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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1265443
審判番号 不服2011-18649  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-29 
確定日 2012-11-01 
事件の表示 特願2004-111258「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月20日出願公開、特開2005-288018〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年4月5日の出願であって、原審において、平成22日6月18日付けで通知した拒絶の理由に対して、同年8月9日付けで手続補正書が提出され、次いで、平成23年1月17日付けでされた最後の拒絶理由の通知に対して同年3月24日付けで手続補正書が提出されたが、同年6月29日付けで同年3月24日付けの手続補正を却下する決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされたものであって、これに対して、同年8月29日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、当審における審尋に対して平成24年1月27日付けで回答書が提出されたものである。


第2 平成23年8月29日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成23年8月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正には、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正しようとする事項が含まれている。

(補正前)
「【請求項1】
遊技球が入賞または通過可能な始動遊技装置と、
少なくとも所定の図柄を変動表示して確定表示するスロットゲームを実行する画像表示装置と、
遊技者にとって有利となる状態と不利となる状態とに変換可能な可変入賞装置と、
上記始動遊技装置に入賞または通過した遊技球を検出する始動遊技球検出手段と、
該始動遊技球検出手段が遊技球を検出したことに基づいて、上記画像表示装置が実行する上記スロットゲームの表示制御を行う制御手段と、
上記スロットゲームの結果、上記画像表示装置に確定表示された図柄が所定の図柄である場合には、上記可変入賞装置を所定の態様に変換制御して遊技者にとって有利な特別遊技を発生させる特別遊技発生手段と、
を備えた遊技機であって、
上記可変入賞装置は、少なくとも遊技者にとって利益度が異なる第1可変入賞装置と第2可変入賞装置とが設けられ、上記第1可変入賞装置及び上記第2可変入賞装置は、遊技領域の上下に配置され、
上記特別遊技発生手段は、上記特別遊技の発生に係わる所定の遊技条件の成立に基づいて、該第1可変入賞装置または/及び該第2可変入賞装置を、上記所定の態様と異なるように変換制御する特別変換制御手段を備え、
上記特別遊技の発生に係わる所定の遊技条件の成立は、上記特別遊技を発生させることとなる所定の図柄が上記画像表示装置に確定表示されたこととし、
上記特別変換制御手段は、該所定の図柄の種別に基づいて、該第1可変入賞装置または/及び該第2可変入賞装置を、上記所定の態様と異なるように変換制御する図柄種別変換制御手段を備えたことを特徴とする遊技機。」
(これは、平成22年8月9日付けの手続補正書により補正されたものである。)

(補正後)
「【請求項1】
遊技球が入賞または通過可能な始動遊技装置と、
少なくとも所定の図柄を変動表示して確定表示するスロットゲームを実行する画像表示装置と、
遊技者にとって有利となる状態と不利となる状態とに変換可能な可変入賞装置と、
上記始動遊技装置に入賞または通過した遊技球を検出する始動遊技球検出手段と、
該始動遊技球検出手段が遊技球を検出したことに基づいて、上記画像表示装置が実行する上記スロットゲームの表示制御を行う制御手段と、
上記スロットゲームの結果、上記画像表示装置に確定表示された図柄が所定の図柄である場合には、上記可変入賞装置を所定の態様に変換制御して遊技者にとって有利な複数のラウンドから成る特別遊技を発生させる特別遊技発生手段と、
を備えた遊技機であって、
上記可変入賞装置は、少なくとも遊技者にとって利益度が異なる第1可変入賞装置と第2可変入賞装置とが設けられ、上記第1可変入賞装置及び上記第2可変入賞装置は、遊技領域の上下に配置され、
上記特別遊技発生手段は、上記特別遊技の発生に係わる所定の遊技条件の成立に基づいて、該第1可変入賞装置または/及び該第2可変入賞装置を、上記所定の態様と異なるように変換制御する特別変換制御手段を備え、
上記特別遊技の発生に係わる所定の遊技条件の成立は、上記特別遊技を発生させることとなる所定の図柄が上記画像表示装置に確定表示されたこととし、
上記特別変換制御手段は、該所定の図柄の種別に基づいて、該第1可変入賞装置または/及び該第2可変入賞装置を、上記第1可変入賞装置が上記遊技者にとって有利となる状態となるラウンドと、上記第2可変入賞装置が上記遊技者にとって有利となる状態となるラウンドとの設定が上記所定の態様と異なるように変換制御する図柄種別変換制御手段を備えたことを特徴とする遊技機。」

この補正事項は、補正前における、特別遊技発生手段が発生させる「遊技者にとって有利な特別遊技」について、「複数のラウンドから成る」ものであることを限定し、また、補正前における、図柄種別変換制御手段が該第1可変入賞装置または/及び該第2可変入賞装置を所定の態様と異なるように変換制御する内容について、「第1可変入賞装置が上記遊技者にとって有利となる状態となるラウンドと、上記第2可変入賞装置が上記遊技者にとって有利となる状態となるラウンドとの設定」が所定の態様と異なる旨を限定するものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2003-245420号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】 遊技者に有利な開状態と不利な閉状態とに変換可能な可変入賞手段(25L)(25R)と、始動手段(24)が遊技球を検出することを条件に遊技図柄を変動表示する図柄表示手段(30)と、該図柄表示手段(30)の変動後の停止図柄が予め定められた大当たり態様となることに基づいて、前記可変入賞手段(25L)(25R)を閉状態から開状態に変化させる利益状態を1又は複数回発生させる利益状態発生手段(59)とを備えた弾球遊技機において、複数の前記可変入賞手段(25L)(25R)を備え、前記1又は複数回の利益状態における前記複数の可変入賞手段(25L)(25R)の開放パターンを決定する開放パターン決定手段(58)を備えたことを特徴とする弾球遊技機。
【請求項2】 前記利益状態中は前記複数の可変入賞手段(25L)(25R)のうちのいずれか1つを開状態とするように構成したことを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。
【請求項3】 前記開放パターン決定手段58で決定された開放パターンを前記可変入賞手段(25L)(25R)の開放前に報知する報知手段(35L)(35R)を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の弾球遊技機。
【請求項4】(略)
【請求項5】(略)
【請求項6】 前記開放パターン決定手段(58)は、前記図柄表示手段(30)の変動後の停止図柄態様に基づいて前記開放パターンを決定するように構成されていることを特徴とする請求項1?5の何れかに記載の弾球遊技機。」

