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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01G
管理番号 1272240
審判番号 不服2011-18231  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-23 
確定日 2013-04-01 
事件の表示 特願2000-231904号「土入れ用反撥壁およびそれを使用した苗箱用土入れ装置、ならびにそれらを利用した苗箱内への土入れ方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月12日出願公開、特開2002- 45047号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年7月31日の出願であって、平成23年8月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年8月23日に審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされ、当審において平成24年10月1日付けで拒絶理由を通知したところ、平成24年12月10日に手続補正がなされると共に意見書が提出されたものである。

第2 本願発明について
1.本願発明
本件出願の請求項1?7に係る発明は、平成24年12月10日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
硬質で滑らかな表面を有し、所定時間当たり略定量ずつ連続的に床土を落下、供給し得るようにした苗箱用床土供給機構における床土落下範囲に対して、垂直面から少なくとも30°程度の傾斜角度で差込み配置して当該落下範囲をカバーできるだけの平面形となし、その両端縁を表面側に夫々折曲して溢止片を有する樋状構造のものに形成した反撥壁本体と、該反撥壁本体の反撥壁面に略平行状か、あるいは所望する角度で対峙するかし、床土の異常な跳ね返りを阻止するようにした散乱防止壁と、苗箱用床土供給機構内の適宜箇所に接続可能とする連結部を一端側に有し、他端側には、前記反撥壁本体を、床土落下範囲内に、垂直面から略30°ないし60°程度の中の所望角度で差込み配置、固定可能とする本体固定部を形成してなる連結金具とからなるものとしたことを特徴とする土入れ用反撥壁。」

2.引用刊行物とその記載事項
(1)当審における平成24年10月1日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭59-25623号公報(以下「刊行物1」という。)には、床土を育苗箱に供給する方法に関して、次の技術的事項が記載されている。

(ア)「第6図は反射板13の取付角度と上下位置を調節できるようにしたもので、軸43により機体に対して回動自在に取付けまた、長穴44とボルト45により上下調節自在に取付られる。」(第2頁右上欄第14行?左下欄第3行)
(イ)「前記床土供給装置10のホッパー11には前記した床土を充填してあるから、これが前記繰出ベルト12によりホッパー11から繰出されて繰出ベルト12の前方にある反射板13に衝突する。しかして、床土には大塊土40、中粒土41、小粒土42が混合しているが、大塊土40は大きい塊りなので反射板13に衝突したときの衝撃力は最大であり、次には中粒土41の衝撃力が大きく、小粒土42は衝撃力が最小である。それゆえに、床土は反射板13に衝突して分散して落下するが、前記の衝撃力の差により大塊土40は後方の最も遠くに、その次に中粒土41が、小粒土42は最も近くにとばされて落下する。」(第2頁右下欄第14行?第3頁左上欄第13行)
(ウ)「そして育苗箱8内に充填される状態は反射板13の取付角度とか上下位置を調節して最適状態にしておく。」(第3頁右上欄第2?4行)
(エ)第6図は第二実施例図であり、そこには、反射板13が、平らな表面を有し、表面に上方から連続的に落下する床土が衝突する様に、垂直面に対して傾斜して配置された態様で図示されている。
また、反射板13の床土が衝突する面が、上方から連続的に落下する床土が衝突する様に、垂直面に対して傾斜して配置されたものが図示されている。
また、軸43が軸43からボルト45にいたる機構の一端側に、ボルト45が軸43からボルト45にいたる機構の他端側に位置するものが図示されている。

上記記載によれば、第6図記載の第二実施例に着目して、次の発明が開示されているものと認められる。
「ホッパー11、繰出ベルト12、反射板13等からなり、衝撃力の差により大塊土40は遠くに、小粒土42は近くに飛ばす床土供給装置10であって、
育苗箱の底部に塊を、その上部に小中粒土を積層する様にした床土供給装置10における繰出ベルト12の前方に床土が衝突する様に配置し、床土が衝突する面に形成した反射板13と、反射板13を軸43により機体に対して回動自在に、長穴44とボルト45により上下調節自在に取付る構成とを有する床土供給装置10。」
(以下、「引用発明」という。)

