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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1265062
審判番号 不服2011-2802  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-07 
確定日 2012-10-25 
事件の表示 特願2000-102175号「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月9日出願公開、特開2001-276368号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成12年4月4日の特許出願であって、平成22年10月28日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年11月9日)、これに対し、平成23年2月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、平成24年4月18日付けで当審にて拒絶理由通知がなされ、同年5月11日付けで手続補正がなされたものである。

2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年5月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「遊技中に所定の条件が成立したとき、大当たりを発生する大当たり発生手段と、該大当たり発生手段による大当たりの発生時に開いて遊技球の入賞を容易にする第1電動役物と、を備えたパチンコ機であって、
上記大当たりの発生中に上記第1電動役物の特定領域を遊技球が通過したとき、上記第1電動役物を繰り返し開いて上記大当たりの状態を継続させる大当たり継続手段と、該大当たり継続手段が1回の上記大当りにおいて上記大当たりの状態を継続させた継続回数が所定回数以下であった場合に、上記所定の条件を成立し易くするパンク補償手段と、を備え、
上記パンク補償手段を、上記継続回数が予め設定された複数の数値範囲のいずれに当てはまるかに基づいて、上記継続回数が低い数値範囲に当てはまるほど上記所定の条件を成立し易くする、としたことを特徴とするパチンコ機。」

