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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B24B |
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管理番号 | 1268995 |
審判番号 | 不服2012-2612 |
総通号数 | 159 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-02-09 |
確定日 | 2013-01-17 |
事件の表示 | 特願2008- 99919「パネル研磨装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月27日出願公開、特開2008-284678〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯と本件発明 本願は平成20年4月8日(先の出願に基づく優先権主張、同19年4月16日)の出願であって、同23年9月21日付拒絶理由通知に対して同23年11月22日に意見書と手続補正書が提出されたが、同23年12月7日付で拒絶査定がなされたものである。これに対し、平成24年2月9日に該査定の取消しを求めて本件審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、その後、当審において、同24年4月16日付審尋に対して同24年6月12日に回答書が提出され、さらに同24年7月31日付拒絶理由通知に対して同24年10月2日に意見書と手続補正書が提出されている。 本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成24年10月2日付手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項によって特定されるとおりのものと認めるところ、請求項1には次のとおりの発明が記載されている。 「パネルを連続的に水平搬送可能なパネル搬送機構と、該パネルの表面及び裏面の両面をパネルを境にして上下に配置された一対の研磨テープで挟み込み、該パネルの両面を上下に配置された該一対の研磨テープにより同時に研磨またはクリーニングする上下一対の研磨機構とが備えられ、上記一対の各研磨機構は、各研磨テープをパネルの搬送方向と交差する方向に間欠的又は連続的に移送可能なテープ移送機構と、上下一対の各研磨テープの移送経路途中を該パネルの表面及び裏面の両面に同時に押し付けて挟み込む押圧面が形成された上下一対のパッド部材をもつテープ押圧機構と、各テープ移送機構と上記テープ押圧機構との間に生ずる上記研磨テープの弛みを取り除くための弛み取り機構とからなり、該一対の各研磨機構における該テープ移送機構と該テープ押圧機構とは相互に分離独立した構造に構成され、上記パネルが通過する開口通路部を境にして上下位置に水平往復台をそれぞれ独立して水平往復運動自在に配置し、該それぞれの水平往復台に該一対の上下の各パッド部材の該パネル側に形成された各押圧面をもつ上記テープ押圧機構をそれぞれ配設し、該各テープ押圧機構が配設された該それぞれの水平往復台を該研磨テープの移送方向としての上記パネルの搬送方向と交差する方向に互いに逆向きに水平往復運動させる異方向往復作動機構を設け、該異方向往復作動機構は、往復動作用モータを共通の駆動源として、上記各テープ押圧機構を互いに180度の位相差をもって水平往復運動させる一対のクランク機構を備えてなることを特徴とするパネル研磨装置。」(以下、「本件発明」という。) 2.当審の拒絶理由の概要 当審が平成24年7月31日付で通知した拒絶理由は、概略、本願の請求項1ないし4に係る発明が、本願出願前に頒布された以下の刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 刊行物1: 特開2001-62696号公報 刊行物2: 特開2004-322305号公報 刊行物3: 特開昭60-151838号公報 3.刊行物に記載された発明または事項 3.1 刊行物1 a.