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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1272284
審判番号 不服2011-26862  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-12 
確定日 2013-04-04 
事件の表示 特願2006-149871「通信システム、通信方法および通信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月13日出願公開、特開2007-324699〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成18年5月30日の出願であって、平成23年9月9日に拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年12月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年12月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の平成23年3月16日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された、

「【請求項2】
周波数または時間または符号またはそれらの組み合わせによって分割または多重された複数の通信チャネルに、データ系列を割り当てて通信を行う通信システムであって、
1つの通信チャネルまたは複数の通信チャネルを結合した1つの結合通信チャネルに、送信先の異なるデータ系列を含む複数のデータ系列を割り当て、
1又は複数のデータ系列に対して誤り検出符号が付加された単位を、複数結合して誤り訂正符号化の処理単位として誤り訂正符号化し、前記複数の送信先に対して同時に送信することを特徴とする通信システム。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「【請求項1】
周波数または時間または符号またはそれらの組み合わせによって分割または多重された複数の通信チャネルに、データ系列を割り当てて通信を行う通信システムであって、
1つの通信チャネルまたは複数の通信チャネルを結合した1つの結合通信チャネルに、送信先の異なるデータ系列を含む複数のデータ系列を割り当て、
前記1つの通信チャネルまたは前記1つの結合通信チャネルに割り当てられた前記複数のデータ系列を、少なくとも1つのデータ系列毎に誤り検出符号を付加した後に結合して誤り訂正符号化の1処理単位として誤り訂正符号化し、前記複数の送信先に対して同時に送信することを特徴とする通信システム。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、「誤り訂正符号化」に関し、補正前の特許請求の範囲の請求項2に記載された「1又は複数のデータ系列に対して誤り検出符号が付加された単位を、複数結合して誤り訂正符号化の処理単位として誤り訂正符号化し、」の構成を「前記1つの通信チャネルまたは前記1つの結合通信チャネルに割り当てられた前記複数のデータ系列を、少なくとも1つのデータ系列毎に誤り検出符号を付加した後に結合して誤り訂正符号化の1処理単位として誤り訂正符号化し、」という構成に限定して特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
上記本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

(2)引用発明
原審の拒絶理由に引用された、特開2001-119426号公報(以下、「引用例」という。)には「誤り制御方法及びその方法を使用する通信システム」として図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディジタル通信、特に移動無線通信のような符号誤りが生じ易い環境下での通信に好適な誤り制御技術に関する。」(3頁4欄)

ロ.「【0033】
【発明の実施の形態】(第1の実施例)図1に本発明の第1の実施例における通信システムを示す。同図に示すように、この通信システムは送信機11と受信機13が伝送路15を介して接続された構成である。この通信システムの方式はどのようなものでもよい。送信機11は例えば音声信号を符号化する誤り訂正符号化部17と、符号化された符号語を送信単位のパケットに分割する分割部19を有する。なお、本発明の誤り制御方法はどのような通信システムの方式にも適用することができるので、送信機11に一般的に備えられる変調部、送信部等は当該通信システムの方式に応じて備えればよく、変調部、送信部等は図示していない。受信機13は受信パケットの信頼度を測定する信頼度測定部21-1?21-N、受信パケットを合成する合成部23、合成した符号語を復号する誤り訂正/検出復号部25、及び受信パケットの誤り状況から再送の判断を行う判定部27を有する。送信機11と同様、受信機13に一般的に備えられる受信部、復調部等は図示していない。伝送路15としては無線、有線、もしくはそれらの組み合わせを使用することができる。また、誤り訂正符号化部における符号器としては例えば図18に示すようなターボ符号器が使用され、その場合、誤り訂正/検出復号部では図19に示すようなターボ復号器が使用される。
【0034】次に本発明の一実施例の通信システムの動作を説明する。送信機11において、音声信号等の送信すべき情報を伝送単位のパケットに分割せずにまず誤り訂正符号化部17で誤り訂正符号化し、分割部19にて符号語を伝送単位のパケットに分割し伝送する。誤り訂正符号化部で使用する誤り訂正符号としては、符号化する単位が大きいほど誤り訂正能力が向上するような特性を有する誤り訂正符号を使用する。そのような符号として例えば図18、図19に示した符号器、復号器で使用されるターボ符号がある。」(6頁10欄?7頁11欄)

