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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1274162
審判番号 不服2011-18158  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-23 
確定日 2013-05-16 
事件の表示 特願2006-101420「データ処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月25日出願公開、特開2007-279787〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.出願の経緯
本願は、平成18年4月3日の出願であって、平成23年3月15日付け拒絶理由の通知に対して、平成23年5月23日付けで手続補正がなされたが、平成23年6月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年8月23日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同時に手続補正がなされ、平成24年8月17日付けで平成23年8月23日付け手続補正が補正却下されるとともに、同日付けで拒絶理由が通知され、平成24年10月22日付けで手続補正がなされ、平成24年12月11日付けで拒絶理由が通知され、平成25年2月18日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年2月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
データ処理を行うデータ処理装置であって、
外部装置と通信を行い、データの転送を行う通信部と、該データ処理装置で使用されるデータを記録した記録媒体の挿入口とを有する装置本体と、
前記装置本体の有する前記通信部と前記挿入口とを覆うカバー部と、
前記記録媒体の挿入又は排出の要求、及び、前記外部装置との前記データの転送の要求をユーザから受け付ける入力部と、
前記カバー部が前記通信部と前記挿入口を覆うクローズ状態のとき、前記入力部が受け付けた前記ユーザからの要求が、前記記録媒体の挿入又は排出の要求であるか、或いは前記外部装置とのデータの転送の要求であるのかを判定するオープン状態制御手段と、
を備え、
前記オープン状態制御手段は、
前記ユーザからの要求が前記記録媒体の挿入又は排出の要求であると判定した場合、前記挿入口と前記通信部とのうち該挿入口のみが露出されると共に前記通信部が覆われることで該ユーザの該通信部へのアクセスを制限することにより該通信部を介した前記外部装置とのデータの転送が制限される第一オープン状態に前記カバー部を移行させ、かつ、
前記ユーザからの要求が前記外部装置とのデータの転送の要求であると判定した場合、前記挿入口および前記通信部が露出され該通信部を介した前記外部装置とのデータの転送が可能となる第二オープン状態に前記カバー部を移行させることを特徴とするデータ処理装置。」

3.引用例
当審の拒絶理由で引用した本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2005-38487号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の技術事項が記載されている。
a)「【0008】
車載情報装置1は、本体部100と、本体部100に対して倒立可能に傾動するモニタ部200とを有する。本体部100には、CDおよびDVDに記録された情報を読み込むためのCD/DVD読み取り装置110と、MDの録音、再生をするためのMD録再装置120と、メモリカードとの間で各種の情報をやりとりするためのメモリカードリーダライタ130と制御回路145とが設けられている。
【0009】
これら各装置110?130は、情報の記録媒体であるそれぞれのメディアを各装置110?130に挿脱するための挿入排出口111、121,131を有する。すなわち、車載情報装置1は、各種メディアが挿脱可能なスロットを3つ有している。各挿入排出口111,121,131は、本体部100の前面であって、起立して本体部100に収納されたモニタ部200によって覆われる位置に配置されている。したがって、各メディアを挿脱するためには、モニタ部200を傾動させて、各挿入排出口111,121,131を露出させなければならない。制御回路145は、後述するように、チルト/エジェクトボタンの押圧状態を判断してモニタ部200を所定の角度位置まで傾動させる。
【0010】
101は、本体部100の上部前面に設けられたチルト/エジェクトボタンである。チルト/エジェクトボタン101は、本体部100に収納されたモニタ部200のモニタ201の表示面と略同一平面上に操作面を有するスイッチである。後述するように、チルト/エジェクトボタン101が一定時間以上押圧(長押し)され続けると、モニタ部200が傾動される。チルト/エジェクトボタン101の押圧継続時間が一定時間未満である押圧(短押し)がされると、短押しされた回数に応じて所定の位置までモニタ部200が傾動された後、短押しされた回数に応じて各装置110?130のいずれかに挿入されたメディアを排出する。すなわち、チルト/エジェクトボタン101は、モニタ部200のチルト(傾動)操作スイッチとして機能するとともに、メディアのエジェクト(排出)スイッチとしても機能する。
【0011】
モニタ部200は、モニタ201と、操作ボタン202と、ジョイスティック203とを備えている。モニタ201には、CD/DVD読み取り装置110でCDまたはDVDから読み取った情報などが適宜表示される。操作スイッチ202およびジョイスティック203は、車載情報装置1の入力装置として機能する。」(【0008】?【0011】の記載。下線は、当審で付与した。以下、同様。)

