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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1272001
審判番号 不服2012-5825  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-30 
確定日 2013-03-28 
事件の表示 特願2006-106182「電子機器、履歴表示方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月25日出願公開、特開2007-280097〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯・本願発明
本願は、平成18年4月7日の出願であり、平成23年12月28日付けで拒絶査定がなされ、それに対して平成24年3月30日に拒絶査定不服の審判請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明は、平成23年3月24日に提出された手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「利用者の認証を行う認証機能と、情報を画面上に表示する表示機能とを有する電子機器において、
前記認証機能を用いて認証された利用者によって入力された期間を記憶し、該記憶した期間に当該電子機器が操作された内容と操作された時刻とを対応付けて操作履歴情報として記憶し、前記認証された利用者によって前記操作履歴情報の当該電子機器の前記画面上への表示の要求があった場合に前記記憶された操作履歴情報を前記画面に表示する電子機器。」

第2 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-14158号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティ機能を備えた携帯電話機などの携帯端末に関し、特に、他者による不正使用の抑止機能を備えた携帯端末に関する。」(段落【0001】)

(イ)「【0016】
次に、図1に示す携帯電話機10が行うセキュリティモード中の動作の概要について説明する。携帯電話機10がセキュリティモードに設定されているときは、表示部4が偽電話帳などのダミーデータを表示する。このようにして、第三者にセキュリティ機能中であることを意識させないで携帯電話機10の操作を行うことを積極的に促す。さらに、セキュリティ機能中に携帯電話機10で行われた不正操作のログデータはメモリ部3へ保存される。メモリ部3へ保存されたログデータの容量が一定サイズになったり、一定時間が経過したとき、そのログデータは通信部5から携帯電話機所有者のパソコン(図示せず)などへ送信される。セキュリティ機能中に表示部4に表示された電話帳は偽電話帳であるので第三者はこれを利用できない。但し、第三者には分からないように、あらかじめ登録されている電話番号やアドレスにのみログデータを発呼・発信し、不正操作の通知を行う。」(段落【0016】)

(ウ)「【0019】
次に、セキュリティ機能中において、携帯電話機がダミーデータを表示したりログデータを保存・送信したりする動作の流れについて説明する。図3は、図1に示す携帯電話機におけるセキュリティ機能中と通常時のデータ表示及びデータ送信の流れを示すフローチャートである。つまり、図3は、セキュリティ機能中のダミーデータの表示及びログデータの保存・送信の流れと通常時のデータの流れを示している。尚、このフローチャートでは、図の左側にセキュリティモード設定時の動作の流れを示し、図の左側に通常時の動作の流れを示している。
【0020】
まず、セキュリティモード設定時において、制御部7が、携帯電話機10のセキュリティモードはONされているか否かを判定する(ステップS11)。ここで、セキュリティモードがONされていれば(ステップS11でYesの場合)、制御部7は、メモリ部3の偽データベースからダミーデータを取得してそのダミーデータを表示部4に表示させる(ステップS12)。図5は、偽データベースから取得して表示部の画面に表示させたダミーデータの一例を示す図である。この図の例では、会社情報及び個人情報のダミーデータを表示させた例を示している。さらに、第三者などのユーザが操作部2によって不正操作を行った場合は(ステップS13)、操作履歴を示すログデータをメモリ部3の操作ログデータベースへ保存する(ステップS14)。
【0021】
次に、制御部7は、メモリ部3の操作ログデータベースへ保存されたログデータの容量が一定サイズになったり一定時間が経過してログデータ送信のタイミングに達したか否かを判定する(ステップS15)。ここで、ログデータ送信のタイミングに達していれば(ステップS15でYesの場合)、通信部5は、メモリ部3の操作ログデータベースに保存されているログデータを取得して、そのログデータを携帯電話機10の所有者のパソコンなどに送信する(ステップS16)。これによって、携帯電話機10の所有者は、ログデータの内容から第三者による操作履歴をチェックすることができる。
【0022】
次に、制御部7は、携帯電話機10の操作が終了したか否かを判断し(ステップS17)、まだ、携帯電話機10の操作が終了していなければ(ステップS17でNoの場合)、ステップ12に戻って前述の処理を繰り返す。一方、ステップS17で、携帯電話機10の操作が終了していれば(ステップS17でYesの場合)、セキュリティ機能中にダミーデータの表示及びログデータの保存・送信を行う作業を終了する。尚、ステップS15で、ログデータ送信のタイミングに達しない場合は(ステップS15でNoの場合)、ログデータの送信を行うことなく、携帯電話機10の操作が終了したか否かを判断して(ステップS17)、携帯電話機10の操作が終了していれば(ステップS17でYesの場合)、キュリティ機能中のダミーデータの表示及びログデータの保存・送信の処理を終了する。」(段落【0019】?【0022】)

