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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1265717 |
審判番号 | 不服2010-4790 |
総通号数 | 156 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-03-04 |
確定日 | 2012-11-07 |
事件の表示 | 平成11年特許願第285788号「記憶媒体に格納されたデータファイルを見つけて、調べて、開くことを容易にする方法およびそのシステム。」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月21日出願公開、特開2000-113000〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成11年10月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年10月8日、米国)を出願日とする出願であって、平成18年7月24日付けで審査請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、平成21年6月8日付けで拒絶理由通知(同年6月16日発送)がなされ、同年9月7日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年10月28日付けで拒絶査定(同年11月4日謄本送達)がなされ、これに対して、平成22年3月4日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 そして、平成22年4月13日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、平成23年10月12日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年10月18日発送)がなされ、平成24年4月16日付けで回答書の提出があったものである。 第2 平成22年3月4日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年3月4日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成22年3月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成21年9月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5の記載 「【請求項1】 記憶媒体に格納されたデータファイルを見つけて、調べて、開くことを容易にする方法であって、 前記記憶媒体に格納される前記データファイルを作成することと、 各データファイルの一部をコピーすることによって、前記データファイルの要約を生成することと、 共通要約ファイルを作成することと、 前記共通要約ファイルが前記データファイル用にWEBページとしてフォーマットされ、前記共通要約ファイルはユーザがホットリンク上でクリックすることで簡単に各データファイルを開くことができるデータファイルと関連するホットリンクを有するように、前記共通要約ファイルの中に前記要約をフォーマットすることと、 任意のブラウザによって見ることができるように前記記憶媒体に前記共通要約ファイルを格納することと、 前記記憶媒体に前記データファイルを格納することと、 前記記憶媒体がコンピュータに挿入された場合に前記共通要約ファイルでデフォルトのWWWブラウザを起動させるために前記記憶媒体に自動実行ファイルを書き込むことと、 を備えることを特徴とする方法。 【請求項2】 前記共通要約ファイルの要約をディスプレイ上に読み出すことを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記フォーマットすることは、前記共通要約ファイルがHTMLファイルであるように実行されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。 【請求項4】 前記データファイルの要約を生成することは、前記ホットリンクのいずれかに関連づけられ、かつ自動的またはユーザの制御下で再生するように音楽もしくは映像要約を生成することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。 【請求項5】 記憶媒体に格納されたデータファイルを見つけて、調べて、開くことを容易にするシステムにおいて、 前記記憶媒体に格納されるデータファイルを作成する手段と、 各データファイルの一部をコピーすることによって、前記データファイルに関連する要約を生成する手段と、 共通要約ファイルを作成する手段と、 前記共通要約ファイルが前記データファイル用にWEBページ要約としてフォーマットされ、前記共通要約ファイルはユーザがホットリンク上でクリックすることで簡単に各データファイルを開くことができるデータファイルと関連するホットリンクを有するように、前記共通要約ファイルの中に前記要約をフォーマットする手段と、 任意のブラウザによって見ることができるように前記記憶媒体に前記共通要約ファイルを格納する手段と、 前記記憶媒体に前記データファイルを格納する手段と、 前記記憶媒体がコンピュータに挿入された場合に前記共通要約ファイルでデフォルトのWWWブラウザを起動させるために前記記憶媒体に自動実行ファイルを書き込む手段と、 