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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1268715
審判番号 不服2011-25372  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-24 
確定日 2013-01-07 
事件の表示 特願2006-272355「部品実装装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年4月17日出願公開、特開2008-91733〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成18年10月3日の出願であって、平成23年8月9日付けで拒絶査定がされたところ、これに対して、平成23年11月24日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
そして、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成23年7月25日付け、及び平成23年11月24日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。なお、請求項2は、補正前(平成23年7月25日付けの手続補正により補正されたもの)の請求項4に対応する。
「【請求項2】
Y軸方向に移動し部品供給部から部品を保持し被実装部材上に実装する複数の実装ヘッドと、X軸方向に設けられた複数の第1の搬送手段と、これらの第1の搬送手段により移動可能に設けられた複数の第1の部品供給部と、X軸方向に設けられた複数の第2の搬送手段と、これらの第2の搬送手段のうちの一方の第2の搬送手段に設けられ、前記被実装部材を載置し前記第2の搬送手段によりX軸方向に搬送されるテーブルと、前記第2の搬送手段のうちの他方の第2の搬送手段に設けられ、前記被実装部材或いは部品供給部材を載置し前記他方の第2の搬送手段により搬送されるテーブルとを備えたことを特徴とする部品実装装置。」

2.原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物及びその記載事項
(1)刊行物1:特開2004-193442号公報

(刊行物1)
刊行物1には、「電子部品実装装置」に関して、図面(特に、図1?8を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。なお、読み易くするために、各段落の冒頭に空白を加入した。
(a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベアICチップなどの接続面を上向きにして供給される電子部品とチップ部品などの接続面を下向きにして供給される電子部品とを、1台の装置にて共に接続面を基板表面に対向させた状態で、基板に実装する電子部品実装装置に関するものである。」(第3頁第41?45行、段落【0001】参照)
(b)「【0035】
本実施形態の電子部品実装装置1は、ベアICチップなど、図2(a)に示すように、基板2に対する接続面3aを上向きにした状態で供給される上向き供給電子部品3(以下、単に電子部品3と記すことがある)と、容量素子や抵抗素子などのチップ部品や四周の少なくとも一部に接続リードが設けられたリード付き部品など、図2(b)に示すように、基板2に対する接続面4aを下向きにした状態で供給される下向き供給電子部品4(以下、単に電子部品4と記すことがある)とを、基板2に混載して実装するものである。
【0036】
電子部品実装装置1は、本体部5とその前後両側に配設される部品供給部6、7にて構成されている。各部品供給部6、7は本体部5に交換可能に結合されるユニットとして構成されている。
【0037】
前側の部品供給部6は、多数の電子部品3が配列して形成されるとともに個片にダイシングされた状態でエキスパンドシート上に支持されている半導体ウエハ8を複数枚収容した部品マガジン9と、所望の半導体ウエハ8を所定の供給高さ位置に位置決めするマガジンリフタ10にて構成されている。
【0038】