(特許請求の範囲、請求項5,6) 「【請求項5】平板の両面を研掃するための研掃装置であって、(1)平板の表側と裏側とに、それぞれ、対向して配列した各硬度が70以下の少なくとも一対のプレスローラ、(2)平板を前進させながらこれら対向して配列したプレスローラの間を通過させる手段、(3)これらプレスローラの各々を介して前記研掃テープを平板の前進方向と逆方向に走行させるための手段、(4)これら一対のプレスローラの各々を介して研掃テープを平板の表裏両側から挟むようにして平板の両面のそれぞれに押し付けるための手段、及び(5)平板の両面に洗浄液を供給するための手段、から成り、平板を前進させながら、この平板の両面に前記洗浄液を供給し、前記一対のプレスローラを介してこの平板を表裏両側から挟むようにこの平板の両面に前記研掃テープを押し付けるとともにこれら研掃テープを平板の前進方向と逆方向に走行させることによって、平板の両面が研掃される、研掃装置。 【請求項6】前記平板の片側の面に押し付けた研掃テープをこの平板の前進方向と逆方向に走行させながらこの平板の前進方向と垂直な横方向に往復移動させるための手段、をさらに含む請求項5の研掃装置。」 b.(発明の詳細な説明、段落1) 「【0001】 【発明の属する分野】本発明は、ガラス、等の平板の表面を研掃して、平板に付着した異物や汚れ及び平板上の突起を除去するための方法及び装置に関し、特に、液晶表示器用の液晶カラーフィルター基板、液晶パネル基板、等のように高度の平坦性及び清浄性が表裏両面に要求される平板を研掃するための方法及び装置に関する。」 c.(同、段落18?26) 「【0018】 【発明の実施の形態】<研掃装置> 本発明の研掃装置は、図1及び図3(a)及び(b)に示すように、平板Pを矢印Tの方向に送るための搬送システム10、及びこの搬送システム10により送られる平板Pの両面を研掃するための研掃ヘッド40、50をそれぞれ有する上下ユニット20、30、から構成される。 【0019】搬送システム10は、水平に並置した複数の搬送ローラ11、電動モータ、等によりこれら搬送ローラ11を回転させるための駆動機構14、及び搬送ローラ11によって送られる平板Pを上から押さえるための補助ローラ12、から構成される。各搬送ローラ11には、滑りどめ用のゴム製のリング13が取り付けられる。搬送ローラ11上に載せた平板Pは、搬送ローラ11の回転により、矢印Tの方向に送られる。補助ローラ12は、プレスローラ42、52の間に平板Pが挟まれて研掃されるときに、平板Pが横方向にズレたり上下方向に傾かないように、平板Pを押さえつけるためのものである。 【0020】上ユニット20は、図1及び図2(a)に示すように、研掃テープSの送出ローラ22及び巻取ローラ23を収容したケース21、及び平板Pの表面を研掃するための研掃ヘッド40、から構成される。 【0021】研掃テープSを送り出し、巻き取るための送出ローラ22及び巻取ローラ23は、それぞれ、ケース21の側面に固定した電動モータM1、M2によって駆動される(図2(a))。 【0022】研掃ヘッド40は、左右側面、及びこれら側面のそれぞれの上部を連結する左右方向に長い上面、から構成される正面略コ字状のフレーム41を有し、このフレーム41には、左右方向に長いプレスローラ42が、フレーム41の左右側面に、軸棒43を介して回転可能に取り付けられる(図2(a))。 【0023】この軸棒43の符号44で示す一端部は、断面多角形状であり、軸棒43の一端部44と同形状の開口を有する軸受け28内に矢印Hの方向に移動可能に挿入される。 【0024】軸受け28にはプーリー26が固定され、このプーリー26はケース21に固定した電動モータM4に連結したプーリー25とベルト27を介して連結されていおり、電動モータM4を駆動すると、プーリー25、26とベルト27を介して軸受け28が回転し、軸受け28の開口内に挿入された軸棒43が回転する。 【0025】電動モータM1、M2、M4によって、研掃テープSは、ケース21内の送出ローラ22からケース21の底面に設けた開口(図示せず)を通過し、研掃ヘッド40のプレスローラ42を介してケース21の底面に設けた開口(図示せず)を通過し、ケース21内の巻取ローラ23へ送られる(図1の矢印tで示す方向)。 【0026】プレスローラ42を介して走行する研掃テープSの速さやその引張具合は、これら電動モータM1、M2、M4の出力を調節することによって適宜に調節される。」 d.