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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60C |
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管理番号 | 1269814 |
審判番号 | 不服2012-9461 |
総通号数 | 160 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-05-22 |
確定日 | 2013-02-07 |
事件の表示 | 特願2005-354881「タイヤ製造用筒状フィルムの巻上げ体」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月21日出願公開、特開2007-153268〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成17年12月8日の出願であって、平成24年2月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成24年5月22日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「熱可塑性樹脂を主成分としかつ該熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物を含む熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムが筒状に作製されかつ偏平に折り畳まれ、ロール状に巻取られてなる巻取り体であって、単位毎の筒状フィルムが連接部で連接されていて、かつ、該連接部が、貫通部Sと未貫通部Lを実質的に直線状に交互に連続して存在させたミシン目状のスリット部で構成されていて、かつ、該筒状フィルムの幅Wに対する前記貫通部Sの割合が50%以上95%以下であり、一個の未貫通部長さLが、1mm≦L≦10mmであり、前記ミシン目状の連接部で切り離すことにより、該ミシン目状部が単位毎の筒状フィルムの両筒端の開口縁をなして、各単位毎の筒状フィルムを形成することを特徴とするタイヤ製造用筒状フィルムの巻き上げ体。」 第3 引用文献 1.原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-103760号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 熱可塑性樹脂を連続相とし、ゴム組成物を分散相とした熱可塑性エラストマー組成物から構成される空気透過防止層の片面に、オキシラン酸素濃度が1.0?3.0重量%になるようにエポキシ変性されたスチレン-ブタジエン系ブロック共重合体を50重量部以上含む熱可塑性エラストマー合計100重量部、重量平均分子量Mwが1000以下、軟化点が60?120℃のテルペン樹脂(A)及び芳香族変性テルペン樹脂(B)を、(A):(B)=100:0?50:50(重量比)の割合で合計30?200重量部、内部離型剤0.1?3重量部並びに1分半減期温度が160℃以上である有機過酸化物0.1?2重量部を含み、自着タックが5N未満で、未加硫ジエン系ゴムに対するタックが5N以上である粘接着剤組成物から構成される、厚さ100μm以下の粘接着剤層を配置した空気透過防止層/粘接着剤層の積層体。 【請求項2】 熱可塑性樹脂を連続相とし、ゴム組成物を分散相とした熱可塑性エラストマー組成物の前記空気透過防止層を内側、前記粘接着剤組成物を外側にして円筒状に一体成型したものである請求項1に記載の空気透過防止層/粘接着剤層の積層体。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の積層体を用いた空気入りタイヤ。」 「【0024】 熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドする場合の特定の熱可塑性樹脂(A)とエラストマー成分(B)との組成比は、特に限定はなく、フィルムの厚さ、耐空気透過性、柔軟性のバランスで適宜決めればよいが、好ましい範囲は重量比(A)/(B)で10/90?90/10、更に好ましくは15/85?90/10である。」 「【0030】 2)円筒成型作業性試験 表Iに示す粘接着剤組成物と表IIに示す熱可塑性エラストマー組成物とを、図1に示すインフレーション成型装置にて粘接着層を外側とする2層のチューブ状に押出し、直径355mmにブロー成型後ピンチロールで折りたたみ、そのまま巻取って、以下の基準で評価した。結果は表Iに示す。 ・・・(中略)・・・ 【0031】 3)タイヤ成型性試験 図1のインフレーション成型装置によって作成した直径355mmの熱可塑性エラストマー/粘接着剤フィルムを、幅360mmに切断した後タイヤ成型ドラムに挿入し、カーカスを巻き付けビードを打ち込んでターンナップし、次いでサイド、ベルト、キャップを貼り付けてグリーンタイヤを成型した。成型後円筒フィムルとカーカスの密着具合を以下の基準で目視で観察した。」 これらの記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物を含む熱可塑性エラストマー組成物をインフレーション成型装置にてチューブ状に押出し、ブロー成型後ピンチロールで折りたたみ、そのまま巻取った巻取り体であって、 所定の幅に切断して円筒フィルムを形成し、タイヤ製造に用いる巻取り体。」 2.原査定の拒絶の理由に引用された特開昭60-159041号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「第2図は、本発明の袋状物の製法に便利な装置の1例を示す要図である。ロール状原反1’から巻き出された筒状フイルム1をカツター2により片端をカツトし開口部を形成した後送り出しロール3,4によりベルトコンベアー上に導き、シール部形成部材の下まで移動させて停止する。次に、二本のシールバーとその間に位置する本発明の破線状切断刃とが一体となつた構造を有するシール部形成部材を下降させ、フイルムに二本のシール線と、その間に破線状切断部を形成する。」(3頁左上欄3行?12行) 「第3図(a)(b)(c)は本発明の方法に用いる刃の構造の一例を示す要図で(A)は刃の平面図、(B)は刃の断面図、(C)はフイルムに形成された破線状切断部を示している。第3図を用いて本発明で用いる刃の構造を説明すると、切込み部と平坦部とが交互に配された構造で、切込み部の巾Wが0.5?2mm切込み部の深さDが2mm以上、平坦部の巾LがWの10倍?20倍であることが必要である。その理由は、切込み部と平坦部はそれぞれ非切断部と切断部を形成する役目をもつており切込み部の巾が0.5mm未満では非切断部の形成が不安定で、切れやすく連続送行ができないし、2.0mmを越えると、非切断部が切れにくく切り離しが困難となるとともに切り離した後の端部が外観を損い見晴えを悪くする。更に、連続送行時にシール線の伸びが起きやすくなるためである。・・・(中略)・・・一方、平坦部は、その長さが切込み部巾の10倍未満では、破線状切断部に占める非切断部の割合が多い為、切り離しが困難となり、切り離し後の見晴えも悪くなる。又、20倍を越えると連続送行時に加わる引張応力で非切断部が切れやすくなるとともに、ロール状に巻く工程でも非切断部の切れや、それに伴う巾ずれが起きてしまう。好ましくは15倍以下が良い。」(3頁右上欄10行?同頁左下欄15行) 第4 対比 本願発明の「熱可塑性樹脂を主成分とし」に関し、本願明細書(【0043】)に熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド比率が記載されているところ、引用文献1(【0024】)にも同じブレンド比率が記載されていることから、引用発明も「熱可塑性樹脂を主成分とし」ている点で、本願発明と共通しているといえる。 引用発明の「熱可塑性エラストマー組成物をインフレーション成型装置にてチューブ状に押出し、ブロー成型後ピンチロールで折りたたみ、そのまま巻取った巻取り体」は、本願発明の「熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムが筒状に作製されかつ偏平に折り畳まれ、ロール状に巻取られてなる巻取り体」に相当する。 引用発明の「所定の幅に切断して円筒フィルムを形成」することは、少なくとも「切断することにより単位毎の筒状フィルムを形成する」点で、本願発明と共通する。 引用発明の「タイヤ製造に用いる巻取り体」は、本願発明の「タイヤ製造用筒状フィルムの巻き上げ体」に相当する。 よって、本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「熱可塑性樹脂を主成分としかつ該熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物を含む熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムが筒状に作製されかつ偏平に折り畳まれ、ロール状に巻取られてなる巻取り体であって、 切断することにより単位毎の筒状フィルムを形成する タイヤ製造用筒状フィルムの巻き上げ体。」 [相違点] 「切断することにより単位毎の筒状フィルムを形成する」ことについて、本願発明は、「単位毎の筒状フィルムが連接部で連接されていて、かつ、該連接部が、貫通部Sと未貫通部Lを実質的に直線状に交互に連続して存在させたミシン目状のスリット部で構成されていて、かつ、該筒状フィルムの幅Wに対する前記貫通部Sの割合が50%以上95%以下であり、一個の未貫通部長さLが、1mm≦L≦10mmであり、前記ミシン目状の連接部で切り離すことにより、該ミシン目状部が単位毎の筒状フィルムの両筒端の開口縁をなして、各単位毎の筒状フィルムを形成する」と特定しているのに対し、引用発明は、このような特定がなされていない点。 第5 判断 一般に、切断を容易にするために、切断部と非切断部が交互に連続する「ミシン目」を形成することは、周知技術であり、その際、ミシン目における切断部と非切断部の寸法は、切断の容易さや、不所望に切断されないこと等を考慮して当業者が適宜に設定すべき設計事項である。 また、引用文献2には、上記「第3 2.」のとおり、筒状フイルムに破線状切断部(ミシン目)を形成する例が開示されている。そして、破線状切断部(ミシン目)を形成するための刃について、切込み部の巾Wが2mm、平坦部の巾LがWの10倍の例が示されていることから、非切断部と切断部の寸法が、それぞれ、2mmと20mmの例が示されているといえる。この場合、「一個の未貫通部長さLが、1mm≦L≦10mm」、「筒状フィルムの幅Wに対する貫通部Sの割合が50%以上95%以下」の要件は満たされるし、また、そのような寸法に設定することは設計事項でもある。 そして、引用発明は、所定の幅に切断して円筒フィルムを形成するものであるから、当該切断を容易にすべき動機付けが存在する。そうすると、上記周知技術及び引用文献2に開示された技術を勘案すれば、引用発明に、切断部と非切断部が交互に連続するミシン目を形成することは、当業者が容易に想到し得たことであり、切断部と非切断部の寸法を適宜に設定して「一個の未貫通部長さLが、1mm≦L≦10mm」、「筒状フィルムの幅Wに対する貫通部Sの割合が50%以上95%以下」の範囲に定めることは、引用文献2に開示され、また、当業者が適宜に設定し得た程度の設計事項である。引用発明にこのようなミシン目を形成すれば、該ミシン目が本願発明の「連接部」に相当することとなり、引用発明の巻取り体は、「単位毎の筒状フィルムが連接部で連接されていて、かつ、該連接部が、貫通部Sと未貫通部Lを実質的に直線状に交互に連続して存在させたミシン目状のスリット部で構成されていて、かつ、該筒状フィルムの幅Wに対する前記貫通部Sの割合が50%以上95%以下であり、一個の未貫通部長さLが、1mm≦L≦10mmであり、前記ミシン目状の連接部で切り離すことにより、該ミシン目状部が単位毎の筒状フィルムの両筒端の開口縁をなして、各単位毎の筒状フィルムを形成する」ものとなる。 請求人は、引用文献2に開示された技術は袋状物の製造方法であって、破線状切断部(ミシン目)の両サイドにシール部が存在するから、引用発明に適用することができない旨主張する。しかし、切断を容易にするためにミシン目を形成することが周知技術であることから、引用文献2の破線状切断部(ミシン目)を、シール部とは独立に、切断を容易にするための手段として把握することができるのである。引用発明は、切断によって「円筒フィルム」を形成するものであるから、切断を容易にするための技術として、引用文献2に開示されたような破線状切断部(ミシン目)を採用するに際し、引用文献2のシール部までを採用すべきでないことは、当業者が当然に理解できることである。よって、上記請求人の主張は理由が無い。 したがって、相違点に係る本願発明の構成は、引用発明、引用文献2の技術事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願発明の効果も、引用発明、引用文献2の技術事項及び周知技術から予測できる範囲内のものであって格別顕著なものとはいえない。 第6 むすび したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2の技術事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-11-29 |
結審通知日 | 2012-12-04 |
審決日 | 2012-12-17 |
出願番号 | 特願2005-354881(P2005-354881) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B60C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柳楽 隆昌 |
特許庁審判長 |
栗林 敏彦 |
特許庁審判官 |
▲高▼辻 将人 紀本 孝 |
発明の名称 | タイヤ製造用筒状フィルムの巻上げ体 |
代理人 | 昼間 孝良 |
代理人 | 清流国際特許業務法人 |
代理人 | 野口 賢照 |
代理人 | 平井 功 |
代理人 | 佐藤 謙二 |
代理人 | 小川 信一 |
代理人 | 境澤 正夫 |
代理人 | 斎下 和彦 |