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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1267295
審判番号 不服2011-16702  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-03 
確定日 2012-12-06 
事件の表示 特願2006-345779「データ中継装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月10日出願公開、特開2008-160379〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本件出願は、平成18年12月22日の出願であって、原審において平成22年9月3日付け拒絶理由通知に対して同年11月5日付けで意見書と手続補正書が提出され、平成23年1月18日付け最後の拒絶理由通知に対して同年3月24日付けで意見書が提出されたが同年5月27日付けで拒絶査定がなされ、これを不服として同年8月3日付けで審判請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年11月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「複数のネットワークのそれぞれと通信可能に接続され、その複数のネットワーク間でやり取りされるべき通信フレームを中継するデータ中継装置において、
前記通信フレームが受信されてから経過した時間を通信フレームのそれぞれについて検出する経過時間検出手段と、
前記経過時間検出手段により検出された経過時間が予め定められた許容時間よりも大きいか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記経過時間が前記許容時間よりも大きいと判定された通信フレームの転送を禁止する遅延フレーム転送禁止手段とを備え、
前記許容時間は、中継すべき全ての前記通信フレームについて、それぞれ対応付けて定められていることを特徴とするデータ中継装置。」

2.引用発明
(1)引用発明1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-13472号公報(以下、「引用例1」という。)には、「ブリッジング機能を有するネットワーク接続装置における、Delay-Exceeded-Discard処理方式」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0002】
【従来の技術】一般に、ブリッジング機能を有するネットワーク接続装置では、アメリカ電気・電子技術者協会(IEEE)が定めている、IEEE std802.1Dをインプリメントしている。このIEEE std802.1Dは、「MediaAccess Control Bridge]に関する標準規格である。この規格の中には、ブリッジのパフォーマンスを確保するためのパラメータの1つとして、最大ブリッジ転送遅延(maximun bridge transit delay)があり、ブリッジング機能を有するネットワーク接続装置が、パケットを受信してから送信するまでの最大遅延時間を意味している。Delay-Exceeded-Discard処理とは、この最大ブリッジ転送遅延の時間間を超過したパケットを破棄する処理のことである。
【0003】また、Request for Comments(RFC)1493は、ブリッジに関する、Management Information Base(MIB)の標準的なものであり、このMIBにあるオブジェクトの1つに、「DelayExceededDiscards」がある。これは、Delay-Exceeded-Discard処理によって破棄されたパケットのカウンターである。
【0004】従来のDelay-Exceeded-Discard処理の方式では、パケット毎に受信時のタイムスタンプを取り、パケットの送信時にそのタイムスタンプと、送信時の時刻からネットワーク接続装置内で発生した遅延時間として算出し、この遅延時間(滞留時間)が、最大ブリッジ転送遅延の時間間を超過していた場合には、超過遅延として、そのパケットを破棄していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上に示した、Delay-Exceeded-Discard処理の方式では、ネットワーク接続装置が接続するセグメント上のトラフィック量の多少に関係なく、常に、受信したパケット毎に受信時のタイムスタンプを取り、受信したパケット毎に送信時にタイムスタンプからの経過時間を遅延時間(滞留時間)として算出し、この遅延時間に従ってパケットの破棄処理を行っていた。」(3頁3欄3?43行)

