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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1266927
審判番号 不服2011-8498  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-21 
確定日 2012-11-30 
事件の表示 特願2001-183323「ワイヤレス通信が可能な印刷装置用モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月28日出願公開、特開2002- 62769〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年6月18日の出願(パリ条約による優先権主張2000年6月26日 米国(US))であって、平成22年7月29日付けで通知した拒絶理由に対して、同年8月26日付けで手続補正書が提出されたが、平成23年3月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、その後、当審から送付した、審査官により作成された前置報告書の内容についての同年10月19日付けの審尋に対して、平成24年1月5日付けで回答書が提出され、その後、当審において、同年4月20日付けで通知した拒絶理由に対して、同年6月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明について
1 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、上記平成24年6月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】 印刷装置に設置できるモジュールであって、
印刷に関係するハードウェアと、
前記モジュールに永久的に関連づけられたメモリと、
前記メモリを動作させ、前記ハードウェアの感光ドラムの内面に取り付けられ、該感光ドラムが回転しているときでも、当該モジュールによるワイヤレス通信装置との対話を可能にする、ワイヤレス・インタフェースと、
を備えていることを特徴とするモジュール。」

2 引用刊行物の記載事項
これに対して、当審で通知した拒絶理由で引用された、本願優先日前に頒布された、

刊行物1:特開平6-19244号公報
刊行物2:特開2000-62273号公報

には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(1)刊行物1
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 高圧チャージャを含む複数のプロセス要素を一体に本体装置に対して着脱可能なユニットとして構成されたプロセスカートリッジを有し、該プロセスカートリッジは該プロセスカートリッジ自体の寿命及び特性情報及びプロセスカートリッジに関する消耗品の交換回数情報を電気的情報として保持する手段、上記の諸情報を本体装置と通信するための通信手段及び電源装置を有し、本体装置は上記の諸情報をプロセスカートリッジと通信するための通信手段を有する電子写真装置において、上記のプロセスカートリッジ及び本体装置の上記通信手段が発光部と受光部とを有する光学的通信手段であることを特徴とする電子写真装置。」

イ 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プロセスカートリッジを有する電子写真装置に関する。」

ウ 「【0002】
【従来の技術】電子写真複写機、レーザプリンタ、ファクシミリ等の電子写真プロセスを利用する電子写真装置、特に小型の電子写真装置では、寿命のあるプロセス要素の交換や消耗品の補給等を容易に行なうことができるように、複数のプロセス要素を一体化したユニットとして本体装置に着脱可能にしたプロセスカートリッジとすることが広く行なわれている。
【0003】プロセスカートリッジ自体の寿命及び特性情報、プロセスカートリッジに関する消耗品の交換回数情報は、個々のプロセスカートリッジについて回るため、プロセスカートリッジ内にこのような情報を記憶させ、装置本体に装着した時、装置本体との間で情報の送受信を行なわせることは以前より提案されている。
【0004】例えば、特開昭58-132758号公報には、本体側の画像形成条件をプロセスカートリッジ側の電気的記憶手段に持たせ、電気信号を電気的コネクタ手段を介して本体装置に伝達するようにした、プロセスカートリッジ使用画像形成装置が開示されており、又、特開平3-230172号公報には、プロセスカートリッジ内の書き込み読み取り可能な不揮発性メモリに、画像形成条件、プロセスカートリッジの使用量情報を記憶させ、本体装置には、不揮発性メモリの駆動手段をもつ画像形成装置が開示されている。これらの公知の画像形成装置では、プロセスカートリッジと本体装置との間の上述の種々の情報通信手段として電気的コネクタが使用されている。【0005】ところが、プロセスカートリッジ内には高圧電源を使用する帯電チャージャが含まれる場合がしばしばあり、このような場合前述の諸情報の送受信を電気的接点を介して行なう方式を採用した場合は、上記のチャージャへの高圧の給電用接点と情報通信用の接点とが互いに近接した位置に設けられる場合が多いので、情報通信用接点に発生する浮遊容量により、上記のチャージャのオン時、高圧装置のノイズが入り込みメモリに誤情報を記憶させる可能性があり、前述のプロセスカートリッジ自体の寿命及び特性情報、プロセスカートリッジに関する消耗品の交換回数情報送受信の際の情報の信頼性の確保の点で障害となっていた。
【0006】この問題を解決するためには、プロセスカートリッジと本体装置との間の高圧電源の接続部と情報通信用の電気的接続部とを離して設ける必要があるが、プロセスカートリッジの交換を容易にする観点から、これら2つの接続部を離して設けることは困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、プロセスカートリッジを有する電子写真装置の、プロセスカートリッジ自体の寿命及び特性情報やプロセスカートリッジに関する消耗品の交換回数情報の信頼性が電子写真装置にとって必要不可欠のものである点にかんがみ、高圧チャージャがプロセスカートリッジ内に含まれる場合にも、チャージャへの高圧給電接点と情報通信用接点の位置を離すことなく、通信情報に高圧装置のノイズが入り込むことなく、上記の諸情報の信頼性を確保することのできる電子写真装置を提供することを課題とする。」

