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審判番号(事件番号) データベース 権利
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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04G
管理番号 1276730
審判番号 不服2012-17735  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-11 
確定日 2013-07-08 
事件の表示 特願2011-208634「放水型ハンドブレーカー」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月18日出願公開、特開2013- 68038〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成23年9月26日の特許出願であって、同24年2月20日付けで拒絶の理由が通知され、同24年3月18日に意見書とともに特許請求の範囲及び明細書についての手続補正書が提出されたが、同24年6月7日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成24年9月11日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされるとともに特許請求の範囲及び明細書についてさらに手続補正書が提出され、その後、当審の同25年1月15日付け審尋に対して同25年3月14日に回答書が提出されたものである。

第2 平成24年9月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年9月11日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容の概要
平成24年9月11日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成24年3月18日付けで補正された特許請求の範囲及び明細書をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する以下の補正を含んでいる。なお、下線部は補正箇所を示す。

(1)<補正前の請求項1>
「 【請求項1】
建造物の破壊に使用される先端にタガネを備えたハンドブレーカーを備え、ハンドブレーカー側面のタガネ取付位置の後部に、帯状に広がる放水面を形成することができる放水口を備えた放水ノズルを取り付け、該放水ノズルに連結してハンドブレーカーの側面に配設した導水管またはホースをハンドブレーカーの端部に開放し、かつ、給水手段の先端を前記導水管またはホースの端部に着脱可能とするとともに、前記導水管またはホースの適所に開閉栓を取り付けたことを特徴とする放水型ハンドブレーカー。」

(2)<補正後の請求項1>
「 【請求項1】
建造物の破壊に使用される先端にタガネを備えたハンドブレーカーを備え、ハンドブレーカー側面のタガネ取付位置の後部に、帯状に広がる放水面を形成することができる放水口を備えた放水ノズルを取り付け、該放水ノズルに連結してハンドブレーカーの側面形状に沿って密接するよう配設した導水管またはホースをハンドブレーカーの端部に開放し、かつ、給水手段の先端を前記導水管またはホースの端部に着脱可能とするとともに、前記導水管またはホースの適所に開閉栓を取り付けたことを特徴とする放水型ハンドブレーカー。」

2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の請求項1の「ハンドブレーカーの側面に配設した導水管またはホース」について、「側面形状に沿って密接するよう配設した」ことを限定的に減縮するものである。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち独立特許要件について検討する。

(1)補正発明
補正発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「放水型ハンドブレーカー」であると認める。

(2)刊行物
これに対して、原審の平成24年2月20日付け拒絶の理由に引用された、本件出願日前に頒布された刊行物である以下の文献には、以下の発明、あるいは事項が記載されていると認められる。

刊行物1:実願昭53-108887号(実開昭55-26657号)の マイクロフィルム(原審の拒絶の理由の引用文献1)
刊行物2:特開2000-334319号公報(原審の拒絶の理由の引用 文献2)

(2-1)刊行物1
ア 刊行物1記載の事項
刊行物1には、「散水金具つきコンクリートブレーカ」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)実用新案登録請求の範囲
「(イ)上部入口側に散水弁(4)及び給水管接続金具(5)、下部に散水ノズル(6)を有する散水金具(3)をコンクリートブレーカに付設する。
(ロ)散水金具(3)の上部パイプを取付金物(7)でコンクリートブレーカハンドル(1)にセットし散水金具(3)の下部パイプを取付金物(7)でコンクリートブレーカ本体胴部(2)にセットする。
以上の如く構成された散水金具つきコンクリートブレーカ。」

(イ)第2ページ第17行?第3ページ第3行
「本案は以上のように構成されており、コンクリート斫り作業準備時、ブレーカ本体にエヤーゴムホースを接続するのと同様に給水ホースをも給水接続金具(5)にセットする。作業者はコンクリート斫りをしながら発塵の状況に応じて散水弁(4)を操作し、散水金具(3)先端の散水ノズル(6)から出る水量をコントロールする。」