(2)当審における平成24年10月1日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実公平4-36601号公報(以下「刊行物2」という。)には、育苗箱用播種装置における土供給装置に関して、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「バケツト9を上下方向に無端状に回動させるバケツトコンベアの左右側フレーム2,3と、該左右側フレーム2,3の上部に設けた前記バケツト9より放出された土を育苗箱用播種装置に設けられた土供給装置24の土ホツパー25に供給する供給樋22と、前記左右側フレーム2,3の下部に設けたホツパー15およびモータケース16ならびに運搬用車輪17とからなる土供給装置において、前記バケツト9は、該バケツト9を取付ける回動チエン8に対して略並行の垂直板10と該垂直板10の下縁より外方に突設する底板11と前記垂直板10および前記底板11の側部に取付られる側板12とにより形成し、前記バケツト9の垂直板10の上端13と先行バケツト9の垂直板10の下端14とは可及的に隙間なく形成し、前記底板11は後続の反転したバケツト9の垂直板10に続く略同一の土が流下する傾斜に構成し、前記供給樋22は、上面を開放した断面上向きコ型形状に形成し、かつ、前記底板11上の土の流下が終了する位置に設けた育苗箱用播種装置における土供給装置。」(実用新案登録請求の範囲)
(イ)第1?3図には、平らな底板の両側に壁を配した供給樋22が記載されている。

(3)当審における平成24年10月1日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-286860号公報(以下「刊行物3」という。)には、播種装置における土供給装置に関して、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【0009】しかして、前記バケットコンベア12の上端部Aは前記供給ホッパー3の前後側側部Bに臨ませて設ける。前記バケットコンベア12の上端部Aには、バケットコンベア12側が高く覆土または床土供給装置1側に至るに従い低く傾斜させた底板20aと起立板20bとからなる案内カバー20を設け、底板20aの先側下面に前記上端部Aより排出した土を前記供給ホッパー3の前記前後側側部Bに供給する誘導樋21を設ける。」
(イ)第1?5図には、底板20aの両側に起立板20bを配した案内カバー20が記載されている。

(4)当審における平成24年10月1日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭53-36075号公報(以下「刊行物4」という。)には、粒体から金属線材片を分離する方法および装置に関して、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「第1図および第2図において、1はガラス粒体に金属線材片の混入した混合粒体、2は粒体1を落下させるために急斜面に配置された第1シュート、3は第1シュート2を通って落下するガラス粒体1を受けるための多少傾斜して設けられた反発板、・・・」(第2頁左上欄第14?19行)
(イ)「混合粒体1が第1シュート2の上端部に供給されると、・・・落下し、下方に設けられた反発板3に激突する。・・・ガラス粒体8は反発板3から強くはね返って・・網体4の網目を通過して第2シュート6上に落下する。・・・線材7は線状で有るため反発板3に衝突してもあまり強くはね飛ばない・・」(第2頁右上欄第12?20行)
(ウ)第2図には、両側に壁を配した反発板3が記載されている。