エ 「【0016】感光体ドラム12と、帯電チャージャ13、現像手段14、クリーニング手段16は一体的にプロセスカートリッジ30を構成している。プロセスカートリッジ30の交換は、上構造体10aを跳上げて開口し、プロセスカートリッジ30を図2中に矢印Aで示す方向に挿抜することにより行なわれる。
【0017】図3はプロセスカートリッジ30の外観を示す斜視図で、手前側の側板の内部を併せ示している。手前側の側板内には、マイクロスイッチ33が押圧部をプロセスカートリッジの下面に露出させて埋込まれている。プロセスカートリッジ30を矢印A方向に挿入して所定の位置にセットされるとマイクロスイッチ33は本体装置の下構造体10bに固定した図示しない部材で押圧されてオンされプロセスカートリッジ本体に装着されたことが検出される。
【0018】プロセスカートリッジ30の図3において手前側の側板の内側には、さらに、下面が開いた凹入部35が設けられており、その図3においてプロセスカートリッジ30の挿抜方向Aと平行な手前側を向いた内側面には、プロセスカートリッジ側送受信装置32が設けられている。
【0019】プロセスカートリッジ側送受信装置32は、図4に示す如く、不揮発性メモリ36及び発光部37及び受光部38を備えた光学的送受信装置を有するプリント基板で構成されている。送受信装置32とプロセスカートリッジ側の電気回路の電源のバッテリ40と前記マイクロスイッチ33とは、図4に示す如く接続されている。
【0020】一方、本体装置10の下構造体10bには、プロセスカートリッジの上記の凹入部35に対応して、プロセスカートリッジ30を矢印Aの方向に挿入し所定の位置迄移動させて本体装置10に装着した時、プロセスカートリッジ30の前記の凹入部35に先端部が挿入される突起部31(図1、図2、図3参照)が設けられている。突起部31の先端には、それが凹入部35に挿入された状態で、凹入部35内側面のプロセスカートリッジ側送受信装置32の発光部の発光面及び受光部の受光面に夫々対向する位置に受光面及び発光面を有する受光部38及び発光部37を備えた本体側送受信装置34が設けられている。したがって、プロセスカートリッジ30が本体装置に装着された状態でのみ、送受信及びメモリへの書込みが可能となる。」

オ 図2は次のとおり。


カ 図3は次のとおり。


キ 図4は次のとおり。


ク 「【0023】図4に示す光学的送受信回路のブロック図について、さらに詳しく説明すると、本体側回路は、プロセスカートリッジの寿命及び特性情報、プロセスカートリッジに関する消耗品の交換回数情報を管理するCPU41、CPU41からの情報を不揮発性メモリのフォーマットに交換するシリアルインタフェース42、このシリアルインタフェース42からのデジタル信号をプロセスカートリッジ30側に送信するための本体側送受信装置34から構成されている。プロセスカートリッジ30側の回路は、本体装置と送受信するためのカートリッジ側受光部38、カートリッジ側発光部37、マイクロスイッチ33、このマイクロスイッチ33がオフのときには不揮発性メモリ36への入出力を禁止するバッファ39、不揮発性メモリ36及びプロセスカートリッジ側の電気回路の電源であるバッテリ40から構成されている。」

これらアないしクの記載によれば、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「電子写真装置に着脱可能なプロセスカートリッジ30であって、
感光体ドラム12、帯電チャージャ13、現像手段14、クリーニング手段16が一体的に前記プロセスカートリッジ30を構成し、
前記プロセスカートリッジ30の側板の内側で、本体側送受信装置34と対向する位置に、
前記プロセスカートリッジ30自体の寿命及び特性情報並びにプロセスカートリッジに関する消耗品の交換回数情報を電気的情報として保持する不揮発性メモリ36と、前記諸情報を電子写真装置の本体側送受信装置34と通信するための発光部37と受光部38とを備えた光学的送受信装置を有するプリント基板で構成されるプロセスカートリッジ側送受信装置32を備えた
プロセスカートリッジ30。」

