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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1264852
審判番号 不服2011-26484  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-07 
確定日 2012-10-18 
事件の表示 特願2008-23593号「電子部品実装装置における部品押圧荷重の計測方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年8月20日出願公開、特開2009-188002号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年2月4日の出願であって、平成23年10月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、明細書及び特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

2.平成23年12月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年12月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
電子部品を搭載ヘッドによって保持して基板保持部に保持された基板に実装する電子部品実装装置において、電子部品を基板に搭載する際に電子部品に作用する押圧荷重を計測する部品押圧荷重の計測方法であって、
荷重計測用のロードセルが装着された計測用基板を前記電子部品実装装置の前記基板保持部に保持させる工程と、
前記搭載ヘッドに前記ロードセルに設定された荷重計測点を模擬搭載点とする模擬部品搭載動作を実行させる動作実行工程と、
前記動作実行工程において前記ロードセルによって検出された荷重計測信号を取り込んでデータ処理することにより、前記模擬部品搭載動作において前記電子部品に作用する押圧荷重のピーク値を少なくとも含む荷重計測データを取得するデータ取得工程と、
前記取得された計測データを、画面表示、印刷出力または記憶媒体への書き込みのいずれかによって出力するデータ出力工程とを含み、
前記計測用基板を前記基板保持部に保持させた状態で部品押圧荷重の計測を行うことにより、前記計測用基板は下面を実際の部品搭載用の基板と同様の態様で支持された状態となっているため、取得される荷重計測結果は実際の部品搭載状態を正しく再現したものとなることを特徴とする電子部品実装装置における部品押圧荷重の計測方法。
【請求項2】
前記動作実行工程において、前記搭載ヘッドによる押圧荷重を複数の前記ロードセルに同時に負荷し、各ロードセルの計測値の平均値を計測結果とすることを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装装置における部品押圧荷重の計測方法。」に補正された。

上記補正について、請求項1についてみると、実質的に、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「荷重計測用のロードセルが装着された計測用基板を前記電子部品実装装置の前記基板保持部に保持させる工程」に関し、「前記計測用基板を前記基板保持部に保持させた状態で部品押圧荷重の計測を行うことにより、前記計測用基板は下面を実際の部品搭載用の基板と同様の態様で支持された状態となっているため、取得される荷重計測結果は実際の部品搭載状態を正しく再現したものとなる」ものとするように減縮するものであって、これは、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
特開2006-186074号公報(以下、「引用例」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。

(あ)「【0001】
本発明は、電子部品の搭載位置が予め定められた基板に搭載位置に対応した電子部品を搭載装置を用いて搭載するときに電子部品が受ける衝撃力を測定する方法及び装置に関するものである。」

(い)「【0004】
しかしながら、電子部品の種類毎に搭載動作条件を設定しても、基板上の電子部品搭載予定位置による基板の撓み度合いの大小に起因して、搭載動作条件設定位置と実際の搭載位置とで基板の撓み度合いが大きく異なる場合、あるいは搭載動作条件設定時に用いた電子部品と実際に搭載される電子部品との寸法形状差が大きい場合、載電子部品に過度の衝撃力を与えて電子部品に損傷や破損等を生じることがある。このような問題を未然に回避するには基板上の搭載位置に電子部品が搭載されるときに該電子部品が実際上受ける衝撃力を極力正確に知る必要がある。」

(う)「【0013】
シート状圧力センサ7は公知の感圧抵抗材層の両面に電極が設けられており、加えられた圧力に応じて変化する電気抵抗を検知信号として検知することができる。シート状圧力センサ7はリード部品4が搭載されるときにリード部品4の部品本体4aに接触し得る大きさと所定の厚さとを有する。また、シート状圧力センサ7の平面形状は搭載される部品の部品本体の底面形状に応じて円形であっても多角形であってもよい。さらに、シート状圧力センサ7の厚さは極力薄くすることが望ましく、搭載時には0.5mm以下、好ましくは0.1mm以下にすると良い。シート状圧力センサ7の厚さを極力薄くすることにより、シート状圧力センサ7を設けずに電子部品を搭載するときに電子部品が受ける力とほぼ同じ力を前記検知信号から知ることができる。」