3.判断
(1)本願発明と引用発明との対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
(a)引用発明の「床土供給装置10」は、本願発明の「苗箱用床土供給機構」に相当し、以下同様に、
反射板13の「床土が衝突する面」は、「反撥壁面」に、
「反射板13」は、「反撥壁本体」、に相当する。
また、引用発明の「床土供給装置10」の反射板13等の部分は、本願発明の「土入れ用反撥壁」に相当する。
(b)引用発明の反射板13の「床土が衝突する面」は、刊行物1記載事項(エ)の様に平な表面であり、「繰出ベルト12」は、第6図記載の様に、繰出ベルト12が等速回転する限り、ホッパー11から供給される床土を、所定時間当たり略定量ずつ連続的に落下する構造のものであり、反射板13の「床土が衝突する面」は、刊行物1記載事項(エ)記載の様に、上方から連続的に落下する床土が衝突する様に、垂直面に対して傾斜して配置されたものであり、「垂直面に対して傾斜して配置され」ている以上、投影図平面図における平面形であることは自明であり、また、「床土が衝突する様に」配置する以上、床土の落下範囲をカバーできるものであることは必然である。
そうすると、引用発明の「育苗箱の底部に塊を、その上部に小中粒土を積層する様にした床土供給装置10における繰出ベルト12の前方に床土が衝突する様に配置し、床土が衝突する面に形成した反射板13」と、
本願発明の「硬質で滑らかな表面を有し、所定時間当たり略定量ずつ連続的に床土を落下、供給し得るようにした苗箱用床土供給機構における床土落下範囲に対して、垂直面から少なくとも30°程度の傾斜角度で差込み配置して当該落下範囲をカバーできるだけの平面形となし、その両端縁を表面側に夫々折曲して溢止片を有する樋状構造のものに形成した反撥壁本体」とは、
「滑らかな表面を有し、所定時間当たり略定量ずつ連続的に床土を落下、供給し得るようにした苗箱用床土供給機構における床土落下範囲に対して、垂直面から所定の傾斜角度で差込み配置して当該落下範囲をカバーできるだけの平面形とした反撥壁本体」である点で共通する。
(c)引用発明の「反射板13を軸43により機体に対して回動自在に、長穴44とボルト45により上下調節自在に取付る構成」の「軸43」は、機体に対する取付け部材といえるものであり、「反射板13を軸43により機体に対して回動自在に、長穴44とボルト45により上下調節自在に取付る構成」の「ボルト45」は、反射板13(本願発明の「反撥壁本体」に相当するもの。)を、床土落下範囲内に、配置、固定可能とするといえるものである。
そうすると、引用発明の「反射板13を軸43により機体に対して回動自在に、長穴44とボルト45により上下調節自在に取付る構成」と、
本願発明の「苗箱用床土供給機構内の適宜箇所に接続可能とする連結部を一端側に有し、他端側には、前記反撥壁本体を、床土落下範囲内に、垂直面から略30°ないし60°程度の中の所望角度で差込み配置、固定可能とする本体固定部を形成してなる連結金具」とは、
「反撥壁本体を、床土落下範囲内に、配置、固定可能とする、苗箱用床土供給機構に対する取付け部材」である点で共通する。

(2)両発明の一致点
「滑らかな表面を有し、所定時間当たり略定量ずつ連続的に床土を落下、供給し得るようにした苗箱用床土供給機構における床土落下範囲に対して、垂直面から所定の傾斜角度で差込み配置して当該落下範囲をカバーできるだけの平面形とした反撥壁本体と、反撥壁本体を、床土落下範囲内に、配置、固定可能とする、苗箱用床土供給機構に対する取付け部材とからなるものとした土入れ用反撥壁。」

(3)両発明の相違点
(ア)反撥壁本体の垂直面から所定の傾斜角度が、本願発明は「少なくとも30°程度の傾斜角度」であるのに対して、引用発明はそのようなものであるか不明な点。
(イ)反撥壁本体が、本願発明は「その両端縁を表面側に夫々折曲して溢止片を有する樋状構造のものに形成した」もの(なお、「その」は「反撥壁面」)であるのに対して、引用発明はそのようなものでない点。
(ウ)土入れ用反撥壁が、本願発明は「該反撥壁本体の反撥壁面に略平行状か、あるいは所望する角度で対峙するかし、床土の異常な跳ね返りを阻止するようにした散乱防止壁」を有するものであるのに対して、引用発明はそのようなものでない点。
(エ)反撥壁本体を、床土落下範囲内に、配置、固定可能とする、苗箱用床土供給機構に対する取付け部材が、
本願発明は「苗箱用床土供給機構内の適宜箇所に接続可能とする連結部を一端側に有し、他端側には、前記反撥壁本体を、床土落下範囲内に、垂直面から略30°ないし60°程度の中の所望角度で差込み配置、固定可能とする本体固定部を形成してなる連結金具」であるのに対して、引用発明はそのようなものでない点。