(ウ)第3ページ第4?8行
「なお本考案の実施態様としては、(イ)散水弁はコック又は押ボタン式、給水接続金具はカチット式のようにワンタッチ形式にしてもよい。(ロ)散水金具を本体に取付ける要領は溶接又はボルトにて固定するのもよい。」

(エ)第3ページ欄9?13行
「本考案は以上のような構成であるから、極めて簡単な構造の散水金具をコンクリートブレーカに付加することにより、作業者単独にて散水可能となり充分な防塵処置が行なえ、実地使用上その効果が極めて大きい。」

(オ)第2図
第2図を参酌すれば、コンクリートブレーカ本体胴部(2)の先端に「タガネ」に相当する部材を備えていることが看取できる。

イ 刊行物1に記載の発明
上記摘記事項(ア)の「散水金具(3)の上部パイプを取付金物(7)でコンクリートブレーカハンドル(1)にセットし」なる記載を合理的に解釈すれば、散水金具(3)をコンクリートブレーカの端部に開放している、ということができる。
また、上記摘記事項(ウ)に「給水接続金具はカチット式のようにワンタッチ形式にしてもよい」とあることなどから、給水ホースの先端は、散水金具(3)に着脱可能である、といえる。

そこで、上記摘記事項(ア)ないし(エ)及び認定事項(オ)を、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえて補正発明に照らして整理すると刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。
「コンクリート斫り作業に使用される先端にタガネを備えたコンクリートブレーカを備え、コンクリートブレーカ側面のタガネ取付位置付近に、散水ノズル(6)を取り付け、該散水ノズル(6)に連結してコンクリートブレーカーの側面に配設した散水金具(3)をコンクリートブレーカの端部に開放し、かつ、給水ホースの先端を前記散水金具(3)の端部に着脱可能とするとともに、前記散水金具(3)の適所に散水弁(4)を取り付けた散水金具つきコンクリートブレーカ。」

(2-2)刊行物2
ア 刊行物2記載の事項
刊行物2は、「建設作業施工具」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)特許請求の範囲の請求項1及び請求項7
「【請求項1】 被施工対象物に接触して破砕又は削孔を行なう先端工具を施工具本体に備えるとともに、該先端工具の先端部近傍箇所に向けて流体を噴射する噴射機構を設けてある建設作業施工具。」
「【請求項7】 前記建設作業施工具がブレーカである請求項1?6のいずれか1項に記載の建設作業施工具。」

(イ)段落【0029】?【0030】
「【0029】図1は、コンクリート(被施工対象物の一例)に衝撃的に接触して破砕するブレーカチゼル(先端工具14の一例)3を設けて、そのブレーカチゼル3の先端部に不燃性流体Fを吹き付ける噴射機構4を設けてあるエアブレーカ1(建設作業施工具の一例)を示してある。先ず、本第1実施形態のエアブレーカ1は、円筒形状のブレーカ本体2に対して先の尖った棒状の超硬合金で形成されたブレーカチゼル3が出退自在に装着されている。
【0030】ブレーカチゼル3の駆動は、ブレーカ本体2に設けられた作業者が支持するためのハンドル5の一端部に接続したエア供給ホース6を介してコンプレッサー7から供給された加圧空気によりブレーカ本体2内に設けられた衝撃付与機構8が作動され、ブレーカ本体2に対して出退自在に往復駆動される。そして、そのように往復駆動されたブレーカチゼル3の先端部3Aが、コンクリートに断続的に衝撃を与えてコンクリートを破砕するように構成されている。図中5Aは、作業者がエアブレーカ1を支持したときにハンドルと共に握ってエアブレーカを作動させるための作動スイッチである。」

(ウ)段落【0031】
「【0031】噴射機構4は、コンプレッサー4aと、噴射器4bと、チューブ4cと、噴霧式エジェクター4dとから成り、コンプレッサー4aにより圧縮加圧された空気Kが、チューブ4c内を通ってブレーカ本体2の長手方向中間部に設けた噴射器4bに至るまでに、チューブ4cの途中に接続した噴霧式エジェクター4dによって、チューブ4c内の圧縮空気Kに霧状の水Mを混合するように構成されている。」

