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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
管理番号 1271862
審判番号 不服2010-184  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-06 
確定日 2013-04-02 
事件の表示 特願2000- 39893「乳酸菌共棲培養物と薬用植物とからなる食品及びその製造法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月21日出願公開、特開2001-224330〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年2月17日の出願であって、平成21年9月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年1月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、平成24年2月24日付けで当審の拒絶理由通知と平成22年1月6日付けの手続補正の補正却下の決定がなされ、平成24年5月7日に意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
平成22年1月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1は、以下のとおりである。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「【請求項1】 乳酸菌と酵母菌との共棲培養物と、ウコン、クミスクチン、ハイビスカス、グアバ、イチョウ、ビワ、ヨモギ、イチゴ、長命草、ドクダミ、モロヘイヤから選ばれた1種又は数種の薬用植物との混合物からなる食品。」

第3 刊行物とその記載事項
当審の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物1ないし6には、以下の事項がそれぞれ記載されている。以下、下線は当審で付加した。

(1)刊行物1:特開平11-221071号公報の記載事項

(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ラクトバチルス・デルブルエキイ、ラクトバチルス・アシドフィラス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトコッカス・ラクティス及びストレプトコッカス・サーモフィラスからなる群から選ばれる少なくとも3種類の乳酸菌とサッカロミセス・セレビシエとの混合微生物の培養物又はその処理物を含む組成物。
【請求項2】 混合微生物が、ラクトバチルス・デルブルエキイ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトコッカス・ラクティス及びサッカロミセス・セレビシエを含む群、ラクトバチルス・アシドフィラス、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトコッカス・ラクティス及びサッカロミセス・セレビシエを含む群、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・カゼイ、ストレプトコッカス・サーモフィラス及びサッカロミセス・セレビシエを含む群、並びにラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ラムノーサス、ストレプトコッカス・サーモフィラス及びサッカロミセス・セレビシエを含む群の4群から選ばれる少なくとも1群である請求項1記載の組成物。
【請求項3】 請求項1又は2記載の組成物を含む機能性食品。」

(1b)「【0007】
【発明の実施の形態】本発明の組成物は、乳酸菌と酵母との混合微生物を培養(共棲培養)して得られる培養物又はその処理物を含むものである。乳酸菌としてはラクトバチルス属、ラクトコッカス属又はストレプトコッカス属に属するもの、例えばラクトバチルス・デルブルエキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)及びストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)が挙げられる。酵母としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が挙げられる。
【0008】上記微生物は、一般に市販されているものを用いることができるが、これらの微生物の共棲培養物又はその処理物が機能性食品として利用することができる限り、当該微生物の特定の株に限定されるものではない。例えば、ラクトバチルス属に属する乳酸菌としてはラクトバチルス・デルブルエキイALAL007株、ラクトバチルス・アシドフィラスALAL005株、ラクトバチルス・プランタラムALAL006株、ラクトバチルス・ファーメンタムALAL001株、JCM1173株、ラクトバチルス・カゼイALAL002株、ALAL003株、JCM1053株、ラクトバチルス・ラムノーサスALAL004株、ALAL010株、JCM1136株等が挙げられ、ラクトコッカス属に属する乳酸菌としてはラクトコッカス・ラクティス subsp. hordniae ALAL008株、ALAL009株等が挙げられ、ストレプトコッカス属に属する乳酸菌としてはストレプトコッカス・サーモフィラスALAL011株、ALAL012株等が挙げられ、酵母菌としては例えばサッカロミセス・セレビシエJCM1499株、ALAY001株、ALAY002株、ALAY003株、ALAY004株が挙げられる。」