(2)刊行物2
ケ 「【0016】引き続き、図1及び図2を参照する。媒体物質125のほぼ円筒形の着色媒体供給スプール120は、ハウジング30の下部に位置する媒体円形コンベヤ(カラセル)130に接続されている。好ましくは、4つの媒体スプール120が使用されるが、明確化のため、1つだけが示されている。上記4つのスプール120の各々は、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック(CMYB)といった異なる色の媒体物質125を備える。また、以下の説明より理解されるように、媒体スプール120は、坦体リボンで包まれたスプールを収容する適当な構成を備えたプリンタに用いる場合、その媒体リボン120としてスプールの周囲を取り囲む担体リボンを備えても良い。媒体スプールに巻き付けられた受像リボン(即ち、熱転写媒体)を備えることの利点は、そのような構成により、上記プリンタ内の空間を節約できることである。このように、本発明は、転写媒体に特性(例えば、転写媒体の滑らかさ、もしくは、転写媒体が用紙、フィルム、金属板、又は、画像を受け取ることのできる他の物質)を与える熱転写(即ち、担体)媒体スプールに関連して用いることができる。また、本発明は、4つの媒体スプール120の使用に限定されず、より多くの、又は、少ない媒体スプール120が使用され得る。これらの媒体物質125は、複数の着色剤供給シート140に切断されて真空作像ドラム110に搬送され、着色剤供給媒体となり、この着色剤供給媒体に保持されている着色剤が熱転写媒体20に与えられる。ここで、専門用語である"着色剤"は、顔料のようなあらゆる色素を含むことを意味する。
【0017】再び図1及び図2を参照しつつ、着色剤(例えば、染料)を熱転写媒体20へ転写する工程について以下に説明する。媒体駆動機構150は、各スプール120に取り付けられ、3つの媒体駆動ローラ160を備えており、このローラを介して媒体物質125を計測しながら上方の媒体ナイフ部170へと供する。媒体物質125が予定の位置に到達した後、媒体駆動ローラ160は、媒体物質125の送出をやめる。この地点において、媒体ナイフ部170の底部に位置する複数(例えば2つ)の媒体ナイフブレード175は、媒体物質125を切断して着色剤供給用紙140とする。媒体ガイド80に沿う下部媒体ローラ70a及び上部媒体ローラ70bは、媒体載置トレイ100上に着色剤供給用紙140を搬送し、更に、最終的に真空作像ドラム110上に送る。当然、着色剤供給用紙140は、熱転写媒体20に重ね合わされた状態でドラム110上を送られる。この時点で、着色剤供給用紙140は、熱転写媒体20の上に置かれている。着色剤供給用紙140を真空作像ドラム110上へ送るこの工程は、熱転写媒体20を真空作像ドラム110上へ送る上述した工程と実質的に同じである。」

コ 「【0021】以下、図3及び図4を参照する。上述した着色媒体供給スプール120は、その周りに巻きつけられた媒体物質125を備える。供給物質125は、以下に説明する理由により、プリンタ10の型式に適合した特別なものであることが好ましい。より詳しくは、供給スプール120は、第1の終端部315とこれに対向する第2の終端部317を備えると共に、軸310の壁318の周りに巻き付けられた媒体物質125の供給部を備える一般的に円柱形の軸310で構成される。厚紙やプラスティックなど軸310の重量を低減する種々の軽量材料が軸310に使用される。円柱形の軸310は、プリンタ10に設けた回転可能なスピンドル320を精度良く受け入れる、長手方向に伸びる穴319を備える。無線トランシーバユニット330は、ハウジング30内の軸310のすぐ近くに配置されている。トランシーバユニット330は、軸310から約2cmから1メートルもしくはそれ以上離れた個所に配置するのが好ましい。
【0022】再び図3及び図4を参照する。トランシーバユニット330は、以下に説明する理由により、第1の既定周波数の第1の電磁界335を送信することができる。また、トランシーバ330は、以下に説明する理由により、第2の既定周波数の第2の電磁界337を受信することができる。トランシーバ330は、好ましくは、約125KHzの第1の既定周波数の第1の電磁界335を送信する。上記トランシーバ330は、例えば、米国ペンシルベニア、マルヴァンのヴィシェィ-テルファンケン・セミコンダクター(Vishay-Telefnmken Semiconductors)株式会社から入手可能な型番"U2270B"のトランシーバを用いる。
【0023】再び図3及び図4を参照する。トランスポンダ340は、軸310の壁318に埋め込むようにして、軸310に一体的に接続される。このように、トランスポンダ340を軸310に埋め込むことで、トランスポンダ340を不可視にして、軸310の美観を良くする。トランシーバ330とほぼ一直線に方向付け可能なトランスポンダ340は、不揮発性の電気的に消去可能でプログラム可能な読み出し専用メモリ(EEPROM)半導体チップを含む。トランスポンダ340は、媒体物質125を示す、EEPROM内に格納された符号化データを備える。トランスポンダ340がトランシーバ330に送信する上記符号化データは、好ましくは、トランスポンダ340内で2値データとして格納される。そのために、トランスポンダ340には、ヴィシェィ-テルファンケン・セミコンダクター(Vishay-Telefunken Semiconductors)株式会社から入手可能な型番"TL5550"を用いる。限定するものではなく、単なる一例として、トランスポンダ340に格納される幾つかの例示的データを、以下に表示する。
(以下略)・・・」