3 刊行物について
当審による拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-342242号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与。以下同様。)。
ア 「【発明の属する技術分野】本発明は、始動入賞領域への入賞を条件に特別図柄可変表示装置(いわゆるメインデジタル)の複数の図柄を変動表示し、順次停止表示し、所定の図柄の組合せが表示されたときに、遊技者に大きな利益を与えることが可能な特別遊技状態を発生させるパチンコ遊技機等の弾球遊技機に関し、詳しくは、この特別遊技状態の終了後に、所定の条件下において、いわゆる確変あるいはいわゆる時短と称される、遊技者にとって有利な状態に移行し得る弾球遊技機に関するものである。」(段落【0001】)
イ 「【発明が解決しようとする課題】ところで、このような確変機と称される遊技機において、上記「確変」の権利を得られているか否かということは遊技者にとって重要な関心事であるが、その権利取得の可否は、既に特別遊技の開始前に遊技者に知らされてしまう。このため特別遊技の発生が「確変」を伴わない場合、特別遊技の後に「確変」への移行がないという失望感から、せっかく獲得した特別遊技さえも、もの足りなさを感じながら行う遊技者が少なくなかった。
また、上記した特別遊技は、一般に変動入賞装置(いわゆるアタッカ)を30秒間又は入賞球が10個あるまで開放状態にし、その間に継続入賞があることを条件に、これを所定回数、例えば16回繰り返し可能とすることで、遊技者に大きな利益をもたらすものである。しかし、アタッカの開放中に継続入賞が1球も無い場合、開放回数が所定回数に達していなくてもその後のアタッカの開放が行われない、いわゆる「パンク」と称される状態となってしまう。特に、特別遊技の初期段階でいわゆるパンク状態となってしまうと、遊技者は特別遊技による利益をほとんど享受できなくなり、多大な労力をはらって特別遊技を獲得した遊技者に酷である。
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、遊技者の遊技心を損なうことなく特別遊技の実行を図りうるとともに、特別遊技の初期段階においていわゆるパンク状態となった場合に、そのパンク状態により遊技者が失った利益を回復する機会を付与しうる弾球遊技機を提供することを目的とするものである。」(段落【0003】?【0005】)
ウ 「CPU240、乱数発生器320および乱数サンプリング回路330は、入賞態様決定回路を構成している。大当たり入賞判定テーブルには、この乱数発生器320で発生する一定範囲の乱数を各入賞態様に分別するデータが記憶されている。一方、CPU240、乱数発生器325および乱数サンプリング回路330は、モード移行態様決定回路を構成している。モード移行判定テーブルには、この乱数発生器325で次々に発生する一定範囲の乱数の累算値を各移行モード態様に分別するデータが記憶されている。
大当たり入賞判定について説明する。始動口130に遊技球が入賞したことを始動入賞球センサ210が検知すると、CPU240は乱数発生器320へ信号を出力して乱数を発生させる。サンプリング回路330は、乱数発生器320によって発生された乱数の中から1つの乱数を抽出する。入賞態様は、このサンプリング回路330によって抽出された乱数の値が、大当たり入賞判定テーブルによりどの態様に分別されるかによって決定される。
抽出された乱数値が、大当たり判定テーブルの大当たり入賞区画に属する確率は、大当たり発生確率テーブルに設定された確率値に基づいている。大当たり発生確率テーブルには、複数の確率値が記憶されており、大当たり入賞の発生確率は設定操作部340の操作により可変設定することが可能となっている。CPU240には、この設定操作部340の設定状態が入力され、設定表示部駆動回路350によって読み込んだ設定状態を設定表示部360に表示させる。入賞態様決定回路で大当たり入賞が決定されると、主可変表示装置110に「1」?「15」の中のいずれかの同一図柄が、横並びに3個停止表示される。
移行モード判定について説明する。変動入賞装置であるアタッカ140が開成状態となった場合に、アタッカ140に遊技球が入賞したことを特定球検出手段であるカウントスイッチ220が検知すると、CPU240は乱数発生器325へ信号を出力して乱数を発生させる。サンプリング回路330は、乱数発生器325によって発生された乱数の中から1つの乱数を抽出する。移行モード態様は、このサンプリング回路330によって抽出された乱数の累算値が、移行モード判定テーブルによりどの態様に分別されるかによって決定される。 なお、上述した制御装置230は、変動入賞装置であるアタッカ140が開成状態となった場合に、アタッカ140のカウントスイッチ220により遊技球が検出される毎に抽選を行う抽選手段として機能し、抽選手段における抽選結果が開成状態の継続を許可するものである場合に、開成状態の現サイクルの終了後において次のサイクルを開始させる開成状態継続手段としても機能する。すなわち、制御装置230が、ROM250に予め記憶されたプログラムに基づいて動作することにより、抽選手段および開成状態継続手段として機能する。」(段落【0027】?【0031】)
エ 「また、遊技部100内に弾発された遊技球がいずれの入賞口にも入賞しなかった場合には、遊技球はアウト口180に集められて回収される。アウト口180に集められた遊技球は、アウト球センサ290に検知される。また、遊技球が遊技部100内を流下する際に、始動口130に入賞すると始動入賞球センサ210に検知され、CPU240の処理制御によって主可変表示装置110が可変表示を開始する。また、始動入賞球センサ210に遊技球が検知されると、前述した入賞態様決定回路によって大当たり入賞判定が行われる。