(1c)「【0012】上記A?D群の微生物はそれぞれ単独群(微生物4株)として用いてもよく、2群以上を任意に組み合わせて用いてもよい。但し、2群以上を組み合わせた場合に同種の微生物が重複するとき(例えばA群とC群とを組み合わせたときのL.caseiやS.cerevisiaeが重複するとき)は、それぞれ別の株を使用するものとする。本発明の組成物は、乳酸菌と酵母との混合微生物を、大豆の熱水抽出液を含む培地で培養発酵させることにより得ることができる。
【0013】培地は、大豆の熱水抽出液を用いる。そして、乳酸菌1種につき105?106個/ml、酵母1種につき104?106個/mlをそれぞれ混合したのち上記培地に接種し、20?37℃で4?10日培養する。複数の微生物群を組み合わせる場合は、各群ごとに上記培養条件で培養した後にそれぞれの群を混合し、上記培養条件で培養する方法が採用される。培養終了後、煮沸殺菌(80℃)して培養物を回収する。
【0014】本発明の組成物は、培養後の培養物そのものを凍結乾燥又は噴霧乾燥することにより得ることができる。また、ろ過又は遠心分離等の処理を施すことにより培養上清と菌体とを分離してもよい。この場合も、培養上清及び菌体については凍結乾燥又は噴霧乾燥することにより、いずれも本発明の組成物として調製することができる。本発明の組成物の形態は任意に設定することができ、液体、固体、顆粒等に加工することができるが、顆粒状のものが取扱上便利である点で好ましい。顆粒状に加工する場合は、サイクロデキストリン等の多糖体との包摂物とする。
【0015】以上のようにして得られた本発明の組成物は、種々の作用を有することから機能性を有する健康食品(機能性食品)として利用することができる。その作用として、例えば肝及び腎機能改善作用、抗変異原性作用、腫瘍細胞増殖抑制作用並びに腸内細菌叢改善作用等が挙げられる。本発明の組成物は通常顆粒状に加工されるので、機能性食品として利用する場合は、そのまま食してもよく、適量を食品に添加してもよい。
【0016】食品としては、例えばゼリーやキャンディー等の菓子類、ジュース、紅茶、栄養ドリンク剤等の飲料、米飯等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本発明の組成物の食品への混合量及び混合割合は、食品当たり0.1 ?1重量%であるが、好みに応じて適宜調整することができる。」

(2)刊行物2:特開平8-214825号公報の記載事項

(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】ウコンの根茎を乾燥して粉砕したものに米ぬか・ふすま等の穀類の精穀残渣及び糖類を加え、ストレプトコッカス サーモフィラス,ラクトバチルス プランタリウム,バチルス サブティリス等の乳酸菌を培養基として加えて醗酵させ、これを加熱乾燥することを特徴とするウコンの根茎を用いた食材の製造方法。」

(2b)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、苦みを有していて,そのままでは経口食品としては適しないウコンの根茎を処理し、飲用その他,摂取し易くしたウコンの根茎を用いた食材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ウコンは生姜科の多年生植物で、主にインド・東南アジア・中国南部などの熱帯地方で栽培されているが、古くから利胆薬として、肝臓炎,胆道炎,胆石症,カタル性黄疸などの治療に用いられているほか、芳香性健胃薬としても用いられている。漢方では、吐血,鼻血,血尿の際に内服して止血作用があるとされており、また、乾燥した根茎物を蒸留して得た油は、軽い殺菌性があり、制酸薬として少量では駆風,健胃,食欲増進及び強壮薬として用いられている。」

(3)刊行物3:特開平2-276546号公報の記載事項

(3a)「【特許請求の範囲】
1.デュラム小麦のセモリナ及び小麦粉に、納豆菌を適宜割合にて混合せしめ成製した、スパゲティ、マカロニ、ヌードル、ラビオリ、カネローニ等のパスタ(以下この総称でいう)。
2.デュラム小麦のセモリナ及び小麦粉にウコンを適宜割合にて混合せしめ成製したパスタ。
3.デュラム小麦のセモリナ及び小麦粉に、納豆菌及びウコンを適宜割合にて混合せしめ成製したパスタ。」

(3b)「(発明の効果)
以上の納豆菌及びウコン混合のパスタは、納豆菌の作用により、かく拌工程並びに購入者の調理の際の茹で時間の短縮、且つパスタのこしの強さを失わずした表面なめらか舌ざわりのよいものと成る。また、ウコンは、殺菌,防臭,防腐の作用があり、且つ黄色の天然色素は、混合量により、所望の色彩形状を成し得るものである。
加えて、これらの成分の機能的効果を挙げると、納豆は、ガンの予防,血栓の予防と治療,肝臓の解毒機能の促進,腎機能の調節等を成し、またこの中のサビチリス酵素は、ガン細胞の溶解,ジピコリン酸は、放射性物質のストロンチウム90及びコバルト60等の体外排出の働きがある。
また、ウコンは、ガンの予防,胃液・胆汁の分泌促進,並びに肝臓の解毒作用があることから、この納豆菌及びウコン混合のパスタは、機能性食品の横綱と成るものである。」(第2頁左下欄第16行目?右下欄第13行目)