(エ)段落【0032】
「【0032】図2に示すように、噴射器4bは、中空のリング形状に形成されており、ブレーカ本体2の外周を取り巻くようにピン(不図示)により固定されている。そして、エアブレーカ1の作業姿勢でブレーカチゼル3の先端部3A側に向いている噴射器4bの下面には、ブレーカチゼル3の先端部3A側に向けて複数の噴射孔4eが設けられている。」

(オ)段落【0034】
「【0034】つまり、不燃性流体に水等の液体を混合して噴霧するので、先端工具と施工対象物との衝撃的な接触に基づく火花の発生を噴霧により抑制し、又、破砕や削孔作業による粉塵が舞い上がるのを抑制できると共に、被施工対象物との接触によって加熱した先端工具を冷却することができるようになる。」

(カ)段落【0065】?【0066】
「【0065】〈5〉前記噴射器4bは中空のリング形状に形成したものについて説明したが、図3(イ)(ロ)に示すように、複数個に分離した形状の噴射器4bを備えたものでも良い。これだと、噴射器4bに詰まりや故障が発生した場合に、その噴射器4bだけを取り替えるだけで良いと共に、ブレーカチゼル先端部3Aが接触する破砕部を作業者が目視するときの邪魔にならない位置に取付けることが可能となる。
【0066】つまり、邪魔な位置には噴射器4bを設けないようにすることができる。当然この際には、取付けられた複数の噴射器4bでブレーカチゼル先端部3Aの周囲をカバー出来るように噴射孔4eの数及び向きを調整しておく必要がある。又、この際の噴射器4bの数は任意である。要するに破砕部に向けて不燃性の高圧流体Fを吹き付けて火花の発生を抑制することが出来れば良い。」

イ 刊行物2事項
刊行物2の上記摘記事項(ア)ないし(カ)を、図面を参照しつつ、特に図3及び上記摘記事項(カ)に記載された実施形態に着目して技術常識を踏まえて整理すると、刊行物2には以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「コンクリートの破砕に使用される先端にブレーカチゼル3を備えたエアブレーカ1を備え、エアブレーカ1のブレーカ本体2の外周に、それぞれに水を噴射するための複数の噴射孔4eが設けられた複数個に分離した形状の噴射器4bを、破砕部を作業者が目視するときの邪魔にならない位置に取り付けた、噴射機構を設けてあるエアブレーカ1。」(以下「刊行物2事項」という。)

(3)対比
補正発明と刊行物1発明とを対比すると以下のとおりである。
刊行物1発明の「コンクリート斫り作業」は、補正発明の「建造物の破壊」に相当することは、技術常識に照らして明らかであり、以下同様に「コンクリートブレーカ」は「ハンドブレーカー」に、「散水ノズル(6)」は「放水口を備えた放水ノズル」または「放水ノズル」に、「散水金具(3)」は「導水管」に、「給水ホース」は「給水手段」に、「散水弁(4)」は「開閉栓」に、「散水金具つきコンクリートブレーカ」は「放水型ハンドブレーカー」に相当することも明らかである。
また、刊行物1発明の「取付位置付近に」は、「取付位置付近に」という限りで、補正発明の「取付位置の後部に」と一致する。
したがって、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「建造物の破壊に使用される先端にタガネを備えたハンドブレーカーを備え、ハンドブレーカー側面のタガネ取付位置付近に、放水口を備えた放水ノズルを取り付け、該放水ノズルに連結してハンドブレーカーの側面に配設した導水管をハンドブレーカーの端部に開放し、かつ、給水手段の先端を前記導水管の端部に着脱可能とするとともに、前記導水管の適所に開閉栓を取り付けた放水型ハンドブレーカー。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の3点で相違している。
<相違点1>
補正発明の放水ノズルは、タガネ取付位置の後部に取り付けられているのに対し、刊行物1発明の散水ノズル(6)(放水ノズル)は、タガネ取付位置付近に取り付けられている点。
<相違点2>
補正発明の放水ノズルは、帯状に広がる放水面を形成することができる放水口を備えたものであるのに対し、刊行物1発明の散水ノズル(6)(放水ノズル)は、散水時に水がどのような形状となるかが不明である点。
<相違点3>
補正発明の導水管は、ハンドブレーカーの側面形状に沿って密接するよう配設されているのに対し、刊行物1発明の散水金具(3)(導水管)は、ハンドブレーカーの側面に配設されているものの、側面形状に沿って密接しているか不明である点。

