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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1262281
審判番号 不服2010-23515  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-19 
確定日 2012-08-22 
事件の表示 特願2006-339023「液晶表示装置用カラーフィルター基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月 1日出願公開、特開2007-286591〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年12月15日(優先権主張2006年4月14日、韓国)の出願であって、当審において、平成23年11月30日付けで拒絶理由通知がなされた。
これに対して、平成24年3月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年3月6日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものと認める。
「透明絶縁基板上にブラックマトリックス層を1.0?1.5μmの厚さで形成するステップと、
前記ブラックマトリックス層上に透明感光性物質でブラックマトリックスバリヤ層を0.5?1.0μmの厚さで形成するステップと、
前記ブラックマトリックス層及び前記ブラックマトリックスバリヤ層をパターニングすることにより、画素領域を画定するブラックマトリックス及びブラックマトリックスバリヤを形成するステップと、
前記画素領域にカラーフィルターを前記ブラックマトリックスの厚さと前記ブラックマトリックスバリヤの厚さの和の8/10?10/10になるように形成するステップと を含み、
前記ブラックマトリックスバリヤ層を形成するステップは、
前記透明感光性物質をポリエチレンテレフタルレートフィルム上に塗膜するステップと、
前記透明感光性物質を前記ブラックマトリックス層上に転写するステップと
を含み、
前記ブラックマトリックス及び前記ブラックマトリックスバリヤを形成するステップで、前記ブラックマトリックス及び前記ブラックマトリックスバリヤは前記ブラックマトリックスと前記ブラックマトリックスバリヤが同一の幅を有するように1回の写真工程で同時に形成されることを特徴とする液晶表示装置用カラーフィルター基板の製造方法。」(なお、上記「ポリエチレンテレフタルレート」は「ポリエチレンテレフタレート」の誤記と認められる。)