「【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の弾球遊技機では、例えば最大16ラウンドの利益状態発生中は、1つの可変入賞手段が一定の開閉動作を繰り返すのみであるため、利益状態が開始すれば遊技者は必然的にその1つの可変入賞手段を狙って略一定の発射操作を継続することとなる。このように、従来の弾球遊技機では、一旦利益状態が発生すれば、その遊技内容は変化に乏しく、面白みに欠ける欠点があった。
【0005】本発明は、このような従来の問題点に鑑み、利益状態発生時の可変入賞手段の開閉動作に変化を持たせることで遊技に対する興趣をより一層増大できる弾球遊技機を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、遊技者に有利な開状態と不利な閉状態とに変換可能な可変入賞手段25L,25Rと、始動手段24が遊技球を検出することを条件に遊技図柄を変動表示する図柄表示手段30と、該図柄表示手段30の変動後の停止図柄が予め定められた大当たり態様となることに基づいて、前記可変入賞手段25L,25Rを閉状態から開状態に変化させる利益状態を1又は複数回発生させる利益状態発生手段59とを備えた弾球遊技機において、複数の前記可変入賞手段25L,25Rを備え、前記1又は複数回の利益状態における前記複数の可変入賞手段25L,25Rの開放パターンを決定する開放パターン決定手段58を備えたものである。」

「【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳述する。図1?図7は本発明をパチンコ機として具現化した第1の実施形態を例示している。」

「【0010】遊技盤12の前面側には、図2に示すように、発射手段13により発射された遊技球を案内するガイドレール21が略環状に装着されると共に、そのガイドレール21の内側の遊技領域22内には、センター手段23、第2図柄始動手段24、複数(ここでは2つ)の可変入賞手段25L,25R、第1図柄始動手段26、普通入賞手段27等の各種遊技部品が配置されている。」

「【0015】第2図柄始動手段24は、開閉自在な左右一対の開閉爪32を備えた電動チューリップ等の開閉入賞手段により構成され、例えばセンター手段23の下側に配置されており、第1図柄表示手段29の変動後の停止図柄が予め定められた当たり態様を表示することを条件に発生する第1利益状態のときに開閉爪32が所定時間開放するようになっている。
【0016】第2図柄表示手段30は、1個又は複数個、例えば左右方向に3個の第2図柄(遊技図柄)を可変表示手段28の例えば上下方向略中央部分に変動表示可能となっている。各第2図柄は、第2図柄始動手段24が遊技球を検出することを条件に上下方向又は左右方向にスクロールする等、所定の変動パターンで変動して、所定の大当たり態様又は外れ態様となるように左、右、中等の所定の順序で停止する。
【0017】第2図柄には、数字図柄、アルファベット図柄、キャラクター図柄、その他の図柄を使用可能であり、本実施形態では「0」?「9」までの10種類の数字図柄が使用されている。本実施形態では、3つの第2図柄が同一となる図柄態様、即ち「0・0・0」「1・1・1」…「9・9・9」の10種類を大当たり態様とする。
【0018】更に、大当たり態様には特別大当たり態様とそれ以外の通常大当たり態様とがあり、本実施形態では、10種類の大当たり態様のうち、「1・1・1」「7・7・7」等、奇数図柄よりなる5種類の大当たり態様を特別大当たり態様、「2・2・2」「8・8・8」等、偶数図柄よりなる5種類の大当たり態様を通常大当たり態様とする。」

「【0021】可変入賞手段25L,25Rは、いわゆるアタッカーを構成するもので、夫々例えば下部側の横軸廻りに開閉自在な開閉板33を備え、遊技者に有利な開状態と不利な閉状態とに変換可能に構成されている。
【0022】これら2つの可変入賞手段25L,25Rは、例えば遊技領域22の下部側に左右に配置されており、図示しない遊技釘の配置等により、遊技領域22の左側に打ち込まれた遊技球は左側の可変入賞手段25Lに、遊技領域22の右側に打ち込まれた遊技球は右側の可変入賞手段25Rに、夫々高い確率で誘導されるようになっている。」

「【0024】可変入賞手段25L,25Rは、第2図柄表示手段30の変動後の停止図柄が予め定められた所定の大当たり態様を表示することを条件に、その何れか一方の開閉板33が、所定の上限開放時間が経過するか又はその上限開放時間内に所定の上限入賞個数の遊技球が入賞するまで開放され(第2利益状態)、その開放中に入賞した遊技球1個につき所定の払い出し個数分の賞球が払い出されるようになっている。
【0025】またその第2利益状態中に、その開放中の可変入賞手段25L又は25Rに入賞した遊技球が内部の特定領域34を通過すれば、第2利益状態が所定の上限ラウンド数(例えば16ラウンド)を限度として繰り返されるようになっている。
【0026】なお、可変入賞手段25L,25Rは、上述した上限開放時間、上限入賞個数、払い出し個数が夫々個別に設定されている。本実施形態では、可変入賞手段25L側の上限開放時間が30秒、上限入賞個数が10個、払い出し個数が15個に設定され、可変入賞手段25R側の上限開放時間が15秒、上限入賞個数が5個、払い出し個数が10個に設定されている。
【0027】また、特定領域34は、1ラウンド中に複数個の遊技球が通過可能となるように構成してもよいし、遊技球が1個通過した時点で閉鎖する等、1ラウンドにつき最大1個の遊技球が通過可能となるように構成してもよい。
【0028】第2利益状態の各ラウンドにおいて夫々可変入賞手段25L,25Rのどちらを開放するかを規定する開放パターンは、例えば図3に示すように予め複数種類用意されており、可変入賞手段25L,25Rは、それら複数種類の開放パターンA?H等のうちの何れかに従って開閉制御されるようになっている。」

