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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23G |
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管理番号 | 1272813 |
審判番号 | 不服2011-5843 |
総通号数 | 162 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-03-16 |
確定日 | 2013-04-10 |
事件の表示 | 特願2009-518575「中心部充填型ガム片を連続的に形成するための改良型チェーンカッター」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月 3日国際公開、WO2008/003083、平成21年11月26日国内公表、特表2009-540866〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2007年6月29日(外国庁受理、パリ条約による優先権主張2006年6月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年12月25日付けで手続補正書が提出され、平成22年7月13日付けで拒絶理由が通知され、平成22年10月15日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年11月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年3月16日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。 2.請求項3に係る発明 平成22年10月15日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項3に係る発明は、以下のとおりのものである。 「【請求項3】 ロープ状の中心部充填型消費用製品を個々の一片に連続的に切断するための改良型チェーン型切断機であって、 複数の第1の開いたダイの空洞部を画定する第1の連続的な細長い回転するチェーンと、 複数の第2の開いたダイの空洞部を画定する第2の連続的な細長い回転するチェーンとを備え、 前記第1のダイの空洞部および前記第2のダイの空洞部は、相互に係合して前記ロープ状の製品の周りに閉じたダイの空洞を形成してこれにより前記一片を成形することができ、 前記製品はドウェル時間のあいだ前記閉じたダイの空洞内に留まり、 前記ロープと接触している閉じたダイ空洞の数は、既存のチェーン型切断機の4個に対して略1.5?略6倍大きく、 前記第1のチェーンおよび前記第2のチェーンの回転する速度は、前記ドウェル時間、前記第1のチェーンおよび前記第2のチェーンの長さおよび/または同時に係合している前記第1のダイの空洞部および前記第2のダイの空洞部の数により決定される、改良型チェーン型切断機。」 3.刊行物に記載された事項 本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2004-517627号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに下記の事項が記載されている。 ア「【0002】 【技術分野】 本発明は、中心部が充填された棒付きキャンディ(lollipop)に関する。より詳しくは、本発明は、ガム中心に液体が充填された硬質の棒付きキャンディに関する。」 イ「【0006】 【発明の概要】 本発明の一目的は、改良された棒付きキャンディ製造方法を提供することにある。本発明の一目的は、また、半流動体を中心部に充填された棒付きキャンディ製品を製造するためのシステムおよび方法を提供することにある。 【0007】 本発明のさらに別の目的は、3つの異なった材料または相を有する棒付きキャンディ製品を製造するシステム及び方法を提供することにある。本発明のまたさらに別の目的は、複数相のうちの1つが半流動体材料である三相棒付きキャンディ製品を製造するシステムおよび方法を提供することにある。 【0008】 本発明によれば、ガムまたはバブルガム材料および半流動体材料で中心部が充填された棒付きキャンディ製品を製造する改良されたシステムおよび方法が提供される。ガムまたはバブルガム製品は、押出成形機からの「ロープ」状に押出成形され、チューブを通してバッチ・フォーマ装置または機構に送られる。中心部が充填されたロープを形成するチューブをガム材料が通過またはそこから排出されるとき、半流動体材料がガム材料に注入される。溶融キャンディ材料が、キャンディ・ラミネータから送られてきて、チューブ部材を取り囲んでいるバッチ・フォーマに加えられる。回転円錐ローラが、チューブ部材まわりにキャンディを成形し、押出成形された中心部が充填されたガムのまわりにキャンディ外殻を形成する。 【0009】 三相製品は、次ぎに、ロープ寸法揃え器を通して棒付きキャンディ形成機に送られる。押出成形された三相製品は、個々のキャンディ片に形成される。そして、キャンディ片には、それらが棒付きキャンディ形成機の形成ヘッド上を回転、摺動するにつれて、棒付きキャンディ・スティックが挿入される。最終的な棒付きキャンディ製品は、形成機から排出され、コンベヤ・システムによって冷却トンネルまたは機構に送られる。形成された製品は、冷却トンネル内で振り動かされ、冷却される。このプロセスが完了したならば、製品は、さらなる処理のための保管部または直ちに包装、輸送するための別の部門に送られる。」 