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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A44C
管理番号 1268304
判定請求番号 判定2012-600032  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2013-02-22 
種別 判定 
判定請求日 2012-09-05 
確定日 2013-01-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第4046170号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「装身具用連結金具」は、特許第4046170号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨と手続の経緯

1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に示す「装身具用連結金具」は、特許第4046170号技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

2.手続の経緯
平成11年 5月11日 出願
平成19年11月30日 特許登録
平成24年 9月 5日 本件判定請求
平成24年11月 8日 判定請求答弁書


第2 本件特許発明

本件特許である特許第4046170号は、請求項1ないし請求項10を備えているが、判定請求人は、判定請求書において、本件特許発明の説明として特許第4046170号の請求項1に係る発明のみを挙げ、これのみとイ号図面及びその説明書に示す「装身具用連結金具」とを対比して、本件特許発明の技術的範囲に属するものと主張していることから、以下では、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)を対象として検討する。

本件特許発明は、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであって、その構成、目的及び効果は、以下のとおりである。

1.本件特許発明の構成
本件特許発明を分説すると、次のとおりである。
【請求項1】
(A)先端に先細状の頭部を形成し、該頭部の後方における周面には係合溝部を設け、後端には装身具との接続環部を備えた棒体からなるオス金具と、
(B)下面が開口された蓋体と、上面が開口された底体を、それぞれの両側壁部を軸支して前記蓋体と前記底体が開閉可能である中空箱型において、
(C)閉方向に付勢する先端をそれぞれ90度上方に折り曲げた略コの字状のコイルばねの両側部を支軸に巻装して配設すると共に、
(D)前記蓋体の長手方向の一端面には前記オス金具の挿入口を形成し、
(E)前記底体の長手方向の一端面には前記オス金具の係止凹部を形成し、
(F)かつ前記中空箱型の長手方向の逆端面には装身具との接続環部を備えたメス金具とから構成されることを特徴とする装身具用連結金具。

2.本件特許発明の目的及び作用効果
明細書の記載によれば、本件特許発明は、装着時における操作性が非常に容易な装身具用連結金具を提供することを目的とし、また、構造が簡単でその組み立ても容易であり、ひいてはコスト的にも低価格となる装身具用連結金具を提供することを目的とするものである(段落番号【0006】の記載を参照。)。

そして、本件特許発明は、「オス金具をメス金具に挿入するだけでネックレス等の環状装身具の連結ができ、又、メス金具の一端を押圧するだけで開放ができるため、操作性が非常に容易となる。又、構造が簡単なためコスト的にも低価格な装身具用連結金具を提供できる。」との効果を奏するものである。(段落番号【0055】の記載を参照。)。


第3 イ号物件

イ号物件は、判定請求書に添付された「イ号図面」及び「イ号説明書」に記載された「装身具用連結金具」である。


第4 当審の判断

1.イ号物件の特定について
(1)イ号図面には、装身具用連結金具を構成する以下の(ア)?(オ)の部品が、分解された状態で開示されている。

(ア)符号10で示される棒状の部材が、その一方は直径が細くされ先端部12が曲面とされ、他端には環状の部分16が設けられ、その端部近傍には直径が小さくされた段部14が形成されている構成。
(イ)符号30で示される蓋状の部材が、その側壁部30の両側部に穴36、38が形成されるとともに、長手方向に一端部には穴32が形成され、他端部にはリング状部材34が設けられている構成。
(ウ)符号40で示される蓋状の部材が、その側面に穴44を有する部分が形成され、長手方向の一端部の壁部に凹部42が形成される構成。
(エ)線材で構成される部材50が、両側部に一対のコイル状部分52、54が形成され、その両側のコイル状部分のそれぞれから、直線部が鋭角をなして2方向に延び、その両側の直線部がそれぞれ接続されて全体として環状の部材50を構成し、接続部の一方は、他の部分より径が太い部分60を有している構成。
(オ)頭部を有する一対のピン状の部材22、24。

