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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1266286
審判番号 不服2012-3261  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-20 
確定日 2012-11-15 
事件の表示 特願2008-99600「実装データ作成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月29日出願公開、特開2009-253044〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成20年4月7日の出願であって、平成24年1月12日付けで拒絶査定がされ(発送日:同年1月17日)、これに対し、同年2月20日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、その請求項1ないし3に係る発明は、平成23年11月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
部品実装機に対して特定の基板への部品実装動作を指示するための実装データを作成する実装データ作成方法であって、
部品実装機による特定の基板への部品実装動作の最適化の際に、前記最適化により得られる前記実装データに、前記最適化を行う際の制約を示すデータである最適化条件データを追加する最適化条件データ追加ステップ
を含むことを特徴とする実装データ作成方法。」

ここで、「最適化」に関して、本願明細書には、「部品の実装順序を最適化する目的は、部品実装機100による単位時間当たりの基板の生産枚数を最大化することである」(段落【0048】)との記載がある。

第2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前の平成14年5月10に頒布された特開2002-134997号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に、次の事項が記載されている。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として電子部品を実装機によって基板に自動的に実装する際に好適に適用される、部品の実装方法と装置、及びそのための実装データ作成方法と装置に関するものである。」

(2)「【0003】これら配慮すべき具体的な条件は、電子部品を持ち運びするノズルやチャックの種類、ノズルやチャックを持った実装ヘッドの移動速度、電子部品を部品供給部から取出す時や、部品を実装する時のノズルやチャックの必要下降位置、つまり部品を取り出すときの高さ位置や、部品を基板へ装着するときの高さ位置、電子部品が1つでも実装されている基板の移動速度、特に加速度、および各種許容値等がある。
【0004】各種の電子部品は実装機に自動供給するためにテーピングされ、あるいはトレイに収容して、あるいはスティックやバルク部品として取り扱われるが、このような部品供給形態、およびその場合の部品収納ピッチ等も含めた、いわゆる荷姿も実装データ作成の上で配慮する必要がある。」

(3)「【0018】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の部品の実装及びその実装データの作成においては、実装を適正かつ確実にさらに効率的に行うために、部品実装の際に配慮すべき具体的な条件、例えば上記のように部品を保持するノズルやチャックの種類、ノズルやチャックを装備したヘッドの移動速度、部品が1つでも実装された後の基板移動速度や加速度などのデータを実装データに含ませる場合には、熟練した使用者が経験に基づいて必要なデータを一々自動データ処理装置に手入力する必要があり、そのような実装データの作成には多大な労力と時間が掛かっている。
【0019】本発明は、このような問題を解消することを課題とし、容易かつ短時間で作成した実装データにて適正・確実にかつ効率的に実装することができる部品の実装方法と装置及びそのための実装データ作成方法と装置を提供することを目的とするものである。」

(4)「【0032】(実施の形態1)本実施の形態1は、図1の(a)に示すように、実装機4とは別のデータ処理装置3を利用した場合を示し、このデータ処理装置3は内部機能として図1の(b)に示すようなデータ読みだし処理手段1とデータ作成処理手段2とを有している。データ処理装置3はパーソナルコンピュータが好適であるが、これに限らず専用機でもよい。場合によっては実装機4側のデータ処理装置や動作制御のための制御系を利用することもできる。」

(5)「【0034】(省略)実装データCは実装機4の機能レベルや部品の供給形態と云った実装機4の個性に対応して必要とされるものを作成すればよく、具体的な内容は自由に設定できる。」

(6)「【0035】データ読みだし処理手段1は、実装対象部品について作成された実装位置に関する図2に示すような位置データAによって、実装対象部品を含む各種部品についてイメージデータとともに予め作成され部品電子カタログ12に記憶された部品の形状、寸法、荷姿、色と云った部品の実装に必要な図3に示すような部品テキストデータBから、各実装位置の実装対象部品ごとの部品テキストデータbを自動データ処理にて読みだす。データ作成処理手段2は、実装位置データAと、データ読みだし処理手段1が読みだした各実装位置の実装対象部品ごとの部品テキストデータbを含むデータとの自動データ処理にて、実装機4が各部品の供給を受けてそれらを基板の所定の実装位置に実装するための実装データCを作成する。 この実装データCは、例えば図4?図7に示すようなNCプログラム、部品ライブラリ、および、供給ライブラリとしての配列プログラムおよびトレイによる部品供給の際の部品取出し位置の条件に関する部品の供給位置ライブラリ等である。」

