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審決分類 |
審判 訂正 判示事項別分類コード:812 訂正する H01G 審判 訂正 判示事項別分類コード:813 訂正する H01G |
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管理番号 | 1261726 |
審判番号 | 訂正2010-390046 |
総通号数 | 154 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-10-26 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2010-05-13 |
確定日 | 2010-09-03 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3630056号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3630056号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
1 請求の要旨 本件審判の請求の要旨は、特許第3630056号発明(平成12年1月26日特許出願、平成16年12月24日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、下記訂正事項aのとおり訂正することを求めるものである。 [訂正事項a] 明細書の段落【0032】中の「各積層コンデンサ50個あたりの半田喰われ発生率を示す。」を「各積層コンデンサの半田喰われ発生率を示す。」に訂正する。 2 当審の判断 (1)明細書の段落【0031】【表1】では、半田喰われ発生率を「0.1%」及び「0.01%」単位で記載(以下「記載A」という。)しているから、最低でも1万個単位のデータであることになる。 そうすると、段落【0032】中の「各積層コンデンサ50個あたりの半田喰われ発生率を示す。」との記載(以下「記載B」という。)は、記載Aと整合せず、記載A,Bいずれかの記載、もしくはいずれの記載も、誤記と認められる。 (2)そこで、記載A,Bの信ぴょう性について以下に検討する。 ア 平成22年8月11日付け上申書に参考資料1として添付された再現実験報告書の結果である、Ag厚み4μmNi厚み0.7μmの場合「2/2000=0.1%」、Ag厚み6μmNi厚み0.7μmの場合「2/2000=0.1%」、Ag厚み4μmNi厚み1.0μmの場合「0/10000=0%」、Ag厚み6μmNi厚み1.0μmの場合「1/10000=0.01%」、Ag厚み4μmNi厚み1.5μmの場合「0/20000=0%」、及びAg厚み6μmNi厚み1.5μmの場合「0/20000=0%」は、明細書の段落【0031】【表1】の半田喰われ発生率の「0.1%」、「0.1%」、「0%」、「0.01%」、「0%」及び「0%」とそれぞれ符合している。 イ 平成22年8月11日付け上申書に参考資料2として添付された納入仕様書によれば、積層セラミックコンデンサにおける出荷不良率は、2005年?2010年において、0.12?0.22PPM、すなわち、100万個に0.12?0.22個であることが分かる。 ウ 平成22年8月11日付け上申書に参考資料3として添付された「電子部品における高品質保証体制」(『品質』11巻3号52頁左欄?右欄「2.1 PPMレベルの高品質水準」)によれば、電子部品における品質保証体制がPPMレベルの高品質水準であることが分かる。 エ そうすると、記載Aが正しく、記載Bが誤記であることは、明らかである。 (3)上記(2)の検討結果から、段落【0032】中の「各積層コンデンサ50個あたりの半田喰われ発生率を示す。」との記載Bは、上記段落【0031】【表1】の記載Aと整合しない明りょうでない記載、あるいは誤記と認められる。 そこで、明りょうでない記載、あるいは誤記と認められる「50個あたり」との記載を削除することは、明りょうでない記載の釈明、あるいは誤記の訂正に該当する。 