後側の部品供給部7は、多数の電子部品4を収容して成るテープ状部品集合体が装着された複数の部品供給カセット11を左右に移動可能な部品供給台12上にその移動方向に並列して搭載して成り、任意の部品供給カセット11の電子部品4を、図3に示すように、第2の部品供給位置Bに供給するように構成されている。
【0039】
本体部5の前部には、エキスパンド台13が左右方向のX方向に移動可能な供給テーブルとしてのX方向テーブル14上に上下シリンダ15にて上下移動可能に設置され、ウエハ引き出し手段(図示せず)にて部品供給部6の部品マガジン9から半導体ウエハ8をエキスパンド台13に導入するように構成され、エキスパンド台13にてそのエキスパンドシートを拡張させて各電子部品3を間隔をあけて分離させ、さらに所望の電子部品3を所定のX方向位置に位置決めするように構成されている。
【0040】
16は、エキスパンド台13上で所定のX方向位置に位置決めされた電子部品3を認識する認識カメラであり、図4に示すように、Y方向テーブル17にて前後方向に沿うY方向に移動可能に支持されている。Y方向テーブル17は、Y方向ガイド17aにてY方向に移動自在に支持された移動体17bを移動用モータ17cと送りねじ機構17dにて移動・位置決めするように構成され、その移動体17bに認識カメラ16が装着されている。この認識カメラ16にて、所定のX方向位置に位置決めされた電子部品3の内のY方向に任意の位置の電子部品3を認識するように構成されている。
【0041】
また、本体部5の前部から中間部には反転移送手段18が配設されている。この反転移送手段18は、図3に示すように、所定のX方向位置に位置決めされたエキスパンド台13上の半導体ウエハ8のY方向の大きさに対応する部品供給領域D内の任意の電子部品3を吸着してY方向後方に向けて移動し、第1の部品供給位置Aまで移載するとともに吸着した電子部品3を180度上向きに反転させるように構成されている。半導体ウエハ8の状態では、各電子部品3の接続面3aは上向きに形成されており、反転移送手段18にて各電子部品3の接続面3aを吸着した後上向きに180度旋回することによって、電子部品3の接続面3aが下向きとなり、その状態で第1の部品供給位置Aで実装手段26に受け渡すように構成されている。
【0042】
反転移送手段18の具体構成は、図5、図6に示すように、Y方向テーブル19にてY方向に移動可能に支持された移動台20上に、X方向位置調整機構21を配設し、このX方向位置調整機構21に上下移動機構22を介して反転機構23を取付け、さらにこの反転機構23にθ調整機構24を介して電子部品3を吸着保持する吸着ノズル25を装着して構成されている。
【0043】
Y方向テーブル19は、移動台20をY方向に移動自在に支持するY方向ガイド19aと、移動モータ19bと、送りねじ機構19cにて構成されている。X方向位置調整機構21は、移動台20にX方向に移動可能に支持された可動板21aと、モータ21bにて回転されるとともに可動板21aに係合するカム21cと、可動板21aをカム21cに向けて付勢するばね21dにて構成されている。上下移動機構22は、可動板21aに上下移動可能に支持された昇降部材(図示せず)と、昇降部材を昇降駆動する上下駆動カム22aと、それを回転する上下用モータ22bと、昇降部材をカム22aに向けて付勢するばね(図示せず)にて構成されている。反転機構23は、反転部材23aを反転用モータ23bにてプーリ・ベルト機構23cを介して180°往復回転するように構成されている。θ調整機構24は、θ調整用モータ24aにてプーリ・ベルト機構24bを介して反転部材23aに装着された吸着ノズル25をその軸芯まわりに回転させるように構成されている。
【0044】
実装手段26は、電子部品3を保持して基板2に実装する第1の実装ヘッド27と、電子部品4を保持して基板2に実装する第2の実装ヘッド28と、これら第1の実装ヘッド27と第2の実装ヘッド28をY方向に移動可能に支持するY方向ガイド29にて構成されている。Y方向ガイド29には、固定の送りねじ軸29aが配設されている。
【0045】
第1の実装ヘッド27は、電子部品3を吸着保持する吸着ノズル27aとその昇降手段27bとボイスコイルモータなどの加圧手段27cと電子部品3を加熱する加熱手段27dと、送りねじ軸29aに螺合するナット部材を中空モータにて回転駆動するように構成された駆動手段27eを備えている。また、必要に応じてこの第1の実装ヘッド27に封止材を塗布するディスペンサ(図示せず)が配設されている。また、必要に応じて後述の第2の実装ヘッド28に設けたθ調整機構30と同様のθ調整機構(図示せず)が設けられる。