ここで、図3は次のとおり。


「【0039】第2判定手段55は、第2抽選手段54での抽選乱数値に基づいて変動後の第2図柄を大当たり態様とするか否か、即ち可変入賞手段25L,25Rを開状態にする第2利益状態を発生させるか否かを判定するためのもので、第2抽選手段54で抽選された乱数値が所定の大当たり態様判定値と一致するか否かを判定し、一致する場合には大当たり態様の判定結果を出力するようになっている。」

「【0042】開放パターン決定手段58は、第2利益状態中における可変入賞手段25L,25Rの開放パターンを決定するためのもので、開放パターン記憶手段62、開放パターン選択手段63等を備えている。
【0043】開放パターン記憶手段62には、複数種類の開放パターンA?H等に対応する開放パターンデータが予め記憶されている。
【0044】開放パターン選択手段63は、第2判定手段55の判定結果が大当たり態様判定のときに開放パターン記憶手段62に記憶された開放パターンA?H等の中から1つを選択するためのもので、例えば停止図柄態様選択手段56で選択された停止図柄態様に基づいて開放パターンA?H等の中から1つを乱数抽選により選択するようになっている。
【0045】本実施形態では、図5に示すように、停止図柄態様が通常大当たり態様の場合と特別大当たり態様の場合とで各開放パターンA?Hの選択率が異なる値に設定されており、通常大当たり態様の場合には可変入賞手段25L,25Rの開放切り換えの頻度が高い開放パターン(例えば開放パターンA,B)ほど選択率が高く、特別大当たり態様の場合には逆に可変入賞手段25L,25Rの開放切り換えの頻度が低い開放パターン(例えば開放パターンG,H)ほど選択率が高くなっている。もちろん、選択率の設定はこれに限られるものではない。
【0046】第2利益状態発生手段59は、第2判定手段55の判定結果が大当たり態様判定となり、第2図柄表示手段30の変動後の停止図柄が大当たり態様となったとき、開放パターン決定手段58で決定された開放パターンA?Hの何れかに基づいて可変入賞手段25L,25Rを開放して、遊技者に有利な第2利益状態を発生させるようになっている。
【0047】可変入賞手段25L,25Rは、第2利益状態中に開放パターンA?Hに従ってその何れか一方のみが開放され、所定の上限開放時間が経過するか又はその上限開放時間内に所定の上限入賞個数の遊技球が入賞したときに閉鎖されて、入賞した遊技球1個につき所定の払い出し個数分の賞球が払い出される。」

「【0066】また、第2判定手段55の判定結果が大当たり態様判定となった場合には、開放パターン決定手段58の開放パターン選択手段63が、停止図柄態様選択手段56で選択された停止図柄態様に基づいて開放パターンA?H等の中から1つを乱数抽選により選択する。
【0067】例えば、図5に示すように、停止図柄態様選択手段56で選択された停止図柄態様が「6・6・6」等の通常大当たり態様の場合には、可変入賞手段25L,25Rの切り換え頻度が高い開放パターン(例えば開放パターンA,B)ほど高い確率で選択され、停止図柄態様選択手段56で選択された停止図柄態様が「7・7・7」等の特別大当たり態様の場合には、可変入賞手段25L,25Rの切り換え頻度が低い開放パターン(例えば開放パターンG,H)ほど高い確率で選択される。」

ここで、図5は次のとおり。


「【0092】以上説明したように、本実施形態では、複数の可変入賞手段25L,25Rを備え、開放パターン決定手段58により、1又は複数回の第2利益状態におけるそれら複数の可変入賞手段25L,25Rの開放パターンを決定するようにしているため、第2利益状態発生時の可変入賞手段25L,25Rの開放パターンが変化に富んだものとなり、また遊技者はその開放パターンに応じて発射操作を調節する必要があるため、より一層興趣に富んだ遊技が可能となる。」

「【0117】以上、本発明の各実施形態について詳述したが、各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、可変入賞手段は3個以上設けてもよい。また、可変入賞手段は必ずしも左右方向に配置する必要はなく、例えば遊技領域22の上部側と下部側に配置するなど、任意の配置が可能である。
・・・(中略)・・・
【0123】複数の可変入賞手段25L,25Rは、上限開放時間、上限入賞個数、払い出し個数等を全て同じ値に設定してもよいし、それらのうちの幾つかのみを異なる値に設定してもよい。また、それら上限開放時間、上限入賞個数、払い出し個数等の設定内容を可変とし、乱数抽選、時間経過、第1図柄や第2図柄の停止図柄態様、変動パターン、その他遊技状態に応じて変更するようにしてもよい。
【0124】開放パターンは、図3に示したものに限られるものではなく、任意に設定可能である。また、各開放パターンの選択率の設定も任意であり、例えば全ての開放パターンの選択率を同じにしてもよい。各開放パターンの選択率の設定内容を、停止図柄態様以外の例えば変動パターン、乱数抽選等に応じて変更するようにしてもよい。また、特定の条件が成立したとき(例えば特別大当たり態様となったときなど)にのみ選択される開放パターンを設けてもよい。」

「【0130】
【発明の効果】本発明によれば、遊技者に有利な開状態と不利な閉状態とに変換可能な可変入賞手段25L,25Rと、始動手段24が遊技球を検出することを条件に遊技図柄を変動表示する図柄表示手段30と、図柄表示手段30の変動後の停止図柄が予め定められた大当たり態様となることに基づいて、可変入賞手段25L,25Rを閉状態から開状態に変化させる利益状態を1又は複数回発生させる利益状態発生手段59とを備えた弾球遊技機において、複数の可変入賞手段25L,25Rを備え、1又は複数回の利益状態における複数の可変入賞手段25L,25Rの開放パターンを決定する開放パターン決定手段58を備えているため、利益状態発生時の可変入賞手段25L,25Rの開放パターンが変化に富んだものとなり、また遊技者はその開放パターンに応じて発射操作を調節する必要があるため、より一層興趣に富んだ遊技が可能となる。」

