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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B24B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B24B |
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管理番号 | 1265101 |
審判番号 | 不服2012-3818 |
総通号数 | 156 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-02-28 |
確定日 | 2012-10-25 |
事件の表示 | 特願2006-299071「研磨パッドおよびガラス基板研磨方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月22日出願公開、特開2008-114324〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成18年11月2日の特許出願であって、同23年8月5日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同23年9月22日に意見書とともに特許請求の範囲について手続補正書が提出され、同23年10月24日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同23年12月21日に意見書が提出されたが、同24年1月25日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同24年2月28日に本件審判の請求がされるとともに特許請求の範囲について再度手続補正書が提出されたものである。 第2 平成24年2月28日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年2月28日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容の概要 平成24年2月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正をするものであって、特許請求の範囲について補正前の請求項1及び請求項2と補正後の請求項1の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。 (1)補正前 請求項1 「ガラス基板の研磨に用いられ、ガラス面と接触すべき表層、中間層および基層がこの順で積層された研磨パッドであって、基層の圧縮率が中間層の圧縮率よりも大きく、表層は孔を有し、中間層は孔を有しない、または中間層が孔を有する場合はその孔径が表層の孔径よりも小さく、表層の孔の径が50μm以下である研磨パッド。」 請求項2 「表層の厚みが10?300μm、中間層の厚みが100?700μm、基層の厚みが100?700μmである請求項1の研磨パッド。」 (2)補正後 請求項1 「ガラス基板の研磨に用いられ、ガラス面と接触すべき表層、中間層および基層がこの順で積層された研磨パッドであって、基層の圧縮率が中間層の圧縮率よりも大きく、表層は孔を有し、中間層は孔を有しない、または中間層が孔を有する場合はその孔径が表層の孔径よりも小さく、表層の孔の径が50μm以下である研磨パッドであって、表層の厚みが10?150μm、中間層の厚みが100?700μm、基層の厚みが100?700μmである研磨パッド。」 2 補正の適否 特許請求の範囲についてする本件補正は、補正前の請求項1を削除するとともに、補正前の請求項2の「表層の厚み」を「10?150μm」に限定したものを補正後の請求項1とするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかであるので、さらに、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 (1)補正発明 補正発明は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、上記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「研磨パッド」であると認める。 (2)引用刊行物 (2-1)引用刊行物1 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に頒布された刊行物である特開2004-243445号公報(以下「引用刊行物1」という。)の記載内容は以下のとおりである。 ア 引用刊行物1記載の事項 引用刊行物1には、「研磨パッド」に関連して以下の事項が記載されている。 (ア)段落【0001】 「【発明の属する技術分野】 この発明は、例えばハードディスク等のような情報記録装置の磁気記録媒体である磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク等に使用される情報記録媒体用ガラス基板及びその製造方法並びにそれに使用する研磨パッドに関するものである。」 (イ)段落【0006】 「・・・請求項1に記載の研磨パッドの発明は、円盤状に形成されたガラス素板の表面を研磨して情報記録媒体用ガラス基板を製造するときに使用する研磨パッドであって、複数の独立気泡が内在する内層と、該独立気泡に比べて極微細なサイズの複数のナップ孔が表面に設けられた外層とを有するナップ層をその表面に備えることを要旨とする。」 (ウ)段落【0008】 「・・・請求項4に記載の研磨パッドの発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記ナップ孔の開口径が、10?60μmであることを要旨とする。」 (エ)段落【0010】 「請求項6に記載の情報記録媒体用ガラス基板の発明は、請求項5に記載の製造方法で製造された情報記録媒体用ガラス基板であって、三次元表面構造解析顕微鏡を用い、測定波長(λ)を0.2?1.4mmに設定して測定された表面の微小うねりの高さ(NRa)が0.15nm以下であることを要旨とする。」 (オ)段落【0011】 「・・・情報記録媒体用ガラス基板(以下、略して「ガラス基板」とも記載する)は、シート状のガラス板から円盤状に切り出されたガラス素板の表面を、研磨装置を使用して研磨することにより、中心に円孔を有する円盤状に形成されている。・・・該ガラス素板から得られたガラス基板の表面に、例えばコバルト(Co)、クロム(Cr)、鉄(Fe)等の金属又は合金よりなる磁性膜、保護膜等を形成することにより、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク等の情報記録媒体が構成される。」 (カ)段落【0014】 「ガラス基板は、表面の微小うねりの高さ(NRa)が0.15nm以下である。・・・」 (キ)段落【0015】 「当該ガラス基板は、Ra及びWaがそれぞれ0.4nm、0.5nmを超えると、その表面が荒れ、平滑性の低下した品質の低いものとなるおそれがある。これは、高記録密度化を図るために記録された情報を読み取るためのヘッドと情報記録媒体の表面との距離を短くしたとき、移動するヘッドが情報記録媒体の表面の凹凸を乗り越えたり、追従したりすることができず、凹凸に衝突したり、引っ掛かったり等の不具合が発生しやすくなるためである。特に、NRaが0.15nmを超えると、この不具合が顕著に発生するため、NRaを0.15nm以下とする必要がある。」 (ク)段落【0026】 「前記2次研磨処理とは、ガラス素板を精密研磨して、その表面の極僅かな部分を削り取り、表面に存在する微小うねり、微小凹凸等の微小な欠陥を修正する処理をいう。これら微小な欠陥は、大半がラップ処理時、1次研磨処理時等の研磨痕、研磨時の応力による歪み等によって形成されたものであり、微小うねりならば丘の部分、微小凹凸ならば凸部分等のように、その上部のみを削り取ることで凹凸が均され、平滑状に修正される。つまり、当該2次研磨処理では、表面の微小うねり、表面粗さの改善を主目的として行われる。・・・」 (ケ)段落【0028】-【0031】 「2次研磨処理の際、発泡体よりなる軟質ポリッシャによってガラス素板の表面が精密研磨される状況を詳細に検討すると、研磨剤の砥粒は、まず軟質ポリッシャの表面の穴内に入り込む。次いで、砥粒はこの穴へ出入りするとともに、穴から出たときには、この穴を形作る周壁とガラス素板の表面との間に入り込む。この周壁が砥粒を介してガラス素板の表面に接触されたとき、同表面がその凹凸を均されるように研磨される。従って、ガラス素板の表面へ接触する軟質ポリッシャのなかでも、研磨後の表面の品質に特に影響を与える部分は、表面の穴そのものではなく、ガラス素板の表面へ接触される部分であり、この穴を形作る周壁である。 例えば、該周壁が薄かったり、長かったり等して軟らかくなれば、ガラス素板の表面に対して周壁が当たり負けして変形しやすくなり、表面の微小うねり、表面粗さ等の欠陥を十分に修正することができなくなるおそれがある。これとは逆に、該周壁が厚かったり、短くなったり等して硬くなれば、ガラス素板の表面に対する周壁の当たりが強くなり、同表面を傷つける可能性がある。このため、軟質ポリッシャには、穴を形作る周壁を観点とする微視的に見た場合、微小うねり、表面粗さ等の欠陥を十分に修正することができる程度の硬さと、ガラス素板の表面を傷つけない程度の軟らかさという相反する性質を付与する必要がある。 そこで、当該2次研磨処理で用いる軟質ポリッシャは、図1に模式的に示すような構成とされている。すなわち、軟質ポリッシャは、不織布等からなる基材11と、同基材11の表面に積層されたナップ層12とから形成されている。このナップ層12は、複数の独立気泡13が内在する内層14と、ナップ層12の表面で開口された複数のナップ孔15を有する外層16とを備えており、外観上で2層構造のような構成とされている。 前記独立気泡13は、ナップ層12の内側となる部分が大きく膨らみ、表面側に向かうに従って細く萎む水滴状をなし、ナップ層12の厚み方向に延びるように形成されている。