請求の範囲 これに対し、当該補正前の特許請求の範囲の記載は、出願当初の特許請求の範囲を平成22年3月29日付けで補正したものであって、その請求項1から5は以下のとおりである。 「【請求項1】 円板状のローター本体の円周部に等角度毎にチップを1個宛出入自在に装填する長方形のチップ凹部を形成してなるローターを、高速間欠回転しつつその各チップ凹部にフィダー等で1列搬送してくるチップを1個宛に分離移乗装填して搬送し、搬送過程の一時停止時に、ローターの円周部に近接して備えた各種測定手段及び排除手段で各チップ凹部内のチップの各種測定及び不良チップの排除を行ったのち、設定位置でチップテープその他のチップ保持手段に1個宛移乗供給するように備えたチップ分離搬送装置のローターであり、該ローターのチップ凹部の部分をローター本体と別素材のインサート部品で設けるようにしたものであり、インサート部品をチップ凹部及びその設定周辺部分に相当する形状の長方形に設ける一方、ローター本体をローター本体の円周部の等角度毎に上記インサート部品を嵌合するに見合った長方形の嵌合凹部を形成して設けて、ローターをローター本体の各嵌合凹部にインサート部品を一体的に嵌合固着することにより設けるようにしたチップ分離搬送装置のローターにおいて、前記長方形のインサート部品の片面の中心線上にチップ凹部の後部に通じる通気用の溝を切設したことを特徴とする、チップ分離搬送装置のローター。 【請求項2】 円板状のローター本体の円周部に等角度毎にチップを1個宛出入自在に装填する長方形のチップ凹部を形成してなるローターを、高速間欠回転しつつその各チップ凹部にフィダー等で1列搬送してくるチップを1個宛に分離移乗装填して搬送し、搬送過程の一時停止時に、ローターの円周部に近接して備えた各種測定手段及び排除手段で各チップ凹部内のチップの各種測定及び不良チップの排除を行ったのち、設定位置でチップテープその他のチップ保持手段に1個宛移乗供給するように備えたチップ分離搬送装置のローターであり、該ローターのチップ凹部の部分をローター本体と別素材のインサート部品で設けるようにしたものであり、インサート部品をチップ凹部及びその設定周辺部分に相当する形状の長方形に設ける一方、ローター本体をローター本体の円周部の等角度毎に上記インサート部品を嵌合するに見合った長方形の嵌合凹部を形成して設けて、ローターをローター本体の各嵌合凹部にインサート部品を一体的に嵌合固着することにより設けるようにしたチップ分離搬送装置のローターにおいて、前記インサート部品を前記嵌合凹部に一体的に嵌合固着してローターを設けるにつき、当初、ローター本体の各嵌合凹部を下面、前面開口で、上面、後面及び左右側面からなる長方形の凹部に形成すると共に、その上面の前面側に余剰接着剤を逃がす円弧形の切欠部をチップ凹部平面より大に形成して、各嵌合凹部に接着剤を介してインサート部品を嵌合加圧して固着したときに、円弧形の切欠部にはみ出した余剰接着剤が直接チップ凹部にかからないようにしてローター本体の各嵌合凹部にインサート部品を固着し、上記のようにローター本体の各嵌合凹部にインサート部品を一体的に固着したのち、各切欠部が位置するローター円周部の上面を切削除去して、ローター本体の円周部の等角度毎にチップ凹部を形成した状態とし、最後にローターの上下面の全体を高精度寸法研磨加工して、ローターを設けるようにしたことを特徴とする、チップ分離搬送装置のローターの製造法。 【請求項3】 インサート部品用の複数個の小形長方形板片を用意し、各板片の前面を1直線上に揃え各上下面を重合並列してセットし、そのセット状態で各板片の前面中心線上を貫通して断面形状がチップ凹部の形状及び寸法の直線溝を切削することにより、各インサート部品のチップ凹部を全て均一に設けるようにしたことを特徴とする、チップ分離搬送装置のローターのインサート部品の製造法。 」 なお、当該補正について、審判請求人は審判請求書(平成23年5月26日付け手続補正書)において、補正の理由を何ら示していない。 3.当該補正の適否 以下、これら当該特許請求の範囲についてする補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、平成18年改正前特許法、あるいは単に特許法とする)第17条の2第4項各号の規定に掲げる条件をみたすものであるか順次検討する。 (1)平成18年改正前特許法第17条の2第4項は、次の各号に規定する事項を目的とするものに限って補正を認めているところ、本件審判事件に係る当該補正が、この規定のうち、一号および三号の各規定を目的とするものでないことは明らかである。 一 第36条第5項に規定する請求項の削除 二 特許請求の範囲の減縮 (第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。) 三 誤記の訂正 四 明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。) (2)また、補正前の特許請求の範囲の請求項1?3の全ての請求項において不明りょうな記載不備は存在せず、係る理由で拒絶理由通知は通知されていないから、同法同条第4項四号に規定する事項を目的とするものとは認められない。 (3)次に、同法同条第4項二号に規定する事項を目的とするものであるかについて検討するに、まず、本件補正は、特許請求の範囲における請求項の数が、補正前に3であったものを、補正後に7とする増項補正であるから、補正前後の請求項の対応関係を確認する。 新たな請求項1?5は「ローター」に係る発明であり、新たな請求項6、7は「ローターの製造方法」に係る発明であり、補正前の請求項1が「ローター」に係る発明であり、補正前の請求項2、3が「ローターの製造方法」に係る発明であることから、新たな請求項1?5は補正前の請求項1に基づいて補正をしたものであることが明らかである。 そして、新たな請求項1?5と補正前の請求項1を対比すれば、新たな請求項1を引用する新たな請求項3が補正前の請求項1に対応することが、その記載内容から明らかである。したがって、「ローター」に係る発明である新たな請求項1?5の内、その余の請求項である、請求項1、2、4は本件補正前に存在しなかった内容として加えられた新たな請求項といえる。 そこで、その余の請求項の内、新たな請求項1が同法同条第4項二号に規定する事項を目的とするものであるかについて検討するに、新たな請求項1は、補正前の請求項1の内容から、「前記長方形のインサート部品の片面の中心線上にチップ凹部の後部に通じる通気用の溝を切設したこと」という発明を特定するための要件(すなわちを新たな請求項3に記載された内容の限定)を除外したものであることは、その記載内容から明らかである。 そうすると、本件補正の内、請求項1についての補正は、補正前の各請求項により特定される発明から、発明を特定するための構成要件の一部を除外することにより、発明の範囲を拡張するものである。 してみれば、発明の範囲を拡張する補正は、特許請求の範囲を限定的に減縮するものではないから、請求項1に対する当該補正は、特許法第17条の2第4項2号の規定を目的とするものとも認められない。 したがって、請求項1に対する補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に規定する何れの事項をも目的とするものではない。 よって、当該補正は特許法同条同項の規定に違反するものであるから、他の請求項についての補正目的を検討するまでもなく、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明の認定 平成23年3月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成22年3月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1から請求項3までに記載した事項により特定されるとおりのものと認められる。 そのうち、請求項1に係る発明は、下記のとおりである。 