(7)「【0038】このように、本実施の形態1は、(省略)部品電子カタログが実装部品を含む各種部品についてのイメージデータIMとともに、部品の形状、寸法、荷姿、色と云った部品の実装に必要な部品テキストデータBをも記憶しているのを利用して、部品電子カタログとしての従来と同様な画面検索以外に、各実装対象部品について予め作成された実装位置データAの実装対象部品情報のもとに、前記部品電子カタログ12にイメージデータIMとともに記憶された前記部品テキストデータBのうちの対応するものを自動的に読みだして、各実装位置の実装対象部品ごとの部品テキストデータbを得ることができ、かつ、この実装位置データAと、各実装位置の実装対象部品ごとの部品テキストデータbを含むデータとを用いた従来通りの自動データ処理にて、例えば、従来通りの実装機4が必要な部品の実装位置に関するNCプログラム、部品の形状、寸法、色と云った電子部品の認識に関する部品ライブラリ、および部品の供給部における部品の配列と云った部品の供給状態に関する供給ライブラリと云った必要な実装データCを作成することができ、従来通りの実装機4に各部品を供給してそれらを所定の実装位置に実装するための実装データCを自動データ処理にて作成することができる。従って、各実装対象部品ごとの実装データCの作成に必要な各種の部品データを人が一々入力しなくてもよいので、実装データ作成に掛かる労力と時間を大幅に軽減することができる。」

(8)「【0047】部品実装に関して配慮すべき他の項目としては、電子部品を持ち運びするノズルやチャックの種類、ノズルやチャックを持った実装ヘッドの移動速度、電子部品を実装する時のノズルやチャックの必要下降位置、つまり基板への実装高さ、電子部品が実装されている基板の移動速度、特に加速度、および各種許容値がある。また、これら各種の電子部品は実装機に自動供給するために、例えばテーピングされ、あるいはトレーに収容して取り扱われるが、このような部品供給形態、およびその場合の部品収納ピッチ等も含めた、いわゆる荷姿条件も配慮する必要がある。このようなデータをも、供給ライブラリやその他の実装データCとして自動的に作成することができる。」

(9)「【0094】また、部品テキストデータBとして、同種部品について採用され得る複数の荷姿データを含むと、実装データ作成の操作において、同種部品について採用され得る荷姿データ、例えば、テーピング、トレイ、およびストックと云った複数のデータと、実装機の特性データとによって、部品供給機構の形式や能力に応じ、採用できる供給形式、あるいはさらに実装タクト時間が最短となる供給形式を採用するように決定する処理を自動的に行うことができる。」

これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下「刊行物に記載された発明」という。)が記載されている。

「実装機4が各部品の供給を受けてそれらを基板の所定の実装位置に実装するための実装データCを自動データ処理にて作成する実装データ作成方法であって、
採用され得る荷姿データと、実装機の特性データとによって、部品供給機構の形式や能力に応じ、実装タクト時間が最短となる供給形式を採用するように決定する処理を自動的に行うと共に、
電子部品を持ち運びするノズルやチャックの種類、ノズルやチャックを持った実装ヘッドの移動速度、電子部品を実装する時のノズルやチャックの必要下降位置、電子部品が実装されている基板の移動速度、特に加速度、および各種許容値、また、部品供給形態、およびその場合の部品収納ピッチ等も含めた、いわゆる荷姿条件、このようなデータを供給ライブラリやその他の実装データCとして自動的に作成する実装データ作成方法。」