サ 図2は次のとおり。


シ 図3は次のとおり。


ス 「【0024】更に、コンピュータ又はマイクロプロセッサ345は、プリンタ10を制御するために、導線347等によりトランシーバ330と電気的に接続されている。マイクロプロセッサ345は、トランシーバ330に受信されたデータを処理する。これにより、マイクロプロセッサ345は、限定するものではないが、例えば、レーザプリントヘッド出力、供給物質125への照射レベル、媒体の在庫管理、及び、媒体スプール20のプリンタ10への正確な装着等を含む、種々のプリンタ機能を制御することができる。更に、入手された供給体のデータに基づいて、トランシーバ330が特定のトランスポンダ340をポーリングし、かつ選択するために、複数のトランスポンダ340を設けても良い。
【0025】再度、図3及び図4を参照する。マイクロプロセッサ345は、特定の供給体ロールに対してプリンタの較正(calibration)をカスタマイズするため、及び、トランスポンダ340に既に格納されている較正データを単に読み取るためにトランスポンダ340からトランシーバ330に供されたデータを利用する。例えば、マイクロプロセッサ345は、自動的に媒体スプール120のロットナンバー、ロールナンバー、及び、製造日を特定できる。また、マイクロプロセッサ345は、いかなる時も、媒体スプール120上に存在する供給物質125の量を特定する。さもなくば、この情報はプリンタ10に手動で入力しなくてはならないが、これにより、印刷コスト及び操作ミスが増加してしまう。しかしながら、ここでの記述から、上記データの使用方法は、プリンタ10の操作者にとって明白であり、また、操作者がプリンタ10へデータを手入力する必要がないため、操作者の生産性を向上するために"見えないところで"で自動的に実行される。また、トランシーバ330とマイクロプロセッサ345との間の通信用データリンクは、周知の"RS232"ポートリンク、もしくは、他のタイプのシリアル又はパラレル・コミュニケーション・リンクを用いる。
・・・(中略)・・・
【0027】上記説明より解るように、本発明の利点は、媒体リボン供給スプールをプリンタ内に装填する際の手動によるデータ入力をなくすことである。これは、媒体リボン供給スプールに接続されるトランスポンダに格納されたデータが、供給スプールの周りに巻きつけられた媒体リボンの特性だからである。このデータは、トランスポンダにより送信され、自動的にトランシーバにより読み取られる。」

セ 「【0036】本発明の更に別に利点は、プリンタが、供給スプールのタイプを検出する非接触無線トランシーバを含むことである。即ち、無線トランシーバは、供給スプールから離れており、接触していない。」

ここで、上記ケ、コの記載及び図2、3から、

着色媒体供給スプール120は、軸310の壁318の周りに巻きつけられた着色剤供給媒体となる媒体物質125の供給部を備える円柱形の軸310で構成され、また、媒体駆動機構150が、該スプール120に取り付けられ、3つの媒体駆動ローラ160を備えており、このローラを介して媒体物質125を計測しながら上方の媒体ナイフ部170へと供する

ことが理解でき、

その際、媒体物質125は、着色媒体供給スプール120の軸310の壁の周りに巻きつけられているのであるから、該媒体物質125を供するにあたり、巻きつけられている該軸310が回転して供している