第3 引用刊行物

引用文献1:特開2003-121635号公報

当審の拒絶理由通知に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、上記引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カラーフィルタ基板およびその製造方法、ならびに液晶装置及び電子機器に関するものであり、特に半透過反射層を備えたカラーフィルタ基板の製造方法に関するものである。」
(1b)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の半透過反射型のカラーフィルタ基板にあっては、半透過反射層を形成するのに、予め、基板表面に微細な凹凸を形成するためのフロスト加工を行っておき、スパッタ法や真空蒸着法で金属材料からなる反射膜を形成した後、該反射膜の一部をエッチング処理によって除去して開口部を形成する方法を採っていたため、工程数も多く、大掛かりな装置が必要であり、製造コストも高くなるという問題があった。
【0005】本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、基板のフロスト加工工程、スパッタ法や真空蒸着法による成膜工程、エッチング工程などの煩雑で大掛かりな装置を必要とする工程を削減して、短時間、低コストで半透過反射型のカラーフィルタ基板を製造できるようにすることを目的する。」
(1c)「【0017】
【発明の実施の形態】(第1の実施形態)以下、本発明に係る第1実施形態を、図1から図5を参照しながら説明する。図1は本実施形態のカラーフィルタ基板を示したもので、(a)は平面図、(b)は1つの画素の模式断面図である。このカラーフィルタ基板10は、基板11上に、マトリクス状に配された着色層15と、各着色層の境目に形成された仕切り14とからなるカラーフィルタを備えている。着色層15は、R(赤)、G(緑)、B(青)のいずれかの色要素からなっており、仕切り14は、遮光層からなるブラックマトリクス12と、その上に形成されたバンク13とからなっている。仕切り14によって囲まれた領域は個々の画素をなしており、それぞれの画素において、基板11上に半透過反射層21が形成されている。また、図示していないが、仕切り14および着色層15の上面には、必要に応じてこれらを一括的に覆う保護膜等が設けられる。図1の例では、カラーフィルタにおけるR、G、Bの配列はストライプ配列となっているが、その他の配列でも構わない。例えば図2(a)に示すようなモザイク配列でもよく、図2(b)に示すようなデルタ配列でもよい。」
(1d)「【0022】図5(a)?(f)は、本実施形態のカラーフィルタ基板10を製造する方法を工程順に示した模式断面図である。これらの図では1つの画素を示している。まず、図5(a)に示すように、基板11上にブラックマトリクス12を形成する。基板11としては、一般にガラス基板が用いられるが、カラーフィルタ基板としての用途において必要とされる透明性、機械的強度等の特性を有するものであれば、ガラス以外の材料を用いることもできる。
【0023】ブラックマトリクス12は、金属クロム、金属クロムと酸化クロムの積層体、または樹脂ブラック等で形成される。金属薄膜からなるブラックマトリクス12を形成するには、スパッタ法や蒸着法を用いることができる。また樹脂薄膜からなるブラックマトリクス12を形成するには、グラビア印刷法、フォトレジスト法、熱転写法等を用いることができる。金属薄膜からなるブラックマトリクス12の膜厚は0.1?0.2μm程度である。
【0024】続いて、ブラックマトリクス12上にバンク13を形成する。すなわち、図5(b)に示すように、基板母材11およびブラックマトリクス12を覆うように、ネガ型の透明な感光性樹脂組成物からなるレジスト層17を形成し、その上面に、マトリクスパターン形状に形成されたマスクフィルム18を密着させた状態で露光処理を行う。そして、図5(c)に示すように、レジスト層17の未露光部分をエッチング処理することによりレジスト層17をパターニングして、バンク13を形成する。バンク13の高さは2.5?2.8μm程度であるこのバンク13とその下のブラックマトリクス12は、この後の工程において、画素内に液体材料が導入された際に液体材料の広がりを規制する土手の役割を果たす仕切り14となる。
【0025】バンク13を形成する材料として、塗膜表面が撥液性となる樹脂材料を用いると、この後の工程で、インクジェット法を用いてバンク13で囲まれた画素内に液体材料を吐出する際の、液滴の着弾位置精度が向上するので好ましい。なおバンク13が撥液性の材料からなる場合には、着色層15を形成した後、バンク13上面上に保護膜等を形成する前にバンク13の表面を親液化することが好ましい。例えば、フッ素系の樹脂材料を用いて撥液性のバンク13を形成し、画素内に着色層15を形成する液体材料を導入した後、バンク13に紫外線を照射することにより、バンク13の表面を親液化することができる。」
(1e)「【0029】次いで、図5(f)に示すように、仕切り14で囲まれた領域内、すなわち半透過反射層21が形成された画素内に着色層15を形成する。具体的には、図4に示す構成のインクジェット装置を用いて、液体の着色層形成材料(インク)を画素内に吐出し、これを乾燥および/または硬化させて着色層15をする。R、G、Bの3色の着色層15は、各色要素毎に順に形成してもよく、3色のインクを予め設定されたプログラムに従って、所定の配色パターンとなるように同時に吐出してもよい。半透過反射層21上における着色層15の厚さは0.8?1.2μm程度とされる。」
(1f)「【0031】本実施形態によれば、バンク13により仕切られた画素内に半透過反射層を形成するので、画素間に反射膜が無いカラーフィルタ基板が得られる。また、開口部21aを形成する部位に撥液処理を行うので、画素内に半透過反射層を形成する液体材料を吐出するだけで、開口を有する塗膜が形成される。したがって、この塗膜を硬化させることにより、開口部21aを有する半透過反射層21を容易に形成することができる。またバンク13により仕切られた画素内に着色層を形成するので、隣り合う着色層どうしの混ざり合いが無い着色層を容易に形成することができる。また、半透過反射層21の形成と、着色層15の形成を、ともにインクジェット法により行うので、大掛かりな装置や煩雑な作業を必要とせず、低コスト化を図ることができる。なお、着色層15を形成するための液体材料は、画素内の半透過反射層21の上面が完全に埋まるように、比較的多量に吐出されるので、撥液部19上にも塗膜が形成される。」
(1g)図1、5及び6等の各図面からは、ブラックマトリクス12とバンク13の幅が同一であることが見て取れる。