(4)刊行物4:特開平11-189539号公報の記載事項

(4a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 田七人参エキス、マリアアザミエキス及びウコンエキスを含有することを特徴とする肝機能賦活剤。
【請求項2】 投与形態が経口用剤である請求項1記載の肝機能賦活剤。
【請求項3】 食品として投与されるものである請求項2記載の肝機能賦活剤。」

(4b)「【0002】
【従来の技術】肝臓は沈黙の臓器と言われ、多少の異常があっても自覚症状が少なく、その異常に気付かぬ場合が多い。ちなみに、人間ドック受診者の約4分の1は何らかの肝機能異常を有することが、人間ドック利用者の受診データより明らかとなっている。肝機能異常を改善する薬剤としては、アミノ酸製剤、グルタチオン、肝臓加水分解物、漢方薬などが使用されているが、作用が緩和で効果のすぐれたものは少ない。植物由来の薬剤として、田七人参、マリアアザミ、コウン等に肝機能改善効果があると言われているが、その効果は充分なものとは言えない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、疾病その他種々の原因に由来する肝機能傷害や肝機能の低下を治療あるいは防止するための肝機能賦活剤を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】かかる実状に鑑み、本発明者らは、鋭意研究を行った結果、田七人参エキス、マリアアザミエキス及びウコンエキスの3剤を混合することにより、顕著な肝血流の増加作用と胆汁分泌促進作用を有し、更に意外にもこれらそれぞれの単独使用時あるいはそれらの2剤を混合した場合よりも強力な肝臓組織呼吸促進作用を示すこと、すなわち、上記3剤を併用することにより、それぞれ単独又は2剤併用の場合に比較して、肝機能賦活効果が相乗的に増大することを見出し、本発明を完成した。
【0005】すなわち、本発明は、田七人参エキス、マリアアザミエキス及びウコンエキスを含有することを特徴とする肝機能賦活剤を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明において用いられる田七人参エキスは、ウコギ科の田七人参(Panax pseudo ginseng)の30%エタノール抽出物を60℃以下で減圧濃縮し、粘凋性エキスとしたものである。田七人参のエタノールエキスが家兎において血液凝固促進作用を有することが報告されている(野津辰郎、日薬理誌、39、328(1943))。
【0007】本発明において用いられるマリアアザミエキスは、キク科のマリアアザミ(Silybum marianum)の果実からエタノール抽出し、スプレードライにより得られた乾燥粉末である。原植物及びその含有成分シリマリンは肝臓疾患治療薬としてヨーロッパで用いられている。
【0008】本発明において用いられるウコンエキスは、ショウガ科のウコン(Curcuma longa L.)の乾燥根茎をヘキサン・エタノール及び含水エタノール抽出し、スプレードライにより得られた乾燥粉末である。ウコンは日本薬局方外生薬規格にも掲載された医薬品原料で、食欲不振の解消、胆汁分泌の促進剤として用いられている。」

(5)刊行物5:特開2002-300856号公報の記載事項

(5a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 大豆10?20重量%、麦芽汁2?5重量%、ペプトン0.5?1.5重量%、酵母膏0.2?1重量%、KH2PO4 0.05?0.5重量%、MgSO4 0.02?0.2重量%、HCl 0.02?0.2重量%、及び水からなる液体培養基にてアゾトバクター・ビネランジイATCC53547(ブタペスト条約上の国際寄託)を培養したものであることを特徴とする大豆発酵液。
【請求項2】 上記請求項1記載の大豆発酵液を乾燥して粉末化、或いは粉末化したものを錠剤状に固めたことを特徴とする大豆発酵剤。
【請求項3】 上記請求項1記載の大豆発酵液20?50重量%、万年茸5?10重量%、黄精3?5重量%、黒きくらげ5?10重量%、椎茸5?10重量%、ナツメ3?5重量%、羅漢果3?5重量%、人参2?5重量%、及び、水からなる大豆健康内服液。
【請求項4】 上記請求項3記載の大豆健康内服液を乾燥して粉末化、或いは粉末化したものを錠剤状に固めたことを特徴とする大豆健康内服剤。」