前記ナップ孔15は、該独立気泡13に比べて極微細なサイズであり、深さの浅い壺状をなし、独立気泡13と連通することなく、独立して形成されている。そして、研磨時には、ナップ孔15を形作る周壁15aが砥粒を介してガラス素板の表面に接触されることにより、同表面が研磨される。」 (コ)段落【0040】 「・・・また、ナップ孔15の開口径は、好ましくは10?60μmである。さらに、ナップ孔15の深さは、好ましくは1μm以上で100μm未満である。ナップ孔15の個数が400個未満、開口径が10μm未満又は深さが1μm未満の場合、周壁15aが厚くなったり、長くなったり等して軟質ポリッシャを微視的に見た場合の硬さが過剰に高くなるため、研磨時にガラス素板の表面を傷つけてしまうおそれがある。個数が10000個を超える、開口径が60μmを超える又は深さが100μm以上の場合、周壁15aが薄くなったり、長くなったり等して軟質ポリッシャを微視的に見た場合の硬さが過剰に軟らかくなるため、ガラス素板の表面の欠陥を十分に修正することができなくなるおそれがある。」 (サ)段落【0056】 「・・・この2次研磨処理では、研磨パッドとして、独立気泡13が内在する内層14と、複数のナップ孔15を有する外層16とからなる2層構造のナップ層12を備える軟質ポリッシャが使用されている。このナップ層12のナップ孔15は、従来の研磨パッドの表面の穴と比べて深さが浅く、開口径が小さいものとなり、これを形作る周壁15aは、従来のものに比べて硬くなる。このため、当該軟質ポリッシャは、独立気泡13が内在する内層14を有することによって全体では軟らかく、ナップ孔15を有する外層16を有することによってガラス素板の表面に接触される表面は硬くなる。そして、表面が硬く、全体では軟らかい当該軟質ポリッシャは、パッドドレス処理で平坦とされた表面状態を維持しながら、ガラス素板の表面を平滑に研磨することができる。従って、研磨に使用する軟質ポリッシャについて、表面状態の良好なものを効果的に選定することができ、製造されるガラス基板の表面品質の向上を図ることができる。」 (シ)段落【0057】 「・ また、軟質ポリッシャの表面でナップ孔15の個数は1mm2当たり400?10000個とされ、ナップ孔15の開口径は10?60μmとされている。・・・」 (ス)段落【0059】、【表1】 実施例1の開口径が10?40μmであることが記載されている。 イ 引用刊行物1記載の発明 これらの記載を、図面を参照しつつ、補正発明に照らして整理すると、引用刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。 「ガラス素板の研磨に用いられ、ガラス面と接触すべき外層16、内層14および基材11がこの順で積層された研磨パッドであって、外層は孔を有し、内層は独立気泡13を有し、外層の開孔径が10?40μmである研磨パッド。」(以下、「引用刊行物1記載の発明」という。) (2-2)引用刊行物2 原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に頒布された刊行物である特開2002-307293号公報(以下「引用刊行物2」という。)の記載内容は以下のとおりである。 ア 引用刊行物2記載の事項 引用刊行物2には、「研磨クロス」に関連して以下の事項が記載されている。 (ア)段落【0001】 「【発明の属する技術分野】本発明は、シリコン、ガリウム砒素やインジウム燐などの半導体基板または半導体ウエハ、各種基板、ガラス、LCD、ディスクなどの表面を研磨する際に使用する研磨クロスに関する。特に、ニッケルメッキアルミニウムディスク基板、ガラスディスク基板、シリコンウエハ、化合物ウエハ等の被加工物の研磨に好適な研磨クロスに関する。」 (イ)段落【0008】 「・・・本発明の研磨クロスは、厚みが0.2?2.0mmであり、弾性圧縮率が50?4%である表面層と、該表面層の裏面側に積層されており、厚みが0.15?2.0mmであり、弾性圧縮率が2?0.1%である中間支持層と、該中間支持層の裏面側に積層されており、厚みが0.2?2.0mmであり、弾性圧縮率が50?4%である裏面層と、を有しており、・・・」 (ウ)段落【0009】 「一つの実施態様では、前表面層がポリウレタンよりなり、その厚みが0.3?0.7mmであり、弾性圧縮率が50?4%であり、前記中間支持層が、PETフィルムよりなり、その厚みが0.15?1.0mmであり、弾性圧縮率が2?0.1%であり、前記裏面層が不織布よりなり、その厚みが0.4?2.0mmであり、弾性圧縮率が20?3%である。」 (エ)段落【0011】-【0014】 「本発明の研磨クロスは少なくとも三層構造からなり、表面層と、中間支持層と、裏面層と、を有する。 表面層は、いわゆるナップ構造で軟質であり、それにより研磨工程においてスクラッチ、傷の発生を防ぎ、またナップ部に研磨材を保持して被加工物の研磨を行う。 2層目の中間支持層は、ポリエチレンテレフタレートなどの硬質構造で形成され、被加工物のロールオフ、外周部のダレが生じないように、研磨クロスにコシを持たせ、局部変形しないようにする。 