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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1265424
審判番号 不服2010-24735  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-04 
確定日 2012-11-01 
事件の表示 特願2007-273928「進捗管理装置、方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 5月14日出願公開、特開2009-104305〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成19年10月22日の出願であって,平成22年7月28日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年11月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされ,平成24年5月11日付けの当審の拒絶理由通知に対して同年7月9日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成24年7月9日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
作業項目と各作業項目の完了目標時期とを記録した作業計画データベースと,
完了済みの作業項目を作業者の端末から受信するように構成された受信部と,
前記作業計画データベースと前記受信部において受信された完了済み作業項目と現在時刻とを参照し,未完の作業項目であってその完了目標時期を経過した遅延項目を検出するように構成された遅延項目検出部と,
前記遅延項目検出部において遅延項目が検出された場合には,作業者の端末に向けて警告を送信するように構成された送信部と,を有する進捗管理装置と,
作業拠点に設けられ,前記進捗管理装置からの依頼に応じて前記作業計画データベースに含まれる作業項目に対する作業者を登録するとともに,前記遅延項目を参照できるように構成された作業拠点端末と,を備えていることを特徴とする進捗管理システム。」

3.当審における拒絶理由について
当審において平成24年5月11日付けで通知した拒絶理由の概要は,以下のとおりである。

『[理由1]
この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用例1:特開2001-43267号公報
引用例2:佐竹 孝 外4名,イントラネットを利用した保守作業管理システム,PFU・テクニカルレビュー,株式会社PFU,2000年11月01日,第11巻,第2号,p68?75
引用例3:特開2003-256624号公報
引用例4:特開2006-232421号公報

・請求項1
・引用例1?4
・備考
(以下略)』

4.引用例
(1)引用例1の記載事項及び引用例1発明
当審で通知した拒絶理由において引用した「特開2001-43267号公報」(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の(ア)?(カ)の事項が記載されている。(下線は関連する箇所を示すために当審において付加したものである。)

(ア)「【0013】同図において,保守管理システム1は,受付システム2と,スケジュールシステム15とをネットワークで連携して構成している。受付システム2は,受付手段3と,作業依頼手段4と,監視手段5と,アラーム手段6と,DBサーバ7とを構成している。」

(イ)「【0022】さらに,前記受付システム2は,作業状態の情報と作業予定日時とを参照して必要時にアラーム処理を実行するアラーム手段6を備えている。
【0023】上記の実施の形態をとることにより,スケジュールと作業状態(アポイント待ち,作業待ち,作業完了,報告完了)とから,遅延作業に対してアラームを発信することで,保守作業の遅延を防止する。」

(ウ)「【0047】スケジュールシステム41は,DBサーバ42と,アプリケーションサーバ43と,クライアント44と,各保守担当地区に備える複数のクライアント45とを連携して構成している。
【0048】DBサーバ42は,前記指示データと,後述するスケジュールデータと,作業結果データとからなるスケジュールデータを格納する。アプリケーションサーバ43は,当該保守管理システムのアプリケーションプログラムを格納する。
【0049】クライアント45は,受付システム31から入手する指示データに基づくスケジュール入力と,受付システム31から入手する指示データがない保守作業に関するスケジュール入力と,作業完了報告などを含む処理を実行する。」

(エ)「【0056】監視処理部54は,各地区からの作業状態を示す後述する進捗データまたは結果データ58を入手して,前記受付データ56と指示データ57とから進捗管理および運用管理を含むスケジュールシステム61との連携処理を実行する。結果データ58は,後述する作業結果データ72からの完了報告とスケジュールデータ71からの予定日時と担当者とを取り込む。なお,結果データ58の構成は,図6に示す。すなわち,結果データは,各作業に対してアポイント待ち・作業待ち・作業完了・報告完了を区別する作業状態と,予定日時とを含む。
【0057】アラーム処理部55は,図6に示した結果データから,作業状態の情報と作業予定日時とを参照して,例えば,作業完了あるいは報告完了を示す予定日時に対して,作業待ち状態にある場合などにおいて,保守担当地区に進捗に関する事情を問い合わせるなどのアラーム処理を実行する。」

