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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1273421
審判番号 不服2012-10586  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-06 
確定日 2013-05-02 
事件の表示 特願2006-129288「発光構造物」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月22日出願公開、特開2007-305621〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年5月8日の特許出願であって、平成23年7月14日付けの拒絶理由の通知に応答して同年9月20日に手続補正がされたが、平成24年2月28日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年6月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。

第2 平成24年6月6日の手続補正について
平成24年6月6日の手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、本件補正前に
「 【請求項1】
表面に導電部が形成された複数片の耐熱性フィルムと、
前記導電部に接合される複数の発光素子と、
前記複数片の耐熱性フィルムが貼り付けられる下地フィルムと、
を備える発光素子組込み発光フィルムと、
前記発光素子組込み発光フィルムの前記発光素子の発光面側に、前記発光素子から所定の間隔をあけて組み付けられる回折格子フィルムと、からなり、
前記下地フィルムは前記耐熱性フィルムよりも耐熱性の劣るフィルムである
発光構造物。
【請求項2】
前記耐熱性フィルムはポリイミドフィルム、PPS、耐熱ウレタンフィルム又は液晶ポリマーフィルムである
請求項1に記載の発光構造物。
【請求項3】
前記発光素子は発光ダイオードである
請求項1または2に記載の発光構造物。
【請求項4】
前記下地フィルムはポリエチレンテレフタレートフィルム、PPフィルム、PEフィルム、PSフィルム又はPPMAフィルムである
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の発光構造物。
【請求項5】
前記回折格子フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムと、PMMAとからなる、
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の発光構造物。
【請求項6】
前記回折格子フィルムは、正方格子又は三角格子の回折格子を有する、
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の発光構造物。」(平成23年9月20日の手続補正書参照)
とあったものを、
「 【請求項1】
表面に導電部が形成された複数片の耐熱性フィルムと、
前記導電部に接合される複数の発光素子と、
前記複数片の耐熱性フィルムが貼り付けられる下地フィルムと、
を備える発光素子組込み発光フィルムと、
前記発光素子組込み発光フィルムの前記発光素子の発光面側に、前記発光素子から所定の間隔をあけて組み付けられる回折格子フィルムと、からなり、
前記下地フィルムは前記耐熱性フィルムよりも耐熱性の劣るフィルムである
発光構造物。」
とするものである。

本件補正は、補正前の請求項2ないし請求項6を削除するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的としたものと認められる。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてしたものと認められるから、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

第3 本願発明の認定
上記のとおり、本件補正は適法であるので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。 )は、平成24年6月6日に補正された本願の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。
「表面に導電部が形成された複数片の耐熱性フィルムと、
前記導電部に接合される複数の発光素子と、
前記複数片の耐熱性フィルムが貼り付けられる下地フィルムと、
を備える発光素子組込み発光フィルムと、
前記発光素子組込み発光フィルムの前記発光素子の発光面側に、前記発光素子から所定の間隔をあけて組み付けられる回折格子フィルムと、からなり、
前記下地フィルムは前記耐熱性フィルムよりも耐熱性の劣るフィルムである
発光構造物。」

第4 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-41290号公報(以下「引用例」という。)には、次の1ないし9の記載がある。
1 「【請求項8】
絶縁性を有する第1基板の上に、少なくとも、導電層、導電性接着層および所定個数の発光素子群が順次積層されてなる複数の構造体が、互いに平面状に接続され、かつ、透光性を有する第2基板と、第3基板との間にそれぞれ接着層を介して挟まれていることを特徴とする発光モジュール。」

2 「【請求項9】
第3基板が、フィルム、ガラス基板またはプラスチック基板からなる請求項7または8に記載の発光モジュール。」(下線は審決にて付した。以下同様。)

3 「【請求項15】
請求項1、7または8に記載の発光モジュールの製造方法であって、発光素子群を導電性接着層により導電層に接着させるに際し、第1基板の上に、クリーム半田により導電性接着層の所定パターンを形成し、同パターンの上に発光素子群を実装し、その後、リフロー炉による加熱処理を行うことを特徴とする発光モジュールの製造方法。」

4 「【0008】
本発明の第3の観点によれば、絶縁性を有する第1基板の上に、少なくとも、導電層、導電性接着層および所定個数の発光素子群が順次積層されてなる複数の構造体が、互いに平面状に接続され、かつ、透光性を有する第2基板と、第3基板との間にそれぞれ接着層を介して挟まれていることを特徴とする発光モジュールが提供される。」