b)「【0015】
モニタ部200が本体部100に収納された状態(図2)から本体部100に対して略90度傾動された角度位置(図5)まで傾動することで、各装置110?130へのメディアの挿脱が可能になる。たとえば図2に示したモニタ部200の収納状態からモニタ部200が図3の姿勢まで傾動されると、モニタ部200の上部がCD/DVD読み取り装置110の挿入排出口111より下に下がる。図3に示した車載情報装置1を正面から見た状態を図6に示す。図6に示すように、車載情報装置1の正面にCD/DVD読み取り装置110の挿入排出口111が露出しているので、CD/DVD読み取り装置110に対してCDまたはDVDの挿脱が可能となる。
【0016】
図3,6に示した状態からモニタ部200が図4の姿勢まで傾動されると、モニタ部200の上部がMD録再装置120の挿入排出口121より下に下がる。図4に示した車載情報装置1を正面から見た状態を図7に示す。図7に示すように、車載情報装置1の正面にMD録再装置120の挿入排出口121が露出しているので、MD録再装置120に対してMDの挿脱が可能となる。
【0017】
図4,7に示した状態からモニタ部200が図5の姿勢まで傾動されると、モニタ部200の上部がメモリカードリーダライタ130の挿入排出口131より下に下がる。図5に示した車載情報装置1を正面から見た状態を図8に示す。図5に示すように、車載情報装置1の正面にメモリカードリーダライタ130の挿入排出口131が露出しているので、メモリカードリーダライタ130に対してメモリカードの挿脱が可能となる。
【0018】
???メディアの排出???
図9は、各装置110?130に挿入されているメディアを排出する動作を示すフローチャートである。車両から車載情報装置1に電源が供給され、チルト/エジェクトボタン101が押圧されると、制御回路145において、図9に示したプログラムが動作を開始する。ステップS1において、チルト/エジェクトボタン101が長押しされたか否かを判断する。ステップS1が肯定判断されると、後述するステップS21へ進む。ステップS1が否定判断されるとステップS3へ進む。
【0019】
ステップS3において、チルト/エジェクトボタン101が短押しされた回数から、排出が指示されたメディアを判断する。チルト/エジェクトボタン101が短押しされた回数が1回であれば、CD/DVD読み取り装置110に挿入されたメディアの排出が指示されたものと判断する。チルト/エジェクトボタン101が短押しされた回数が2回であれば、MD録再装置120に挿入されたメディアの排出が指示されたものと判断する。チルト/エジェクトボタン101が短押しされた回数が3回であれば、メモリカードリーダライタ130に挿入されたメディアの排出が指示されたものと判断する。
【0020】
ステップS3で、チルト/エジェクトボタン101が短押しされた回数から排出が指示されたメディアが判断されるとステップS5へ進む。ステップS5において、ステップS3で判断したメディアの排出ができる角度位置までモニタ部200を傾動させる。すでにステップS3で判断したメディアの排出ができる角度位置までモニタ部200が傾動されていた場合には、モニタ部200の傾動はしない。上述のように、モニタ部200の角度位置検出はリニアセンサ143によって検出される。」(【0015】?【0020】の記載。)

c)図3及び図6に、挿入排出口111のみが露出し、挿入排出口121,131が覆われた状態にモニタ部200が傾動された図が、図5及び図8に、挿入排出口111,121,131が露出された状態にモニタ部200が傾動された状態が図示されている。