(4)本願発明の容易推考性の検討
ア.相違点(ア)について
引用発明の反射板13は、「軸43により機体に対して回動自在に・・取付」ることにより、刊行物1記載事項(ウ)の取付角度を「調節して」、床土の「充填される状態」を「最適状態にしておく」ものであるので、引用発明における反射板13の取付角度を適宜調節して、30°ないし60°程度の少なくとも30°程度の傾斜角度とすることは当業者が適宜なし得ることである。
そうすると、引用発明における反射板13の取付角度を適宜調節して、30°ないし60°程度の少なくとも30°程度の傾斜角度として、相違点(ア)に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ.相違点(イ)について
刊行物2に平らな底板の両側に壁を配した供給樋22が、刊行物3にも底板20aの両側に起立板20bを配した案内カバー20が、刊行物4にも両側に壁を配した反発板3が記載されている様に、砂や土の通路となる部材の両側に壁を配することは周知技術であり、引用発明における苗土がその上面を通過する反射板13の両側に壁を配して、相違点(イ)に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ.相違点(ウ)について
(ア)まず、本願明細書の記載において、「散乱防止壁」なる用語は、【0010】に「床土の異常な跳ね返りを阻止するよう反撥壁面に略平行状、あるいは所望する角度で対峙する散乱防止壁を形成した構造とすることができ」との記載で使用しているにすぎず、【図1】?【図3】にも図示されていないものであるので、本願発明の「散乱防止壁」により特定される構成は、「散乱防止壁」なる文言から当業者が、周知技術等の技術常識に基づいて認識し得る程度のものととらえるべきものである。
すなわち、「散乱防止壁」は、反発面の跳ね方の違いを用いて固形移送対象物を選別する装置の移送物が飛び出しそうな箇所に配される、飛び出しを防止する壁の様なものと認識される。

(イ)そして、反発面の跳ね方の違いを用いて固形移送対象物を選別する装置において、移送物が反発面で跳ねて不所望の場所に飛び出すのを防止する為に、反発面に対峙して、移送対象物の飛び出しを防止する壁を配することは、例えば、当審における平成24年10月1日付けで通知した拒絶の理由に例示した、実公昭55-52938号公報に分散版4の対面側が箱状本体1の壁部として構成されたものが記載され、実公昭36-32865公報にコンベア1の送出端2から第一傾斜承板3の対面にかけてカバー21が配されたものが記載され、実願昭53-122112号(実開昭55-39154号)のマイクロフィルムの第1図にケーシング20の側壁で硬質物質を飛び出さないようにして軌跡17aとするものが記載されているように、周知慣用技術である。

(ウ)一方、引用発明の床土供給装置10は、反射板13により大塊土40は遠くに、小粒土42は近くに飛ばすものであって、反発面の跳ね方の違いを利用した装置である点で、上記周知慣用技術と技術的に共通性のある装置であり、さらに、一般的に不所望な箇所へ移送物が飛散することは望ましく無い事象と認識され、上記周知慣用技術を採用する動機付けも存在する。
そうすると、引用発明において、反発面として機能する反射板13(本願発明の「反撥壁本体」に相当するもの)の床土が衝突する面(本願発明の「反撥壁面」に相当するもの)に、平行状か、あるいは所望する角度で対峙して該周知慣用技術の飛び出しを防止する壁を配置して、反射板13の床土が衝突する面に略平行状か、あるいは所望する角度で対峙するかし、床土の異常な跳ね返りを阻止するようにした壁を有するものとして、相違点(ウ)に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(エ)請求人は、平成24年12月10日付け意見書において、「『苗箱用床土供給機構から落下して該反撥壁本体の反撥壁面に衝突した床土の異常な跳ね返りを阻止するよう、該反撥壁本体の反撥壁面に略平行状か、あるいは所望する角度で対峙するかした散乱防止壁』で十二分に構成が特定されるものである・・・本願発明における技術的思想は、単に物を投下して堆積するときの跳ね返りを阻止する目的だけのプロクテクタートなどとは似て非なる物であり、傾斜した反撥壁本体反撥壁面に積極的に衝突させて異常な跳ね返りをする物、その物は、苗箱用に整えられた有用な床土である、それらを整然と所定の苗箱に堆積する、という特殊な状況下で配されるものである」旨主張しているので、該主張についても検討する。