3層目の裏面層は、不織布などで形成された軟質弾性構造を有し、被加工物のバッチ内の板厚バラツキおよび定盤の平面精度の誤差、研磨時の変形による研磨圧力分布のバラツキを軽減する。」 (オ)段落【0016】-【0021】 「図1?図3に示すように、本発明の研磨クロス11は少なくとも表面層11と、中間支持層12と、裏面層13とを有する。この裏面層13の裏面側には両面粘着テープが適宜積層され、またその粘着テープの裏面側に離型シートを剥離可能に貼着される。 表面層11は、ポリウレタンよりなる発泡層にて形成され、その厚みは0.2?2.0mmであり、その弾性圧縮率は50?4%である。表面層11の好ましい厚みは0.3?0.7mmであり、また好ましい弾性圧縮率は40?6%である。 中間支持層12はPETフィルム等よりなり、その厚みは0.15?2.0mmであり、またその弾性圧縮率は2?0.1%である。中間支持層12の好ましい厚みは0.3?1.0mmであり、好ましい弾性圧縮率は2?0.1%である。 裏面層13は不織布等よりなり、その厚みは0.2?2.0mmであり、またその弾性圧縮率は50?4%である。裏面層13の好ましい厚みは0.4?1.5mmであり、好ましい弾性圧縮率は15?8%である。 上記表面層11としては、従来よりこの種の研磨クロスの発泡層を形成するものが使用でき、例えば、基材にウレタン樹脂のDMF溶液をコーティングし、その層を湿式凝固させ、温水中で洗浄、熱風で乾燥を行って形成することができる。この発泡層の表面は平滑加工され発泡層の表面には多数の独立発泡の吸着用孔が形成されるものである。 また、表面層11の裏面側に設けられる中間支持層12としては、PETシート、硬質ウレタンシート等の基材シートを使用することができる。」 (カ)段落【0026】-【0027】 「2層目の中間支持層はPETフィルムなどの硬質構造であり、被加工物のロールオフ、すなわち外周部のダレが生じないように、研磨クロスにコシを持たせ、局部変形しないようにする。 3層目は不織布構造であり、被加工物のバッチ内の板厚ばらつきおよび定盤精度の誤差、研磨時の変形を不織布の変形で吸収する。・・・」 (キ)段落【0037】、【表1】 実施例の表層の厚み及び圧縮率がそれぞれ0.5mm、15%、中間層の厚み及び圧縮率がそれぞれ0.2mm、0.1%、裏面層の厚み及び圧縮率がそれぞれ0.8mm、20%であることが記載されている。 イ 引用刊行物2記載の発明 これらの記載を、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ整理すると、引用刊行物2には以下の発明が記載されていると認められる。 「ガラスディスク基板の研磨に用いられ、ガラス面と接触すべき表面層11、中間支持層12および裏面層13がこの順で積層された研磨クロスであって、裏面層の圧縮率が中間支持層の圧縮率よりも大きく、表面層は孔を有し、中間支持層は孔を有しないものである研磨クロスであって、表面層の厚みが500μm、中間支持層の厚みが200μm、裏面層の厚みが800μmである研磨クロス。」(以下、「引用刊行物2記載の発明」という。) (3)対比1(補正発明と引用刊行物1記載の発明との対比) 補正発明と引用刊行物1記載の発明とを対比すると以下のとおりである。 引用刊行物1記載の発明の「ガラス素板」は補正発明の「ガラス基板」に相当し、引用刊行物1記載の発明の「外層」、「内層」及び「基材」はそれぞれ補正発明の「表層」、「中間層」及び「基層」に相当する。 したがって、補正発明と引用刊行物1記載の発明とは、以下の点で一致する。 [一致点] 「ガラス基板の研磨に用いられ、ガラス面と接触すべき表層、中間層および基層がこの順で積層された研磨パッドであって、表層は孔を有し、表層の孔の径が50μm以下である研磨パッド。」 そして、補正発明と引用刊行物1記載の発明とは、以下の2点で相違している。 ア <相違点1> 補正発明は、基層の圧縮率が中間層の圧縮率よりも大きく、中間層は孔を有しない、または中間層が孔を有する場合はその孔径が表層の孔径よりも小さいのに対し、引用刊行物1記載の発明は、中間層である内層14は独立気泡13を有するものの、基材11の圧縮率と内層14の圧縮率の大小関係が明らかではなく、中間層である内層14の孔径が表層である外層16の孔径よりも大きい点 イ <相違点2> 補正発明は、表層の厚みが10?150μm、中間層の厚みが100?700μm、基層の厚みが100?700μmであるのに対し、引用刊行物1記載の発明は、表層、中間層及び基層に相当する基材11、内層14及び外層15の厚みが明らかではない点。 (4)相違点の検討1 ア <相違点1>について 引用刊行物2記載の発明は上記のとおりであり、これを補正発明に照らすと、引用刊行物2記載の発明の「ガラスディスク基板」は補正発明の「ガラス基板」に対応し、引用刊行物2記載の発明の「表面層」、「中間支持層」及び「裏面層」はそれぞれ補正発明の「表層」、「中間層」及び「基層」に対応し、引用刊行物2記載の発明の「研磨クロス」は補正発明の「研磨パッド」に対応する。 