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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1272301
審判番号 不服2012-9276  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-21 
確定日 2013-04-04 
事件の表示 特願2008-175698「回路付サスペンション基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月21日出願公開、特開2010- 15641〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成20年7月4日の出願であって、平成23年11月29日付けで通知した拒絶理由に対して、平成24年1月30日付けで手続補正がなされたが、同年3月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされた。

その後、当審において、平成24年8月2日付けで、前置報告書(特許法第164条第3項)を利用した審尋を行ったところ、同年9月25日付けで回答書が提出されたものである。


第2.平成24年5月21日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成24年5月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1.補正の内容

本件補正は、補正前の平成24年1月30日付け手続補正書の特許請求の範囲について、
(a)
「 【請求項1】
金属支持基板を用意して、前記金属支持基板の上に形成されるベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の上に形成される導体パターンと、前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆するように形成されるカバー絶縁層とを形成する工程と、
前記ベース絶縁層の上に接着剤層を積層する工程と、
光導波路を用意する工程と、
前記光導波路を、前記ベース絶縁層の上に接着する工程と
を備えることを特徴とする、回路付サスペンション基板の製造方法。
【請求項2】
前記光導波路は、アンダークラッド層と、前記アンダークラッド層の表面に形成され、前記アンダークラッド層よりも屈折率の高いコア層と、前記アンダークラッド層の表面に、前記コア層を被覆するように形成され、前記コア層よりも屈折率の低いオーバークラッド層とを備え、
前記光導波路を接着する工程では、前記アンダークラッド層または前記オーバークラッド層を、前記ベース絶縁層の上面に、接着剤層を介して接着することを特徴とする、請求項1に記載の回路付サスペンション基板の製造方法。」とあったものを、

(b)
「 【請求項1】
金属支持基板を用意して、前記金属支持基板の上に形成されるベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の上に形成される導体パターンと、前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆するように形成されるカバー絶縁層とを形成する工程と、
光導波路を用意する工程と、
前記金属支持基板の長手方向一方側に発光素子を配置し、前記金属支持基板の長手方向他方側にヘッドスライダを搭載するための搭載部を配置する工程と、
前記ベース絶縁層の上に、前記発光素子から前記搭載部に至る前記光導波路を配置する領域に、その周端縁が前記光導波路の周端縁と平面視において略同一位置となるように、接着剤層を積層する工程と、
前記光導波路を、前記接着剤層の上に接着する工程と
を備えることを特徴とする、回路付サスペンション基板の製造方法。
【請求項2】
前記光導波路は、アンダークラッド層と、前記アンダークラッド層の表面に形成され、前記アンダークラッド層よりも屈折率の高いコア層と、前記アンダークラッド層の表面に、前記コア層を被覆するように形成され、前記コア層よりも屈折率の低いオーバークラッド層とを備え、
前記光導波路を接着する工程では、前記アンダークラッド層または前記オーバークラッド層を、前記ベース絶縁層の上面に、接着剤層を介して接着することを特徴とする、請求項1に記載の回路付サスペンション基板の製造方法。」と補正するものである。

2.補正の目的についての検討

請求項1における「前記金属支持基板の長手方向一方側に発光素子を配置し、前記金属支持基板の長手方向他方側にヘッドスライダを搭載するための搭載部を配置する工程」、「前記ベース絶縁層の上に、前記発光素子から前記搭載部に至る前記光導波路を配置する領域に、その周端縁が前記光導波路の周端縁と平面視において略同一位置となるように、接着剤層を積層する工程」は、補正前の請求項1における「前記ベース絶縁層の上に接着剤層を積層する工程」を限定するものであるから、この補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3.独立特許要件についての検討

本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1.補正の内容の(b)に記載したとおりのものである。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開2008-152899号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(なお、以下、摘記事項の下線は当審で付した。)