この入賞判定の結果、大当たり入賞が生じて主可変表示装置110に同一図柄が横並びに3個停止表示されると、CPU240によってアタッカ駆動回路310が制御されて開成状態となり、30秒が経過するか、あるいはこの30秒間に10個の遊技球がアタッカ140内に入賞するまでを1サイクルとして、この開成状態が続く。また、アタッカ140が開成状態となった場合に、アタッカ140へ遊技球が入賞する毎に継続入賞の抽選を行い、抽選結果が開成状態の継続を許可するものである場合に、この開成状態の次のサイクルの開始が可能となり、このようにして開成状態のサイクルは最高16回まで繰り返すことができる。
すなわち、変動入賞装置であるアタッカ140は、大当たりの発生を開始条件として開成状態となり、30秒の経過あるいは10個の遊技球の入賞を終了条件として開成状態の1サイクルを終了する。また、継続入賞の抽選結果が開成状態の継続を許可するものであることを継続条件として、開成状態のサイクルを最高16回まで継続する。」(段落【0036】?【0038】)
オ 「図1は、この制御処理の手順を示すフローチャートである。図1に示すように、本制御処理においては、遊技球の始動口130への入賞があったか否かが判断され(S0)、入賞があったと判断されると大当たりの状態になったか否かが検出され(S1)、大当たりの状態になっていないと判断されると通常の遊技を行う。大当たりの状態になったと判断されると、前回の制御処理において記憶されていた乱数累算値記憶手段4を初期値にリセット(たとえば0を入力)し(S2)、この後特別遊技のモードに移行する(S3)。次に、遊技球がアタッカ140に入賞したか否かが検出され(S4)、入賞が検出されると次のステップに進む。」(段落【0047】)
カ 「次に、特別遊技が終了したか否かが判断され(S10)、終了していなければ上述したステップS4からステップS9までの各処理を繰り返す。一方、終了していれば乱数累算値記憶手段4に最終的に記憶されている乱数累算値が120以下であるか否かが判断され(S11)、乱数累算値が120以下でないと判断された場合には最初(S0)に戻る。上記ステップS11において乱数累算値が120以下であれば、さらに乱数累算値が80以下であるか否かが判断される(S12)。また、上記ステップS12において乱数累算値が80以下でないと判断された場合には時短モードに移行し(S13)、逆に乱数累算値が80以下であると判断された場合には時短と確変の両者を実行するモードに移行する(S14)。移行した各モードの処理が終了した場合には最初(S0)に戻る。
なお、上記時短とは、副可変表示装置115を構成する図柄表示部の図柄変動時間の短縮、および/または当選となる図柄が表示される確率の増大により、始動口130への入賞を容易にする状態に設定される権利である。また、上記確変とは、大当たり発生確率が高確率値となることである。すなわち、設定操作部340によるテーブルの可変設定l、2、3にかかわらず、大当たり発生確率テーブルには1/25の大当たり発生確率値が設定される。したがって、特別遊技終了後に大当たりが再度発生する確率が極めて高くなる。・・・このように本実施形態においては、遊技球がアタッカ140に入賞する毎に乱数抽選を行い、この乱数値を特別遊技の全期間に亘り累算し、この累算値が最終的に120を越えた場合には通常遊技に戻り、この累算値が最終的に80を超え、120以下である場合には時短モードに移行するようにし、さらに、この累算値が最終的に80以下である場合には時短+確変モードに移行するようにしており、時短モードあるいは時短+確変モードに突入するか否かは遊技者にとって、特別遊技が完全に終了するまで知ることができないので、遊技者は特別遊技後の各モードへの移行に期待を持ちつつその特別遊技を実行することとなるので、特別遊技自体もより楽しいものとなる。
また、上記した特別遊技は、アタッカ140の開放中に継続入賞が1球も無い場合には、開放回数が所定回数に達していなくてもその後のアタッカ140の開放が行われない、いわゆる「パンク」と称される状態となってしまうが、このようないわゆる「パンク」と称される状態となってしまっても、そのパンク状態となったタイミングが特別遊技の初期段階であればあるほど乱数累算値が小さい値となる可能性が高いため、その後上記いずれかのモードに移行する可能性が大となり、特別遊技において享受できなかった利益を回復する機会を遊技者に付与することが可能となり、遊技者に極度に酷となる事態を回避することができる。
なお、アタッカ140ヘの入賞ごとに抽出される乱数は、「+1」または「0」とされ、「+1」または「0」のいずれかが各々1/2の確率で決定され、その抽出された乱数値が乱数値加算手段3により順次前回の乱数累積値に加算され、この加算処理により更新された新たな乱数累積値は乱数累算値記憶手段4に記憶されることとなる。」(段落【0049】?【0054】)
キ 「このように、当選確率を外部からの操作に基づいて変更できるようにすれば、遊技者に有利な状態である各モード移行の確率を変更することができ、遊技者と遊技店との利益の均衡を図ることができる。さらに、特別遊技や各モード移行等の有利な権利を得た連続回数により、次回の各モード移行の確率を厳しくしたり、緩やかにしたりすることもできる。
なお、上述した実施形態においては、変動入賞装置の開成状態の繰返し継続は、変動入賞装置に入賞する毎に行われる抽選結果に基づいているが、これに代え、変動入賞装置内に設けた複数個の入賞口のうちの1つに入賞したことに基づいて行うようにしても良いし、変動入賞装置が開成状態となっている時間帯のうち、所定の時間帯に入賞することに基づいて行うようにしても良い。
【発明の効果】本発明の弾球遊技機は、特別遊技の全期間中において、変動入賞装置に遊技球が入賞する毎に乱数抽選を行い、この抽出された乱数値を累算し、それらの結果に基づいて「確変」や「時短」等の遊技者に有利な権利を与えるようにしている。これにより、このような権利が得られるか否かは特別遊技終了後に決定されることとなり、遊技者は特別遊技終了後における上記権利獲得の可能性に期待しつつ、遊技心を失うことなく特別遊技を行うことができる。また、特別遊技の初期段階でいわゆるパンク状態となった場合には、再度大当たりを得やすいようにして、遊技者に本来得られるはずであった利益を回復する機会を与えることができる。」(段落【0065】?【0067】)