(え)「【0017】
表示部11はモニタであり、衝撃力の実測値を測定部10の制御により表示し得る。なお、表示部11は実測値をN、Kgf、gf等の単位と共に表示し、同時に表示する単位切換ボタンをキーボードやマウス等の外部入力装置を用いて選択することにより表示する単位を切換えることができる。」

(お)「【0021】
このとき、シート状圧力センサ7が無い状態で部品を搭載するときと同じ手順でリード部品4を搭載すると、搭載部材5が降下することによってシート状圧力センサ7におけるリード部品4との接触面が撓む。この撓みによって生じた電気抵抗の変化が衝撃力測定用の検知信号としてシート状圧力センサ7から出力される(図4のステップS2)。そして、シート状圧力センサ7から出力された衝撃力測定用の検知信号を得ることにより基板1上の搭載予定位置においてリード部品4が受けた衝撃力を知ることが可能となる。」

(か)図1ないし図3の記載から、シート状圧力センサ7は電子部品が受ける押圧荷重による衝撃力を検出するものであることが看取される。

(き)図6の記載から、シート状圧力センサ7は、部品本体が受ける衝撃のピーク値を含むデータを取得、処理し、画面に表示するものであることが看取される。

(く)上記(い)の「・・・基板上の搭載位置に電子部品が搭載されるときに該電子部品が実際上受ける衝撃力を極力正確に知る必要がある。」との記載から、衝撃力の測定は試験的、模擬的に行われるものであることは明らかであり、測定箇所及びその測定に係る動作をそれぞれ模擬搭載点、模擬部品搭載動作ということができる。

以上の記載事項及び図面からみて、引用例には、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されているものと認められる。

「電子部品を搭載部材5によって保持して基板に実装する搭載装置において、電子部品を基板に搭載する際に電子部品に作用する押圧荷重を計測する衝撃力測定方法であって、
搭載部材5にシート状圧力センサ7に設定された荷重計測点を模擬搭載点とする模擬部品搭載動作を実行させる工程と、
該工程においてシート状圧力センサ7によって検出された検知信号を取り込んでデータ処理することにより、模擬部品搭載動作において電子部品に作用する押圧荷重のピーク値を少なくとも含む衝撃力の実測値を取得する実測値取得工程と、
取得された実測値を画面表示によって出力する実測値出力工程とを含む、
電子部品実装装置における衝撃力測定方法。」

(3)対比
本願補正発明と引用例発明とを比較すると、後者の「電子部品」は前者の「電子部品」に相当し、以下同様に、「搭載部材5」は「搭載ヘッド」に、「搭載装置」は「電子部品実装装置」に、「衝撃力測定方法」は「部品押圧荷重の計測方法」に、「シート状圧力センサ7」は「ロードセル」に、「模擬部品搭載動作を実行させる工程」は「模擬部品搭載動作を実行させる動作実行工程」に、「衝撃力の実測値を取得する実測値取得工程」は「荷重計測データを取得するデータ取得工程」に、「取得された実測値を画面表示によって出力する実測値出力工程」は「取得された計測データを、画面表示、印刷出力または記憶媒体への書き込みのいずれかによって出力するデータ出力工程」にそれぞれ相当する。