上記引用例1の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
a.上記引用例1の「ネットワーク接続装置」は、
段落【0005】の「ネットワーク接続装置が接続するセグメント上のトラフィック量の多少に関係なく、常に、受信したパケット毎に受信時のタイムスタンプを取り、受信したパケット毎に送信時にタイムスタンプからの経過時間を遅延時間(滞留時間)として算出し」の記載によれば、
a1.「複数のセグメントのそれぞれと通信可能に接続され、その複数のセグメント間でやり取りされるべきパケットを中継するネットワーク接続装置」であり、
a2.「前記パケットが受信されてから経過した時間をパケットのそれぞれについて算出する手段」を備えることは明らかである。
b.上記引用例1の「ネットワーク接続装置」は、
段落【0004】の「従来のDelay-Exceeded-Discard処理の方式では、パケット毎に受信時のタイムスタンプを取り、パケットの送信時にそのタイムスタンプと、送信時の時刻からネットワーク接続装置内で発生した遅延時間として算出し、この遅延時間(滞留時間)が、最大ブリッジ転送遅延の時間間を超過していた場合には、超過遅延として、そのパケットを破棄していた。」の記載によれば、
b1.「前記算出する手段により算出された経過時間が最大ブリッジ転送遅延の時間よりも大きいか否かを判定する手段」を備えることは明らかであり、
b2.「前記判定する手段により前記経過時間が前記最大ブリッジ転送遅延の時間よりも大きいと判定されたパケットを破棄する手段」を備えることも明らかである。
c.「最大ブリッジ転送遅延の時間」に関し、
段落【0002】の「一般に、ブリッジング機能を有するネットワーク接続装置では、アメリカ電気・電子技術者協会(IEEE)が定めている、IEEE std802.1Dをインプリメントしている。このIEEE std802.1Dは、「MediaAccess Control Bridge]に関する標準規格である。この規格の中には、ブリッジのパフォーマンスを確保するためのパラメータの1つとして、最大ブリッジ転送遅延(maximun bridge transit delay)があり、ブリッジング機能を有するネットワーク接続装置が、パケットを受信してから送信するまでの最大遅延時間を意味している。Delay-Exceeded-Discard処理とは、この最大ブリッジ転送遅延の時間間を超過したパケットを破棄する処理のことである。」の記載によれば、規格として定められているものであるから、
上記「最大ブリッジ転送遅延の時間」は、「中継すべき全てのパケットについて同一に定められている」といえる。

以上を総合すると、上記引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。

「複数のセグメントのそれぞれと通信可能に接続され、その複数のセグメント間でやり取りされるべきパケットを中継するネットワーク接続装置において、
前記パケットが受信されてから経過した時間をパケットのそれぞれについて算出する手段と、
前記算出する手段により算出された経過時間が最大ブリッジ転送遅延の時間よりも大きいか否かを判定する手段と、
前記判定する手段により前記経過時間が前記よりも大きいと判定されたパケットを破棄する手段とを備え、
前記最大ブリッジ転送遅延の時間は、中継すべき全てのパケットについて同一に定められているネットワーク中継装置。」

(2)引用発明2
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-186843号公報(以下、「引用例2」という。)には、「音声ゲートウェイ装置」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0013】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態の音声ゲートウェイ装置の機能構成を示すブロック図である。図1を参照すると、本実施形態の音声ゲートウェイ装置は、IPネットワーク監視機能11と、優先度設定機能12と、管理テーブル13とを含む。
【0014】
IPネットワーク監視機能11は、音声パケットを監視してパケット損失率及び音声パケット遅延時間を計測する音声パケット計測部111と、計測結果と判定基準値をもとに音声通信品質を決定する音声通信品質判定部112と、音声通信品質をもとにパケット優先度を決定するパケット優先度決定部113とを備えている。
【0015】
優先度設定機能12は、音声パケット及び呼制御パケットをIPネットワークへ送信時、監視対象テーブル131内優先度を参照し、IPヘッダ内TOSを設定する機能を備えて
いる。
【0016】
管理テーブル13は、監視対象の電話番号毎に音声通信種別、パケット損失率、遅延時間、音声品質、及び音声パケット優先度を記憶する監視対象テーブル131と、音声通信品質を判定するための判定基準値(優先呼用と一般呼用)を記憶するための判定基準値テーブル132とを備えている。
【0017】
次に、本実施形態の動作について図面を参照して詳細に説明する。音声ゲートウェイ装置は、音声通信を行う通信相手先毎の音声種別(優先呼、一般呼)をあらかじめ監視対象テーブル131に設定する。また音声ゲートウェイ装置は、あらかじめ、優先呼用の判定基準値と一般呼用の判定基準値を判定基準値テーブル132に設定する。
【0018】
音声パケット計測部111は、音声パケットを受信する毎に起動され、通信相手先毎に音声パケットの損失率、音声パケット遅延時間の平均を算出し、監視対象テーブル131に設定する。
【0019】
次に音声通信品質決定部112が起動され、監視対象テーブル131内の通信相手先毎の音声パケットの損失率及び音声パケット遅延時間と、判定基準値テーブルに設定されている基準値とを比較し、音声パケット損失率あるいは音声パケット遅延時間のどちらか一つが基準値を上回っている場合は、監視対象テーブル131内の音声通信品質を「不良」にする。
【0020】
音声パケット損失率あるいは音声パケット遅延時間のどちらも基準値を下回っている場合は、監視対象テーブル131内の音声通信品質を「良」にする。さらにパケット優先度決定部113が起動され、監視対象テーブル131内の音声通信品質が「良」の場合、監視対象テーブル131内の優先度を1つ下げる。逆に、監視対象テーブル131内の音声通信品質が「不良」の場合、監視対象テーブル131内の優先度を1つ上げる。
【0021】
次に音声パケット及び呼制御パケットをIPネットワークへ送信するとき、監視対象テーブル131を参照し、通信相手毎のパケット優先度を用いてTOS設定値を決定する。
【0022】
図2は、本実施形態の音声ゲートウェイ装置を用いて構築されているVoIPネットワークの構成を示すブロック図で、電話機23と電話機24は音声ゲートウェイ21、音声ゲートウェイ22を通して通話を行う。なお、本通話の音声通話種別は優先呼である。以下に、音声ゲートウェイ21に着目した動作の説明を行う。
【0023】
図4は音声ゲートウェイ21における判定基準値テーブルの構成を示すブロック図であり、あらかじめ優先呼、一般呼の音声パケット損失率、音声パケット遅延時間をそれぞれ設定する。なお、本実施形態では優先呼の音声パケット損失率を2%、音声パケット遅延時間を20ms、一般呼の音声パケット損失率を5%、音声パケット遅延時間を50msと設定するものとする。」(3頁37行?4頁41行)