5 「【0013】
本発明の第8の観点によれば、本発明の第1、第2または第3の観点による発光モジュールの製造方法であって、発光素子群を導電性接着層により導電層に接着させるに際し、第1基板の上に、クリーム半田により導電性接着層の所定パターンを形成し、同パターンの上に発光素子群を実装し、その後、リフロー炉による加熱処理を行うことを特徴とする発光モジュールの製造方法が提供される。」

6 「【0021】
本発明の第8の観点に係る発光モジュールの製造方法にあっては、リフロー工程に耐えることのできる、例えばガラスやポリイミドフィルムなどからなる第1基板を用いた場合に、発光素子群と回路パターンである導電膜との密着性がより高くなり、信頼性がいっそう高い発光素子モジュールを提供することができる。」

7 「【0027】
本発明の第2の観点または第3の観点に係る発光モジュールは、第3基板が、フィルム、ガラス基板またはプラスチック基板からなるからなるのが好ましい。この場合には、幅広い使用用途を備えた発光モジュールを提供することができる。このとき、第1基板および第2基板は、厚さが例えば0.1?10mm程度であって、ガラス板またはプラスチック板からなるのがいっそう好ましい。この場合には、入手が容易でコスト的にも有利である、信頼性に優れている、使用用途に適していることなどを考慮して、材料の組み合わせを決めることが好ましい。」

8 「【実施形態3】
【0047】
図1?図3および図5を参照して実施形態3を説明する。第1基板1として、厚さが188μmの長方形PETシート(シートサイズ:268mm×300mm)を4枚用いた。それぞれの第1基板1に、図3に示すような回路パターン10を形成した。導電層2としては、回路形成用銀ペーストを使用した。スクリーン印刷法により、銀ペーストを印刷し、印刷厚さ50μmとした。その後、150℃の温度で30分間、熱硬化させた。
【0048】
次に、隙間23の両端のランドパターン22・22に、導電性接着層4としての導電性接着用銀ペーストをスクリーン印刷法により印刷した。その後、発光素子としてのチップLED4を用いて、隙間23で回路パターン10が絶縁されないように、チップLED4の両極を、隙間23の両端のランドパターン22・22に印刷した導電性接着用銀ペーストで導通するように、マウンターを用いてマウントした。その後、150℃の温度で10分間、熱硬化させ、チップLED4を接着させ、図5に示すような構造体111を作製した。
【0049】
絶縁性を有する第3基板9として、4.0mm厚さのガラス基板(基板サイズ:560mm×650mm)を使用し、接着層8としてEVA層を形成した。その上に構造体111を4枚置き、これらの構造体111を配線7で接続した。さらにその上に接着層5としてのEVA層を形成した。すなわち、チップLED4の高さよりも厚いEVA層を挟み、さらにその上に第2の絶縁基板6としての4.0mm厚さのガラスを置き、130℃の温度で20分間、保持し、EVAを溶かした後、150℃の温度で45分間、保持し、EVAを架橋させた。」

9 「【0050】
このように作製した発光モジュールは、簡単な方法で大面積での散点模様状の発光が可能であり、かつ、信頼性に優れたものになる。第1基板1、第2基板6および第3基板9の組み合わせを考慮することにより、さまざまな用途に合わせた大面積の発光モジュールを提供することできる。」

第5 引用発明の認定
1 上記「第4 1」に「【請求項8】の発光モジュール」として記載された次の発明を、以下「引用発明」という。
「絶縁性を有する第1基板の上に、少なくとも、導電層、導電性接着層および所定個数の発光素子群が順次積層されてなる複数の構造体が、互いに平面状に接続され、かつ、透光性を有する第2基板と、第3基板との間にそれぞれ接着層を介して挟まれていることを特徴とする発光モジュール。」