これら記載事項を含め、刊行物1の全記載を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、発明の認定は、請求項1の表現形式を用いつつも、【発明の実施形態】の第1の実施形態を中心に行った。

「開閉自在な開閉板33を備え、遊技者に有利な開状態と不利な閉状態とに変換可能な、複数の可変入賞手段25L,25Rと、
始動手段(第2図柄始動手段)24が遊技球を検出することを条件に遊技図柄(第2図柄)を変動表示する図柄表示手段(第2図柄表示手段)30と、
該図柄表示手段30の変動後の停止図柄が予め定められた大当たり態様となることに基づいて、前記可変入賞手段25L,25Rを閉状態から開状態に変化させる利益状態(第2利益状態)を1又は複数回発生させる利益状態発生手段59と、
前記1又は複数回の利益状態における前記複数の可変入賞手段25L,25Rの開放パターンを決定する開放パターン決定手段58と、
を備えた弾球遊技機において、
前記図柄表示手段(第2図柄表示手段)30は、1個又は複数個、例えば左右方向に3個の遊技図柄(第2図柄)を可変表示手段28の例えば上下方向略中央部分に変動表示可能となっており、各第2図柄は、始動手段(第2図柄始動手段)24が遊技球を検出することを条件に上下方向又は左右方向にスクロールする等、所定の変動パターンで変動して、所定の大当たり態様又は外れ態様となるように左、右、中等の所定の順序で停止するものであり、
前記複数の前記可変入賞手段25L,25Rは、遊技領域22の下部側に左右に配置され、
可変入賞手段25L,25Rは、図柄表示手段(第2図柄表示手段)30の変動後の停止図柄が予め定められた所定の大当たり態様を表示することを条件に、その何れか一方の開閉板33が、所定の上限開放時間が経過するか又はその上限開放時間内に所定の上限入賞個数の遊技球が入賞するまで開放され(第2利益状態)、その開放中に入賞した遊技球1個につき所定の払い出し個数分の賞球が払い出され、
可変入賞手段25L側の上限開放時間が30秒、上限入賞個数が10個、払い出し個数が15個に設定され、可変入賞手段25R側の上限開放時間が15秒、上限入賞個数が5個、払い出し個数が10個に設定されており、
第2利益状態中に、その開放中の可変入賞手段25L又は25Rに入賞した遊技球が内部の特定領域34を通過すれば、第2利益状態が所定の上限ラウンド数(例えば16ラウンド)を限度として繰り返され、
第2利益状態の各ラウンドにおいて夫々可変入賞手段25L,25Rのどちらを開放するかを規定する開放パターンは、例えば図3に示すように予め複数種類用意されており、可変入賞手段25L,25Rは、それら複数種類の開放パターンA?H等のうちの何れかに従って開閉制御されるようになっており、
前記開放パターン決定手段58は、第2利益状態中における可変入賞手段25L,25Rの開放パターンを決定するためのもので、開放パターン記憶手段62、開放パターン選択手段63等を備えており、
開放パターン記憶手段62には、複数種類の開放パターンA?H等に対応する開放パターンデータが予め記憶されており、
開放パターン選択手段63は、第2判定手段55の判定結果が大当たり態様判定のときに開放パターン記憶手段62に記憶された開放パターンA?H等の中から1つを選択するためのもので、例えば停止図柄態様選択手段56で選択された停止図柄態様に基づいて開放パターンA?H等の中から1つを乱数抽選により選択するようになっており、
例えば、図5に示すように、停止図柄態様選択手段56で選択された停止図柄態様が「6・6・6」等の通常大当たり態様の場合には、可変入賞手段25L,25Rの切り換え頻度が高い開放パターン(例えば開放パターンA,B)ほど高い確率で選択され、停止図柄態様選択手段56で選択された停止図柄態様が「7・7・7」等の特別大当たり態様の場合には、可変入賞手段25L,25Rの切り換え頻度が低い開放パターン(例えば開放パターンG,H)ほど高い確率で選択され、
前記利益状態発生手段59は、第2判定手段55の判定結果が大当たり態様判定となり、図柄表示手段(第2図柄表示手段)30の変動後の停止図柄が大当たり態様となったとき、開放パターン決定手段58で決定された開放パターンA?Hの何れかに基づいて可変入賞手段25L,25Rを開放して、遊技者に有利な第2利益状態を発生させるものである、
弾球遊技機。」

3.対比・判断
そこで、本願補正発明と刊行物1記載の発明とを対比する。

刊行物1記載の発明の「弾球遊技機」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。

刊行物1記載の発明の「開閉自在な開閉板33を備え、遊技者に有利な開状態と不利な閉状態とに変換可能な、複数の可変入賞手段25L,25R」、「可変入賞手段25L側の上限開放時間が30秒、上限入賞個数が10個、払い出し個数が15個に設定され、可変入賞手段25R側の上限開放時間が15秒、上限入賞個数が5個、払い出し個数が10個に設定されており」は、
それぞれ、本願補正発明の「遊技者にとって有利となる状態と不利となる状態とに変換可能な可変入賞装置」、「上記可変入賞装置は、少なくとも遊技者にとって利益度が異なる第1可変入賞装置と第2可変入賞装置とが設けられ」に相当する。

刊行物1記載の発明の「前記複数の前記可変入賞手段25L,25Rは、遊技領域22の下部側に左右に配置され」と、本願補正発明の「上記第1可変入賞装置及び上記第2可変入賞装置は、遊技領域の上下に配置され」とは、「上記第1可変入賞装置及び上記第2可変入賞装置は、遊技領域の所定の位置に配置され」で共通する。

刊行物1記載の発明の「始動手段(第2図柄始動手段)24が遊技球を検出する」ことは、本願補正発明でいうような「遊技球が入賞または通過可能な始動遊技装置」(始動入賞口)を有することが前提であることは、技術常識であるので、刊行物1記載の発明は、本願補正発明の「遊技球が入賞または通過可能な始動遊技装置」及び「上記始動遊技装置に入賞または通過した遊技球を検出する始動遊技球検出手段」を具備しているといえる。