ウ「【0012】 【好ましい実施例の説明】 本発明による中心部が充填された棒付きキャンディを製造するシステムが、図1および2に示されており、参照符号10が付けてある。図1は、システムの頂面立面図である。そして、図2は、図1に示されるシステムの側面立面図である。 【0013】 全体的に、システム10は、押出成形機20、中心部が充填された半流動体部分のための供給システム22、バッチ形成機構24、キャンディ・ラミネータ機構26、ロープ寸法揃え機構28、棒付きキャンディ形成機30、コンベヤ装置32および冷却装置または機構34を含む。 【0014】 ガムまたはバブルガム材料は、押出成形機20に入れられ、そこおいて、「ロープ」状に押出成形される。このロープは、ほぼ円形の横断面を有する押出成形体である。ガム材料のロープには、中心部が充填されたシステム22からの半流動体材料が充填される。ガム材料は、チューブ部材36を通してバッチ形成機構24の中心に押出される。キャンディ・ラミネータ26からのキャンディは、コンベヤ・ベルト38に沿って送られ、バッチ形成機構24内へ移される。バッチ形成装置にある複数の円錐ローラ40(「ローラ・クラスタ」)が、キャンディをチューブ部材36まわりで、そして、チューブ部材36を出たときに押出成形されたガム材料まわりで、円錐形可塑性塊に形成する。 【0015】 その後、複合三相材料からなる「ロープ」42は、寸法揃え機構28に沿って移動する。そこにおいて、数組の寸法揃えローラが、棒付きキャンディ形成機30に入るための最終的な寸法、形状にロープを形成する。・・・(略)・・・」 エ「【0044】 本発明と共に使用し得る別の棒付きキャンディ形成機構は、イタリアのEuromecから入手できるチェーン形成機構である。この機構は、Latini機構に設けられているような回転型ドラム部材の代わりに一対の回転チェーン部材を使用している。チェーンは、各々、半円形型溝のセットを有し、これらの型溝は、三相材料ロープに一緒に作用してそれを半溶融キャンディ材料の個別のボールまたは片々に切断し、形成する。棒付きキャンディ・スティックは、Euromec機構においてキャンディのボールに挿入され、そして、最終的な棒付きキャンディ製品がそこからコンベヤ機構上へ排出される。・・・(略)・・・ 【0045】 このタイプの代表的なチェーン形成機が、図16に全体的に示してあり、参照符号180が付けてある。この形成機180は、(上述したような回転ドラム部材ではなくて)、棒付きキャンディを形成するのに2つの対面した回転チェーン181、182(図17にもっと良く示してある)を含む。これら2つの回転チェーンの各々は、棒付きキャンディの最終的な形状を形成するのに使用される完全な形成型の1部を有する。ガムのロープ42は、回転するにつれて2つのチェーンが相互に係合する交差部に送られる。個々の形成型の2つの部分は、材料ロープを切断し、個別の片々を楕円形(または形成型の形状)に形成する地点で相互に係合する。2つの型部分は、チェーンの長さの或る部分「D」にわたってそれらの係合し閉じた位置において一緒に移動する。これにより、製品の最終形状をセットし、棒付きキャンディ・スティックをスティック・ホッパー183から棒付きキャンディの片側から挿入することができる。 【0046】 チェーンが形成過程後に分離すると、スティックを取り付けた形成済みの棒付きキャンディ製品46は、形成機からコンベヤ184上に落下する。そこにおいて、棒付きキャンディ製品は、冷却機構34または200などの冷却・混転機構内へ移送される。 【0047】 本発明の種々の形態の任意のもので、安定した中心部が充填された製品が得られる。半流動体中心充填物は、ガムまたはバブルガムのコアまたは外殻内に効果的に収容され、次いで、このコアまたは外殻が、硬質のキャンディ外殻によって取り囲まれる。3つの材料層は、漏れのない安定した棒付きキャンディを形成する。」 オ また、図17には、2つの対面した回転チェーン181、182の長さ方向の部分「D」が示され、この部分「D」における最終製品のキャンディの形状と相似な空間の個数が10個以上であることが把握できる。 4.対比・判断 上記3.の記載からみて、引用文献には下記の発明が記載されている。 「2つの対面した回転チェーンの各々は、棒付きキャンディの最終的な形状を形成するのに使用される半円形型溝を複数有し、 中心部が充填されたガムのまわりにキャンディ外殻が形成されたロープを2つの回転チェーンが相互に係合する交差部に送り、 2つの回転チェーンの対面した半円形型溝は、上記ロープを切断し、個別の片々を形成型の形状に形成する地点で相互に係合し、チェーンの長さの或る部分「D」の範囲において、2つの回転チェーンの対面した半円形型溝が相互に係合して閉じた複数の空間を形成し、製品の最終形状をセットした、キャンディ形成機構。」 請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)と、引用文献に記載された発明(以下、「引用発明」という。)を対比する。 引用発明の「中心部が充填されたガムのまわりにキャンディ外殻が形成されたロープ」、「最終形状」、「半円形型溝」、「回転チェーン」は、本願発明の「ロープ状の中心部充填型消費用製品」、「一片」、「ダイ」、「連続的な細長い回転するチェーン」にそれぞれ相当し、引用発明の2つの対面した「棒付きキャンディの最終的な形状を形成するのに使用される半円形型溝を複数有」する「回転チェーンの各々」は、本願発明の「複数の第1の開いたダイの空洞部を画定する第1の連続的な細長い回転するチェーン」及び「複数の第2の開いたダイの空洞部を画定する第2の連続的な細長い回転するチェーン」に相当する。 