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審決分類 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する E04D
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する E04D
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する E04D
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する E04D
管理番号 1271326
審判番号 訂正2013-390008  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2013-01-09 
確定日 2013-02-19 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4633610号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4633610号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第4633610号の請求項1に係る発明についての出願は,平成12年2月19日に出願した特願2000-105658号の一部を平成17年11月22日に新たな特許出願としたものであって,平成22年11月26日にその請求項1に係る発明について特許の設定登録がなされ,その後,平成25年1月9日に本件訂正審判が請求されたものである。


2 訂正の内容
本件訂正審判の請求の要旨は,特許第4633610号の願書に添付された明細書(以下,「本件明細書」という。)を,審判請求書に添付された明細書(以下,「訂正明細書」という。)のとおりに訂正することを求めるものであって,請求人が審判請求書に示した訂正事項は以下のとおりである。

登録時の明細書の「段落番号 0019」に,
「【0019】また,本屋根材11の葺設作業について,一般的に行われている屋根材11を軒先側から棟側へ,また左側から右側方向へ葺設する例を説明すると,本屋根下地19の軒先側の所定位置に下段下側屋根材11aを配設し,その釘打部16aを屋根下地19に釘打ち又はビス止めにて固定し,該屋根材11a上端近傍の雌端縁16の右端部に形成された重合挿入部20内面に,相隣接する下段下側屋根材11bの左端部に形成された発泡体除去部(発泡体がない部分)15を挿入し(図1及び図4を参照),該屋根材11aの右端近傍に形成された樋状絞り形状14の上面に該屋根材11bの上記発泡体がない部分15を重ね合わせるように,上端に形成された雄端縁17を上段に配設される屋根材11aの下端に形成された雌端縁16に挿入し嵌合,組み合わせ,該屋根材11aの上端の釘打部16aを上記屋根下地に釘打ち又はビス止めにて固定し,これらの作業を順次繰り返すことにより屋根材は屋根全体に葺設される。」とあるを,
「【0019】また,本屋根材11の葺設作業について,一般的に行われている屋根材11を軒先側から棟側へ,また左側から右側方向へ葺設する例を説明すると,本屋根下地19の軒先側の所定位置に下段下側屋根材11aを配設し,その釘打部16aを屋根下地19に釘打ち又はビス止めにて固定し,該屋根材11a上端近傍の雌端縁16の右端部の内面に,左右方向に相隣接する下段上側屋根材11bの左端部に形成された発泡体除去部(発泡体がない部分)15の上端近傍の雌端縁16端部に形成された重合挿入部20を挿入しながら発泡体がない部分15を上記下側屋根材11a右端部上側に重ねて行くことにより,該下側屋根材1laの右端近傍に形成された樋状絞り形状14の上面に該上側屋根材11bの上記発泡体がない部分15を重ね合わせるようにし(図1及び図4を参照),また図3に示すように,上端に形成された雌端縁16に上段に配設される屋根材11cの下端に形成された雄端縁17を挿入し嵌合,組み合わせ,該屋根材11cの上端の釘打部16aを上記屋根下地19に釘打ち又はビス止めにて固定し,これらの作業を順次繰り返すことにより屋根材は屋根全体に葺設される。」と訂正する。

上記訂正事項は,以下の訂正事項1,2からなる。
(1)訂正事項1
明細書の【0019】段落において,