上記引用例2の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
a.【図2】の記載及び「電話機23と電話機24は音声ゲートウェイ21、音声ゲートウェイ22を通して通話を行う。」(段落【0022】)の記載によれば、上記引用例2の「音声ゲートウェイ装置」は、電話機23、24が接続された電話ネットワークとIPネットワークとの間のゲートウェイ装置であるから、「複数のネットワークのそれぞれと通信可能に接続され、その複数のネットワーク間でやり取りされるべき音声を中継する音声ゲートウェイ装置」である。
b.「監視対象テーブル131内の通信相手先毎の音声パケットの損失率及び音声パケット遅延時間と、判定基準値テーブルに設定されている基準値とを比較し、音声パケット損失率あるいは音声パケット遅延時間のどちらか一つが基準値を上回っている場合は、監視対象テーブル131内の音声通信品質を「不良」にする。」(段落【0019】)の記載によれば、上記「判定基準値テーブルに設定されている」「音声パケット遅延時間」は、中継すべき音声による音声通信が遅延しているか否かを判定する基準時間であって、「遅延許容時間」といいうるものである。
c.【図4】および「音声通信品質を判定するための判定基準値(優先呼用と一般呼用)を記憶するための判定基準値テーブル132とを備えている。」(段落【0017】)の記載によれば、上記「遅延許容時間」である「音声パケット遅延時間」は、「優先呼」や「一般呼」のような「音声通信種別」に対応付けて定められているが、【図3】を参照すれば、該「音声通信種別」はさらに「通信相手先電話番号」に対応しているから、結局、上記「遅延許容時間」は、「中継すべき音声について、通信相手先に対応付けて定められている」といえる。

以上を総合すると、上記引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されている。

「複数のネットワークのそれぞれと通信可能に接続され、その複数のネットワーク間でやり取りされるべき音声を中継する音声ゲートウェイ装置において、遅延許容時間を、中継すべき音声について、通信相手先に対応付けて定めるようにした、音声ゲートウェイ装置。」

