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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1266812
審判番号 不服2012-3841  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-28 
確定日 2012-11-29 
事件の表示 特願2006-266756号「ヒートポンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年4月10日出願公開、特開2008-82684号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年9月29日の出願であって、平成23年11月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年2月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成24年2月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年2月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により請求項1は、次のように補正された。
「吸熱用熱交換器(14)にて冷媒と外気との間で熱交換を行い、この吸熱用熱交換器(14)で発生した凝縮水をドレンパン(61)にて受けるようにした室外機(6)を備えるヒートポンプにおいて、
先端が地中(72)に埋設されて、前記ドレンパン(61)にて受けた凝縮水を地中(72)に導くドレン配管(63)と、
前記ドレン配管(63)内において凝縮水が流れる通路に配置されて、前記ドレン配管(63)の先端まで延び、前記ドレン配管(63)内の凝縮水を加熱する電気ヒータ(5)とを備えることを特徴とするヒートポンプ。」(下線は補正箇所。)

2.補正の目的
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「電気ヒータ(5)」について、「前記ドレン配管(63)の先端まで延び」ると限定したものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項

(1)原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭58-176843号(実開昭60-83871号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「一般に、空気熱源ヒートポンプチラーは第1図に示す如く本体1内に送風機2、空気熱交換器3および空気圧縮機4を配設して構成され、空気熱交換器3で熱交換した空気を送風機2によって本体1の開口部1aから排出している。このようなヒートポンプチラーは図示を省略したが、冬期暖房運転中に空気熱交換器3に付着した霜を除去するための除霜装置を備えており、この除霜装置によって空気熱交換器3に付着した霜を融解し、そのドレンをドレンパン5を介してドレンホース6から装置外に排水している。」(明細書1ページ11行?同2ページ1行、下線は当審で付与。以下、同様。)
イ 「以下、図面を参照して本考案の実施例を説明する。
第4図および第5図はいずれも本考案の一実施例を示す図で、図中21は例えば塩化ビニール等の軟質材料からなる可撓性を有するホース本体である。このホース本体21の周囲には発熱体22がホース本体21の長手方向に沿って螺旋状に埋設されている。このように本実施例においては、ホース本体21の周囲に発熱体22をホース本体21の長手方向に沿って螺旋状に埋設した構成としたので、発熱体22からの熱がホース本体21の内周面全体に均一に分布し、ホース内でドレンが氷結するのを効率よく防止できるとともに、長さの調整も容易となる。」(明細書3ページ5?18行)

上記記載を検討すると、記載アによれば、空気熱交換器3は熱交換した空気を送風機2によって本体1の開口部1aから排出するものであるから、空気熱交換器3は冷媒と空気との間で熱交換を行うものであることは明らかである。また、空気熱交換器3に付着した霜は空気熱交換器3で発生した霜であるから、除霜装置によって融解したドレンは、空気熱交換器3で発生したドレンということができる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「空気熱交換器3にて冷媒と空気との間で熱交換を行い、この空気熱交換器3で発生したドレンをドレンパン5にて受けるようにした本体1を備える空気熱源ヒートポンプチラーにおいて、
前記ドレンパン5にて受けたドレンを装置外に導くドレンホース6と、
前記ドレンホース6のホース本体21の周囲の長手方向に沿って螺旋状に埋設されて、前記ドレンホース6内のドレンが氷結するのを防止する発熱体22とを備える空気熱源ヒートポンプチラー。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、実願平1-141736号(実開平3-79828号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「外部に配置される放熱部と内部に配置される冷却部と、これら放熱部と冷却部とを連結し、これら放熱部と冷却部との熱伝達を制御する熱伝達制御部と、前記冷却部で発生する結露水を排する排水路からなる除湿装置。」(実用新案登録請求の範囲(1))
イ 「本考案では、たとえばこのような建築物2の壁もしくは屋根の一部(図示では壁の一部)に、本考案に係る除湿装置40が装着してある。除湿装置40は、放熱部41と冷却部42と熱伝達制御部43と排水路48とから成る。」(明細書8ページ11?15行)
ウ 「冷却部42の周囲は、ケーシング48aで覆われている。ケーシング48aの下部には排水路48が形成されている。このケーシングには、通孔48bが多数形成され、内側通気層7内の空気がここを通して流通可能になっている。ケーシング48a内への空気流通を促進するため、ケーシング48a内にはファン47を装着するようにしても良い。
排水路48は、冷却部42で結露した結露水を建築物の外部に排出するためのもので、第3図に示すように、断熱材の室内側を通し、基礎を貫通して地中に排水するようにすることが好ましい。排水口48aを直接屋外や地表に露出させると、結露水が管内及び排水口付近で氷となり、流通を妨げる虞があるからである。このような観点から、排水路48の配管深さlは、地面の凍結深度よりも深いことが好ましい。」(明細書11ページ9行?12ページ5行)