刊行物1記載の発明の「遊技図柄(第2図柄)」は、本願補正発明の「図柄」に相当し、
刊行物1記載の発明の「始動手段(第2図柄始動手段)24が遊技球を検出することを条件に遊技図柄(第2図柄)を変動表示する図柄表示手段(第2図柄表示手段)30」であって「前記図柄表示手段(第2図柄表示手段)30は、1個又は複数個、例えば左右方向に3個の遊技図柄(第2図柄)を可変表示手段28の例えば上下方向略中央部分に変動表示可能となっており、各第2図柄は、始動手段(第2図柄始動手段)24が遊技球を検出することを条件に上下方向又は左右方向にスクロールする等、所定の変動パターンで変動して、所定の大当たり態様又は外れ態様となるように左、右、中等の所定の順序で停止するものであり」は、
本願補正発明の「少なくとも所定の図柄を変動表示して確定表示するスロットゲームを実行する画像表示装置」に相当する。

そして、刊行物1記載の発明は、明示がないが、本願補正発明でいう「始動遊技球検出手段が遊技球を検出したことに基づいて、上記画像表示装置が実行する上記スロットゲームの表示制御を行う制御手段」を具備することは、技術的にみて当然である。

刊行物1記載の発明は、「該図柄表示手段30の変動後の停止図柄が予め定められた大当たり態様となることに基づいて、前記可変入賞手段25L,25Rを閉状態から開状態に変化させる利益状態(第2利益状態)を1又は複数回発生させる利益状態発生手段59」を有し、「可変入賞手段25L,25Rは、図柄表示手段(第2図柄表示手段)30の変動後の停止図柄が予め定められた所定の大当たり態様を表示することを条件に、その何れか一方の開閉板33が、所定の上限開放時間が経過するか又はその上限開放時間内に所定の上限入賞個数の遊技球が入賞するまで開放され(第2利益状態)、その開放中に入賞した遊技球1個につき所定の払い出し個数分の賞球が払い出され」、「第2利益状態中に、その開放中の可変入賞手段25L又は25Rに入賞した遊技球が内部の特定領域34を通過すれば、第2利益状態が所定の上限ラウンド数(例えば16ラウンド)を限度として繰り返され」るものであり、
また、刊行物1記載の発明の「該図柄表示手段30の変動後の停止図柄が予め定められた大当たり態様となること」は、本願補正発明の「上記スロットゲームの結果、上記画像表示装置に確定表示された図柄が所定の図柄である」ことに実質的に相当するから、
刊行物1記載の発明は、本願補正発明の「上記スロットゲームの結果、上記画像表示装置に確定表示された図柄が所定の図柄である場合には、上記可変入賞装置を所定の態様に変換制御して遊技者にとって有利な複数のラウンドから成る特別遊技を発生させる特別遊技発生手段」を有するものといえる。

次に、刊行物1記載の発明の「利益状態発生手段59」「開放パターン決定手段58」等と、本願補正発明の「特別遊技発生手段」が備える「特別変換制御手段」及び当該「特別変換制御手段」が備える「図柄種別変換制御手段」との対応関係について検討する。
本願補正発明の「特別変換制御手段」及び「図柄種別変換制御手段」の制御内容は、特別遊技を発生させることとなる所定の図柄が上記画像表示装置に確定表示されたことにより、特別遊技の発生に係わる所定の遊技条件が成立し、当該所定の遊技条件の成立に基づき(すなわち、当該所定の遊技条件の成立を契機にして)、第1可変入賞装置または/及び第2可変入賞装置を、所定の態様と異なるように変換制御するもので、
本願明細書【0029】の「例えば、この所定の態様を、大当り遊技におけるラウンド数のうち、第1?12ラウンドは第1可変入賞装置を開口し、第13?16ラウンドは第2可変入賞装置を開口する変換制御とした場合には、確定表示された大当り図柄の種別に基づいて、第1?10ラウンドは第1可変入賞装置を開口し、第11?16ラウンドは第2可変入賞装置を開口したり、或いは大当り遊技における全てのラウンドを第1可変入賞装置または/及び第2可変入賞装置を開口するというように、第1可変入賞装置または/及び第2可変入賞装置を、所定の態様と異なるように変換制御する」との記載も参酌すると、
本願補正発明は、「所定の態様」「所定の態様と異なる」態様と規定するけれども、結局のところは、大当り遊技におけるラウンド数のうち、何番目のラウンドで第1可変入賞装置が開放され、何番目のラウンドで第2可変入賞装置が開放されるかといった開放パターン(刊行物1記載の発明でいえば、「第2利益状態の各ラウンドにおいて夫々可変入賞手段25L,25Rのどちらを開放するかを規定する開放パターン」。なお、本願補正発明では、両方の可変入賞装置が同時に開放される場合を含んでいる。以下、単に「開放パターン」という。)を、確定表示された当たり図柄の種類に応じて異ならせるという意味であると理解される。
これを踏まえると、
刊行物1記載の発明の「利益状態発生手段59」「開放パターン決定手段58」等に関する記載である、
「第2利益状態の各ラウンドにおいて夫々可変入賞手段25L,25Rのどちらを開放するかを規定する開放パターンは、例えば図3に示すように予め複数種類用意されており、可変入賞手段25L,25Rは、それら複数種類の開放パターンA?H等のうちの何れかに従って開閉制御されるようになっており、
前記開放パターン決定手段58は、第2利益状態中における可変入賞手段25L,25Rの開放パターンを決定するためのもので、開放パターン記憶手段62、開放パターン選択手段63等を備えており、
開放パターン記憶手段62には、複数種類の開放パターンA?H等に対応する開放パターンデータが予め記憶されており、
開放パターン選択手段63は、第2判定手段55の判定結果が大当たり態様判定のときに開放パターン記憶手段62に記憶された開放パターンA?H等の中から1つを選択するためのもので、例えば停止図柄態様選択手段56で選択された停止図柄態様に基づいて開放パターンA?H等の中から1つを乱数抽選により選択するようになっており、
例えば、図5に示すように、停止図柄態様選択手段56で選択された停止図柄態様が「6・6・6」等の通常大当たり態様の場合には、可変入賞手段25L,25Rの切り換え頻度が高い開放パターン(例えば開放パターンA,B)ほど高い確率で選択され、停止図柄態様選択手段56で選択された停止図柄態様が「7・7・7」等の特別大当たり態様の場合には、可変入賞手段25L,25Rの切り換え頻度が低い開放パターン(例えば開放パターンG,H)ほど高い確率で選択され、
前記利益状態発生手段59は、第2判定手段55の判定結果が大当たり態様判定となり、図柄表示手段(第2図柄表示手段)30の変動後の停止図柄が大当たり態様となったとき、開放パターン決定手段58で決定された開放パターンA?Hの何れかに基づいて可変入賞手段25L,25Rを開放して、遊技者に有利な第2利益状態を発生させるものである」と、
本願補正発明の「特別遊技発生手段」が備える「特別変換制御手段」、及び当該「特別変換制御手段」が備える「図柄種別変換制御手段」に関する規定である、
「上記特別遊技発生手段は、上記特別遊技の発生に係わる所定の遊技条件の成立に基づいて、該第1可変入賞装置または/及び該第2可変入賞装置を、上記所定の態様と異なるように変換制御する特別変換制御手段を備え、
上記特別遊技の発生に係わる所定の遊技条件の成立は、上記特別遊技を発生させることとなる所定の図柄が上記画像表示装置に確定表示されたこととし、
上記特別変換制御手段は、該所定の図柄の種別に基づいて、該第1可変入賞装置または/及び該第2可変入賞装置を、上記第1可変入賞装置が上記遊技者にとって有利となる状態となるラウンドと、上記第2可変入賞装置が上記遊技者にとって有利となる状態となるラウンドとの設定が上記所定の態様と異なるように変換制御する図柄種別変換制御手段を備えた」とは、
「第1可変入賞装置と第2可変入賞装置の開放パターンを、確定表示された当たり図柄の種類に基づいて(さらに開放パターンの抽選により選択するかどうかは別として)決定するように構成されている」点で共通するといえる。なお、これと類似の表現は、刊行物1の【請求項6】にみられる。