また、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 むすび したがって、本件審判の請求は、特許法第126条第1項第2号又は第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項ないし第5項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 チップ型電子部品及びチップ型コンデンサ (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 長手方向寸法が略0.6mm以下、幅方向寸法が略0.3mm以下、厚み方向寸法が略0.3mm以下であり、長さ方向両端に位置する第1,第2の端面を有する電子部品素体と、 前記電子部品素体の第1,第2の端面を覆い、かつ電子部品素体の端面に隣接する他の面に至る電極被り部を有するように、第1,第2の外部電極が形成されており、各外部電極が、焼結金属層と、焼結金属層上に形成されたNiメッキ層とを備えるチップ型電子部品において、 前記長さ方向及び厚み方向と平行であり、幅方向と直交する方向に断面視した場合に、電子部品素体の端面と、隣接する他の面とのエッジ部における前記焼結金属層の最も薄い部分の厚みT1が10μm以下であり、該部分上のNiメッキ層の厚みT2が6μm以下であり、T2>T1×0.25であることを特徴とする、チップ型電子部品。 【請求項2】 前記電子部品素体のエッジ部が丸められており、前記断面視した場合のエッジ部の曲率半径が30μm以下であり、上記断面視した場合のエッジ部における焼結金属層の外表面の曲率半径が60μm以下である、請求項1に記載のチップ型電子部品。 【請求項3】 前記Niメッキ層上に形成されており、かつSn、Pb及びSn-Pbのうち1種からなるメッキ層をさらに備える、請求項1または2に記載のチップ型電子部品。 【請求項4】 長手方向寸法が略0.6mm以下、幅方向寸法が略0.3mm以下、厚み方向寸法が略0.3mm以下であり、長さ方向両端に位置する第1,第2の端面を有するコンデンサ素体と、 前記コンデンサ素体の第1,第2の端面を覆い、かつコンデンサ素体の端面に隣接する他の面に至る電極被り部を有するように、第1,第2の外部電極が形成されており、各外部電極が、焼結金属層と、焼結金属層上に形成されたNiメッキ層とを備えるチップ型コンデンサにおいて、 前記長さ方向及び厚み方向と平行であり、幅方向と直交する方向に断面視した場合に、コンデンサ素体の端面と、隣接する他の面とのエッジ部における前記焼結金属層の最も薄い部分の厚みT1が10μm以下であり、該部分上のNiメッキ層の厚みT2が6μm以下であり、T2>T1×0.25であることを特徴とする、チップ型コンデンサ。 【請求項5】 前記Niメッキ層上に形成されており、かつSn、Pb及びSn-Pbのうち1種からなるメッキ層をさらに備える、請求項4に記載のチップ型コンデンサ。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、例えば積層コンデンサのようなチップ型電子部品及びチップ型コンデンサに関し、より詳細には、電子部品素体及び電子部品素体の外表面に形成される外部電極が改良されたチップ型電子部品及びチップ型コンデンサに関する。 【0002】 【従来の技術】 近年、電子機器の小型化に伴い、積層コンデンサを始めとする様々なチップ型電子部品では、より一層の小型化が求められている。従来、小型のチップ型積層コンデンサとしては、長さ方向寸法3.2mm×幅方向寸法1.6mm×厚み方向寸法1.25mmのものが広く用いられてきた。この積層コンデンサの構造を図3(a)及び(b)に示す。 【0003】 積層コンデンサ51では、セラミック焼結体52内に、内部電極53a?53dが形成されている。内部電極53a,53cと電気的に接続されるように、端面52aに外部電極54が形成されている。また、内部電極53b,53dと電気的に接続されるように、端面52bを覆うように外部電極55が形成されている。 【0004】 外部電極54,55は、それぞれ、銀ペーストを塗布し、焼き付けることにより形成された焼結金属層54a,55aと、焼結金属層54a,55a上に湿式メッキにより形成されたNiメッキ層54b,55bと、Snメッキ層54c,55cとを有する。上記寸法の積層コンデンサ51では、銀ペーストが、端面52aまたは52b側から塗布されるが、セラミック焼結体52のエッジ部において厚みが薄くなりがちであった。例えば、図3(a)の円Aを拡大して示す図3(b)から明らかなように、銀ペーストの塗布厚みがエッジ部において相対的に薄くなり、そのため焼結金属層54aの厚みがエッジ部において薄くなりがちであった。すなわち、端面52a,52bと、端面52a,52bに隣接する上面52c、下面52d及び側面とのなすエッジ部において、焼結金属層54a,55aの厚みが薄くなりがちであった。 