上記引用例1記載の事項及び図面より、引用例1には以下の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「車載情報装置1は、本体部100と、本体部100に対して倒立可能に傾動するモニタ部200とを有し、本体部100には、CDおよびDVDに記録された情報を読み込むためのCD/DVD読み取り装置110と、メモリカードとの間で各種の情報をやりとりするためのメモリカードリーダライタ130と、制御回路145とが設けられており、各装置110,130は、情報の記録媒体であるそれぞれのメディアを各装置110,130に挿脱するための挿入排出口111,131を有し、各挿入排出口111,131は、本体部100の前面であって、起立して本体部100に収納されたモニタ部200によって覆われる位置に配置され、各メディアを挿脱するためには、モニタ部200を傾動させて、各挿入排出口111,131を露出させなければならず、制御回路145は、チルト/エジェクトボタンの押圧状態を判断してモニタ部200を所定の角度位置まで傾動させる車載情報装置であって、
本体部100の上部前面に設けられたチルト/エジェクトボタン101を有し、モニタ部200は、モニタ201を備え、モニタ201には、CD/DVD読み取り装置110でCDまたはDVDから読み取った情報などが適宜表示され、
制御回路145において、チルト/エジェクトボタン101が短押しされた回数から、排出が指示されたメディアを判断し、
チルト/エジェクトボタン101が短押しされた回数が1回であれば、CD/DVD読み取り装置110に挿入されたメディアの排出が指示されたものと判断し、モニタ部200の収納状態からモニタ部200が図3の姿勢まで傾動されると、モニタ部200の上部がCD/DVD読み取り装置110の挿入排出口111より下に下がり、車載情報装置1の正面にCD/DVD読み取り装置110の挿入排出口111が露出しているので、CD/DVD読み取り装置110に対してCDまたはDVDの排出が可能となり、
チルト/エジェクトボタン101が短押しされた回数が3回であれば、メモリカードリーダライタ130に挿入されたメディアの排出が指示されたものと判断し、モニタ部200が図5の姿勢まで傾動されると、モニタ部200の上部がメモリカードリーダライタ130の挿入排出口131より下に下がり、車載情報装置1の正面にメモリカードリーダライタ130の挿入排出口131が露出しているので、メモリカードリーダライタ130に対してメモリカードの排出が可能となる、
車載情報装置1。」

当審の拒絶理由で引用した本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2003-72477号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の技術事項が記載されている。
d)「【0002】
【従来の技術】従来から、車載オーディオシステム等にスライド開閉式の電動パネルが使われている。当該電動パネルには、ユーザの各種操作を介する操作部、ユーザへ各種情報を表示する表示部等を備える。
【0003】前記車載オーディオシステムとしては例えば、CD(Compact Disc)、MD(Mini Disc)等の挿入口の前部に電動パネルが設置され、普段は、前記挿入部を隠すように前記電動パネルをクローズし、CD、MD等の入替え時等に前記電動パネルをオープンさせて、前記挿入口を露出する構成である。電動パネルは、電動パネル上のパネル開閉ボタンを押下することによりオープン又はクローズする。電動パネルをクローズするときに隠す部分は、CD、MD等の挿入口以外にも、各種外部機器と接続を行うコードのコネクタが設置されるものもあった。
【0004】これは例えば、車載機器であるカーオーディオやコンソールに付けられるナビゲーション等にHDD(Hard Disk Drive)等の大容量な記録媒体を搭載するとき、当該大容量の記録媒体への情報の転送方法が問題となっており、CD-R(Compact Disk-Recordable)、MO(magneto-optic)等のメディアを使用すると、転送すること自体が煩雑になる。そこで、ノートパソコン等の外部機器から直接にカーオーディオ等の車載機器に情報を伝送することが求められていたからである。」(【0002】?【0004】の記載。)