以上のことから、両発明の一致点、相違点は次のとおりと認められる。

[一致点]
「遊技球が入賞または通過可能な始動遊技装置と、
少なくとも所定の図柄を変動表示して確定表示するスロットゲームを実行する画像表示装置と、
遊技者にとって有利となる状態と不利となる状態とに変換可能な可変入賞装置と、
上記始動遊技装置に入賞または通過した遊技球を検出する始動遊技球検出手段と、
該始動遊技球検出手段が遊技球を検出したことに基づいて、上記画像表示装置が実行する上記スロットゲームの表示制御を行う制御手段と、
上記スロットゲームの結果、上記画像表示装置に確定表示された図柄が所定の図柄である場合には、上記可変入賞装置を所定の態様に変換制御して遊技者にとって有利な複数のラウンドから成る特別遊技を発生させる特別遊技発生手段と、
を備えた遊技機であって、
上記可変入賞装置は、少なくとも遊技者にとって利益度が異なる第1可変入賞装置と第2可変入賞装置とが設けられ、上記第1可変入賞装置及び上記第2可変入賞装置は、遊技領域の所定の位置に配置され、
第1可変入賞装置と第2可変入賞装置の開放パターンを、確定表示された当たり図柄の種類に基づいて(さらに開放パターンの抽選により選択するかどうかは別として)決定するように構成されている、
遊技機。」

[相違点1]
第1可変入賞装置及び第2可変入賞装置が、本願補正発明は、遊技領域の上下に配置されるのに対して、刊行物1記載の発明は、遊技領域の下部側に左右に配置されるものである点。

[相違点2]
本願補正発明は、
上記特別遊技発生手段は、上記特別遊技の発生に係わる所定の遊技条件の成立に基づいて、該第1可変入賞装置または/及び該第2可変入賞装置を、上記所定の態様と異なるように変換制御する特別変換制御手段を備え、
上記特別遊技の発生に係わる所定の遊技条件の成立は、上記特別遊技を発生させることとなる所定の図柄が上記画像表示装置に確定表示されたこととし、
上記特別変換制御手段は、該所定の図柄の種別に基づいて、該第1可変入賞装置または/及び該第2可変入賞装置を、上記第1可変入賞装置が上記遊技者にとって有利となる状態となるラウンドと、上記第2可変入賞装置が上記遊技者にとって有利となる状態となるラウンドとの設定が上記所定の態様と異なるように変換制御する図柄種別変換制御手段を備えたものであるのに対して、
刊行物1記載の発明は、第1可変入賞装置と第2可変入賞装置の開放パターンを異ならせるに際して、確定表示された当たり図柄の種類に基づくとともに、さらに複数の開放パターンの選択肢の中から抽選により選択しており、各開放パターンが選択される確率は、図5のように、確定表示された当たり図柄の種類によって差が設けられる点。

相違点について検討する。

(相違点1について)
刊行物1の【0117】には、「以上、本発明の各実施形態について詳述したが、各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、・・・可変入賞手段は必ずしも左右方向に配置する必要はなく、例えば遊技領域22の上部側と下部側に配置するなど、任意の配置が可能である。」との記載があり、
この記載に従って、刊行物1記載の発明における第1可変入賞装置及び第2可変入賞装置が遊技領域の下部側に左右に配置されることに換えて、本願補正発明のごとく、遊技領域の上下に配置されるようになすことは、当業者が容易に想到し得ることである。

(相違点2について)
刊行物1記載の発明における開放パターン決定手段58(開放パターン選択手段63)は、「例えば停止図柄態様選択手段56で選択された停止図柄態様に基づいて開放パターンA?H等の中から1つを乱数抽選により選択する」ものである。なお、刊行物1記載の発明は、刊行物1の【発明の実施形態】を中心に認定されている。