第3 対比
本願発明と刊行物に記載された発明とを対比すると、後者の「実装機4」は前者の「部品実装機」に相当し、後者の「各部品の供給を受けてそれらを基板の所定の実装位置に実装する」は前者の「部品実装動作」に相当するから、後者の「実装機4が各部品の供給を受けてそれらを基板の所定の実装位置に実装するための実装データCを自動データ処理にて作成する実装データ作成方法」は前者の「部品実装機に対して特定の基板への部品実装動作を指示するための実装データを作成する実装データ作成方法」に相当し、また、後者の「実装タクト時間が最短となる供給形式を採用するように決定する処理を自動的に行う」は、本願明細書で述べる「部品実装機100による単位時間当たりの基板の生産枚数を最大化する」(段落【0048】)にあたるから、前者の「部品実装機による特定の基板への部品実装動作の最適化」に相当する。

したがって、両者は、
「部品実装機に対して特定の基板への部品実装動作を指示するための実装データを作成する実装データ作成方法であって、
部品実装機による特定の基板への部品実装動作の最適化を行う実装データ作成方法。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。

〔相違点〕
最適化の際に、本願発明は、「前記最適化により得られる前記実装データに、前記最適化を行う際の制約を示すデータである最適化条件データを追加する最適化条件データ追加ステップを含む」のに対し、
刊行物に記載された発明は、「採用され得る荷姿データと、実装機の特性データとによって、部品供給機構の形式や能力に応じ、実装タクト時間が最短となる供給形式を採用するように決定する処理を自動的に行うと共に、
電子部品を持ち運びするノズルやチャックの種類、ノズルやチャックを持った実装ヘッドの移動速度、電子部品を実装する時のノズルやチャックの必要下降位置、電子部品が実装されている基板の移動速度、特に加速度、および各種許容値、また、部品供給形態、およびその場合の部品収納ピッチ等も含めた、いわゆる荷姿条件、このようなデータを供給ライブラリやその他の実装データCとして自動的に作成する」点。

第4 当審の判断
そこで、相違点を検討する。
刊行物に記載された発明は、「採用され得る荷姿データと、実装機の特性データとによって、部品供給機構の形式や能力に応じ、実装タクト時間が最短となる供給形式を採用するように決定する処理を自動的に行う」ものであるから、刊行物に記載された発明において、「荷姿データ」、「実装機の特性データ」、及び「部品供給機構の形式や能力」は、「実装タクト時間が最短となる供給形式を採用する」際に前提となる事項である。

そして、刊行物に記載された発明の「電子部品を持ち運びするノズルやチャックの種類、ノズルやチャックを持った実装ヘッドの移動速度、電子部品を実装する時のノズルやチャックの必要下降位置、電子部品が実装されている基板の移動速度、特に加速度、および各種許容値」は、「実装機の特性データ」であり、「部品供給形態、およびその場合の部品収納ピッチ等も含めた、いわゆる荷姿条件」は、「荷姿データ」である。

そうすると、刊行物に記載された発明は、「実装タクト時間が最短となる供給形式を採用する」際に前提となる「荷姿データ」を「供給ライブラリやその他の実装データCとして自動的に作成する」ものということができる。