(同、段落28?32) 「【0028】フレーム41の上面には、図2(b)に示すような左右方向に真っ直ぐに貫通する断面I字状の凹部を形成した二つの嵌合部材45が固定される。これら嵌合部材45は、ケース21の底面に固定した図2(b)に示すような断面I字状の左右方向に長いレール24に貫挿され、これにより、研掃ヘッド40が、ケース21に関して矢印Hで示す方向(すなわち、図1に示す平板Pを送る矢印Tで示す方向と垂直な横方向)に移動可能に、ケース21に取り付けられる。 【0029】また、フレーム41は、ケース21に固定した電動モータM3により駆動される既知のピストン・クランク機構46に連結され、このピストン・クランク機構46を作動させることにより、研掃ヘッド40がケース21に関して矢印Hで示す方向に往復移動される。 【0030】研掃ヘッド40のプレスローラ42は、上述したように、フレーム41の左右側面に軸棒43を介して回転可能に取り付けられる。この軸棒43の左右両側には、図2(a)に示すように、フレーム41が上記のピストン・クランク機構46の駆動により矢印Hで示す方向に往復移動したとき、このフレーム41とプレスローラ42とが一体的に矢印Hで示す左右の方向に移動するように、リング47が固定されている。ここで、電動モータM3、M4を駆動すると、研掃ヘッド40が矢印Hで示す方向に往復移動し、軸棒43が回転しながら軸受け28の開口内を矢印Hの方向に移動する。 【0031】よって、上記した各電動モータM1?4を同時に駆動することにより、プレスローラ42を介して研掃テープSを平板Pの前進方向(矢印T)と逆方向(矢印t)に走行させながら、研掃テープSを往復移動(矢印H)できる。 【0032】下ユニット30は、上ユニット20と同様に、研掃テープSの送出ローラ32及び巻取ローラ33を収容したケース31、及びこのケース31に固定した研掃ヘッド50、から構成される。下ユニット30の研掃ヘッド50は、ケース31に固定されているので、上ユニット20の研掃ヘッド40のように、研掃ヘッド40を横方向に往復移動させるための構成(ピストン・クランク機構46、軸受け28、等)を有さず、この構成を除けば、下ユニット30は、上記の上ユニット20と上下対称の構成である。」 e.(同、段落41?45) 「【0041】予めプレスローラ42、52の間の距離を調節し、研掃テープSが平板Pの両面に所定の圧力で押し付けられるようにする。そして、電動モータM1、M2、M4を駆動して研掃テープSを所定の速度で矢印tの方向に走行させ、搬送システム10の駆動機構14を駆動する。 【0042】平板Pを搬送ローラ11上に載せ、矢印Tの方向に前進させる。平板Pを前進させながら、プレスローラ42、52の前方に配置したノズル(図示せず)から平板Pの両面に洗浄液を供給する。 【0043】そのまま平板Pを前進させながら、矢印tの方向に走行する研掃テープSをプレスローラ42、52を介して挟み込む。このとき、平板Pには、その前進を妨げるように研掃テープSが走行するが、平板Pは、補助ローラ12によって搬送ローラ11に押し付けられているので、そのまま前進し、平板Pが横にズレたり上下に傾くことなく、プレスローラ42、52の間を通過する。 【0044】ここで、各プレスローラ42、52の孔から洗浄液を吹き出し、研掃テープSに織布テープを使用することにより、研掃中に平板Pから除去した異物や汚れ及び突起をより確実に速やかに平板Pから排除できる。 【0045】また、平板Pがプレスローラ42、52の間を通過するとき、ピストン・クランク機構46(図2(a))を作動し、研掃ヘッド45を矢印Hの方向に往復移動させてもよい。研掃ヘッド45の往復移動速度は、電動モータM3の出力を調節して行える。」 上記を、技術常識を考慮しつつ本件発明に記載に沿って整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。 