【0005】 エッジ部において、焼結金属層54a,54bの厚みが薄くなると、プリント回路基板などに実装する際に、焼結金属層54a,54bの半田喰われが生じ易くなる。 【0006】 従って、従来、エッジ部をバレル研磨等により丸め、それによってエッジ部における焼結金属層54a,54bの厚みを増大させることが試みられている。 しかしながら、積層コンデンサ51の小型化が進むにつれて、溶融半田を用いてプリント回路基板などに実装する場合に溶融半田の表面張力によりチップ型積層コンデンサ51が一方の外部電極54,55が上方を向くように起立する、いわゆるツームストーン現象が生じがちとなる。 【0007】 他方、上記のように、セラミック焼結体52のエッジ部を丸めるための研磨量が小さくなると、半田喰われが生じ易くなる。 そこで、積層コンデンサ51では、半田喰われを防止するために、焼結金属層54a,55aの表面にNiメッキ層54b,55bが形成されている。このNiメッキ層54b,55bの厚みは通常1?2μm程度であり、ほぼ均一な厚みに形成されている。上記半田喰われを防止するには、Niメッキ層の厚みを厚くすることが好ましい。 【0008】 他方、湿式メッキ法により形成されたNiメッキ層54b,55bは、セラミック焼結体52に締め付け応力を与える。従って、半田喰われを防止するために、Niメッキ層54b,55bの厚みを厚くすると、セラミック焼結体52にクラック等が発生しがちとなる。特に、Niメッキ層の厚みを6μmより厚くした場合、上記クラックが生じ易くなることがわかっている。 【0009】 加えて、Niメッキ層54b,55bの厚みを厚くするために、湿式メッキ時に流す電流を大きくすると、Niメッキ層54b,55bの厚みばらつきが生じ易くなる。また、水素が発生するために、Niメッキ層54b,55b表面に、ピットと称されている凹凸が発生し易くなる。 【0010】 他方、厚みが薄くなりがちである上記エッジ部上において、焼結金属層54a,55aを構成するための銀ペースト塗布厚みを厚くした場合には、エッジ部上において外部電極54,55の丸みが大きくなり、やはり前述したツームストーン現象が発生しがちとなる。 【0011】 一般に、電子部品の外部電極では、膜厚が均一であることが求められている。しかしながら、上記外部電極54,55では、焼結金属層54a,55aは、ペースト浸漬法により銀ペーストを塗布することにより形成されることが多い。従って、上記のように、導電ペースト塗布厚みを大きくすると、外部電極54,55のエッジ部上における丸みが大きくなり、ツームストーン現象が発生し易くなる。逆に、導電ペースト塗布厚みを薄くした場合には、エッジ部上においてさらに焼結金属層54a,55aの厚みが薄くなり、半田喰われが発生し易くなる。 【0012】 よって、本発明の目的は、さらに小型化を進めた場合であっても、プリント回路基板などに実装する際のツームストーン現象を確実に防止することができ、かつエッジ部における半田喰われを防止し得るチップ型電子部品及びチップ型コンデンサを提供することにある。 【0013】 【課題を解決するための手段】 本発明に係るチップ型電子部品は、長手方向寸法が略0.6mm以下、幅方向寸法が略0.3mm以下、厚み方向寸法が略0.3mm以下であり、長さ方向両端に位置する第1,第2の端面を有する電子部品素体と、前記電子部品素体の第1,第2の端面を覆い、かつ電子部品素体の端面に隣接する他の面に至る電極被り部を有するように、第1,第2の外部電極が形成されており、各外部電極が、焼結金属層と、焼結金属層上に形成されたNiメッキ層とを備えるチップ型電子部品において、前記長さ方向及び厚み方向と平行であり、幅方向と直交する方向に断面視した場合に、電子部品素体の端面と、隣接する他の面とのエッジ部における前記焼結金属層の最も薄い部分の厚みT1が10μm以下であり、該部分上のNiメッキ層の厚みT2が6μm以下であり、T2>T1×0.25であることを特徴とする。 【0014】 本発明に係るチップ型電子部品の特定の局面では、前記電子部品素体のエッジ部が丸められており、前記断面視した場合のエッジ部の曲率半径が30μm以下であり、上記断面視した場合のエッジ部における焼結金属層の外表面の曲率半径が60μm以下である。 