• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1274263
審判番号 不服2012-10361  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-05 
確定日 2013-05-15 
事件の表示 特願2006-331400「イージーオープン機能を備えた合成樹脂製袋体」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月28日出願公開、特開2008- 44671〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成18年12月8日を出願日とする出願であって、平成24年2月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年6月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされた。その後、平成24年12月12日付けで当審から拒絶理由を通知したところ、平成25年1月23日に特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1、2に係る発明は、平成25年1月23日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「【請求項1】
袋体を形成している表側胴部フィルムと裏側胴部フィルムとの上端部側に開口部を有していること、および、
その袋体の内部で袋体開口部側に配置された袋横幅方向にわたるイージーピールテープを介して、表側胴部フィルムの一部内面と裏側胴部フィルムの一部内面とが相互に接着されていること、および、
袋体の内部であってその袋体の開口部側には、イージーピールテープの上方に再開閉可能なチャックが配置されていること
を前提とするイージーオープン機能を備えた合成樹脂製袋体において、
袋体の内部であってその袋体の開口部側に設けられるイージーピールテープを2枚有しており、この2枚それぞれのイージーピールテープがテープ両面のうちの一方のテープ片面側にイージーピール層を備えていて他方のテープ片面側に熱接着層を備え、かつ、その熱接着層とイージーピール層との間に中間層を備えていること、および、
袋体の内部であって袋体の開口部側における表側胴部フィルムの内面には、一方のイージーピールテープがその熱接着層を介して強接着され、かつ、袋体の内部であって袋体の開口部側における裏側胴部フィルムの内面には、他方のイージーピールテープがその熱接着層を介して強接着されており、この両強接着には、袋横幅方向と直交するイージーピールテープ幅方向において長短の接着幅段差があり、しかも、そのうちで接着幅の短い強接着の下端側には、イージーピールテープの熱接着層と胴部フィルム内面との間に非接着部が介在していること、および、
表側胴部フィルムや裏側胴部フィルムの各内面にあって互いに対面する両イージーピールテープのイージーピール層が相互に弱接着されていること、および、
弱接着された両イージーピール層の袋体開口部側からの剥離について、この両イージーピール層相互が弱接着であることにより、当該両イージーピール層の袋体開口部側からの剥離が容易であること、および、
弱接着された両イージーピール層の袋体内部からの剥離については、袋体内部における上記両強接着の接着幅段差により防止されるものであること、および、
接着幅の長い熱接着層をもつ一方のイージーピールテープについて、その接着幅の長い熱接着層の強接着下側端縁が、当該一方のイージーピールテープ下側端縁と同等の位置にあり、かつ、両イージーピールテープにあってそれぞれ強接着された両熱接着層の強接着上側端縁が、両イージーピールテープの上側端縁よりも下方へずれた位置にあること
を特徴とするイージーオープン機能を備えた合成樹脂製袋体。」
(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明1」という。)

3 当審が通知した拒絶理由
当審が、平成24年12月12日付けで通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

「この出願の請求項1?5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献
1.特開2006-264746号公報
2.特開平4-57750号公報」