「平板Pを連続的に水平搬送可能な搬送システム10と、該平板Pの表面及び裏面の両面を平板Pを境にして上下に配置された一対の研掃テープSで挟み込み、該平板Pの両面を上下に配置された該一対の研掃テープSにより同時に研掃する上下一対のユニット20,30とが備えられ、上記一対の各ユニット20,30は、各研掃テープSを平板Pの搬送方向と逆の方向に連続的に移送可能な送出ローラ22,32、巻取ローラ23,33及び電動モータM1、M2と、上下一対の各研掃テープSの移送経路途中を該平板Pの表面及び裏面の両面に同時に押し付けて挟み込む上下一対のプレスローラ42,52をもつ研掃ヘッド40,50とからなり、該一対の各ユニット20,30のうち上のユニット20における該送出ローラ22、巻取ローラ23及び電動モータM1、M2と該研掃ヘッド40とは相互に分離独立した構造に構成され、上記平板Pが通過する開口通路部を境にして上のユニット20の研掃ヘッド40を水平往復運動自在に配置し、該研掃ヘッド40を上記平板Pの搬送方向と交差する方向に水平往復運動させるピストン・クランク機構46を設け、該ピストン・クランク機構46は、電動モータM3を駆動源として、上記研掃ヘッド40を水平往復運動させるクランク機構を備えてなる、平板研掃装置。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。) 3.2 刊行物2 a.(発明の詳細な説明、段落1) 「【0001】 本発明は、例えば有機EL用ITO膜基板、ICウェハー、液晶用ガラス基板等の基板表面をポリシングして基板表面を平坦化し洗浄する基板表面平坦化・洗浄装置に関するものである。」 b.(同、段落68?73) 「【0068】 実施例2のポリシングヘッドPは、固定板14に一対のリール12を設けると共に接離移動用の駆動装置13(エアシリンダー)を設け、この駆動装置13により基体9としてのポリシングプレート9を支承する支承体21を駆動することでポリシングプレート9を接離移動させるように構成し、前記一方のリール12からラッピングフィルム2(ラッピングテープ2)を巻き出して他方のリール12へ巻き取るように構成してラッピングフィルム2を下方に張設し、ポリシング面4を形成している。尚、実施例1と同一構成部分には同一符号を付した。 【0069】 従って、磨耗したら巻き取って行き、またリール12毎交換できるため交換も簡単である。 【0070】 また、前記ポリシングプレート9にクッション材10を支承当接し、このクッション材10にラッピングフィルム2が張設されるように構成し、ラッピングフィルム2で形成したポリシング面4を基板1に押圧面接した際、このクッション材10により支承されてポリシングを行なうことから、基板1に凹凸やうねりがあっても均一にポリシングできることになる。 【0071】 また、実施例2の前記支承体21は、基部21aと、この基部21aに取り付けられるアーム部21bと、アーム部21bの先端部により支承されポリシングプレート9を支承する支承部21cとから成り、実施例2においては適宜な弾性部材によりアーム部21bが(支承部21cを介して)ポリシングプレート9を常に下方に付勢してラッピングフィルム2を張設するように構成している。従って、基板1に凹凸やうねりがあっても前記適宜な弾性部材の伸縮により良好にポリシングすることができ、この点からも良好にポリシングを行える構成である。尚、前記適宜な弾性部材はアーム部21bに設けてこのアーム部21bが伸縮動作するように構成としても良いし、基部21aに設けてこの弾性部材の伸縮により前記アーム部21bが上下動するように構成しても良い。 【0072】 また、実施例2においては、ポリシングヘッドPを基板1に対して相対的に揺動させる揺動機構として、この基体9を往復移動させてラッピングフィルム2(ポリシング面4)を長さ方向に往復移動させる往復運動機構(図示省略)を設けている。 【0073】 また、この基体9に巻き回したラッピングフィルム2の張設度合いを調整する調整機構22(ガイドローラ)を一対のリール12とクッション材10の長さ方向両端部との間に夫々ラッピングフィルム2を介して設け、この調整機構22にラッピングフィルム2が支持された状態でこの調整機構22同志が接離移動することで、ラッピングフィルム2の張設度合いを調整して極めて良好なポリシングが行えるように構成している。具体的には一対のガイドローラ間にラッピングフィルム2を挾持した状態で、この一対のガイドローラ同志を接離移動させることでラッピングフィルム2の張設度合いを調整する。尚、図中符号23は固定ローラである。」 c.(同、段落85,86) 「【0085】 また、ポリシングヘッドPは基板1の搬送方向に対して直交状態に設けると共に、これに沿って高圧ジェット洗浄部6も直交状態に設ける。 【0086】 即ち、帯状のポリシング面4を有するポリシングヘッドPを基板1の搬送方向に対して直交状態にして面接し、ポリシングを行なうように構成している。」 