「該屋根材11a上端近傍の雌端縁16の右端部に形成された重合挿入部20内面に,相隣接する下段下側屋根材11bの左端部に形成された発泡体除去部(発泡体がない部分)15を挿入し(図1及び図4を参照),該屋根材11aの右端近傍に形成された樋状絞り形状14の上面に該屋根材11bの上記発泡体がない部分15を重ね合わせるように,」との記載を,
「該屋根材11a上端近傍の雌端縁16の右端部の内面に,左右方向に相隣接する下段上側屋根材11bの左端部に形成された発泡体除去部(発泡体がない部分)15の上端近傍の雌端縁16端部に形成された重合挿入部20を挿入しながら発泡体がない部分15を上記下側屋根材11a右端部上側に重ねて行くことにより,該下側屋根材1laの右端近傍に形成された樋状絞り形状14の上面に該上側屋根材1lbの上記発泡体がない部分15を重ね合わせるようにし(図1及び図4を参照)」と訂正する。

(2)訂正事項2
明細書の【0019】段落において,
「上端に形成された雄端縁17を上段に配設される屋根材1laの下端に形成された雌端縁16に挿入し嵌合,組み合わせ,該屋根材1laの上端の釘打部16aを上記屋根下地に釘打ち又はビス止めにて固定し,これらの作業を順次繰り返すことにより屋根材は屋根全体に葺設される。」との記載を,
「また図3に示すように,上端に形成された雌端縁16に上段に配設される屋根材11cの下端に形成された雄端縁17を挿入し嵌合,組み合わせ,該屋根材11cの上端の釘打部16aを上記屋根下地19に釘打ち又はビス止めにて固定し,これらの作業を順次繰り返すことにより屋根材は屋根全体に葺設される。」と訂正する。


3 訂正の目的,新規事項の追加の有無及び拡張・変更について
(1)訂正事項1について
重合挿入部20は,【図1】,【図4】では右側に記載された下段上側屋根材11bの左端部に設けられているところ,【0019】段落では「該屋根材11a」,すなわち下段下側屋根材11aの「右端部」に形成され,その「内面に,相隣接する下段下側屋根材11bの左端部に形成された発泡体除去部(発泡体がない部分)15を挿入」ていると記載されているから,当該【0019】段落の記載は図面と整合せず不明りょうな記載である。また,11bは下段上側屋根材であるところ,【0019】段落では「下段下側屋根材11b」と記載されており,誤記であることは明らかである。
そして,訂正事項1は,上記の誤記を訂正し,上記の不明りょうな記載を釈明するものであって,特許法第126条第1項ただし書第2号,第3号に掲げる誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
さらに,訂正事項1は,本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る記載は上段に配設される屋根材に関するものである。そして,上段の屋根材は【符号の説明】によれば11cであるところ,【0019】段落では「上段に配設される屋根材11a」と記載されており,誤記であることは明らかである。さらに【図1】,【図3】,【図4】および明細書の記載によれば,屋根材の上端は「雌端縁16」であり,下端は「雄端縁17」であるところ,「上端に形成された雄端縁17」,「下端に形成された雌端縁16」と記載されており,これらも誤記であることは明らかである。
また,上段に配設される屋根材である11cについては【図3】に記載されているが,【0019】段落の記載では図面との対応関係が不明りょうであり,さらに屋根下地について記号が付されておらず,この点でも不明りょうである。
そして,訂正事項2は,上記の誤記を訂正し,さらに上記の不明りょうな記載を釈明するものであって,特許法第126条第1項ただし書第2号,第3号に掲げる事項である誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
さらに,訂正事項2は,本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

以上のとおりであるから,請求人が審判請求書に示した訂正事項は,特許法第126条第1項ただし書第2号,第3号に掲げる誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして,上記訂正事項は,本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから,特許法第126条第5項,第6項の規定に適合するものである。