したがって、補正発明に照らし、引用刊行物2記載の発明を書き改めると以下のとおりである。 「ガラス基板の研磨に用いられ、ガラス面と接触すべき表層、中間層および基層がこの順で積層された研磨パッドであって、基層の圧縮率が中間層の圧縮率よりも大きく、表層は孔を有し、中間層は孔を有しないものである研磨パッドであって、表層の厚みが500μm、中間支持層の厚みが200μm、裏面層の厚みが800μmである研磨パッド。」 引用刊行物1記載の発明及び引用刊行物2記載の発明はともにガラス基板の研磨に用いられる研磨パッドとして共通の技術分野に属する発明であり、しかも、研磨パッドの表層に孔を有するという点で類似する構成を備えているものである。 そして、引用刊行物1記載の発明は、外層16の孔によって形成された周壁がガラス基板に及ぼす圧力を最適化することで微小うねりを低減している(摘記事項(ケ)参照。)。 ここで、引用刊行物2記載の発明の中間支持層12は硬質構造であるので、中間支持層12より圧縮率の高い裏面層13が表面層11の形成する圧力分布に及ぼす影響が中間支持層12の存在によって低減されることは当業者であれば容易に理解し得ることであって、引用刊行物1記載の発明の中間層である内層14に、引用刊行物2記載の発明の中間層である中間支持層12を適用した場合、外層16の孔によって形成された周壁によりガラス基板に作用する圧力が安定することは明らかである。 さらに、引用刊行物1記載の発明において、外層16の孔によって形成された周壁がガラス基板に及ぼす圧力は外層16の開口径によって決まるものであり、当該圧力の決定に際し、中間層である内層14は直接関与しているものではないと考えられるところ、引用刊行物1記載の発明の中間層である内層14と引用刊行物2記載の発明の中間層である中間支持層12の構造が異なることが両者を組み合わせることの阻害要因になるとも認められない。 また、引用刊行物1記載の発明の基材11及び引用刊行物2記載の発明の裏面層13はともに同質の材料である不織布から形成されており(引用刊行物1の摘記事項(ケ)及び引用刊行物2の摘記事項(ウ)参照)、引用刊行物1記載の発明の基層である基材11に、引用刊行物2記載の発明の基層である裏面層13を適用することについても格別の困難性は見当たらない。 してみれば、引用刊行物1記載の発明の中間層である内層14及び基層である基材11に、引用刊行物2記載の発明の中間層である中間支持層12及び基層である裏面層13を適用して、相違点1に係るものとすることは当業者が容易になし得たことである。 イ <相違点2>について 研磨パッドを構成する層が発泡層である場合、発泡層に所望の孔数、孔径を備えた孔を確保できる程度の厚みは必要であるものの、研磨パッドとしての特性を維持できる範囲で各層の厚みを設定できるというのは明らかである。 そして、上記(2-2)イで指摘したように、引用刊行物2記載の発明の中間層である中間支持層の厚みは100?700μm、基層である裏面層の厚みは100?700μmを満たすものである。 また、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、表層の厚みを10?150μm、中間層の厚みを100?700μm、基層の厚みを100?700μmとすることに臨界的意義も認められない。 してみれば、上記(4)アで指摘したように、引用刊行物1記載の発明の中間層である内層14及び基層である基材11に、引用刊行物2記載の発明の中間層である中間支持層12及び基層である裏面層13を適用する際、表層、中間層及び基層の各厚みを適宜設定することで、表層、中間層及び基層の各厚みを相違点2に係るものとすることに格別の困難性は認められない。 ウ <作用ないし効果>について 作用ないし効果についても、上記引用刊行物1記載の発明及び引用刊行物2記載の発明から予測可能なものでしかない。 エ まとめ したがって、補正発明は、引用刊行物1記載の発明及び引用刊行物2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 (5)対比2(補正発明と引用刊行物2記載の発明との対比) 補正発明と引用刊行物2記載の発明とを対比すると以下のとおりである。 引用刊行物2記載の発明の「ガラスディスク基板」は補正発明の「ガラス基板」に相当し、引用刊行物2記載の発明の「表面層11」、「中間支持層12」及び「裏面層13」はそれぞれ補正発明の「表層」、「中間層」及び「基層」に相当する。 引用刊行物2記載の発明の「研磨クロス」は補正発明の「研磨パッド」に相当する。 したがって、補正発明と引用刊行物2記載の発明とは、以下の点で一致する。 [一致点] 「ガラス基板の研磨に用いられ、ガラス面と接触すべき表層、中間層および基層がこの順で積層された研磨パッドであって、基層の圧縮率が中間層の圧縮率よりも大きく、表層は孔を有し、中間層は孔を有しない研磨パッド。」 そして、補正発明と引用刊行物2記載の発明とは、以下の2点で相違している。 ア <相違点3> 表層の孔の径に関して、補正発明は、「50μm以下」と特定しているのに対して、引用刊行物2記載の発明では、表層に相当する表面層11の孔の径について不明な点。 