上記ウ及び第3図によれば、排水路48は、基礎を貫通して地中に排水するようにすること、すなわち、排水路48の先端を地中に埋設することが記載されているといえる。

上記記載事項及び図示内容を総合すると、引用例2には、次の事項(以下「引用例2記載の事項」という。)が記載されている。

「冷却部42で発生する結露水を排する排水路48を建築物の外部に排出するものにおいて、排水口48aを直接屋外や地表に露出させると、結露水が管内及び排水口付近で氷となり、流通を妨げる虞があるので、排水路48の先端を地中に埋設し、凍結深度より深い地中に排出すること。」

(3)原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭61-116941号(実開昭63-22531号)のマイクロフィルム(以下「引用例3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「本考案は空冷ヒートポンプ空気調和機のドレン凍結を防止する装置の構造に関する。」(明細書1ページ12?13行)
イ 「ドレン加熱ヒータによって融かされても、周囲温度が低い状態ではドレン貯溜部に接続されるドレンホース内で再凍結する問題が屡々生じてドレン排水ができなくなり、ドレンがオーバーフローしたり、ドレン貯溜部内で局部的に氷の積層が生じるなどの不都合があった。
本考案はかかる従来の問題点に対処して成されたものであって、特にドレン排水管の内部に暖房時高圧となる冷媒配管の一部を挿通する構成を付加することによってドレン貯溜部における氷塊の残存や再凍結の防止をはかって、冷凍運転の安定化及び高能力維持を実現せしめることを目的とする。」(明細書2ページ12行?3ページ4行)

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「空気熱交換器3」、「空気」、「ドレン」、「ドレンパン5」、「本体1」、「空気熱源ヒートポンプチラー」、「ドレンホース6」は、本願補正発明の「吸熱用熱交換器(14)」、「外気」、「凝縮水」、「ドレンパン(61)」、「室外機(6)」、「ヒートポンプ」、「ドレン配管(63)」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「発熱体22」はドレンが氷結するのを防止するものであるから、本願補正発明の凝縮水を加熱する「電気ヒータ(5)」に相当する。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「吸熱用熱交換器にて冷媒と外気との間で熱交換を行い、この吸熱用熱交換器で発生した凝縮水をドレンパンにて受けるようにした室外機を備えるヒートポンプにおいて、
前記ドレンパンにて受けた凝縮水を導くドレン配管と、
前記ドレン配管内の凝縮水を加熱する電気ヒータとを備えるヒートポンプ。」

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点1)
ドレン配管について、本願補正発明では、先端が地中(72)に埋設されて、前記ドレンパン(61)にて受けた凝縮水を地中(72)に導くものであるのに対して、引用発明では、装置外に導くものである点。

(相違点2)
電気ヒータについて、本願補正発明では、ドレン配管(63)内において凝縮水が流れる通路に配置されて、前記ドレン配管(63)の先端まで延びるものであるのに対して、引用発明では、ドレンホース6のホース本体21の周囲の長手方向に沿って螺旋状に埋設されるものである点。