【0046】
第2の実装ヘッド28は、図7に示すように、チップ部品から成る電子部品4を吸着保持する複数の吸着ノズル28aが放射状にかつ水平軸28b回りに回動可能に支持軸28cの下端部に設けられ、その支持軸28cが上端部を上方に突出させた状態で上下移動可能に支持されるとともに、支持軸28cを押圧して下降移動させるように押圧手段28dが設けられ、さらにモータ30aとプーリベルト機構30bにて支持軸28cを軸芯回りに回転させることで、電子部品4の実装姿勢を調整するθ調整機構30が設けられている。また、送りねじ軸29aに螺合するナット部材を中空モータにて回転駆動するように構成された駆動手段28e(図1参照)を備えている。
【0047】
本体部5の後部における実装ヘッド27、28のY方向の移動経路の下部に、基板2をX方向に移動させ、基板2における電子部品を実装すべき位置を実装ヘッド27、28によるX方向の実装位置に位置決めする基板位置決め手段としてのX方向テーブル31が配設されている。X方向テーブル31はX方向のガイドレール31aに沿って移動自在に支持されるとともに移動モータ31bと送りねじ機構31cにて移動・位置決めするように構成されている。このX方向テーブル31上に基板2を載置固定する支持台32が昇降可能に設けられている。
【0048】
こうしてX方向テーブル31にて位置決めされた基板2のY方向幅に対応する実装範囲C内の所定の実装位置に、Y方向ガイド29にて移動可能に支持された第1の実装ヘッド27及び第2の実装ヘッド28を位置決めすることで、所定の電子部品3、4が基板2の所定の実装位置に実装するように構成されている。
【0049】
また、第1及び第2の実装ヘッド27、28と支持台32との間に、上側で実装ヘッド27、28に保持された電子部品3、4を認識し、下側で基板2の電子部品を実装すべき位置の両方を認識できるように構成された同時認識手段33が配設されている。この同時認識手段33は、図8に示すように、XYテーブル34によって、Y方向の実装範囲C内の任意の位置に位置決め可能でかつ実装ヘッド27、28による実装位置と実装位置からX方向に退避した位置との間で移動可能に支持されている。34aはY軸移動モータ、34bはX軸移動モータである。
【0050】
なお、同時認識手段33は、実装位置に位置決めされた状態でプリズム等で光路を切り換えて順次電子部品3、4と基板2の実装位置を認識するように構成され、字義通りに完全に同時に認識するのではない。勿論、字義通り同時に認識するようにしても良いが、構成が複雑になったり、コスト高になったりして好ましくない場合が多い。
【0051】
X方向テーブル31のX方向一側(図では右側)には、基板2を支持台32上に搬入する搬入部35が、X方向テーブル31のX方向他側に、支持台32上から基板2を搬出する搬出部36が配設されている。支持台32の前後両側には搬入部35、搬出部36の一対のレールに接続可能でかつ昇降可能な部分レール37が設けられ、基板2をこの部分レール37上に受けた後、支持台32上に載置固定するように構成されている。
【0052】
次に、以上の構成における基板2に対する電子部品3、4の実装動作を説明する。搬入部35にて供給された基板2は、X方向テーブル31に設けられた部分レール37上に受け渡された後、部分レール37が下降することで支持台32上に載置固定される。その後、X方向テーブル31にて基板2における電子部品3、4の実装位置のX方向位置が、第1の実装ヘッド27又は第2の実装ヘッド28のX方向位置に一致するように位置決めされる。
【0053】
一方、部品供給部6にて供給され、エキスパンド台13上に導入された半導体ウエハ8は、エキスパンド台13でエキスパンドシートが拡大されて各電子部品3が分離された後、X方向テーブル14が作動されて実装すべき電子部品3が反転移送手段18の吸着ノズル25の移動経路の直下に位置するように位置決めされる。また、Y方向テーブル17が作動されて認識カメラ16が実装すべき電子部品3の直上に位置決めされ、電子部品3の適否とその位置が高精度に認識され、その認識結果によってX方向テーブル14の位置補正が成されるとともに、反転移送手段18における吸着ノズル25の位置決めすべき位置と電子部品3のθ補正量が求められる。次いで、反転移送手段18のY方向テーブル19が作動され、吸着ノズル25が実装すべき電子部品3の位置に位置決めされ、吸着ノズル25にてその電子部品3が吸着保持されて持ち上げられ、その後第1の部品供給位置Aに向けてY方向に移動させるとともに上下が反転されて、接続面3aを下向きにして第1の部品供給位置Aに供給される。