3.対比
本願発明と引用発明1とを対比するに、
a.引用発明1の「セグメント」は「ネットワーク接続装置」に接続されており、「ネットワークセグメント」を意味することは明らかであるから、
引用発明1の「セグメント」は、本願発明の「ネットワーク」に相当する。
b.引用発明1の「パケット」、「ネットワーク接続装置」は、それぞれ、本願発明の「通信フレーム」、「データ中継装置」に相当する。
c.引用発明1の「算出する手段」によって算出された「経過した時間」は、算出されると同時に検出されることは自明であって、上記「算出する手段」は「検出手段」ともいいうるから、
引用発明1の「前記パケットが受信されてから経過した時間をパケットのそれぞれについて算出する手段」は、
本願発明の「前記通信フレームが受信されてから経過した時間を通信フレームのそれぞれについて検出する経過時間検出手段」と実質的に相違がない。
d.引用発明1の「最大ブリッジ転送遅延の時間」は、許容される滞留時間であって明らかに本願発明の「許容時間」に含まれるから、上記c.における、「算出された」「経過時間」が「検出された」「経過時間」と実質的に相違しないとの検討も踏まえれば、
引用発明1の「前記算出する手段により算出された経過時間が最大ブリッジ転送遅延の時間よりも大きいか否かを判定する手段」は、
本願発明の「記経過時間検出手段により検出された経過時間が予め定められた許容時間よりも大きいか否かを判定する判定手段」に相当する。
e.引用発明1の「破棄する手段」によって破棄されたパケットが転送されないことは自明であって、上記「破棄する手段」は「転送禁止手段」ともいいうるから、
引用発明1の「前記判定する手段により前記経過時間が前記最大ブリッジ転送遅延の時間よりも大きいと判定されたパケットを破棄する手段」は、
本願発明の「前記判定手段により前記経過時間が前記許容時間よりも大きいと判定された通信フレームの転送を禁止する遅延フレーム転送禁止手段」に相当する。
f.上記d.で検討したように、引用発明1の「最大ブリッジ転送遅延の時間」は本願発明の「許容時間」に含まれるから、
引用発明1の「前記最大ブリッジ転送遅延の時間は、中継すべき全てのパケットについて同一に定められている」と、
本願発明の「前記許容時間は、中継すべき全ての前記通信フレームについて、それぞれ対応付けて定められている」とは、
「前記許容時間は、中継すべき全ての前記通信フレームについて、定められている」点で共通している。

以上を総合すると、結局、両者は以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「複数のネットワークのそれぞれと通信可能に接続され、その複数のネットワーク間でやり取りされるべき通信フレームを中継するデータ中継装置において、
前記通信フレームが受信されてから経過した時間を通信フレームのそれぞれについて検出する経過時間検出手段と、
前記経過時間検出手段により検出された経過時間が予め定められた許容時間よりも大きいか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記経過時間が前記許容時間よりも大きいと判定された通信フレームの転送を禁止する遅延フレーム転送禁止手段とを備え、
前記許容時間は、中継すべき全ての前記通信フレームについて、定められているデータ中継装置。」

(相違点)
「中継すべき全ての前記通信フレームについて、定められている」「許容時間」が、
本願発明では、「それぞれ対応付けて」定められているのに対し、
引用発明1では、「同一に」定められている点。

4.検討
上記相違点につき検討するに、まず、上記「2.引用発明」の項中の「(2)引用発明2」の項に記したように、上記引用例2には、
「複数のネットワークのそれぞれと通信可能に接続され、その複数のネットワーク間でやり取りされるべき音声を中継する音声ゲートウェイ装置において、遅延許容時間を、中継すべき音声について、通信相手先に対応付けて定めるようにした、音声ゲートウェイ装置。」
なる引用発明2が記載されている。
ここで、引用発明2の「音声ゲートウェイ装置」は、ネットワーク間でデータを中継する装置である点で、引用発明1の「ネットワーク中継装置」と共通しているから、引用発明2における「遅延許容時間」の定め方を、引用発明1に適用して、引用発明1の「許容時間」である「最大ブリッジ転送遅延の時間」を、中継するパケットの通信相手先に対応付けて定めるようにすることにより、「中継すべき全ての前記通信フレームについて、定められている」「許容時間」が、「それぞれ対応付けて」定められているよう変更することは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明が奏する効果も引用発明1,2から容易に予測出来る範囲内のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-03 
結審通知日 2012-10-09 
審決日 2012-10-23 
出願番号 特願2006-345779(P2006-345779)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大石 博見  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 新川 圭二
矢島 伸一
発明の名称 データ中継装置  
代理人 足立 勉  

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