「 【請求項1】 円板状のローター本体の円周部に等角度毎にチップを1個宛出入自在に装填する長方形のチップ凹部を形成してなるローターを、高速間欠回転しつつその各チップ凹部にフィダー等で1列搬送してくるチップを1個宛に分離移乗装填して搬送し、搬送過程の一時停止時に、ローターの円周部に近接して備えた各種測定手段及び排除手段で各チップ凹部内のチップの各種測定及び不良チップの排除を行ったのち、設定位置でチップテープその他のチップ保持手段に1個宛移乗供給するように備えたチップ分離搬送装置のローターであり、該ローターのチップ凹部の部分をローター本体と別素材のインサート部品で設けるようにしたものであり、インサート部品をチップ凹部及びその設定周辺部分に相当する形状の長方形に設ける一方、ローター本体をローター本体の円周部の等角度毎に上記インサート部品を嵌合するに見合った長方形の嵌合凹部を形成して設けて、ローターをローター本体の各嵌合凹部にインサート部品を一体的に嵌合固着することにより設けるようにしたチップ分離搬送装置のローターにおいて、前記長方形のインサート部品の片面の中心線上にチップ凹部の後部に通じる通気用の溝を切設したことを特徴とする、チップ分離搬送装置のローター。」 (以下、これを本願発明とする。) 2.引用刊行物に記載の発明 (1)原査定の拒絶理由に引用された刊行物1(特開2000-7136号公報)には、以下の(ア)?(ウ)の事項が図面とともに記載されている。 (ア)「【請求項1】直進フィダーで1列搬送してくるチップを、高速間欠回転する円板の円周部に等間隔にチップ装填用の凹部を形成したローターの各凹部に、1個宛分離装填して搬送し、搬送の過程で各種の検査計測等を行って不良チップを凹部外へ排除し、設定位置まで搬送したチップをチップテープ等のチップ保持手段に1個宛移乗供給するようにしたチップ1個分離搬送装置において、 直進フィダーのチップ搬送溝の先端を直にローターの凹部入口に近接相対して備えて、チップを直進フィダーのチップ搬送溝の先端からローターの凹部へ該凹部の吸気孔の吸気力で直接吸引装填するように備えると共に、 上記チップ搬送溝の先端部の上方にストッパーピンを上下移動自在に備え、また、チップ搬送溝の先端部若しくは該先端部とローターの凹部入口の間の上下位置に光センサーを備えたことを特徴とする、 チップの1個分離搬送装置。 【請求項2】直進フィダーのチップ搬送溝の一側辺にトラブルを生じたチップ排出用の切欠部を形成すると共にその下方位置に吸引排出用の吸気排除孔を形成したものであり、 チップ搬送溝の先端からローターの凹部へ吸引装填する途中で両者間で噛んでつかえたチップやそれによって破損したチップ等のトラブルを生じたチップを、該トラブルの発生を検知して凹部の吸気孔から噴出するように備えた噴気力と吸気排除孔の吸気力、及びローターの1ステップ回転によるトラブルチップの解放、凹部入口の吸気排除孔方向への移動等の全て若しくは何れかにより、上記切除部から吸気排除孔内へ排除するように備えたことを特徴とする、 トラブルチップの排除装置。 」 (イ)「【0016】 【実施例】「トラブルチップの排除装置」直進フィダー1のチップ搬送溝1aの一側辺にトラブルを生じたチップ排出用の切欠部8を形成すると共にその下方位置に吸引排出用の吸気排除孔9を形成したものであり、チップ搬送溝1aの先端からローター2の凹部3へ吸引装填する途中で両者間で噛んでつかえたチップtやそれによって破損したチップt等のトラブルを生じたチップtを、該トラブルの発生を検知して凹部3の吸気孔5から噴出するように備えた噴気力と吸気排除孔9の吸気力、及びローター2の1ステップ回転によるトラブルチップtの解放、凹部3入口の吸気排除孔9方向への移動等の全て若しくは何れかにより、上記切除部8から吸気排除孔9内へ排除するように備えたトラブルチップの排除装置である。 【0017】また、上記の吸気排除孔9を直進フィダー1の先端部に形成した切欠部8の下方位置に開口して備え、該開口部を必要に応じてチップ搬送溝1aと相対した凹部3入口に近接した位置から1ステップ次位の凹部3入口の位置まで長く若しくは広く開口して備えるようにしたものである。 」 (ウ)「【0018】 【作用】直進フィダー1のチップ搬送溝1aに1列に整列して搬送してきたチップtの先頭のチップtをストッパーピン6が下降して1時停止し、前のチップtを装填したローター2の凹部3が1ステップ回転して次位の凹部3がチップ搬送溝1aの先端部と相対すると、 【0019】ストッパーピン6が上昇してチップtを解放し、同時に凹部3の吸気孔5の吸気力が該チップtを凹部3へ吸引装填する。 