4 引用文献の記載事項
当審が通知した拒絶理由に引用された引用文献1(特開2006-264746号公報)には、図面と共に次の記載がある。
a「【0001】
本発明は、密封の開封後に開口部を開閉するジッパーを有する包装袋に関する。」
b「【0010】
このような従来の問題点に対し、本発明は、ジッパーの上方に位置する袋本体の開口端を閉じたジッパー付包装袋において、包装袋の密封時には、ボイル処理やレトルト処理による袋本体の内圧上昇や、輸送中の積載や内容物の遥動などによってもジッパーが開かず、かつ包装袋の開封時には、開口端側から袋本体を容易に開封することができるジッパー付包装袋を提供することを目的としている。」
c「【0022】
このジッパー付包装袋101の袋本体20は、2枚の積層フィルム31、32の熱溶着性層33、34を対向させ、熱溶着することにより形成したものであり、各積層フィルム31、32はそれぞれ熱溶着性層33、34を基材層35上に接着剤36で積層することにより形成されている。対向する2枚の積層フィルム31、32のうち一方の積層フィルム31の熱溶着性層33は公知の熱溶着型の袋と同様に種々の熱溶着性の樹脂フィルムから形成されるが、他方の積層フィルム32の熱溶着性層34は層間剥離型熱溶着性フィルムから形成されている。
……
【0023】
積層フィルム32の熱溶着性層34を形成する層間剥離型熱溶着性フィルムは、該熱溶着性層34を構成する第1層34aと第2層34bとの間の剥離面37の剥離強度が、この熱溶着性層34と基材層35との層間剥離強度の2分の1以下であることが好ましく、例えば、0.2?1.5kg/15mm幅とする。この数値を大きく超えると高齢者や身体障害者等の力の弱い者には開封が困難になり、また、開封時に袋形状が損なわれて再密封が困難になる場合がある。」
d「【0030】
基材層35としては、ポリエステル、延伸ナイロン、ポリプロピレン等から形成した層を挙げることができ、
……
【0032】
接着剤36としては、一般に、フィルムの貼り合わせに使用されるドライラミネート用又はウェットラミネート用接着剤等を用いることができ、より具体的には、……ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂等の接着剤を使用することができる。」
e「【0037】
袋本体20の開口部となる部分には、使用時に袋本体の開口部を開閉するジッパー1が設けられ、その上方に位置する袋本体20の開口端21は、熱溶着封緘部22により密封されている。
……
【0040】
図1A、図1Bに示すように、ジッパー1の内方には、袋本体20内をジッパー1側と内容物Aの収容部側に区分する、ジッパー保護用の溶着部23が形成されている。
……
【0042】
また、溶着部23はジッパー1と並行に設けることが好ましいが、ジッパー1の近傍に設ける必要はない。」
f「【0055】
図4Aは、他の実施例のジッパー付包装袋102の密封時の断面図であり、図4Bはその内圧上昇時の溶着部付近の断面図であり、図4Cは開封時の断面図である。
【0056】
このジッパー付包装袋102は、前述の図1A、図1Bのジッパー付包装袋101に対して、袋本体20で対向する積層フィルム31a、31bは双方とも基材層35上に熱溶着性層33を積層したもので、積層フィルム全体にわたる剥離面は有していないが、一方の積層フィルム31aの表面には、溶着部の上端部23aから溶着部23より下方に至る領域に、層間剥離型熱溶着性フィルムテープ38がベタに溶着され、溶着部23ではこの層間剥離型熱溶着性フィルムテープ38を介して対向する積層フィルム31a、31bが溶着している点が異なっている。」
g「【0057】
層間剥離型熱溶着性フィルムテープ38としては、前述の図1A、図1Bのジッパー付包装袋101の積層フィルム32を形成する熱溶着性層34の層間剥離型熱溶着性フィルムと同様の層構成のフィルムテープを使用することができ、層間剥離型熱溶着性フィルムテープ38を構成する熱溶着性の第1層38aと第2層38bの層間剥離強度が0.2?1.5kg/幅15mm、第1層38aの層厚が0.5?30μm、第2層38bの層厚が10?200μm、特に10?50μmで、第1層と第2層が容易に剥離するものがより好ましい。
【0058】
このジッパー付包装袋102において、層間剥離型熱溶着性フィルムテープ38は、その上端部38cが溶着部の上端部23a近傍にあって露出しており、下端部38dが溶着部の下端部23bより下方にあって露出している。この層間剥離型熱溶着性フィルムテープの上端部38cは、好ましくは溶着部の上端部23aから上方に15mm以内、より好ましくは上端部23aから2mm以内の部分に設けられ、下端部38dは、好ましくは溶着部の下端部23bから下方に3?30mm、より好ましくは3?6mmに設けられる。
【0059】
このような位置に層間剥離型熱溶着性フィルムテープの上端部38cと下端部38dを設けることにより、層間剥離型熱溶着性フィルムテープの上端部38cは溶着部23を袋本体20の開口端側から開封する場合の開封開始点として作用するが、層間剥離型熱溶着性フィルムテープの下端部38dは溶着部23を袋内部側から開く場合の開封開始点としては作用しない。」
h「【0060】
したがって、図4Bに示すように、密封時に袋本体20の内圧が上昇する等により溶着部23に力がかかっても、溶着部23の内容物収容部側の接合端である下端部23bは、積層フィルム31の熱溶着性層33と、それに対向する層間剥離型熱溶着性フィルムテープ38により強固に溶着されているので、溶着部23は容易には開口しない。
【0061】
一方、この包装袋102に密封充填された内容物の使用時にジッパー側から袋本体20を開くと、図4Cに示すように、袋本体20を開口しようとする力は、溶着部の上端部23aに集中し、この溶着部の上端部23aの近傍には層間剥離型熱溶着性フィルムテープの上端部38cがあり、その第1層38aと第2層38bの易剥離性の界面が露出している。したがって、層間剥離型熱溶着性フィルムテープの上端部38cで露出している易剥離性の界面端部が開封開始点となり、第1層38aが剥離し、この剥離は層間剥離型熱溶着性フィルムテープの下端部38dに至り、溶着部23が開口する。
【0062】
よって、この包装袋102によれば、積層フィルム31aに接着された層間剥離型熱溶着性フィルムテープ38内の易剥離性界面が溶着部23の開封用剥離面として機能することとなる。」
i「【0063】
また、この包装袋102によれば、層間剥離型熱溶着性フィルムテープ38は積層フィルム31aの表面にベタに溶着され、袋本体内部に突出していないので、このフィルムテープ38と、袋本体を形成する積層フィルム31a、31bとの間に内容物が溜まったり、ひっかかったりすることはない。」