ア.「【請求項7】
金属支持基板を用意して、前記金属支持基板の上に形成されるベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の上に形成される導体パターンと、前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆するように形成されるカバー絶縁層とを形成する工程と、
光導波路を前記ベース絶縁層または前記カバー絶縁層の上に形成する工程と、
ヘッドスライダを搭載するための搭載部の近傍に、前記金属支持基板を厚み方向に貫通する開口部を形成する工程と、
前記ベース絶縁層および/またはカバー絶縁層と前記光導波路とを、前記開口部側から、前記光導波路の端面が前記光導波路が延びる方向と交差するように、切削する工程と
を備えることを特徴とする、回路付サスペンション基板の製造方法。」

イ.「【0004】
本発明の目的は、光アシスト法を採用できながら、設計上の自由を確保でき、製造効率を向上させることができるとともに、製造コストの低減を図ることができる回路付サスペンション基板およびその製造方法を提供することにある。」

ウ.「【0007】
また、本発明の回路付サスペンション基板では、さらに、発光素子を備えており、その発光素子が前記光導波路と光学的に接続されていることが好適である。
また、本発明の回路付サスペンション基板では、ヘッドスライダを搭載するための搭載部を備え、前記搭載部の近傍には、前記金属支持基板を厚み方向に貫通する開口部が形成されており、前記光導波路は、その一端が前記発光素子と接続され、その他端が前記開口部に臨むように形成されていることが好適である。
【0008】
また、本発明の回路付サスペンション基板では、前記光導波路が、前記導体パターンが延びる方向に沿って配置されており、前記発光素子が、前記金属支持基板の長手方向一方側に配置され、前記搭載部が、前記金属支持基板の長手方向他方側に配置されていることが好適である。
また、本発明の回路付サスペンション基板の製造方法は、金属支持基板を用意して、前記金属支持基板の上に形成されるベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の上に形成される導体パターンと、前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆するように形成されるカバー絶縁層とを形成する工程と、光導波路を前記ベース絶縁層または前記カバー絶縁層の上に形成する工程と、ヘッドスライダを搭載するための搭載部の近傍に、前記金属支持基板を厚み方向に貫通する開口部を形成する工程と、前記ベース絶縁層および/またはカバー絶縁層と前記光導波路とを、前記開口部側から、前記光導波路の端面が前記光導波路が延びる方向と交差するように、切削する工程とを備えることを特徴としている。」

エ.「【0010】
本発明の回路付サスペンション基板では、光アシスト法に用いられる光導波路を、ヘッドスライダよりも、スペース的に余裕を持って形成することができる。そのため、設計上の自由を確保でき、製造効率を向上させることができるとともに、製造コストの低減を図ることができる。
また、本発明の回路付サスペンション基板の製造方法によれば、光アシスト法に用いられる光導波路を、ヘッドスライダよりも、スペース的に余裕を持ってベース絶縁層またはカバー絶縁層の上に形成することができる。そのため、設計上の自由を確保できる。しかも、ベース絶縁層および/またはカバー絶縁層と光導波路とを、開口部側から一度に切削するので、光導波路から出射された光を所望の位置に向けて確実に照射させことができながら、簡易かつ迅速に製造することができる。そのため、製造効率を向上させることができるとともに、製造コストの低減を図ることができる。」

オ.「【0021】
そして、この回路付サスペンション基板1は、図3に示すように、金属支持基板11と、金属支持基板11の上に形成されるベース絶縁層12と、ベース絶縁層12の上に形成される導体パターン13と、ベース絶縁層12の上に、導体パターン13を被覆するように形成されるカバー絶縁層14とを備えている。
金属支持基板11は、図1および図3に示すように、回路付サスペンション基板1の外形形状に対応して形成されている。」

カ.「【0024】
そして、この回路付サスペンション基板1は、図1に示すように、光アシスト法に用いられる光アシスト部18を備えている。
光アシスト部18は、光導波路19と、発光素子20とを備えている。
光導波路19は、配線部3およびジンバル部4にわたって配置され、導体パターン13が延びる方向に沿って配置されている。」