4 独立特許要件について
前記「3」で検討したように,訂正事項は,特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。
そこで,特許法第126条第7項の規定により,訂正後の特許請求の範囲(以下,「訂正特許請求の範囲」という。)に記載されている事項により特定される請求項1に係る発明(以下,「訂正後発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かにつき,検討すると,訂正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は発見されない。

したがって,訂正後発明は,いずれも特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであり,特許法第126条第7項に規定する要件に適合するものである。


5 まとめ
以上のとおり,本件審判請求は,特許法第126条第1項ただし書き第2号,第3号に掲げる誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とし,かつ,同条第5項,第6項及び第7項の規定に適合するものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
屋根材
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性、遮音性及び消音性を向上させ、耐風性、水密性及び強度の向上などができる薄板金属製の横葺き用屋根材の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物において、薄板金属製の屋根材及びそれに必要な屋根部材が種々市販されているが、かかる屋根材は流れ方向及び桁行方向に連続して組み合わせて葺設し、屋根を構成するものである。かかる屋根材で問題になるのが、屋根材裏面の結露と雨音による降雨騒音および雨水漏れを防止し雨仕舞を確実にする水密性である。
【0003】
そのため、従来の金属製屋根材では、その裏面にポリエチレンまたはポリウレタン等の樹脂発泡シートまたは、樹脂発泡体を接着剤によって添設していた。例えばこの種の屋根材としては、(a)特許第2847241号、(b)実開昭59-102722号公報に記載されたものがある。
【0004】
また、これらの従来の金属製屋根材における係止部の軒側方向の端部形状は、かかる屋根材を施工した後、相隣接する屋根材の係止部と係合部を嵌合させた嵌合部の強度向上を図るため、屋根材本体の面に対してほぼ直角に折れ曲がった形状をしていた。
【特許文献1】特許第2847241号公報
【特許文献2】実開昭59-102722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来例(a)、(b)の金属屋根材では、上記したように屋根材本体へのポリエチレン発泡シートまたはポリウレタン発泡体の添設は、接着剤を使用し固定していたためこの屋根材の製造工程が増加してコスト高になり、またかかる接着作業における夏と冬の気温差、相対湿度差等条件の相違によって接着不完全、部分剥離が発生して密着性に欠ける等、品質の安定及び管理の信頼性に課題があった。
【0006】
また、従来例で使用されている接着剤は、労働安全衛生法に規定された有機溶剤を用いた樹脂系またはゴム系の素材としたものがほとんどで、その作業時における接着剤の飛散が作業者の健康上及び作業環境上の問題を抱え、全体または局所排気装置の設置が義務付けられる等、管理が大変であった。
【0007】
そのため、上記した(a)の例では、該屋根材本体の裏面と樹脂発泡シートとを全面接着するのが困難であり、仮に全面接着されない部があるとその部は必ず結露するので、その結果、かかる接着剤は乾燥後も結露水に長期にわたり浸されると、剥がれる可能性が高いという問題があり、逆に結露及び結露による上記接着剤剥がれの対策として、(a)の例に示した様に、該樹脂発泡シートを最初から全面接着しないで複数条のみ接着剤塗布とし、該樹脂発泡シートの接着しない部を間隙部とし、該間隙部を結露水の流下に用いて結露水を処理する等のやむを得ない対策を迫られ、本来の該屋根材本体の裏面に結露するのを防止すべき樹脂発泡シートを結露水の処理に用いる一見矛盾するような対策提案される程、接着作業の信頼性について苦慮していた。