これらの記載事項及び図面を含む引用文献1全体の記載並びに当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「透明性を有するガラス基板(11)上に樹脂薄膜からなるブラックマトリクス(12)をフォトレジスト法により形成する工程と、
ガラス基板およびブラックマトリクスを覆うように透明な感光性樹脂組成物からなるレジスト層(17)を形成する工程と、
該レジスト層をパターニングして、ブラックマトリクス上に、ブラックマトリクスと同一の幅を有する透明な感光性樹脂組成物からなり高さ2.5?2.8μm程度であるバンク(13)を形成する工程と、
ブラックマトリクスとバンクからなる仕切り(14)で囲まれた領域内に着色層(15)を形成する工程と、
を有する液晶装置用カラーフィルタ基板の製造方法。」(以下「引用発明」という。)

第4 対比
本願発明と引用発明を比較する。

引用発明の「透明性を有するガラス基板」、「ブラックマトリクス」及び「液晶装置用カラーフィルタ基板」は、それぞれ、本願発明の「透明絶縁基板」、「ブラックマトリックス」及び「液晶表示装置用カラーフィルター基板」に相当する。
同様に「ブラックマトリクスとバンクからなる仕切りで囲まれた領域」及び「着色層」は、それぞれ、「画素領域」及び「カラーフィルター」に相当する。ここで、引用発明のブラックマトリクスがパターニングされていることは明らかである。
また、引用発明の「バンク」は、上記摘記事項(1f)の「バンク13により仕切られた画素内に着色層を形成するので、隣り合う着色層どうしの混ざり合いが無い着色層を容易に形成することができる。」の記載を参酌すれば、本願発明の「ブラックマトリックスバリヤ」に相当することがわかる。
これらのことから、
(あ)引用発明の「透明性を有するガラス基板上にブラックマトリクスをフォトレジスト法により形成する工程」と本願発明の「透明絶縁基板上にブラックマトリックス層を1.0?1.5μmの厚さで形成するステップ」は、ともに「透明絶縁基板上にブラックマトリックス層を所定の厚さで形成するステップ」で共通する。
(い)引用発明の「ガラス基板およびブラックマトリクスを覆うように透明な感光性樹脂組成物からなるレジスト層を形成する工程」と本願発明の「前記ブラックマトリックス層上に透明感光性物質でブラックマトリックスバリヤ層を0.5?1.0μmの厚さで形成するステップ」は、ともに「ブラックマトリックス層上に透明感光性物質でブラックマトリックスバリヤ層を所定の厚さで形成するステップ」で共通する。
(う)引用発明の「該レジスト層をパターニングして、ブラックマトリクス上に、ブラックマトリクスと同一の幅を有する透明な感光性樹脂組成物からなり高さ2.5?2.8μm程度であるバンクを形成する工程」は本願発明の「前記ブラックマトリックス層及び前記ブラックマトリックスバリヤ層をパターニングすることにより、画素領域を画定するブラックマトリックス及びブラックマトリックスバリヤを形成するステップ」に相当する。
(え)引用発明の「ブラックマトリクスとバンクからなる仕切りで囲まれた領域内に着色層を形成する工程」と本願発明の「前記画素領域にカラーフィルターを前記ブラックマトリックスの厚さと前記ブラックマトリックスバリヤの厚さの和の8/10?10/10になるように形成するステップ」は、ともに「前記画素領域にカラーフィルターを形成するステップ」で共通する。