d.(図1、図2) ポリシングプレート9が、ポリシングヘッドPのリール12を支持する固定板14に対し、クランク機構よりなる往復運動機構15によって、基板1の搬送方向に交差する方向に往復運動可能であることが理解される。 上記において、「調整機構22」がリール12とポリシングプレートとの間に生じるラッピングフィルム2の弛みを取り除くことは当業者にとって自明であり、また、ポリシングプレート9は固定板14に対して往復運動するため、ポリシングプレート9と固定板14に支持されたリール12とが相互に分離独立した構造であることも自明である。 また、上記bに示す実施例2において「図示省略」とされている往復運動機構として、上記dに示す実施例1の往復運動機構と同じ構造のものが採用されていることは、当業者が容易に理解し得る。 そこで、技術常識を勘案しつつ上記を整理すると、刊行物2には以下の事項が記載されていると認められる。 「基板1の表面をラッピングフィルム2によりポリシングする基板表面平坦化・洗浄装置において、ポリシングヘッドPは、ラッピングフィルム2を基板1の搬送方向と交差する方向に間欠的又は連続的に移送可能な一対のリール12と、ラッピングフィルム2の移送経路途中を該基板1の表面に押し付ける押圧面が形成されたクッション材10をもつポリシングプレート9と、リール12とポリシングプレート9との間に生ずる上記ラッピングフィルム2の弛みを取り除くための調整機構22とからなり、該ポリシングヘッドPにおけるリール12とポリシングプレート9とは相互に分離独立した構造に構成され、ポリシングプレート9がラッピングフィルム2の移送方向としての基板1パネルの搬送方向と交差する方向に往復運動させる往復作動機構を設ける点。」「以下、「刊行物2記載の事項」という。) 3.3 刊行物3 a.(第1ページ右下欄第2?3行) 「本発明は磁気ディスク、磁気シート等の表面研磨方法に関するものであり、」 b.(第2ページ左下欄第10行?右下欄第6行) 「5及び6はウエブ状磁性フィルムを挟持するごとく研磨テープ7を弾接させる研磨用弾性ロールである。7は研磨テープ、8は研磨テープの供給側ロール、9はその巻取側ロールであり、10はそのパスローラである。二点鎖線で示した11及び12は弾性ロール及びパスローラを所定に配設保持した上面側及び下面側研磨機構部であり、13は下面側研磨機構部の弾性圧接用の圧縮バネである。なお、上面側研磨機構部11(上面側の弾性ロール、研磨テープ、研磨テープ供給側及び巻取側ロール、パスローラ)及び下面側研磨機構部12(下面側の弾性ロール、研磨テープ、研磨テープ供給側及び巻取側ロール、パスローラ)はそれぞれ一体化されており、ウエブ状磁性フィルムの走行方向(矢印走行方向)に対して直角方向への揺動機能(矢印揺動方向)を備えている。」 c.(第3ページ左上欄第9?17行) 「すなわちウエブ状磁性フィルム1の両面には研磨テープ7が弾性ロール5,6及び圧縮バネ13の力により、ウエブ状磁性フィルム1を挟持するごとく弾性圧接され、かつこの状態においてウエブ状磁性フィルムの走行方向と直角方向に揺動をうけることにより、研磨テープ7とウエブ状磁性フィルム1の間に研磨作用が発生する。なお上面側及び下面側の研磨機構部の揺動方向はそれぞれ逆になっている。」 上記を整理すると、刊行物3には以下の事項が記載されていると認められる。 「研磨テープ7によるウエブ状被研磨体の上下両面の研磨において、上下の各研磨テープ7を被研磨体の搬送方向と直角方向に互いに逆向きに水平往復運動させること。」(以下、「刊行物3記載の事項」という。) 4.対比 本件発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、以下のとおりである。 刊行物1には、摘記事項bに「研掃」について、「平板に付着した異物や汚れ及び平板上の突起を除去する」との記載があることから、「研掃」が「研磨またはクリーニング」を意味することは明らかである。 そうすると、後者の「平板P」、「搬送システム10」、「研掃テープS」、「ユニット20,30」、「研掃ヘッド40,50」、「電動モータM3」及び「平板研掃装置」が、前者の「パネル」、「パネル搬送機構」、「研磨テープ」、「研磨機構」、「テープ押圧機構」、「往復動作用モータ」及び「パネル研磨装置」にそれぞれ相当することは明白である。 