(オ)「【0062】指示一覧処理部63は,受付システム51から入手する指示データ57に基づいて各地区毎に保守要求に関する情報を収集し指示データ57の一覧を表示する。なお,図9に作業一覧画面の一例を示す。なお,作業一覧で一覧中の作業を選択/担当者コード/日時を入力して登録すると,指示データの状態を作業待ちにしてスケジュールデータを作成する。
【0063】スケジュール登録部64は,保守作業に関するスケジュールデータ71の登録処理を行う。なお,スケジュールデータ71の構成は,図4(b)に示す。スケジュールデータは,受付番号に対して,所属地区コードと,作業内容コードと,受付システム51からの作業指示有無と,作業地区コードと,作業待ち・作業完了・報告完了を区別する作業状態とを含む。」

(カ)「【0066】作業詳細処理部66は,スケジュールデータ71と指示データ57とから作業詳細処理を実行する。なお,図10ないし図12に当該作業詳細処理部66が実行する各種の画面の一例を示す。例えば,標識「★」を表示していないスケジュール未着手に対して,作業指示を出す。また,作業完了または報告完了時は,図12に示す画面を表示する。
【0067】なお,図11に示すように,スケジュール一覧を表示する際に,作業日時スケールに応じた線表で表示するとともに,線表は作業内容に対応する色で表示する。例えば,初期値(要求・維持)は,赤色で表示し,その後,作業内容の変化によって色を変化させる。例えば,作業完了を灰色とし,報告完了を白抜きとする。すなわち,一日分が全て白抜きになると一日の作業が全て終了したことになる。
【0068】作業結果登録部67は,作業結果を登録して作業結果データ72を作成し,前記受付システム51に送信する。なお,作業結果データの構成は,図4(c)に示す。また,作業完了あるいは報告完了時は,図12に示す画面上に必要事項を入力する。」

上記摘記事項(ア)?(カ)の記載及び図面の記載を総合すると,引用例1には以下の発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「受付システム(2,31,51)とスケジュールシステム(15,41,61)とからなる保守管理システム(1)と,各保守担当地区に備えられたクライアント(45)とを備えたシステム(【図1】?【図3】,【0047】)であって,
スケジュールシステム(41)は,スケジュールデータを格納するDBサーバ(42)を備えており(【0047】?【0048】),
クライアント(45)は,受付システム(31)から入手する指示データに基づくスケジュール入力と,作業完了報告などを含む処理を実行するものであり(【0049】),
スケジュールシステム(61)の指示一覧処理部(63)は,受付システム(51)から入手する指示データ(57)に基づいて各地区毎に保守要求に関する情報を収集し指示データ(57)の一覧を表示し,作業一覧で一覧中の作業を選択/担当者コード/日時を入力して登録すると,指示データの状態を作業待ちにしてスケジュールデータを作成し(【図9】,【0062】),
ここで,スケジュールデータは,少なくとも,担当者コード,作業内容コード,予定終了日時の情報を含むものであり(【図4(b)】,【0063】),
スケジュールシステム(61)の作業詳細処理部(66)は,スケジュールデータ(71)と指示データ(57)とから作業詳細処理を実行するものであり,例えば,作業完了または報告完了時には,そのための画面を表示し(【図12】,【0066】),
スケジュール一覧を表示する際には,作業日時スケールに応じた線表で表示するとともに,線表は作業内容に対応する色で表示し,例えば,初期値(要求・維持)は,赤色で表示し,その後,作業内容の変化によって色を変化させ,例えば,作業完了を灰色とし,報告完了を白抜きとし(【図11】,【0067】),
スケジュールシステム(61)の作業結果登録部(67)は,作業結果を登録して作業結果データ(72)を作成し,受付システム(51)に送信し(【図4(c)】,【0068】),
受付システム(51)の監視処理部(54)は,各地区からの作業状態を示す結果データ(58)(【図6】)を入手し,ここで,結果データ(58)は,作業結果データ(72)からの完了報告とスケジュールデータ(71)からの予定日時と担当者とを取り込んだものであり,結果データは,各作業に対してアポイント待ち・作業待ち・作業完了・報告完了を区別する作業状態と,予定日時とを含み(【0056】),
受付システム(51)のアラーム処理部(55)は,結果データから,作業状態の情報と作業予定日時とを参照して,例えば,作業完了あるいは報告完了を示す予定日時に対して,作業待ち状態にある場合などにおいて,保守担当地区に進捗に関する事情を問い合わせるなどのアラーム処理,すなわち遅延作業に対してアラームを発信する処理を実行する(【0022】?【0023】,【0057】),
システム。」