上記e、図1A及び図4Aの記載から、層間剥離型熱溶着性フィルムテープ38は、袋本体20の横幅方向にわたって配置されていると認められる。
上記c、g、h、図4B及び図4Cの記載から、第1層38aと第2層38bとの層間剥離強度は、第1層38a及び第2層38bと積層フィルム31a及び31bとの層間剥離強度よりも低く、容易に剥離するものであることから、第1層38aと第2層38bとは「弱接着」されているということができ、また、第1層38a及び第2層38bと積層フィルム31a及び31bとは「強接着」されているということができる。
上記g及び図4Bの記載から、第1層38aと積層フィルム31b内面とが強接着されている部分の下方で両者は離れているので、両者の間に「非接着部」が介在しているといえる。
上記i、図4B及び図4Cの記載から、層間剥離型熱溶着性フィルムテープ38は、積層フィルム31aの表面にベタに溶着されて袋本体内部に突出していないので、第2層38bの積層フィルム31aへの溶着下側端縁は、第2層38bの下側端縁と同等の位置にあり、また、第1層38aと積層フィルム31bの強接着と、第2層38bと積層フィルム31aの強接着との間には、長短の接着幅の違いがあると認められる。
また、上記g及びhの記載から、上記長短の接着幅の違いにより、袋本体20の内部からの第1層38a及び第2層38bの剥離が防止されると認められる。

以上の記載及び図1A?図4Cによれば、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。

「袋本体20を形成している積層フィルム31aと31bとの上端部側に開口端21を有していること、および、
その袋本体20の内部で袋本体20の開口端21側に配置された袋横幅方向にわたる層間剥離型熱溶着性フィルムテープ38を介して、積層フィルム31aの一部内面と積層フィルム31bの一部内面とが相互に接着されていること、および、
袋本体20の内部であってその袋本体20の開口端21側には、層間剥離型熱溶着性フィルムテープ38の上方に密封の開封後に開口部を開閉するジッパー1が配置されていること
を前提とする開口端21側から袋本体20を容易に開封することができる合成樹脂製袋本体20において、
袋本体20の内部であってその袋本体20の開口端21側に第1層38a及び第2層38bを有しており、この2層はそれぞれ層の一方の片面側で易剥離性の界面をなし、他方の片面側で積層フィルム31a及び31bに溶着されること、および
袋本体20の内部であって袋本体20の開口端21側における積層フィルム31aの内面には、第2層38bが溶着により強接着され、かつ、袋本体20の内部であって袋本体20の開口端21側における積層フィルム31bの内面には、第1層38aが溶着により強接着されており、この両強接着には、袋横幅方向と直交する層間剥離型熱溶着性フィルムテープ38幅方向において長短の接着幅の違いがあり、しかも、そのうちで接着幅の短い強接着の下端側には、第1層38aと積層フィルム31b内面との間に非接着部が介在していること、および、
積層フィルム31aや積層フィルム31bの各内面にあって互いに対面する第1層38aと第2層38bとが相互に弱接着されていること、および、
弱接着された第1層38a及び第2層38bの袋本体20の開口端21側からの剥離について、この両層相互が弱接着であることにより、両層の袋本体20の開口端21側からの剥離が容易であること、および、
弱接着された第1層38a及び第2層38bの袋本体20内部からの剥離については、袋本体20内部における両強接着の接着幅の違いにより防止されるものであること、および、
接着幅の長い溶着部をもつ第2層38bについて、その接着幅の長い溶着部による強接着下側端縁が、第2層38bの下側端縁と同等の位置にある、開口端21側から袋本体20を容易に開封することができる合成樹脂製袋本体20。」

