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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1263420
審判番号 不服2011-15795  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-22 
確定日 2012-09-12 
事件の表示 特願2005-135153号「可撓性スペースホルダ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月17日出願公開、特開2005-319303号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成17年5月6日(パリ条約による優先権主張 2004年5月4日、ドイツ国 2004年5月4日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成23年3月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年7月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

II.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年1月5日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「脊椎および/または椎間板用のスペースホルダであって、空間保持及び重量伝達機能を有し、人体または動物の体内に一時的または永久に導入され、管状本体と、前記管状本体の端部に設けられ、隣接する身体部分との結合手段とを有する少なくとも1つの生体適合性部材からなるスペースホルダであって、
前記管状本体の部材凹部は、局部的に剛性を低減するように機能するために設けられ、
前記管状本体は、弾性体の生体適合性物質からなるスリーブによって囲まれ、および/または弾性体の生体適合性物質からなる芯が設けられ、
前記スリーブと前記芯の少なくとも一方は、部材凹部を有する前記スペースホルダの部分と共に機能して、スペースホルダ全体の最終的な剛性または可動性が設定でき、スペースホルダが軸方向に圧縮可能および引張可能であり、端部に設けられた結合手段に対して、半径方向の回転軸の周りを屈曲可能であって長手軸の周りを捩れ可能であるように、可撓性を実現する、
ことを特徴とするスペースホルダ。」

III.引用刊行物の記載事項
(刊行物1)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特表2002-518090号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)「隣接した椎骨間の椎間腔から取出した椎間板の少なくとも一部を置き換えるために、椎間腔内に挿入できるように寸法決めされたディスク部材を有し、このディスク部材は、その高さ方向に延びる長手方向軸線と、この長手方向軸線を横切る半径方向軸線とを有し、少なくとも1つのスリットを有する外壁を構成し、この少なくとも1つのスリットは、第1方向成分と、この第1の方向成分とは異なる第2方向成分とを有している、椎間用補綴具。」(【請求項1】)

(イ)「前記ディスク部材は、該ディスク部材の長手方向の各端部に配置された第1支持面と第2支持面とを有し、第1支持面と第2支持面は、それぞれの椎骨の椎骨部分を支持しながら係合させるように寸法決めされている、請求項1に記載の椎間用補綴具。」(【請求項7】)

(ウ)「〔背景〕
〔1.開示分野〕
本発明は、一般的には、脊椎の各種障害を治療するための装置および技術に関するものであり、特に、損傷のある椎間板または罹病した椎間板の除去の後で、脊椎運動区分の自然な生体力学を維持しながら、椎間板の空間の高さと形状の両方を復原する椎間用人工補綴具に関する。」(段落【0001】)

(エ)「〔概要〕
従って、本開示は、隣接した椎骨間の椎間腔から取出した椎間板の少なくとも一部を置き換えるために、椎間腔内に挿入できるように寸法決めされた椎間板補綴具を目的としている。椎間用補綴具はディスク部材を有しており、ディスク部材は、ディスク部材の高さ方向に延びる長手方向軸線と、この長手方向軸線を横切る半径方向軸線とを有している。ディスク部材は、少なくとも1つのスリットを有した外壁を備えている。この少なくとも1つのスリットは、第1方向成分と第2方向成分とを有し、外壁に沿った荷重の伝達を容易にする。
外壁は複数の螺旋状スリットを有しており、互いに隣接するスリットが長手方向軸線に関して輻射方向の関係をなして配置されていることにより、荷重伝達が外壁に沿って生じる。これらのスリットが天然椎間板と一致する外壁の撓み性を付与している。」(段落【0009】?【0010】)

(オ)「・・・椎間用補綴具100は、隣接した椎骨間でそれらの各椎骨の端板と支持接触関係をなして位置決めされるように寸法決めされて、脊椎区分または椎骨区分の自然な生体力学(例えば、硬度、運動の範囲、および、強度などを含む)を復原しながら、互いに隣接する椎骨を適切な、間隔を設けた関係をなして維持するのが有利である。」(段落【0014】)