(2)引用例2の記載事項
当審で通知した拒絶理由において引用した「佐竹 孝 外4名,イントラネットを利用した保守作業管理システム,PFU・テクニカルレビュー,株式会社PFU,2000年11月01日,第11巻,第2号,p68?75」(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに,次の(キ)の事項が記載されている。

(キ)「4.4.2 作業指示データの携帯電話での取扱い
インターネット側に転送した作業指示データは,携帯用Webサーバ内にレコードファイルとして格納し,携帯電話から作業指示データの参照要求があると,携帯電話用にデータを作成し表示する.この際,選択項目を中心とした画面を表示させて操作性を高めている.
CEは携帯電話に表示している作業スケジュールなどを確認しながら,事務所出発・顧客先到着・作業開始・作業終了・顧客先出発などの各イベントの時間や,作業結果の報告を携帯電話から行う.
携帯用Webサーバは,携帯電話から報告された内容を,結果報告データとして作成し,イントラネット側の携帯用連携サーバへHTTPS通信により転送する.
携帯用連携サーバに転送された結果報告データは,スケジュール管理システムに反映される.」(第74頁左欄第12行?同頁右欄第3行)

(3)引用例3の記載事項
当審で通知した拒絶理由において引用した「特開2003-256624号公報」(以下,「引用例3」という。)には,図面とともに,次の(ク)の事項が記載されている。

(ク)「【0019】次に動作について説明する。図2は作業支援装置の処理の流れを示すフローチャートである。ステップST11において,作業計画管理部11は,作業計画データベース12に記録されている作業計画の作業開始予定時期を確認し,作業開始予定時期になっていれば,ステップST12において作業通知部14は作業計画管理部11の指示に基づき作業開始指示と作業計画データベース12に記録されている作業計画を,ネットワーク3を介して作業者が保有する携帯端末2に送信する。
【0020】作業開始指示と作業計画を受信した作業者が,作業計画に基づいて実際に作業を開始し,携帯端末2からネットワーク3を介して,作業開始報告を作業支援装置1に送信すると,ステップST13において作業報告受取部15は携帯端末2からの作業開始報告を受信し作業進捗データベース13に記録する。
【0021】作業者が受信した作業計画に基づいて作業工程ごとに作業を実施し,作業工程ごとの作業を完了させるたびに,携帯端末2からネットワーク3を介して作業工程ごとの完了報告による作業進捗を作業支援装置1に送信すると,ステップST14において作業報告受取部15は携帯端末2からの作業工程ごとの完了報告による作業進捗を受け取り作業進捗データベース13に記録する。」

(4)引用例4の記載事項
当審で通知した拒絶理由において引用した「特開2006-232421号公報」(以下,「引用例4」という。)には,図面とともに,次の(ケ)の事項が記載されている。

