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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63H
管理番号 1261852
審判番号 不服2011-4822  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-02 
確定日 2012-08-15 
事件の表示 特願2007-529812「玩具構築セット方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月16日国際公開、WO2006/028493、平成20年 4月17日国内公表、特表2008-511383〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2005年2月9日(パリ条約による優先権主張2004年9月2日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成22年10月26日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成23年3月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされ,同時に手続補正がなされたものである。
平成23年11月8日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったが,回答書は提出されなかった。

第2 平成23年3月2日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成23年3月2日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容,補正後の本願発明
平成23年3月2日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,特許請求の範囲の請求項1について,次のとおりに補正しようとする補正を含む。
補正前(平成22年9月10日付け手続補正書を参照)
「【請求項1】
成形プラスチックから成る平面構造玩具であって,
複数の構造素子ピースを含み,
各構造素子ピースは,第一平面を定め,第二端部に延びる第一端部を有し,それによって,軸を定め,前記第一端部は,スロットを有し,
該スロットは,前記軸の一部に沿って,前記第一端部から前記第二端部に向かって所定距離だけ延び,
前記スロットは,前記第一端部に隣接する外端部と,内端部とを有し,
前記スロットは,前記外端部に隣接して前記スロット内に一対の対向する外部圧痕を有し,前記スロットは,更に,前記内端部に隣接して前記スロット内に一対の対向する内部圧痕を有し,該内部圧痕及び前記外部圧痕は,他の構造素子ピースと連結するために構成され,
各構造素子ピースは,底部側と反対側の頂部側を有し,前記スロットは,前記頂部側から前記底部側に配置され,
各構造素子ピースは,更に,前記軸に沿って前記頂部側から前記底部側に各構造素子ピース内に配置される一対の開口を含み,
該開口は,中心ポストによって所定距離だけ離間し,前記中心ポストは,他の構造素子ピースの前記スロット内に受容され且つ前記内部圧痕内に保持されるように構成され且つ寸法取られる,
平面構造玩具。」を,

補正後
「【請求項1】
成形プラスチックから成る平面構造玩具であって,
複数の構造素子ピースを含み,
各構造素子ピースは,第一平面を定め,第二端部に延びる第一端部を有し,それによって,軸を定め,前記第一端部は,スロットを有し,
該スロットは,前記軸の一部に沿って,前記第一端部から前記第二端部に向かって所定距離だけ延び,
前記スロットは,前記第一端部に隣接する外端部と,内端部とを有し,
前記スロットは,前記外端部に隣接して前記スロット内に一対の対向する外部圧痕を有し,前記スロットは,更に,前記内端部に隣接して前記スロット内に一対の対向する内部圧痕を有し,該内部圧痕及び前記外部圧痕は,他の構造素子ピースと連結するために構成され,
各構造素子ピースは,底部側と反対側の頂部側を有し,前記スロットは,前記頂部側から前記底部側に配置され,
各構造素子ピースは,更に,前記軸に沿って前記頂部側から前記底部側に各構造素子ピース内に配置される一対の開口を含み,
該開口は,中心ポストによって所定距離だけ離間し,
一方の構造素子ピースの前記中心ポストは,前記一方の構造素子ピースが他方の構造素子ピースに対して前記中央ポストについて旋回可能であるよう,前記他方の構造素子ピースの前記スロット内に受容され且つ前記内部圧痕内に保持されるように構成され且つ寸法取られる,
平面構造玩具。」
とする。

補正後の請求項1の「中央ポスト」は,「中心ポスト」の誤記と認め,以下,検討する。
上記補正は,一方の構造素子ピースの中心ポストを,他方の構造素子ピースに対して中心ポストについて「旋回可能であるよう,」他方の構造素子ピースのスロット内に受容され且つ内部圧痕内に保持されるように構成され且つ寸法取られるものに特定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする。

そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「補正発明」という。)が,特許出願の際,独立して特許を受けることができるものかについて検討する。