2 上記「第4 8」に記載された「実施形態3」は、引用発明の「第1基板」、「第2基板」及び「第3基板」を、それぞれ、「PETシート」、「ガラス基板」及び「4.0mm厚さのガラス」とした、同発明の実施例となっている。
しかしながら、「第1基板」、「第2基板」及び「第3基板」は、上記「第4 9」によれば、用途に合わせて組み合わせられるのであるから、「PETシート」、「ガラス基板」及び「所定厚さのガラス」に限定されないものと認められる。
例えば、上記「第4 2」によれば、「請求項8に記載の発光モジュール」すなわち引用発明の第3基板は、「所定厚さのガラス」に限定されず、フィルムまたはプラスチック基板でもよい。
また、上記「第4 3」には、「請求項8に記載の発光モジュールの製造方法」すなわち「引用発明の発光モジュールの製造方法」として、「リフロー炉による加熱処理を行う」ものが記載されており、上記「第4 6」には、「第1基板」として「リフロー工程に耐えることのできる、例えばガラスやポリイミドフィルムなど」が挙げられているから、引用発明の「第1基板」は、「PETシート」に限定されず、ガラスやポリイミドフィルムでもよい。

第6 対比
本願発明と引用発明とを比較する。
1 引用発明の「導電層」及び「導電性接着層」は、本願発明の「導電部」に相当する。

2 引用発明の「『導電性接着層』に積層される『所定個数の発光素子群』」は、本願発明の「導電部に接合される複数の発光素子」に相当する。

3 引用発明の「絶縁性を有する第1基板」は、その上に、本願発明の「導電部」に相当する、「導電層」及び「導電性接着層」が積層されるものであるから、「表面に導電部が形成される(導電部が形成される基礎となる部材であるところの)基材」といえる。そして、本願発明の「『表面に導電部が形成され』る『耐熱性フィルム』」も、「表面に導電部が形成される基材」といえる。
してみると、引用発明の「その上に『導電層、導電性接着層』が順次積層される『絶縁性を有する第1基板』」は、「表面に導電部が形成される基材」である点で、本願発明の「『表面に導電部が形成され』る『耐熱性フィルム』」と共通している。

4 引用発明の「『複数の構造体』との間に接着層を介している『第3基板』」は、「複数の構造体が接着される(接着下地となる部材であるところの)下地材」といえるから、「複数片の基材が貼り付けられる下地材」である点で、本願発明の「複数片の耐熱性フィルムが貼り付けられる下地フィルム」と共通している。

5 引用発明の、「絶縁性を有する第1基板の上に、少なくとも、導電層、導電性接着層および所定個数の発光素子群が順次積層されてなる複数の構造体」と「『複数の構造体』との間に接着層を介している『第3基板』」とを合わせたものは、「表面に導電部が形成された複数片の基材と、前記導電部に接合される複数の発光素子と、前記複数片の基材が貼り付けられる下地材と、を備える発光素子組込み発光基板」である点で、本願発明の「表面に導電部が形成された複数片の耐熱性フィルムと、前記導電部に接合される複数の発光素子と、前記複数片の耐熱性フィルムが貼り付けられる下地フィルムと、を備える発光素子組込み発光フィルム」と共通している。

6 引用発明の「発光モジュール」は、本願発明の「発光構造物」に相当する。

7 してみると、本願発明と引用発明とは、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点1>ないし<相違点3>で相違する。
<一致点>
「表面に導電部が形成された複数片の基材と、
前記導電部に接合される複数の発光素子と、
前記複数片の基材が貼り付けられる下地材と、
を備える発光素子組込み発光基板、からなる、
発光構造物。」

<相違点1>
「基材」が、本願発明は「耐熱性フィルム」であるのに対して、引用発明は、「耐熱性フィルム」であるか否か不明の「第1基板」である点。

<相違点2>
「下地材」が、本願発明は、「『耐熱性フィルムよりも耐熱性の劣るフィルムである』『下地フィルム』」であるのに対して、引用発明は、フィルムであるか否か不明で、かつ耐熱性の程度が不明の「第3基板」である点。

<相違点3>
本願発明は、「発光素子組込み発光フィルムの発光素子の発光面側に、前記発光素子から所定の間隔をあけて組み付けられる回折格子フィルム」を備えているのに対して、引用発明は、該「回折格子フィルム」を備えていない点。