(ケ)「【要約】
(途中省略)
【解決手段】本発明は,配送業者の携帯電話機の位置情報を受信して実際の所在情報に変換し,当該所在情報から携帯電話機の現在位置を把握し,少なくとも機械設置作業に係る予定時間を管理すると共に,上記携帯電話機より送信された機械設置作業に係る実績時間を管理し,この実績時間と予定時間とを比較し,その差が所定量以上である場合に遅延が生じたものと検出し,この遅延が検出された場合に,配送業者の携帯電話機,営業者の携帯電話機,統括センタ端末の少なくともいずれかに,その旨を通知する配送状況管理サーバ1を具備することを特徴とする機械設置作業管理運営システムである。」

5.対比
本願発明と引用例1発明とを対比する。

(a)引用例1発明のスケジュールデータに含まれる「作業内容コード」,「予定終了日時」が本願発明の「作業項目」「完了目標時期」に相当するから,引用例1発明の「スケジュールデータを格納するDBサーバ(42)」が本願発明の「作業項目と各作業項目の完了目標時期とを記録した作業計画データベース」に相当する。

(b)引用例1発明の「作業結果登録部(67)」は,「作業結果を登録して作業結果データ(72)を作成」するものであり,当該作業結果が,「クライアント(45)」から受信されることは明らかであるから,引用例1発明の「作業結果登録部(67)」と本願発明の「受信部」とは,「完了済みの作業項目を受信するように構成された受信部」の点で共通する。

(c)引用例1発明の「監視処理部(54)」及び「アラーム処理部(55)」は,結果データから,作業状態の情報と作業予定日時とを参照して,保守担当地区に進捗に関する事情を問い合わせるなどのアラーム処理,すなわち遅延作業に対してアラームを発信する処理を実行する」ものであり,引用例1発明の「遅延作業」が,本願発明の「未完の作業項目であってその完了目標時期を経過した遅延項目」に相当するから,引用例1発明の「監視処理部(54)」及び「アラーム処理部(55)」と本願発明の「遅延項目検出部」とは,「未完の作業項目であってその完了目標時期を経過した遅延項目を検出するように構成された遅延項目検出部」の点で共通する。

(d)また,引用例1発明の「アラームを発信する」ことが本願発明の「警告を送信する」ことに相当するから,引用例1発明の「アラーム処理部(55)」と本願発明の「送信部」とは,「遅延項目検出部において遅延項目が検出された場合には,警告を送信するように構成された送信部」の点で共通する。

(e)引用例1発明の「保守管理システム(1)」は,上記(a)?(d)に記載したように,本願発明の「作業計画データベース」「受信部」「遅延項目検出部」「送信部」にそれぞれ対応する構成を有するものである点で,本願発明の「進捗管理装置」に相当する。

(f)引用例1発明の「各保守担当地区に備えられたクライアント(45)」が本願発明の「作業拠点に設けられた作業拠点端末」に相当し,「スケジュールシステム(61)の指示一覧処理部(63)」は,「各地区毎に保守要求に関する情報を収集し指示データ(57)の一覧を」クライアント(45)に表示し,当該クライアント(45)によって,「作業一覧で一覧中の作業を選択/担当者コード/日時を入力して登録」しているものと認められる。そして,「各地区毎に保守要求に関する情報を収集し指示データ(57)の一覧を表示」することが,本願発明における「進捗管理装置からの依頼」に相当するから,引用例1発明の「クライアント(45)」と本願発明の「作業拠点端末」とは,「作業拠点に設けられ,進捗管理装置からの依頼に応じて作業計画データベースに含まれる作業項目に対する作業者を登録するように構成された作業拠点端末」の点で共通する。