【0008】
また、上記した(b)の例では、かかる樹脂発泡体の接着、添設は、係合部内には設けられていないので、該屋根材の葺設時において、相隣接する屋根材の桁行方向の係合部下側には、その水密性を確保するために別に捨板を配設する必要が有り、屋根材全体としてコスト高に構成されていた。
【0009】
また、従来の横葺用屋根材では、係止部の軒側方向の端部形状が、屋根材本体の面に対してほぼ直角に折れ曲がった形状を有しているため、葺設後の該屋根材の嵌合部における強度向上は良好であるものの、強風時の吹き上げ風圧を該屋根材係止部の折れ曲がった形状部がまともに受けて、該屋根材が強風時の風圧に煽られて剥がされたり、浮き上がる恐れがあり、更に強風と雨水を同時に受ける場合においては、該屋根材が吹き上げ風圧に煽られて浮き上がり、該屋根材の間隙部が拡げられたところに雨水が押し込まれ浸入し、強風が止んだ後、屋根材の浮き上がりは戻るが、該間隙部に浸入した雨水はそのまま抜けることができず、該間隙部の水切りが悪く雨水が乾きにくいという問題があり、またそこに埃等が溜まり易く、かかる屋根材に隙間腐食を発生させるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、表面の長手方向に平行な一端に雌端縁、他端に雄端縁を形成した金属板の屋根材と、該屋根材の裏面側に該屋根材と一体的に発泡形成した樹脂発泡体と、該樹脂発泡体の裏面に該樹脂発泡体の上記一体成形時の型枠代用としての裏面材とを備える横葺屋根材で、該横葺屋根材の雌端縁と該横葺屋根材の流れ方向に相隣接する横葺屋根材の雄端縁とを嵌合することにより屋根下地上に連続して横葺設される横葺屋根材であって、上記雄端縁は屋根材の軒側方向端部を裏面側に向けて屈曲した部分と、更にその先を内側に屈曲して延びるように形成した部分とから形成され、上記横葺屋根材の長手方向一端部には該長手方向と直角方向に所定長さで該屋根材の略全幅にわたって樹脂発泡体がない部分を有し、上記雄端縁と雌端縁との間の屋根材は、該樹脂発泡体がない部分を含み連続して平坦に形成され、かつ上記雄端縁の裏面側に向けて屈曲した部分も樹脂発泡体がない部分を含み連続形成され、上記屋根材裏面の樹脂発泡体がない部分の形状をその下側に相隣接する横葺屋根材の表面形状に相対する形状として互いに重合接続可能に構成し、かかる樹脂発泡体がない部分の屋根材を、葺設時に相隣接する横葺屋根材の上側に重ね合わせて重合接続し、桁行方向に連続して横葺設されることを特徴とする横葺屋根材に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の横葺き用屋根材は、その本屋根材の裏面に一体的に樹脂発泡体を発泡形成し、その長手方向に平行な一端縁及び他端縁に各々雌端縁及び雄端縁を一体的に形成し、該雄端縁を雌端縁に水密的に嵌合することにより、棟から軒までの流れ方向に連続して接続し、また長手方向の一端部の裏面材及び樹脂発泡体を長手方向に直角に所定の幅で除去し、かつ該樹脂発泡体近傍の雄端縁の一部を切欠いて排水切欠を形成し、該長手方向の他端部の表面に樋状絞り形状を形成したので、かかる樋状絞り形状を形成された該屋根材の他端部表面上側に、かかる裏面材及び樹脂発泡体を所定の幅で除去された該屋根材の一端部下側を重合接続して桁行方向に連続して横葺設すると、該屋根材の断熱性、水密性、遮音性、消音性を向上できる効果があり、また雨水流下のための捨て板を別に使用する必要がなく、屋根材として安価に構成できる効果がある。
【0012】
また、本発明の屋根材では、従来のように屋根材への樹脂発泡シート、樹脂発泡体の添設に接着剤を使用しないので、本屋根材の製作上別工程の必要がなく、接着不完全の心配が不要であり、作業環境上の問題もなく、コストを安価に構成できる効果がある。
【0013】