(エ)「【0023】
また、通常時における動作としては、ステップS11において、携帯電話機10のセキュリティモードがONされていなければ、すなわち、携帯電話機10がセキュリティ機能中でなければ(ステップS11でNoの場合)、制御部7は、メモリ部3の通常データベースから通常データ(つまり、真の電話帳データなど)を取得し、この通常データを表示部4に表示させる(ステップS18)。そして、正当なユーザ(つまり、携帯電話機10の所持者)が操作部2によって操作を行った場合は(ステップS19)、携帯電話機10における通常の通信処理を実行し(ステップS20)、携帯電話機10の操作が終了したか否かを判断して(ステップS21)、携帯電話機10の操作が終了していなければ(ステップS21でNoの場合)、ステップS18に戻って、表示部4に通常データを表示させ、前述と同様の処理を繰り返す。一方、携帯電話機10の操作が終了していれば(ステップS21でYesの場合)、通常時における通信処理を終了する。」(段落【0023】)

(オ)「【0028】
尚、セキュリティモード(つまり、不正使用防止モード)の設定有無の判定は、携帯電話機の所有者であっても分りにくい場合がある。したがって、どのようにしてセキュリティモードの有無を判定し、セキュリティモードの設定中である場合はパスワードなどを入力してロック解除を行うことが重要な課題となる。以下に、セキュリティモードの設定有無の判定を行う場合の判定方法の一例を示す。
【0029】
一つ目の判定方法は、本物用と偽物用の背景画面を任意に設定できるようにする。二つ目の判定方法は、音声発呼、メール発信などの無線アクセスに関わる操作をしたときには、(a)画面の点滅有無/点滅パターン、(b)LEDの点滅・点灯有無/点滅パターン、(c)無線アクセス開始音の鳴動有無/鳴動パターン、などのパターンを自由に設定できるようにする。
このように、通常モードとセキュリティモードとで背景画面や各種の動作パターンを異ならせることによって、携帯電話機の所有者は現在表示している背景画面やキー操作時の動作によって、セキュリティモードの設定中であるか否かを即座に判定することができる。このとき、自由な設定が可能であるため、本人のみセキュリティモードにあるか否かを知ることができ、第三者はセキュリティモードの設定中であるか否かを判断することができない。尚、本物用/偽物用の背景画面や無線アクセスの設定前には、パスワードなどの認証番号をチェックする機能を設けて第三者による設定を禁止する必要がある。」(段落【0028】、【0029】)

以上の記載によれば、この引用文献には、以下のような発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「セキュリティ機能を備えた携帯電話機であって、
セキュリティモード設定時において、制御部7が、携帯電話機のセキュリティモードはONされているか否かを判定し、セキュリティモードがONされていれば、制御部7は、メモリ部3の偽データベースから会社情報及び個人情報のダミーデータを取得してそのダミーデータを表示部4に表示させ、第三者などのユーザが操作部2によって不正操作を行った場合は、操作履歴を示すログデータをメモリ部3の操作ログデータベースへ保存し、
次に、制御部7は、メモリ部3の操作ログデータベースへ保存されたログデータの容量が一定サイズになったか、あるいは一定時間が経過してログデータ送信のタイミングに達したか否かを判定し、ログデータ送信のタイミングに達していれば、通信部5は、メモリ部3の操作ログデータベースに保存されているログデータを取得して、そのログデータを携帯電話機の所有者のパソコンなどに送信し、
携帯電話機の所有者は、ログデータの内容から第三者による操作履歴をチェックすることができ、
携帯電話機のセキュリティモードがONされていなければ、すなわち、携帯電話機がセキュリティ機能中でなければ、制御部7は、メモリ部3の通常データベースから通常データを取得し、この通常データを表示部4に表示させ、正当なユーザ(つまり、携帯電話機の所持者)が操作部2によって操作を行った場合は、携帯電話機における通常の通信処理を実行し、
本物用/偽物用の背景画面や無線アクセスの設定前には、パスワードなどの認証番号をチェックする機能を設けて第三者による設定を禁止する必要があることを特徴とする携帯電話機。」