(2)イ号説明書の記載事項について
イ号説明書の記載事項に照らして、上記イ号図面に開示された事項を見ると、以下の事項が認められる。

(カ)符号10で示される棒状の部材は、装身具用連結金具のオス金具10であり、直径が小さくされた段部14は係合溝部14、環状の部分16は、装身具との接続環部16であり、直径が細くされ先端が曲面とされた先端部12は、先細状の頭部12であること。
(キ)符号30で示される蓋状の部材は、下面が開口された蓋体30であり、符号40で示される蓋状の部材は、上面が開口された底体40であり、両者がそれぞれの両側側壁部を軸支して、蓋体30と底体40とが開閉可能である中空箱型にされること。
(ク)線材で構成される部材50はコイルばね50であり、一対のピン状の部材22、24は支軸22、24であり、コイルばね50の両側部52、54は支軸22、24に巻装されて配設され、蓋体30と底体40とを閉方向に付勢すること。
(ケ)蓋体30の一端部に形成された穴32は、オス金具10の挿入口32であること。
(コ)底体40の一端部の壁部に形成された凹部42はオス金具10の係止凹部42であること。
(サ)蓋体30に設けられたリング状の部材34は、装身具との接続環部34であること。
(シ)蓋体30と底体40とからなる中空箱型はメス金具を構成し、オス金具10の挿入口32とは長手方向の逆端面には装身具との接続環部34を備え、該メス金具とオス金具10とで装身具用連結金具を構成すること。

しかしながら、イ号説明書の記載事項と、イ号図面とは、以下の点で相違している。

(ス)イ号説明書には「閉方向に付勢する先端をそれぞれ90度上方に折り曲げた略コの字状のコイルばね(50)」と記載されているが、イ号図面には、上記「1.(1)(エ)」で述べたように、コイルばね(50)の折り曲げ部は90度ではなく、90度より小さい鋭角である。
(セ)イ号説明書には「略コの字状のコイルばね(50)」と記載されているが、イ号図面に開示されたコイルばね(50)は、コイル部分52、54から2方向に延びた直線部分のそれぞれが接続された環状に構成されており、略コの字状ではなく環状である。

(3)イ号物件の構成
以上から、イ号物件は次の構成を具備するものである。上記のイ号説明書の記載事項とイ号図面の開示事項とが相違する(ス)、(セ)の構成については、イ号図面に開示された構成をイ号物件の構成と認定する。

(a)先端に先細状の頭部12を形成し、該頭部の後方における周面には係合溝部14を設け、後端には装身具との接続環部16を備えた棒体からなるオス金具10と、
(b)下面が開口された蓋体30と、上面が開口された底体40を、それぞれの両側壁部を軸支して蓋体30と底体40が開閉可能である中空箱型において、
(c)閉方向に付勢する部分をそれぞれ鋭角に折り曲げた環状のコイルばね50の両側部52、54を支軸22、24に巻装して配設すると共に、
(d)蓋体30の長手方向の一端面にはオス金具10の挿入口32を形成し、
(e)底体40の長手方向の一端面にはオス金具10の係止凹部42を形成し、
(f)かつ中空箱型の長手方向の逆端面には装身具との接続環部34を備えたメス金具とから構成される装身具用連結金具。

2.本件特許発明とイ号物件との対比・判断
(1)構成要件A、B、D?Fについて
イ号物件の「先細状の頭部12」、「係合溝部14」、「接続環部16」、「オス金具10」、「下面が開口された蓋体30」、「上面が開口された底体40」、「オス金具10の挿入口32」、「オス金具10の係止凹部42」、「接続環部34」「メス金具」がそれぞれ本件特許発明の「先細状の頭部」、「係合溝部」、「接続環部」、「オス金具」、「下面が開口された蓋体」、「上面が開口された底体」、「オス金具の挿入口」、「オス金具の係止凹部」、「接続環部」「メス金具」に該当することは明らかである。
よって、イ号物件の構成a、b、d?fは構成要件A、B、D?Fを充足する。

(2)構成要件Cについて
イ号物件のコイルばね50は、上記「第4 1.(1)(エ)」で述べたように、全体として環状でありコの字状ではない。また、コイルばね50の閉方向に付勢する部分は、コイル部分52、54で折り曲げられているものの、その角度は鋭角であり、90度上方に折り曲げたものではない。
よって、イ号物件の構成cは構成要件Cを充足しない。

(3)したがって、イ号物件の構成cは、本件特許発明の構成要件Cを充足しないものであるから、イ号物件は、本件特許発明の構成を充足しない。

3.請求人の主張に対して
請求人は、判定請求書において、以下のように主張している。
(1)「コイルばね(50)は,先端部が90度かつ上方に折り曲げられた略コの字状に形成されている。すなわち,このコイルばね(50)は,同軸状に直列的に配された2つの単コイル(52,54)の各端部が,コの字状の連結部(56)及び先端がくの字状で略コの字状の連結部(58)でそれぞれ連結されることにより、全体として略コの字状に形成されている。」(判定請求書5頁16?21行)