上記ア?キの記載事項及び図面の図示内容を総合勘案し、また、変動入賞装置の開成状態の繰返し継続を変動入賞装置に入賞する毎に行われる抽選結果に基づいて行う実施形態に代えて、上記キの記載事項に示される、変動入賞装置内に設けた複数個の入賞口のうちの1つに入賞したことに基づいて行う実施形態を前提にすると、刊行物には、次の発明が記載されていると認められる。
「遊技球の始動口130への入賞があったと判断され、入賞態様決定回路で大当たりの状態になったと判断されると、主可変表示装置110に「1」?「15」の中のいずれかの同一図柄が、横並びに3個停止表示され、特別遊技のモードに移行し、大当たりの発生を開始条件として開成状態となる変動入賞装置であるアタッカ140を備えた弾球遊技機であって、
変動入賞装置内に設けた複数個の入賞口のうちの1つに入賞したことに基づいて、変動入賞装置の開成状態の繰返し継続を行い、特別遊技を得た連続回数により、次回の各モード移行の確率を厳しくしたり、緩やかにしたりすることができ、特別遊技の初期段階でパンク状態となった場合には、再度大当たりを得やすいようにした弾球遊技機。」

さらに、上記カの記載事項及び図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物には、次の技術事項クが記載されていると認められる。
「乱数累算値が120以下であり、乱数累算値が80以下でないと判断された場合には時短モードに移行し(S13)、逆に乱数累算値が80以下であると判断された場合には時短と確変の両者を実行するモードに移行し(S14)、確変では、大当たり発生確率テーブルには1/25の大当たり発生確率値が設定されることにより、特別遊技終了後に大当たりが再度発生する確率が極めて高くした弾球遊技機。」

4 対比
本願発明と刊行物に記載された発明とを対比する。
刊行物に記載された発明の「遊技球の始動口130への入賞があったと判断され、入賞態様決定回路で大当たりの状態になったと判断されると、主可変表示装置110に「1」?「15」の中のいずれかの同一図柄が、横並びに3個停止表示され、特別遊技のモードに移行」することは、「遊技球の始動口130への入賞があった」こと、「入賞態様決定回路で大当たりの状態になった」こと、及び、「主可変表示装置110に「1」?「15」の中のいずれかの同一図柄が、横並びに3個停止表示され」たことのそれぞれが、遊技中に特別遊技のモードに移行するための所定の条件を構成するものであり、また、「特別遊技のモード」は、大当たりの状態の発生により移行されるものといえるから、本願発明の「遊技中に所定の条件が成立したとき、大当たりを発生する大当たり発生手段」「を備える」ことに相当し、以下同様に、
刊行物に記載された発明の「大当たりの発生を開始条件として開成状態となる変動入賞装置であるアタッカ140」は、その構成及び機能からみて、本願発明の「大当たり発生手段による大当たりの発生時に開いて遊技球の入賞を容易にする第1電動役物」に、
刊行物に記載された発明の「弾球遊技機」は、本願発明の「パチンコ機」に、
刊行物に記載された発明の「変動入賞装置内に設けた複数個の入賞口のうちの1つに入賞したことに基づいて、変動入賞装置の開成状態の繰返し継続を行」うことは、本願発明の「大当たりの発生中に第1電動役物の特定領域を遊技球が通過したとき、第1電動役物を繰り返し開いて大当たりの状態を継続させる大当たり継続手段」「を備え」ることに、
刊行物に記載された発明の「特別遊技を得た連続回数により、次回の各モード移行の確率を厳しくしたり、緩やかにしたりすることができ、特別遊技の初期段階でパンク状態となった場合に、再度大当たりを得やすいようにした」ことは、パンク状態となった場合に、再度大当たりを得やすいようにするために、特別遊技を得た連続回数が少ないと、次回の各モード移行の確率を緩やかにするものであり、逆に、特別遊技を得た連続回数が多いと、次回の各モード移行の確率を厳しくするものであるから、本願発明の「大当たり継続手段が1回の大当りにおいて大当たりの状態を継続させた継続回数が所定回数以下であった場合に、所定の条件を成立し易くするパンク補償手段」「を備え」ることに、
それぞれ相当する。