(4)相違点の検討
ア <相違点1>について
刊行物1発明のようなハンドブレーカーにおいて、放水ノズルの位置をタガネ取付位置よりも後部とすることは、例えば、原審の拒絶査定にて示した実願昭50-118329号(実開昭52-31224号)のマイクロフィルム(第1図等参照)、実願昭55-185401号(実開昭57-108882号)のマイクロフィルム(第1図等参照)に示されるように、本件出願前周知の事項である。刊行物1発明において、放水ノズルの位置をタガネ取付位置よりも後部とすることは、かかる周知の事項の事項を同じハンドブレーカーの技術に関する刊行物1発明に適用して、当業者が容易に想到し得るところである。

イ <相違点2>について
上記(2)(2-2)イにて指摘したように、刊行物2事項は、
「コンクリートの破砕に使用される先端にブレーカチゼル3を備えたエアブレーカ1を備え、エアブレーカ1のブレーカ本体2の外周に、それぞれに水を噴射するための複数の噴射孔4eが設けられた複数個に分離した形状の噴射器4bを、破砕部を作業者が目視するときの邪魔にならない位置に取り付けた、噴射機構を設けてあるエアブレーカ1。」というものであるところ、これを補正発明の用語に倣って表現すれば、刊行物2事項の「コンクリートの破砕」は「建造物の破壊」と表現でき、以下同様に、「ブレーカチゼル3」は「タガネ」と、「エアブレーカ1」は「ハンドブレーカー」と、「噴射孔4e」は「放水口」と、「噴射器4b」は「放水ノズル」と、「噴射機構を設けてあるエアブレーカ1」は「放水型ハンドブレーカー」と表現できる。
したがって、刊行物2事項は、
「建造物の破壊に使用される先端にタガネを備えたハンドブレーカーを備え、ハンドブレーカーのブレーカ本体2の外周に、それぞれに水を噴射するための複数の放水口が設けられた複数個に分離した形状の放水ノズルを、破砕部を作業者が目視するときの邪魔にならない位置に取り付けた、放水型ハンドブレーカー。」と言い換えることができる。

ここで、刊行物1発明と刊行物2事項は、いずれも、建造物の破壊に使用される先端にタガネを備えた放水型ハンドブレーカーである点で共通しており、刊行物2に接した当業者がこれを刊行物1発明に適用することを試みることに困難性はない。そうすると、刊行物1発明に刊行物2事項を適用して、ハンドブレーカーの外周に、それぞれに水を噴射するための複数の放水口が設けられた複数個に分離した形状の放水ノズルを、破砕部を作業者が目視するときの邪魔にならない位置に取り付けることも、当業者が容易に推考し得るものというべきである。

そうした上で、補正発明においては、放水ノズルは、(単に邪魔にならない位置に分離するにとどまらず)帯状に広がる放水面を形成することができる点で、なお刊行物2事項を適用した刊行物1発明と相違している。
これにつき検討するに、まず、平成24年9月11日付け補正書で補正された本件明細書段落【0008】に「放水ノズルから帯状に散水することにより、作業位置を確認しながらはつり作業を確実に行うことができ、またはつり作業中に粉塵が発生しても放水ノズルから帯状に散水することにより粉塵を確実に抑えることができるようになった。」と記載されていることから、補正発明が「帯状に広がる放水面を形成すること」の技術的意義は、作業位置を確認しながら作業を確実に行い得るものとすること、及び、粉塵を確実に抑えることにあるものと認められる。
一方、刊行物2事項を適用した刊行物1発明は、破砕部を作業者が目視するときの邪魔にならない位置に分離して取り付けるものであり、また、分離した円弧状の放水面を設けるものであるから、技術的意義において補正発明と異なるものではない。
さらに、分離した円弧状の形状は、放水面の形状として帯状形状と類似するものであるし、類似しないとしても、帯状形状とすることは格別創意を要するものではない。