【0015】 本発明に係るチップ型コンデンサは、長手方向寸法が略0.6mm以下、幅方向寸法が略0.3mm以下、厚み方向寸法が略0.3mm以下であり、長さ方向両端に位置する第1,第2の端面を有するコンデンサ素体と、前記コンデンサ素体の第1,第2の端面を覆い、かつコンデンサ素体の端面に隣接する他の面に至る電極被り部を有するように、第1,第2の外部電極が形成されており、各外部電極が、焼結金属層と、焼結金属層上に形成されたNiメッキ層とを備えるチップ型コンデンサにおいて、前記長さ方向及び厚み方向と平行であり、幅方向と直交する方向に断面視した場合に、コンデンサ素体の端面と、隣接する他の面とのエッジ部における前記焼結金属層の最も薄い部分の厚みT1が10μm以下であり、該部分上のNiメッキ層の厚みT2が6μm以下であり、T2>T1×0.25であることを特徴とする。 【0016】 本発明に係るチップ型電子部品及びチップ型コンデンサでは、好ましくは、前記Niメッキ層上に形成されており、かつSn、Pb及びSn-Pbのうち1種からなるメッキ層がさらに備えられる。 【0017】 【発明の実施の形態】 以下、図面を参照しつつ本発明に係るチップ型電子部品及びチップ型コンデンサとしての積層コンデンサを具体的に説明することにより、本発明を明らかにする。 【0018】 図1(a)及び(b)は、本発明の一実施例に係る積層コンデンサの縦断面図及び(a)における円Aを拡大して示す部分切欠拡大断面図である。 積層コンデンサ1は、セラミック焼結体2を用いて構成されている。本実施例では、上記積層コンデンサ1は、長さ方向寸法が略0.6mm以下、幅方向寸法が略0.3mm以下、厚み方向寸法が略0.3mm以下の寸法を有する。なお、長さ方向とは、セラミック焼結体2の対向し合う第1,第2の端面2a,2bを結ぶ方向をいい、厚み方向とは、セラミック焼結体2の上面2cと下面2dとを結ぶ方向をいい、幅方向とは、長さ方向及び幅方向と直交する方向をいうものとする。 【0019】 セラミック焼結体2は、例えばチタン酸バリウム系セラミックスのような誘電体セラミックスにより構成されている。セラミック焼結体2内には、セラミック焼結体層を介して重なり合うように、複数の内部電極3a?3dが形成されている。内部電極3a,3cは、端面2aに引き出されており、内部電極3b,3dは端面2bに引き出されている。 【0020】 端面2aを覆うように第1の外部電極4が形成されている。第1の外部電極4は、端面2aだけでなく、端面2aに隣接する他の面、すなわち上面2c、下面2d及び一対の側面にも至るように形成されている。この端面2aに隣接している面に至っている外部電極部分を電極被り部4Aとする。 【0021】 第2の端面2bにも、外部電極4と同様に第2の外部電極5が形成されている。第2の外部電極5もまた、電極被り部5Aを有する。 第1,第2の外部電極4,5は、それぞれ、端面2a,2b側から導電ペーストを塗布し、焼き付けることにより形成された焼結金属層4a,5aを有する。焼結金属層を構成するための上記導電ペーストとしては、銀ペースト、銅ペースト、銀-パラジウム合金ペーストなど、適宜の導電性に優れた金属粉末含有導電ペーストを用いることができる。 【0022】 また、焼結金属層4a,5aの外表面には、湿式メッキ法により、半田喰われを防止するためにNiメッキ層4b,5bが形成されている。さらに、最外側表面には、すなわちNiメッキ層4b,5bの外側表面には、同じく湿式メッキ法により、半田付け性を高めるために、Snメッキ層4c,5cが形成されている。 【0023】 上記Niメッキ層4b,5bが、上記のように半田喰われ防止層として機能し、Snメッキ層4c,5cが易半田付け性層として作用する。 なお、本実施例では、易半田付け性層としてSnメッキ膜を形成したが、Snメッキ膜に変えて、Sn-Pb合金メッキ膜やPbメッキ膜など他の半田付け性に優れた材料からなるメッキ膜を形成してもよい。 【0024】 本実施例の積層コンデンサ1の特徴は、長さ方向寸法と厚み方向に平行な断面、すなわち図1に示されている断面において、エッジ部上の焼結金属層4a,5aの最も薄い部分の厚みT1が10μm以下であり、かつNiメッキ層4b,5bの同じくエッジ部上における厚みが6μm以下とされており、T2>T1×0.25とされていることにある。 【0025】 前述したように、積層コンデンサの小型化に伴って、ツームストーン現象が生じ易くなっている。従って、上記ツームストーン現象を抑制するには、セラミック焼結体2のエッジ部、すなわち端面2a,2bと、上面2c、下面2d及び一対の側面とのなす端縁部分を丸める加工量を小さくする必要がある。このエッジ部の加工量を、図1に示した断面、すなわち長さ方向及び厚み方向に平行な断面におけるエッジ部の曲率半径Rに基づき、以下、R量とする。