したがって、本願補正発明の用語に倣って整理すると、両者は、
「電子部品を搭載ヘッドによって保持して基板に実装する電子部品実装装置において、電子部品を基板に搭載する際に電子部品に作用する押圧荷重を計測する部品押圧荷重の計測方法であって、
前記搭載ヘッドに前記ロードセルに設定された荷重計測点を模擬搭載点とする模擬部品搭載動作を実行させる動作実行工程と、
前記動作実行工程において前記ロードセルによって検出された荷重計測信号を取り込んでデータ処理することにより、前記模擬部品搭載動作において前記電子部品に作用する押圧荷重のピーク値を少なくとも含む荷重計測データを取得するデータ取得工程と、
前記取得された計測データを、画面表示、印刷出力または記憶媒体への書き込みのいずれかによって出力するデータ出力工程とを含む、
電子部品実装装置における部品押圧荷重の計測方法。」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願補正発明は、「基板保持部に保持された基板」を備え、「荷重計測用のロードセルが装着された計測用基板を前記電子部品実装装置の前記基板保持部に保持させる工程」を有し、「前記計測用基板を前記基板保持部に保持させた状態で部品押圧荷重の計測を行うことにより、前記計測用基板は下面を実際の部品搭載用の基板と同様の態様で支持された状態となっているため、取得される荷重計測結果は実際の部品搭載状態を正しく再現したものとなる」のに対し、引用例発明はそのような構成を有するものであるのか不明である点。

(4)判断
(4-1)相違点について
引用例には、「しかしながら、電子部品の種類毎に搭載動作条件を設定しても、・・・載電子部品に過度の衝撃力を与えて電子部品に損傷や破損等を生じることがある。このような問題を未然に回避するには基板上の搭載位置に電子部品が搭載されるときに該電子部品が実際上受ける衝撃力を極力正確に知る必要がある。」(上記摘記事項(い)を参照。)との記載があり、このような衝撃力を正確に知るには、基板を実際の搭載時の状況と同じようにするのが望ましいことは明らかであるから、引用例発明において、電子部品が実際上受ける衝撃力を測定する際に、搭載時に基板を置くのと同様の態様で基板を設置して行うことは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

そして、本願補正発明の効果は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が予測し得たものにすぎない。

したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
本願補正発明について以上のとおりであるから、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成23年12月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成23年9月30日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1は次のとおりである。

「【請求項1】
電子部品を搭載ヘッドによって保持して基板保持部に保持された基板に実装する電子部品実装装置において、電子部品を基板に搭載する際に電子部品に作用する押圧荷重を計測する部品押圧荷重の計測方法であって、
荷重計測用のロードセルが装着された計測用基板を前記電子部品実装装置の前記基板保持部に保持させる工程と、
前記搭載ヘッドに前記ロードセルに設定された荷重計測点を模擬搭載点とする模擬部品搭載動作を実行させる動作実行工程と、
前記動作実行工程において前記ロードセルによって検出された荷重計測信号を取り込んでデータ処理することにより、前記模擬部品搭載動作において前記電子部品に作用する押圧荷重のピーク値を少なくとも含む荷重計測データを取得するデータ取得工程と、
前記取得された計測データを、画面表示、印刷出力または記憶媒体への書き込みのいずれかによって出力するデータ出力工程とを含むことを特徴とする電子部品実装装置における部品押圧荷重の計測方法。」

3-1.本願発明1について
(1)本願発明1
本願発明1は上記のとおりである。

(2)引用例
引用例及びその記載事項並びに引用例発明は上記2.に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明1は実質的に、上記2.で検討した本願補正発明から、「荷重計測用のロードセルが装着された計測用基板を前記電子部品実装装置の前記基板保持部に保持させる工程」についての限定事項である、「前記計測用基板を前記基板保持部に保持させた状態で部品押圧荷重の計測を行うことにより、前記計測用基板は下面を実際の部品搭載用の基板と同様の態様で支持された状態となっているため、取得される荷重計測結果は実際の部品搭載状態を正しく再現したものとなる」との事項を省いたものに相当する。

そうすると、本願発明1の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.に記載したとおり、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1は、実質的に同様の理由により、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)むすび
したがって、本願発明1は引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.結語
以上のとおり、本願発明1が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである以上、本願発明2について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-20 
結審通知日 2012-08-21 
審決日 2012-09-05 
出願番号 特願2008-23593(P2008-23593)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奥村 一正  
特許庁審判長 山岸 利治
特許庁審判官 所村 陽一
島田 信一
発明の名称 電子部品実装装置における部品押圧荷重の計測方法  
代理人 藤井 兼太郎  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 永野 大介  

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