(カ)「椎間用補綴具100は、2つの基本構成要素、すなわち、ディスク又は本体部材102と、本体部材102に解放自在に搭載された第1および第2の端部キャップ104および106とを有している。本体部材102は、図示のように椎間板の一般的形状(例えば、腎臓型)を呈しており、本体部材102の高さ方向に沿って延びている長手方向軸線aおよび長手方向軸線aをほぼ横切っている半径方向軸線bを有している。角度表示は、図示のようにcによって表されている(図5)。本体部材102は、長手方向両側の(例えば、上下の)第1および第2支持面108、110を有しており、これらの支持面は、補綴具の挿入時、隣接した椎骨のそれぞれの端面に支持状態で嵌合する。本体部材102は、支持面108と支持面110の間に延びている外壁112を更に有している。支持面108および110は各々、形態が円弧であり、わずかな外方曲率を有しており、この曲率は、椎間腔内における補綴具の位置決めと保持とを容易にするように、椎骨端板のわずかな内方曲率に一致しているのが好ましい。」(段落【0015】)

(キ)「・・・図示のように、端部キャップ104および106は、それが一旦挿入されてしまうと、上面および下面114とほぼ面一になる。端部キャップ104および106は、骨付着のための追加面134を与えるとともに、本体部材102の内部への骨の成長を防止している。端部キャップ104の係合面142および端部キャップ106の係合面144は高荷重の間は互いに接触し、以下のような幾つかの目的を果たしている。すなわち、これら係合面は、(1)互い違いの荷重経路(椎間板の中心を通る)を提供することにより、外壁112に応力が過剰に加わるのを防止し、(2)高荷重でより剛性が増す天然椎間板と類似の態様で椎間板100の全体的硬度を増大させ、(3)周囲の軟組織に及ぼされる「圧迫(ピンチング)」効果を低減させながら、略螺旋状スリット122の完全な閉鎖を阻止している。内部ボア138はそれと関連する溝付き開口部140と共に、端部キャップ104および106の剛性を効果的に低下させ、椎間板100の全体的硬度が天然椎間板とより一致するようにしている。」(段落【0016】)

(ク)「図4から図6を続けて参照すると、外壁112には複数のスリット122が構成されており、これらのスリットは、好ましい実施形態では、外壁を完全に貫通して、その外面124からその内面126まで、内キャビティ114と連通して延びている(図6)。各スリット122は形状が略螺旋状であり、すなわち、各スリット122が、図示のように、長さ方向成分と角度方向成分とを有している。これらの異なる方向成分、例えば長手方向と横面方向により、スリット122の各々について多方向経路を生じさせる。スリット122は、所定の、間隔を設けた半径方向位置で外壁の周囲に配置され、それにより、隣接した長手方向スリット122が部分的に重なった構成を採るのが好ましい。例示の実施形態では、半径方向に72度の間隔で設置された5つのスリット122が設けられるが、これに代わる数のスリットや、別な間隔を設けたスリットであっても良い。
図示のようなスリット122は外壁112を約180度に亘って延びているけれども、180度より短くても良いし、或いは、180度よりも長くても良い。1つの略螺旋状のスリットが使用しても良いけれども、この好ましい実施形態は複数の略螺旋状スリット122を備えている。螺旋状スリット122は、半径方向軸線bおよび角度cに関して半径方向関係をなして配置されている。椎間板の残りの荷重経路128は、圧縮バネまたはコイル状バネと同様に、バネ特性を有している。複数の荷重経路128は撓み性のある椎間板壁112をつくり、急な荷重経路のない連続した仕方で、上支持面108と下支持面110との間の荷重の伝達を可能にする。」(段落【0017】?【0018】)

(ケ)「椎間用補綴具100の各構成要素は、ステンレス鋼、チタニウム、または、好適なポリマー材のような好適な剛性材料から作成される。・・・」(段落【0021】)