(g)引用例1発明の「システム」は,作業の進捗を管理するものであるから,本願発明の「進捗管理システム」に相当する。

そうすると,本願発明と引用例1発明とは次の[一致点]で一致し,[相違点1]?[相違点4]の点で相違する。

[一致点]
「作業項目と各作業項目の完了目標時期とを記録した作業計画データベースと,
完了済みの作業項目を受信するように構成された受信部と,
未完の作業項目であってその完了目標時期を経過した遅延項目を検出するように構成された遅延項目検出部と,
前記遅延項目検出部において遅延項目が検出された場合には,警告を送信するように構成された送信部と,を有する進捗管理装置と,
作業拠点に設けられ,前記進捗管理装置からの依頼に応じて前記作業計画データベースに含まれる作業項目に対する作業者を登録するように構成された作業拠点端末と,を備えていることを特徴とする進捗管理システム。」

[相違点1]
完了済みの作業項目を受信するのが,本願発明では,「作業者の端末から」であるのに対して,引用例1発明では,「各保守担当地区に備えられたクライアント(45)」からである点。

[相違点2]
未完の作業項目であってその完了目標時期を経過した遅延項目を検出する際に,本願発明では,「作業計画データベースと受信部において受信された完了済み作業項目と現在時刻とを参照し」ているのに対して,引用例1発明では,そのようになっていない点。

[相違点3]
警告を送信する際,本願発明では,「作業者の端末に向けて」送信しているのに対して,引用例1発明では,どこへ向けて送信しているのかが明らかでない点。

[相違点4]
作業拠点端末が,本願発明では,「遅延項目を参照できるように構成され」ているのに対して,引用例1発明では,「スケジュール一覧」を表示することはできるものの,「遅延項目」を表示することまでは記載されていない点。

6.当審の判断
上記相違点について検討する。

[相違点1]について
上記摘記事項(キ)によれば,引用例2には,「CE(カスタマエンジニア)は携帯電話に表示している作業スケジュールなどを確認しながら,事務所出発・顧客先到着・作業開始・作業終了・顧客先出発などの各イベントの時間や,作業結果の報告を携帯電話から行う」との事項(以下,「引用例2記載事項」という。)が記載されている。
また,上記摘記事項(ク)によれば,引用例3には,「作業者が受信した作業計画に基づいて作業工程ごとに作業を実施し,作業工程ごとの作業を完了させるたびに,携帯端末2からネットワーク3を介して作業工程ごとの完了報告による作業進捗を作業支援装置1に送信する」との事項(以下,「引用例3記載事項」という。)が記載されている。
上記引用例2記載事項や引用例3記載事項にみられるように,作業者に端末を携帯させ,当該端末を通じて作業指示を行ったり,作業の完了報告を行わせたりすることは,周知技術(以下,「周知技術1」という。)であると認められることから,引用例1発明に当該周知技術1を適用して,「作業者の端末から」完了済みの作業項目を受信するように構成することには何ら困難性がなく,当業者が適宜なし得たことである。

[相違点2]について
遅延項目を検出する際に,当初の作業計画データと完了済み作業項目とから,未完了の作業項目を求め,当該未完了の作業項目の完了目標時期と現在時刻とを対比して,当該未完了の作業項目が「遅延」しているか否かを判断することは,ごく当たり前の処理であると認められるから,引用例1発明においても,そのような処理を行って「遅延」を検出するために,「作業計画データベースと受信部において受信された完了済み作業項目と現在時刻とを参照」して,遅延項目を検出するように構成することには,何ら困難性がなく,当業者が適宜なし得たことである。

[相違点3]について
上記摘記事項(ケ)によれば,引用例4には,「実績時間と予定時間とを比較し,その差が所定量以上である場合に遅延が生じたものと検出し,この遅延が検出された場合に,配送業者の携帯電話機,営業者の携帯電話機に,その旨を通知する」との事項(以下,「引用例4記載事項」という。)が記載されており,作業者の携帯する端末に作業の遅延の発生を通知することは,ごく普通に行われていることと認められるから,引用例1発明において,作業者に端末を携帯させ,当該「作業者の端末に向けて」警告を送信するように構成することには何ら困難性がなく,当業者が適宜なし得たことである。