第6 判断
<相違点1>ないし<相違点3>について検討する。
1 <相違点1>及び<相違点2>について
(1) 本願発明の「耐熱性フィルム」が、どの程度の耐熱性を有するフィルムを指すかは、かならずしも明確でないが、本願明細書に「【0020】発光ダイオード1を載置した複合フィルムをリフロー炉に入れる。ハンダ2が溶融することにより、配線パターンの導電部3と発光ダイオード1とが電気的に接続される。耐熱性のPIフィルム4を使用していることにより、リフロー炉の中で、フィルムが変形することはない。」とあることから、該耐熱性は、ハンダを溶融させる加熱が必要なリフロー工程に耐えることのできる耐熱性を指すと解される。
一方、上記「第5 2」で言及したとおり、引用例には、引用発明の「第1基板」として、リフロー工程に耐えることのできるポリイミドフィルムを用いることが記載されている。
してみると、引用発明において、「第1基板」として、本願発明の「耐熱性フィルム」と同じくリフロー工程に耐えることのできる耐熱性を有する「耐熱性フィルム」であるポリイミドフィルムを用いること、すなわち、本願発明の<相違点1>に係る構成を備えることは、当業者が、引用例の記載に基づいて容易に想到し得たことである。

(2) <相違点2>について
上記「第5 2」で言及したとおり、引用例には、引用発明において、「第3基板」としてフィルムを用いてもよいこと、及び「第1基板」として、リフロー工程に耐えることのできるポリイミドフィルムを用いることが記載されている。そして、「リフロー工程に耐えることのできるポリイミドフィルム」が、本願発明の「耐熱性フィルム」といえることは、上記(1)で検討したとおりである。
よって、引用発明において、「第1基板」として、「耐熱性フィルム」(ポリイミドフィルム)を用いて本願発明の<相違点1>に係る構成を備える際に、「第3基板」としてフィルムを用いることは、当業者が、引用例の記載に基づいて容易に想到し得たことである。
一方、上記「第4 3」にしたがえば、引用発明の発光モジュールの製造において、「発光素子群を導電性接着層により導電層に接着させるに際し、第1基板の上に、クリーム半田により導電性接着層の所定パターンを形成し、同パターンの上に発光素子群を実装し、その後、リフロー炉による加熱処理を行う」工程を採用することができる。その際には、「第1基板」は「リフロー炉による加熱処理」を経るから、リフロー工程に耐えることのできる耐熱性が必要である。しかしながら、「第3基板」は、「リフロー炉による加熱処理」を経て形成された「構造体」を、接着層を介して挟むものであって、「リフロー炉による加熱処理」を経ないものであるから、「リフロー工程に耐えることのできる」耐熱性は必要とされない。よって、「第3基板」は、「リフロー工程に耐えることのできる」ほどの耐熱性を備えないものを含む各種素材から、当業者が、設計事項の範囲内で適宜選択し得る。
してみると、引用発明において、当業者が、引用例の記載に基づいて、「第1基板」として、「耐熱性フィルム」(ポリイミドフィルム)を用いて本願発明の<相違点1>に係る構成を備えるとともに、「第3基板」としてフィルムを用いる際に、「第3基板」に用いるフィルムとして、上記「耐熱性フィルム」よりも耐熱性の劣るフィルムを採用すること、すなわち、本願発明の<相違点2>に係る構成を備えることは、当業者が、適宜なし得たことである。

(3) <相違点1>及び<相違点2>についてのまとめ
上記(1)及び(2)によれば、引用発明において、本願発明の<相違点1>及び<相違点2>に係る構成を備えることは、当業者が、引用例の記載に基づいて容易に想到し得たことである。

2 <相違点3>について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-274455号公報(以下「副引用例」という。)には、発光ダイオード素子の前面に回折像作成手段を設けて、発光ダイオード素子の像が異なる位置に複数個見えるようにすることが記載されている。特に、副引用例の次の記載を参照されたい。
「【請求項1】 各々赤色、緑色、青色に発光する発光ダイオード素子をマトリックス状に配置して画像を表示するように構成した画像表示装置において、前記の発光ダイオード素子の前面に前記発光ダイオード素子より発光される光の回折像をつくる回折像作成手段を設けたことを特徴とする画像表示装置。」
「【0015】10は回折格子フィルターである。回折格子フィルター10は光の出射側から見た場合、入射した光の回折像を作る働きをするものである。回折格子フィルターは例えばガラス基板に細かい溝をたくさん刻むことによって作ることができるが、この溝の刻み方によって回折像ができる方向を調整することができる。
【0016】図2は垂直方向と水平方向に回折像を作る回折格子フィルターを用いた場合の回折格子フィルター10を通してみた発光ダイオード素子の状態を示した概念図である。
【0017】
回折格子フィルター10を通して発光ダイオード素子を見た場合、発光ダイオード素子の位置に回折をしていない発光ダイオード素子の像11(これを0次の像と称す)が見え、0次の像の上下方向と左右方向に0次の像より暗い発光ダイオード素子の像12(これを1次の像と称す)が見える。そして、1次の像の外側にさらに暗くなった像13(これを2次の像と称す)が見え、以下、さらに暗い3次の像以下の像が見える。3次以下の像は非常に暗くなるので、実際に見えるのは2次の像くらいまでであり、図2においても2次の像13までしか表していない。
【0018】このように、回折格子フィルター10を用いることで従来発光ダイオード素子より発せられる光の隙間であったところに、1次の像以下の発光ダイオード素子の回折像を作ることができ、これによって擬似的に画素の間隔を狭めることができる。」