4.対比
次に、本願発明を引用例1記載の発明と比較する。
引用例1記載の発明の「車載情報装置1」は「本体部100と、本体部100に対して倒立可能に傾動するモニタ部200とを有」し、「本体部100には、CDおよびDVDに記録された情報を読み込むためのCD/DVD読み取り装置110」等を有し、モニタ部200に備えられた「モニタ201には、CD/DVD読み取り装置110でCDまたはDVDから読み取った情報などが適宜表示される」ものであるから、引用例1記載の発明の「車載情報装置1」は本願発明の「データ処理を行うデータ処理装置」に相当する。
引用例1記載の発明の「CDおよびDVD」は本願発明の「データ処理装置で使用されるデータを記録した記録媒体」に相当し、引用例1記載の発明の「挿入排出口111」は、本願発明の「データ処理装置で使用されるデータを記録した記録媒体の挿入口」に相当する。
また、引用例1記載の発明の「メモリカードとの間で各種の情報をやりとりするためのメモリカードリーダライタ130」は、メモリカードと通信を行いデータの転送を行う通信装置であって、「メモリカードリーダライタ130の挿入排出口131」は、メモリカードを差し込む受け口であるから、引用文献1記載の発明の「メモリカードリーダライタ130の挿入排出口131」は、本願発明の「外部装置と通信を行い、データの転送を行う通信部」と、「データの転送を行う通信装置の一部」である点で共通する。
したがって、引用例1記載の発明の「本体部100」は、本願発明の「外部装置と通信を行い、データの転送を行う通信部と、該データ処理装置で使用されるデータを記録した記録媒体の挿入口とを有する装置本体」と、「データの転送を行う通信装置の一部と、該データ処理装置で使用されるデータを記録した記録媒体の挿入口とを有する装置本体」である点で共通する。

引用例1記載の発明は「各挿入排出口111,131は、本体部100の前面であって、起立して本体部100に収納されたモニタ部200によって覆われる」ものであるから、引用例1記載の発明の「モニタ部200」は、本願発明の「前記装置本体の有する前記通信部と前記挿入口とを覆うカバー部」と、「装置本体の有する前記データの転送を行う通信装置の一部と前記挿入口とを覆うカバー部」である点で共通する。

引用例1記載の発明は「チルト/エジェクトボタン101が短押しされた回数が1回であれば、CD/DVD読み取り装置110に挿入されたメディアの排出が指示されたものと判断」するものであるから、引用例1記載の発明の「チルト/エジェクトボタン101」は、本願発明の「前記記録媒体の挿入又は排出の要求」「をユーザから受け付ける入力部」に相当する。
また、引用例1記載の発明は「チルト/エジェクトボタン101が短押しされた回数が3回であれば、メモリーカードリーダライタ130に挿入されたメディアの排出が指示されたものと判断する」ものであり、「メモリーカードリーダライタ130に挿入されたメディアの排出」の指示は、データの転送を行う通信装置の操作の要求であるといえるから、引用例1記載の発明の「チルト/エジェクトボタン101」は、本願発明の「前記外部装置との前記データの転送の要求をユーザから受け付ける入力部」と、「データの転送を行う通信装置の操作の要求をユーザから受け付ける入力部」である点で共通する。
したがって、引用例1記載の発明の「チルト/エジェクトボタン101」は、本願発明の「前記記録媒体の挿入又は排出の要求、及び、前記外部装置との前記データの転送の要求をユーザから受け付ける入力部」と、「前記記録媒体の挿入又は排出の要求、及び、前記データの転送を行う通信装置の操作の要求をユーザから受け付ける入力部」である点で共通する。