」 なお、図2,図3には、通気流路を形成する吸気孔5が図示されているが、該吸気孔5は機能として「孔」と表現されているものの、ローター本体2の上面と上部部材(番号付与なし)に設けられた溝により吸気孔を形成するものである。 したがって、これらの記載を総合すれば、刊行物1には次の発明が記載されている。 (以下、刊行物1発明という。) [刊行物1発明] (エ)円板状のローター本体の円周部に等角度毎にチップを1個宛出入自在に装填する(長方形の)チップ凹部を形成してなるローターを、高速間欠回転しつつその各チップ凹部に直進フィダーで1列搬送してくるチップを1個宛に分離移乗装填して搬送し、搬送過程の一時停止時に、各チップ凹部内のチップの各種検査計測をするとともに、排除手段で不良チップの排除を行ったのち、設定位置でチップテープ等のチップ保持手段に1個宛移乗供給するように備えたチップ分離搬送装置のローターであって、 ローターには、チップ凹部にチップを吸引装填、噴出排除するための吸気孔5が設けられているチップ分離搬送装置のローター。 3. 対比・判断 本願発明と刊行物1発明を対比する。 刊行物1発明は、搬送過程の一時停止時に、各チップ凹部内のチップの各種検査計測をするものであるから、ローターの円周部に近接して各種測定手段を備えていることは自明である。ローターの円周部に近接して各種測定手段を備えていなければ、各チップ凹部内のチップの各種検査計測をすることはできない。 したがって、両者は次の(オ)の点で一致する。 また、(カ)の点において相違がある。 [一致点] (オ)円板状のローター本体の円周部に等角度毎にチップを1個宛出入自在に装填する長方形のチップ凹部を形成してなるローターを、高速間欠回転しつつその各チップ凹部にフィダー等で1列搬送してくるチップを1個宛に分離移乗装填して搬送し、搬送過程の一時停止時に、ローターの円周部に近接して備えた各種測定手段及び排除手段で各チップ凹部内のチップの各種測定及び不良チップの排除を行ったのち、設定位置でチップテープその他のチップ保持手段に1個宛移乗供給するように備えたチップ分離搬送装置のローター [相違点] (カ)本願発明が、該ローターのチップ凹部の部分を「ローター本体と別素材のインサート部品で設けるようにしたものであり、インサート部品をチップ凹部及びその設定周辺部分に相当する形状の長方形に設ける一方、ローター本体をローター本体の円周部の等角度毎に上記インサート部品を嵌合するに見合った長方形の嵌合凹部を形成して設けて、ローターをローター本体の各嵌合凹部にインサート部品を一体的に嵌合固着することにより設けるようにしたチップ分離搬送装置のローターにおいて、前記長方形のインサート部品の片面の中心線上にチップ凹部の後部に通じる通気用の溝を切設した」ものであるのに対し、刊行物1発明は、ローターのチップ凹部の部分を、そのような「ローター本体と別素材のインサート部品で設けるようにしたもの」ではない点。 以下、当該相違点について検討する。 原査定の拒絶理由に引用された刊行物2(実願平4-046049号(実開平6-1337号)のCD-ROM)には、図4及び段落【0014】、【0016】等の記載から明らかなように、次の(キ)なる発明が記載されている。 [刊行物2発明] (キ)チップ型電子部品を搬送用ディスク1の収納溝に供給して搬送に用いるチップ分離搬送装置において、収納溝の破損、摩耗を少なくするために、金属製のディスク本体2の各溝3(すなわち、長方形嵌合凹部)の内面に、あらかじめ形成されたセラミック等の電気絶縁材から成るカバー12(すなわち、インサート部品)が嵌められ、接着等の手段により固定されている、電子部品の搬送用ディスク1。 そうすると、刊行物1発明も刊行物2発明もチップ分離搬送装置のローターに係る発明であるから、刊行物1発明におけるチップ凹部において、刊行物2発明の技術を適用することは当業者が容易に想起することである。 ただし、刊行物1発明におけるチップ凹部において、刊行物2発明の技術を単にそのまま適用したのみでは、本願発明には至らない。 