2 刊行物及びその記載内容
刊行物 米国特許第4758196号明細書

(1)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張の日前に頒布された上記刊行物には,以下の記載がある。
(1a)「As shown in FIGS. 1-3, the block unit of the present invention comprises a circular disk means 1 and a ladder-shaped link means 2, each circular disk means 1 serving as a point or a vertex and each ladder-shaped link means 2 serving as a line section for a geometric shape.
・・・
Each ladder-shaped link means 2 includes a pair of parallel longitudinal bars 22 transversely connected by a central bar 21 perpendicular to the two longitudinal bars 22 and also transversely connected by a pair of side bars 27 each bar 27 positioned on an outer side of the central bar 21 and perpendicular to the two bars 22, having a pair of side clamps 23 disposed on two opposite ends of the two side bars 37. Each side clamp 23 includes an outer notch 24, a middle notch 25 and an inner notch 26 inwardly subsequently formed along a slit 230 recessed from the outermost end of each clamp 23. A pair of intermediate windows 28 are formed on two opposite sides of the central bar 21 each window 28 defined by the two longitudinal bars 22, each side bar 27 and the central bar 21. On the intermediate surface of each longitudinal bar 22, there is formed with corrugations 29 to limit the longitudinal slipping of the assembled links.」
(図1?3に示されるように,本発明のブロックユニットは,円形ディスク手段1と梯子状リンク手段2を含み,幾何学的形状において,円形ディスク手段1はポイントや頂点として,梯子状リンク手段2は線部分として機能する。
・・・
梯子状リンク手段2のそれぞれは2本の縦棒22に対して直角に配置される中央棒21と,同じく一対の側棒27,27であって中央棒21の外側に配置される側棒27,27とによって横方向に連結された1対の平行な棒22を含み,2の側棒の両側端に配された一対の側クランプ23を有する。側クランプ23のそれぞれは,クランプ23の外端から設けたスリット230の内側に形成された外ノッチ24,中ノッチ25,内ノッチ26を含む。一対の中間窓28が中央棒21の両側端に形成され,中間窓28は縦棒22,側棒27,中央棒21によって画定される。縦棒22の中間部の表面には組み立てられたリンクの長手方向の滑りを制限するための起伏29が形成される。)
(1b)「In FIG. 4, one link means 2 is coupled to the other link 2 by coupling one outer notch 24 of the right link 2 with the other side bar 27 (as shown in dotted line) of the left link 2, and the right link 2 can be further pushed leftwards to deeply couple the left link 2 until the inner notch 26 of the right link 2 engaging with the right side bar 27 of left link 2 (full line). Plural links 2 can be linearly assembled to form a geometric line or line section.」
(図4で,1のリンク手段2は他のリンク手段2と右側のリンク2の外ノッチ24が左側のリンク2の側棒27(点線で記載)と組み合わせられることによって組み合わせられ,右側のリンク2はさらに左側に押されて右側のリンク2の内ノッチ26が左側のリンク2(実線)の側棒27とかみ合うまで深く組み合わせることができる。)
(1c)「In FIG. 5, other styles for assembling the links 2 can be optionally done to form diversified geometric structure or skeleton. Any notch of the link 2 should be able to engage with either central bar 21, or side bar 27 or longitudinal bar 22 in any direction of other link.」
(図5で,リンク2を組み合わせる他の形式が,多様な幾何学的構造または骨格を形成するためになされ得る。他のリンクがどのような方向であってもリンク2のどのノッチも中央棒21または側棒27または縦棒22とかみ合うことが可能とすべきである。)
(1d) FIG3?5には,以下の図が示され,リンク手段2が頂部及び底部を有する平面状であって,平面視が長手方向に離間した一方の端部と他方の端部を短辺とする概略長方形状であり,一方の端部と他方の端部をつなぐ軸(長方形の長手方向の中心の軸)を仮想した場合,スリット230はリンク手段の端部から該軸の一部に沿って一方の端部から他方の端部に向かって所定距離だけ延び,頂部から底部まで切り欠いて設けられ,スリットの外端部に隣接して溝をはさんで一対の凹んだ形状に形成される外ノッチ24を有し,スリットの内端部に隣接して溝をはさんで一対の凹んだ形状に形成される内ノッチ26を有し,更に,該軸に沿って一対の中間窓28が頂部から底部まで貫通して設けられ,一対の中間窓28は中央棒21によって所定距離だけ離間したものであることが示されている。





(1c)の「Any notch of the link 2 should be able to engage with either central bar 21, or side bar 27 or longitudinal bar 22 in any direction of other link.(他のリンクがどのような方向であってもリンク2のどのノッチも中央棒21または側棒27または縦棒22とかみ合うことが可能とすべきである。)」との記載及び(1d)の図4,図5の記載から,内ノッチと中央棒とが,「一方の梯子状リンク手段2の中央棒21は,一方の梯子状リンク手段2が他方の梯子状リンク手段2に対して中央棒21について旋回可能であるよう,他方の梯子状リンク手段2のスリット230内に受容され且つ内ノッチ26内に保持されるように構成され,寸法取られ」ていることは明らかである。
また,複数の梯子状リンク手段2は,円形ディスク手段1が無くても幾何学的構造を形成する要素として成立するのは当業者に明らかであるから,上述の記載事項(1a)?(1d)の記載から見て,刊行物1には,以下の発明が記載されているものと認められる。(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

「複数の梯子状リンク手段2を含み,
各梯子状リンク手段2は平面状であり,一方の端部と他方の端部とを有し,一方の端部と他方の端部とから軸が定められるものであり,一方の端部はスリット230を有し,
スリット230は,該軸の一部に沿って一方の端部から他方の端部に向かって所定距離だけ延び,
スリット230は,一方の端部に隣接する外端部と,内端部とを有し,
スリット230は,外端部に隣接してスリット230内に一対の凹んだ形状に形成される外ノッチ24を有し,更に,内端部に隣接してスリット230内に一対の凹んだ形状に形成される内ノッチ26を有し,内ノッチ26及び外ノッチ24は,他の梯子状リンク手段2と連結するために構成されるものであり,
各梯子状リンク手段2は,底部側と反対側の頂部側を有し,スリットは,頂部側から底部側まで切り欠いて配置され,
各梯子状リンク手段2は,更に,軸に沿って頂部側から底部側まで貫通して設けられる,各梯子状リンク手段2内に配置される一対の中間窓28を含み,
中間窓は,中央棒21によって所定距離だけ離間し,
一方の梯子状リンク手段2の中央棒21は,一方の梯子状リンク手段2が他方の梯子状リンク手段2に対して中央棒21について旋回可能であるよう,他方の梯子状リンク手段2のスリット230内に受容され且つ内ノッチ26内に保持されるように構成され,寸法取られる,複数の梯子状リンク手段2のセット。」