引用例1記載の発明は、「各挿入排出口111,131は、本体部100の前面であって、起立して本体部100に収納されたモニタ部200によって覆われる位置に配置され」「各メディアを挿抜するためには、モニタ部200を傾動させて、各挿入排出口111,131を露出させなければならない」ものであり、「制御回路145」は、「チルト/エジェクトボタン101が短押しされた回数から、排出が指示されたメディアを判断」し、「チルト/エジェクトボタンの押圧状態を判断してモニタ部200を所定位置まで傾動させる」ものであり、例えば、「チルト/エジェクトボタン101が短押しされた回数が1回であれば、CD/DVD読み取り装置110に挿入されたメディアの排出が指示されたものと判断」し、「チルト/エジェクトボタン101が短押しされた回数が3回であれば、メモリカードリーダライタ130に挿入されたメディアの排出が指示されたものと判断」するものであるから、引用例1記載の発明の「制御装置145」は、モニタ部200が本体部100の前面を覆う収納状態のとき、チルト/エジェクトボタン101の押圧状態を判断して、該押圧状態がCD/DVDの排出の指示であるか、或いは、該押圧状態が、データの転送を行う通信装置の操作であるメモリカードの排出の指示であるかを判断するものである。
したがって、引用例1記載の発明の「制御回路145」は本願発明の「前記カバー部が前記通信部と前記挿入口を覆うクローズ状態のとき、前記入力部が受け付けた前記ユーザからの要求が、前記記録媒体の挿入又は排出の要求であるか、或いは前記外部装置とのデータの転送の要求であるのかを判定するオープン状態制御手段」と「前記カバー部が前記データの転送を行う通信装置の一部と前記挿入口を覆うクローズ状態のとき、前記入力部が受け付けた前記ユーザからの要求が、前記記録媒体の挿入又は排出の要求であるか、或いは前記データの転送を行う通信装置の操作の要求であるのかを判定するオープン状態制御手段」である点で共通している。

また、引用例1記載の発明の「制御回路145」は、「チルト/エジェクトボタン101が短押しされた回数が1回であれば、CD/DVD読み取り装置110に挿入されたメディアの排出が指示されたものと判断」し、「モニタ部200の収納状態からモニタ部200が図3の姿勢まで傾動され」「モニタ部200の上部がCD/DVD読み取り装置110の挿入排出口111より下に下がる」ものであり、図3の姿勢においては、挿入排出口111のみが露出し、他の挿入排出口131はモニタ部200に覆われておりユーザの該他の挿入排出口へのアクセスが制限されていることは、図3及び図6より明らかであるから、引用例1記載の発明の「制御回路145」は本願発明の「前記オープン状態制御手段は、
前記ユーザからの要求が前記記録媒体の挿入又は排出の要求であると判定した場合、前記挿入口と前記通信部とのうち該挿入口のみが露出されると共に前記通信部が覆われることで該ユーザの該通信部へのアクセスを制限することにより該通信部を介した前記外部装置とのデータの転送が制限される第一オープン状態に前記カバー部を移行させ」ることと、「前記オープン状態制御手段は、
前記ユーザからの要求が前記記録媒体の挿入又は排出の要求であると判定した場合、前記挿入口と前記データの転送を行う通信装置の一部とのうち該挿入口のみが露出されると共に前記データの転送を行う通信装置の一部が覆われることで該ユーザの該データの転送を行う通信装置の一部へのアクセスを制限することにより該データの転送を行う通信装置の一部を介した前記データの転送を行う通信装置の操作が制限される第一オープン状態に前記カバー部を移行させ」る点で共通している。

更に、引用例1記載の発明の「制御回路145」は、「チルト/エジェクトボタン101が短押しされた回数が3回であれば、メモリカードリーダライタ130に挿入されたメディアの排出が指示されたものと判断」し、「モニタ部200が図5の姿勢まで傾動され」「モニタ部200の上部がメモリカードリーダライタ130の挿入排出口131より下に下がる」ことにより「メモリカードリーダライタ130の挿入排出口131が露出しているので、メモリカードリーダライタ130に対してメモリカードの排出が可能となる」ものであるから、引用例1記載の発明の「制御回路145」は本願発明の「前記ユーザからの要求が前記外部装置とのデータの転送の要求であると判定した場合、前記挿入口および前記通信部が露出され該通信部を介した前記外部装置とのデータの転送が可能となる第二オープン状態に前記カバー部を移行させる」ことと、「前記ユーザからの要求が前記データの転送を行う通信装置の操作の要求であると判定した場合、前記挿入口および前記データの転送を行う通信装置の一部が露出され該データの転送を行う通信装置の一部を介した前記データの転送を行う通信装置の操作が可能となる第二オープン状態に前記カバー部を移行させる」点で共通している。