一方、刊行物1の特許請求の範囲(請求項1?6)には、開放パターン決定手段58が規定されているところ、開放パターンの決定の手法として、抽選が用いられる旨は明示されておらず、請求項6に「前記開放パターン決定手段(58)は、前記図柄表示手段(30)の変動後の停止図柄態様に基づいて前記開放パターンを決定するように構成されている」と、停止図柄態様(すなわち、確定表示された当たり図柄の種類)に基づく決定手法が具体的に規定されているのみである。そうすると、刊行物1では、開放パターンの決定の手法に用いられる要素として、停止図柄態様(確定表示された当たり図柄の種類)は必須であるとしても、抽選は必須なものと必ずしも位置付けられていない。
また、刊行物1記載の全体をみても、抽選が開放パターン決定の必須要件である旨が明記されているわけでもない。
このことを、刊行物1の【発明が解決しようとする課題】、【課題を解決するための手段】、【発明の効果】の各欄の記載から確認すると、刊行物1の発明が解決しようとする課題は、従来の弾球遊技機では、例えば最大16ラウンドの利益状態発生中は、1つの可変入賞手段が一定の開閉動作を繰り返すのみであり、その遊技内容は変化に乏しく、面白みに欠ける欠点があり、利益状態発生時の可変入賞手段の開閉動作に変化を持たせることで遊技に対する興趣をより一層増大できる弾球遊技機を提供することを目的とする(【0004】【0005】)ものであり、刊行物1の課題を解決するための手段、発明の効果は、「複数の可変入賞手段25L,25Rを備え、1又は複数回の利益状態における複数の可変入賞手段25L,25Rの開放パターンを決定する開放パターン決定手段58を備えているため、利益状態発生時の可変入賞手段25L,25Rの開放パターンが変化に富んだものとなり、また遊技者はその開放パターンに応じて発射操作を調節する必要があるため、より一層興趣に富んだ遊技が可能となる」(【0006】【0130】)ものである。すなわち、刊行物1の発明は、1つの可変入賞手段に換えて複数の可変入賞手段を設けることと、複数の可変入賞手段の開放パターンを決定する開放パターン決定手段を備えることにより、利益状態発生時の可変入賞手段の開閉動作に変化を持たせることで、遊技に対する興趣を高めたことにある。したがって、開放パターン決定手段は、複数の可変入賞手段の開放パターンを決定するものであればよく、請求項6に示される停止図柄態様(確定表示された当たり図柄の種類)はともかく、抽選を必須条件(あるいは前提条件)としているものではない。

また、刊行物1の【発明の実施形態】中の記載である【0124】には、「開放パターンは、図3に示したものに限られるものではなく、任意に設定可能である。また、各開放パターンの選択率の設定も任意であり、例えば全ての開放パターンの選択率を同じにしてもよい。各開放パターンの選択率の設定内容を、停止図柄態様以外の例えば変動パターン、乱数抽選等に応じて変更するようにしてもよい。また、特定の条件が成立したとき(例えば特別大当たり態様となったときなど)にのみ選択される開放パターンを設けてもよい。」との記載がある。
当該【0124】の最後に記載された「また、特定の条件が成立したとき(例えば特別大当たり態様となったときなど)にのみ選択される開放パターンを設けてもよい。」との記載内容が、例えば特別大当たり態様となったときに選択される開放パターンが、抽選のための選択肢の一つとされる(つまり選択肢が一つ増える)という意味か、あるいは、抽選の選択肢ではなく必ず選択される(選択率100%)という意味かは、必ずしも明確でない。
しかし、同じ【0124】には、「開放パターンは、図3に示したものに限られるものではなく、任意に設定可能である。また、各開放パターンの選択率の設定も任意であり、例えば全ての開放パターンの選択率を同じにしてもよい。」との記載もあり、開放パターンの設定は任意であり、抽選における選択率の設定も任意である旨が示されているから、停止図柄態様の種類に応じて選択率100%の開放パターンを設けることも可能であるといえる。

さらに、一般に、可変入賞手段(大入賞口)が1つのものにおいてではあるが、抽選によらず、停止図柄態様(確定表示された当たり図柄の種類)により、ラウンド数や開放時間を異ならせる技術は、本願出願前に周知であり(例えば、特開2000-84192号公報の【0006】等、特開2000-317061号公報の請求項3や【0071】等を参照)、可変入賞手段(大入賞口)が2つのものにおいても、抽選によらず、停止図柄態様(確定表示された当たり図柄の種類)により、可変入賞手段(大入賞口)の変換制御(開閉制御)を行うことは、当業者であれば容易に発想し得ることである。

これらのことを勘案すると、刊行物1記載の発明において、確定表示された当たり図柄の種類が、特別大当たり態様(例えば確変大当りの図柄)となったときに、特定の開放パターンのみが選択されるものとし(100%の選択率とする)、また、通常大当り態様(通常大当りの図柄)になったときにも、同様に、特定の開放パターン(確変大当りのときとは異なる種類の開放パターン)のみが選択されるものとする(100%の選択率とする)こととし、特別変換制御手段、図柄種別変換制御手段を含めて、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者がその通常の創作能力を発揮すれば容易に想到し得ることである。

(効果について)
また、全体として、本願補正発明によってもたらされる効果も、刊行物1に記載された事項及び周知技術から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別なものとはいえない。
なお、請求人は、回答書で、
「このように、本願発明1では、上記相違点の構成により、遊技者は、まず、画像表示装置に確定表示される図柄の種別に基づいて、ラウンド設定を把握し、次に、各ラウンドにおいて、2つの可変入賞装置のうち、どちらを狙うべきかを適切且つ迅速に決め、さらに、狙うことにした可変入賞装置が上下どちらであるかに応じて、遊技球の発射強度を調整するという、一連の系統立てられた判断及び技量が必要になります。その結果、遊技者は、自身の判断及び技量を発揮して遊技に技術介入することができ、遊技の興趣が顕著に向上します。 また、本願発明1では、スロットゲームの結果、画像表示装置に確定表示される図柄の種別に基づいて、ラウンド設定が異なり(上記相違点の構成)、確定表示される図柄の種別がどの可変入賞装置を狙うべきかの判断に影響しますから、遊技者は、スロットゲームの結果に関心を持ち、スロットゲームを凝視しながら集中して楽しむことができるとともに、その結果に一喜一憂することになります。そのことにより、遊技の興趣が一層向上します。 」と主張するが、
刊行物1記載の発明でも、確定表示される図柄の種別を基本として開放パターンの選択がなされており、確定表示される図柄の種別により選択されやすい開放パターンと選択しにくい開放パターンがあるから、遊技者は確定表示される図柄の種別によりラウンド設定の傾向(選択されやすい開放パターン)を把握できるものである。
そして、本願補正発明のように、確定表示される図柄の種別に基づいて開放パターンの選択を一対一に行うと、遊技者は、確定表示される図柄の種別から開放パターン(ラウンド設定)を把握することができ、把握された開放パターンを念頭において狙うべき可変入賞装置を特定することができることは、刊行物1記載の発明や刊行物1の記載事項、上記周知技術から当業者であれば予測し得る程度のことである。
また、構成の容易想到性が論理付けられる以上、請求人の主張する効果を格別なものということもできない。