第3 対 比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「携帯電話機」は、「本物用/偽物用の背景画面や無線アクセスの設定前には、パスワードなどの認証番号をチェックする機能を設けて第三者による設定を禁止する必要がある」から、利用者の認証を行う認証機能を有することは明らかであり、「表示部4」に「背景画面」、「ダミーデータ」や「通常データ」を表示するから、情報を画面上に表示する表示機能を有することも明らかであるから、本願発明の「利用者の認証を行う認証機能と、情報を画面上に表示する表示機能とを有する電子機器」に相当する。

(イ)引用発明の「第三者などのユーザが操作部2によって不正操作を行った場合は、操作履歴を示すログデータをメモリ部3の操作ログデータベースへ保存」は、本願発明の「前記認証機能を用いて認証された利用者によって入力された期間を記憶し、該記憶した期間に当該電子機器が操作された内容と操作された時刻とを対応付けて操作履歴情報として記憶」する構成と、「当該電子機器が操作された操作履歴情報を記憶」する構成である点で共通する。

(ウ)引用発明の「通信部5は、メモリ部3の操作ログデータベースに保存されているログデータを取得して、そのログデータを携帯電話機の所有者のパソコンなどに送信し、携帯電話機の所有者は、ログデータの内容から第三者による操作履歴をチェックすることができ」は、操作履歴を携帯電話機の所有者のパソコンなどに表示することは明らかであるから、本願発明の「前記認証された利用者によって前記操作履歴情報の当該電子機器の前記画面上への表示の要求があった場合に前記記憶された操作履歴情報を前記画面に表示」する構成と、「前記記憶された操作履歴情報を表示」する構成である点で共通する。

したがって、本願発明の用語を用いて表現すると両者は、
「利用者の認証を行う認証機能と、情報を画面上に表示する表示機能とを有する電子機器において、
当該電子機器が操作された操作履歴情報を記憶し、前記記憶された操作履歴情報を表示する電子機器。」
で一致するものであり、次の(1)、(2)の点で相違している。

(1)本願発明は、「前記認証機能を用いて認証された利用者によって入力された期間を記憶し、該記憶した期間に当該電子機器が操作された内容と操作された時刻とを対応付けて操作履歴情報として記憶」するのに対して、引用発明は、「操作部2によって不正操作を行った場合は、操作履歴を示すログデータをメモリ部3の操作ログデータベースへ保存」する期間が認証された利用者によって入力される記載はなく、また、「操作履歴を示すログデータ」が操作された内容と操作された時刻とを対応付けたものであるか明らかでない点。

(2)本願発明は、「前記認証された利用者によって前記操作履歴情報の当該電子機器の前記画面上への表示の要求があった場合に前記記憶された操作履歴情報を前記画面に表示」するのに対して、引用発明は、メモリ部3の操作ログデータベースへ保存されたログデータの容量が一定サイズになったか、あるいは一定時間が経過してログデータ送信のタイミングに達したか否かを判定し、ログデータ送信のタイミングに達していれば、メモリ部3の操作ログデータベースに保存されているログデータを取得して、そのログデータを携帯電話機の所有者のパソコンなどに送信し、携帯電話機の所有者は、ログデータの内容から第三者による操作履歴をチェックすることができる点。