後者の「送出ローラ22,32、巻取ローラ23,33及び電動モータM1、M2」は、研磨テープをパネルの搬送方向と異なる方向に連続的に移送可能である「テープ移送機構」である限りにおいて、前者の「テープ移送機構」と共通し、後者の「ピストン・クランク機構46」は、テープ押圧機構をパネルの搬送方向と交差する方向に水平往復運動させる「往復作動機構」である限りにおいて、前者の「異方向往復作動機構」と共通する。 また、後者の「上のユニット20の研掃ヘッド40」と、前者の「テープ押圧機構」とは、ともにパネルの搬送方向に交差する方向に水平往復運動自在に配置されるものである。 そうしてみると、本件発明と刊行物1記載の発明とは、以下の点において一致し、また相違すると認められる。 <一致点> 「パネルを連続的に水平搬送可能なパネル搬送機構と、該パネルの表面及び裏面の両面をパネルを境にして上下に配置された一対の研磨テープで挟み込み、該パネルの両面を上下に配置された該一対の研磨テープにより同時に研磨またはクリーニングする上下一対の研磨機構とが備えられ、上記一対の各研磨機構は、各研磨テープをパネルの搬送方向と異なる方向に連続的に移送可能なテープ移送機構と、上下一対の各研磨テープの移送経路途中を該パネルの表面及び裏面の両面に同時に押し付けて挟み込む上下一対のテープ押圧機構とからなり、該一対の各研磨機構のうち少なくとも一方の研磨機構における該テープ移送機構と該テープ押圧機構とは相互に分離独立した構造に構成され、該少なくとも一方のテープ押圧機構はパネルの搬送方向に交差する方向に水平往復動自在に配置され、該少なくとも一方のテープ押圧機構を上記パネルの搬送方向と交差する方向に水平往復運動させる往復作動機構を設け、該往復作動機構は、往復動作用モータを駆動源として、上記少なくとも一方のテープ押圧機構を水平往復運動させるクランク機構を備えてなる、パネル研磨装置。」である点。 <相違点1> テープ移送機構は、前者では研磨テープをパネルの搬送方向と交差する方向に移送可能であるのに対し、後者では研磨テープをパネルの搬送方向と逆方向に移送する点。 <相違点2> テープ押圧機構は、前者ではパネルの両面に同時に押し付けて挟み込む押圧面が形成された上下一対のパッド部材をもつのに対し、後者ではパネルの両面に同時に押し付けて挟み込む上下一対のプレスローラをもつ点。 <相違点3> 各研磨機構は、前者ではテープ移送機構とテープ押圧機構との間に生ずる研磨テープの弛みを取り除くための弛み取り機構をもつのに対し、後者では弛み取り機構をもたない点。 <相違点4> 前者では一対の各研磨機構におけるテープ移送機構とテープ押圧機構とが相互に分離独立した構造に構成され、パネルが通過する開口通路部を境にして上下位置に水平往復台をそれぞれ独立して水平往復運動自在に配置し、該それぞれの水平往復台にテープ押圧機構をそれぞれ配設するのに対し、後者では上側の研磨機構のみテープ移送機構とテープ押圧機構とが相互に分離独立した構造に構成され、水平往復台がない点。 <相違点5> 往復作動機構は、前者では各テープ押圧機構が配設された各水平往復台を研磨テープの移送方向としてのパネルの搬送方向と交差する方向に互いに逆向きに水平往復運動させる異方向往復作動機構であって、往復動作用モータを共通の駆動源として、各テープ押圧機構を互いに180度の位相差をもって水平往復運動させるのに対し、後者では一方のテープ押圧機構を研磨テープの移送方向とは異なり、パネルの搬送方向と交差する方向に水平往復運動させるものであって、往復動作用モータを駆動源として、一方のテープ押圧機構を水平往復運動させる点。 5.当審の判断 以下、上記各相違点について検討する。 5.1 <相違点1>について 刊行物2記載の事項において、「基板1」、「ラッピングフィルム2」、「ポリシングヘッドP」、及び「リール12」が、「パネル」、「研磨テープ」、「研磨機構」、及び「テープ移送機構」にそれぞれ相当することは明白であるから、刊行物2記載の事項の「基板表面平坦化・洗浄装置」は、パネルの表面を研磨する装置である。 したがって、刊行物2には「パネル研磨装置において、研磨装置に、研磨テープをパネルの搬送方向と交差する方向に移送可能なテープ移送機構を設けること」が記載されているということができ、同じくパネル研磨装置である刊行物1記載の発明において、テープ移送機構を、パネルの搬送方向と逆方向に移送するものに代えて、刊行物2記載の事項のように、パネルの搬送方向に交差する方向に移送するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得る。 