同じく、当審が通知した拒絶理由に引用された引用文献2(特開平4-57750号公報)には、図面と共に次の記載がある。

j「本発明は、かかる欠点のない、すなわち、包装袋の開口部のシールにつき、外側から剥離して開封することは簡単であるが、包装袋内の内圧ないし収納物の荷重によっては剥離しないようにした易開封性密封包装袋を提供することを目的とする。」(第1ページ右下欄第16行?第20行)
k「第3図は、この包装体1の開口部2における包装袋1本体と帯状複合多層フィルム4との構造を示す部分拡大断面図である。包装袋1は、基材6の内側に完全シールシーラント層7を設けたフィルム又はシートで構成されている。また、易剥離性シール層3を中間層にもつ帯状複合多層フィルム4は、2枚の基材9、9’のそれぞれの一方の面に完全シールシーラント層8、8’を設け、他の面には易剥離性シール層を形成するいわゆるイージーピールシーラント層10、10’をそれぞれ設け、このイージーピールシーラント層10、10’同士を向かい合わせて接着したものである。このイージーピールシーラント層同士を接着した部分は易剥離性シール層3を形成し、易開封性シール部となる。なお、基材9、9’は開封時に腰を持たせるために設けたものであり……」(第2ページ右上欄第16行?左下欄第10行)
l「そして、前記帯状複合多層フィルムの完全シールシーラント層8、8’は、包装袋の内面の完全シールシーラント層7と充分な強度の接着ができるものであり、両者は異質のもので構成されていても同性質のもので構成されていてもよい。完全シールシーラント層8、8’と完全シールシーラント層7の接着は完全に行われ、強いシール強度を有している。しかして、本発明においては、前記帯状複合多層フィルム4を包装袋内に突出11させたので、包装袋内に内圧ないし収納物の荷重がかかった場合、その圧力ないし荷重Pは、第3図に示すように、帯状複合多層フィルム4の易開性シール部3に直接かかることはなく、むしろ、該帯状複合多層フィルム4と包装袋1本体との接着部にかかる。しかるに本発明の包装袋においては、前記したとおり、その部分は完全シールシーラント同士で強固にシールされているので、ここが剥離して収容物が漏洩するようなことがない。」(第2ページ左下欄第15行?右下欄第12行)

そして、上記k及び第3図の記載から、易開封性の密封機能を有する帯状複合多層フィルム4は、基材9、完全シールシーラント層8及びイージーピールシーラント層10からなる部材と、基材9’、完全シールシーラント層8’及びイージーピールシーラント層10’からなる部材とを接着して得られるものであるので、これらの接着前の基材9、完全シールシーラント層8及びイージーピールシーラント層10からなる部材、並びに、基材9’、完全シールシーラント層8’及びイージーピールシーラント層10’からなる部材を、それぞれイージーピールテープということができる。
また、上記lの記載から、完全シールシーラント層8、8’と包装袋1内面との接着は強接着であり、イージーピールシーラント層10、10’同士の接着は弱接着であると認められる。

以上の記載及び図3によれば、引用文献2には、次の発明が記載されていると認められる。

「包装袋1の開口部2に設けられるイージーピールテープを2枚有しており、この2枚それぞれのイージーピールテープがテープ両面のうちの一方のテープ片面側にイージーピールシーラント層10、10’を備えていて他方のテープ片面側に完全シールシーラント層8、8’を備え、かつ、その完全シールシーラント層8、8’とイージーピールシーラント層10、10’との間に基材9、9’を備えており、完全シールシーラント層8、8’が包装袋1の内面に強接着され、イージーピールシーラント層10、10’が相互に弱接着されている包装袋1。」

5 対比
本願発明1と引用文献1に記載された発明とを対比すると、引用文献1に記載された発明の「袋本体20」、「開口端21」、「密封の開封後に開口部を開閉するジッパー1」、「開口端21側から袋本体20を容易に開封することができる」、「溶着」、「接着幅の違い」は、それぞれ本願発明1の「袋体」、「開口部」、「再開閉可能なチャック」、「イージーオープン機能を備えた」、「熱接着」、「接着幅段差」に相当する。
引用文献1に記載された発明においては、積層フィルム31aと31bとは、どちらが袋本体の表側又は裏側にあるかは明らかではないものの、一方が表側にあり、他方が裏側にある点において、本願発明1の表側胴部フィルム及び裏側胴部フィルムと共通する。
本願発明1の「イージーピールテープ」と引用文献1に記載された発明の「層間剥離型熱溶着性フィルムテープ38」とは、イージーピールテープである限りにおいて共通する。
また、本願発明1の2枚それぞれのイージーピールテープと、引用文献1に記載された発明の第1層38a及び第2層38bとは、層の一方の面が弱接着されて易剥離性の界面をなし、層の他方の面が熱接着により胴部フィルム内面に強接着される限りにおいて共通する。