キ.「【0026】
また、光導波路19は、発光素子20と光学的に接続されている。より具体的には、光導波路19は、その後端が、発光素子20と接続されるとともに、その先端が、開口部7に臨むように形成されている。
発光素子20は、光導波路19に光を入射させるための光源であって、例えば、電気エネルギーを光エネルギーに変換して、高エネルギーの光を出射する光源である。この発光素子20は、金属支持基板11の後端側に配置されており、より具体的には、配線部3の後端側であって、外部側接続端子部16と先端側に間隔を隔てて配置されており、信号配線15(第1配線15a)と幅方向一方側に間隔を隔てて配置されている。また、この発光素子20は、ベース絶縁層12の上に形成されている。」

ク.「【0029】
そして、図3に示すように、この回路付サスペンション基板1では、光導波路19は、ベース絶縁層12の上に設けられている。
このような光導波路19は、アンダークラッド層22と、アンダークラッド層23の上に形成されるコア層23と、アンダークラッド層22の上に、コア層23を被覆するように形成されるオーバークラッド層24とを備えている。」

ケ.「【0031】
図4は、図3に示す回路付サスペンション基板の製造工程を示す断面図であって、左側図は、図3に対応する配線部における幅方向に沿う断面図、右側図は、端子形成部における長手方向に沿う拡大断面図を示す。
次いで、この回路付サスペンション基板1の製造方法について、図4を参照して、説明する。
【0032】
まず、この方法では、図4(a)に示すように、金属支持基板11を用意する。
金属支持基板11は、ステンレス、42アロイ、アルミニウム、銅-ベリリウム、りん青銅などの金属材料から形成されている。金属支持基板11の厚みは、例えば、15?30μm、好ましくは、20?25μmである。
次いで、この方法では、図4(b)に示すように、金属支持基板11の上に、ベース絶縁層12、導体パターン13およびカバー絶縁層14を順次積層する。」

コ.「【0038】
これにより、金属支持基板11の上に、ベース絶縁層12、導体パターン13およびカバー絶縁層14を順次積層することができる。
なお、上記した導体パターン13の形成とともに、供給配線30および供給端子部31を上記と同様の方法により、同時に形成する。
次いで、この方法では、図4(c)に示すように、光導波路19を、ベース絶縁層12の上に形成する。」

上記「ア.」ないし「コ.」の記載によれば、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

金属支持基板を用意して、前記金属支持基板の上に形成されるベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の上に形成される導体パターンと、前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆するように形成されるカバー絶縁層とを形成する工程と、
発光素子が、前記金属支持基板の長手方向一方側に配置され、ヘッドスライダを搭載するための搭載部が、前記金属支持基板の長手方向他方側に配置される工程と、
その一端が前記発光素子と接続され、その他端が前記搭載部の近傍に形成された開口部に臨むように形成されている光導波路を前記ベース絶縁層の上に形成する工程と、
を備える、回路付サスペンション基板の製造方法。

また、原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開2008-124418号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(なお、以下、摘記事項の下線は当審で付した。)

サ.「【0023】
(光導波路の作製)
紫外線露光機((株)オーク製作所製、EXM-1172)にて紫外線(波長365nm)を1000mJ/cm2照射後、80℃で10分加熱し下部クラッド層形成用樹脂フィルムを光硬化した(図7(a)参照)。次に、このクラッド層上に、真空加圧式ラミネータ((株)名機製作所製、MVLP-500)を用い、圧力0.4MPa、温度50℃、加圧時間30秒の条件にてコア層形成用樹脂フィルムをラミネートした(図7(b)参照)。続いて幅50μmのホトマスク(ネガ型)を介し、上記紫外線露光機にて紫外線(波長365nm)を1000mJ/cm2照射し(図7(c)参照)、直後に後露光加熱(PEB)を80℃で5分した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとN,N-ジメチルアセトアミドの8対2質量比混合溶剤にて、コアパターンを現像した(図7(d)参照)。現像液の洗浄には、イソプロピルアルコールを用いた。次いで、同様なラミネート条件にて上部クラッド形成用樹脂フィルムをラミネートし、紫外線照射及び160℃で1時間加熱処理を行い、基材フィルムが外側に配置されたフレキシブル光導波路を作製した(図7(e)参照)。さらにポリアミドフィルム剥離のため、85℃/85%の高温高湿条件でフレキシブル光導波路を100時間処理した後、基材フィルムを剥がして除去し、フレキシブル光導波路を作製した(図7(f))。」