したがって、上記両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「遊技中に所定の条件が成立したとき、大当たりを発生する大当たり発生手段と、該大当たり発生手段による大当たりの発生時に開いて遊技球の入賞を容易にする第1電動役物と、を備えたパチンコ機であって、
上記大当たりの発生中に上記第1電動役物の特定領域を遊技球が通過したとき、上記第1電動役物を繰り返し開いて上記大当たりの状態を継続させる大当たり継続手段と、該大当たり継続手段が1回の上記大当りにおいて上記大当たりの状態を継続させた継続回数が所定回数以下であった場合に、上記所定の条件を成立し易くするパンク補償手段と、を備えたパチンコ機。」

[相違点]
パンク補償手段が、本願発明では、大当たりの状態を継続させた継続回数が予め設定された複数の数値範囲のいずれに当てはまるかに基づいて、継続回数が低い数値範囲に当てはまるほど所定の条件を成立し易くされるのに対して、刊行物に記載された発明では、大当たりの状態を継続させた継続回数が所定回数以下であった場合に所定の条件を成立し易くされるが、継続回数が予め設定された複数の数値範囲のいずれに当てはまるかに基づいて所定の条件の成立性が判断されるものでない点。

5 当審の判断
上記相違点について検討する。
上記カの記載事項によると、「乱数累積値」は、遊技球がアタッカ140に入賞する毎に乱数抽選が行われ、この乱数値が特別遊技の全期間に亘り累算されたものである。そうすると、刊行物に記載された技術事項クは、乱数累積値が80以下という低い数値範囲に当てはまると、確変を実行し、乱数累積値が80を超える場合に比して特別遊技終了後に大当たりが再度発生する確率を極めて高くすることに関するものといえる。
また、上記カの記載事項によると、「乱数累算値」は、その値の大小から、パンク状態となったタイミングを推測できるものであるから、「乱数累算値」が小さな値であることは、特別遊技の初期段階である可能性が高いことを示すものである。
そうすると、刊行物に記載された発明において、特別遊技の初期段階でパンク状態となった場合に、再度大当たりを得やすいようにするに際して、積算値としての継続回数を、同じく特別遊技の初期段階でパンク状態となったことを推測できる乱数累算値である積算値に関する、上記技術事項クに倣って、継続回数が低い数値範囲に当てはまると、確変を実行し、大当たりが再度発生する確率を極めて高くして、上記相違点における本願発明が具備する発明特定事項に到達することは、当業者が容易になし得たものである。
そして、本願発明の奏する効果についてみても、刊行物に記載された発明及び刊行物に記載された技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
よって、本願発明は、刊行物に記載された発明及び刊行物に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明及び刊行物に記載された技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-22 
結審通知日 2012-08-28 
審決日 2012-09-10 
出願番号 特願2000-102175(P2000-102175)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤脇 昌也  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 瀬津 太朗
秋山 斉昭
発明の名称 パチンコ機  
代理人 足立 勉  

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