したがって両者は、
「データ処理を行うデータ処理装置であって、
データの転送を行う通信装置の一部と、該データ処理装置で使用されるデータを記録した記録媒体の挿入口とを有する装置本体と、
前記装置本体の有する前記データの転送を行う通信装置の一部と前記挿入口とを覆うカバー部と、
前記記録媒体の挿入又は排出の要求、及び、データの転送を行う通信装置の操作の要求をユーザから受け付ける入力部と、
前記カバー部が前記データの転送を行う通信装置の一部と前記挿入口を覆うクローズ状態のとき、前記入力部が受け付けた前記ユーザからの要求が、前記記録媒体の挿入又は排出の要求であるか、或いは前記データの転送を行う通信装置の操作の要求であるのかを判定するオープン状態制御手段と、
を備え、
前記オープン状態制御手段は、
前記ユーザからの要求が前記記録媒体の挿入又は排出の要求であると判定した場合、前記挿入口と前記データの転送を行う通信装置の一部とのうち該挿入口のみが露出されると共に前記データの転送を行う通信装置の一部が覆われることで該ユーザの該データの転送を行う通信装置の一部へのアクセスを制限することにより該データの転送を行う通信装置の一部を介した前記データの転送を行う通信装置の操作が制限される第一オープン状態に前記カバー部を移行させ、かつ、
前記ユーザからの要求が前記データの転送を行う通信装置の操作の要求であると判定した場合、前記挿入口および前記データの転送を行う通信装置の一部が露出され該データの転送を行う通信装置の一部を介した前記データの転送を行う通信装置の操作が可能となる第二オープン状態に前記カバー部を移行させることを特徴とするデータ処理装置。」
で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
本願発明は、データの転送を行う通信装置の一部が、「外部装置と通信を行い、データの転送を行う通信部」であり、データの転送を行う通信装置の操作が、「前記外部装置とのデータの転送」であるのに対し、引用例1記載の発明では、データの転送を行う通信装置の一部は、「メモリカードリーダライタ130の挿入排出口131」であり、データの転送を行う通信装置の操作は、「メモリカードの排出」である点。

5.当審の判断

[相違点について]
本願の明細書には、「前記通信部は、前記外部装置と有線で通信を行うための端子であってもよい。即ち、データ処理装置と外部装置とは、通信部とそれに繋がる有線を介して、データの転送が行われる。」(【0016】)と記載されており、本願発明の「外部装置と通信を行い、データの転送を行う通信部」は、外部装置と接続を行うコードのコネクタを含むものであり、本願発明の「前記外部装置とのデータの転送」は、コネクタにコードを差込み外部装置とのデータの転送を行うことを含むものであると解される。
引用例2には、電動でスライド開閉する電動パネルを具備する車載オーディオ機器において、CDを挿入し再生して音信号を出力するCD部と外部機器と接続を行うコードのコネクタを設置し、外部機器から車載機器に情報を伝送する技術、すなわち、車載機器に、外部機器と通信を行いデータの転送を行うコネクタを設置し、該コネクタにコードを差込み外部機器と接続しデータの転送を行うことが記載されている。
そして、引用例1記載の発明の「メモリカードリーダライタ130の挿入排出口131」は、データの転送を行う通信装置の一部であるから、上記引用例1記載の発明に上記引用例2に記載された発明を適用して、メモリカードリーダライタの挿入排出口に代え外部機器と接続を行うコードのコネクタを設け、該コネクタにコードを差込み外部機器とのデータの転送を行い本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明のように構成したことによる効果も引用例1記載の発明及び引用例2に記載された発明から予測できる程度のものであって、格別なものではない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-14 
結審通知日 2013-03-19 
審決日 2013-04-01 
出願番号 特願2006-101420(P2006-101420)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 正明  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 衣川 裕史
山田 正文
発明の名称 データ処理装置  
代理人 世良 和信  
代理人 平川 明  
代理人 川口 嘉之  
代理人 和久田 純一  

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