(まとめ)
よって、本願補正発明は、刊行物1記載の発明、刊行物1に記載された事項、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際特許を受けることができない。

4.補正却下の決定のむすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願の請求項1に係る発明
平成23年8月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?12に係る発明は、平成22年8月9日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、上記「第2 1.(補正前)」に記載したとおりのものである。

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開2003-245420号公報(上記「第2 2.」に記載した刊行物1。)の記載事項は、上記「第2 2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明1は、本願補正発明の、特別遊技発生手段が発生させる「遊技者にとって有利な複数のラウンドから成る特別遊技」から「複数のラウンドから成る」という限定事項を省き、図柄種別変換制御手段が該第1可変入賞装置または/及び該第2可変入賞装置を所定の態様と異なるように変換制御する内容について、「第1可変入賞装置が上記遊技者にとって有利となる状態となるラウンドと、上記第2可変入賞装置が上記遊技者にとって有利となる状態となるラウンドとの設定」という事項を省いたものに相当する。

ここで、本願発明1は、
特別遊技発生手段は、「上記スロットゲームの結果、上記画像表示装置に確定表示された図柄が所定の図柄である場合には、上記可変入賞装置を所定の態様に変換制御して遊技者にとって有利な特別遊技を発生させる」もので、「上記特別遊技発生手段は、上記特別遊技の発生に係わる所定の遊技条件の成立に基づいて、該第1可変入賞装置または/及び該第2可変入賞装置を、上記所定の態様と異なるように変換制御する特別変換制御手段を備え」、「上記特別変換制御手段は、該所定の図柄の種別に基づいて、該第1可変入賞装置または/及び該第2可変入賞装置を、上記所定の態様と異なるように変換制御する図柄種別変換制御手段を備えた」ものであるところ、
本願発明1は、本願補正発明から上記事項が省かれているために、変換制御の態様が、大当り遊技(特別遊技)におけるラウンド数のうち、何番目のラウンドで第1可変入賞装置が開放され、何番目のラウンドで第2可変入賞装置が開放されるかといった「開放パターン」のみを意味するものでなくなっている。
そして、本願発明1に残された規定内容は、ラウンド数における「開放パターン」ではなく、可変入賞装置(大入賞口)を、1ラウンドにおける上限開放時間、上限入賞個数、払出し個数が所定の態様になるように変換制御(開放制御)し、また、確定表示された当たり図柄の種類に応じて、第1可変入賞装置または/及び第2可変入賞装置を、1ラウンドにおける上限開放時間、上限入賞個数、払出し個数が上記所定の態様と異なる態様になるように変換制御(開放制御)するという意味にも解することができる。

そこで、本願発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、上記「第2 3.」で示した相違点1に加えて、次の相違点Aでも相違する。

[相違点A]
本願発明1は、
上記特別遊技発生手段は、上記特別遊技の発生に係わる所定の遊技条件の成立に基づいて、該第1可変入賞装置または/及び該第2可変入賞装置を、上記所定の態様と異なるように変換制御する特別変換制御手段を備え、
上記特別遊技の発生に係わる所定の遊技条件の成立は、上記特別遊技を発生させることとなる所定の図柄が上記画像表示装置に確定表示されたこととし、
上記特別変換制御手段は、該所定の図柄の種別に基づいて、該第1可変入賞装置または/及び該第2可変入賞装置を、上記所定の態様と異なるように変換制御する図柄種別変換制御手段を備えたものであるのに対して、
刊行物1記載の発明は、そのような変換制御を開示していない点。

次に、相違点について検討する。
相違点1については、上記「第2 3.」で示した判断と同様に、容易に想到し得ることである。なお、原査定では、相違点1について、刊行物1でなく、上記「第2 3.」で示さなかった特開2003-310933号公報(引用文献2)の記載事項を指摘しているが、刊行物1に、相違点1に係る構成が記載されているので、引用文献2を使用する必要はない。

相違点Aについては、刊行物1の【0123】に、「複数の可変入賞手段25L,25Rは、上限開放時間、上限入賞個数、払い出し個数等を全て同じ値に設定してもよいし、それらのうちの幾つかのみを異なる値に設定してもよい。また、それら上限開放時間、上限入賞個数、払い出し個数等の設定内容を可変とし、乱数抽選、時間経過、第1図柄や第2図柄の停止図柄態様、変動パターン、その他遊技状態に応じて変更するようにしてもよい。」との記載があり、このなかに、可変入賞手段25L,25Rの上限開放時間、上限入賞個数、払い出し個数等の設定内容を、第2図柄(遊技図柄)の停止図柄態様に応じて変更するようにしてもよい旨の開示がある。そうすると、刊行物1記載の発明において、可変入賞手段を当該開示内容のとおりに開放制御し、相違点Aに係る本願発明1のようになすことは、当業者が容易に想到し得ることである。

(まとめ)
したがって、本願発明1は、刊行物1記載の発明及び刊行物1の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-30 
結審通知日 2012-09-04 
審決日 2012-09-18 
出願番号 特願2004-111258(P2004-111258)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森田 真彦  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 瀬津 太朗
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 足立 勉  

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