よって、引用発明において、「発光素子組込み発光フィルムの発光素子の発光面側に、前記発光素子から所定の間隔をあけて組み付けられる回折像作成手段」を備えることは、当業者が、副引用例の記載に基づいて容易に想到し得たことである。

(2) 副引用例には、回折像作成手段として、ガラス基板からなる回折格子フィルターが例示されている。
しかしながら、本願の出願前に、回折像作成手段としての回折格子フィルムは周知である。例えば、以下に挙げる特開2005-84153号公報(以下「周知例1」という。)及び特開2003-255866号公報(以下「周知例2」という。)の各記載を参照されたい。
ア 周知例1の記載
「【請求項1】
燈体が配置された表示部と、該表示部に対して必要な表示制御を実行できるよう設定された表示制御部と、前記燈体からの光を回折および/または拡散して光像を出現するための光像出現手段とを備えて構成される表示装置において、燈体は、光像出現手段に対し光軸方向が横向きとなるようにして設けられ、該横向きの光軸を光像出現手段に向けるため横向きの光軸を縦向きに変換する光軸変換手段が設けられていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1において、光像出現手段が光を回折するものである場合、該光回折手段は、光を回折する回折格子フィルムまたは回折格子板であることを特徴とする表示装置。」
「【0011】
これを一般式としてみたとき、一つの発光ダイオード5の回折格子像がN個視認できるものである場合・・・」

イ 周知例2の記載
「【請求項1】 燈体が配置された表示部と、該表示部に必要な表示制御が実行できるよう表示制御部とを備え、前記表示部の前面に透光性素材で形成された表面板を配してなる表示器において、前記表面板の全部または一部は回折格子板を用いて構成されていることを特徴とする表示器。
【請求項2】 請求項1において、表示部は、燈体が縦横マトリックス状に
配されてデータ表示をするデータ表示部と、データ表示部とは異なる位置で装飾表示をするための装飾表示部とを備えて構成され、装飾表示部の前面に配される表面板が回折格子板を用いて構成されていることを特徴とする表示器。
【請求項3】 請求項1または2において、回折格子板はフィルムであるこ
とを特徴とする表示器。」
「【0009】・・・回折格子フィルム9を通して観察される装飾用発光ダイオード5からの光は、単色光に拡散した拡散光5aを含む状態の回折像5bが光源の周りに何重にも観察されることになって、高い注意喚起力を有したものとなる。」

(3) <相違点3>についてのまとめ
上記(1)及び(2)によれば、引用発明において、「発光素子組込み発光フィルムの発光素子の発光面側に、前記発光素子から所定の間隔をあけて組み付けられる回折像作成手段」を備えるとともに、該回折像作成手段として回折格子フィルムを採用すること、すなわち、本願発明の<相違点3>に係る構成を備えることは、当業者が、副引用例の記載及び周知技術に基づいて容易に想到し得たことである。

3 <相違点1>ないし<相違点3>についてのまとめ
上記1及び2によれば、引用発明において、本願発明の<相違点1>ないし<相違点3>に係る構成を備えることは、当業者が、引用例の記載、副引用例の記載及び周知技術に基づいて容易に想到し得たことである。
また、該構成を備えることによる効果は、当業者が予測し得る程度のものである。
よって、本願発明は、当業者が、引用発明、引用例の記載、副引用例の記載及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が、引用発明、引用例の記載、副引用例の記載及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-01 
結審通知日 2013-03-05 
審決日 2013-03-18 
出願番号 特願2006-129288(P2006-129288)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松崎 義邦  
特許庁審判長 江成 克己
特許庁審判官 小松 徹三
星野 浩一
発明の名称 発光構造物  
代理人 平川 明  
代理人 関根 武彦  

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