本願発明と、刊行物1発明におけるチップ凹部において刊行物2発明の技術をそのまま適用した発明とには、次の相違点(ク)が残存することになる。 [残存相違点] (ク)ローター本体に嵌合固着される長方形のインサート部品が、「片面の中心線上にチップ凹部の後部に通じる通気用の溝を切設した」ものである点。 当該残存相違点(ク)について検討する。 刊行物1発明は、(エ)として上記したように、ローターには、チップ凹部にチップを吸引装填、噴出排除するための吸気孔5が設けられているものである。 なお、上記したように刊行物1発明の実施例において吸気孔は溝とローター本体の上面で形成されている。 そのような刊行物1発明に刊行物2発明を単に適用すると、嵌合固着される長方形のインサート部品によって、吸気孔は塞がれて、吸気孔による吸引、噴出が不可能になり、その結果、チップは装填、排出ができなくなることは明らかである。 したがって、刊行物1発明に刊行物2発明を適用するにあたっては、インサート部品が吸気孔に連接して吸引、噴出に寄与するための通気流路を備えることが当然である。 そして、通気流路の形状が溝であって、該溝がインサート部品の中心線上であることは設計的事項にすぎないことである。 本願発明においては、発明を特定するするための構成要素について「溝」として表現されているが、単なる「溝」では吸引・噴出するための通気流路となり得ないのであって、溝の対向側にはディスク本体が存在して、実質的には「溝」とディスクの面とで孔を構成して通気流路となるのであって、本願発明において、通気流路が「溝」であることは、実質的には、「溝」とディスク面で通気流路を形成するということを意味する。 そして、刊行物1発明における「溝」とディスク面で通気流路となる吸気孔5を形成していることを鑑みれば、該、吸気孔に連接して設けられる通気流路をも「溝」構造とすることは自然な設計的事項にすぎないことである。 本願発明において、該通気流路が「溝」であることの理由、「溝」でなければならない理由、「溝」であることの格別な効果があるわけではない。 また、インサート部品が吸気孔に連接して吸引、噴出に寄与するための通気流路(溝)がインサート部品の中心線上であることは、通気流路がチップを装填、排出するためのものであることを鑑みれば、極めて自然な考え方である。特段の理由がなければ、通気流路(溝)がインサート部品の中心線上からずれた位置にする必然性はない。 刊行物1発明の実施例は、吸気孔5の位置がチップの中心線上に存在しないから、刊行物1発明の実施例に刊行物2発明を単に適用した場合には、ローター本体に嵌合固着される長方形のインサート部品が、「片面の中心線上にチップ凹部の後部に通じる通気用の溝を切設した」ものとはならないが、中心線上からずらす格別の理由がなければ中心線上に通気流路(溝)を設けることが自然の考え方であるから、刊行物1発明の実施例の吸気孔がチップ部品の中心線上にないということが当該判断の妨げにはならない。 してみれば、当該[残存相違点](ク)は単なる設計的事項であって、結果として、[相違点](カ)は、刊行物1発明に刊行物2発明を適用した際の普通の結果であるものと判断される。 よって、本願発明は、刊行物1発明及び刊行物2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとした拒絶査定は妥当なものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-05-25 |
結審通知日 | 2012-06-05 |
審決日 | 2012-06-19 |
出願番号 | 特願2000-129735(P2000-129735) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(H01C)
P 1 8・ 121- Z (H01C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 右田 勝則 |
特許庁審判長 |
板橋 通孝 |
特許庁審判官 |
乾 雅浩 齊藤 健一 |
発明の名称 | チップ分離搬送装置のローター |