を備えることを特徴とするシステム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。) を、 「【請求項1】 記憶媒体に格納されたデータファイルを見つけて、調べて、開くことを容易にする方法であって、 前記記憶媒体に格納される前記データファイルを作成することと、 録音された音声を用いた注釈を有し、各データファイルの一部をコピーすることによって生成される前記データファイルの要約を生成することと、 共通要約ファイルを作成することと、 前記共通要約ファイルが前記データファイル用にWEBページとしてフォーマットされ、前記共通要約ファイルはユーザがホットリンク上でクリックすることで簡単に各データファイルを開くことができるデータファイルと関連するホットリンクを有するように、前記共通要約ファイルの中に前記要約をフォーマットすることと、 任意のブラウザによって見ることができるように前記記憶媒体に前記共通要約ファイルを格納することと、 前記記憶媒体に前記データファイルを格納することと、 前記記憶媒体がコンピュータに挿入された場合に前記共通要約ファイルでデフォルトのWWWブラウザを起動させるために前記記憶媒体に自動実行ファイルを書き込むことと、 を備えることを特徴とする方法。 【請求項2】 前記共通要約ファイルの要約をディスプレイ上に読み出すことを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記フォーマットすることは、前記共通要約ファイルがHTMLファイルであるように実行されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。 【請求項4】 前記データファイルの要約を生成することは、前記ホットリンクのいずれかに関連づけられ、かつ自動的またはユーザの制御下で再生するように音楽もしくは映像要約を生成することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。 【請求項5】 記憶媒体に格納されたデータファイルを見つけて、調べて、開くことを容易にするシステムにおいて、 前記記憶媒体に格納されるデータファイルを作成する手段と、 録音された音声を用いた注釈を有し、各データファイルの一部をコピーすることによって生成される前記データファイルの要約を生成する手段と、 共通要約ファイルを作成する手段と、 前記共通要約ファイルが前記データファイル用にWEBページ要約としてフォーマットされ、前記共通要約ファイルはユーザがホットリンク上でクリックすることで簡単に各データファイルを開くことができるデータファイルと関連するホットリンクを有するように、前記共通要約ファイルの中に前記要約をフォーマットする手段と、 任意のブラウザによって見ることができるように前記記憶媒体に前記共通要約ファイルを格納する手段と、 前記記憶媒体に前記データファイルを格納する手段と、 前記記憶媒体がコンピュータに挿入された場合に前記共通要約ファイルでデフォルトのWWWブラウザを起動させるために前記記憶媒体に自動実行ファイルを書き込む手段と、 を備えることを特徴とするシステム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。) に補正するものである。 2.新規事項の有無、補正の目的要件 本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており、特許法第17条の2第3項の規定に適合している。 次に、本件補正が、特許法第17条の2第4項の規定に適合しているか確認する。 補正後の請求項1は、その記載からして、次の事項(a)を含んでいる。 (a)「録音された音声を用いた注釈を有」する態様 しかしながら、上記(a)を追加することを含む本件補正は、補正前の請求項1記載の「各データファイルの一部をコピーすることによって、前記データファイルの要約を生成すること」を限定した下位概念の補正ではなく、新たな構成を追加した補正であるものと認められる。 前記補正前の請求項1についてする補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)のいずれにも該当しないことは明らかである。 したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.独立特許要件 以上のように、補正前の請求項1についてする補正は、上記「2.新規事項の有無、補正の目的要件」で指摘したとおり、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるが、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第4項に掲げるいずれかの事項を目的とするものに該当すると仮定した場合に、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)検討する。 (1)補正後の発明 本件補正により、本願補正発明は、前記「1.補正の内容」の補正後の請求項1に記載されたとおりのものである。 (2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定 原審が拒絶理由通知において引用した「知見光泰,Netware Museum Freeware&Sharewareガイド,I/O ,日本,株式会社工学社,1998年10月1日,第23巻 第10号,第82?87頁」(以下、「引用文献」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。 