[相違点4]について
引用例1発明には,スケジュール一覧を表示する際,作業内容の変化によって色を変化させること(例えば,作業完了を灰色とし,報告完了を白抜きとすること)が記載されており,作業の進捗状況を表示しているものである。
そして,一般に作業等の進捗状況を表示する際に,その遅延状況もあわせて表示することは,例えば特開2004-70482号公報(特に【0013】,【0015】段落の記載参照),特開2002-215864号公報(特に【請求項1】の記載参照)等に記載されているように周知技術(以下,「周知技術2」という。)である。
してみれば,引用例1発明において作業の進捗状況を表示する際に,上記周知技術2を適用して,その遅延状況もあわせて表示するようにし,「遅延項目を参照できるように構成」することには何ら困難性がなく,当業者が適宜なし得たことである。

そして,本願発明の作用効果も,引用例1発明,引用例4記載事項及び周知技術1,2から当業者が予測できる範囲のものである。

よって,本願発明は,引用例1発明,引用例4記載事項及び周知技術1,2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.審判請求人の主張について
審判請求人は平成24年7月9日付けの意見書において,次のとおり主張している。
「[4-1-1]本願発明と引用例1発明との対比について
理由1において,本願の請求項1に係る発明(「本願発明」)と,引用例1発明とが対比され,引用例1発明の「保守管理システム(1)」が本願発明の「進捗管理装置」に相当すると指摘されています。
本願発明において,「進捗管理装置」は単一の装置として構成されています。
一方,引用例1において,「保守管理システム」は,別個に設けられた受付システムとスケジュールシステムによって構成されます。具体的には,「受付システム」は各拠点に設けられ,「スケジュールシステム」は,本部あるいは本社に設けられます(引用例1の段落[0042],図2参照)。
ここで,引用例1における「受付システム」と「スケジュールシステム」とを,単一の装置として構成し,本願発明における「進捗管理装置」を導くことに阻害要因がないかどうかが問題となります。
引用例1発明においては,「進捗を管理する受付システムと,(中略)保守作業に関する情報を集中して管理するスケジュールシステムとをネットワークで連携した」(段落0009)構成を採用することにより,「受付システムは進捗管理を集中化することにより,均一レベルのサービスを提供でき,また,各地の保守担当者は保守作業のみに専念することができ,保守作業負荷を低減する」(段落0010)という効果をもたらすものです。
すなわち,引用例1発明においては,保守管理システムにおいて,「受付システム」と「スケジュールシステム」とを別個のシステムとして実現することが上記の効果をもたらす上で必須の要素となっており,引用例1発明において「受付システム」と「スケジュールシステム」とを単一の装置とした場合には,上記のように,「受付システムは進捗情報を集中して管理し,スケジュールシステムは保守作業に関する情報を集中して管理する」ことができず,上述の効果を奏することができなくなります。
したがって,引用例1発明に記載された「保守管理システム」に含まれる,別個の装置である「受付システム」と「スケジュールシステム」とを単一の装置とし,本願発明の「進捗管理装置」の構成を導くには,明らかに阻害要因があります。
よって,引用例1発明に記載された「保守管理システム(1)」が本願発明の「進捗管理装置」に相当するとの対比は妥当性を欠くと言わざるを得ません。」