【0054】
その時には、実装手段26の第1の実装ヘッド27が第1の部品供給位置Aに移動してきており、第1の実装ヘッド27にて電子部品3が保持された後、駆動手段27eにてY方向ガイド29に沿って駆動されて第1の実装ヘッド27が基板2における実装位置のY方向位置に位置決めされる。
【0055】
それと同時に、XYテーブル34が作動されて同時認識手段33も基板2の実装位置に位置決めされ、その状態で基板2の実装位置に設けられている位置マークが認識されるとともに、第1の実装ヘッド27に保持されている電子部品3が認識され、所定の位置決め精度が確保されるように駆動手段27e及びX方向テーブル31による位置補正が成され、基板2の実装位置に電子部品3の位置が高精度に位置決めされる。
【0056】
その後、第1の実装ヘッド27の吸着ノズル27aが昇降手段27bにて下降されるとともにボイスコイルモータなどの加圧手段27cにて加圧されて、電子部品3が実装される。また、必要に応じて加熱手段27dにて電子部品3が加熱され、加熱加圧によって電子部品3の電極と基板2の電極の接合が行われる。また、基板2の実装位置に予めディスペンサ(図示せず)にて封止材を塗布しておくと、実装と同時に加熱手段27dにて封止材も加熱硬化されて封止までを含めた実装が完了される。
【0057】
また、部品供給部7では部品供給台12が作動して基板2に実装すべき電子部品4を収容した部品供給カセット11が第2の部品供給位置Bに対向する位置に位置決めされ、この第2の部品供給位置Bに電子部品4が供給されており、第2の実装ヘッッド28にてこの電子部品4が保持されてY方向に移動し、上記と同様に基板2の所定の実装位置に実装される。その際に、部品供給位置Bで複数の吸着ノズル28aにてチップ部品から成る複数の電子部品4を一度に保持した後、第2の実装ヘッド28が基板2上の実装位置に移動し、基板2上のそれぞれの位置に所定の電子部品4を選択して実装することで、第2の実装ヘッド28の一往復工程にて複数の電子部品4が実装される。
【0058】
以上の第1の実装ヘッド27と第2の実装ヘッド28による実装動作を適宜に組み合わせて基板2に対する実装動作を実行することにより、所要数の電子部品3、4の実装を短い実装タクトタイムで基板2に実装することができる。基板2に対する実装が完了すると、基板2は搬出部36にて次工程に向けて搬出され、次の基板2が搬入部35にて搬入され、支持台32上に設置される。
【0059】
以上のように本実施形態によれば、基板位置決め手段としてのX方向テーブル31にて基板2をX方向に位置決めし、本体部5の前側において、部品供給部6からエキスパンド台13上に上向き供給電子部品3を半導体ウエハ8の形態で供給し、半導体ウエハ8をX方向テーブル14にてX方向に位置決めし、反転移送手段18にて所望の電子部品3を吸着保持し、反転して第1の部品供給位置Aに供給し、本体部5の後側において、部品供給部7から下向き供給電子部品4を第2の部品供給位置Bに供給し、実装手段26の第1の実装ヘッド27と第2の実装ヘッド28にて、それぞれ第1と第2の部品供給位置A、Bで電子部品3、4を保持してY方向に移動・位置決めすることで、基板2の所定の実装位置に所定の電子部品3、4を実装することができる。従って、ベアICチップなどの上向き供給電子部品3とチップ部品などの下向き供給電子部品4を、1台の装置にて基板2に接続面3a、4aを基板2の表面に対向させた状態で混載して実装することができ、かつ第1及び第2の実装ヘッド27、28を1方向にのみ直線移動させて位置決めすれば良いので高精度の実装を高速にて実現することができ、さらに第1の実装ヘッド27と第2の実装ヘッド28を独立して各別に移動駆動することによって一方の実装ヘッド27又は28にて実装動作中に他方の実装ヘッド28又は27にてその部品供給位置A、Bから電子部品3、4を保持して実装動作直前までの動作を完了しておくことができ、一層の高速実装を実現することができる。
【0060】
また、基板位置決め手段としてのX方向テーブル31のX方向の一側に搬入部35、他側に搬出部36を配設し、基板2を搬入から搬出まで1方向にのみ移動させるようにしているので、コンパクトに構成できるとともに構成が簡単で安価に構成することができる。