また、本発明の屋根材では、該屋根材表面の軒側方向端部を鈍角の略L字状に屈曲させて下方傾斜面を形成し、該下方傾斜面の延びた先を鋭角の略L字状に屈曲し、更にその先を折り返して雄端縁を形成したので、葺設後本屋根材に降る雨水が、強風によって該屋根材本体等に吹き付けられた場合、ベルヌーイの法則に従って、該屋根材の軒側方向から下方傾斜面を吹き抜ける強風の風速が上昇し、該下方傾斜面下部即ち該屋根材の嵌合によって形成される嵌合隙間出口付近が負圧になり、かかる嵌合隙間内部の水が該出口付近へと押し出されてくるので、嵌合隙間内部に水が溜まることがなくなる効果がある。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の一実施例として一般住宅用の横葺用断熱屋根材を説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0015】
本発明の一実施例を図1?図5に基づいて説明すると、本屋根材は屋根表面材11と該表面材と一体的に発泡形成された樹脂発泡体12と、該発泡体の裏面に配設された裏面材13とからなる横葺屋根材であり、図1に示すように屋根表面材11の長手方向に平行で葺設時に棟方向に配設される一端部に雌端縁16、その延びた先に釘打部16a及び屋根下地接触部16bが形成され、同様に葺設時に軒方向なる他端部には、雄端縁17が形成されている。また、かかる屋根材の長手方向の一端部表面に該長手方向と直角に、上記雌端縁内面16から雄端縁17までのほぼ全幅にわたって少なくとも2本以上の樋状絞り形状14を形成してある。
【0016】
本屋根表面材11は、横葺用断熱屋根材本体で、その表面に化粧、補強を兼ねた絞り形状14aが施され、その長手方向の一端縁及び他端縁に各々互いに平行な雌端縁16及び雄端縁17が、該屋根表面材11と一体的に形成される。また、該屋根表面材11はその素材として、例えば塗装亜鉛めっき鋼板、塗装アルミニウム亜鉛合金めっき鋼板、塗装ステンレス鋼板、塩化ビニル鋼板、塗装アルミニウム板、銅板などが使用される。
【0017】
本屋根材11の裏面には、樹脂発泡体12が一体的に裏打ちされ、該樹脂発泡体12は、横葺用断熱屋根材の断熱性、消音性または遮音性の向上を図るための部材であり、この素材として例えばウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォームなどが使用される。また、該樹脂発泡体12の裏面には、該屋根材11と樹脂発泡体の一体成形時における型枠代用及び樹脂発泡体12表面保護のため、裏面材13が配設されている。かかる裏面材の素材としては、例えばアルミニウム箔ラミネート紙、アルミニウム蒸着紙、アルミニウム箔、スチールペーパーなどが使用される。
【0018】
また、本屋根材11の長手方向の一端側に少なくとも2本以上の樋状絞り形状をその合計幅寸法をαとして形成し、長手方向の他端側の裏面材13に、該他端側の端面から長さ寸法βの位置に、該長手方向に直角に切り込みを入れ切断し、次にかかる裏面材13及び樹脂発泡体12を、それらの全幅にわたって貫通するように、長手方向とは直角かつ外方向に、例えばスキジー等で剥(す)いて除去されている。ここで、寸法α、βは、α≦βの関係をもっている。
【0019】
また、本屋根材11の葺設作業について、一般的に行われている屋根材11を軒先側から棟側へ、また左側から右側方向へ葺設する例を説明すると、本屋根下地19の軒先側の所定位置に下段下側屋根材11aを配設し、その釘打部16aを屋根下地19に釘打ち又はビス止めにて固定し、該屋根材11a上端近傍の雌端縁16の右端部の内面に、左右方向に相隣接する下段上側屋根材11bの左端部に形成された発泡体除去部(発泡体がない部分)15の上端近傍の雌端縁16端部に形成された重合挿入部20を挿入しながら発泡体がない部分15を上記下側屋根材11a右端部上側に重ねて行くことにより、該下側屋根材11aの右端近傍に形成された樋状絞り形状14の上面に該上側屋根材11bの上記発泡体がない部分15を重ね合わせるようにし(図1及び図4を参照)、また図3に示すように、上端に形成された雌端縁16に上段に配設される屋根材11cの下端に形成された雄端縁17を挿入し嵌合、組み合わせ、該屋根材11cの上端の釘打部16aを上記屋根下地19に釘打ち又はビス止めにて固定し、これらの作業を順次繰り返すことにより屋根材は屋根全体に葺設される。
【0020】
更に、本屋根材11表面の軒側方向端部を鈍角の略L字状に屈曲させて下方傾斜面17aを形成し、その先を鋭角の略L字状に屈曲し、延びてその先をはぜ折りして折り返して雄端縁を形成することにより、葺設時、該屋根板11cの該雄端縁17を相隣接する屋根板11aの雌端縁16に嵌合すると該折り返し部が枕状になって嵌合隙間21が形成され、毛細管現象を抑えることから、該下方傾斜面17aから雨水が毛細管現象で浸入した場合でも、この嵌合隙間で雨水のその奥への浸入を阻止できる。