(2)「この中空箱型内に配置された状態のコイルばね(50)において,コの字状の連結部(56)は,各単コイル(52,54)の端部(先端部)をそれぞれ,単コイル(52,54)の中心軸に対して90度,かつ,蓋体(30)に向かう方向(すなわち,上方)に折り曲げ,さらにその先端部分に円筒状部材(60)を取り付けることにより形成されている。」(判定請求書5頁25行?6頁2行)

上記(1)の主張について、イ号図面には、「コイルばね(50)は,同軸状に直列的に配された2つの単コイル(52,54)の各端部が,コの字状の連結部(56)及び先端がくの字状で略コの字状の連結部(58)でそれぞれ連結される」構成は開示されているが、コイルばね全体としては環状になっているものであり、イ号図面に開示されたコイルばねは、本件明細書の段落【0021】及び【図4】に記載されている「略コの字状のコイルばね67」のように、ばねの端部が開放されて全体としてコの字状に形成されているとはいえない。したがって、上記(1)の請求人の主張は理由がない。

上記(2)の主張について、イ号図面に開示されたコイルばねは、各単コイル(52,54)の端部(先端部)はそれぞれ,単コイル(52,54)の中心軸に対して90度となっているものの、その方向は、上方に曲げられてはいるが、その上方に向かう角度は鋭角であり、90度とはいえない。
本件特許においては、「先端をそれぞれ90度上方に折り曲げた」との発明特定事項が、「コイル部分で90度上方に折り曲げられる」ことを意味することは上述のとおりであり、先端部が単コイルの中心軸に対して90度となることと、上方に曲げられていることの両方を満たすことを意味するものではなく、上記(2)の請求人の主張は理由がない。

第5 まとめ

以上のとおりであるから、イ号物件は本件特許発明の技術的範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。


第6 付記

本件特許である特許第4046170号の他の請求項2?10に係る発明とイ号発明との対比についても、念のため、以下に検討する。

本件特許の請求項2、請求項3に係る発明は、上記で検討した本件特許の請求項1に係る発明と同様、「閉方向に付勢する先端をそれぞれ90度上方に折り曲げた略コの字状のコイルばね」を発明の構成を特定する事項として有するが、上記「第4 2.(2)」で検討したように、イ号物件は、その構成を充足せず、イ号物件の構成は、請求項2及び請求項3に係る発明の構成を充足していない。

請求項4?8に係る発明は、請求項4?8のいずれも請求項1?3のいずれかを引用しており、「閉方向に付勢する先端をそれぞれ90度上方に折り曲げた略コの字状のコイルばね」を発明の構成を特定する事項として有するが、上記「第4 2.(2)」で検討したように、イ号物件は、その構成を充足せず、イ号物件の構成は、請求項4?8に係る発明の構成を充足していない。

請求項9に係る発明は、「挿入口の内側における内部底面には前記オス金具の外径にほぼ一致する二枚の立て板を突設して案内部を形成し」及び「蓋体の内側に、一端面に前記オス金具の係止凹部を形成した係止レバー」を発明の構成を特定する事項として有するが、イ号物件はその構成を充足せず、イ号物件の構成は、請求項9に係る発明の構成を充足していない。

請求項10に係る発明は、「頭部の後方には鉤状の係合凹部が両側に形成され」及び「蓋体の長手方向の一端面には前記オス金具の挿入凹部を形成すると共に前記底体の長手方向の一端面には前記オス金具の係止凹部と該底体の底面略中央を上方に帯状に湾曲して支持部を形成し」を発明の構成を特定する事項として有するが、イ号物件はその構成を充足せず、イ号物件の構成は、請求項10に係る発明の構成を充足していない。

以上のとおりであるから、イ号物件は、本件特許の請求項2?10に係るいずれの発明の技術的範囲にも属しないものである。
 
別掲
 
判定日 2012-12-18 
出願番号 特願平11-130682
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (A44C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 裕之稲村 正義  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 松下 聡
高田 元樹
登録日 2007-11-30 
登録番号 特許第4046170号(P4046170)
発明の名称 装身具用連結金具  
代理人 伊丹 勝  
代理人 佐藤 雄哉  
代理人 西 和哉  
代理人 磯野 富彦  

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