(コ)「人工椎間板の挿入
図7から図8参照しながら、人工椎間板の挿入を論じてゆく。互いに隣接する椎骨V_(1)およびV_(2)の間に構成された椎間腔iは、適切な牽引子器具を利用して接近される。その後、椎間板部分切除または椎間板全切除が実施されて、椎間板の罹病部を除去する。互いに隣接する椎骨V_(1)およびV_(2)は適切な延展子器具を使って伸延され、椎間腔を露出させる。次いで、椎間用人工補綴具100が椎間腔iの内部に位置決めされる。設置時に、上支持面108および下支持面110は、互いに隣接する椎骨のそれぞれの椎骨端板に、それらを支持する関係をなして嵌合する。先に留意したように、端部キャップ104および106の外面134と上面支持面108および下支持面110の外面とにより構成された円弧状輪郭は、椎骨端板の円弧状輪郭に近似して、互いに隣接する椎骨の内部で角度的に適合するとともに、終間空間の内部での保持を容易にする。
先に示したように、椎間用人工補綴具100は、脊柱の曲げ運動を可能にするのに適切な撓み性を保有しながら、互いに間隔を設けた関係をなして互いに隣接する椎骨を維持するのに十分な剛性を有していることを特徴としている。椎間用補綴具100に付与される荷重は、上支持面108と下支持面110との間で、外壁112を通って、螺旋状スリット構造122を経由する概ね連続する経路と、その結果として生じる複数の荷重経路128に沿って伝達される。」(段落【0022】?【0023】)

(サ)「図10は本開示の別の変形実施形態を示している。補綴具300は図4の補綴具100に実質的に類似しているが、この実施形態によれば、外壁312は、上支持面308に隣接する位置から下支持面310に隣接する位置まで延びる、単一の連続する螺旋状スリット302を有している。荷重経路を参照番号328で指示している。これにより、一層の撓み性を提供する。連続するスリット302は重なり領域を構成し、これらの領域では、連続するスリットの長手方向に配置された各部が部分的に重なり関係をなす。連続するスリット302の上記重なり領域も、上支持面10から下支持面110までの連続する荷重伝達をもたらし、かかる構成の利点は前述の通りである。端部キャップ104および106はオプションで設けても良い。」(段落【0025】)

以上の記載事項及び図示内容から、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「隣接した椎骨間の椎間腔から取出した椎間板の少なくとも一部を置き換えるために、椎間腔内に挿入できるように寸法決めされた椎間用補綴具であって、互いに隣接する椎骨を適切な間隔を設けた関係をなして維持するとともに、外壁に沿った荷重の伝達を行うものであり、椎間用補綴具は椎間腔の内部に位置決めされ、本体部材と、本体部材の端部に配置され、隣接した椎骨のそれぞれの端面に支持状態で嵌合する第1および第2支持面及び骨付着のための追加面を与える第1および第2の端部キャップとを有するチタニウムから作成される椎間用補綴具であって、
本体部材の螺旋状スリットは、天然椎間板と一致する外壁の撓み性を付与し、
外壁に応力が過剰に加わるのを防止するとともに螺旋状スリットの完全な閉鎖を阻止するため、第1および第2の端部キャップの係合面は高荷重の間は互いに接触し、
脊柱の曲げ運動を可能にするのに適切な撓み性を保有しながら、互いに間隔を設けた関係をなして互いに隣接する椎骨を維持するのに十分な剛性を有している
椎間用補綴具。」

(刊行物2)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である国際公開第2004/016217号(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(シ)「1. An intervertebral disc for placement between first and second vertebrae comprising: an upper endplate having a first inner surface and a first outer surface, the first outer surface configured to contact the first vertebra; a lower endplate having a second inner surface and a second outer surface, the s scond outer surface configured to conta the second vertebra; a membrane extending between the upper endplate and the lower endptate; and at least one resilient member disposed between the upper and lower end; the resilient member associated with at least one arcuate surface member configured to articulate within at least one socket associated with at least one of the endplates.
(第1と第2の脊椎の間に配置するための椎間板であって、
第1の内表面および第1の外表面を有する上部端板であって、該第1の外表面が前記第1の脊椎と接触するように構成された上部端板と、
第2の内表面および第2の外表面を有する下部端板であって、該第2の外表面が前記第2の脊椎と接触するように構成された下部端板と、
前記上部端板と前記下部端板との間に延在した膜と、
前記上部端板と下部端板の間に配置された少なくとも1つの弾性部材であって、少なくとも一方の前記端板に結合した少なくとも1つのソケット内で、連節するように構成された少なくとも1つのアーチ状表面部材に結合した弾性部材と、
を備える、ことを特徴とする椎間板。(公報【請求項1】))」([Claim 1]、()内は仮訳として、対応する特表2006-514559号公報を援用した。以下同様。)