このR量が小さいほど、曲率半径Rが小さく、従って丸みが少なく、R量が大きいほど、エッジ部が大きく丸められていることになる。 【0026】 上記のように、ツームストーン現象を抑制する場合、積層コンデンサ全体、すなわち外部電極4,5を形成した後におけるエッジ部におけるR量を小さくする必要がある。外部電極、特に焼結金属層4a,4bを構成するための導電ペースト塗布厚みが多い場合には、最終的な積層コンデンサ1におけるエッジ部におけるR量が大きくなる。 【0027】 従って、焼結金属層4a,5aを形成するための導電ペーストが、可能なかぎり薄くかつ均一に塗布し、さらにセラミック焼結体2のエッジ部のR量自体も小さくする必要がある。 【0028】 しかしながら、セラミック焼結体2のエッジ部のR量が小さくなると、導電ペーストのエッジ部上の塗布厚みが薄くなり、半田喰われが生じ易くなる。 そこで、本願発明者らは、上記ツームストーン現象の抑制と、半田喰われの防止の双方を果たすために、種々検討した結果、上記のように、略0.6mm以下×略0.3mm以下×略0.3mm以下のセラミック焼結体2を用いた場合、焼結金属層の最も薄い部分の厚みT1を10μm以下とし、Niメッキ層の厚みT2を6μm以下とし、T2>T1×0.25とすればよいことを見い出した。これを、具体的な実験例に基づき説明する。 【0029】 長さ方向寸法が0.57mm、幅方向寸法が0.27mm、厚み方向寸法が0.27mmのセラミック焼結体2を用い、セラミック焼結体2のエッジ部の上記R量を示す曲率半径が20?25μmである積層コンデンサを種々作製した。この場合、焼結金属層4a,5aの厚みを4μmあるいは6μmとし、Niメッキ層4b,5bの厚みを0.7、1.0、1.5及び2μmと変化させた。 【0030】 上記のようにして得られた各積層コンデンサについて、プリント回路基板上に250℃の温度で60秒間の条件で半田付けを行い、焼結金属層4a,5aの半田喰われ発生率を調査した。結果を下記の表1に示す。 【0031】 【表1】 【0032】 なお、表1において、半田喰われ発生率は、直径5μm以上の半田喰われが存在する場合に半田喰われが発生したものとし、各積層コンデンサの半田喰われ発生率を示す。これまで、焼結金属層の厚み及びNiメッキ層の厚みが厚いほど、焼結金属層に直径5μm以上の半田喰われが生じ難いと考えられていた。 【0033】 しかしながら、このように非常に小さなチップ型積層コンデンサにおいて、導電ペーストをディッピング法により付与する場合、該導電ペーストの塗布厚みを制御するのは非常に難しい。すなわち、同じ導電ペーストを用いる場合、セラミック焼結体2のエッジ部のR量を変化させねばならない。 【0034】 この場合、図2(a)に示すように、R量が非常に小さい場合には、エッジ部において、導電ペースト11の塗布厚みが非常に薄くなる。また、図2(b)に示すように、R量が大き過ぎる場合には、薄い部分の面積が大きくなるため半田喰われが発生し易くなったり、また実装上ではツームストーン等が起き易くなる。 【0035】 これに対して、表1から明らかなように、半田喰われ発生率は、焼結金属層4a,5aの厚みと、Niメッキ層4b,5bの厚みの比によっても変化することがわかる。すなわち、T2>T1×0.25とすれば、半田喰われを効果的に防止し得ることが確かめられた。 【0036】 従って、本実施例のように長さ方向寸法が略0.6mm以下、幅方向寸法が略0.3mm以下、及び厚み方向寸法が0.3mm以下の電子部品素体を用いたチップ型積層コンデンサにおいて、焼結金属層のエッジ部における最も薄い部分の厚みT1を10μm以下、該エッジ部におけるNiメッキ層の厚みをT2を6μm以下とした場合、T2>T1×0.25とすることにより、半田喰われを確実に防止することができる。 【0037】 また、Niメッキ層4b,5bの厚みをT2が6μm以下であるため、セラミック焼結体2のNiメッキ層4b,5bからの締め付け応力によるクラックも生じ難い。さらに、メッキに際しメッキ電流を大きくする必要がないため、Niメッキ層4b,5bの厚みばらつきやピットと称されている凹凸の発生も抑制することができる。 【0038】 加えて、焼結金属層4a,5aの最も薄い部分の厚みT1が10μm以下とされているので、ツームストーンを抑制することができる。 なお、上記積層コンデンサ1において、図1に示した断面から見た場合のエッジ部の曲率半径が30μmを超えると、素体のエッジ部上での外部電極の膜厚を十分に確保し難くなる。