まず、上記(イ)に記載した、反発面に対峙して、移送対象物の飛び出しを防止する壁を配する技術は、請求人が主張するような「物を投下して堆積する」ものに限らず、土、塵埃等の固形移送対象物の取り扱いにおいて一般的に用いられる技術と認識されるものである。
そして、上記反発面の跳ね方の違いを用いて固形移送対象物を選別する装置において、移送物が反発面で跳ねて不所望の場所に飛び出すのを防止する為に、反発面に対峙して、移送対象物の飛び出しを防止する壁が設けられているものであり、反射板13により大塊土40は遠くに、小粒土42は近くに飛ばす引用発明の床土供給装置10と技術的に共通性のあるものであるので、引用発明における反射板13の対面側に周知慣用技術である飛び出しを防止する壁を配することに、技術分野の違いに起因する、適用の困難性が存在したとは認められない。

また、上記主張の「苗箱用床土供給機構から落下して該反撥壁本体の反撥壁面に衝突した床土の異常な跳ね返りを阻止するよう、該反撥壁本体の反撥壁面に略平行状か、あるいは所望する角度で対峙するかした散乱防止壁」の、前半の「苗箱用床土供給機構から落下して該反撥壁本体の反撥壁面に衝突した床土」までの部分は、本願特許請求の範囲の請求項1にそのままの形で記載されたものでないので、上記(ウ)では、その様は表現を使用していない。
しかし、上記(ウ)の引用発明の「床土が衝突する面」に衝突する床土は、刊行物1の第6図記載の様に、上方から連続的に落下する床土であって、請求人が主張する「苗箱用床土供給機構から落下して該反撥壁本体の反撥壁面に衝突した床土」ともいえるものであるので、散乱防止壁が、請求人の主張する様なものと解しても結論が変わるものではない。

エ.相違点(エ)について
(ア)まず、上記ア.記載の様に引用発明における反射板13の取付角度を適宜調節して、引用発明の反射板13を軸43により機体に対して回動自在に取付る構成の反射板13の取付け角度を30°ないし60°程度の傾斜とすることは当業者が適宜なし得ることである。

(イ)また、引用発明の軸43による機体に対する反射板13の取付けは、刊行物1第6図記載の様に、反射板13の比較的近傍で行われているものであるが、機体の適当な固定部位が必ず、そのような位置に有るとは限らない。
一方、被固着物の固着部位と、固着物の固着部位との間に距離が有る場合に、一端側に被固着物への固着部を、他端側への固着部を有する連結具を用いて固定を行う事は、周知慣用の固着手段である。
そうすると、直接機体に回動自在に取り付けるか、連結具を介して連結具に回動自在に取り付けるかは、機体の構造に応じて当業者が適宜決める設計的事項である。

(ウ)以上のことから、引用発明における反射板13の取付角度を適宜調節して、30°ないし60°程度の傾斜とし、引用発明の軸43を、機体に一端を固定した連結部の他端に設けた構造として、相違点(エ)に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

オ.まとめ
本願発明の作用効果は、引用発明、刊行物2?4に記載された事項、及び、周知技術から当業者であれば予測できた範囲のものである。
すると、本願発明は、引用発明、刊行物2?4に記載された事項、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということができる。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-11 
結審通知日 2013-01-22 
審決日 2013-02-04 
出願番号 特願2000-231904(P2000-231904)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 博之草野 顕子  
特許庁審判長 高橋 三成
特許庁審判官 中川 真一
鈴野 幹夫
発明の名称 土入れ用反撥壁およびそれを使用した苗箱用土入れ装置、ならびにそれらを利用した苗箱内への土入れ方法  
代理人 佐々木 實  

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