ハ.「【0045】(第5の実施例)図4に示す例では、送信機において端末A用の情報と、端末B用の情報をまとめて符号化し、それをa-1、a-2、a-3、b-1、b-2、b-3のパケットに分割して送信する。受信側では端末A、端末Bがそれぞれ全てのパケットを受信し、自分宛のパケットが全て正しい場合には、自分宛の情報のみを取り出す。自分宛のパケットに誤りがあれば全パケットを合成して復号を行い、自分宛の情報のみを取り出す。次に誤り検出を行い誤りを検出すれば再送を行う。」(8頁13欄)

上記イ.?ハ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、
引用例には、上記イ.のように、通信システムにおける誤り制御技術について記載がある。
上記ロ.及び【図1】の記載によれば、(第1の実施例)として、送信すべき情報をターボ符号により誤り訂正符号化し、1つの伝送路15で送信する通信システムが記載されている。ここで、送信すべき情報は1つの伝送路15に割り当てられているということができる。
そして、上記ハ.及び【図4】には、上記ロ.に記載された(第1の実施例)を基礎とした(第5の実施例)が記載されており、端末A用の情報と端末B用の情報、すなわち宛先の異なる情報をまとめて誤り訂正符号化して送信し、端末A及び端末Bではまとめて受信して、復号し、自分宛の情報を取り出すとされている。すなわち、宛先の異なる情報をまとめて、誤り訂正符号化の1つの処理単位として誤り訂正符号化し、異なる宛先に対して同時に送信しているといえる。

したがって、上記引用例の(第5の実施例)には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「伝送路に情報を割り当てて通信を行う通信システムであって、
1つの伝送路に、宛先の異なる情報を割り当て、
前記1つの伝送路に割り当てられた前記宛先の異なる情報を、まとめて、ターボ符号による誤り訂正符号化の1処理単位として誤り訂正符号化し、前記異なる宛先に対して同時に送信する通信システム。」

(3)対比・判断
引用発明の「伝送路に情報を割り当てて通信を行う通信システム」に関し、引用発明の「情報」はディジタル通信における情報であってデータ列で構成されることは自明であるから補正後の発明の「データ系列」に相当する。また、引用発明の「伝送路」は、送信すべき情報の通信路であるから補正後の発明の「通信チャネル」に相当するものの、1つの通信チャネルであって、補正後の発明のように「周波数または時間または符号またはそれらの組み合わせによって分割または多重された複数の通信チャネル」とは相違するが、両者は「通信チャネル」である点で共通する。したがって、引用発明の「伝送路に情報を割り当てて通信を行う通信システム」は、補正後の発明の「周波数または時間または符号またはそれらの組み合わせによって分割または多重された複数の通信チャネルに、データ系列を割り当てて通信を行う通信システム」と、「通信チャネルに、データ系列を割り当てて通信を行う通信システム」である点で共通する。

引用発明の「1つの伝送路に、宛先の異なる情報を割り当て、」に関し、引用発明の「宛先」は送信すべき情報の宛先であるから補正後の発明の「送信先」に相当する。また、「宛先の異なる情報」は複数の情報であるから補正後の発明のように「複数のデータ系列」となる。また、「1つの伝送路」は、補正後の発明の択一的な記載である「1つの通信チャネルまたは複数の通信チャネルを結合した1つの結合通信チャネル」のうちの一方の記載「1つの通信チャネル」に相当する。したがって、引用発明の「1つの伝送路に、宛先の異なる情報を割り当て、」は補正後の発明の「1つの通信チャネルまたは複数の通信チャネルを結合した1つの結合通信チャネルに、送信先の異なるデータ系列を含む複数のデータ系列を割り当て、」に相当する。

引用発明の「前記1つの伝送路に割り当てられた前記宛先の異なる情報を、まとめて、ターボ符号による誤り訂正符号化の1処理単位として誤り訂正符号化し、」に関し、引用発明の「1つの伝送路」は、上述のように補正後の発明の択一的な記載である「1つの通信チャネルまたは複数の通信チャネルを結合した1つの結合通信チャネル」のうちの一方の記載「1つの通信チャネル」に相当する。また、引用発明の「宛先の異なる情報」は上述のように補正後の発明の「複数のデータ系列」に相当する。ここで、引用発明では、「宛先の異なる情報」を直接まとめて「誤り訂正符号化の1処理単位」としているのに対し、補正後の発明では「前記複数のデータ系列」を「少なくとも1つのデータ系列毎に誤り検出符号を付加した後に結合」して「誤り訂正符号化の1処理単位」としている点で相違するものの、両者は「前記複数のデータ系列」を「特定の手法で結合」して「誤り訂正符号化の1処理単位」としている点で共通する。したがって、引用発明の「前記1つの伝送路に割り当てられた前記宛先の異なる情報を、まとめて、ターボ符号による誤り訂正符号化の1処理単位として誤り訂正符号化し、」は、補正後の発明の「前記1つの通信チャネルまたは前記1つの結合通信チャネルに割り当てられた前記複数のデータ系列を、少なくとも1つのデータ系列毎に誤り検出符号を付加した後に結合して誤り訂正符号化の1処理単位として誤り訂正符号化し、」と、「前記1つの通信チャネルまたは前記1つの結合通信チャネルに割り当てられた前記複数のデータ系列を、特定の手法で結合して誤り訂正符号化の1処理単位として誤り訂正符号化し、」の点で共通する。

したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「通信チャネルに、データ系列を割り当てて通信を行う通信システムであって、
1つの通信チャネルまたは複数の通信チャネルを結合した1つの結合通信チャネルに、送信先の異なるデータ系列を含む複数のデータ系列を割り当て、
前記1つの通信チャネルまたは前記1つの結合通信チャネルに割り当てられた前記複数のデータ系列を、特定の手法で結合して誤り訂正符号化の1処理単位として誤り訂正符号化し、前記複数の送信先に対して同時に送信することを特徴とする通信システム。」

(相違点)
(1)「通信チャネル」に関し、補正後の発明は、「周波数または時間または符号またはそれらの組み合わせによって分割または多重された複数の通信チャネル」であるのに対し、引用発明では、1つの「伝送路」である点。
(2)「特定の手法で結合」に関し、補正後の発明では「複数のデータ系列を、少なくとも1つのデータ系列毎に誤り検出符号を付加した後に結合」しているのに対し、引用発明では「複数のデータ系列」に相当する「宛先の異なる情報」を直接結合している点。

そこで、上記相違点について検討する。
まず、上記相違点(1)について検討する。
情報を大量かつ高速に通信するために、伝送路を多重化して通信することは通信分野における常套手段にすぎず、周波数による多重化手法として周波数分割多重方式(FDM)、直交周波数分割多重方式(OFDM)等、時間による多重化手法として時分割多重方式(TDM)等、符号による多重化手法として符号分割接続方式(CDM)等、及び、それら多重化手法の組み合せはいずれも当業者に周知のものにすぎない。
当業者であれば、引用発明の通信システムの伝送路を、上述した周知の多重化手法を用いて「周波数または時間または符号またはそれらの組み合わせによって分割または多重された複数の通信チャネル」とすることを容易に実施し得るものである。
よって、上記相違点(1)は格別なものでない。

ついで、上記相違点(2)について検討する。
引用発明では、誤り訂正符号としてターボ符号を用いている。
ターボ符号化において、ターボ符号化器に入力する情報に予め誤り検出符号(CRC等)を付加しておいた後、ターボ符号による誤り訂正符号化を行って送信し、受信装置においてターボ符号化された受信信号を反復復号した結果を誤り検出符号を用いて検証(例えば、CRCチェック)するようなことは常套手段にすぎない。
さらに、ターボ符号化器に入力する情報単位が複数あれば、それぞれの情報単位に誤り検出符号を付加することも周知(例えば、特開2003-298556号公報の【従来の技術】の段落【0005】及び【図13】の記載、特開2006-109019号公報の【背景技術】の段落【0003】?【0004】及び【図5】の記載等を参照)である。
当業者であれば、上記周知技術を引用発明のターボ符号による誤り訂正符号化に適用して、宛先の異なる情報を直接結合して誤り訂正符号化の1処理単位として誤り訂正符号化することに替えて、情報単位である宛先の異なるそれぞれの情報毎に誤り検出符号を付加した後に結合して誤り訂正符号化の1処理単位として誤り訂正符号化することを容易に実施するものである。
よって、上記相違点(2)も格別なものでない。

そして、補正後の発明に関する作用・効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

以上のとおりであるから、上記補正後の発明は上記引用発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明及び周知技術
引用発明及び周知技術は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の「(2)引用発明」及び「(3)対比・判断」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から、本件補正に係る構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、上記補正後の発明から本件補正に係る限定を省いた本願発明も、同様の理由により、容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-30 
結審通知日 2013-02-05 
審決日 2013-02-18 
出願番号 特願2006-149871(P2006-149871)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04J)
P 1 8・ 575- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 洋  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 竹井 文雄
矢島 伸一
発明の名称 通信システム、通信方法および通信装置  
代理人 今村 健一  
代理人 渡辺 敏章  
代理人 平木 祐輔  

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