以上を総合すると、刊行物2事項を刊行物1発明に適用して相違点2に係る発明特定事項を補正発明のものとすることは、当業者が容易に想到し得るところというのが相当である。

ウ <相違点3>について
導管を側面形状に沿って密接するよう配設することによって、引っ掛かり等を防止することは、そもそも、当業者がこく普通に採用する形態であるし、例えば、特開2002-348910号公報(図3に示されたガイド部材17等参照)、実願平4-80078号(実開平6-45341号)のCD-ROM、当審の審尋にて引用したルーマニア国発明者証第106359号明細書(RO 106359 B1 1993年4月30日発行))(図面等参照)に示されるように本件出願前周知の事項である。よって、相違点3は格別想到困難なものではない。

エ 補正発明の効果について
上記相違点1ないし相違点3を総合的に勘案しても、刊行物1発明、刊行物2事項及び上記本件出願前周知の事項から予測できない格別な効果が生じるとは考えられない。

オ 小括
したがって、補正発明は、刊行物1発明、刊行物2事項及び本件出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

カ 回答書における補正案について
請求人は、平成25年3月14日提出の回答書において、補正発明1をさらに「帯状に広がる放水面」について「タガネにほぼ平行」なる事項で限定する補正案を提示しているところ、念のため検討する。
まず、出願当初の明細書には、「帯状に広がる放水面」が「タガネにほぼ平行」であることは明記されておらず、図1等の記載や明細書の記載を総合しても導き出し得るものではない。したがって、「タガネにほぼ平行」なる限定は、新たな技術的事項を導入するものであって、新規事項といわざるを得ない。
また、仮に、「タガネにほぼ平行」なる限定が新規事項に該当しないとしても、「タガネにほぼ平行」と特定したことによる格別な作用ないし効果がは認められないことから、当業者が適宜選択し得る程度の事項に過ぎない。
よって、補正案のように補正するのは困難であるし、仮に補正したとしても特許性を認めることはできず、結論に変わりはない。

3 むすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件出願の発明について
1 本件出願の発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の特許請求の範囲の請求項に係る発明は、平成24年3月18日付け手続補正書により補正された明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、当該請求項1に係る発明(以下「本件出願の発明」という。)は、上記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの「放水型ハンドブレーカー」である。

2 引用例
これに対して、原審の拒絶の理由に引用された刊行物は、上記第2の2(2)に示した刊行物1及び2であり、その記載事項は上記第2の2(2)(2-1)及び(2-2)のとおりである。
(なお、原審においては、その平成24年6月7日付け拒絶査定の備考においては、上記刊行物1と周知技術により想到容易としているが、原審の拒絶の理由としては、刊行物1及び刊行物2が引用されている。)

3 対比・検討
本件出願の発明は、上記第2の2で検討した補正発明から、実質的に、「側面形状に沿って密接するよう配設した」、という限定を削除したものである。
そうすると、補正発明と刊行物1発明とは、上記第2の2(3)で示した一致点を有し、相違点1及び2において相違する。そして、相違点1及び2については、それぞれ上記第2の2(4)ア及びイで検討したとおりである。
したがって、本件出願の発明は、刊行物1発明、刊行物2事項及び本件出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということになる。

4 むすび
以上により、本件出願の発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-14 
結審通知日 2013-05-15 
審決日 2013-05-28 
出願番号 特願2011-208634(P2011-208634)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04G)
P 1 8・ 575- Z (E04G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 成彦村上 哲  
特許庁審判長 豊原 邦雄
特許庁審判官 長屋 陽二郎
久保 克彦
発明の名称 放水型ハンドブレーカー  
代理人 土橋 博司  

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