また、引用発明の「キャンディ形成機構」は、「2つの対面した回転チェーン」を「個別の片々を形成型の形状に形成する地点で相互に係合」させて「チェーンの長さの或る部分「D」の範囲において、2つの回転チェーンの対面した半円形型溝が相互に係合して閉じた複数の空間を形成し、製品の最終形状をセット」するものであり、本願発明の「前記第1のダイの空洞部および前記第2のダイの空洞部は、相互に係合して前記ロープ状の製品の周りに閉じたダイの空洞を形成してこれにより前記一片を成形することができ」る「改良型チェーン型切断機」に相当する。 さらに、本願発明の「ドウェル時間」は、明細書の段落【0006】の「そのロープがチェーンカッターのダイ内に収容されるドウェル時間である。」との記載、段落【0025】の「これは、チェーンの回転速度を下げることなく、製品が閉じたダイの空洞内に留まる滞留時間を長くするために提供される。これはドウェル時間とも呼ばれる。」との記載からみて、「製品が閉じたダイの空洞内に留まる滞留時間」のことを意味していると認められるから、引用発明の「2つの回転チェーンの対面した半円形型溝」が「チェーンの長さの或る部分「D」の範囲において、2つの回転チェーンの対面した半円形型溝が相互に係合して閉じた複数の空間を形成し、製品の最終形状をセット」することは、本願発明の「製品はドウェル時間のあいだ前記閉じたダイの空洞内に留ま」ることに相当する。 そうすると、本願発明と引用発明は「ロープ状の中心部充填型消費用製品を個々の一片に連続的に切断するための改良型チェーン型切断機であって、 複数の第1の開いたダイの空洞部を画定する第1の連続的な細長い回転するチェーンと、 複数の第2の開いたダイの空洞部を画定する第2の連続的な細長い回転するチェーンとを備え、 前記第1のダイの空洞部および前記第2のダイの空洞部は、相互に係合して前記ロープ状の製品の周りに閉じたダイの空洞を形成してこれにより前記一片を成形することができ、 前記製品はドウェル時間のあいだ前記閉じたダイの空洞内に留まる、改良型チェーン型切断機。」で一致し、下記の点で相違する。 ・相違点 本願発明のロープと接触している閉じたダイ空洞の数は、既存のチェーン型切断機の4個に対して略1.5?略6倍大きく、第1のチェーンおよび第2のチェーンの回転する速度は、ドウェル時間、第1のチェーンおよび第2のチェーンの長さおよび/または同時に係合している第1のダイの空洞部および第2のダイの空洞部の数により決定されるのに対し、引用発明の半円形型溝が相互に係合して閉じた空間は複数形成されているものの、個数は特定されておらず、回転チェーンの回転する速度も特定されていない点。 そこで、上記相違点について検討する。 回転チェーンを用いた食品製造装置において、半円形型溝が閉じて成形型をなしている個数や回転チェーンの回転する速度といったものは、それぞれ当業者が適宜選定し得る要素である。 ここで、引用発明を開示する引用文献の摘記事項「エ」の中の段落【0045】には「ガムのロープ42は、回転するにつれて2つのチェーンが相互に係合する交差部に送られる。個々の形成型の2つの部分は、材料ロープを切断し、個別の片々を楕円形(または形成型の形状)に形成する地点で相互に係合する。2つの型部分は、チェーンの長さの或る部分「D」にわたってそれらの係合し閉じた位置において一緒に移動する。これにより、製品の最終形状をセットし、棒付きキャンディ・スティックをスティック・ホッパー183から棒付きキャンディの片側から挿入することができる。」と記載されており、このことから部分「D」は、回転チェーン181、182に設けられた形成型が係合し閉じた位置であると理解される。そして、摘記事項「オ」にあるように、引用文献の図17からは、部分「D」において、閉じられた半円形型溝が10個以上形成されていることが見て取れる。 そうしてみると、引用発明において、閉じた半円形型溝の個数を(既存のチェーン型切断機の)4個に対して略1.5?略6倍大きく設定することは、当業者が適宜採用し得たことである。 また、回転チェーンの半円形型溝が閉じている時間(ドウェル時間)は、適正に成形されるために必要とされる時間が確保されるように設定されるべきものであるから、回転チェーンの速度を、適正な成形が行われるために必要な時間が確保されるように決めること、すなわち、閉じた半円形型溝の個数に応じて決めることは、当業者にとって、通常の創作能力を発揮してなし得る域を出ることではない。 したがって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとり格別の創作能力を要することとはいえない。 しかも、本願発明により、引用発明からみて格別顕著な効果が奏されるということもできない。 5.むすび したがって、請求項3に係る発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-11-06 |
結審通知日 | 2012-11-13 |
審決日 | 2012-11-27 |
出願番号 | 特願2009-518575(P2009-518575) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A23G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 冨永 みどり |
特許庁審判長 |
新海 岳 |
特許庁審判官 |
井上 茂夫 加藤 友也 |
発明の名称 | 中心部充填型ガム片を連続的に形成するための改良型チェーンカッター |
代理人 | 藤田 和子 |