してみると両者は、
「透明絶縁基板上にブラックマトリックス層を所定の厚さで形成するステップと、
前記ブラックマトリックス層上に透明感光性物質でブラックマトリックスバリヤ層を所定の厚さで形成するステップと、
前記ブラックマトリックス層及び前記ブラックマトリックスバリヤ層をパターニングすることにより、画素領域を画定するブラックマトリックス及びブラックマトリックスバリヤを形成するステップと、
前記画素領域にカラーフィルターを形成するステップと
を含み、
前記ブラックマトリックスと前記ブラックマトリックスバリヤが同一の幅を有するように形成される液晶表示装置用カラーフィルター基板の製造方法。」
の点で一致し、次の各点で相違している。

(相違点1)
本願発明は「ブラックマトリックス層を1.0?1.5μmの厚さで形成し、ブラックマトリックスバリヤ層を0.5?1.0μmの厚さで形成し、カラーフィルターをブラックマトリックスの厚さとブラックマトリックスバリヤの厚さの和の8/10?10/10になるように形成する」のに対して、引用発明は、ブラックマトリクス層の膜厚が不明であり、バンク層の高さは2.5?2.8μm程度であって、カラーフィルターとブラックマトリックスの厚さとブラックマトリックスバリヤの厚さの和の比が不明である点。
(相違点2)
本願発明では、「ブラックマトリックスバリヤ層を形成するステップが透明感光性物質をポリエチレンテレフタルレートフィルム上に塗膜するステップと、前記透明感光性物質を前記ブラックマトリックス層上に転写するステップとを含み」、「ブラックマトリックス及びブラックマトリックスバリヤは1回の写真工程で同時に形成される」のに対して、引用発明では、ブラックマトリックスバリヤ層を形成するステップがそのような工程を含まず、ブラックマトリックス及びブラックマトリックスバリヤは1回の写真工程で同時には形成されない点。

第5 判断
上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
ブラックマトリックス層の厚さは、その材質やそれに伴う遮光性能及び製品の厚さ等の種々の要素を総合的に勘案して、当業者が適宜決定しうるものであるから、引用発明のブラックマトリックス層の厚さを1.0?1.5μmとすることに格別の困難性はない。
また、ブラックマトリックスバリヤがブラックマトリックスと協働してカラーインキのオーバーフローを防止するものであることを考慮すれば、ブラックマトリックスバリヤ層の厚さも、ブラックマトリックス層の厚さや製品の厚さ等を総合的に勘案して、当業者が適宜決定しうるものである。したがって、ブラックマトリックスバリヤ層の厚さを0.5?1.0μmとすることにも格別の困難性はない。
さらに、ブラックマトリックスとブラックマトリックスバリヤの両方でカラーインキのオーバーフローを防止することを考慮すれば、カラーインキで構成されるカラーフィルターを両層の厚さの和(10/10)以下にすることは、当業者であれば容易に想到しうるし、8/10以上とすることについても、格別の困難性はない。
(相違点2について)
液晶表示装置用カラーフィルター基板の製造方法において、ブラックマトリックスとブラックマトリックスバリヤを1回の写真工程で同時に形成することは、通常行われている周知技術(原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-55823号公報参照)である。
また、ブラックマトリックス上にブラックマトリックスバリヤを形成する方法として、ブラックマトリックスバリヤ層をフィルム上に塗膜された感光性物質をブラックマトリックス層上に転写することにより形成することは、ごく普通に行われている周知技術(前置報告書に記載の特開2002-277624号公報、段落【0028】?【0029】参照)であり、当該フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることにも格別の困難性はない。
これらの周知技術を引用発明に適用する点に格別の阻害要因はなく、引用発明に上記相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得る事項である。

そして、本願発明全体の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-26 
結審通知日 2012-03-27 
審決日 2012-04-10 
出願番号 特願2006-339023(P2006-339023)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小西 隆  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 森林 克郎
吉川 陽吾
発明の名称 液晶表示装置用カラーフィルター基板の製造方法  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 上田 俊一  
代理人 梶並 順  
代理人 古川 秀利  
代理人 曾我 道治  

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