A 「画像ファイルの一覧を作成 GifHTMLジラフ …(中略)… 対応OS Windows95,WindowsNT4.0」(第84頁中欄) B 「ディスクに散在する各種のデータの一覧を作成し,HTMLファイルとして保存できる(画面8). 任意のドライブ/フォルダ,および検索対象データの拡張子を指定後に検索を実行すると,対象データが超高速で検索され,ウインドウ内にそのファイル名が一覧表示されます. 検索対象がアイコンやカーソル,BMPデータの場合には,その画像も表示されます. この一覧は,「名前」「拡張子」「サイズ」などによる整列や,表示桁数・列数を指定することができます. 一覧中のファイルをダブル・クリックすることにより,関連付けられたアプリケーションによる表示や再生が可能ですが,最大の特徴は,「ファイルのインデックスをHTML形式で保存することができる」という点です. 保存されたHTMLファイルは,もちろんブラウザで表示させることができ,この場合,GIFやJPEGなどのブラウザが標準で対応するデータや,MIDIなどのプラグインが対応するデータを,ブラウザを使って表示/再生することが可能になります.」(第84頁中欄) C 画像ファイルの一覧を作成する「GifHTMLジラフ」というフリーウェアの画面イメージである「画面8」において、“ウインドウ内に、BMPデータの一覧が、サムネイル画像と共に表示されている”態様がみてとれる。(第84頁) (ア)上記Bの「ディスクに散在する各種のデータの一覧を作成し,HTMLファイルとして保存できる」、「任意のドライブ/フォルダ,および検索対象データの拡張子を指定後に検索を実行すると,対象データが超高速で検索され,ウインドウ内にそのファイル名が一覧表示されます」との記載、及び「一覧中のファイルをダブル・クリックすることにより,関連付けられたアプリケーションによる表示や再生が可能」との記載からすると、引用文献には、 ディスクに格納された各種のデータを検索して、一覧を作成して、関連付けられたアプリケーションによる表示や再生を可能とする方法 が記載されている。 (イ)上記Bの「検索対象がアイコンやカーソル,BMPデータの場合には,その画像も表示されます」との記載、上記Cの“ウインドウ内に、BMPデータの一覧が、サムネイル画像と共に表示されている”態様、及び、サムネイル画像が元となるデータファイルの一部をコピーすることによって生成されることは当業者にとって自明であることからすると、引用文献には、 画像データの一部をコピーすることによって生成される前記画像データのサムネイル画像を生成する 態様が記載されている。 (ウ)上記Bの「ディスクに散在する各種のデータの一覧を作成し,HTMLファイルとして保存できる」、「一覧中のファイルをダブル・クリックすることにより,関連付けられたアプリケーションによる表示や再生が可能ですが,最大の特徴は,「ファイルのインデックスをHTML形式で保存することができる」という点です」、及び「保存されたHTMLファイルは,もちろんブラウザで表示させることができ」との記載からすると、引用文献には、 HTMLファイルとして保存することと、 前記HTMLファイルはブラウザで表示させることができ、一覧中のファイルをダブル・クリックすることにより、関連付けられたアプリケーションによる表示や再生ができるようにすることと、 ブラウザで表示させることができるように、ディスクに前記HTMLファイルを保存すること が記載されている。 以上、(ア)ないし(ウ)で指摘した事項から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 ディスクに格納された各種のデータを検索して、一覧を作成して、関連付けられたアプリケーションによる表示や再生を可能とする方法であって、 画像データの一部をコピーすることによって生成される前記画像データのサムネイル画像を生成することと、 HTMLファイルとして保存することと、 前記HTMLファイルはブラウザで表示させることができ、一覧中のファイルをダブル・クリックすることにより、関連付けられたアプリケーションによる表示や再生ができるようにすることと、 ブラウザで表示させることができるように、前記ディスクに前記HTMLファイルを保存することと、 を備えることを特徴とする方法。 (3)本願補正発明と引用発明との対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「ディスク」、「各種のデータ」、「検索して」、及び「関連付けられたアプリケーションによる表示や再生」は、それぞれ、本願補正発明の「記憶媒体」、「データファイル」、「見つけて」、及び「開くこと」に相当する。そして、上記Bの「この一覧は,「名前」「拡張子」「サイズ」などによる整列や,表示桁数・列数を指定することができます」との記載からすると、引用発明において検索結果から「一覧を作成」する際に、検索した各種のデータを「調べて」いることは、自明のことである。また、引用発明は、ディスクに散在する各種のデータの一覧を作成することによって、データを容易に表示や再生するようにしたものであると認められる。してみれば、引用発明の「ディスクに格納された各種のデータを検索して、一覧を作成して、関連付けられたアプリケーションによる表示や再生を可能とする方法」は、本願補正発明の「記憶媒体に格納されたデータファイルを見つけて、調べて、開くことを容易にする方法」に相当するといえる。 