【0021】
また、該屋根板表面11の軒側方向端部を鈍角に屈曲し、下方傾斜面17aを形成したので、該屋根板表面に降った雨水は下方即ち軒側方向へ素直に流下すると共に、該下方傾斜面17aの軒側方向端部を鋭角の略L字状に屈曲即ち該下方傾斜面17aとその下段に相隣接する屋根板11bとの角度は、鈍角で滑らかな角度で接しているため、該下方傾斜面17aに対して軒先方向から吹き上げてくる強風による風圧を受けた時、この強風はベルヌーイの定理により、該下方傾斜面17aの表面に沿って上方に吹き抜ける際、風速が上昇して上記嵌合隙間21出口近傍の圧力が下がり負圧になるので、嵌合隙間21内部の空気は、該嵌合隙間からかかる出口近傍へ押し出されてくる。即ち、仮に該嵌合隙間21内部に雨水が浸入していたとしても、内部空気と共に出口近傍に押し出されて軒方向に流下するので、該嵌合隙間21内部に水が貯留することはない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による屋根材説明図で斜視図である。
【図2】本発明による屋根材の側面図である。
【図3】本発明による屋根材の嵌合部を説明する断面図である。
【図4】本発明の屋根材の施工状態を説明する図で、斜視図である。
【図5】本発明の屋根材の裏面を説明する背面図である。
【図6】従来例の屋根材の横断面図である。
【符号の説明】
【0023】
11 屋根表面材
11a 下段下側屋根材
11b 下段上側屋根材
11c 上段下側屋根材
12 樹脂発泡体
13 裏面材
14 樋状絞り形状
15 発泡体除去部(発泡体がない部分)
16 雌端縁
16a 釘打部
16b 下地接触部
16c 釘
17 雄端縁
17a 下方傾斜面
18 排水切欠
19 屋根下地
20 重合挿入部
21 嵌合隙間
32 発泡樹脂製シート
33 接着剤
36 係止部
37 係合部
38 捨板
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】表面の長手方向に平行な一端に雌端縁、他端に雄端縁を形成した金属板の屋根材と、該屋根材の裏面側に該屋根材と一体的に発泡形成した樹脂発泡体と、該樹脂発泡体の裏面に該樹脂発泡体の上記一体成形時の型枠代用としての裏面材とを備える横葺屋根材で、該横葺屋根材の雌端縁と該横葺屋根材の流れ方向に相隣接する横葺屋根材の雄端縁とを嵌合することにより屋根下地上に連続して横葺設される横葺屋根材であって、
上記雄端縁は屋根材の軒側方向端部を裏面側に向けて屈曲した部分と、更にその先を内側に屈曲して延びるように形成した部分とから形成され、
上記横葺屋根材の長手方向一端部には該長手方向と直角方向に所定長さで該屋根材の略全幅にわたって樹脂発泡体がない部分を有し、
上記雄端縁と雌端縁との間の屋根材は、該樹脂発泡体がない部分を含み連続して平坦に形成され、かつ上記雄端縁の裏面側に向けて屈曲した部分も樹脂発泡体がない部分を含み連続形成され、
上記屋根材裏面の樹脂発泡体がない部分の形状をその下側に相隣接する横葺屋根材の表面形状に相対する形状として互いに重合接続可能に構成し、かかる樹脂発泡体がない部分の屋根材を、葺設時に相隣接する横葺屋根材の上側に重ね合わせて重合接続し、桁行方向に連続して横葺設されることを特徴とする横葺屋根材。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2013-02-07 
出願番号 特願2005-336615(P2005-336615)
審決分類 P 1 41・ 854- Y (E04D)
P 1 41・ 852- Y (E04D)
P 1 41・ 853- Y (E04D)
P 1 41・ 856- Y (E04D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西村 隆大谷 純  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 中川 真一
筑波 茂樹
登録日 2010-11-26 
登録番号 特許第4633610号(P4633610)
発明の名称 屋根材  
代理人 浅賀 一樹  
代理人 浅賀 一樹  

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