シ.「【0026】
[接着層付き光導波路の作製]
上記粘接着シートの保護フィルムを剥離し、粘接着層に50℃、0.4MPaの条件で光導波路を貼り合わせ、次に、ダイシングソー((株)ディスコ製、DAD-341)にて光導波路端部に45度ミラーを有する形状に個片化した。光導波路寸法は、長さ:45.99mm、幅1.99mm、厚さ:0.1mmであり、コアパターンは250μmピッチで4chとした。次にシート状接着剤の基材フィルム側から紫外線(波長365nm)を250mJ/cm2を照射して基材フィルムから剥離し、接着層付きの光導波路を得た。」

ス.「【0028】
[光電気複合回路基板の作製]
次いで、前記接着層付きの光導波路を、光素子搭載用配線を有するフレキシブル配線板に設けた位置決めガイド(長さ:46.00mm、幅:2.00mm、電気絶縁層(感光性ソルダレジスト)厚さ20μm)を用いて搭載し、80℃、0.4MPaの条件で加熱圧着した。さらに160℃で1時間加熱し、光電気複合回路基板を作製した。作製した光電気複合回路基板の断面模式図を図4に示す。(後略)」

(3)対比
引用発明と本願補正発明とを対比する。

引用発明の「回路付サスペンション基板の製造方法」は、本願補正発明の「回路付サスペンション基板の製造方法」に相当する。

引用発明の「金属支持基板を用意して、前記金属支持基板の上に形成されるベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の上に形成される導体パターンと、前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆するように形成されるカバー絶縁層とを形成する工程」は、本願補正発明の「金属支持基板を用意して、前記金属支持基板の上に形成されるベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の上に形成される導体パターンと、前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆するように形成されるカバー絶縁層とを形成する工程」に相当する。

引用発明の「発光素子が、前記金属支持基板の長手方向一方側に配置され、ヘッドスライダを搭載するための搭載部が、前記金属支持基板の長手方向他方側に配置される工程」は、本願補正発明の「前記金属支持基板の長手方向一方側に発光素子を配置し、前記金属支持基板の長手方向他方側にヘッドスライダを搭載するための搭載部を配置する工程」に相当する。

引用発明の「光導波路」は、「その一端が前記発光素子と接続され、その他端が前記搭載部の近傍に形成された開口部に臨むように形成されている」のであるから、本願補正発明の「前記発光素子から前記搭載部に至る前記光導波路」に相当する。
そして、引用発明の「その一端が前記発光素子と接続され、その他端が前記搭載部の近傍に形成された開口部に臨むように形成されている光導波路を前記ベース絶縁層の上に形成する工程」と、本願補正発明の「前記ベース絶縁層の上に、前記発光素子から前記搭載部に至る前記光導波路を配置する領域に、その周端縁が前記光導波路の周端縁と平面視において略同一位置となるように、接着剤層を積層する工程」及び「前記光導波路を、前記接着剤層の上に接着する工程」とは、前記ベース絶縁層の上に、前記発光素子から前記搭載部に至る前記光導波路を形成する工程である点で、共通するということができる。

以上のことから、引用発明と本願補正発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「 金属支持基板を用意して、前記金属支持基板の上に形成されるベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の上に形成される導体パターンと、前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆するように形成されるカバー絶縁層とを形成する工程と、
前記金属支持基板の長手方向一方側に発光素子を配置し、前記金属支持基板の長手方向他方側にヘッドスライダを搭載するための搭載部を配置する工程と、
前記ベース絶縁層の上に、前記発光素子から前記搭載部に至る前記光導波路を形成する工程と
を備える、回路付サスペンション基板の製造方法。」である点。