【0061】
また、ベアICチップなどの下向き供給電子部品3を、半導体ウエハ8の状態やトレイに収容した状態で供給テーブルとしてのX方向テーブル14上に供給すると、X方向テーブル14にてX方向に位置決めされ、反転移送手段18にてY方向の位置が選択されて任意の電子部品3を供給することができ、それぞれ1軸方向の位置決めによって所望の電子部品3を供給することができ、電子部品3の供給を容易かつ低コストにて行うことができる。
【0062】
また、同時認識手段33を実装位置に位置決めした状態で、第1の実装ヘッド27や第2の実装ヘッド28に保持された電子部品3、4と基板2の実装位置の両方を認識するようにしているので、その認識結果によって補正を行うことで高い実装精度を確保することができる。
【0063】
また、第1と第2の実装ヘッド27、28が、共通の固定の送りねじ軸29aと各別の中空モータを有する駆動手段27e、28eを備えているので、送りねじ軸29aを共用することでコンパクトに構成できるとともに精度を確保しながら安価に構成できかつ各実装ヘッド27、28を中空モータにてそれぞれ移動駆動することができる。
【0064】
また、第1の実装ヘッド27に加熱手段27dを備えているので、電子部品3の実装に先立って基板2の実装位置に、異方導電性の樹脂シートや樹脂若しくは非導電性の樹脂シートや樹脂などの接合材を配置することで、電子部品3の実装時にその樹脂シートや樹脂材料に圧力と熱を加えることによって、電子部品3と基板2の接合及び封止までの実装工程を完了することができる。
【0065】
また、第1の実装ヘッド27に加熱手段27dと封止材を塗布するディスペンサ27eを備えていると、電子部品3、4の実装に先立って実装位置に封止材を塗布し、電子部品3の実装時に加熱することで封止材を加熱硬化させて封止までの実装工程を完了することができる。
【0066】
また、第2の実装ヘッド28により、複数の吸着ノズル28aにてそれぞれチップ部品から成る電子部品4を保持し、任意の電子部品4を選択的に実装するようにしているので、第2の実装ヘッド28を第2の部品供給位置Bに移動させた時に、一度に複数の電子部品4を吸着保持することで、実装点数が比較的多く、また実装タクトの短いチップ部品の実装を効率的に行うことができ、全体として実装効率を向上することができる。」(第8頁第6行?第12頁第33行、段落【0035】?【0066】参照)
(c)「【0075】
また、上記実施形態の説明では、部品供給部6において、図12(a)に示すように、複数枚の半導体ウエハ8を収容された部品マガジン9を搭載してその半導体ウエハ8を供給するように構成した例を説明したが、図12(b)に示すようなサイズの小さい半導体ウエハ8aを収容した部品マガジン9aを搭載してその半導体ウエハ8aを供給するようにしても良く、また図12(c)に示すように、多数の電子部品3を配列して収容した1又は複数のトレイ43を保持したトレイプレート44を複数枚収容保持した部品マガジン9bを搭載してそのトレイプレート44を供給するようにしても良く、また図12(d)に示すように、多数の電子部品3を配列して収容した大型のトレイ45を直接供給するように構成してもよい。
【0076】
さらに、図13に示すように、部品供給部6を、多数の電子部品3を収容して成るテープ状部品集合体が装着された複数の部品供給カセット46や、段積みされた多数のトレイ47を順次供給するトレイフィーダ48を、X方向移動台49上に搭載した構成とし、この部品供給部6から直接反転移送手段18に電子部品3を供給するようにすることもできる。」(第13頁第35?50行、段落【0075】及び【0076】参照)
(d)図1及び3から、部品供給台12はX軸方向に移動可能に設けられていることが看取できる。
刊行物1には、「後側の部品供給部7は、多数の電子部品4を収容して成るテープ状部品集合体が装着された複数の部品供給カセット11を左右に移動可能な部品供給台12上にその移動方向に並列して搭載して成り、任意の部品供給カセット11の電子部品4を、図3に示すように、第2の部品供給位置Bに供給するように構成されている。」(第8頁第23?26行、段落【0038】、上記摘記事項(b)参照)、及び「部品供給部7では部品供給台12が作動して基板2に実装すべき電子部品4を収容した部品供給カセット11が第2の部品供給位置Bに対向する位置に位置決めされ」(第11頁第14及び15行、段落【0057】、上記摘記事項(b)参照)と記載されていることからみて、部品供給台12を左右に移動可能とする手段(以下、「部品供給台12移動手段」という。)を備えていることは技術的に自明の事項である。また、図1及び3の記載から、部品供給台12移動手段はX軸方向に移動可能に設けられていることが看取できる。