(5b)「【0040】
【発明の効果】この発明の大豆発酵液は、天然の大豆を主な材料として、それに特別なアゾトバクターを利用し、抽出して作るのである。だから、大豆の栄養を保つだけではなく、測定によって大豆発酵液には豊かな蛋白質、アミノ酸、核酸、大豆異黄体ホルモン、大豆フォスファチド、食用せん維など栄養価の高い物質を含み、アゾトバクターの転化利用により栄養物質がもう一層全面的に体に吸収されやすくなる。
【0041】そのほか、全体的に体の機能を調整し、代謝を促し、老衰を防ぎ、コレステロール及び血脂を下げ、防癌抗癌の効果を得るために、この発明の大豆健康内服液には使った材料調剤には菌類、漢方薬をも入れている。
【0042】万年茸は虚弱疲労の咳、不眠症、消化不良、気管支喘息、白細胞減少症、心血管病に効果がよい。黒くらげは虚弱改善、補血ができる。椎茸は虚弱を治し、胃によく、免疫力を強化、防癌抗癌の効果がある。黄精、人参は体の精髄を補充し、元気を補う。羅漢果は肺を潤し、咳を止める。ナツメは肺によく、鼻を通す効果を持っている。微生物と酵素及び動物或いは植物の酵素を利用して天然薬物を生物転化にするのは更に価値のある活性物質を取り得る。
【0043】従来の大豆ペプタイドアミノ内服液と比べれば、この発明が大豆健康内服液は栄養価が高いだけではなく体の吸収が良く、それに伝統的な漢方薬の理論に基づいて人間の体機能を調整し、健康を保つ効果を持っている。 」

(6)刊行物6:特開平11-289973号公報の記載事項

(6a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】ウコン根茎を乾燥して粉末としたもの,或いはウコン根茎からの抽出液と、牛乳・山羊乳その他の飲用乳とを混合して成る加工食品。
【請求項2】ウコン根茎を乾燥して粉末としたもの,或いはウコン根茎からの抽出液と、クリーム,チーズ,バター,ヨーグルト等の乳製品とを混合して成る加工食品。
【請求項3】ウコン根茎を乾燥して粉末としたもの,或いはウコン根茎からの抽出液の混合割合が、飲用乳又は乳製品の1?10%である請求項1もしくは2の加工食品。」

(6b)「【0002】
【従来の技術】ウコンは生姜科の多年生植物で、主にインド・東南アジア・中国南部などの熱帯地方で栽培されている。その根茎の皮を剥き5,6時間蒸煮して乾燥し粉末としたものがターメリックと呼ばれる香辛料で、カレー粉の原料とされている。このほか,ウコン根茎は、古くから利胆薬として、肝臓炎,胆道炎,胆石症,カタル性黄疸などの治療に用いられているほか、芳香性健胃薬としても用いられている。漢方では、吐血,鼻血,血尿の際に内服して止血作用があるとされており、また、乾燥した根茎を蒸留して得た油は軽い殺菌性があり、制酸薬として、少量では駆風,健胃,食欲増進及び強壮薬としても用いられている。
【0003】それは、主としてこれに含まれている黄色の色素クルクミンによる効果ではないかと推論されているが、最近の研究では,上記の作用のほかに、老化,癌,動脈硬化,糖尿病,白内障というような様々な成人病の原因となる活性酸素を除去する抗酸化作用をも有することが解明されてきている。」