(ス)「11. The intervertebral disc according to any one of the preceding claims 1-10, further comprising at least one elastomer strut disposed between the upper and lower endplates. (前記上部及び下部の端板間に配置された少なくとも1つのエラストマー支柱をさらに備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の椎間板。(公報【請求項11】))」([Claim 11])

(セ)「The invention relates to an intervertebral disc that is preferably designed to restore disc height and lordosis, allow for a natural range of motion, absorb shbok and provide resistance to motion and axial compression. Furthermore, the. intervertebral disc may be used in the cervical, the thoracic, or the lumbar regions of the spine. (本発明は、好ましくは、椎間板高さおよび脊柱前湾を回復させ、自然な範囲の動作を可能にし、衝撃を吸収し、耐動作性および耐軸圧縮性を備えるように設計されている椎間板に関する。さらに、椎間板は脊椎の頸部、胸部、および腰部に使用することもできる。(公報段落【0015】))」(明細書段落[0015])

(ソ)「Referring to Figure 2c, the dise 10 may include an elastomeric strut 54 located peripherally to a central spring element 30. The strut 54 may have a longitudinal axis and first and second ends, and each end may be associated with an upper or lower endplate 20, 22. The elastomeric strut 54 may be seated in a groove 32 formed'in the associated inner surfaces 38, 40 of the upper and lower endplates 20, 22 to resist displacement. The elastomeric strut 54 may serve essentially the same function as peripheral spring elements 30 previously described, i.e. to provide the disc 10 with compression force resistance and shock, absorption and to resist motion. The elastomeric strut 54 may be formed from any appropriate material known in the art including, but not limited to, polyurethane or silicone. Any number of individual struts 54 may be provided, and the struts individual struts may assume various shapes in order to provide the appropriate stiffness or resistance support for the end plates. Thus, the struts 54 may be cylindrical, square, rectangular, etc., and they may have any appropriate cross section, such as circular, triangular, elliptical, etc. The struts may also be provided with continuous or non-continuous cross-sections, and they may be made up of different layers of materials, such as having alternating elastomeric and metallic or polymer layers. The struts 54 may also be hollow, or they may be ring-shaped. The ring-shaped struts 54 may be configured to surround at least. a portion of the first spring element 30. As with earlier embodiments, the ends of struts 54 may be connected to the end plates using any appropriate method in the including press-fit, bonding agents, etc. One or more struts may also be provided to move within their associated groove or grooves. The arrangement, number and configuration of the struts 54 is not critical, but instead may be any combination desired to provide a disc 10 that mimies the properties of the patient's normal intervertebral disc, or that provides the properties appropriate to the particular procedure.
The inner surfaces 38, 40 of endplates 20, 22 may be porous to allow the elastomeric strut 50 to be integrated into the corresponding surfaces of the upper and lower dndplates 20, 22 during manufacture such as by molding the elastomer to the endplate. A membrane and/or barrier may also be included within endplates 20, 22 to limit the depth of impregnation and bony ingrowth respectively.
(図2cを参照すると、椎間板10は中心ばね要素30に周面的に配置されたエラストマー支柱54を含むことができる。支柱54は長手軸および第1および第2端部を有することができ、各端部は上部または下部の端板20、22に結合させることができる。エラストマー支柱54は、変位に抵抗するように、上部および下部端板20、22の結合する内表面38、40内に形成された溝32内に設置されてもよい。エラストマー支柱54は基本的に、前に説明した周面ばね要素30と同じ機能を果たす、すなわち椎間板10に耐圧縮力および耐衝撃吸収を提供し、動きに抵抗するように働くことができる。エラストマー支柱54は、これに限らないがポリウレタンまたはシリコーンを含む、当業者に知られているあらゆる適切な材料から形成することができる。個別の支柱54は何個でも設けることができ、個別の支柱は端板に適当な剛性または抵抗支持体を提供するために、様々な形状を想定することができる。したがって、支柱54は円筒形、四角形、矩形などでもよく、円形、三角形、楕円形などのあらゆる適当な断面をしていてもよい。支柱はまた連続または非連続断面を備えることができ、交互となるエラストマー(alternating elastomeric)および金属またはポリマーの層を有するものなど、異なる材料の層で作られていてもよい。支柱54はまた中空であってもよく、またはリング形状をしていてもよい。リング形の支柱54は第1のばね要素30の少なくとも一部を囲むように構成することもできる。前の実施形態と同様に、支柱54の端部を圧入、結合剤などを含む当業者のあらゆる適切方法を使用して端板に連結させることができる。1本または複数本の支柱を、1つまたは複数の結合する溝内に移動するように設けることもできる。支柱54の配置、数、および構造は重要ではないが、代わりに患者の通常の椎間板の性状を真似る、または特定の処置に適当な性状を提供する椎間板10を提供するのに望ましいあらゆる組み合わせであってもよい。
端板20、22の内表面38、40は、エラストマーを端板に溶接することなどによる製造中に、エラストマー支柱50を上部および下部の端板20、22の対応する表面と一体化させることができるように多孔質であってもよい。膜および/または障壁は、埋め込みの深さおよび骨の内側への成長をそれぞれ制限するように端板20、22内に含むこともできる。(公報段落【0054】?【0055】))」(明細書段落[0076]?[0077])