3-3.相違点の判断
(相違点1)
引用例2記載の事項(冷却部42で発生する結露水を排する排水路48を建築物の外部に排出するものにおいて、排水口48aを直接屋外や地表に露出させると、結露水が管内及び排水口付近で氷となり、流通を妨げる虞があるので、排水路48の先端を地中に埋設し、凍結深度より深い地中に排出すること。)についてみると、「結露水」は本願補正発明の「凝縮水」に相当し、「排水路」は本願補正発明の「ドレン配管」に相当するから、引用例2記載の事項は凝縮水を建物外部に排出する際、凝縮水の凍結による障害を無くすために、ドレン配管の先端を地中に埋設して凝縮水を地中に導くことを開示しているということができる。
してみると、引用発明も引用例2記載の事項も凝縮水の凍結という共通の課題を有するものであるから、ドレンホースの先端を地中に埋設して、凝縮水を地中に導くものとすることは、引用例2記載の事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2)
引用発明はドレンホース内の凝縮水を加熱する加熱手段をドレンホースの周囲の長手方向に沿って螺旋状に埋設したものであるが、ドレンホース内の凝縮水を直接加熱するためにドレンホース内の凝縮水が流れる通路に加熱手段を配置することは、引用例3に記載されているように加熱手段の配置として特別なものではなく、また、排水管の内部に排水の凍結防止のための加熱手段を設けるに際して排水管の排出口まで加熱手段を設けることも、例えば、特開平2005-351039号公報(ヒータ60、図1参照。)、特開平11-183082号公報(金属棒73、図3参照。)にみられるように、凍結防止という目的からみて当業者が必要に応じて採用する構造といえる。
してみると、引用発明において、凝縮水を加熱する加熱手段を、ドレンホース内において凝縮水が流れる通路に配置し、前記ドレンホースの先端まで延びるようにすることは、当業者が容易に想到することができる程度のことであって、格別創意を要することではない。

また、本願補正発明による効果も、引用発明及び引用例2記載の事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものではない。

なお、請求人は回答書において「ドレン配管の先端部の周囲を砂利または砂で覆うこと」(請求項4)に限定する準備がある旨主張しているが、ドレン配管の先端部は凝縮水を地中に排出する部分であるから、ドレン配管の先端部付近に凝縮水が溜まることが不都合であることは当業者であれば当然理解することであって、その対策として水捌けのよい砂利または砂でドレン配管の先端部の周囲を覆うものとすることに困難性があるものとは認められず、回答書のように限定されたとしても進歩性の判断に影響しない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成23年6月3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「吸熱用熱交換器(14)にて冷媒と外気との間で熱交換を行い、この吸熱用熱交換器(14)で発生した凝縮水をドレンパン(61)にて受けるようにした室外機(6)を備えるヒートポンプにおいて、
先端が地中(72)に埋設されて、前記ドレンパン(61)にて受けた凝縮水を地中(72)に導くドレン配管(63)と、
前記ドレン配管(63)内において凝縮水が流れる通路に配置されて、前記ドレン配管(63)内の凝縮水を加熱する電気ヒータ(5)とを備えることを特徴とするヒートポンプ。」

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「第2」「3-1.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」「1.」の本願補正発明において、「電気ヒータ(5)」についての限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本願補正発明が、前記「第2」「3-3.」に記載したとおり、引用発明及び引用
例2記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び引用例2記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-28 
結審通知日 2012-10-02 
審決日 2012-10-15 
出願番号 特願2006-266756(P2006-266756)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
P 1 8・ 575- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河野 俊二  
特許庁審判長 竹之内 秀明
特許庁審判官 森川 元嗣
亀田 貴志
発明の名称 ヒートポンプ  
代理人 井口 亮祉  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 伊藤 高順  

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