(6c)「【0009】
【発明が解決しようとする課題】ウコンは、上記のように優れた薬効を有するものであるため、その根茎を煎じたり,乾燥させて粉末にしたものが、一部の人々の間で摂取されてきたが、経口摂取の妨げとなる苦みがあるために,有用性が知られていながらも広く一般に普及する状態には至っていない。一方,牛乳等の乳類についても、上記のように充分に飲用されている状況には無い。
【0010】発明者らは、ウコンを摂取し易くするために、先にウコンの根茎を醗酵処理する食材の製造方法についての技術を開示した(特開平8-214825号)。この発明は、それなりに効果を有するものではあるが、本件発明は、牛乳その他の飲用乳或いは乳製品にウコン粉末或いはウコン抽出液を混合することにより、単にウコンの苦みを除去し摂取し易くするというだけではなく、両者の混合による相乗効果によって、乳類に含まれている有用な物質をも無駄なく摂取吸収することのできる食品を提案しようというものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】この問題点を解決すべく研究を重ねた結果、本発明においては、牛乳その他の飲用乳或いは乳製品に,粉砕したウコンの根茎の粉末或いは抽出液を添加混合することにより、解決した。この両者を混合することにより、ウコンが持つ苦みは除去され,あるいは苦みとして感じさせないものとなるばかりでなく、乳類を摂取し易くすることに成功し、嗜好性の向上,栄養強化,消化吸収の促進に寄与する食品を得ることのできる本発明を完成した。」

(6d)「【0027】
【発明の効果】本発明によれば、従来,経口摂取の妨げとなる苦みがあるために,有用性が知られていながら広く一般に普及する状態には至っていなかったウコンを摂取し易くするとともに、単にそれだけではなく牛乳等に含まれている有用な物質をも無駄なく有効に摂取吸収することができ、人体に極めて有用な食品を提供することができる。」

第3 対比・判断
刊行物1の上記記載事項(特に上記(1a,1b))から、刊行物1には、

「乳酸菌と酵母菌との混合微生物を共棲培養して得られる培養物を含む食品」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

そこで、本願発明と刊行物1発明とを比較する。

刊行物1発明の「乳酸菌と酵母菌との混合微生物を共棲培養して得られる培養物」は、乳酸菌と酵母菌とを共棲培養して得られた培養物であるので、本願発明の「乳酸菌と酵母菌との共棲培養物」に相当する。

したがって、両者の間には、以下の一致点及び相違点がある。

(一致点)
乳酸菌と酵母菌との共棲培養物を含む食品

(相違点)
食品が、本願発明では、「共棲培養物」と「ウコン、クミスクチン、ハイビスカス、グアバ、イチョウ、ビワ、ヨモギ、イチゴ、長命草、ドクダミ、モロヘイヤから選ばれた1種又は数種の薬用植物との混合物からなる」のに対し、刊行物1発明では1種又は数種の薬用植物との混合物にしていない点。

そこで、上記相違点について検討する。

(相違点について)
刊行物1には、乳酸菌と酵母との混合微生物を共棲培養して得られる培養物には、肝機能改善作用等があることが記載されている(1c)。
そして、機能性食品の分野では、効能をより増大するために同様の効能を有する食材を混合させて機能性食品とすることは、例えば、刊行物3(3b)、刊行物4(4b)、刊行物5(5b)に記載されている通り、本願出願前の周知の技術である。
また、肝臓機能改善等に効能がある食材として、ウコンは、例えば刊行物2(2b)、刊行物3(3b)、刊行物4(4b)、刊行物6(6b)に記載されている通りに、本願出願前に周知の事項である。
そうすると、刊行物1に記載された、乳酸菌と酵母との混合微生物を共棲培養して得られる培養物が有する作用のうち、特に肝臓機能改善作用に着目し、当該作用をより増大させた食品を得ることを考えて、乳酸菌と酵母菌との混合微生物を共棲培養して得られる培養物とウコンからなる食品とすることは、周知技術を適用して当業者が容易に想到し得たことである。

(本願発明の効果について)
乳酸菌共棲培養物とウコンを組み合わせることによって、乳酸菌共棲培養物のみによる効果及び薬草による効果が摂取できるばかりでなく、それらの組み合わせによる相乗効果と保健維持効果を発揮する健康食品を得ることができるとの本願発明の効果は、刊行物1?6の記載事項及び周知技術から予測し得たものであり、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶をすべきものである。
 
審理終結日 2012-05-21 
結審通知日 2012-05-29 
審決日 2012-06-11 
出願番号 特願2000-39893(P2000-39893)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨永 みどり  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 齊藤 真由美
菅野 智子
発明の名称 乳酸菌共棲培養物と薬用植物とからなる食品及びその製造法  
代理人 熊田 和生  

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