ことが認められる。

また、上記コ、ス及び図3に記載されているマイクロプロセッサ345は、特定の供給体ロールに対してプリンタの較正をカスタマイズするため、及び、トランスポンダ340に既に格納されている較正データを単に読み取るためにトランスポンダ340からトランシーバ330に供されたデータを利用し、マイクロプロセッサ345は、いかなる時も、媒体スプール120上に存在する供給物質125の量を特定するのであるから、媒体物質125が供され、軸310が回転している時も含め、いかなる時もトランスポンダ340とトランシーバ330との間の符号化データに関する情報を送信することができることは明らかである。

そうすると、上記ケ、コ、ス、セの記載及び図2、3から、次の技術を認めることができる。

プリンタ10に装着される着色媒体供給スプール120において、
該着色媒体供給スプール120は、軸310の壁318の周りに巻き付けられた媒体物質125の供給部を備える円柱形の軸310で構成され、
着色剤を熱転写媒体20へ転写する際には、媒体物質125は、軸310が回転して供され、複数の着色剤供給シート140に切断されて真空作像ドラム110に搬送され、着色剤供給媒体となり、
軸310の壁318には、トランスポンダ340が埋め込まれ、該トランスポンダ340には媒体物質125を示す符号化データを格納するEEPROMを含み、トランシーバユニット330に非接触で該符号化データを送信し、
軸310が回転している時を含め、いかなる時も格納された符号化データに関する情報を送信することができる、
技術。

3 対比・判断
そこで、本願発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、
刊行物1記載の発明の「電子写真装置」「プロセスカートリッジ30」「感光体ドラム12、帯電チャージャ13、現像手段14、クリーニング手段16」「不揮発性メモリ36」は、
それぞれ、本願発明1の「印刷装置」「モジュール」「印刷に関係するハードウェア」「メモリ」に相当する。

そして、刊行物1記載の発明の「本体側送受信装置34」「光学的送受信装置」は、装置に対して交換可能なモジュールに関する情報を装置本体との間で非接触で送受信可能とする構成である点で、本願発明1の「ワイヤレス通信装置」「ワイヤレス・インターフェース」と共通する。

また、刊行物1記載の発明の「不揮発性メモリ36」は、「プロセスカートリッジ30自体の寿命及び特性情報並びにプロセスカートリッジに関する消耗品の交換回数情報を電気的情報として保持」し、「光学的送受信装置」により「電子写真装置の本体側送受信装置」とカートリッジ自体に関する「前記諸情報」を通信するのであるから、「不揮発性メモリ36」は「プロセスカートリッジ30」に永久的に関連づけられた構成であると認められる。

そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりと認められる。

[一致点]
「印刷装置に設置できるモジュールであって、
印刷に関係するハードウェアと、
前記モジュールに永久的に関連づけられたメモリと、
前記メモリを動作させ、当該モジュールによるワイヤレス通信装置との対話を可能にする、ワイヤレス・インタフェースと、
を備えていることを特徴とするモジュール。」

[相違点]
モジュールによるワイヤレス通信装置との対話を可能にする、ワイヤレス・インタフェースとして、
本願発明1では、「モジュール」の「前記ハードウェアの感光ドラムの内面に取り付けられ、該感光ドラムが回転しているときでも、当該モジュールによるワイヤレス通信装置との対話を可能にする」位置に「ワイヤレス・インターフェース」が設けられているのに対して、
刊行物1記載の発明では、感光ドラムの内面ではなく、「前記プロセスカートリッジ30の側板の内側で、本体側送受信装置と対向する位置に」、「光学的通信手段」が設けられている点。

相違点について検討する。

(相違点について)
刊行物2には、上記2(2)で認定した技術が記載されている。

そして、刊行物1記載の発明のプロセスカートリッジ30は、その構成要素として、画像形成のときに使用され、回転する感光体ドラム12を備えている。

また、刊行物1記載の発明と刊行物2に記載された技術はともに、印刷を行う際に使用され印刷装置に着脱されるモジュールに設けられたメモリが該モジュールに関する情報を有し、印刷装置本体との間で該情報に対するアクセスが非接触で行われる技術である点で共通する。

さらに、プロセスカートリッジを構成する感光ドラムを個別に交換可能とする技術は、周知技術である(例えば、特開平6-266191号公報(【0026】参照)、特開平7-181857号公報(【0026】参照))。