引用発明の「画像データ」は、ディスクに格納された各種のデータの一部であり、また、引用発明の「サムネイル画像」は、元となる「画像データ」の要約といえるものであるから、引用発明の「画像データの一部をコピーすることによって生成される前記画像データのサムネイル画像を生成すること」と本願補正発明の「各データファイルの一部をコピーすることによって生成される前記データファイルの要約を生成すること」とは、“各データファイルの一部をコピーすることによって生成される前記データファイルの要約を生成すること”である点で共通する。 引用発明の「HTMLファイル」は、「ブラウザで表示させることができる」ものであり、本願補正発明における「共通要約ファイル」も、「WEBページとしてフォーマットされ、」「ブラウザによって見ることができる」ものである。してみれば、引用発明の「HTMLファイル」は、本願補正発明の「共通要約ファイル」に相当するといえる。また、引用発明の「HTMLファイルとして保存する」ということは、HTMLファイルを作成して保存することに他ならない。したがって、引用発明と本願補正発明とは、“共通要約ファイルを作成する”点で共通する。 引用発明における「HTMLファイル」はブラウザで表示させることができるものであるから、(各種のデータ用に)WEBページとしてフォーマットされることは、当業者にとって自明なことである。してみれば、引用発明の「前記HTMLファイルはブラウザで表示させることができ」は、本願補正発明の「前記共通要約ファイルが前記データファイル用にWEBページとしてフォーマットされ」に相当するといえる。 また、引用発明において、「HTMLファイルは」「一覧中のファイルをダブル・クリックすることにより、関連付けられたアプリケーションによる表示や再生ができるようにする」ということは、一覧中のホットリンク上でクリックすることで簡単に(関連付けられたアプリケーションにより)当該ファイルを開くことができるように、HTMLファイルの中に各種のデータと関連するホットリンクを作成することに他ならない。そして、本願補正発明において、「データファイルと関連するホットリンクを有するように、前記共通要約ファイルの中に前記要約をフォーマットする」ということは、共通要約ファイルの中にデータファイルと関連するホットリンクを作成することに他ならない。してみれば、引用発明と本願補正発明とは、“共通要約ファイルはユーザがホットリンク上でクリックすることで簡単に各データファイルを開くことができるように、前記共通要約ファイルの中にデータファイルと関連するホットリンクを作成する”点で共通する。 引用発明の「ブラウザで表示させる」は、ブラウザで表示させることにより、(ユーザが)見ることができるようにするものであることから、本願補正発明の「ブラウザによって見ることができる」に相当する。そして、引用発明の「保存する」は、本願補正発明の「格納する」に相当する。また、HTMLファイルが任意のブラウザで見ることができるものであることは自明の事項である。してみると、引用発明の「ブラウザで表示させることができるように、前記ディスクに前記HTMLファイルを保存すること」は、本願補正発明の「任意のブラウザによって見ることができるように前記記憶媒体に前記共通要約ファイルを格納すること」に相当する。 以上から、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。 (一致点) 記憶媒体に格納されたデータファイルを見つけて、調べて、開くことを容易にする方法であって、 各データファイルの一部をコピーすることによって生成される前記データファイルの要約を生成することと、 共通要約ファイルを作成することと、 前記共通要約ファイルが前記データファイル用にWEBページとしてフォーマットされ、前記共通要約ファイルはユーザがホットリンク上でクリックすることで簡単に各データファイルを開くことができるように、前記共通要約ファイルの中にデータファイルと関連するホットリンクを作成することと、 任意のブラウザによって見ることができるように前記記憶媒体に前記共通要約ファイルを格納することと、 を備えることを特徴とする方法。 (相違点1) データファイルに関して、本願補正発明が、「記憶媒体に格納される前記データファイルを作成」し、「前記記憶媒体に前記データファイルを格納する」ものであるのに対して、引用発明は、各種のデータについて、ディスクに格納されているものの、当該データを作成し、格納することについて明記されていない点。 (相違点2) データファイルの要約に関して、本願補正発明が、「録音された音声を用いた注釈を有」するものであるのに対して、引用発明は、音声を用いた注釈を有するものではない点。 (相違点3) 本願補正発明が、「前記記憶媒体がコンピュータに挿入された場合に前記共通要約ファイルでデフォルトのWWWブラウザを起動させるために前記記憶媒体に自動実行ファイルを書き込むこと」を備えるものであるのに対して、引用発明は、当該手段を備えていない点。 (4)当審の判断 上記相違点1ないし相違点3について検討する。 (4-1)相違点1について データファイルを作成し、作成したデータファイルを記憶媒体に格納する技術は、引用文献等を示すまでもなく、当該技術分野において慣用的に行われている周知慣用技術にすぎない。 してみれば、引用発明においても、当該周知慣用技術を適用し、“各種のデータを作成すること”、及び、“ディスクに(作成した)各種のデータを格納すること”を備えるように構成することは、当業者であれば、適宜なし得たことである。 