第4 当審の判断
・相違点(1)について
通信端末において、設定された期間に当該通信端末の操作履歴(操作ログ)を記憶するようにすること、操作履歴(操作ログ)には操作内容と時刻情報が含まれることは、本願出願日前周知の技術(例えば、特開2004-229153号公報段落【0017】「また、請求項6に係る通信端末装置は、・・・中略・・・制限状態において、制限又は禁止対象となっている動作を実行させるための指示があった場合には、その旨を履歴として記憶することを特徴とする。ここでいう履歴には、不正操作ログによるものが相当し、具体的には、時刻、動作内容(表示、プリント、・・・・・)を含むものである。」、段落【0030】?【0031】「制限時間帯テーブル4aを参照して、制限時間帯が設定されていて、現時刻が制限時間帯であれば、ステップST22へ移行する。ステップST22においては、指定された宛先に関し、制限動作指示があるか否かを判定する。・・・中略・・・制限動作指示があれば、ステップST23へ移行する。・・・中略・・・ステップST24においては、履歴更新、つまり今回指定された宛先についての不正操作ログの追加を行う。」の記載、特開2006-4291号公報段落【0052】?【0053】「条件設定部16aは、入力部11および出力部12を介して利用者から受け付けた収集条件を収集条件DB15aに格納し、また、同じく入力部11および出力部12を介して利用者から受け付けた開示条件を開示条件DB15bに格納する処理部である。【0053】ここで、「収集条件」とは、操作履歴の収集に係る条件であり、図7に例示するような画面を通じて利用者から受け付けられる。すなわち、同図に示すように、利用者は、所定の時刻に所定の場所で所定の操作者が所定の対象に対して行った操作についてのみ、所定の項目からなる履歴を収集させることを意図する場合には、所定の「操作時刻(時間帯や期間)、操作場所(利用者端末の識別ID)、操作者(利用者IDやグループID)、操作対象(Web、メール、ファイル、アプリケーションなどの識別ID)、対象名(ファイル名など)もしくはこれらの一部」を指定するとともに、履歴として収集すべき「収集対象(項目)」を指定入力する。そして、条件設定部16aは、利用者から受け付けた収集条件を、図3に例示するように、収集条件DB15aに格納する。」の記載、収集条件設定に際して利用者端末に表示される情報の例を示す図7の「収集対象」項目中の「操作時刻」、「操作内容」の記載参照。)である。
また、引用発明は、「本物用/偽物用の背景画面や無線アクセスの設定前には、パスワードなどの認証番号をチェックする機能を設けて第三者による設定を禁止する必要がある」ものであり、利用者が何らかの設定を行う際に、利用者を認証することが示唆されている。
したがって、引用発明において、上記周知技術を適用し、「利用者によって入力された期間を記憶し、該記憶した期間に当該電子機器が操作された内容と操作された時刻とを対応付けて操作履歴情報として記憶」することは容易になし得ることであり、その際に認証機能を用いて認証された利用者によって入力された期間を記憶することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項にすぎない。

・相違点(2)について
引用発明は、メモリ部3の操作ログデータベースに保存されているログデータを携帯電話機の所有者のパソコンなどに送信するようにしているが、正当なユーザ(つまり、携帯電話機の所持者)が保存されているログデータを確認する場合は、携帯電話機の画面上にログデータを表示可能とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
そして、認証機能によって認証された利用者に記憶された操作履歴を表示するようにすることは、常套手段(例えば、特開2004-178238号公報段落【0022】「また、個人認証システムのようにパスワード等を入力しなければ通信履歴内容が確認できないような、あからさまなセキュリティ設定ではないので、・・・中略・・・適切な配慮がなされた履歴表示を行うことができる。」の記載、特開2005-354273号公報段落【0029】「上記の実施の形態では、携帯電話機100は個人情報を送信する送信先を予め設定しているけれども、パスワードを複雑化してパスワードメールで送信先を決定しても良いし、パスワードメールを送ってきた機器に返信するようにしても良い。また、上記実施の形態では、操作履歴263として最後に使用された日時のみを記憶させていたが、その操作内容例えば、アドレス帳の閲覧、受信メール閲覧、あるいはインターネット利用操作などを共に記憶させても良い。これにより、紛失中に携帯電話が第三者に使用された場合にその操作内容まで知ることができ、第三者に見られたくないデータが見られたかどうかもわかる。」の記載参照。)である。
したがって、引用発明において、認証された利用者によって前記操作履歴情報の当該電子機器の前記画面上への表示の要求があった場合に前記記憶された操作履歴情報を前記画面に表示するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から、当業者であれば予想できる範囲内のものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-23 
結審通知日 2013-01-29 
審決日 2013-02-12 
出願番号 特願2006-106182(P2006-106182)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊田 朝子  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 衣川 裕史
稲葉 和生
発明の名称 電子機器、履歴表示方法及びプログラム  
代理人 緒方 雅昭  
代理人 石橋 政幸  
代理人 宮崎 昭夫  

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