そうしてみると、印刷を行う際に使用され、印刷装置に着脱されるモジュールに関する情報の装置本体との間のアクセスを非接触で行うための構成として、刊行物1記載の発明における、プロセスカートリッジの側板の内側で、本体側送受信装置と対向する位置に、前記プロセスカートリッジ自体の寿命及び特性情報並びにプロセスカートリッジに関する消耗品の交換回数情報を電気的情報として保持する不揮発性メモリと、前記諸情報を電子写真装置の本体側送受信装置と通信するための発光部と受光部とを備えた光学的送受信装置を有するプリント基板で構成されるプロセスカートリッジ側送受信装置を備える構成に代えて、印刷を行う際に使用され、印刷装置に対して交換可能なモジュールの内側にアクセスを非接触で行うための構成を設ける技術である、刊行物2に記載された技術を採用し、ワイヤレス通信装置と対話を行うためのワイヤレス・インタフェースがハードウェアの個別に交換可能である感光ドラムの内側に取り付けられ、該感光ドラムが回転しているときでも、モジュールによるワイヤレス通信装置との対話を可能にする位置にワイヤレス・インターフェースを設けるようにすることは、当業者が容易になし得ることといわざるを得ない。

(本願発明1の効果について)
そして、全体として、本願発明1によってもたらされる効果も、刊行物1、2に記載の発明から当業者であれば予測し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

(まとめ)
よって、本願発明1は、刊行物1、2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(請求人の主張について)
請求人は、平成24年6月8日付け意見書で、

「【意見の内容】
・・・(中略)・・・
(2)刊行物1(特開平6-19244号公報)には、「光学的通信手段」を、「プロセスカートリッジ30の側板の内側で、本体側送受信装置34と対向する位置」に設けることが開示されております。プロセスカートリッジ30の内部には、感光体ドラム12が含まれておりますが、この感光体ドラム12、まして、その内面に、光学的通信手段を設けることにつきましては何ら開示も示唆もされておりません。
一方、刊行物2(特開2000-62273号公報)、特に、その図3、図4には、軸310に埋め込まれたトランスポンダ340が開示されております。この軸310は、感光体ドラムと同様に円筒形状を有するものでありますが、感光体ドラムとはその機能も働きも異なるものであります。即ち、軸310は、プリンタ10に装着され、その周囲に媒体物質125を巻きつけて使用されるものであります。この結果、刊行物2の軸310に埋め込まれたトランスポンダ310と、無線トランシーバユニット330とは、軸310の周囲に巻きつけられた媒体物質125を介して電磁界を送受信することとなり、このたえ、信号の送受信に障害が生ずる可能性も考えられるのであります。
刊行物2には、本願のモジュールや感光体ドラムに関する記載は存在しないことから、刊行物2に記載のトランスポンダ310を、刊行物1に開示されたプロセスカートリッジ30、即ち、本願のモジュールに相当する部材、に設けようといった発想が生まれることはなく、更に、この場合、このプロセスカートリッジ30内のどこに設けるかも問題になるのでありますから、これらの刊行物の記載から、本願発明のように、プロセスカートリッジ30の感光ドラム12、しかも、その内面に設けるといった構成が考え付くとは到底考えられないのであります。感光ドラムの回転部材にわざわざトランスポンダを設けようる等といった発想が生じることはないのであります。
(以下略)・・・」

と主張する。

しかし、上記(相違点について)で検討したように、刊行物1記載の発明に接した当業者が、印刷装置に着脱されるモジュールに関する情報の装置本体との間のアクセスを非接触で行うための構成として、刊行物2に記載された技術を採用し、本願発明1のようにすることは、当業者が容易になし得ることといわざるを得ない。

そして、請求人が主張する本願発明1の「通常の使用中、感光ドラム17が回転しているときでも、モジュールと対話できるであろう。」(本願明細書【0017】)という効果は、刊行物1記載の発明に対して、刊行物2の軸310の壁318にトランスポンダ340が埋め込まれている技術を採用することにより結果的に得られる効果に過ぎない。
そのため、本願発明1が奏する効果は、刊行物1、2に記載の発明が奏する効果の総和を超えるものではない。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-02 
結審通知日 2012-07-05 
審決日 2012-07-18 
出願番号 特願2001-183323(P2001-183323)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畑井 順一  
特許庁審判長 西村 仁志
特許庁審判官 住田 秀弘
立澤 正樹
発明の名称 ワイヤレス通信が可能な印刷装置用モジュール  
代理人 西島 孝喜  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 大塚 文昭  
代理人 箱田 篤  
代理人 市川 英彦  
代理人 中村 稔  

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