よって、相違点1は格別なものではない。 (4-2)相違点2について 画面上に表示されたアイコンに音声を用いた注釈を付け加える技術については、周知技術(必要であれば、特開平9-81760号公報(特に、段落【0003】等)参照。)であり、引用発明のサムネイル画像においても、当該周知技術を適用し、“録音された音声を用いた注釈”を有するように構成することは、必要に応じて当業者が適宜なし得たことである。 よって、相違点2は格別なものではない。 (4-3)相違点3について 記憶媒体がコンピュータに挿入された場合に自動的に起動される自動実行ファイルを当該記憶媒体に書き込んでおく技術(いわゆる「オートラン」技術)は、引用文献等を示すまでもなく、当該技術分野において慣用的に行われている周知慣用技術にすぎない。 そして、HTMLファイルをオートランの対象とすることは、当業者が適宜選択可能な設計的事項にすぎない。 してみれば、引用発明においても、当該周知慣用技術を適用し、“ディスクが挿入された場合にHTMLファイルでデフォルトのブラウザを起動させるために前記ディスクに自動実行ファイルを書き込む”ように構成することは、当業者であれば、適宜なし得たことである。 よって、相違点3は格別なものではない。 (4-4)小括 上記で検討したごとく、相違点1ないし相違点3は格別のものではなく、そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 したがって、本願補正発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (5)むすび 以上のように、本件補正は、上記「2.新規事項の有無、補正の目的要件」で指摘したとおり、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 また、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第4項に掲げるいずれかの事項を目的とするものに該当すると仮定した場合であっても、本件補正は、上記「3.独立特許要件」で指摘したとおり、補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明の認定 平成22年3月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年9月7日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「記憶媒体に格納されたデータファイルを見つけて、調べて、開くことを容易にする方法であって、 前記記憶媒体に格納される前記データファイルを作成することと、 各データファイルの一部をコピーすることによって、前記データファイルの要約を生成することと、 共通要約ファイルを作成することと、 前記共通要約ファイルが前記データファイル用にWEBページとしてフォーマットされ、前記共通要約ファイルはユーザがホットリンク上でクリックすることで簡単に各データファイルを開くことができるデータファイルと関連するホットリンクを有するように、前記共通要約ファイルの中に前記要約をフォーマットすることと、 任意のブラウザによって見ることができるように前記記憶媒体に前記共通要約ファイルを格納することと、 前記記憶媒体に前記データファイルを格納することと、 前記記憶媒体がコンピュータに挿入された場合に前記共通要約ファイルでデフォルトのWWWブラウザを起動させるために前記記憶媒体に自動実行ファイルを書き込むことと、 を備えることを特徴とする方法。」 2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定 原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献およびその記載事項は、前記「第2 平成22年3月4日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「第2 平成22年3月4日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」で検討した本願補正発明から、「録音された音声を用いた注釈を有し、」及び「生成される」を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記「第2 平成22年3月4日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」ないし「(4)当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び上記参考文献等に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-06-06 |
結審通知日 | 2012-06-12 |
審決日 | 2012-06-25 |
出願番号 | 特願平11-285788 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 紀田 馨 |
特許庁審判長 |
西山 昇 |
特許庁審判官 |
田中 秀人 殿川 雅也 |
発明の名称 | 記憶媒体に格納されたデータファイルを見つけて、調べて、開くことを容易にする方法およびそのシステム。 |
代理人 | 溝部 孝彦 |
代理人 | 古谷 聡 |
代理人 | 西山 清春 |