IV.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その意味、構造又は機能からみて、引用発明の「隣接した椎骨間の椎間腔から取出した椎間板の少なくとも一部を置き換えるために、椎間腔内に挿入できるように寸法決めされた椎間用補綴具」は、本願発明の「脊椎および/または椎間板用のスペースホルダ」に相当し、以下同様に、「椎間用補綴具は椎間腔の内部に位置決めされ」は「人体または動物の体内に一時的または永久に導入され」に、「本体部材」は「管状本体」に、「配置され」は「設けられ」に、「隣接した椎骨のそれぞれの端面に支持状態で嵌合する第1および第2支持面及び骨付着のための追加面を与える第1および第2の端部キャップ」は「隣接する身体部分との結合手段」に、「チタニウムから作成される」は「少なくとも1つの生体適合性部材からなる」に、「螺旋状スリット」は「部材凹部」に、それぞれ相当する。
引用発明は、「互いに隣接する椎骨を適切な間隔を設けた関係をなして維持するとともに、外壁に沿った荷重の伝達を行うもの」であるから、本願発明の「空間保持及び重量伝達機能を有」するとの発明特定事項を有するといえる。
引用発明は、「本体部材の螺旋状スリット」が「天然椎間板と一致する外壁の撓み性を付与」するものであるところ、「本体部材の螺旋状スリット」が、局部的に剛性を低減するように機能しているのは明らかであるから、「管状本体の部材凹部は、局部的に剛性を低減するように機能するために設けられ」との発明特定事項を有するといえる。
また、螺旋状スリットを有する本体部材を有する引用発明が、「スペースホルダが軸方向に圧縮可能および引張可能であり、端部に設けられた結合手段に対して、半径方向の回転軸の周りを屈曲可能であって長手軸の周りを捩れ可能であるように、可撓性を実現する」ことは明らかであるから、本願発明と引用発明とは「スペースホルダが軸方向に圧縮可能および引張可能であり、端部に設けられた結合手段に対して、半径方向の回転軸の周りを屈曲可能であって長手軸の周りを捩れ可能であるように、可撓性を実現する」限りにおいて一致する。

そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「脊椎および/または椎間板用のスペースホルダであって、空間保持及び重量伝達機能を有し、人体または動物の体内に一時的または永久に導入され、管状本体と、管状本体の端部に設けられ、隣接する身体部分との結合手段とを有する少なくとも1つの生体適合性部材からなるスペースホルダであって、
前記管状本体の部材凹部は、局部的に剛性を低減するように機能するために設けられ、
スペースホルダが軸方向に圧縮可能および引張可能であり、端部に設けられた結合手段に対して、半径方向の回転軸の周りを屈曲可能であって長手軸の周りを捩れ可能であるように、可撓性を実現する、
スペースホルダ。」