そうすると、両者は、
「袋体を形成している表側胴部フィルムと裏側胴部フィルムとの上端部側に開口部を有していること、および、
その袋体の内部で袋体開口部側に配置された袋横幅方向にわたるイージーピールテープを介して、表側胴部フィルムの一部内面と裏側胴部フィルムの一部内面とが相互に接着されていること、および、
袋体の内部であってその袋体の開口部側には、イージーピールテープの上方に再開閉可能なチャックが配置されていること
を前提とするイージーオープン機能を備えた合成樹脂製袋体において、
袋体の内部であってその袋体の開口部側に2つの層を有しており、この2層はそれぞれ層の一方の片面側で易剥離性の界面をなし、他方の片面側で胴部フィルムに熱接着されること、および
袋体の内部であって袋体の開口部側における表側胴部フィルムの内面には、一方の層が熱接着により強接着され、かつ、袋体の内部であって袋体の開口部側における裏側胴部フィルムの内面には、他方の層が熱接着により強接着されており、この両強接着には、袋横幅方向と直交するイージーピールテープ幅方向において長短の接着幅段差があり、しかも、そのうちで接着幅の短い強接着の下端側には、一方の層と胴部フィルム内面との間に非接着部が介在していること、および、
表側胴部フィルムや裏側胴部フィルムの各内面にあって互いに対面する両層が相互に弱接着されていること、および、
弱接着された両層の袋体開口部側からの剥離について、この両層相互が弱接着であることにより、当該両層の袋体開口部側からの剥離が容易であること、および、
弱接着された両層の袋体内部からの剥離については、袋体内部における両強接着の接着幅段差により防止されるものであること、および、
接着幅の長い熱接着部をもつ一方の層について、その接着幅の長い熱接着部の強接着下側端縁が、一方の層の下側端縁と同等の位置にある、イージーオープン機能を備えた合成樹脂製袋体。」
である点で一致し、次の点で相違する。

《相違点1》
本願発明1では、袋体のイージーオープン機能を、テープ両面のうちの一方のテープ片面側にイージーピール層を備えていて他方のテープ片面側に熱接着層を備え、かつ、その熱接着層とイージーピール層との間に中間層を備えている、2枚のイージーピールテープにより付与しているのに対し、引用文献1に記載された発明では、一方の片面側で易剥離性の界面をなし、他方の片面側で胴部フィルムに熱接着される、2つの層により付与している点。

《相違点2》
本願発明1では、両イージーピールテープにあってそれぞれ強接着された両熱接着層の強接着上側端縁が、両イージーピールテープの上側端縁よりも下方へずれた位置にあるのに対し、引用文献1に記載された発明では、イージーピールテープの強接着上側端縁について、そのように特定されていない点。

6 相違点の検討
上記相違点について検討する。

《相違点1について》
引用文献2に記載された発明のイージーピールシーラント層10、10’及び基材9、9’は、本願発明1のイージーピール層、中間層にそれぞれ相当するものであり、また、引用文献1に記載された発明のようにイージーピールテープを袋体に熱接着する際には、引用文献2に記載された発明の完全シールシーラント層8、8’は、熱接着層となるものである。
さらに、上記kに記載されているように、基材9、9’は、袋体の開封時に腰を持たせるという機能を有している。
そして、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明は、ともにイージーオープン機能を備えた袋体に関するものであり、袋体の開封時にイージーピール層の開口部側からの剥離を容易にし、袋体内部からの剥離を防止するという共通の課題を有するので、引用文献1に記載された発明において、袋体のイージーオープン機能を、熱接着層、イージーピール層及び中間層を備えた2枚のイージーピールテープにより付与することは、当業者が容易になし得たことである。

《相違点2について》
上記gの記載(特に、「この層間剥離型熱溶着性フィルムテープの上端部38cは、好ましくは溶着部の上端部23aから上方に15mm以内、より好ましくは上端部23aから2mm以内の部分に設けられ」を参照)から、引用文献1には、イージーピールテープの強接着上側端縁を、イージーピールテープの上側端縁よりも下方へずれた位置とする点が示唆されているといえるので、イージーピールテープの両強接着上側端縁を、イージーピールテープの上側端縁よりも下方へずれた位置とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

そして、本願発明1が奏する効果は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明1は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

7 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-06 
結審通知日 2013-03-12 
審決日 2013-03-25 
出願番号 特願2006-331400(P2006-331400)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 正章  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 ▲高▼辻 将人
熊倉 強
発明の名称 イージーオープン機能を備えた合成樹脂製袋体  
代理人 菊池 新一  
代理人 菊池 徹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