[相違点]
「前記ベース絶縁層の上に、前記発光素子から前記搭載部に至る前記光導波路を形成する」にあたり、本願補正発明では、「光導波路を用意する工程」と「前記ベース絶縁層の上に、」「前記光導波路を配置する領域に、その周端縁が前記光導波路の周端縁と平面視において略同一位置となるように、接着剤層を積層する工程」と「前記光導波路を、前記接着剤層の上に接着する工程」とを有するのに対して、引用発明では、そのような特定がない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。

引用例2の「サ.」ないし「ス.」を参照すると、基板の上に光導波路を形成するにあたり、光導波路を用意し、光導波路を接着剤層を介して基板の上に接着することが記載されている。
なお、同様のことは、例えば、特開2007-95167号公報(以下、「周知例1」という。)、特開2001-242363号公報(以下、「周知例2」という。)等にも記載されており、周知である。
(周知例1(【0025】-【0028】、図4等)には、導波路を用意し、導波路をサスペンション上に接着することが記載されている。
周知例2(【0027】-【0028】、図3等)には、光導波路基板を用意し、支持部材の上に接着剤層を積層し、光導波路基板を接着剤層を介して支持部材の上に接着することが記載されている。)

そして、基板の上に光導波路を形成する引用発明において、引用例2及び周知例1,2等にて周知の技術を適用することを妨げる特段の事情も窺えないので、引用発明において、「光導波路を前記ベース絶縁層の上に形成する」にあたり、光導波路を用意し、光導波路を接着剤層を介してベース絶縁層の上に接着することは、当業者にとって容易に想到し得たことである。
このとき、(a)ベース絶縁層の上のみに接着剤層を積層する方法、(b)光導波路の下のみに接着剤層を積層する方法、(c)ベース絶縁層の上及び光導波路の下に接着剤層を積層する方法、の何れかの方法とすることが技術常識から想定されるところ、(a)ベース絶縁層の上のみに接着剤層を積層する方法とすることは、適宜なし得ることである。
さらに、余剰な接着剤層を設けないことがごく普通に行われているところ、光導波路を接着する領域にのみ接着剤層を設けること(「光導波路を配置する領域に、その周端縁が前記光導波路の周端縁と平面視において略同一位置となるように、接着剤層を積層する」こと)も、適宜なし得ることである。

そして、本願補正発明が奏する効果についても、格別なものがあるとはいえない。

以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)独立特許要件についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について

(1)本願発明
平成24年5月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成24年1月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.の1.補正の内容の(a)に記載したとおりのものである。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記第2.の3.の(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記第2.の3.で検討した本願補正発明から、「前記金属支持基板の長手方向一方側に発光素子を配置し、前記金属支持基板の長手方向他方側にヘッドスライダを搭載するための搭載部を配置する工程」を有する限定事項を削除し、「前記ベース絶縁層の上に」「接着剤層を積層する工程」について「前記発光素子から前記搭載部に至る前記光導波路を配置する領域に、その周端縁が前記光導波路の周端縁と平面視において略同一位置となるように」接着剤層を積層する限定を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が上記第2.の3.に記載したとおり、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)付言
請求人は、回答書において、請求項1,2について補正案を提示し、補正の機会を求めているが、本願については補正をすることのできる時期は既に経過しており、また、補正の機会を与えるべき根拠も見出せない。
なお、当該補正案の内容を検討しても、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると認められる。


第4.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-24 
結審通知日 2013-01-29 
審決日 2013-02-12 
出願番号 特願2008-175698(P2008-175698)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 和俊  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 関谷 隆一
馬場 慎
発明の名称 回路付サスペンション基板の製造方法  
代理人 岡本 寛之  

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