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点)
本願発明では、「管状本体は、弾性体の生体適合性物質からなるスリーブによって囲まれ、および/または弾性体の生体適合性物質からなる芯が設けられ、スリーブと芯の少なくとも一方は、部材凹部を有するスペースホルダの部分と共に機能して、スペースホルダ全体の最終的な剛性または可動性が設定でき、スペースホルダが軸方向に圧縮可能および引張可能であり、端部に設けられた結合手段に対して、半径方向の回転軸の周りを屈曲可能であって長手軸の周りを捩れ可能であるように、可撓性を実現」しているのに対して、引用発明では、管状本体の部材凹部により、「スペースホルダが軸方向に圧縮可能および引張可能であり、端部に設けられた結合手段に対して、半径方向の回転軸の周りを屈曲可能であって長手軸の周りを捩れ可能であるように、可撓性を実現」しているものの、「管状本体は、弾性体の生体適合性物質からなるスリーブによって囲まれ、および/または弾性体の生体適合性物質からなる芯が設けられ」ておらず、「スリーブと芯の少なくとも一方は、部材凹部を有するスペースホルダの部分と共に機能して、スペースホルダ全体の最終的な剛性または可動性が設定でき、スペースホルダが軸方向に圧縮可能および引張可能であり、端部に設けられた結合手段に対して、半径方向の回転軸の周りを屈曲可能であって長手軸の周りを捩れ可能であるように、可撓性を実現」していない点。

V.相違点の判断
上記相違点について検討する。

刊行物2には、椎間板(「脊椎および/または椎間板用のスペースホルダ」に相当)に関して(上記記載事項(シ)を参照)、椎間板が耐軸圧縮性を備えるようにするため(上記記載事項(セ)及び(ソ)を参照)、中心ばね要素(「部材凹部が設けられた管状本体」に相当)が、リング形のエラストマー支柱(「弾性体からなるスリーブ」に相当)によって囲まれる(上記記載事項(ス)及び(ソ)を参照)点が記載されている。
引用発明と刊行物2に記載された発明とは、脊椎および/または椎間板用のスペースホルダという共通の技術分野に属するものであり、該スペースホルダが耐軸圧縮性を備えるようにする点で共通の課題を有する。
そこで、引用発明において、「第1および第2の端部キャップの係合面は高荷重の間は互いに接触し」との構成に代えて、刊行物2に記載された発明における「部材凹部が設けられた管状本体が、弾性体からなるスリーブによって囲まれる」構成を採用し、「スリーブ」が「部材凹部を有するスペースホルダの部分と共に機能して、スペースホルダが軸方向に圧縮可能および引張可能であり、端部に設けられた結合手段に対して、半径方向の回転軸の周りを屈曲可能であって長手軸の周りを捩れ可能であるように、可撓性を実現する」ようにすることは、当業者が容易に想到し得たことであり、その際、「弾性体からなるスリーブ」の材料として生体適合性物質を選択することは、脊椎および/または椎間板用のスペースホルダに用いる部材である以上、当業者が当然考慮すべき事項である。
そして、引用発明は、「脊柱の曲げ運動を可能にするのに適切な撓み性を保有しながら、互いに間隔を設けた関係をなして互いに隣接する椎骨を維持するのに十分な剛性を有」するものであるところ、「部材凹部が設けられた管状本体」と「スリーブ」の双方を考慮して「スペースホルダ全体の最終的な剛性または可動性」を設定することに、格別の困難性は認められない。

また、本願発明による効果も、引用発明及び刊行物2に記載された発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-16 
結審通知日 2012-04-17 
審決日 2012-05-02 
出願番号 特願2005-135153(P2005-135153)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内山 隆史津田 真吾  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 高田 元樹
蓮井 雅之
発明の名称 可撓性スペースホルダ  
代理人 吉田 研二  
代理人 石田 純  

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