一方、本願発明の「最適化を行う際の制約を示すデータである最適化条件データ」に関して、本願明細書には「図30は、最適化条件データ328の一例を示す図である。 最適化条件データ328は、実装データ作成装置300により部品実装順序の最適化を行なう際の制約を示すデータであり、『データ名』と、『値』と、『値の意味』との組からなる。例えば、図30に示されるように、『強制配置データ』・・・『バランスデータ』・・・『厚み順最適化データ』・・・『ノズル順最適化データ』・・・『パターン単位最適化データ』・・・」(段落【0114】)との記載があるが、その他に「いかなる部品実装機であっても、機構上、コスト上、運用上などの面から、部品の実装順序の決定に対する制約要因を持っている。したがって、現実的には、部品の実装順序の最適化とは、様々な制約を遵守したうえで、単位時間当たりの基板の生産枚数を可能な限り最大化することである。 以下、この部品実装機100における主な制約を列挙する。(マルチ装着ヘッド)・・・マルチ装着ヘッド112の可動範囲に関して制約がある・・・(部品認識カメラ)・・・ 電子部品を撮像する際の認識スキャン速度は、カメラによって異なる。・・・(部品供給部) 電子部品のパッケージの状態には、電子部品をテープ状に収納するテーピングと呼ばれる方式と、部品の大きさに合わせて間仕切りをつけたプレートに収納するトレイと呼ばれる方式がある。テーピングによる部品の供給は、部品供給部115aおよび115bにより行われ、トレイ117aによる供給は、トレイ供給部117により行われる。電子部品のテーピングは規格化されており、部品の大きさに応じて、8mm幅から72mmまでのテーピング規格が存在する。・・・部品カセットをセットする部品供給部は、12mm幅までの部品テープを21.5mmピッチで隙間なく搭載できるように設計されている。テープ幅が16mm以上になると、テープ幅に応じて必要分だけ隙間をあけてセットすることになる。複数の電子部品を同時に(1回の上下動作で)吸着するためには、装着ヘッドと部品カセットそれぞれの並びにおけるピッチが一致すればよい。テープ幅が12mmまでの部品に対しては、10点同時吸着が可能である。・・・(部品カセット) 部品カセットには、1つの部品テープだけを収納するシングルカセットと、最大2つの部品テープを収納することができるダブルカセットとがある。ダブルカセットに収納する2つの部品テープは、送りピッチ(2mmまたは4mm)が同一の部品テープに限られる。(その他の制約) 部品実装機100における制約には、以上のような部品実装機100の構造から生じる制約だけでなく、部品実装機100が使用される生産現場における事情から生じる以下のような運用面での制約もある。(1)配列固定・・・ (2)リソース上の制約・・・」(段落【0049】ないし段落【0065】)、「部品実装機200についても、部品実装機200の構成、動作特性および制約条件に応じた最適化アルゴリズムに基づき、部品実装機100の場合と同様に部品の実装順序の最適化を行うことも可能である」(段落【0074】)、「 実装データ作成装置300は、生産の対象(基板およびその上に実装すべき部品)と生産の道具(限られたリソースを備えた部品実装機、サブ設備)とが与えられた場合に、可能な限り短い時間で基板を製造する(単位時間あたりに製造できる基板の枚数を多くする)ための部品実装順序を決定し、部品実装機に対して部品実装動作を指示するための実装データを作成する装置である。・・・このときに、対象の部品実装機(サブ設備)が有する上述の制約を厳守することが要求される」(段落【0075】ないし段落【0077】)との記載もある。

これらの記載を総合すると、本願発明の「最適化を行う際の制約を示すデータである最適化条件データ」には、部品実装機における部品供給部及び部品カセットの制約が包含されるといえる。

ここで、刊行物に記載された発明の「荷姿データ」は、「例えば、テーピング、トレイ、およびストックと云った複数のデータ」(段落【0094】)との記載及び「例えばテーピングされ、あるいはトレーに収容して取り扱われるが、このような部品供給形態、およびその場合の部品収納ピッチ等も含めた」(段落【0047】)との記載からみて、部品実装機における部品供給部及び部品カセットのデータであるといえる。

そうすると、刊行物に記載された発明の「荷姿データ」は、本願発明の「最適化を行う際の制約を示すデータである最適化条件データ」に相当し、それを踏まえると、刊行物に記載された発明の「実装タクト時間が最短となる供給形式を採用する」際に前提となる「荷姿データ」を「供給ライブラリやその他の実装データCとして自動的に作成する」ことは、本願発明の「前記最適化により得られる前記実装データに、前記最適化を行う際の制約を示すデータである最適化条件データを追加する最適化条件データ追加ステップを含む」に相当するといえる。

したがって、本願発明と刊行物1に記載された発明とに相違するところはなく、両者は同一である。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-04 
結審通知日 2012-09-11 
審決日 2012-09-27 
出願番号 特願2008-99600(P2008-99600)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 博之  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 冨岡 和人
所村 陽一
発明の名称 実装データ作成方法  
代理人 新居 広守  

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