したがって、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
【引用発明】
Y軸方向に移動し前側の部品供給部6及び後側の部品供給部7から部品を保持し基板2上に実装する第1の実装ヘッド27及び第2の実装ヘッド28と、X軸方向に設けられたX方向テーブル14と、前記X方向テーブル14により移動可能に設けられた前側の部品供給部6と、X軸方向に設けられたX方向テーブル31及び部品供給台12移動手段と、前記X方向テーブル31に設けられ、前記基板2を載置し前記X方向テーブル31によりX軸方向に搬送される支持台32と、前記部品供給台12移動手段に設けられ、部品供給カセット11を載置し前記部品供給台12移動手段により移動される部品供給台12とを備えた電子部品実装装置1。

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能からみて、引用発明の「前側の部品供給部6及び後側の部品供給部7」は本願発明の「部品供給部」に相当し、以下同様に、「基板2」は「被実装部材」に、「第1の実装ヘッド27及び第2の実装ヘッド28」は「複数の実装ヘッド」に、「X方向テーブル14」は「第1の搬送手段」に、「前側の部品供給部6」は「第1の部品供給部」に、「X方向テーブル31及び部品供給台12移動手段」は「複数の第2の搬送手段」に、「X方向テーブル31」は「第2の搬送手段のうちの一方の第2の搬送手段」又は「(一方の)第2の搬送手段」に、「支持台32」は「テーブル」に、「部品供給台12移動手段」は「第2の搬送手段のうちの他方の第2の搬送手段」又は「他方の第2の搬送手段」に、「部品供給カセット11」は「部品供給部材」に、「移動」は「搬送」に、「部品供給台12」は「テーブル」に、「電子部品実装装置1」は「部品実装装置」に、それぞれ相当する。
また、本願発明の「被実装部材或いは部品供給部材」は選択的記載であり、「被実装部材」或いは「部品供給部材」のいずれか一方の構成を具備していれば本願発明の発明特定事項を充足していることに鑑みれば、両者は下記の一致点、及び相違点を有する。
<一致点>
Y軸方向に移動し部品供給部から部品を保持し被実装部材上に実装する複数の実装ヘッドと、X軸方向に設けられた第1の搬送手段と、前記第1の搬送手段により移動可能に設けられた第1の部品供給部と、X軸方向に設けられた複数の第2の搬送手段と、これらの第2の搬送手段のうちの一方の第2の搬送手段に設けられ、前記被実装部材を載置し前記第2の搬送手段によりX軸方向に搬送されるテーブルと、前記第2の搬送手段のうちの他方の第2の搬送手段に設けられ、前記被実装部材或いは部品供給部材を載置し前記他方の第2の搬送手段により搬送されるテーブルとを備えた部品実装装置。
(相違点)
本願発明は、X軸方向に設けられた「複数の」第1の搬送手段と、「これらの」第1の搬送手段により移動可能に設けられた「複数の」第1の部品供給部を具備しているのに対し、引用発明は、X軸方向に設けられたX方向テーブル14と、X方向テーブルにより移動可能に設けられた前側の部品供給部6を具備するものの、いずれも「複数」ではない点。
そこで、上記相違点について検討をする。
(相違点について)
部品実装装置において、部品供給部を複数とし、複数の搬送手段により移動可能とすることは、従来周知の技術手段(例えば、刊行物1には、「図13に示すように、部品供給部6を、多数の電子部品3を収容して成るテープ状部品集合体が装着された複数の部品供給カセット46や、段積みされた多数のトレイ47を順次供給するトレイフィーダ48を、X方向移動台49上に搭載した構成とし、この部品供給部6から直接反転移送手段18に電子部品3を供給するようにすることもできる。」(第13頁第46?50行、段落【0076】、上記摘記事項(c)参照)にすぎない。
してみれば、引用発明のX方向テーブル14及び前側の部品供給部6に、従来周知の技術手段を適用して、X方向テーブル14及び前側の部品供給部6を複数とし、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せない。