5.2 <相違点2>について 刊行物2記載の事項において、「ポリシングプレート12」が「押圧機構」に相当し、「クッション材10」がパッド部材であることは明白であるから、刊行物2には、「パネル研磨装置において、研磨装置に、パネルの表面に押し付ける押圧面が形成されたパッド部材をもつテープ押圧機構を設けること」が記載されているということができる。 そして、同じくパネル研磨装置である刊行物1記載の発明において、テープ押圧機構の上下一対のプレスローラに代えて、刊行物2記載の事項のように、パネルの両面に同時に押し付けて挟み込む押圧面が形成された上下一対のパッドを採用することは、当業者が容易に想到し得る。 5.3 <相違点3>について パネル研磨装置において、研磨機構のテープ移送機構とテープ押圧機構との間に生じる研磨テープの弛みを取り除くための弛み取り機構を設けることは、刊行物2に記載されており、5.1及び5.2同様、刊行物1記載の発明においてもテープ移送機構とテープ押圧との間に弛み取り機構を設けることは当業者が容易に想到し得る。 5.4 <相違点4>について 刊行物1記載の発明ではパネルの上側に位置するテープ押圧機構のみをパネルの搬送方向に交差する方向に水平往復運動させるが、パネルの表裏両面を同様に研磨する目的で、パネルの上下両側のテープ押圧機構をともにパネルの搬送方向に交差する方向に水平往復運動自在とすること、そしてそのために上下の各研磨機構におけるテープ移送機構とテープ押圧機構とをともに相互に分離独立した構造に構成することは、当業者にとっては設計上の選択にすぎない。 また、水平往復台を水平往復動自在に配置し、水平往復台にテープ押圧機構を配設することは、従来より周知慣用の機構を採用してテープ押圧機構を水平往復運動自在とすることにほかならず、刊行物1記載の発明における水平往復運動自在の往復台と比較しても、格別の作用効果の差を生じるものではない。 5.5 <相違点5>について 上下の各研磨テープを被研磨体の搬送方向と直角方向に互いに逆向きに水平往復運動させることは、刊行物3に記載されている。 上下の各研磨テープを被研磨体の搬送方向と直角方向に互いに逆向きに水平往復運動させるための往復作動機構として、往復動作用モータを共通の駆動源として、各テープ押圧機構を互いに180度の位相差をもって水平往復運動させる異方向往復作動機構を採用して、各テープ押圧機構が配設された各水平往復台を研磨テープの移送方向としてのパネルの搬送方向と交差する方向に互いに逆向きに水平往復運動させることは、従来より周知かつ慣用のクランクやロッド等の機械要素を組み合わせて当業者が適宜設計し得る程度のものにすぎない。 5.6 本件発明の作用効果について 本件発明の作用効果にも、刊行物1記載の発明、刊行物2及び3記載の事項及び従来周知の技術事項に基づいて通常に予測される範囲を超える格別のものを見出すことはできない。 したがって、本件発明は刊行物1記載の発明、刊行物2及び3記載の事項及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は刊行物1記載の発明、刊行物2及び3記載の事項及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができないものであるから、本願の請求項2及び3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきである。 よって、結論のとおり審決する。 . |
審理終結日 | 2012-11-08 |
結審通知日 | 2012-11-13 |
審決日 | 2012-12-04 |
出願番号 | 特願2008-99919(P2008-99919) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B24B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 成彦 |
特許庁審判長 |
豊原 邦雄 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 菅澤 洋二 |
発明の名称 | パネル研磨装置 |
代理人 | 黒田 勇治 |