イ <相違点4> 補正発明は、表層の厚みが10?150μm、中間層の厚みが100?700μm、基層の厚みが100?700μmであるのに対し、引用刊行物2記載の発明は、表層に相当する表面層11の厚みが500μm、中間層に相当する中間支持層12の厚みが200μm、基層に相当する裏面層13の厚みが800μmである点。 (6)相違点の検討2 ア <相違点3>について 研磨パッドにおいて、研磨面のうねりを低減するために表層の孔の径を50μm以下とすることは、引用刊行物1記載の発明(引用刊行物1記載の発明においては、研磨パッドの表層の孔の径を10?40μmとしたものである。)のほか、たとえば、特開2005-1018号公報(段落【0012】?【0013】参照。)、特開2005-141852号公報(段落【0014】参照。)に記載されているように従来周知の事項である。 してみると、引用刊行物2記載の発明においても、表層に相当する表面層11の孔の径を50μm以下とすることは、当業者にとって格別の困難性を有するものではない。 イ <相違点4>について 研磨パッドを構成する層が発泡層である場合、発泡層に所望の孔数、孔径を備えた孔を確保できる程度の厚みは必要であるものの、研磨パッドとしての特性を維持できる範囲で各層の厚みを設定できるというのは明らかである。 そして、上記(2-2)イで指摘したように、引用刊行物2記載の発明の中間層である中間支持層の厚みは100?700μm、基層である裏面層の厚みは100?700μmを満たすものである。 また、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、表層の厚みを10?150μm、中間層の厚みを100?700μm、基層の厚みを100?700μmとすることに臨界的意義も認められない。 してみれば、引用刊行物2記載の発明において、表層に相当する表面層11の厚みを10?150μm、中間層に相当する中間支持層12の厚みを100?700μm、基層に相当する裏面層13の厚みを100?700μmと特定することに格別の困難性は認められない。 ウ <作用ないし効果>について 作用ないし効果についても、上記引用刊行物2記載の発明及び引用刊行物1記載の発明から予測可能なものでしかない。 エ まとめ したがって、補正発明は、引用刊行物2記載の発明、引用刊行物1記載の発明及び従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本件出願の発明について 1 本件出願の発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項2に係る発明(以下「本件出願の発明」という。)は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、上記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定されるとおりの「研磨パッド」であると認める。 2 引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容は、上記第2の2(2)に示したとおりである。 3 対比・検討 本件出願の発明は、実質上、上記第2の2で検討した補正発明の表層の厚みについて、「10?150μm」を「10?300μm」としたものである。 そうすると、本件出願の発明を構成する事項の全てを含み、さらに他の限定を付加する補正発明が上記第2の2(4)エで示したとおり、引用刊行物1記載の発明及び引用刊行物2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、また、上記第2の2(6)エで示したとおり、引用刊行物2記載の発明、引用刊行物1記載の発明及び従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件出願の発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび したがって、本件出願の発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、請求項1、3ないし6に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-08-21 |
結審通知日 | 2012-08-28 |
審決日 | 2012-09-10 |
出願番号 | 特願2006-299071(P2006-299071) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B24B)
P 1 8・ 575- Z (B24B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 成彦、村上 哲 |
特許庁審判長 |
野村 亨 |
特許庁審判官 |
長屋 陽二郎 刈間 宏信 |
発明の名称 | 研磨パッドおよびガラス基板研磨方法 |