本願発明が奏する効果についてみても、引用発明、及び従来周知の技術手段が奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、当審における審尋に対する平成24年3月26日付けの回答書において、「引用文献1(注:本審決の「刊行物1」に対応する。)からは少なくとも本願発明2(注:本審決の「本願発明」に対応する。)が奏します『第1の部品供給部から供給される部品(例えばウェハー)以外の第2の搬送手段により搬送される部品(例えばトレイに載置された部品)も容易に追加して供給することができ、このため、実装する部品種の増加に容易に対応することができ、部品種が増えたときにも部品実装装置が1台で基板への実装運転を完結することができます。』という作用効果を到底期待することができません。」(「ハ)」項を参照)と主張している。
しかしながら、本願の特許請求の範囲の請求項2には、第1の部品供給部から供給される部品と「他方の第2の搬送手段」により搬送される部品とが、異なる部品種の部品であることは記載されていないことから、審判請求人の主張は特許請求の範囲の請求項2の記載に基づかない主張である。
仮に、本願発明が、審判請求人が主張するようなものであるとしても、刊行物1には、「本実施形態の電子部品実装装置1は、ベアICチップなど、図2(a)に示すように、基板2に対する接続面3aを上向きにした状態で供給される上向き供給電子部品3(以下、単に電子部品3と記すことがある)と、容量素子や抵抗素子などのチップ部品や四周の少なくとも一部に接続リードが設けられたリード付き部品など、図2(b)に示すように、基板2に対する接続面4aを下向きにした状態で供給される下向き供給電子部品4(以下、単に電子部品4と記すことがある)とを、基板2に混載して実装するものである。」(第8頁第7?12行、段落【0035】、上記摘記事項(b)参照)、及び「ベアICチップなどの上向き供給電子部品3とチップ部品などの下向き供給電子部品4を、1台の装置にて基板2に接続面3a、4aを基板2の表面に対向させた状態で混載して実装することができ」(第11頁第37?39行、段落【0059】、上記摘記事項(b)参照)等と記載されており、刊行物1には、1台の装置にて供給される部品を異なる部品種の部品とすることが記載又は示唆されていることから、引用発明において、前側の部品供給部6(第1の部品供給部)から供給される部品と部品供給台12移動手段(他方の第2の搬送手段)により搬送される部品とを、異なる部品種の部品とすることは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せない。
そして、上記(相違点について)において述べたように、本願発明は、刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段から当業者が容易に想到し得たものであるところ、審判請求人が主張する本願発明が奏する作用効果は、従前知られていた構成が奏する作用効果を併せたものにすぎず、本願発明の構成を備えることによって、本願発明が、従前知られていた構成が奏する作用効果を併せたものとは異なる、相乗的で予想外の作用効果を奏するものとは認められないので、審判請求人の主張は採用することができない。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項2に係る発明(本願発明)は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の請求項1に係る発明について検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-21 
結審通知日 2012-08-22 
審決日 2012-11-20 
出願番号 特願2006-272355(P2006-272355)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長清 吉範  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 常盤 務
所村 陽一
発明の名称 部品実装装置  
代理人 相澤 清隆  

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