また、エッジ部における焼結金属層の外表面の曲率半径が60μmを超えると、上記のような小型のチップ型積層コンデンサ1のツームストーン現象が生じ易くなる。 【0039】 上記実施例では、積層コンデンサについて説明したが、本発明に係るチップ型電子部品は、積層コンデンサだけでなく、長さ方向寸法が略0.6mm以下、幅方向寸法が略0.3mm以下、厚み方向寸法略0.3mm以下の電子部品素体を有し、該電子部品素体の第1,第2の全面を覆うように外部電極が形成されている様々なチップ型電子部品に適用することができる。例えば、チップ型サーミスタ、チップ型抵抗素子、チップ型バリスタなどにも適用することができる。 【0040】 【発明の効果】 本発明に係るチップ型電子部品では、長さ方向寸法が略0.6mm以下、幅方向寸法が略0.3mm以下、及び厚み方向寸法が略0.3mm以下である非常に小さい電子部品素体を用いたチップ型電子部品において、長さ方向及び厚み方向と平行であり、幅方向と直交する方向に断面視した場合に、電子部品素体の端面と、隣接する他の面とのエッジ部における焼結金属層の最も薄い部分の厚みT1が10μm以下であり、該部分上のNiメッキ層の厚みT2が6μmであり、T2>T1×0.25とされているので、ツームストーン現象の発生を抑制し得るとともに、焼結金属層の半田喰われを効果的に抑制することができる。 【0041】 また、特に、上記断面視した場合の電子部品素体のエッジ部の曲率半径が30μm以下であり、エッジ部における焼結金属層の外表面の曲率半径が60μm以下の場合には、外部電極の素体エッジ部上における膜厚を十分な大きさとすることができ、かつツームストーン現象をより確実に抑制することができる。 【0042】 本発明に係るチップ型コンデンサでは、長さ方向寸法が略0.6mm以下、幅方向寸法が略0.3mm以下、及び厚み方向寸法が略0.3mm以下である非常に小さいコンデンサ素体を用いたチップ型コンデンサにおいて、長さ方向及び厚み方向と平行であり、幅方向と直交する方向に断面視した場合に、コンデンサ素体の端面と、隣接する他の面とのエッジ部における焼結金属層の最も薄い部分の厚みT1が10μm以下であり、該部分上のNiメッキ層の厚みT2が6μmであり、T2>T1×0.25とされているので、ツームストーン現象の発生を抑制し得るとともに、焼結金属層の半田喰われを効果的に抑制することができる。 【0043】 また、特に、上記断面視した場合のコンデンサ素体のエッジ部の曲率半径が30μm以下であり、エッジ部における焼結金属層の外表面の曲率半径が60μm以下の場合には、エッジ部上の外部電極の膜厚を十分な大きさとすることができ、かつツームストーン現象をより確実に抑制することができる。 【0044】 本発明において、Niメッキ層上に、Sn、PbまたはSn-Pbからなるメッキ層が形成されている場合には、外部電極の半田付け性が高められる。 【図面の簡単な説明】 【図1】(a)及び(b)は、本発明の一実施例に係るチップ型電子部品としてのチップ型積層コンデンサの縦断面図及び(a)中の円Aで示した部分の拡大断面図。 【図2】(a)及び(b)は、それぞれ、セラミック焼結体のエッジ部のR量が小さい場合及び大きい場合の焼結金属層の膜厚の変化を示す各部分切欠断面図。 【図3】(a)及び(b)は、従来の積層コンデンサの一例を示す縦断面図及び(a)中の円Aで示した部分の拡大図。 【符号の説明】 1…積層コンデンサ 2…セラミック焼結体 2a,2b…第1,第2の端面 2c…上面 2d…下面 3a?3d…内部電極 4,5…第1,第2の外部電極 4A,5A…電極被り部 4a,5a…焼結金属層 4b,5b…Niメッキ層 4c,5c…Snメッキ層 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2010-08-23 |
出願番号 | 特願2000-17427(P2000-17427) |
審決分類 |
P
1
41・
812-
Y
(H01G)
P 1 41・ 813- Y (H01G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大澤 孝次 |
特許庁審判長 |
橋本 武 |
特許庁審判官 |
加藤 俊哉 小野田 誠 |
登録日 | 2004-12-24 |
登録番号 | 特許第3630056号(P3630056) |
発明の名称 | チップ型電子部品及びチップ型コンデンサ |
代理人 | 速見 禎祥 |
代理人 | 速見 禎祥 |
代理人 | 岩坪 哲 |
代理人 | 岩坪 哲 |