しかしながら,本願発明は,「作業項目と各作業項目の完了目標時期とを記録した作業計画データベースと,完了済みの作業項目を作業者の端末から受信するように構成された受信部と,前記作業計画データベースと前記受信部において受信された完了済み作業項目と現在時刻とを参照し,未完の作業項目であってその完了目標時期を経過した遅延項目を検出するように構成された遅延項目検出部と,前記遅延項目検出部において遅延項目が検出された場合には,作業者の端末に向けて警告を送信するように構成された送信部と,を有する進捗管理装置」との事項で特定されるものであり,これによれば,本願発明では,「進捗管理装置」が,「作業計画データベース」と,「受信部」と,「遅延項目検出部」と,「送信部」とを有することが特定されるに留まるものであり,「進捗管理装置」が「単一の装置として構成されている」との事項まで特定されるものではない。
また,引用例1の発明の課題は,「障害受付,保守要求に関する問診/要求内容による障害レベルの切り分け,部品手配などを集中化して,各地の保守担当者が保守作業のみに専念することができるように,保守作業受付,保守作業依頼,保守作業のスケジューリング,保守作業完了報告,および保守作業進捗管理の各工程をオンラインによってシステム化することにより,均一レベルのサービスを提供するとともに,保守の効率化を図ること」(【0007】段落)であり,この課題を解決するために,「保守要求に関する情報を集中して収集し保守担当地区に作業指示を発信するとともに保守作業受付から保守作業完了までの進捗を管理する受付システムと,受付システムと連携するとともに各保守担当地区に備える端末装置と連携し保守作業に関する情報を集中して管理するスケジュールシステムとをネットワークで連携した保守管理システムを構築する」(【0009】段落)ように構成したものであり,「受付システム」と「スケジュールシステム」とを単一の装置として構成しても上記課題を解決できることは明らかであるから,引用例1における「受付システム」と「スケジュールシステム」とを,単一の装置として構成し,本願発明における「進捗管理装置」を導くことに阻害要因があるとは認められない。
以上のとおり,審判請求人の主張は,請求項の記載に基づくものではなく,また,引用例1における「受付システム」と「スケジュールシステム」とを,単一の装置として構成し,本願発明における「進捗管理装置」を導くことに阻害要因があるとも認められないことから,審判請求人の上記主張は採用することができない。

また,審判請求人は同意見書において,次のとおり主張している。

「[4-1-2][相違点4]について
本願発明によると,「作業拠点端末は遅延項目を参照することができる」(構成E)ため,「作業項目のうち完了目標時期を経過した遅延項目を発生後直ちに検出することができる」(段落[0015])という顕著な効果がもたらされます。
一方,引用例1発明では,作業進捗が表示されているに過ぎず,作業進捗の表示から作業が遅延している項目(遅延項目)を直ちに把握することは不可能です。したがって,引用例1に記載された技術によると,本願発明によってもたらされる上述の顕著な効果を奏することは不可能です。
また,拒絶理由通知において,「引用例1発明には,スケジュール一覧を表示する際,作業内容の変化によって色を変化させること(例えば,作業完了を灰色とし,報告完了を白抜きとすること)が記載されており,作業の進捗状況を表示しているものであるから,作業が遅延している場合に,その状況もあわせて表示し,「遅延項目を参照できるように構成」することには何ら困難性がなく,当業者が適宜なし得たことである」(p.5)と指摘されています。
しかし,「進捗状況」を表示しているから「遅延状況」をあわせて表示することに想到し得るとの指摘は不合理と言わざるをえません。進捗状況は,作業が完了したか未了であるかを表示するものであり,一方,遅延状況は,作業の進捗状況と完了目標時期と現在時刻を参照することで抽出される情報であるとともに,目標に対する作業の進み具合を示す情報です。すなわち,遅延状況は,進捗状況とは異なる工程に基づいて生成される情報であるとともに,異なる目的で表示される情報です。したがって,上記の指摘は,本願発明に接した上での後知恵に過ぎません。」

しかしながら,この主張の点については,上記「[相違点4]について」で判断したとおりであるから,審判請求人の主張は採用することができない。

8.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1発明,引用例4記載事項及び周知技術1,2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は当審で通知した上記拒絶理由によって拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-30 
結審通知日 2012-09-04 
審決日 2012-09-18 
出願番号 特願2007-273928(P2007-273928)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 裕子  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 松尾 俊介
須田 勝巳
発明の名称 進捗管理装置、方法及びプログラム  
代理人 加藤 朝道  

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