3 対比
補正発明と刊行物1記載の発明とを対比する。
刊行物1記載の発明の「梯子状リンク手段2」は補正発明の「構造素子ピース」に相当し,以下同様に,「一方の端部」は「第一端部」に,「他方の端部」は「第二端部」に,「スリット230」は「スロット」に,「外部圧痕」は「外ノッチ」に,「内部圧痕」は「内ノッチ」に,「中間窓28」は「開口」に,「複数の梯子状リンク手段2のセット」は「平面構造玩具」に,それぞれ相当する。

補正発明の「第二端部に延びる第一端部を有し,それによって,軸を定め,」は,明細書及び図面全体の記載からみて,構造素子ピースが第一端部と第二端部を有し,両端部をつなぐ仮想軸が定められることを規定するものと認められる。そして,刊行物1記載の発明も,第一端部と第二端部から同様に軸が仮想的に定められるものであるから,刊行物1記載の発明の「一方の端部と他方の端部とを有し,一方の端部と他方の端部とから軸が定められるものであり」は,補正発明の「第二端部に延びる第一端部を有し,それによって,軸を定め,」に相当する。

刊行物1記載の発明の「各梯子状リンク手段2は,底部側と反対側の頂部側を有し,スリットは,頂部側から底部側まで切り欠いて配置され,」は,補正発明の「各構造素子ピースは,底部側と反対側の頂部側を有し,前記スロットは,前記頂部側から前記底部側に配置され,」に相当する。

よって,補正発明と刊行物1記載の発明とは,以下の一致点,相違点を有する。

一致点
「平面構造玩具であって,
複数の構造素子ピースを含み,
各構造素子ピースは,第一平面を定め,第二端部に延びる第一端部を有し,それによって,軸を定め,前記第一端部は,スロットを有し,
該スロットは,前記軸の一部に沿って,前記第一端部から前記第二端部に向かって所定距離だけ延び,
前記スロットは,前記第一端部に隣接する外端部と,内端部とを有し,
前記スロットは,前記外端部に隣接して前記スロット内に一対の対向する外部圧痕を有し,前記スロットは,更に,前記内端部に隣接して前記スロット内に一対の対向する内部圧痕を有し,該内部圧痕及び前記外部圧痕は,他の構造素子ピースと連結するために構成され,
各構造素子ピースは,底部側と反対側の頂部側を有し,前記スロットは,前記頂部側から前記底部側に配置され,
各構造素子ピースは,更に,前記軸に沿って前記頂部側から前記底部側に各構造素子ピース内に配置される一対の開口を含み,
該開口は,中心ポストによって所定距離だけ離間し,
一方の構造素子ピースの前記中心ポストは,前記一方の構造素子ピースが他方の構造素子ピースに対して前記中央ポストについて旋回可能であるよう,前記他方の構造素子ピースの前記スロット内に受容され且つ前記内部圧痕内に保持されるように構成され且つ寸法取られる,
平面構造玩具。」

相違点
補正発明は,平面構造玩具が成形プラスチックから成るものであるのに対し,刊行物1記載の発明は,成形プラスチックで成るものと特定されていない点。

4 判断
上記相違点について検討する。
連結する部材をプラスチックを成形して構成することは,特開昭60-171070号公報,特開昭61-62484号公報等に記載のように周知の技術であり,刊行物1記載の発明の平面構造玩具を成形プラスチックから成るものとすることは,当業者が容易になし得たことである。
補正発明の効果も,刊行物1記載の発明及び周知技術から予測し得る程度のものである。

したがって,補正発明は,刊行物1記載の発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである

5 補正の却下の決定についてのむすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成23年3月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成22年9月10日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり,その内容は上記「第2 1」の「補正前(平成22年9月10日付け手続補正書を参照)」に記載したとおりである。

2 刊行物の記載内容
本願出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物1の記載事項は,前記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,補正発明から,内部圧痕内で中心ポストが「旋回可能であるよう」に構成され寸法取られるものとする限定を削除したものである。

前記「第2 4」で検討したとおり,本願発明において,さらに,内部圧痕内で中心ポストが「旋回可能であるよう」に構成され寸法取られるものに限定した補正発明が,刊行物1記載の発明及び周知技術から容易になし得るものと判断されるものであるから,当該限定をしない本願発明も,当然,刊行物1記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

よって,本願発明は,刊行物1記載の発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
したがって,本願発明は,刊行物1記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-16 
結審通知日 2012-03-21 
審決日 2012-03-30 
出願番号 特願2007-529812(P2007-529812)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植田 泰輝  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 土屋 真理子
宮崎 恭
発明の名称 玩具構築セット方法及び装置  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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